JP6305779B2 - ねじ緩み検知装置およびねじ緩み監視システム - Google Patents

ねじ緩み検知装置およびねじ緩み監視システム Download PDF

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Description

本発明は、被固定部材を固定する雄ねじ部材と雌ねじ部材からなるねじ締結手段の緩み状態を検知するねじ緩み検知装置およびねじ緩み監視システムに関するものである。
桁橋、アーチ橋、吊橋などの橋梁や鉄道施設、トンネル構造物、フランジ継手やタンク等の配管構造物、各種エンジンの架台への支持構造、トンネル内の各種支持構造などの被固定部材が雄ねじ部材と雌ねじ部材からなるねじ締結手段によって締結固定されているが、ねじ締結手段の締結状態の監視、換言すれば、ねじ締結手段の緩み状態を監視することは大事故を未然に防ぐ上で、極めて重要である。
従来は、検査員が定期的に巡回して、例えば、被固定部材とねじ締結手段とにペンキ等により印を付けておき、目視検査によって両者間の印のズレから回転緩みを検出する方法や、ハンマでねじ締結手段を叩き、その打音によって、作業者が緩みを判断するハンマリング法等が行われている。
また、センサを使用して軸力を計測する方法としては、
1)ボルトやナットの下に荷重計を配置して締め込み荷重をモニタする方法、
2)ボルトを加工し、ひずみ検出素子を内蔵しボルトの軸力をモニタする方法、
3)ボルトに超音波等を当てて共振により軸力を測定する方法、等が知られている。
また、ボルトやナットの位置ずれを検出する先行技術として、
特許文献1(特開平7−279936号公報)、特許文献2(特開平7−280762号公報)および特許文献3(特開2010-281697号公報)が提案されている。
このうち、特許文献1に開示されたねじの緩み検知装置は、被固定部材を固定する雄ねじ体と雌ねじ体との緩み具合を検知するねじの緩み検知装置であって、互いに螺合して雌ねじ体より突出する雄ねじ体の突出部分にキャップを雌ねじ体から隙間を隔てた状態で固定するとともに、このキャップ側に設けられた導電性を有する部分と前記雌ねじ体側に設けられた導電性を有する部分とを前記隙間を隔てた状態で対向させて配置し、前記キャップ側の導電性部分と前記雌ねじ体側の導電性部分とに電気的に接続されて雄ねじ体と雌ねじ体とが緩んでこれらの導電性部分同士が接触して導通状態となったことを検知するセンサを設けた構成としている。
また、特許文献2に開示された緩み検知装置は、被固定部材を固定するボルトとナットとの緩み具合を検知する緩み検知装置であって、互いに螺合してナットより突出するボルトの突出端部に、螺合されたナットの外周に近接して配置されて、ボルトに対するナットの相対的な回転によりナットが当接する導電性の部分を有する接触検知用部材を固定し、前記接触検知用部材の導電性部分とナットとに電気的に接続されてこれらの導電性部分とナットとが接触して導通状態となったことを検知するセンサを設けた構成としている。
また、特許文献3に開示された位置ずれ検出具は、固定部材と、前記固定部材に対して相対移動可能な可動部材との相対的な位置ずれの検出に用いられる位置ずれ検出具であって、
前記固定部材に固定され、不導体により形成される第1部材と、
前記可動部材と一体となって前記固定部材に対して相対移動し、前記相対移動の移動方向に対して垂直な方向であって前記第1部材に対応する領域に配置され、不導体により形成される第2部材と、
を有し、
前記第1部材と前記第2部材とのいずれか一方が、外部機器と非接触通信可能な検出用ICタグを備え、他方が、導体であって前記検出用ICタグの通信を遮断する遮断材を備え、
前記第1部材と前記第2部材との相対的な位置が合わせられた初期状態から、前記第2部材が前記第1部材に対して規定量以上相対移動すると、前記相対移動の移動方向に対して垂直な方向から見て、前記検出用ICタグが前記遮断材の領域内に位置する状態から前記遮断材の領域外に位置する状態へ、または、前記検出用ICタグが前記遮断材の領域外に位置する状態から前記遮断材の領域内に位置する状態へ変化する構成としている。
特開平07−279936号公報 特開平07−280762号公報 特開2010−281697号公報
しかしながら、上述した従来技術においては、既設のボルトやナットにねじ緩み検知装置を適用する場合、当該ボルト、ナットを取り外す必要があったり、2つ以上の部品を組み合わせる必要がある。
例えば、上記1)、2)、3)のセンサを使用して軸力を計測する方法は、システムが大掛かりになり、コストが嵩む、という難点がある。
特許文献1および特許文献2の従来技術は、接触検出用部材により接触を検出する方式であるために水滴等に弱く、接触部の汚れおよび劣化による誤動作も予想されるため、屋外使用には、不向きであるといわざるを得ない。
また、特許文献3に係る位置ずれ検出具および位置ずれ検出システムは、設置面に固定するICタグのために特殊な専用のボルトが必要であり、コストが嵩む上、同時に多点の緩み検知モニタが不可能である、という課題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、既設の被固定部材およびねじ締結手段を取り外したり、追加工を施す必要がなく、被固定部材およびねじ締結手段に簡易に設置可能で且つ安定して保持され、ねじ緩み状態を正確に長期に亘って検知可能で、しかも低コストで製作可能なねじ緩み検装置を提供することを目的としている。
請求項1に記載した発明に係るねじ緩み検知装置は、上述した目的を達成するために、被固定部材を固定する雄ねじ部材と雌ねじ部材からなるねじ締結手段の緩み状態を検知するねじ緩み検知装置において、
前記雄ねじ部材または前記雌ねじ部材に係合する係合部を有し、周辺近くの一部に磁石を配設してなる回動部材と、
前記回動部材を回動可能に支持すると共に、前記磁石の回動範囲に近接して磁気感応スイッチを配設してなり、前記被固定部材に磁力吸着部材により、吸着固定される本体部材と、からなり、
前記ねじ締結手段で被固定部材を締結固定した状態で前記係合部を前記雄ねじ部材または前記雌ねじ部材に係合させ、且つ
前記磁気感応スイッチと前記磁石とが対向する初期位置で前記本体部材を前記被固定部材に前記磁力吸着部材を介して配置固定した状態において、前記ねじ締結手段が緩んで前記回動部材が回動し、前記磁石が前記磁気感応スイッチに対し前記初期位置から、所定角度回動して磁気感応スイッチが切換動作することをもって、ねじの緩み状態を検知することを特徴としている。
請求項2に記載した発明に係るねじ緩み検知装置において、前記磁力吸着部材は、少なくとも1個のマグネットからなり、前記本体部材の裏面側に配設してなることを特徴としている。
請求項3に記載の発明に係るねじ緩み検知装置において、前記磁力吸着部材は、1個の円環状を呈するマグネットからなり、前記回動部材の外側を囲むように前記本体部材の裏側に配設してなることを特徴としている。
請求項4に記載した発明に係るねじ緩み検知装置において、前記磁力吸着部材は、2個の円弧状または矩形状を呈するマグネットからなり、前記回動部材の外側を囲むように前記本体部材の裏側に対称的に配設してなることを特徴としている。
請求項5に記載した発明に係るねじ緩み検知装置において、前記磁力吸着部材は、3個のマグネットからなり、前記本体部材の裏側に等角度間隔で配置されてなることを特徴としている。
請求項6に記載した発明に係るねじ緩み検知装置において、前記被固定部材に前記本体部材が吸着固定された状態から、前記本体部材を離脱させる離脱部材を、前記本体部材に設けたことを特徴としている。
請求項7に記載した発明に係るねじ緩み検知装置において、前記離脱部材は、前記本体部材の表面側から裏面側に貫通する雌ねじ穴に螺合するボルトであり、前記ボルトを前記本体部材の裏面側に突出させることで、前記本体部材を前記被固定部材から、離反させるように構成したことを特徴としている。
請求項8に記載した発明に係るねじ緩み検知装置において、前記離脱部材の前記雌ねじ穴に螺合する前記ボルトは、蝶ボルトであることを特徴としている。
請求項9に記載した発明に係るねじ緩み検知装置において、前記回動部材の係合部は、前記ねじ締結手段の雄ねじ部材としてのボルトの頭部または雌ねじ部材としてのナットに係合し共に回動し得る形状に形成してなることを特徴としている。
請求項10に記載した発明に係るねじ緩み検知装置において、前記係合部は、前記ボルトの頭部またはナットが、多角形を呈するものに係合し得るように形成されてなることを特徴としている。
請求項11に記載した発明に係るねじ緩み検知装置において、前記係合部は、ボルトの頭部またはナットが四角形若しくは六角形を呈するものに係合し得るように形成されてなることを特徴としている。
請求項12に記載した発明に係るねじ緩み検知装置において、前記係合部は、多角穴付きボルトの当該多角穴に係合し得るように形成されてなることを特徴としている。
請求項13に記載した発明に係るねじ緩み検知装置において、
前記係合部は、六角穴付きボルトまたは三角穴付きボルトの六角穴または三角穴に係合し得るように形成されてなることを特徴としている。
請求項14に記載した発明に係るねじ緩み検知装置において、前記磁気感応スイッチは、リードスイッチであることを特徴としている。
請求項15に記載した発明に係るねじ緩み検知装置において、前記リードスイッチは、共通端子と、一端が前記共通端子に接続された可動切片と、前記磁石が近接したとき接触する側の第1の接点と、前記磁石が離間したとき、前記可動切片が接触する第2の接点とを備えてなることを特徴としている。
請求項16に記載した発明に係るねじ緩み検知装置において、前記リードスイッチと前記リードスイッチの出力を外部に導出するケーブルを保持するホルダユニットは、その基部が前記本体部材に水密部材を介して接合され、さらに前記ケーブルの基部と前記ホルダユニットは、水密部材により防水構造となっていることを特徴としている。
請求項17に記載した発明に係るねじ緩み監視システムにおいて、請求項1〜16のいずれか1項に記載のねじ緩み検知装置を複数個所のねじ締結手段にそれぞれ設置し、
前記ねじ緩み検知装置に含まれる前記磁気感応スイッチとして、
共通端子と、その共通端子に一端が接続された可動切片と、前記磁石が接近したとき前記可動切片が接触する第1の接点と、
前記第1の接点に一端が接続された一定の抵抗値を持つ抵抗体との直列回路からなる検知ラインと、
前記磁石が離間したとき前記可動切片が接触する第2の接点に接続された短絡ラインと、からなる磁気検知回路を備え、
前記複数の前記磁気検知回路の検知ライン同士と、短絡ライン同士を順に接続し、前記複数の磁気検知回路の終端同士を短絡し、前記磁気検知回路の基端において抵抗値の測定をすることにより、緩んだ状態にあるねじ締結手段を特定し得るように構成したことを特徴としている。
本発明によれば、被固定部材を固定する雄ねじ部材と雌ねじ部材からなるねじ締結手段の緩み状態を検知するねじ緩み検知装置において、
前記雄ねじ部材または前記雌ねじ部材に係合する係合部を有し、周辺近くの一部に磁石を配設してなる回動部材と、
前記回動部材を回動可能に支持すると共に、前記磁石の回動範囲に近接して磁気感応スイッチを配設してなり、前記被固定部材に磁力吸着部材により、吸着固定される本体部材と、からなり、
前記ねじ締結手段で被固定部材を締結固定した状態で前記係合部を前記雄ねじ部材または前記雌ねじ部材に係合させ、且つ
前記磁気感応スイッチと前記磁石とが対向する初期位置で前記本体部材を前記被固定部材に前記磁力吸着部材を介して配置固定した状態において、前記ねじ締結手段が緩んで前記回動部材が回動し、前記磁石が前記磁気感応スイッチに対し前記初期位置から、所定角度回動して磁気感応スイッチが切換動作することをもって、ねじの緩み状態を検知するように構成したので、
既設の被固定部材やねじ締結手段を取り外したり、追加の加工処理を施したりする必要が一切なく、現状を保存した状態で設置が可能であるため、設置工事は不要で、被固定部材に磁力吸着手段により簡易、迅速に且つ安定的に設置作業を行うことができ、また、ねじ締結手段の緩み状態を長期に亘って、安定的に検知可能であり、加工費並びに設置工事費が極めて低廉で行えると共に、構造上メンテナンスも不要であり、屋外使用にも耐える耐環境性に優れたねじ緩み検知装置を提供することができる。
また、本発明によれば、請求項1〜16のいずれか1項に記載のねじ緩み検知装置を複数個所のねじ締結手段にそれぞれ設置し、
前記ねじ緩み検知装置に含まれる前記磁気感応スイッチとして、
共通端子と、その共通端子に一端が接続された可動切片と、前記磁石が接近したとき前記可動切片が接触する第1の接点と、
前記第1の接点に一端が接続された一定の抵抗値を持つ抵抗体との直列回路からなる検知ラインと、
前記磁石が離間したとき前記可動切片が接触する第2の接点に接続された短絡ラインと、からなる磁気検知回路を備え、
前記複数の前記磁気検知回路の検知ライン同士と、短絡ライン同士を順に接続し、前記複数の磁気検知回路の終端同士を短絡し、前記磁気検知回路の基端において抵抗値の測定をすることにより、緩んだ状態にあるねじ締結手段を特定し得るように構成したので、本発明のねじ緩み検知装置のもたらす効果を享有することができ、延いては、低コストで同時多点の緩み検知が可能となり、特に、ねじの緩みを検知したいときだけに磁気検知回路に電気を供給することで、緩みを生じたねじ締結手段の個所を特定することができるため、節電効果に優れ、ねじ締結手段の緩みによる事故を未然に防止し得るねじ緩み監視システムを提供することができる。
本発明の第1の実施の形態に係るねじ緩み検知装置の外観構成を示す背面図である。 図1に示すねじ緩み検知装置の断面構成を示す中央縦断面図である。 図1に示すねじ緩み検知装置を底面から見た底面図である。 本発明の第1の実施の形態に係るねじ緩み検知装置を斜め上方から見た状態の斜視図である。 図4の斜視図に示すねじ緩み検知装置を分解して示す分解斜視図である。 本発明の一部を構成するリードスイッチと、そのリードスイッチの出力を導出するケーブル等を保持するホルダユニットの構成を示す断面図である。 本発明の一部を構成する磁力吸着部材であるマグネットの一例であるキャップ磁石の原理的構成を模式的に示す断面図である。 被固定部材としての構造物にねじ締結手段によって締結された状態を検知するために、本発明に係るねじ緩み検知装置を、ねじ締結手段である六角ボルトに係合する直前の状態を説明するための斜視図である。 本発明に係るねじ緩み検知装置が、構造物を締結したねじ締結手段に設置された状態を示す斜視図である。 図9のねじ緩み検知装置の設置状態の断面構成を示す断面図である。 本発明の第2の実施の形態に係るねじ緩み検知装置であって、ねじ締結手段が六角穴付きボルトである場合に適用可能なるように構成したもので、(a)は、正面側から見た斜視図、(b)は、背面側から見た斜視図である。 本発明の第3の実施の形態に係るねじ緩み検知装置であって、ねじ締結手段が、四角ナットまたは四角ボルトである場合に適用可能なように構成したねじ緩み検知装置を示すもので、(a)は、正面側から見た斜視図、(b)は、背面側から見た斜視図である。 本発明の第4の実施の形態に係るねじ緩み検知装置であって、本体部材を細幅の四角形状に変形したもので、(a)は、正面側から見た斜視図、(b)は、背面側から見た斜視図である。 図11に示す第2の実施の形態に係るねじ緩み検知装置に組み込まれている回動部材の外観構成を示すもので、(a)は、上方から見た斜視図、(b)は、下方から見た斜視図である。 本発明の第5の実施の形態に係るねじ緩み検知装置の磁気感応スイッチを用いた磁気検知回路の構成示す回路図である。 本発明の第6の実施の形態に係るねじ緩み監視システムの回路構成を示す回路図である。
以下、本発明の実施の形態に基づき図面を参照して本発明に係るねじ緩み検知装置およびそのねじ緩み検知装置を備えたねじ緩み監視システムを詳細に説明する。
図1〜図10は、本発明の第1の実施の形態に係るねじ緩み検知装置に関するものである。
このうち、図1は、本発明の第1の実施の形態に係るねじ緩み検知装置の外観構成を示す背面図であり、図2は、図1のねじ緩み検知装置の断面構成を示す中央縦断面図であり、図3は、図1のねじ緩み検知装置の外観構成を示す底面図である。
図4は、本発明の第1の実施の形態に係るねじ緩み検知装置を正面側から見た状態の斜視図である。
図5は、図4の斜視図に示すねじ緩み検知装置を分解して示す分解斜視図である。
図6は、本発明の一部を構成するリードスイッチと、そのリードスイッチの出力を導出するケーブル等を保持するホルダユニットの構成を示す断面図である。
図7は、本発明の一部を構成する磁力吸着部材であるマグネットの一例であるキャップ磁石の原理的構成を模式的に示す断面図である。
図8は、被固定部材としての構造物にねじ締結手段によって締結された状態を検知するために、本発明に係るねじ緩み検知装置を、ねじ締結手段である六角ボルトに係合する直前の状態を説明するための斜視図である。
図9は、本発明に係るねじ緩み検知装置が、構造物を締結したねじ締結手段に設置された状態を示す斜視図である。
図10は、図9のねじ緩み検知装置が設置された状態の断面構成を示す断面図である。
図1〜図10において、1は、本体部材であり、外観形状は、ほぼ円板状を呈し底部(図1の下部)が、円弧状の部分が削成されてなり、平面状の削成部1aに、後述するホルダユニットが結合される。本体部材1の中央部には、後述する回動部材が嵌合する、背面側から正面側に向かい途中に至る迄の大径の溝穴1bが形成され、その大径の溝穴1bより小径の貫通孔1cが形成されている。
また、本体部材1の外周近傍には、等間隔(120度角度間隔)で、後述する磁力吸着部材としてのマグネットを取り付けるための雌ねじ穴1dおよび凹陥部1eが形成されている。
また、背面側から正面側に貫通する雌ねじ穴1fが形成されている。
また、本体部材1の背面側には、上記大径の穴1bよりわずかに大径の凹陥溝1gが形成され、この凹陥溝1gは、後述する止め輪が嵌合するようになっている。
2は、上記本体部材1の溝穴1bに嵌合し、回動可能に保持される回動部材である。
この回動部材2の中心部には、背面側から正面側に貫通する六角形状穴2aが形成されており、この六角形状穴2aは、後述するねじ締結手段としての雄ねじ部材または雌ねじ部材、即ち、六角ボルトの頭部または六角ナットに係合し、これら六角ボルトや六角ナットと共に回動するものである。
この回動部材2は、図2に示すように、本体部材1の上記溝穴1bの底部まで嵌入し、背面側(図2の左側)から抜け止めのためのリング状の止め輪3を圧入または嵌入した状態で接着剤等で固定することにより溝穴1b内で軽く回動可能に組み付けられる。
この回動部材2の周縁近傍に形成された凹陥部には、磁石4が埋め込まれ、接着剤により固定されている。
本体部材1の背面側(図2において左側)には、120°の等角度間隔位置に形成された3つの凹陥部1eに嵌合するように、3個の磁力吸着部材5としての磁石が止めねじ6を雌ねじ穴1dにねじ込むことにより固定されている。
また、本体部材1の上記磁力吸着部材5の近傍に正面側から背面側に貫通する雌ねじ穴1fに螺合する離脱部材としての蝶ボルト7が設けられている。この蝶ボルト7は、ねじ緩み検知装置が強力な磁力吸着部材5によって吸着保持されているため、簡単には離脱させることが困難であるため、取り外す場合には、蝶ボルト7を手指をもって回して、1つの磁力吸着部材5を、被固定部材12としての構造物(図8〜図10参照)から離間させ、その後、本体部材1を斜め方向に倒すようにして、他の磁力吸着部材5としての磁石から引き離すことにより、容易に取り外すことができる。
次に、図2〜図5を参照して、磁気感応スイッチとしてのリードスイッチ14とそのリードスイッチ14の出力を外部に導出するケーブル15を保持するホルダユニット13について説明する。
ホルダユニット13は、図5および図6に詳しく示すように構成され、その一部を構成する、ホルダ本体16には、2つの貫通孔16a、16aが形成されており、本体部材1の削成部1aに形成された雌ねじ穴1hに2本の取付ねじ17を、上記貫通孔16aを挿通して、ねじ込むことにより、ホルダ本体16を本体部材1に装着する。
ホルダ本体16には、基板18と基板18上にリードスイッチ14が搭載されており、リードスイッチ14の周囲を取り囲むように、スイッチカバー19およびOリング20が設けられている。
このため、ホルダ本体16と本体部材1の削成部1aとの間にOリング20を介挿させた状態で2本の取付ねじ17を、貫通孔16aを挿通し、削成部1aの2つの雌ねじ穴1hにねじ込むことにより、ホルダ本体16を本体部材1に対し、水密的に結合させることができ、リードスイッチ14や基板18等の電気部品は、湿気から保護され、従って、屋外における使用も可能としている。
また、ホルダ本体16には、リードスイッチ14の信号を導出するためのケーブル15が基板18の回路部品に電気的に接続された状態でモールド剤22が充填固化されて、防水処理され、且つケーブル15の基端側には、熱収縮性チューブ23によって、ホルダ本体16とケーブル15との間の防水が図られている。
ここで、本発明に係る第1の実施の形態にねじ緩み検知装置に用いられている磁力吸着部材の一例として、図7に示すキャップ磁石の断面図を用いて説明する。
図7において、キャップ磁石8は、磁石本体9の三方を鉄10で囲んでなり、上面を向いている磁石本体9の磁石面と、外周の鉄10との間に磁力線が集中するため、ヨーク(鉄材)と接触させると、磁石単体の場合より吸着力が(同種・同サイズにおいて)3〜4倍になる。
従って、このキャップ磁石8を用いることにより、ねじ緩み検知装置を鉄材からなる構造物に強固に且つ長期に亘って安定に保持することができる。
次に、上記のような構成よりなるねじ緩み検知装置を、被固定部材12、例えば、鉄橋などの構造物同士をボルトやナットなどのねじ締結手段11によって締結されている現場において、図8に示すように、ねじ緩み検知装置の回動部材2の六角形状穴2aを、ねじ締結手段11の、例えばボルトの頭に図8に示す直前の状態から図9、図10に示す状態に係合(嵌合)させる。
次に、回動部材2側に表示された指標2bに、固定部材1側に表示された指標1iを合わせて、本体部材1を磁力吸着部材5により固定し、設置を終える。ケーブルの配線作業は、後述する。
尚、ねじ締結手段11の形状、大きさ、構成によって、それぞれ対応するように、複数の回動部材を用意しておくものとする。
例えば、図11(a)、(b)および図14(a)、(b)に示す第2の実施の形態のように、ねじ締結手段が六角穴付きボルトにも適用可能となるように、中心部に、六角柱形の係合突部2cを設けてなる回動部材2′を製作しておくことが望ましい。
また、ねじ締結手段11として、四角形状のボルトまたはナットである場合には、図12に第3の実施の形態として示すように、回動部材2′′に、四角形の形をした係合穴2dを設ければよい。
また、本体部材1として、第1〜第3の実施の形態においては、円板状のものとしたが、図13の第4の実施の形態に示すように、細幅の四角板状に変更してもよい。
図15は、本発明の第5の実施の形態に係るねじ緩み検知装置の磁気感応スイッチを用いた磁気検知回路の構成を示す回路図である。
図16は、本発明の第6の実施の形態に係るねじ緩み監視システムの回路構成を示す回路図であり、本発明のねじ緩み検知装置に用いられる磁気感応スイッチは、例えば、リードスイッチ14を用いることができる。
リードスイッチ14は、強磁性体であるリードがある接点間隔を持って相対し、不活性ガスとしての窒素ガスと共にガラス管の中に封止されてなる。
このリードスイッチ14にリードの軸方向に磁界を外部から加えると、リードが磁化され、相対した自由端が互いに吸引し合い、接触して回路を閉ざすことができる。また、磁界を消去すれば、リードの弾性により回路を開くことができるように構成されている。
図15において、R、W、B、Gは、本来は配線の色である赤、白、青、緑を意味するものであるが、ここでは、Rは測定端子(+)、Wは、測定端子(−)、Bは、短絡ラインの延長端子、Gは、検知ラインの延長端子とする。そして、図15の中において、Cは、磁気感応スイッチとしてのリードスイッチ14の共通端子、SWは、リードスイッチ24の可動切片、NCは、リードスイッチ24に磁石が接近したとき可動切片SWが接触する第1の接点、NOは、リードスイッチ24から磁石が離間したとき可動切片SWが接触する第2の接点、Rcは、一定の抵抗値を持つ抵抗体である。
即ち、測定端子(+)R→共通端子C→可動切片SW→第1の接点NC→固定抵抗体Rc→延長端子Gの経路を検知ラインと称することとする。
また、測定端子(−)W、→第2の接点NO→延長端子Bの経路を短絡ラインと称することとする。
そして、このように回路構成された回路を磁気検知回路25と称することとする。
複数のねじ緩み検知装置を複数個(例えばn個)設置した場合には、複数の磁気検知回路25、25、・・・25を順次にそれぞれの延長端子G、Bと測定端子R、Wを介して直列状に接続する。
複数の磁気検知ライン同士と、短絡ライン同士を順に接続し、複数の検知回路25、25〜25の終端の延長端子G、B同士を短絡し、磁気検知回路25の基端において、抵抗値の測定をすることにより、緩んだ状態にあるねじ締結手段を特定することができる。
例えば、各磁気検知回路25に組み込まれる抵抗体Rcの抵抗値を1kΩとしたとき、測定端子(+)Rと測定端子(−)Wとの間の抵抗値が0Ωである場合は、第1の磁気検知回路25における可動切片SWが第2の接点NOと接触したことになるので、第1の磁気検知回路25を持つ第1番目のねじ締結手段が緩んでいることが特定される。
また、例えば、測定端子(+)Rと測定端子(−)Wとの間の抵抗値が1kΩであったとすると、第2番目の検知回路25の可動切片SWが、第2の接点NOに接触したこととなり、第2番目の検知回路を持つ2番目のねじ緩み検知装置によって、2番目のねじ締結手段が緩んだことが特定されることになる。
このことから、測定端子(+)Rと、測定端子(−)Wとの間の抵抗値が、MkΩだったとしたら、(M+1)番目の磁気検知回路の可動切片SWが、第2の接点NOに接触したこととなり、結局(M+1)番のねじ締結手段で緩んだことが判明する。
但し、複数の磁気検知回路が同時に緩み状態を検知した場合には、最も基端側に近いねじ緩み検知装置が緩みを判定したことになるので、当該個所を確認の上、その次に、基端から遠い個所のねじの緩みを順に確認すればよい。
以上詳しく説明したように、本発明によれば、既設の被固定部材12やねじ締結手段11を取り外したり、追加の加工処理を施したりする必要がなく、現状を維持した状態で設置が可能であるため、設置工事は不要で、被固定部材12に磁力吸着手段5により、簡易、迅速に且つ安定的に設置作業を行うことができ、ねじ締結手段11の緩み状態を長期に亘って安定的に検知可能であり、加工費、設置費用が極めて低廉に行えると共に、構造上、メンテナンスも不要であり、屋外使用にも耐える耐環境性に優れ、ボルトやナットなどのねじ締結手段の回転方向の緩みを確実に検出することで、大きな事故を未然に防止し得る効果は甚大である。
また、本発明によれば、ねじ緩み検知装置を複数個所のねじ締結手段11にそれぞれ設置し、
前記ねじ緩み検装置に含まれる前記磁気感応スイッチであるリードスイッチ24として、
共通端子Cと、その共通端子Cに一端が接続された可動切片SWと、前記磁石4が接近したとき前記可動切片SWが接触する第1の接点NCと、
前記第1の接点NCに一端が接続された一定の抵抗値を持つ抵抗体Rcとの直列回路からなる検知ラインと、
前記磁石4が離間したとき前記可動切片SWが接触する第2の接点NOに接続された短絡ラインと、からなる磁気検知回路25を備え、
前記複数の前記検知回路25、25、・・・25の検知ライン同士と、短絡ライン同士を順に接続し、前記複数の検知回路25の終端同士を短絡し、前記磁気検知回路25の基端において抵抗値を測定することにより、緩んだ状態にあるねじ締結手段11を特定し得るように構成したので、本発明のねじ緩み検知装置のもたらす効果を享有することができ、延いては、低コストで同時多点の緩み検知が可能となり、特に、ねじの緩みを検知する時に限り前記磁気検知回路の基端に電気を供給することで、緩みを生じたねじ締結手段の個所を特定することができるため、節電効果に優れ、ねじ締結手段の緩みによる事故を未然に防止し得るねじ緩み監視システムを提供することができる。
尚、本発明は、上述し且つ図面に示した実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施することができる。
例えば、磁力吸着部材として、3個のマグネットからなり、本体部材の裏面側に配設した実施の形態を示したが、1個の円環状(即ち、一定幅のリング状)を呈するマグネットであってもよく、この円環状のマグネットを回動部材の外側を囲む(囲繞する)ように本体部材の裏側に配設するようにしてもよい。
また、磁力吸着部材は、2個の円弧状または矩形状を呈するマグネットであってもよく、この2個の円弧状または矩形状のマグネットを回動部材の外側を囲むように、本体部材の裏側に対称的(180°間隔)に配設するようにしてもよい。
また、離脱部材は、本体部材の表面側から裏面側に貫通する雌ねじ穴に螺合する蝶ボルトの例を示したが、普通のボルトであってもよいし、吊ボルトのようなボルトであってもよい。
また、係合部は、上述したところでは、ボルトの頭部が六角形および四角形を呈するものに係合し得るように形成されてなるものにつき示したが、これら以外の多角形を呈するものにも当然に適用することができる。
また、係合部は、六角穴付きボルトの当該六角穴に係合し得るように形成してなるものにつき示したが、三角穴付きボルトに係合し得るものであってもよく、要は、多角穴付きボルトであれば、それに対応するような形状とすればよい。
1 本体部材
1a 削成部
1b 溝穴
1c 貫通孔
1d 雌ねじ穴
1f 雌ねじ穴
1g 凹陥部
1h 雌ねじ穴
1i 本体部1側の指標
2、2′、2″ 回動部材
2a 六角形状穴
2b 回動部材2側の指標
2c 六角柱形の係合突部
3 止め輪
4 磁石
5 磁力吸着部材
6 止めねじ
7 蝶ボルト
8 キャップ磁石
10 鉄
11 ねじ締結手段
12 被固定部材
13 ホルダユニット
14 リードスイッチ
15 ケーブル
16 ホルダ本
6a 貫通孔
17 取付ねじ
18 基板
19 スイッチカバー
20 Oリング
22 モールド剤
23 熱収縮性チューブ
25 磁気検知回路
25〜25 第1〜第の磁気検知回路
SW 可動切片

Claims (17)

  1. 被固定部材を固定する雄ねじ部材と雌ねじ部材からなるねじ締結手段の緩み状態を検知するねじ緩み検知装置において、
    前記雄ねじ部材または前記雌ねじ部材に係合する係合部を有し、周辺近くの一部に磁石を配設してなる回動部材と、
    前記回動部材を回動可能に支持すると共に、前記磁石の回動範囲に近接して磁気感応スイッチを配設してなり、前記被固定部材に磁力吸着部材により、吸着固定される本体部材と、からなり、
    前記ねじ締結手段で被固定部材を締結固定した状態で前記係合部を前記雄ねじ部材または前記雌ねじ部材に係合させ、且つ
    前記磁気感応スイッチと前記磁石とが対向する初期位置で前記本体部材を前記被固定部材に前記磁力吸着部材を介して配置固定した状態において、前記ねじ締結手段が緩んで前記回動部材が回動し、前記磁石が前記磁気感応スイッチに対し前記初期位置から、所定角度回動して磁気感応スイッチが切換動作することをもって、ねじの緩み状態を検知することを特徴とするねじ緩み検知装置。
  2. 前記磁力吸着部材は、少なくとも1個以上のマグネットからなり、前記本体部材の裏面側に配設してなることを特徴とする請求項1に記載のねじ緩み検知装置。
  3. 前記磁力吸着部材は、1個の円環状を呈するマグネットからなり、前記回動部材の外側を囲むように前記本体部材の裏側に配設してなることを特徴とする請求項1または2に記載のねじ緩み検知装置。
  4. 前記磁力吸着部材は、2個の円弧状または矩形状を呈するマグネットからなり、前記回動部材の外側を囲むように前記本体部材の裏側に対称的に配設してなることを特徴とする請求項1または2に記載のねじ緩み検知装置。
  5. 前記磁力吸着部材は、3個のマグネットからなり、前記本体部材の裏側に等角度間隔で配置されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のねじ緩み検知装置。
  6. 前記被固定部材に前記本体部材が吸着固定された状態から、前記本体部材を離脱させる離脱部材を、前記本体部材に設けたことを特徴とする請求項1に記載のねじ緩み検知装置。
  7. 前記離脱部材は、前記本体部材の表面側から裏面側に貫通する雌ねじ穴に螺合するボルトであり、前記ボルトを前記本体部材の裏面側に突出させることで、前記本体部材を前記被固定部材から、離反させるように構成したことを特徴とする請求項6に記載のねじ緩み検知装置。
  8. 前記離脱部材の前記雌ねじ穴に螺合する前記ボルトは、蝶ボルトであることを特徴とする請求項7に記載のねじ緩み検知装置。
  9. 前記回動部材の係合部は、前記ねじ締結手段の雄ねじ部材としてのボルトの頭部または雌ねじ部材としてのナットに係合し共に回動し得る形状に形成してなることを特徴とする請求項1に記載のねじ緩み検知装置。
  10. 前記係合部は、前記ボルトの頭部またはナットが、多角形を呈するものに係合し得るように形成されてなることを特徴とする請求項9に記載のねじ緩み検知装置。
  11. 前記係合部は、ボルトの頭部またはナットが四角形若しくは六角形を呈するものに係合し得るように形成されてなることを特徴とする請求項9または10に記載のねじ緩み検知装置。
  12. 前記係合部は、多角穴付きボルトの当該多角穴に係合し得るように形成されてなることを特徴とする請求項5に記載のねじ緩み検知装置。
  13. 前記係合部は、六角穴付きボルトまたは三角穴付きボルトの六角穴または三角穴に係合し得るように形成されてなることを特徴とする請求項12に記載のねじ緩み検知装置。
  14. 前記磁気感応スイッチは、リードスイッチであることを特徴とする請求項1に記載のねじ緩み検知装置。
  15. 前記リードスイッチは、共通端子と、一端が前記共通端子に接続された可動切片と、前記磁石が近接したとき接触する側の第1の接点と、前記磁石が離間したとき、前記可動切片が接触する第2の接点とを備えてなることを特徴とする請求項14に記載のねじ緩み検知装置。
  16. 前記リードスイッチと前記リードスイッチの出力を外部に導出するケーブルを保持するホルダユニットは、その基部が前記本体部材に水密部材を介して接合され、さらに前記ケーブルの基部と前記ホルダユニットは、水密部材により防水構造となっていることを特徴とする請求項14または15に記載のねじ緩み検知装置。
  17. 請求項1〜16のいずれか1項に記載のねじ緩み検知装置を複数個所のねじ締結手段にそれぞれ設置し、
    前記ねじ緩み検装置に含まれる前記磁気感応スイッチとして、
    共通端子と、その共通端子に一端が接続された可動切片と、前記磁石が接近したとき前記可動切片が接触する第1の接点と、
    前記第1の接点に一端が接続された一定の抵抗値を持つ抵抗体との直列回路からなる検知ラインと、
    前記磁石が離間したとき前記可動切片が接触する第2の接点に接続された短絡ラインと、からなる磁気検知回路を備え、
    前記複数の前記磁気検知回路の検知ライン同士と、短絡ライン同士を順に接続し、前記複数の磁気検知回路の終端同士を短絡し、前記磁気検知回路の基端において抵抗値の測定をすることにより、緩んだ状態にあるねじ締結手段を特定し得るように構成したことを特徴とするねじ緩み監視システム。
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