JP6299084B2 - 細胞培養方法及びそれに用いるマイクロキャリア - Google Patents
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Description
図1は、本発明の細胞培養方法に用いる培養容器を示している。培養容器10は、容器本体11と攪拌手段とにより主に構成されている。この実施形態において、容器本体11は、合成樹脂からなる透明な軟包材で形成した袋である。容器本体11として軟包材を用いることで、培養容器10に可撓性や柔軟性を付与することができる。培養容器10は、さらに細胞の培養に必要とされる、ガス導入機構、温度調整機構、センサー機構等の種々の構成を備えるものであってもよい。
回転軸13の下方に配置された攪拌翼14を回転させると、攪拌翼14によって培養液2が攪拌されて流動し、収容部12の下方から上方に向けた上昇流が発生する。この上昇流により細胞1及びマイクロキャリア3が上方に舞い上げられ、ともに浮遊した状態となる。攪拌速度は、培養液2の粘性等を考慮し、細胞1とマイクロキャリア3を上昇させるのに十分な速度に設定すればよく、例えば、10rpm〜2000rpmの範囲とすることができる。なお、攪拌手段は上記の態様に限られることはなく、電磁スターラー等の回転子により収容部12内の培養液2を攪拌するように構成してもよい。
続いて、マイクロキャリア3の表面積を増加させ、マイクロキャリア3の表面に接着した細胞1を増殖させる。ここで、「マイクロキャリアの表面積を増加させる」とは、各々のマイクロキャリアそれ自体の径が大きくなり表面積が増加する場合や、複数のマイクロキャリア同士が凝集し、その凝集体としての表面積が増加する場合を包含する趣旨である。
この実施形態では、図2に示すように、浮遊しながら次第に下降する細胞1とマイクロキャリア3とを互いに接着させた後、マイクロキャリア3に刺激を加えることにより、マイクロキャリアの水膨潤度を変化させ、マイクロキャリア3自体の径を大きくして表面積を増加させる。そして、その表面積が増加したマイクロキャリア3の表面上で細胞1を増殖させ、細胞培養を行う。刺激により水膨潤度が変化するマイクロキャリアとしては、水膨潤性を有し、温度、光、pH等の刺激によって水膨潤度が変化するものを用いることができる。このような材料としては、特開2010−241859号公報に記載されたものを用いることができる。特に、水膨潤性の粘土鉱物(クレイ)と、その粘土鉱物と水素結合、イオン結合、配位結合、共有結合等を形成できる官能基を有する刺激応答性高分子とを複合化して形成された三次元網目の中に水が包含されている有機無機複合ゲルは好ましく用いられる。この有機無機複合ゲルを構成する水膨潤性粘土鉱物は、好ましくは水中で層状に剥離して均一分散する層状の粘土鉱物であり、具体的には水膨潤性スメクタイト、ナトリウムを層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、水膨潤性雲母等が挙げられる。また、刺激応答性高分子としては、N−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、アクリルアミド等のアクリルアミド類、又はN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、メタクリルアミド等のメタクリルアミド類の中から選択される一種又は複数種を重合して得られる水溶性有機高分子が挙げられる。有機無機複合ゲルは、上述の刺激応答性高分子の重合原料であるモノマーと粘土鉱物と水とを含む均一な溶液又は分散液を調製した後、ラジカル重合開始剤を加え、必要に応じて触媒を添加し、加熱(5℃〜90℃)するによりモノマーを重合させる方法によって得ることができる。
この実施形態を図3に基づき説明する。なお、図3〜6では、便宜上、マイクロキャリア3に接着している細胞は図示を省略し、マイクロキャリア3の表面積を増加させる過程のみを示している。図3の例では、マイクロキャリア3に刺激を加えることにより、マイクロキャリア3の水膨潤度を部分的に変化させている。具体的には、マイクロキャリア3の下部3bの水膨潤度の変化量よりも、マイクロキャリア3の上部3aの水膨潤度の変化量を大きくしている。これにより、マイクロキャリア3自体の径を大きくしつつ、形状が非球形(図3では、傘状)となるようにしている。なお、水膨潤度の部分的な変化は、例えば、浮遊しているマイクロキャリアに対し、容器本体の一方の面から光照射等を行い、光が照射される面と照射されない面とで水膨潤度が異なるようにすることで達成することができる。図3のようにマイクロキャリア3を非球形に膨潤させることによって、細胞の増殖面積を増加させるとともに、培養液中におけるマイクロキャリア3の流動抵抗を大きくして、下降する速度を細胞1と近接させ、細胞1とマイクロキャリア3が接触する確率を上げることができる。
この実施形態では、図4に示すように、細胞が接着したマイクロキャリア3に刺激を加えることにより、マイクロキャリアを親水性から疎水性へと変化させ、複数のマイクロキャリア3同士を疎水性相互作用により凝集させることで表面積を増加させる。そして、その表面積が増加したマイクロキャリア3の凝集体の表面上で細胞を増殖させ、細胞培養を行う。疎水性相互作用により凝集するマイクロキャリアとしては、温度、光、pH等の刺激によって、周囲の水分子に対する親和性が変化するものを用いることができる。具体的には、マイクロキャリア自体が刺激応答性を有するものや、ビーズ表面に刺激応答性高分子が固定化されたものを挙げることができる。マイクロキャリア自体が刺激応答性を有する例としては、特開2006−280206号公報に記載される、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド等の水溶性有機モノマーの重合体と、水膨潤性粘土鉱物(クレイ)とを含んで構成される三次元網目構造を有し、温度により親水性と疎水性が可逆的に変化する高分子ヒドロゲルを挙げることができる。また、マイクロキャリア表面に刺激応答性高分子が固定化された例としては、ビーズ表面に温度により親水性と疎水性が可逆的に変化するポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、メチルセルロース等の温度応答性高分子が固定化されたもの等を挙げることができる。なお、疎水性相互作用により凝集するマイクロキャリアを用いる場合、導入する細胞とマイクロキャリアの質量比は、細胞及びマイクロキャリアの種類や攪拌条件等によっても異なるが、例えば細胞:マイクロキャリア=1:1〜1:200(質量比)とすることが好ましい。
この実施形態では、図5及び6に示すように、細胞が接着したマイクロキャリア3が電荷(図5及び6では正電荷)を有しており、そのマイクロキャリア3に対して逆の電荷を有するイオン(図5)又は逆の電荷を有する粒子4(図6)を作用させ、複数のマイクロキャリア3同士を静電相互作用により凝集させることで表面積を増加させる。そして、その表面積が増加したマイクロキャリア3の凝集体の表面上で細胞を増殖させ、細胞培養を行う。静電相互作用により凝集するマイクロキャリアとしては、正又は負の電荷を有するものを用いることができる。具体的には、正の電荷を有するものとしてコラーゲン等を挙げることができ、負の電荷を有するものとしてはヒアルロン酸、ゼラチン、OH基で表面修飾したキャリア等を挙げることができる。なお、静電相互作用により凝集するマイクロキャリアを用いる場合、導入する細胞とマイクロキャリアの質量比は、細胞及びマイクロキャリアの種類や攪拌条件等によっても異なるが、例えば細胞:マイクロキャリア=1:1〜1:200(質量比)とすることが好ましい。
次に、マイクロキャリア3の表面で増殖した細胞1を回収する。細胞1の回収は、培養容器外で行なってもよいし、培養容器内で行なってもよい。マイクロキャリア3の表面が刺激応答性を有する場合には、所定の刺激を加えて細胞1をマイクロキャリア3の表面から脱離させることができる。マイクロキャリア3の表面が刺激応答性を有しない場合には、トリプシン等を加えて細胞1をマイクロキャリア3の表面から脱離させる。脱離した細胞1とマイクロキャリア3との分離は公知の方法により行なわれるが、典型的には遠心分離法や、フィルタによるろ過を利用して行なわれる。その際、フィルタは培養容器10の外部に設置することもできるし、培養容器10の内部に設置することもできる。
2 培養液
3 マイクロキャリア
3a マイクロキャリアの上部
3b マイクロキャリアの下部
4 逆の電荷を有する粒子
10 培養容器
11 容器本体
12 収容部
13 回転軸
14 攪拌翼
15 上方軸受部
16 下方軸受部
Claims (3)
- 収容部を有する培養容器を準備する工程と、
前記収容部に、細胞、培養液、及び前記細胞との大きさの差が100μm以下であるマイクロキャリアを導入する工程と、
前記細胞と前記マイクロキャリアとを接触させ、前記マイクロキャリアの表面に前記細胞を接着させる工程と、
前記マイクロキャリアの表面に前記細胞を接着させたまま、前記マイクロキャリアに刺激を加えることにより、前記マイクロキャリアの水膨潤度を変化させ、前記マイクロキャリア自体の径を大きくすることで前記細胞が増殖可能な表面積を増加させ、前記マイクロキャリアの表面に接着した前記細胞を増殖させる工程と、
を含む細胞培養方法。 - 収容部を有する培養容器を準備する工程と、
前記収容部に、細胞、培養液、及び前記細胞との大きさの差が100μm以下であるマイクロキャリアを導入する工程と、
前記細胞と前記マイクロキャリアとを接触させ、前記マイクロキャリアの表面に前記細胞を接着させる工程と、
前記マイクロキャリアの表面に前記細胞を接着させたまま、前記マイクロキャリアに刺激を加えることにより、前記マイクロキャリアを親水性から疎水性へと変化させ、複数の前記マイクロキャリア同士を凝集させることで前記細胞が増殖可能な表面積を増加させ、前記マイクロキャリアの表面に接着した前記細胞を増殖させる工程と、
を含む細胞培養方法。 - 収容部を有する培養容器を準備する工程と、
前記収容部に、細胞、培養液、及び前記細胞との大きさの差が100μm以下であり且つ電荷を有するマイクロキャリアを導入する工程と、
前記細胞と前記マイクロキャリアとを接触させ、前記マイクロキャリアの表面に前記細胞を接着させる工程と、
前記マイクロキャリアの表面に前記細胞を接着させたまま、前記電荷とは逆の電荷を有するイオン又は粒子を前記マイクロキャリアに作用させ、複数の前記マイクロキャリア同士を凝集させることで前記細胞が増殖可能な表面積を増加させ、前記マイクロキャリアの表面に接着した前記細胞を増殖させる工程と、
を含む細胞培養方法。
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