JP6304801B2 - 水共存下での重質炭化水素の接触分解方法 - Google Patents

水共存下での重質炭化水素の接触分解方法 Download PDF

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Description

本発明は、水の共存下、金属酸化物触媒を用いて、重質炭化水素を含む有機化合物を接触分解反応させるための方法に関する。より詳細には、本発明は、水熱条件下にて、金属酸化物の酸化還元反応を利用して、重質炭化水素を含む有機化合物を接触分解反応させる方法、及びそのための装置に関する。
カナダのオイルサンドビチュメンに代表される重質油は、代替的な石油資源である。しかし、これらの重質油は、しばしば、高い密度、低い水素/炭素比を有し、高い炭素残留物、大量のアスファルテン、大量のヘテロ原子(硫黄と窒素)及びかなりの重金属含量(V、Ni、Crなど)を含有する。このような重質油は、コーキング又は接触水素転化のいずれかの手段で一次的に改質することによって、後続の蒸留工程に供される液体製品へ転化することが可能であるが、いずれの手段もコークスの形成を伴うため実施が困難である。水素化分解から得られる水素ガスを反応系内に導入し、好ましくは水素化触媒の存在下で製造物を軽質化することによって、コークス形成を減じることができる。しかし、多くの水素がメタンのスチームクラッキング(炭化水素と水とのガス化反応)に由来するため、水素製造は割高な費用を要する。従って、水素ガス形成の新しいプロセスが必要とされる。
そこで、炭化水素(C)と水(HO)とを反応させることで、重質化及びコークス化を避けつつ、同時に、軽質な炭化水素生成物を得ることが可能であるとのスキームが提案されている。この望ましい反応スキームでは、炭化水素及び水の反応による水素生成と、この水素による生成物の軽質化とがin−situで同時に進行することが期待される。
しかし、そのような反応スキームを有効に機能させるための触媒は開発されていない。例えば、特開2010−144094号公報には、褐炭からタールを得て、このタールを水蒸気雰囲気下で鉄系触媒存在下にて接触分解して炭化水素油を得る方法が開示されている。しかし、この方法に用いられる触媒は、金属酸化物の酸化還元を介して機能するものではない。さらに、この方法では、原料が褐炭に特定されているうえに、二段階法であるゆえに効率が劣っており、しかも水蒸気雰囲気下での反応に限定されていることから、工業的な活用は現実的ではない。
一方、超臨界水(Supercritical Water:SCW)中でのビチュメンの改質について、いくつかの報告がされている。超臨界水中でも、ビチュメンが温度及び圧力に依存する2つ以上の相を形成することを明らかにされている(Kishita, A. et al., Upgrading of bitumen by hydrothermal visbreaking in supercritical water with alkali, J. Jpn. Pet. Inst. 2003, 46, 215−221)。また、超臨界水の存在下でのビチュメンの改質が、超臨界水の非存在下での反応よりも高いオレフィン収率で進行したことが報告されている(Morimoto, M. et al., Effect of supercritical water on upgrading reaction of oil sand bitumen, J. Supercrit. Fluids 2010, 55, 223−231)。この場合、重質分は、超臨界水中に高度に分散し、分子内脱水素を経てオレフィンに転化されたと考えられる。しかし、これらの文献では、上記の望ましい反応スキームにおける水素源として水を用いることは、示唆されていない。
また、大気圧下、スチーム中の重質油の酸化的分解のために酸化鉄触媒を適用することで、コークス形成が抑制され、スチームから活性酸素種が生成することが報告されている(Fumoto,E. et al., Production of light oil by oxidative cracking of oil sand bitumen using iron oxide catalysts in steam atmosphere, Energy Fuels 2011, 25, 524−7)。ここでは、連続的な酸化を引き起こすための酸素供給源として水が機能していると考えられる。しかし、この報告でも水素化の証拠は得られていない。
特開2010−144094号公報
Kishita, A. et al., Upgrading of bitumen by hydrothermal visbreaking in supercritical water with alkali, J. Jpn. Pet. Inst. 2003, 46, 215−221 Morimoto, M. et al., Effect of supercritical water on upgrading reaction of oil sand bitumen, J. Supercrit. Fluids 2010, 55, 223−231 Fumoto,E. et al., Production of light oil by oxidative cracking of oil sand bitumen using iron oxide catalysts in steam atmosphere, Energy Fuels 2011, 25, 524−7
従って、本発明の課題は、炭化水素及び水の反応による水素生成と、この水素による生成物の軽質化とがin−situで同時に進行することを可能とする触媒の存在下にて、重質炭化水素を接触分解する方法、並びにそのための装置を提供することである。
本発明者は、自動車排気システム(貴金属触媒の触媒性能を最大限にするために酸素濃度を維持する必要がある)での三元触媒が奏する機能に、上記課題を解決するための着想を得た。自動車排気システムにおいて、三元触媒は、NO→N(還元);CO→CO(酸化);CH→CO+HO(酸化)の諸反応のために有効に作用する。三元触媒として使用されるセリア(CeO)触媒は、レドックス(酸化還元)サイクルを経て酸素を吸収しリリースする高い能力(酸素モビリティーとも言える)を有するが故に、酸化反応及び還元反応の両方に関与することが可能である。酸素を吸収しリリースする金属酸化物触媒の能力は、酸素吸蔵放出能(OSC)と称される。
この着想に基づいて、本発明者は、水熱条件下での重質炭化水素の接触分解反応に所定の酸素吸蔵放出能(OSC)を有する金属酸化物触媒を適用することにより、金属イオンの酸化還元を通じて、同一反応系内にて同時進行的に、水からの水素及び有機化合物からの酸化分解生成物が形成され、更にこの酸化分解生成物が水素化されて水素化生成物が形成されることを見出し、本発明を完成させた。
上記課題を解決するための本発明の構成は、以下のとおりである。
[1]
水熱条件下にて、金属酸化物触媒を用いて、重質炭化水素を含む有機化合物を接触分解反応させるための方法であって、
この接触分解反応が、前記金属酸化物触媒の金属イオンの酸化還元を通じて行われ、
(i)還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を水によって酸化して、酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒及び水素を生成すること、
(ii)前記有機化合物を酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒によって酸化して、酸化分解生成物及び還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を生成すること、並びに
(iii)前記酸化分解生成物を、前記(i)によって生じた水素により水素化して、水素化生成物を形成することを含み、
これら(i)〜(iii)の諸工程が、同一反応系内にて同時に進行し、全体としては水及び前記有機化合物から水素、前記酸化分解生成物及び前記水素化生成物が得られ、
前記金属酸化物触媒が、250〜500℃にて1μmol−O/g−cat以上である酸素吸蔵放出能(OSC)を有する上記方法。
[2]
前記接触分解反応が超臨界水中にて行われることを特徴とする上記[1]項に記載の方法。
[3]
前記重質炭化水素が、マルテン及びアスファルテンを含むビチュメンを含むことを特徴とする上記[1]又は[2]項に記載の方法。
[4]
前記金属酸化物触媒が、酸化セリウム(CeO)、酸化インジウム(In)、酸化鉄(Fe)、イットリウム安定化酸化ジルコニウム(YSZ)、酸化バナジウム(V)、酸化コバルト(CoO)、Scドープ酸化ジルコニウム(ScSZ)、酸化ランタンガリウム(LaGaO)、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)、ガドリニウムドープ酸化セリウム(GDC)、及びセリア・ジルコニア固溶体からなる群から選択されることを特徴とする上記[1]〜[3]項のいずれか1項に記載の方法。
[5]
前記金属酸化物触媒が、CeO触媒を含むことを特徴とする上記[4]項に記載の方法。
[6]
前記CeO触媒が、八面体CeO触媒及び立方体CeO触媒から選択される少なくとも1種であることを特徴とする上記[5]項に記載の方法。
[7]
前記立方体CeO触媒が、Ce(OH)及び有機改質剤を超臨界水と接触させ、次いでこれをか焼することによって製造されるものであることを特徴とする上記[6]項に記載の方法。
[8]
飽和炭化水素のモル収量の不飽和炭化水素モル収量に対する比が、無触媒下での分解反応におけるそれより大きいことを特徴とする上記[1]〜[7]項のいずれか1項に記載の方法。
[9]
アルカン(メタンを除く)のモル収量のアルケンのモル収量に対する比が無触媒下での分解反応におけるそれより大きいことを特徴とする上記[8]項に記載の方法。
[10]
水熱条件下にて、金属酸化物触媒を用いて、重質炭化水素を含む有機化合物を接触分解反応させるため装置であって、
この接触分解反応装置は、反応原料である有機化合物及び水の各導入口、金属酸化物触媒を含む反応触媒層を有する接触反応器、並びに、反応生成物である酸化分解生成物、この酸化分解生成物から生じた水素化生成物及び水素の各排出口を含み、
前記接触反応器では、接触分解反応が、前記金属酸化物触媒の金属イオンの酸化還元を通じて行われ、
この接触分解反応が、(i)還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を水によって酸化して、酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒及び水素を生成すること、(ii)前記有機化合物を酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒によって酸化して、酸化分解生成物及び還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を生成すること、並びに(iii)前記酸化分解生成物を、前記(i)によって生じた水素により水素化して、水素化生成物を形成することを含み、
これら(i)〜(iii)の諸工程が、同一反応系内にて同時に進行し、全体としては水及び前記有機化合物から水素、前記酸化分解生成物及び前記水素化生成物が得られ、
前記金属酸化物触媒が、250〜500℃にて1μmol−O/g−cat以上である酸素吸蔵放出能(OSC)を有する、
接触分解反応装置。
[11]
上記[10]項に記載の装置を含むシステムであって、
前記接触反応器の出口において、冷却後、水素ガスを含むガス状生成物と生成物混合溶液とを分離するための分離槽を備え、さらにこのガス状生成物の回収槽とこの生成物混合溶液の回収槽をそれぞれ備え、かつ、前記ガス状生成物及び前記生成物混合溶液のうち多い方の生成流通量に基づいて、前記分離槽から前記回収槽への生成物取り出しのための圧力制御を行うシステム。
本発明によれば、炭化水素及び水の反応による水素生成と、この水素による生成物の軽質化とをin−situで同時に進行させることができる。従って、従来技術において、炭化水素と水とのガス化反応によって水素を形成し、次いで炭化水素の分解反応系内にこの水素ガスを導入することによって製造物を軽質化する場合と比べて、要するコストを抑制しつつ、効率的にコークス形成を減じることができる。
また、本発明によれば、水を起源とする十分な量の水素が得られるため、新たなエネルギー源の創設に貢献できる。加えて、比較的低温かつ短時間の反応により、目的生成物を得ることができるため、反応に要するコストを一層抑制することができる。さらに、本発明によれば、生成物中のメタンガスの割合を下げることで、環境負荷の低減を図ることができる。そして、本発明は、利用することが困難であると言われてきたビチュメン等の重質炭化水素を、エネルギー資源として有効活用することに資する。
本発明を非限定的に例証するための図面の説明は、以下のとおりである。
生成されたCeOナノ粒子のXRDパターンを示す図である。 生成されたCeOナノ粒子の形態を示す図である。 生成された立方体CeOナノ粒子のFTIRスペクトルを示す図である。 実施例1において、ビチュメンが723K(450℃)でCeO触媒を用いて分解されたときのアスファルテン及びマルテン生成物の分布を示す。 実施例1において、八面体及び立方体のCeO触媒について触媒量を変化させた場合のアスファルテン及びコークス(coke)の収率を示したものである。 実施例1において、八面体及び立方体のCeO触媒を用いて接触分解反応を行った場合に回収された生成物油と1−メチルナフタレンの混合物の色変化を観察した様子を示す。 実施例2における所定の反応条件下でのコークス収率及びアスファルテン収率の結果を示す図である。 実施例2における所定の反応条件下での結果を視覚的に示す図である。 実施例3における所定の反応条件下での生成物のガス組成を示す図である。 本発明による接触反応装置を示す概略図である。 (a)は、参照例(触媒なし)、変形例のV触媒0.1g及び実施例4のV触媒1gの各々の場合におけるトルエンと混合された回収生成物の外観を示す図であり、(b)は、参照例(触媒なし)、実施例4のV触媒1g及び実施例4のCoO触媒1gの各々の場合におけるトルエンと混合された回収生成物の外観を示す図である。 (a)は、実施例4における反応前後のV触媒(コークスと混合されたもの)の外観を示す図であり、(b)は、実施例4における反応前後のCoO触媒(コークスと混合されたもの)の外観を示す図である。 参照例(触媒なし)、実施例4のCoO触媒1g、実施例4のV触媒1g及び変形例のV触媒0.1gのそれぞれの場合におけるアスファルテン転化率を示す図である。
本発明の反応において用いられる水は、超臨界水(SCW)であってもよいし、臨界前の水であってもよい。臨界前の水は、亜臨界水と称される状態の水を含む。臨界前の水である場合、液体状態の水(液相)、あるいは液相を主相として包含していることが好ましい。このような水熱条件下では、重質炭化水素と共に単一相を形成する能力を有し、また臨界点近傍では温度圧力によって溶媒効果(誘電率、水和構造形成にともなう反応平衡・速度に与える影響)を大幅に制御できる。本発明の反応により生成する水素ガスについても、亜臨界域では相分離するし、臨界点近傍において還元反応を大幅に制御できる。従って、本発明の反応には、亜臨界、超臨界水が好適に使用される。ガス相分離を考慮して亜臨界水を選択することもできる。
本発明による有機化合物の接触分解反応における「分解反応」とは、有機化合物が酸化的に分解され(構成分子が酸素原子と結合しつつより小さい分子に分裂又は開裂し)、酸化的に分解された有機化合物が次いで水素化されて、水素化生成物が得られるまでの反応を意味するものとする。また、複数の反応工程が「同時に進行する」とは、それらの諸工程が、逐次的に進行する(すなわち一つの工程が終了してから後続の工程が開始する)のではなく、ある期間に渡って諸工程が並行して行われることを意味するものとする。
本発明による「水熱条件」は、以下の反応温度を有する水共存条件として定義される。本発明の反応温度は、原料として用いられる重質炭化水素を含む有機化合物の構成に依り異なる温度を採用可能である。この反応温度は、特に限定されるものではないが、典型的には250℃以上500℃以下であってよく、好ましくは350℃以上450℃以下であってよい。
本発明の反応圧力は、特に限定されるものではないが、大気圧以上であり、50MPa以下であってよい。反応圧力は、より好ましくは5MPa以上であり、40MPa以下であってよい。
また、本発明の反応時間は、特に限定されるものではないが、例えば1分以上48時間以内であってよく、より一般的には5分以上24時間以内であってよく、より典型的には10分以上12時間以内であってよい。
本発明に使用される重質炭化水素は、特に限定されないが、例えば沸点343℃以上の成分を含有する炭化水素であってよく、通常、沸点343℃以上の成分を少なくとも50質量%以上含有するものである。ここでの炭化水素とは、飽和結合及び場合によって不飽和結合を有する炭化水素(C)の単数種又は複数種の混合物を意味する。このような重質炭化水素の例としては、各種原油(例えば、API度30以下の重質原油、API度30〜35の中質原油及びAPI度35以上の軽質原油)、各種原油の蒸留物である抜頭原油(ナフサ留分を除去した原油)、常圧残油、減圧残油、原油の常圧あるいは減圧蒸留で得られる軽油留分、これらの混合油、コーカー軽油、溶剤脱瀝油、溶剤脱瀝アスファルト、タールサンド油、シェールオイル、石炭液化油などの石油系炭化水素油が挙げられる。典型的な重質炭化水素として、極めて重質な炭化水素であるビチュメン(例えばマルテン、アスファルテンを含むもの)又は瀝青が使用されうる。これらの重質炭化水素油は、通常1質量%以上の硫黄分を含む。
本発明には、このような重質炭化水素を含む有機化合物が供給物として用いられる。この有機化合物の供給物における重質炭化水素の割合は、特に限定されないが、30質量%以上であってよく、通常50質量%以上、典型的には60質量%以上であり、より一般的には70質量%以上であってよい。また、有機化合物の供給物における重質炭化水素の割合は、100質量%であってもよい。有機化合物の供給物中の重質炭化水素以外の成分の例としては、特に限定されないが、流動接触分解装置から得られる重質および軽質分解軽油留分、リサイクル油、各種石油精製装置のスロップ油、ボトム油、石油化学プロセスのスロップ油、ボトム油、リサイクル油等の石油系成分が挙げられる。また、有機化合物の供給物中の重質炭化水素以外の成分は、アルデヒド(ホルムアルデヒド及び/アセトアルデヒド)、汚泥(スラッジ)、リグニン、プラスチックス廃棄物(企業及び/又は家庭からの産業廃棄物プラスチックス)、及びバイオマス廃棄物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。バイオマス廃棄物としては、例えば、紙、家畜糞尿、食品廃材、建築廃材、黒液、下水汚泥、生ごみ、稲藁、麦藁、籾殻、林地残材(間伐材・被害木など)、資源作物、飼料作物、デンプン系作物等が挙げられる。
本発明の接触分解反応は、金属酸化物触媒の酸化還元サイクルを利用する。理論に拘束されるものではないが、一例として金属酸化物触媒として酸化セリウム(CeO)を用い、供給物の有機化合物をある「重質油」とした場合、本発明の骨子となる反応スキームは以下のとおりであると考えられる。
工程(i)
O+Ce(還元状態Ce3+を有する酸素吸引性物質)
→ H+CeO(酸化状態Ce4+を有する酸素供与性物質)
工程(ii)
重質油+CeO(酸化状態Ce4+を有する酸素供与性物質)
→ R(酸化分解生成物)+Ce(還元状態Ce3+を有する酸素吸引性物質)
工程(iii)
R(酸化分解生成物)+H(工程(i)から生じた水素)
→ Rの水素化物(水素化生成物)
工程(i)〜(iii)のトータル
Ce(Ce3+) + 酸素(O) ←→ CeO(Ce4+
O+重質油 → H+R(酸化分解生成物)+Rの水素化物(水素化生成物)
このように、本発明による反応スキームによれば、金属酸化物触媒の酸化還元を通じて水を起源として水素が生成され(工程(i))、重質な炭化水素が酸化的に分解されて、酸化分解生成物が形成され(工程(ii))、これと同時に、酸化分解生成物が工程(i)から生じた水素で水素化される(工程(iii))。酸化分解生成物は、多様な化学構造の生成物群でありうるが、典型的にはオレフィンを含む。また、最終的な水素化生成物は、典型的にはアルカンを含む。
本発明に用いられる金属酸化物触媒は、250〜500℃にて酸素吸蔵放出能(OSC)が1μmol−O/g−cat(触媒1gあたりの酸素モル数)以上である限りは、特に限定されない。より好適には、250〜500℃にて酸素吸蔵放出能(OSC)が10μmol−O/g−cat(触媒1gあたりの酸素モル数)以上である。一般的に、金属酸化物の酸素吸蔵放出能(OSC)は、温度の上昇に伴って大きくなることが知られている。本発明に用いられる酸素吸蔵放出能(OSC)は、250〜500℃にて、より好ましくは15μmol−O/g−cat(触媒1gあたりの酸素モル数)以上であってよく、さらに好ましくは20μmol−O/g−cat(触媒1gあたりの酸素モル数)以上であってよく、より望ましくは50μmol−O/g−cat(触媒1gあたりの酸素モル数)以上であってよく、最も好ましくは100μmol−O/g−cat(触媒1gあたりの酸素モル数)以上であってよい。本発明の方法によれば、金属酸化物触媒が高い酸素吸蔵放出能を有し、従って大きな触媒活性を有することによって、水からの水素の発生、並びに酸化分解生成物の形成反応及びそれと同時に起こる水素化生成物の形成反応が促進される。その結果、水素化生成物であるアルカンの形成反応の反応速度が向上し、ひいては、より軽質な生成物の収率向上及びコークス収率減少という望ましい結果が得られうると考察される。すなわち、化学的に安定なアルカンの形成が促進されることによって、反応系においてコークス形成の副反応が効果的に抑制され、より軽質な生成物が優先的に得られることになる。
酸素吸蔵放出能(OSC)の測定方法は、公知の方法を用いてよいが、例えば以下のように測定することができる。ガス吸着装置を用い、触媒サンプルを測定セルにセットし、次いで所定の2次圧(常圧、あるいは1気圧以上3気圧以下程度)でHeガスを導入しながら触媒サンプルを250℃〜500℃の所定の温度まで昇温する。次に、HeガスにOガス5%を混合したO5%ガス/He95%混合ガス(キャリアガス)を導入し、このキャリアガス中にCO4%ガス/He96%混合ガスをパルスで導入し、MS(Mass Spectrometry: 質量分析法)で分析する。試料がOを吸収するとキャリアガス中のO量は減少する。減少が無くなるまでパルス導入を繰り返し行い、Oガスの減少量の総和を酸素吸蔵放出能とすることができる。後述の実施例では、サンプルを、1分毎にO5%ガス/He95%混合ガス(キャリアガス)及びCO4%ガス/He96%混合ガスに暴露させ前述の手法によって酸素吸蔵放出能(OSC)を測定した。
本発明に用いられる金属酸化物は、水溶液中の溶解度がある程度低いことが好ましい。金属酸化物の室温の水に対する溶解度は、一般的には10g/1kg以下であってよく、典型的には8g/1kg以下であってよく、好ましくは5g/1kg以下であってよい。
燃料電池の固体酸化物電解質として用いられる金属酸化物は、酸化還元反応に必要な酸素モビリティーを有することから、本発明においても利用可能である場合が多い。このような固体酸化物電解質の非限定的な例としては、酸化セリウム(CeO)、酸化インジウム(In)、酸化鉄(Fe)、イットリウム安定化酸化ジルコニウム(YSZ)、酸化バナジウム(V)、酸化コバルト(CoO)、Scドープ酸化ジルコニウム(ScSZ)、酸化ランタンガリウム(LaGaO)、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)、ガドリニウムドープ酸化セリウム(GDC)及びセリア・ジルコニア固溶体が挙げられる。これらの中でも、入手容易性及び所望の効果の発現の観点から、酸化セリウム(CeO)、イットリウム安定化酸化ジルコニウム(YSZ)及び酸化バナジウム(V)が好ましく、酸化セリウム(CeO)がより好ましい。酸化セリウム(CeO)は、高い酸素吸蔵放出能(OSC)又は酸素モビリティーを有するため自動車排気システムの三元触媒として用いられるものであり、本発明にも好適である。これらの金属酸化物触媒は、一種単独でも複数種を混合して用いてもよい。
金属酸化物触媒の粒径、形態は、特に限定されないが、反応物質との暴露表面積(接触可能性)の最大化、触媒機能発現の最良化の観点から、平均粒子径が数μm以下、特にナノ粒子触媒(平均粒子径がナノのオーダー(1μm未満)である触媒)であることが好ましい。その平均粒子径は、特に限定されるものではないが、その下限としては、一般的には2nm以上、より一般的には5nm以上、より典型的には10nm以上であってよい。またその上限としては、一般的には5μm以下、より一般的には1μm以下、典型的には500nm以下、より典型的には300nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下であってよい。また、金属酸化物触媒の形態は、球形又は擬似球形であってもよく、多面体形であってもよいが、とり得る粒子形態はその金属酸化物の種類及び製造条件に依存する。金属酸化物触媒の比表面積は、反応活性の観点から、5m/g以上かつ1000m/g以下であってよく、より一般的には10m/g以上かつ500m/g以下であってよく、典型的には20m/g以上かつ400m/g以下であってよく、好ましくは30m/g以上かつ300m/g以下であってよい。
CeOのナノ粒子触媒は、八面体又は立方体の形態をとりうる。また、このとき、CeOのナノ粒子触媒は、(111)面及び/又は(100)面を主な露出面として有する。CeOの(100)面は不安定であり、より大きな酸素貯蔵放出能(酸素移動性)を有し、それによってより高い触媒活性が得られる。従って、本発明においては、立方体形態のCeOナノ粒子触媒が好適に用いられる。
CeOのナノ構造について、6つの(100)面が低インデックスの結晶面の中でも最も大きな表面エネルギーを有することが明らかにされている。この高い表面エネルギーは、セリウムイオン間の架橋位置になる頂部層の酸素の不安定性に起因するものである。この酸素の不安定性によって、有機化合物の高い転化率が達成されると考えられる。立方体CeOの頂部層の酸素が、温度及び圧力に依存して放出される。この酸素は、反応物に移動し、これを酸化分解生成物へと分解することが可能である。4+価状態のCeは3+価状態のCeへと転化され、不安定になる。Ce3+によってセリア酸素の空位が発生し、この還元されたセリア表面にて形成された空位が水分子との反応を引き起こし、酸素と結合して4+価状態のCeになる。この放出された水素分子は、分解化合物へと移送されて、水素化反応を起こしうる。
本発明の反応方式は、バッチ方式であっても、連続式であってもよいが、連続式で行うのがより好ましい。また、本発明の反応は、少なくともラボスケールでは、プラグフロー反応器にて行うことが可能である。本発明の反応における水の供給量は、反応系に導入する有機化合物に基づいて、例えば、0.01〜100のモル比が保持されるように調整されてよい。また、金属酸化物触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、用いられる反応器の容積に基づいて、0.05体積%以上でありかつ70体積%以下であってよく、より典型的には触媒充填層を形成させ5体積%以上であり、かつ60体積%以下の充填量であってよい。
本発明の方法に用いられる金属酸化物ナノ粒子は、特に限定されるものではないが、例えば、特許第3047110号(当該特許の発明者の一人は本願の発明者である)に開示されている方法によって製造することができる。
当該文献には、金属塩(IB属金属、IIA属金属、IIB属金属、IIIA属金属、IIIB属金属、IVA属金属、IVB属金属、VA属金属、VB属金属、VIB属金属、VIIB属金属、遷移金属等の金属塩)の水溶液を、水の亜臨界乃至超臨界条件である温度200℃以上、圧力160kg/cmの以上の反応帯域としての流通型反応器に連続的に供給するとともに、この金属塩の水溶液に還元性ガス(例えば水素)或いは酸化性ガス(例えば酸素)を導入することによって、金属酸化物微粒子が製造されることが開示されている。
微粒子の製造法の別法の例として、例えば、特許第3663408号(当該特許の発明者の一人は本願の発明者である)に開示されている方法が挙げられる。
当該文献には、水を加圧手段と加熱手段とを経由させて超臨界状態または亜臨界状態の高温高圧水にし、流体原料を、この高温高圧水と合流させる前に、水の臨界温度よりも低温に冷却し、次いで、高温高圧水と流体原料とを混合部で合流させ混合したのち反応器へ案内する、高温高圧水を用いる微粒子製造方法が開示されている。
また、本発明の方法に用いられる金属酸化物ナノ粒子は、特に限定されるものではないが、例えば、特許第3925936号(当該特許の発明者は本願の発明者である)に開示されている方法によって製造後に回収・収集することができる。
当該文献に記載の方法によれば、
(i)高温高圧水を反応場として、金属化合物を水熱反応に付してCeO等の金属酸化物ナノ粒子を形成し、
(ii)高温高圧水を反応場として、金属酸化物ナノ粒子表面と有機修飾剤とを反応せしめ、置換されていてもよいし非置換のものであってよい炭化水素基を共有結合、あるいはエーテル結合、エステル結合、N原子を介した結合、S原子を介した結合、金属−C−の結合、金属−C=の結合及び金属−(C=O)−の結合からなる群から選ばれたものを介してナノ粒子の表面に結合せしめてナノ粒子の表面を有機修飾し、
(iii)(1)水溶液に分散させた金属酸化物ナノ粒子を沈殿させて回収すること、(2)水溶液に分散させた金属酸化物ナノ粒子を有機溶媒中へ移行せしめて回収すること、又は(3)有機溶媒相−水相界面に金属酸化物ナノ粒子を集めることによって、金属酸化物ナノ粒子が得られる。
以下、代表的な金属酸化物触媒であるCeOのナノ粒子の合成について、説明する。
八面体CeOのナノ粒子は、公知の方法で合成されうる。
立方体CeOのナノ粒子は、(1)トルエン中にて原料溶液を調製すること、(2)有機改質剤を使用し、超臨界水条件下で立方体CeOナノ粒子を合成すること、及び(3)立方体CeOの形態を変化させずに有機改質剤を除去することを含む方法によって合成される。
具体的には、立方体CeOのナノ粒子の調製は、以下のように行うことができる。これは非限定的な例である。
トルエン中に、有機改質剤としてヘキサン酸及びCe(OH)を溶解させることにより、立方体酸化セリウムのナノ粒子前駆体溶液を調製する。その後、前駆体溶液を、清澄な溶液を得るために連続的に攪拌しつつ混合する。前駆体溶液を、脱イオン水と混合し、炉の使用により600〜700Kに急速に加熱する。次いで、その混合物を冷却する。立方体酸化セリウムのナノ粒子が、水、トルエンおよび未反応の原料の混合物中の分散物として得られる。トルエン相中のナノ粒子に、エタノールを加え、遠心分離と傾瀉により精製し、それによって未反応の有機分子を除去する。この粒子をシクロヘキサンの中で分散させた後、真空下で冷凍乾燥する。粒子の表面からいかなる有機配位子も取り除くために、収集したナノ粒子を、空気中で数時間にわたり、300℃程度の高温でか焼する。か焼されたナノ粒子を、遠心分離と傾瀉によって清浄化し、次いで減圧乾燥し、それによって立方体CeOのナノ粒子を得ることができる。
本発明の反応においては、有機化合物からの酸化分解生成物が、水から生じた水素によって水素化されることで水素化生成物が形成される。理論に拘束されるものではないが、この反応は、例えば、比較的高温(例えば250℃以上500℃以下)及び/又は水素濃度が高い反応条件下、水に由来する水素が、有機物のフリーアルキル鎖分子によって消費されることによって軽質分子が形成される現象であると理解される。さらに、有機化合物の酸化的分解によって生じたオレフィンに水素が反応することによって、アルカンが得られる反応も起こりうる。好ましいことに、水素化後において、しばしばアルカン(メタンを除く)のモル収量がアルケンのモル収量より多くなることがある。このような反応によって、生成物の高分子量化又はコークス化を抑制することがさらに可能であるという追加の利点が得られる。
本発明の反応においては、飽和炭化水素のモル収量の不飽和炭化水素モル収量に対する比が、無触媒下での分解反応におけるそれより大きいことが好ましい。また、水素化後において、アルカン(メタンを除く)のモル収量のアルケンのモル収量に対する比が無触媒下での分解反応におけるそれより大きいことは、また好ましい。
さらに本発明の別の局面は、上記方法を実施するための接触反応装置である。
この接触反応装置は、反応原料である有機化合物及び水の各導入口、金属酸化物触媒を含む反応触媒層を有する接触反応器、並びに、反応生成物である水素、酸化分解生成物、及び水素化生成物の各排出口を含む。図10に、本発明に係る接触反応装置の概略図を示す。導入口、接触反応器及び排出口は、上記の所定量の反応原料及び生成物を導入・排出可能である限り、その形状・材質は特に限定されない。図中の参照番号は以下の意味を示す。1:接触反応装置;2:接触反応器;3:金属酸化物触媒を含む反応触媒層;4:有機化合物の導入口;5:水の導入口;6:水素の排出口;7:酸化分解生成物の排出口;8:水素化生成物の排出口。
本装置に装備される接触反応器は、上記の一種又は複数種の金属酸化物触媒を含む反応触媒層を有し、それによって所望の接触分解反応を実施可能である限りは特に限定されない。接触反応器は、バッチ式反応器であっても、連続式反応器であってもよいが、反応効率の観点から後者のほうが好ましい。
接触反応器の反応触媒層には、熱交換伝熱管を配してよい。この熱交換伝熱管に廃熱流体を流通させて、この廃熱流体と反応原料(有機化合物及び水を含む)とを接触させることで有機物の吸熱反応に必要な熱を供給し、廃熱回収を同時に行うことができる。廃熱流体は、通常は廃棄される熱を有しており、有機化合物の吸熱反応に必要な熱を供給可能であるものである限り、特に限定されない。
接触反応器は、更に別の熱交換伝熱管を有していてよい。廃熱流体と接触反応器内の反応原料とを熱交換させた後、予熱された反応原料を、この別の熱交換伝熱管に供給することもできる。
接触反応器内において、少なくとも一部において液相の水を反応相とし、及び/又は、圧力を飽和蒸気圧以上とすることもできる。
さらには、本発明に係る反応装置を利用して、以下のシステムを構成することも可能である。
(1)接触反応器の出口において、冷却後、水素ガスを含むガス状生成物と生成物混合溶液とを分離するための分離槽を備え、さらにこのガス状生成物の回収槽とこの生成物混合溶液の回収槽をそれぞれ備え、かつ、ガス状生成物及び生成物混合溶液のうち多い方の生成流通量に基づいて、分離槽から回収槽への生成物取り出しのための圧力制御を行うシステム。
(2)システムの圧力を安定に制御するように、接触反応器出口において、冷却後、ガス状生成物と液状生成物とを、内径5インチ以下の配管に流通させ、スラグ流れを定常的に生成させるシステム。
これらのシステムにおいて、分離槽、回収槽、配管、及び圧力を制御するための機器については、特に限定されず、公知のものを使用することができる。
以下、実施例により本発明を例証するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
立方体酸化セリウムの合成例
立方体酸化セリウムのナノ粒子は、以下の方法により合成された。
この方法は、簡潔には3工程として述べられる:
(i)トルエン中にて前駆体(原料)溶液を調製する工程、
(ii)有機改質剤を使用して超臨界水条件下、立方体CeOナノ粒子を合成する工程、および
(iii)立方体CeOの形態を変化させずに有機改質剤を除去する工程。
トルエン(99.5%、和光ケミカルズ)中に、有機改質剤としてヘキサン酸(99%、和光ケミカルズ、0.30mol/L)及びCe(OH)(オールドリッチ・ケミカルズ、0.050mol/L)を溶解させることにより、前駆体溶液を調製した。この前駆体を、清澄な溶液を得るために40分間、連続的に攪拌させつつ混合した。前駆体溶液を、7.0mL/分の流量で高圧ポンプ(日本精密科学、NP−KX540)を使用して供給した。同時に、脱イオン水を、3.0mL/分の流量で別のポンプを使用して供給した。前駆体溶液を、ジャンクションで脱イオン水と混合し、炉の使用により653Kに急速に加熱した。加熱帯での滞留時間は、およそ95秒であったが、これは、反応器容積、全流量、混合点での水及びトルエン混合物の密度、並びに反応温度及び圧力から見積もられた。次いで、その混合物をウォーター・ジャケットを使用して冷却した。背圧調整装置(TESCOM、26−1700シリーズ)によって、システムの圧力を30MPaに維持した。立方体酸化セリウムのナノ粒子は、水、トルエンおよび未反応の原料の混合物中の分散物として得られた。サンプルを、水とトルエンの相とが分離するように一晩放置した。次いで、トルエン相中にエタノールを加え、その混合物を遠心分離と傾瀉の3サイクルにかけて精製し、未反応の有機分子を除去した。この粒子をシクロヘキサン中に分散させ、8時間、真空下で冷凍乾燥した。ナノ粒子の形態およびサイズは、100kVの加速電圧で透過電子顕微鏡(TEM、日立H7650)により観察した。ナノ粒子の表面上の化学結合および官能基を調査するため、JASCO FT/IR−680分光計を使用してフーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトルを得た。透過IRスペクトルを、400から4000cm−1で収集した。粒子の結晶度および純度を、2θ−θセットアップにてCu Kα放射線によるX線回折(XRD、Rigaku Ultima IV)を使用して同定した。2θ角度を、20°と70°の間で走査した。粒子の表面からいかなる有機配位子をも取り除くために、収集したナノ粒子を、空気中で2時間、300℃で、温度プログラムされたマッフル炉中で2℃/分の昇温割合にて、か焼した。か焼されたナノ粒子を、エタノール中で数回清浄化し、そしていかなる未反応の分子をも、遠心分離と傾瀉によって除去した。最後に、粒子を6時間減圧乾燥し、その後に、か焼されたナノ粒子についてOSC測定を行った。酸素吸蔵放出能の決定のため、サンプルの全てを、20分毎に、O及びHeに交互に暴露させた。
図1は、生成されたCeOナノ粒子のXRDパターンを示す。図1中、(a)は、ヘキサン酸の存在下で合成されたCeOを示し、(b)は、300℃でか焼後の立方体CeOナノ粒子を示し、(c)は、450℃で反応後の立方体CeOナノ粒子を示し、(d)は、合成された八面体CeOナノ粒子を示し、(e)は、450℃で反応後の八面体CeOナノ粒子を示す。ナノ粒子のXRDパターンを、International Center for Diffraction Data(00−034−0394)から得られるJoint Committee on Powder Diffraction Standardsの(JCPDS)のカードと比べることによって、得られたナノ粒子が、CeO結晶構造を有することが分かった。図1a−cにおけるXRDピークは、図1d−eにおけるピークよりブロードであるが、これは、図1a−cに示されるナノ粒子のサイズが図1d−eに示されるナノ粒子のサイズよりも小さいことを示している。シェレル(Scherrer)の式によって評価された結晶のサイズは、図1に示されたナノ粒子についておよそ8nmおよび50nmであった(それぞれa−c及びd−eについて)。
粒子のサイズおよび形態をTEMを使用して分析した。図2は、合成された酸化セリウムのナノ粒子の形態を示す。図2a−bは、613Kでヘキサン酸なしで合成された酸化セリウムのナノ粒子のTEM画像を示す。図2cは、653Kでヘキサン酸と共に合成された酸化セリウムのナノ粒子の画像を示す。図2dは、573Kでのか焼後の酸化セリウムの形状を示す。また、図2eは、923Kでのか焼後の、使用後の立方体酸化セリウムのナノ粒子を示す。2タイプの粒子:8つの{111}面によって囲まれた八面体の粒子、および6つの{100}面によって囲まれた立方体の粒子が、画像中に示される。八面体から立方体への粒子形状の発展は、ヘキサン酸配位子分子と、先端が切り取られた形の八面体の{001}面との優先的な相互作用によるものであり、それによって、{001}方向における結晶の成長速度が大幅に減少し、{111}方向の結晶成長が優勢になり、終局的にはナノ立方体の形成につながった。XRD測定に基づいて得られたサイズが、TEM分析から決定されたものと整合したことは、注目すべきである。
立方体CeOナノ粒子の両面に化学結合した有機分子の存在を証するため、FTIRスペクトルを得た。図3(a)に示すように、表面改質ナノ粒子において、2900−2970cm−1の領域に伸縮ピークが現われた。これらのピークは、ヘキサン酸中のメチル基およびメチレン基のC−H伸縮モードに割り当てられ、その正味の改質剤のFTIRスペクトルに存在するものであり、ナノ粒子の表面上の有機分子の存在を示している。ヘキサン酸で改質されたナノ粒子のスペクトル(図3(a))では、1531および1444cm−1の2つの主要なピークが、それぞれ、カルボキシレート基の非対称および対称モードにそれぞれ割り当てられた。これは、そのカルボキシレート基によって酸化セリウムのナノ粒子の表面にヘキサン酸が化学的に結合していることを示す。反応触媒として酸化セリウムのナノ粒子を使用する前に、粒子の形態を変化させることなく、触媒表面へ結合した有機配位子を除去することが必要であった。というのは、触媒表面に結合された有機配位子が反応物として機能し得るからである。さらに、触媒表面に結合された有機配位子は、反応物質と触媒表面の相互作用を阻害し得る。従って、有機分子は触媒表面から取り除かれるべきである。熱処理は、粒子の表面からの有機配位子の除去のための一般的方法として選ばれた。有機分子は、気流中での燃焼中にCOとHOに容易に分解する。図3(b)中の300℃でか焼された粒子のFTIRスペクトルは、ナノ粒子がか焼された後、有機分子の存在が減少したことを示す。その後、粒子の形態をTEM分析を使用して調査し、か焼中に変化が生じなかったことを確認した(図2d)。しかしながら、使用済みのCeOナノ粒子についても、触媒上の形成コークスを除去するために923Kでか焼した。また、それは、小さな変化がか焼中に生じたことを示した(図2e)。それは、反応温度(723K)がか焼温度より低いためにCeOナノ粒子形状がその反応温度で安定化されていることを意味する。
CeO ナノ粒子の酸素吸蔵放出能(OSC)の評価
酸素吸蔵放出能(OSC)は、触媒中に吸蔵され、そこから放出される酸素の量として定義される。立方体及び八面体のCeOナノ粒子のOSCを、常圧(実質的に大気圧に等しい圧力)にて、773Kで測定した。これらの結果は、立方体酸化セリウムのナノ粒子のOSCが、773Kでの八面体酸化セリウムのナノ粒子のOSC(100μmol−O−1)よりほぼ3.4倍高い340μmol−O−1であったことを示した。より小さなサイズおよび活性な{100}面を備えた立方体酸化セリウムのナノ粒子は、より大きなOSCを有していた。この結果は、より小さなナノ粒子中のより大きな暴露表面積に起因し、酸素吸蔵/放出プロセスに関与する酸素分子が主にCeOの表面に存在することを示す。
実施例1:ビチュメンの接触分解(1)
八面体及び立方体の二種の酸化セリウム(CeO)触媒を、超臨界水の存在下にて、温度723K(450℃)でのビチュメンの接触分解に使用した。立方体のCeOは、上記のとおり合成されたものを用いた。八面体のCeOは、公知の方法に従って合成された。比較用として触媒無しの場合、並びに、八面体及び立方体のCeO触媒について触媒量を10mg及び20mgに変化させて接触分解反応を行った。
図4は、ビチュメンが723KでCeO触媒(20mg)を用いて分解されたときのアスファルテン及びマルテン生成物の分布を示す。ビチュメンとして18%のアスファルテン及び82%のマルテンを含むものを用いた。このビチュメンは、トルエン不溶画分(コークス)はほとんど含んでいなかった。図4の(a)は、20mgの触媒を使用したときのアスファルテン収率を示す。ここで、黒色の四角印は触媒無し、白色の三角印は八面体のCeO使用、白色の丸印は立方体のCeO使用の場合を、それぞれ示す。図4の(b)は、2回目のシーケンスにおける20mgの触媒を使用したときのアスファルテン収率を示す。この2回目のシーケンスでは、最初の実験からの使用済み触媒をろ過によって回収し、真空中にて6時間60℃で乾燥し、次に反応器へ再び充填した。また、図4の(c)は、20mgの触媒を使用したときのマルテン収率を示す。図4の(a)及び(b)の結果から、CeO触媒を使用することでアスファルテン収率がかなり減少し、特に立方体のCeOを使用することによってその割合が顕著であることが分かった。図4の(a)で得られた結果の反射的な効果として、同図(c)に示されたマルテン収率については逆の傾向が見られた。
図5は、450℃にて、触媒無し、並びに、八面体及び立方体のCeO触媒について触媒量を10mg及び20mgに変化させた場合のアスファルテン及びコークス(coke)の60分反応時点での収率を示したものである。本図においては、説明容易化のためアスファルテン及びコークスの収率のみを示すが、これは他の生成物が全く得られなかったことを意味するものではない。図中には、参照に、ビチュメン(れき青)中のアルファンテン及びマルテンの割合を示す。図5に見られるように、触媒が添加されないとき、超臨界水中での分解の後に、原料と比べてアスファルテンの収率は減少し、コークスが形成された。触媒が反応器に充填されたときにはアスファルテン消費が徐々に増加し、コークス形成は減少した。従って、触媒の使用によって、コークス形成が減じた一方で、アスファルテンはほとんど軽質油に変換されたことが分かった。反応の1時間後の八面体CeO及び立方体CeOの触媒の両方についてのアスファルテン収率は、触媒なしの9.2重量%と比較して、それぞれ、5.1重量%および2.8重量%にまで減じた。さらに、この結果によって、おそらくはより高い酸素貯蔵能および小さな粒径のために、立方体の形態を備えたCeO触媒がより高い活性を示すことが明白に実証された。理論に拘束されるものではないが、立方体のCeOナノ粒子の場合には、その暴露表面積が八面体のCeOナノ粒子の暴露表面積よりも大きく、従ってより多くの酸素分子に曝されることが可能となり、それによってビチュメンの重質画分との反応が生じると考えられる。その結果、アスファルテンは、立方体のCeOの触媒存在下でより急速に消費された。更には、C−C結合開裂の速度が接触分解中に増大され、より多量の水素種(ラジカル)および酸素種(ラジカル)が水分子の分解から生成され、そして、これらの種は効率的に重質画分と反応したと考察される。本実施例で行われたいずれの実験においても、気体成分の生成物が液体・固体成分と分離して回収され、触媒を用いた場合には、その中に大量の水素が含まれていたことが確認された。
なお、ここでのアスファルテン収率(重量%)は、以下の式で求められた。
・アスファルテン収率(重量%)=[アスファルテン重量(g)]*100/[反応原料ビチュメンの重量(g)]
また、コークス収率(重量%)は、以下の式で求められた。
・コークス収率(重量%)=[コークス重量(g)]*100/[反応原料ビチュメンの重量(g)]
コークスの量は、トルエン不溶生成物及び触媒表面上の残留コークスの合計である。触媒表面上の残留コークスは回収された触媒をか焼したときの減量によって計算された。一方、マルテンをn−ペンタンで抽出し、n−ペンタンからマルテン種の全てを分離することは難しいので、マルテンの収率は、計算されたアスファルテン収率及びコークス収率に基づいて、以下のように求められた。
・マルテン収率(重量%)=100−アスファルテン収率−コークス収率
これらの収率計算式は、以下の実験例においても同様に適用される。
図6は、原料のビチュメン(a)、触媒を用いずに450℃で接触分解反応を行った場合(b)、並びに、八面体及び立方体のCeO触媒(20mg)を用いて接触分解反応を行った場合((c)及び(d))のそれぞれについて、反応後に回収された生成物油と1−メチルナフタレンの混合物の色変化を観察した様子を示す。1−メチルナフタレンは粘性を減じるために混合された。1−メチルナフタレンのビチュメンに対する比率は、全てのサンプルで9.0(体積比)であった。図6にて観察されるように、触媒の非存在下で、回収された油の色は原料とあまり変わらず、重質油の転化は大きくないことが分かった。しかしながら、CeO触媒を使用すると、特に立方体のCeO触媒を使用して反応させた後には、軽質画分の色に近づくように色が変化することが分かった。
実施例2:ビチュメンの接触分解(2)
ビチュメン(マルテン及びアスファルテンを包含する)の水熱分解反応では、特に重質のアスファルテン成分が熱分解するとともに、より重質なコークスが生成されることが分かっている。コークス生成速度よりも高速に分解を進めることができれば、コークス生成を抑制しつつ、重質油から軽質油への転化率を向上することができる。低温ではそれが可能であるが、反応速度が遅い。
そこで、水熱条件下、立方体CeOナノ触媒を用いてビチュメンの酸化的分解反応を行った。図7には、水熱条件下、触媒を用いずに450℃(超臨界水)にて反応させた場合のアスファルテン及びコークスの収率(上部の濃色の部分がコークス収率)、立方体CeOナノ触媒20mgを用いて300℃にて反応させた場合のアスファルテン収率、及び、立方体CeOナノ触媒20mgを用いて350℃にて反応させた場合のアスファルテン収率が示される。触媒を用いなかった場合には、大量のコークスが形成された一方で、立方体CeOナノ触媒を用いた場合には350℃以下でコークス生成が全くみられずに、軽質油への転化が進行した。また、立方体CeOナノ触媒を用いた場合には300℃という低温でも反応の進行が確認できたことは、意外なことであった。さらには、立方体CeOナノ触媒を用いた場合には大量の水素の発生が確認された。この水素は水に由来すると考えられる。図8には、水熱条件下、立方体CeOナノ触媒の不存在下又は存在下(20mg)にて300℃でビチュメンを反応させた場合の色変化を、原料ビチュメンと比較して視認した結果が示される。触媒不存在下では、300℃の低温ではほとんど分解反応が進行しなかったが、立方体CeOナノ触媒存在下では、300℃の低温でも時間の経過と共に反応が進行した。
実施例3:ビチュメンの接触分解(3)
ビチュメンでの接触分解反応において、多量の立方体CeOナノ触媒(20mg)を用いて水素が大量に生成すると予測される条件にて、さらに温度を高温(450℃)とし、1時間反応させた場合に、酸化分解生成物よりも、水素化生成物割合が多くなることが分かった。図9において、触媒を用いなかった場合と、立方体CeOナノ触媒を用いた場合の生成物のガス組成(モル%)を比較して示した。図9から明らかなように、立方体CeOナノ触媒を用いた場合には、アルカン(メタンを除く)がアルケンよりも多量に発生し、また、かなりの量の水素の発生も確認された。
この条件での多量の水素発生は、CeOが水中での部分酸化分解の触媒として機能するだけでなく、水素化も同時に生じさせていることを示していると考えられる。自動車に用いられる三元触媒(CO、炭化水素の酸化と、NOの還元を同時に行う機能を有している触媒)と同様に、この場合の立方体CeOナノ触媒もまた、大変興味深いことに水中での部分酸化と生成した水素による還元を同時に達成できることが見出された。
実施例4:ビチュメンの接触分解(4)
市販のV触媒ナノ粒子及びCoO触媒ナノ粒子(CeOについて上述したOSC評価方法と同様に評価されたOSCが1μmol−O/g−cat以上である)の各々を用いて、水熱条件下、ビチュメンの接触分解反応を行った。V触媒は、Aldrich companyから市販されているものであり、その粒子径(φ)は615nm、密度は3.36g/mlであった。CoO触媒は、Aldrich companyから市販されているものであり、その粒子径(φ)は102nm、密度は6.44/mlであった。
ビチュメン(1g)の粘度を減少させるためにトルエンで希釈して10重量%ビチュメン溶液とし、これを供給原料として用いた。内容積6.3mLのハステロイ製(耐圧チューブ型)反応器に、ビチュメン溶液(1mL)、水(1mL)及び触媒ナノ粒子(1g)を充填し、次いで密封し、それを350℃(623K)に調整された電気炉に置き、16MPaの圧力下で反応を行った。30分後、反応器は炉から取り出され、反応を終了するために冷水浴中で急冷された。気体成分の生成物は、気体パックに回収された。この気体生成物には、水素が含まれることが確認された。液体と固体生成物は、18mLのトルエンで反応器を濯ぐことにより回収された。
参照例として、いずれの触媒も用いなかった以外は上記と全く同じ条件下にて、ビチュメンの接触分解反応を行い、次いで反応を終了させた。また、変形例として、Vの触媒量を0.1gに減じた以外は上記と全く同じ条件下にて、ビチュメンの接触分解反応を行い、次いで反応を終了させた。これらの参照例及び変形例の液体・固体生成物は、上と同様に18mLのトルエンで反応器を濯ぐことにより回収された。図11(a)に、参照例(触媒なし)、変形例のV触媒0.1g、及び本実施例のV触媒1gのそれぞれの場合におけるトルエンと混合された回収生成物の外観を示す。また、図11(b)に、参照例(触媒なし)、本実施例のV触媒1g、及び本実施例のCoO触媒1gのそれぞれの場合におけるトルエンと混合された回収生成物の外観を示す。
参照例(触媒なし)では黒色の外観である(液体の透明性がない)ことから、分解反応が殆ど進行していないことが把握される。一方、いずれの触媒を用いた場合にも、色調が明るくなっている(液体の透明性が多少なりとも増している)ことから、有意な分解反応が進行し、特に、CoO触媒よりもV触媒の方がかなり高い触媒活性を示すことが分かった。
本実施例のトルエン不溶画分(コークス及び触媒)は、薄膜フィルタ(細孔径:25nm)を使用して、ろ過によって分離された。図12(a)及び(b)に、反応前後のV触媒及びCoO触媒(コークスと混合されたもの)の外観をそれぞれ示す。V触媒及びCoO触媒の両者共、反応前後で触媒の色が明らかに変化したことが視認された。このような色の変化は、主に、金属酸化物の金属の価数が変化したためと考えられる。そして、このような金属酸化物の金属の価数の変化は、本発明において意図する金属酸化物の酸化還元を通じたビチュメンの接触分解反応がたしかに進行したことを裏付けるものであると考察される。
また、本実施例並びに上記の参照例及び変形例のトルエン可溶画分は、ロータリー・エバポレータを使用して回収された。その後、トルエン可溶画分の成分群は、n−ペンタン可溶成分及びn−ペンタン不溶成分に分離された(それぞれマルテン及びアスファルテン)。n−ペンタン不溶成分であるアスファルテンは、窒素流による2時間のパージにより溶媒を蒸発させ、アスファルテン重量を測定した。アスファルテンの転化率(conversion)は、以下の式によって得られた。
・アスファルテン転化率(%)=1−{[アスファルテン重量/反応原料ビチュメン中のアスファルテン重量]}
図13に、参照例(触媒なし)、本実施例のCoO触媒1g、本実施例のV触媒1g、及び変形例のV触媒0.1gのそれぞれの場合におけるアスファルテン転化率を示す。これらの結果から、触媒なしの場合と比べて、触媒を用いた場合にアスファルテン転化率の有意な改善が見られたことが分かる。特に、CoO触媒を用いた場合よりも、V触媒を用いた場合の方が、アスファルテン転化率の増大はかなり大きかった。

Claims (11)

  1. 水熱条件下にて、金属酸化物触媒を用いて、重質炭化水素を含む有機化合物を接触分解反応させるための方法であって、
    この接触分解反応が、前記金属酸化物触媒の金属イオンの酸化還元を通じて行われ、
    (i)還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を水によって酸化して、酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒及び水素を生成すること、
    (ii)前記有機化合物を酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒によって酸化して、酸化分解生成物及び還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を生成すること、並びに
    (iii)前記酸化分解生成物を、前記(i)によって生じた水素により水素化して、水素化生成物を形成することを含み、
    これら(i)〜(iii)の諸工程が、同一反応系内にて同時に進行し、全体としては水及び前記有機化合物から水素、前記酸化分解生成物及び前記水素化生成物が得られ、
    前記金属酸化物触媒が、250〜500℃にて1μmol−O/g−cat以上である酸素吸蔵放出能(OSC)を有する上記方法。
  2. 前記接触分解反応が超臨界水中にて行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記重質炭化水素が、マルテン及びアルファルテンを含むビチュメンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記金属酸化物触媒が、酸化セリウム(CeO)、酸化インジウム(In)、酸化鉄(Fe)、イットリウム安定化酸化ジルコニウム(YSZ)、酸化バナジウム(V)、酸化コバルト(CoO)、Scドープ酸化ジルコニウム(ScSZ)、酸化ランタンガリウム(LaGaO)、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)、ガドリニウムドープ酸化セリウム(GDC)及びセリア・ジルコニア固溶体からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記金属酸化物触媒が、CeO触媒を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
  6. 前記CeO触媒が、八面体CeO触媒及び立方体CeO触媒から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 前記立方体CeO触媒が、Ce(OH)及び有機改質剤を超臨界水と接触させ、次いでこれをか焼することによって製造されるものであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
  8. 飽和炭化水素のモル収量の不飽和炭化水素モル収量に対する比が、無触媒下での分解反応におけるそれより大きいことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. アルカン(メタンを除く)のモル収量のアルケンのモル収量に対する比が無触媒下での分解反応におけるそれより大きいことを特徴とする請求項8に記載の方法。
  10. 水熱条件下にて、金属酸化物触媒を用いて、重質炭化水素を含む有機化合物を接触分解反応させるため装置であって、
    この接触分解反応装置は、反応原料である有機化合物及び水の各導入口、金属酸化物触媒を含む反応触媒層を有する接触反応器、並びに、反応生成物である酸化分解生成物、この酸化分解生成物から生じた水素化生成物及び水素の各排出口を含み、
    前記接触反応器では、接触分解反応が、前記金属酸化物触媒の金属イオンの酸化還元を通じて行われ、
    この接触分解反応が、(i)還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を水によって酸化して、酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒及び水素を生成すること、(ii)前記有機化合物を酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒によって酸化して、酸化分解生成物及び還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を生成すること、並びに(iii)前記酸化分解生成物を、前記(i)によって生じた水素により水素化して、水素化生成物を形成することを含み、
    これら(i)〜(iii)の諸工程が、同一反応系内にて同時に進行し、全体としては水及び前記有機化合物から水素、前記酸化分解生成物及び前記水素化生成物が得られ、
    前記金属酸化物触媒が、250〜500℃にて1μmol−O/g−cat以上である酸素吸蔵放出能(OSC)を有する、
    接触分解反応装置。
  11. 請求項10に記載の装置を含むシステムであって、
    前記接触反応器の出口において、冷却後、水素ガスを含むガス状生成物と生成物混合溶液とを分離するための分離槽を備え、さらにこのガス状生成物の回収槽とこの生成物混合溶液の回収槽をそれぞれ備え、かつ、前記ガス状生成物及び前記生成物混合溶液のうち多い方の生成流通量に基づいて、前記分離槽から前記回収槽への生成物取り出しのための圧力制御を行うシステム。
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