JP6304801B2 - 水共存下での重質炭化水素の接触分解方法 - Google Patents
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Description
[1]
水熱条件下にて、金属酸化物触媒を用いて、重質炭化水素を含む有機化合物を接触分解反応させるための方法であって、
この接触分解反応が、前記金属酸化物触媒の金属イオンの酸化還元を通じて行われ、
(i)還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を水によって酸化して、酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒及び水素を生成すること、
(ii)前記有機化合物を酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒によって酸化して、酸化分解生成物及び還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を生成すること、並びに
(iii)前記酸化分解生成物を、前記(i)によって生じた水素により水素化して、水素化生成物を形成することを含み、
これら(i)〜(iii)の諸工程が、同一反応系内にて同時に進行し、全体としては水及び前記有機化合物から水素、前記酸化分解生成物及び前記水素化生成物が得られ、
前記金属酸化物触媒が、250〜500℃にて1μmol−O2/g−cat以上である酸素吸蔵放出能(OSC)を有する上記方法。
[2]
前記接触分解反応が超臨界水中にて行われることを特徴とする上記[1]項に記載の方法。
[3]
前記重質炭化水素が、マルテン及びアスファルテンを含むビチュメンを含むことを特徴とする上記[1]又は[2]項に記載の方法。
[4]
前記金属酸化物触媒が、酸化セリウム(CeO2)、酸化インジウム(In2O3)、酸化鉄(Fe2O3)、イットリウム安定化酸化ジルコニウム(YSZ)、酸化バナジウム(V2O5)、酸化コバルト(CoO)、Sc2O3ドープ酸化ジルコニウム(ScSZ)、酸化ランタンガリウム(LaGaO3)、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)、ガドリニウムドープ酸化セリウム(GDC)、及びセリア・ジルコニア固溶体からなる群から選択されることを特徴とする上記[1]〜[3]項のいずれか1項に記載の方法。
[5]
前記金属酸化物触媒が、CeO2触媒を含むことを特徴とする上記[4]項に記載の方法。
[6]
前記CeO2触媒が、八面体CeO2触媒及び立方体CeO2触媒から選択される少なくとも1種であることを特徴とする上記[5]項に記載の方法。
[7]
前記立方体CeO2触媒が、Ce(OH)4及び有機改質剤を超臨界水と接触させ、次いでこれをか焼することによって製造されるものであることを特徴とする上記[6]項に記載の方法。
[8]
飽和炭化水素のモル収量の不飽和炭化水素モル収量に対する比が、無触媒下での分解反応におけるそれより大きいことを特徴とする上記[1]〜[7]項のいずれか1項に記載の方法。
[9]
アルカン(メタンを除く)のモル収量のアルケンのモル収量に対する比が無触媒下での分解反応におけるそれより大きいことを特徴とする上記[8]項に記載の方法。
[10]
水熱条件下にて、金属酸化物触媒を用いて、重質炭化水素を含む有機化合物を接触分解反応させるため装置であって、
この接触分解反応装置は、反応原料である有機化合物及び水の各導入口、金属酸化物触媒を含む反応触媒層を有する接触反応器、並びに、反応生成物である酸化分解生成物、この酸化分解生成物から生じた水素化生成物及び水素の各排出口を含み、
前記接触反応器では、接触分解反応が、前記金属酸化物触媒の金属イオンの酸化還元を通じて行われ、
この接触分解反応が、(i)還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を水によって酸化して、酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒及び水素を生成すること、(ii)前記有機化合物を酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒によって酸化して、酸化分解生成物及び還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を生成すること、並びに(iii)前記酸化分解生成物を、前記(i)によって生じた水素により水素化して、水素化生成物を形成することを含み、
これら(i)〜(iii)の諸工程が、同一反応系内にて同時に進行し、全体としては水及び前記有機化合物から水素、前記酸化分解生成物及び前記水素化生成物が得られ、
前記金属酸化物触媒が、250〜500℃にて1μmol−O2/g−cat以上である酸素吸蔵放出能(OSC)を有する、
接触分解反応装置。
[11]
上記[10]項に記載の装置を含むシステムであって、
前記接触反応器の出口において、冷却後、水素ガスを含むガス状生成物と生成物混合溶液とを分離するための分離槽を備え、さらにこのガス状生成物の回収槽とこの生成物混合溶液の回収槽をそれぞれ備え、かつ、前記ガス状生成物及び前記生成物混合溶液のうち多い方の生成流通量に基づいて、前記分離槽から前記回収槽への生成物取り出しのための圧力制御を行うシステム。
また、本発明によれば、水を起源とする十分な量の水素が得られるため、新たなエネルギー源の創設に貢献できる。加えて、比較的低温かつ短時間の反応により、目的生成物を得ることができるため、反応に要するコストを一層抑制することができる。さらに、本発明によれば、生成物中のメタンガスの割合を下げることで、環境負荷の低減を図ることができる。そして、本発明は、利用することが困難であると言われてきたビチュメン等の重質炭化水素を、エネルギー資源として有効活用することに資する。
・工程(i)
H2O+Ce2O3(還元状態Ce3+を有する酸素吸引性物質)
→ H2+CeO2(酸化状態Ce4+を有する酸素供与性物質)
・工程(ii)
重質油+CeO2(酸化状態Ce4+を有する酸素供与性物質)
→ R(酸化分解生成物)+Ce2O3(還元状態Ce3+を有する酸素吸引性物質)
・工程(iii)
R(酸化分解生成物)+H2(工程(i)から生じた水素)
→ Rの水素化物(水素化生成物)
・工程(i)〜(iii)のトータル
Ce2O3(Ce3+) + 酸素(O) ←→ CeO2(Ce4+)
H2O+重質油 → H2+R(酸化分解生成物)+Rの水素化物(水素化生成物)
このように、本発明による反応スキームによれば、金属酸化物触媒の酸化還元を通じて水を起源として水素が生成され(工程(i))、重質な炭化水素が酸化的に分解されて、酸化分解生成物が形成され(工程(ii))、これと同時に、酸化分解生成物が工程(i)から生じた水素で水素化される(工程(iii))。酸化分解生成物は、多様な化学構造の生成物群でありうるが、典型的にはオレフィンを含む。また、最終的な水素化生成物は、典型的にはアルカンを含む。
当該文献には、金属塩(IB属金属、IIA属金属、IIB属金属、IIIA属金属、IIIB属金属、IVA属金属、IVB属金属、VA属金属、VB属金属、VIB属金属、VIIB属金属、遷移金属等の金属塩)の水溶液を、水の亜臨界乃至超臨界条件である温度200℃以上、圧力160kg/cm2の以上の反応帯域としての流通型反応器に連続的に供給するとともに、この金属塩の水溶液に還元性ガス(例えば水素)或いは酸化性ガス(例えば酸素)を導入することによって、金属酸化物微粒子が製造されることが開示されている。
当該文献には、水を加圧手段と加熱手段とを経由させて超臨界状態または亜臨界状態の高温高圧水にし、流体原料を、この高温高圧水と合流させる前に、水の臨界温度よりも低温に冷却し、次いで、高温高圧水と流体原料とを混合部で合流させ混合したのち反応器へ案内する、高温高圧水を用いる微粒子製造方法が開示されている。
当該文献に記載の方法によれば、
(i)高温高圧水を反応場として、金属化合物を水熱反応に付してCeO2等の金属酸化物ナノ粒子を形成し、
(ii)高温高圧水を反応場として、金属酸化物ナノ粒子表面と有機修飾剤とを反応せしめ、置換されていてもよいし非置換のものであってよい炭化水素基を共有結合、あるいはエーテル結合、エステル結合、N原子を介した結合、S原子を介した結合、金属−C−の結合、金属−C=の結合及び金属−(C=O)−の結合からなる群から選ばれたものを介してナノ粒子の表面に結合せしめてナノ粒子の表面を有機修飾し、
(iii)(1)水溶液に分散させた金属酸化物ナノ粒子を沈殿させて回収すること、(2)水溶液に分散させた金属酸化物ナノ粒子を有機溶媒中へ移行せしめて回収すること、又は(3)有機溶媒相−水相界面に金属酸化物ナノ粒子を集めることによって、金属酸化物ナノ粒子が得られる。
八面体CeO2のナノ粒子は、公知の方法で合成されうる。
立方体CeO2のナノ粒子は、(1)トルエン中にて原料溶液を調製すること、(2)有機改質剤を使用し、超臨界水条件下で立方体CeO2ナノ粒子を合成すること、及び(3)立方体CeO2の形態を変化させずに有機改質剤を除去することを含む方法によって合成される。
トルエン中に、有機改質剤としてヘキサン酸及びCe(OH)4を溶解させることにより、立方体酸化セリウムのナノ粒子前駆体溶液を調製する。その後、前駆体溶液を、清澄な溶液を得るために連続的に攪拌しつつ混合する。前駆体溶液を、脱イオン水と混合し、炉の使用により600〜700Kに急速に加熱する。次いで、その混合物を冷却する。立方体酸化セリウムのナノ粒子が、水、トルエンおよび未反応の原料の混合物中の分散物として得られる。トルエン相中のナノ粒子に、エタノールを加え、遠心分離と傾瀉により精製し、それによって未反応の有機分子を除去する。この粒子をシクロヘキサンの中で分散させた後、真空下で冷凍乾燥する。粒子の表面からいかなる有機配位子も取り除くために、収集したナノ粒子を、空気中で数時間にわたり、300℃程度の高温でか焼する。か焼されたナノ粒子を、遠心分離と傾瀉によって清浄化し、次いで減圧乾燥し、それによって立方体CeO2のナノ粒子を得ることができる。
この接触反応装置は、反応原料である有機化合物及び水の各導入口、金属酸化物触媒を含む反応触媒層を有する接触反応器、並びに、反応生成物である水素、酸化分解生成物、及び水素化生成物の各排出口を含む。図10に、本発明に係る接触反応装置の概略図を示す。導入口、接触反応器及び排出口は、上記の所定量の反応原料及び生成物を導入・排出可能である限り、その形状・材質は特に限定されない。図中の参照番号は以下の意味を示す。1:接触反応装置;2:接触反応器;3:金属酸化物触媒を含む反応触媒層;4:有機化合物の導入口;5:水の導入口;6:水素の排出口;7:酸化分解生成物の排出口;8:水素化生成物の排出口。
(1)接触反応器の出口において、冷却後、水素ガスを含むガス状生成物と生成物混合溶液とを分離するための分離槽を備え、さらにこのガス状生成物の回収槽とこの生成物混合溶液の回収槽をそれぞれ備え、かつ、ガス状生成物及び生成物混合溶液のうち多い方の生成流通量に基づいて、分離槽から回収槽への生成物取り出しのための圧力制御を行うシステム。
(2)システムの圧力を安定に制御するように、接触反応器出口において、冷却後、ガス状生成物と液状生成物とを、内径5インチ以下の配管に流通させ、スラグ流れを定常的に生成させるシステム。
これらのシステムにおいて、分離槽、回収槽、配管、及び圧力を制御するための機器については、特に限定されず、公知のものを使用することができる。
立方体酸化セリウムのナノ粒子は、以下の方法により合成された。
この方法は、簡潔には3工程として述べられる:
(i)トルエン中にて前駆体(原料)溶液を調製する工程、
(ii)有機改質剤を使用して超臨界水条件下、立方体CeO2ナノ粒子を合成する工程、および
(iii)立方体CeO2の形態を変化させずに有機改質剤を除去する工程。
酸素吸蔵放出能(OSC)は、触媒中に吸蔵され、そこから放出される酸素の量として定義される。立方体及び八面体のCeO2ナノ粒子のOSCを、常圧(実質的に大気圧に等しい圧力)にて、773Kで測定した。これらの結果は、立方体酸化セリウムのナノ粒子のOSCが、773Kでの八面体酸化セリウムのナノ粒子のOSC(100μmol−O2g−1)よりほぼ3.4倍高い340μmol−O2g−1であったことを示した。より小さなサイズおよび活性な{100}面を備えた立方体酸化セリウムのナノ粒子は、より大きなOSCを有していた。この結果は、より小さなナノ粒子中のより大きな暴露表面積に起因し、酸素吸蔵/放出プロセスに関与する酸素分子が主にCeO2の表面に存在することを示す。
八面体及び立方体の二種の酸化セリウム(CeO2)触媒を、超臨界水の存在下にて、温度723K(450℃)でのビチュメンの接触分解に使用した。立方体のCeO2は、上記のとおり合成されたものを用いた。八面体のCeO2は、公知の方法に従って合成された。比較用として触媒無しの場合、並びに、八面体及び立方体のCeO2触媒について触媒量を10mg及び20mgに変化させて接触分解反応を行った。
図4は、ビチュメンが723KでCeO2触媒(20mg)を用いて分解されたときのアスファルテン及びマルテン生成物の分布を示す。ビチュメンとして18%のアスファルテン及び82%のマルテンを含むものを用いた。このビチュメンは、トルエン不溶画分(コークス)はほとんど含んでいなかった。図4の(a)は、20mgの触媒を使用したときのアスファルテン収率を示す。ここで、黒色の四角印は触媒無し、白色の三角印は八面体のCeO2使用、白色の丸印は立方体のCeO2使用の場合を、それぞれ示す。図4の(b)は、2回目のシーケンスにおける20mgの触媒を使用したときのアスファルテン収率を示す。この2回目のシーケンスでは、最初の実験からの使用済み触媒をろ過によって回収し、真空中にて6時間60℃で乾燥し、次に反応器へ再び充填した。また、図4の(c)は、20mgの触媒を使用したときのマルテン収率を示す。図4の(a)及び(b)の結果から、CeO2触媒を使用することでアスファルテン収率がかなり減少し、特に立方体のCeO2を使用することによってその割合が顕著であることが分かった。図4の(a)で得られた結果の反射的な効果として、同図(c)に示されたマルテン収率については逆の傾向が見られた。
・アスファルテン収率(重量%)=[アスファルテン重量(g)]*100/[反応原料ビチュメンの重量(g)]
また、コークス収率(重量%)は、以下の式で求められた。
・コークス収率(重量%)=[コークス重量(g)]*100/[反応原料ビチュメンの重量(g)]
コークスの量は、トルエン不溶生成物及び触媒表面上の残留コークスの合計である。触媒表面上の残留コークスは回収された触媒をか焼したときの減量によって計算された。一方、マルテンをn−ペンタンで抽出し、n−ペンタンからマルテン種の全てを分離することは難しいので、マルテンの収率は、計算されたアスファルテン収率及びコークス収率に基づいて、以下のように求められた。
・マルテン収率(重量%)=100−アスファルテン収率−コークス収率
これらの収率計算式は、以下の実験例においても同様に適用される。
ビチュメン(マルテン及びアスファルテンを包含する)の水熱分解反応では、特に重質のアスファルテン成分が熱分解するとともに、より重質なコークスが生成されることが分かっている。コークス生成速度よりも高速に分解を進めることができれば、コークス生成を抑制しつつ、重質油から軽質油への転化率を向上することができる。低温ではそれが可能であるが、反応速度が遅い。
そこで、水熱条件下、立方体CeO2ナノ触媒を用いてビチュメンの酸化的分解反応を行った。図7には、水熱条件下、触媒を用いずに450℃(超臨界水)にて反応させた場合のアスファルテン及びコークスの収率(上部の濃色の部分がコークス収率)、立方体CeO2ナノ触媒20mgを用いて300℃にて反応させた場合のアスファルテン収率、及び、立方体CeO2ナノ触媒20mgを用いて350℃にて反応させた場合のアスファルテン収率が示される。触媒を用いなかった場合には、大量のコークスが形成された一方で、立方体CeO2ナノ触媒を用いた場合には350℃以下でコークス生成が全くみられずに、軽質油への転化が進行した。また、立方体CeO2ナノ触媒を用いた場合には300℃という低温でも反応の進行が確認できたことは、意外なことであった。さらには、立方体CeO2ナノ触媒を用いた場合には大量の水素の発生が確認された。この水素は水に由来すると考えられる。図8には、水熱条件下、立方体CeO2ナノ触媒の不存在下又は存在下(20mg)にて300℃でビチュメンを反応させた場合の色変化を、原料ビチュメンと比較して視認した結果が示される。触媒不存在下では、300℃の低温ではほとんど分解反応が進行しなかったが、立方体CeO2ナノ触媒存在下では、300℃の低温でも時間の経過と共に反応が進行した。
ビチュメンでの接触分解反応において、多量の立方体CeO2ナノ触媒(20mg)を用いて水素が大量に生成すると予測される条件にて、さらに温度を高温(450℃)とし、1時間反応させた場合に、酸化分解生成物よりも、水素化生成物割合が多くなることが分かった。図9において、触媒を用いなかった場合と、立方体CeO2ナノ触媒を用いた場合の生成物のガス組成(モル%)を比較して示した。図9から明らかなように、立方体CeO2ナノ触媒を用いた場合には、アルカン(メタンを除く)がアルケンよりも多量に発生し、また、かなりの量の水素の発生も確認された。
この条件での多量の水素発生は、CeO2が水中での部分酸化分解の触媒として機能するだけでなく、水素化も同時に生じさせていることを示していると考えられる。自動車に用いられる三元触媒(CO、炭化水素の酸化と、NOの還元を同時に行う機能を有している触媒)と同様に、この場合の立方体CeO2ナノ触媒もまた、大変興味深いことに水中での部分酸化と生成した水素による還元を同時に達成できることが見出された。
市販のV2O5触媒ナノ粒子及びCoO触媒ナノ粒子(CeO2について上述したOSC評価方法と同様に評価されたOSCが1μmol−O2/g−cat以上である)の各々を用いて、水熱条件下、ビチュメンの接触分解反応を行った。V2O5触媒は、Aldrich companyから市販されているものであり、その粒子径(φ)は615nm、密度は3.36g/mlであった。CoO触媒は、Aldrich companyから市販されているものであり、その粒子径(φ)は102nm、密度は6.44/mlであった。
ビチュメン(1g)の粘度を減少させるためにトルエンで希釈して10重量%ビチュメン溶液とし、これを供給原料として用いた。内容積6.3mLのハステロイ製(耐圧チューブ型)反応器に、ビチュメン溶液(1mL)、水(1mL)及び触媒ナノ粒子(1g)を充填し、次いで密封し、それを350℃(623K)に調整された電気炉に置き、16MPaの圧力下で反応を行った。30分後、反応器は炉から取り出され、反応を終了するために冷水浴中で急冷された。気体成分の生成物は、気体パックに回収された。この気体生成物には、水素が含まれることが確認された。液体と固体生成物は、18mLのトルエンで反応器を濯ぐことにより回収された。
参照例(触媒なし)では黒色の外観である(液体の透明性がない)ことから、分解反応が殆ど進行していないことが把握される。一方、いずれの触媒を用いた場合にも、色調が明るくなっている(液体の透明性が多少なりとも増している)ことから、有意な分解反応が進行し、特に、CoO触媒よりもV2O5触媒の方がかなり高い触媒活性を示すことが分かった。
・アスファルテン転化率(%)=1−{[アスファルテン重量/反応原料ビチュメン中のアスファルテン重量]}
Claims (11)
- 水熱条件下にて、金属酸化物触媒を用いて、重質炭化水素を含む有機化合物を接触分解反応させるための方法であって、
この接触分解反応が、前記金属酸化物触媒の金属イオンの酸化還元を通じて行われ、
(i)還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を水によって酸化して、酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒及び水素を生成すること、
(ii)前記有機化合物を酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒によって酸化して、酸化分解生成物及び還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を生成すること、並びに
(iii)前記酸化分解生成物を、前記(i)によって生じた水素により水素化して、水素化生成物を形成することを含み、
これら(i)〜(iii)の諸工程が、同一反応系内にて同時に進行し、全体としては水及び前記有機化合物から水素、前記酸化分解生成物及び前記水素化生成物が得られ、
前記金属酸化物触媒が、250〜500℃にて1μmol−O2/g−cat以上である酸素吸蔵放出能(OSC)を有する上記方法。 - 前記接触分解反応が超臨界水中にて行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記重質炭化水素が、マルテン及びアルファルテンを含むビチュメンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
- 前記金属酸化物触媒が、酸化セリウム(CeO2)、酸化インジウム(In2O3)、酸化鉄(Fe2O3)、イットリウム安定化酸化ジルコニウム(YSZ)、酸化バナジウム(V2O5)、酸化コバルト(CoO)、Sc2O3ドープ酸化ジルコニウム(ScSZ)、酸化ランタンガリウム(LaGaO3)、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)、ガドリニウムドープ酸化セリウム(GDC)及びセリア・ジルコニア固溶体からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記金属酸化物触媒が、CeO2触媒を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
- 前記CeO2触媒が、八面体CeO2触媒及び立方体CeO2触媒から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
- 前記立方体CeO2触媒が、Ce(OH)4及び有機改質剤を超臨界水と接触させ、次いでこれをか焼することによって製造されるものであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
- 飽和炭化水素のモル収量の不飽和炭化水素モル収量に対する比が、無触媒下での分解反応におけるそれより大きいことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- アルカン(メタンを除く)のモル収量のアルケンのモル収量に対する比が無触媒下での分解反応におけるそれより大きいことを特徴とする請求項8に記載の方法。
- 水熱条件下にて、金属酸化物触媒を用いて、重質炭化水素を含む有機化合物を接触分解反応させるため装置であって、
この接触分解反応装置は、反応原料である有機化合物及び水の各導入口、金属酸化物触媒を含む反応触媒層を有する接触反応器、並びに、反応生成物である酸化分解生成物、この酸化分解生成物から生じた水素化生成物及び水素の各排出口を含み、
前記接触反応器では、接触分解反応が、前記金属酸化物触媒の金属イオンの酸化還元を通じて行われ、
この接触分解反応が、(i)還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を水によって酸化して、酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒及び水素を生成すること、(ii)前記有機化合物を酸化状態の価数を有する前記金属酸化物触媒によって酸化して、酸化分解生成物及び還元状態の価数を有する前記金属酸化物触媒を生成すること、並びに(iii)前記酸化分解生成物を、前記(i)によって生じた水素により水素化して、水素化生成物を形成することを含み、
これら(i)〜(iii)の諸工程が、同一反応系内にて同時に進行し、全体としては水及び前記有機化合物から水素、前記酸化分解生成物及び前記水素化生成物が得られ、
前記金属酸化物触媒が、250〜500℃にて1μmol−O2/g−cat以上である酸素吸蔵放出能(OSC)を有する、
接触分解反応装置。 - 請求項10に記載の装置を含むシステムであって、
前記接触反応器の出口において、冷却後、水素ガスを含むガス状生成物と生成物混合溶液とを分離するための分離槽を備え、さらにこのガス状生成物の回収槽とこの生成物混合溶液の回収槽をそれぞれ備え、かつ、前記ガス状生成物及び前記生成物混合溶液のうち多い方の生成流通量に基づいて、前記分離槽から前記回収槽への生成物取り出しのための圧力制御を行うシステム。
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