以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、充放電制御回路300を備える充放電制御システム500の構成の概要を示す。充放電制御システム500は、蓄電装置10、充放電制御回路300およびチャージャー/負荷部60を備える。また、充放電制御回路300は、基準電圧生成部20、切替部30、電圧選択部40およびコンパレータ50を備える。チャージャー/負荷部60は、チャージャーと負荷を有する。充放電制御回路300は、過放電防止回路または過充電防止回路として動作する。
充放電制御回路300に負荷が接続されている場合、蓄電装置10は、負荷に電力を供給する。このとき、蓄電装置10から充放電制御回路300に入力される入力電圧をVinとする。また、チャージャーが充放電制御回路300に接続されている場合、蓄電装置10は、チャージャーにより充電される。このとき、チャージャーから充放電制御回路300に入力される充電電圧をVchgとする。例えば、蓄電装置10は、リチウムイオンバッテリー(LIB)等のキャパシタである。
充放電制御回路300は、入力された入力電圧Vinが予め定められた放電閾値電圧Vthdを超えたか否かによって、蓄電装置10から負荷に放電させるか否かを制御する。また、充放電制御回路300は、入力された充電電圧Vchgが予め定められた充電閾値電圧Vthcを超えたか否かによって、チャージャーで蓄電装置10を充電するか否かを制御する。放電閾値電圧Vthdおよび充電閾値電圧Vthcは、上側および下側の異なる2種類の値をそれぞれ有する。充放電制御回路300は、放電閾値電圧Vthdおよび充電閾値電圧Vthcの値を適宜変更することにより、ヒステリシスに動作する。
基準電圧生成部20は、放電閾値電圧Vthdもしくは充電閾値電圧Vthc(目標電圧)に対応する予め定められた基準電圧を生成する。本例の基準電圧生成部20は、不揮発性記憶素子を有する上側基準電圧生成部25および下側基準電圧生成部26を備える。基準電圧生成部20は、不揮発性記憶素子を調整することで、上側基準電圧生成部25および下側基準電圧生成部26が生成する基準電圧を調整する。
上側基準電圧生成部25は、放電閾値電圧Vthdもしくは充電閾値電圧Vthcに対応する予め定められた上側基準電圧VrefHを生成して、電圧選択部40に出力する。下側基準電圧生成部26は、放電閾値電圧Vthdもしくは充電閾値電圧Vthcに対応する予め定められた下側基準電圧VrefLを生成して、電圧選択部40に出力する。下側基準電圧VrefLは、上側基準電圧VrefHより小さくてよい。
電圧選択部40は、上側基準電圧VrefHおよび下側基準電圧VrefLのいずれかを選択して、コンパレータ50に出力する。具体的には、電圧選択部40は、入力電圧Vinが上側基準電圧VrefHにより定まる閾値電圧を超えた場合に、下側基準電圧VrefLを選択する。また、電圧選択部40は、入力電圧Vinが下側基準電圧VrefLにより定まる閾値電圧以下となった場合に、上側基準電圧VrefHを選択する。これにより、充放電制御回路300は過放電防止用あるいは過充電防止用の所定の電圧それぞれでヒステリシスに動作する。
コンパレータ50の出力は、入力電圧Vinが放電閾値電圧Vthdを超えたか否かにより遷移する。本例では、入力電圧Vinが放電閾値電圧Vthd以下の場合に、コンパレータ50の出力は、接地電位等の基準電位となる。また、入力電圧Vinが放電閾値電圧Vthdを超えた場合に、コンパレータ50の出力は、入力電圧Vinと略等しい電圧となる。コンパレータ50は、出力が反転したか否かに基づいて、入力電圧Vinが放電閾値電圧Vthdを超えたか否かを判定する。本明細書では、コンパレータ50の出力が、基準電位から入力電圧Vinに変化すること、および、入力電圧Vinから基準電位に変化することを、コンパレータ50の出力が「反転する」と称する。
また、コンパレータ50の出力は、充電電圧Vchgが充電閾値電圧Vthcを超えたか否かにより遷移する。本例では、充電電圧Vchgが充電閾値電圧Vthc以下の場合に、コンパレータ50の出力は、充電電圧Vchgと略等しい電圧となる。また、充電電圧Vchgが充電閾値電圧Vthcを超えた場合に、コンパレータ50の出力は、接地電位等の基準電位となる。コンパレータ50は、出力が反転したか否かに基づいて、充電電圧Vchgが充電閾値電圧Vthcを超えたか否かを判定する。
切替部30は、コンパレータ50の出力信号に応じてオンオフを切り替える。過放電防止回路として動作する充放電制御回路300において、切替部30は、入力電圧Vinが放電閾値電圧Vthdを超えた場合に、入力電圧Vinをチャージャー/負荷部60に出力する。一方、切替部30は、入力電圧Vinが放電閾値電圧Vthd以下の場合に、入力電圧Vinがチャージャー/負荷部60へ出力されるのを遮断する。これにより、充放電制御システム500は、蓄電装置10の過放電を防止する。
過充電防止回路として動作する充放電制御回路300において、切替部30は、充電電圧Vchgが充電閾値電圧Vthc以下の場合に、充電電圧Vchgで蓄電装置10を充電する。一方、切替部30は、充電電圧Vchgが充電閾値電圧Vthcを超えた場合に、充電電圧Vchgが蓄電装置10へ出力されるのを遮断する。これにより、充放電制御システム500は、蓄電装置10の過充電を防止する。
チャージャー/負荷部60は、蓄電装置10の放電時に、蓄電装置10が放電した入力電圧Vinの電力により動作する。また、チャージャー/負荷部60は、蓄電装置10の充電時に、充電電圧Vchgを出力して蓄電装置10を充電する。
図2は、過放電防止回路100の構成の一例を示す。過放電防止回路100は、充放電制御回路300が過放電防止回路として動作する場合の一例である。過放電防止回路100は、基準電圧生成部20、第1切替部31、第1電圧選択部41および第1コンパレータ51を備える。第1電圧選択部41は、スイッチSWH、SWLおよびNOT回路を備える。
スイッチSWHには、上側基準電圧生成部25が出力した上側基準電圧VrefHが入力される。一方、スイッチSWLには、下側基準電圧生成部26が出力した下側基準電圧VrefLが入力される。スイッチSWHおよびSWLは、入力された基準電圧を第1コンパレータ51の正側入力端子に出力する。
また、スイッチSWHは、第1コンパレータ51の出力をNOT回路により反転した信号に応じてオンオフされる。一方、スイッチSWLは、第1コンパレータ51が出力した信号に応じてオンオフされる。本例のスイッチSWHおよびSWLは、それぞれオンオフが逆となるように制御される。
第1切替部31は、還流ダイオード33およびPMOSトランジスタ34を備える。PMOSトランジスタ34および還流ダイオード33はそれぞれ並列に接続される。PMOSトランジスタ34のゲート端子には、第1コンパレータ51の出力信号が反転して入力される。PMOSトランジスタ34の一端は蓄電装置10に接続されて、他端はチャージャー/負荷部60に接続される。還流ダイオード33は、PMOSトランジスタ34がオフの状態において、蓄電装置10が放電される場合に流れる電流を防止する向きに設けられる。一方で、還流ダイオード33は、蓄電装置10が充電される場合に流れる電流には影響しない。
本例では、第1コンパレータ51の出力がHの時にSWHがオフされて、SWLはオンされる。一方、第1コンパレータ51の出力がLの時にSWHがオンされて、SWLはオフされる。これにより、過放電防止回路100は、入力電圧Vinが放電閾値電圧Vthdを超えた場合に、入力電圧Vinをチャージャー/負荷部60に出力して、入力電圧Vinが放電閾値電圧Vthd以下の場合に、入力電圧Vinがチャージャー/負荷部60へ出力されるのを遮断して、過放電を防止する。
図3は、過充電防止回路200の構成の一例を示す。過充電防止回路200は、充放電制御回路300が過充電防止回路として動作する場合の一例である。過充電防止回路200は、基準電圧生成部20、第2切替部32、第2電圧選択部42、第2コンパレータ52および第2インバータ54を備える。過充電防止回路200の構成は基本的に過放電防止回路100の構成と同様であってよい。但し、第2コンパレータ52の負側入力端子には、チャージャー/負荷部60が接続される。また、過充電防止回路200に設けられた第2切替部32は、PMOSトランジスタ34がオフの状態において、蓄電装置10が充電される場合に流れる電流を遮断する向きに設けられる。
第2インバータ54は、第2コンパレータ52と第2切替部32との間に設けられる。第2インバータ54は、CMOSインバータ回路を備え、各トランジスタには還流ダイオード33が並列に設けられる。第2インバータ54のCMOSインバータ回路の正側電源端子は、チャージャー/負荷部60に接続されて、負側電源端子はグラウンドに接続される。還流ダイオード33は、第2インバータ54のトランジスタがオフされた場合に、チャージャー/負荷部60から流れる電流を遮断する向きに設けられる。
本例では、第1コンパレータ52の出力がHの時にSWHがオフして、SWLはオンされる。一方、第1コンパレータ52の出力がLの時にSWHがオンして、SWLはオフされる。これにより、過充電防止回路200は、充電電圧Vchgが充電閾値電圧Vthc以下の場合に、充電電圧Vchgで蓄電装置10を充電して、充電電圧Vchgが充電閾値電圧Vthcを超えた場合に、充電電圧Vchgが蓄電装置10へ出力されるのを遮断して、過充電を防止する。
図4は、充放電制御システム500の構成の一例を示す。充放電制御回路300は、過放電防止回路100および過充電防止回路200を備える。過放電防止回路100および過充電防止回路200は、異なるチップ上に設けられてもよく、また同一のチップ内に設けられてもよい。
過放電防止回路100および過充電防止回路200は、蓄電装置10とチャージャー/負荷部60との間に直列に接続される。本例の過放電防止回路100は、過充電防止回路200と蓄電装置10との間に配置されるが、過放電防止回路100および過充電防止回路200が接続される順番はこれに限定されない。第1切替部31および第2切替部32は、蓄電装置10とチャージャー/負荷部60との間に直列に接続される。
チャージャー/負荷部60は、充電IC61および負荷62を備える。充電IC61は、蓄電装置10を充電するための電力を有する。また、充電IC61は、蓄電装置10が出力した入力電圧Vinを負荷62に放電することもある。
例えば、充放電制御回路300は、2.5Vよりも小さい電圧における蓄電装置10の過放電、および、4.2Vよりも大きい電圧における蓄電装置10の過充電を防止する。この場合、充放電制御回路300は、第1切替部31を2.6Vでオンして、2.5Vでオフする。また、充放電制御回路300は、第2切替部32を4.2Vでオフして、4.15V以下でオンする。
図5は、充放電制御システム500の構成の一例を示す。本例の第1切替部31は、充電IC61とグラウンドとの間に接続される点で図4と異なる。また、過放電防止回路100は、第1コンパレータ51と第1切替部31との間に第1インバータ53を備える。
第1切替部31は、充電IC61とグラウンドとの間に接続されるので、第1切替部31がオフされると、充電IC61が接地されなくなり蓄電装置10の放電を停止する。つまり、過放電防止回路100は、第1切替部31のオンオフを切り替えることにより、蓄電装置10の過放電を防止する。
第1インバータ53は、第1コンパレータ51の出力を反転して、第1切替部31に出力する。第1インバータ53は、CMOSインバータ回路を備え、各トランジスタには還流ダイオード33が並列に設けられる。第1インバータ53のCMOSインバータ回路の正側電源端子は、過充電防止回路200および充電IC61に接続されて、負側電源端子はグラウンドに接続される。還流ダイオード33は、第2インバータ54のトランジスタがオフされた場合に、蓄電装置10から流れる電流を遮断する向きに設けられる。
過充電防止回路200は、第2コンパレータ52の出力を直接第2切替部32に出力する。第2切替部32は、蓄電装置10とチャージャー/負荷部60との間に接続される。充電IC61は、第2切替部32がオフされると、充電IC61に電流が流れなくなり蓄電装置10の充電を停止する。
充電IC61は、USB(Universal Serial Bus)に接続されてよい。例えば、USBは、充放電制御システム500外部の蓄電装置に接続されて充電IC61を充電する電力を供給する。また、USBは、充放電制御システム500の外部に設けられた負荷に接続されて、電力を供給するとしてよい。
図6は、充放電制御システム500の構成の一例を示す。本例の充放電制御システム500は、第1切替部31および第2切替部32が過放電防止回路100および過充電防止回路200の外部に配置される点で、図4、5と異なる。ここで、「外部」とは、過放電防止回路100がそれぞれチップ上に構成される場合に、当該チップの外側を指してよい。また、第1切替部31は、過放電防止回路100が同一の基板内に集積された場合に、当該基板と異なる基板上に形成されてよい。第2切替部32の場合も同様である。
第1切替部31および第2切替部32は、蓄電装置10と充電IC61との間に直列に接続される。第1切替部31は、第2切替部32と充電IC61との間に接続される。第1切替部31および第2切替部32は、過放電防止回路100および過充電防止回路200の外部に設けられるので、過放電防止回路100および過充電防止回路200の内部に設けられるよりも多くの電流を流すことができる。
なお、第1インバータ53は2段のCMOSインバータ回路を備え、第2インバータ54は1段のCMOSインバータ回路を備える。第1コンパレータ51および第2コンパレータ52の負側入力端子はいずれも蓄電装置10に接続される。例えば、第1インバータ53は、第2インバータ54が奇数段のCMOSインバータ回路を備える場合に、偶数段のCMOSインバータ回路を備え、第2インバータ54が偶数段のCMOSインバータ回路を備える場合に、奇数段のCMOSインバータ回路を備える。
第1切替部31が過放電防止回路100の外部に配置された場合に、第2切替部32が過充電防止回路200の内部に配置されるとしてもよい。また、第2切替部32が過充電防止回路200の外部に配置された場合に、第1切替部31は過放電防止回路100の内部に配置されるとしてもよい。
図7は、充放電制御システム500の構成の一例を示す。本例の充放電制御システム500は、第1切替部31および第2切替部32が蓄電装置10とグラウンドとの間に直列に接続される点で図6と異なる。第1コンパレータ51および第2コンパレータ52の負側入力端子は、蓄電装置10に接続される。
本例の第1切替部31および第2切替部32は、それぞれ過放電防止回路100および過充電防止回路200の外部に配置される。第1切替部31は、蓄電装置10と第2切替部32との間に直列に接続される。本例の第1切替部31は、第2切替部32と蓄電装置10との間に接続されるが、第1切替部31および第2切替部32が接続される順番はこれには限られない。
以上の通り、充放電制御回路300は、蓄電装置10の過充電および過放電を防止できる。なお、第1切替部31および第2切替部32は、グラウンドと蓄電装置10との間、蓄電装置10と充電IC61との間および充電IC61とグラウンドとの間のいずれかに、少なくとも1つずつ設けられればよい。また、充放電制御回路300は、第1切替部31および第2切替部32がPMOSトランジスタ34を備える場合について説明した。しかし、第1切替部31および第2切替部32は、NMOSトランジスタを備えてもよい。また、第1切替部31および第2切替部32の一方がPMOSトランジスタで他方がNMOSトランジスタを備えてもよい。次に、蓄電装置10の特性に応じた基準電圧の設定方法について説明する。
図8Aは、充放電制御回路300の動作の一例を示す。横軸は充放電制御回路300に入力される入力電圧Vin[V]を、縦軸は充放電制御回路300の出力電圧Vout[V]を示す。
上述したように、充放電制御回路300は、過放電、過充電検出用の閾値においてヒステリシスに動作する。つまり、目標電圧(放電閾値電圧Vthd、充電閾値電圧Vthc)は、コンパレータ50の出力の状態に応じて異なる。具体的には、コンパレータ50が基準電位を出力している場合の第1目標電圧はV1に、コンパレータ50が入力電圧Vinと略等しい電圧を出力している場合の第2目標電圧はV2に設定される。目標電圧は、充放電制御回路300の要求される仕様に応じて適宜変更されてよい。
充放電制御回路300の出力電圧Voutが基準電位の状態で、入力電圧Vinが増加して第1目標電圧V1になると、充放電制御回路300の出力電圧Voutとして、入力電圧Vinと略等しい電圧が出力される。また、充放電制御回路300の出力電圧Voutが入力電圧Vinと略等しい状態で、入力電圧Vinが低下して第2目標電圧V2になると、コンパレータ50の出力電圧VOUTは基準電位となる。
図8Bは、過放電防止回路100の動作の一例を示す。横軸は過放電防止回路100に入力される入力電圧Vin[V]を、縦軸は過放電防止回路100の出力電圧Vout[V]を示す。
過放電防止回路100は、第1目標電圧V1として上側放電閾値電圧V1dを有して、第2目標電圧V2として下側放電閾値電圧V2dを有する。具体的には、第1コンパレータ51が基準電位を出力している場合、放電閾値電圧Vthdは、上側放電閾値電圧V1dに設定される。また、第1コンパレータ51が入力電圧Vinと略等しい電圧を出力している場合、放電閾値電圧Vthdは、下側放電閾値電圧V2dに設定される。
上側放電閾値電圧V1dおよび下側放電閾値電圧V2dは、放電閾値電圧Vthdの一例であり、蓄電装置10の特性に応じて設定される。上側放電閾値電圧V1dおよび下側放電閾値電圧V2dは、蓄電装置10の過放電を防止するような電圧に設定される。
図8Cは、過充電防止回路200の動作の一例を示す。横軸は過充電防止回路200に入力されるチャージャーからの充電電圧Vchg[V]を、縦軸は過充電防止回路200の蓄電装置10への出力電圧[V]を示す。
過充電防止回路200は、第1目標電圧V1として上側充電閾値電圧V1cを有して、第2目標電圧V2として下側充電閾値電圧V2cを有する。具体的には、第2コンパレータ52が充電電圧Vchgと略等しい電圧を出力している場合、充電閾値電圧Vthcは、上側充電閾値電圧V1cに設定される。また、第2コンパレータ52が基準電位を出力している場合、充電閾値電圧Vthcは、下側充電閾値電圧V2cに設定される。
上側充電閾値電圧V1cおよび下側充電閾値電圧V2cは、充電閾値電圧Vthcの一例であり、蓄電装置10の特性に応じて設定される。上側充電閾値電圧V1cおよび下側充電閾値電圧V2cは、蓄電装置10の過充電を防止するような電圧に設定される。
図9は、コンパレータ50の構成の一例を示す。コンパレータ50は、CMOSインバータ55および出力回路56を備える。
CMOSインバータ55の電源入力端子にはコンパレータ50に入力された入力電圧Vinが入力される。CMOSインバータ55の入力端子には、コンパレータ50に入力された基準電圧が入力される。コンパレータ50は、電源端子に入力された入力電圧Vinおよび入力端子に入力された基準電圧に応じてスイッチング動作する。なお、電源端子とは、CMOSインバータ55のソース端子に接続される端子を指し、入力端子とは、CMOSインバータ55のゲート端子に接続される端子を指す。
CMOSインバータ55は、CMOSトランジスタ(Mp、Mn)を有する。CMOSインバータ55は、電源端子入力型のCMOSインバータであり、正側電源端子に入力電圧Vinが入力され、負側電源端子にGNDが接続される。本例のCMOSインバータ55の正側電源端子とは、CMOSトランジスタMpのソースに接続される端子であり、負側電源端子とは、CMOSトランジスタMnのソースに接続される端子である。本例のCMOSインバータ55の正側電源端子は、入力電圧Vinが入力される入力電圧端子として機能する。また、CMOSインバータ55の入力端子には、放電閾値電圧Vthdに対応する上側基準電圧VrefHおよび下側基準電圧VrefLが入力される。上述したように、CMOSインバータ55の入力端子とは、CMOSトランジスタ(Mp、Mn)の各ゲートに接続される端子を指す。本例のCMOSインバータ55の入力端子は、基準電圧が入力される基準電圧端子として機能する。
出力回路56は、CMOSインバータ55が出力した出力電圧Voutiに応じた電圧Voutcを出力する。例えば出力回路56は、CMOSインバータ55と多段接続されるCMOSインバータ回路を有してよく、その他の一般的な出力用回路を有してもよい。例えば出力回路56は、CMOSインバータ55の出力電圧Voutiを出力するか否かを切り替えるPMOSスイッチを有してよく、CMOSインバータ55の出力電圧Voutiに応じて動作するソースを接地電位に接続したNMOS回路を有してもよい。また、出力回路56は、複数種類の出力用回路、および、それぞれの出力用回路に対応する出力端子を有してよい。
CMOSインバータ55が接地電位を出力するか、または、入力電圧Vinに略等しい電圧を出力するかは、入力電圧Vinおよび基準電圧との差分が、CMOSインバータ55におけるPMOSトランジスタMpの閾値以上か否かにより定まる。CMOSインバータ55の出力が反転する動作点(目標電圧)は、基準電圧により調整することができる。本例では、出力回路56の出力に応じて、電圧選択部40が基準電圧VrefHおよびVrefLのいずれかを選択することで、出力回路56の出力に応じて目標電圧を変更することができる。これにより、充放電制御回路300は、図8A−Cに示したようにヒステリシス動作する。
充放電制御回路300が動作すべき目標電圧に対して、どのような基準電圧をコンパレータ50に入力すべきかは、コンパレータ50に含まれるCMOSインバータ55の特性により定まる。ただし、CMOSインバータ55の特性はばらつきを有するので、充放電制御回路300が目標電圧で精度よく動作するためには、CMOSインバータ55の特性のばらつき等を考慮した基準電圧を用いることが好ましい。
本例では、充放電制御回路300が過放電防止回路100として動作する場合について説明した。即ち、CMOSインバータ55の電源入力端子には、入力電圧Vinが入力される。しかしながら、充放電制御回路300が過充電防止回路200として動作する場合においても、コンパレータ50は同様に動作する。但し、CMOSインバータ55の電源端子には充電電圧Vchgが入力されて、入力端子には充電閾値電圧Vthcに対応する上側基準電圧VrefHおよび下側基準電圧VrefLが入力される。
図10は、充放電制御回路300の基準電圧を設定する構成の一例を示す。充放電制御回路300は、基準電圧が放電閾値電圧Vthdに対応する場合に、過放電防止回路100として動作する。また、充放電制御回路300は、基準電圧が充電閾値電圧Vthcに対応する場合に、過充電防止回路200として動作する。
本例の充放電制御回路300は、設定される目標電圧でコンパレータ50を動作させるための基準電圧を検出する基準電圧検出モード、検出した基準電圧を基準電圧生成部20に出力させるべく基準電圧生成部20を設定する基準電圧設定モード、および、設定した基準電圧を用いて入力電圧Vinと目標電圧とを比較する実動作モードの3つの動作モードを有する。また、充放電制御回路300は、図1に示した構成に加え、モード選択部80、テスト回路70および電圧計75を更に備える。また、充放電制御回路300は、充放電制御回路300の内部と外部とを電気的に接続する各端子VPP、DATA、SCLK、PULSE、GND、VIN、VREF、IREF、VMON、OUTを有する。なお、Vref端子およびIREF端子は同一端子であってよい。
モード選択部80は、充放電制御回路300の動作モードを選択する。モード選択部80は、VPP端子から入力される電圧に基づいて、動作モードを選択してよい。モード選択部80は、選択した動作モードに応じて、電圧選択部40、上側基準電圧生成部25および下側基準電圧生成部26を制御する。
実動作モードにおいて、モード選択部80は、コンパレータ50の出力状態を示す信号に基づいて電圧選択部40に基準電圧を選択させる。これにより、図8A−Cに示したヒステリシス動作を実現する。テスト回路70は、カレントミラー71およびアンプ回路72を有する。テスト回路70は、実動作モードでは動作せず、基準電圧設定モードにおいて動作する。また、本例の電圧選択部40は、上側基準電圧生成部25が出力する上側基準電圧VrefH、下側基準電圧生成部26が出力する下側基準電圧VrefL、および、VREF端子に外部から入力される設定電圧のいずれかを、動作モードに応じて選択して、コンパレータ50に入力する。
まず、基準電圧検出モードにおける充放電制御回路300の動作を説明する。図10において、主に基準電圧検出モードで信号が流れる線を太線で示している。モード選択部80は、基準電圧検出モードを選択した場合、電圧選択部40にVREF端子から出力される設定電圧Vrefを選択させる。基準電圧検出モードにおいては、VREF端子には、徐々にレベルが変化する設定電圧が入力される。電圧選択部40は、徐々に変化する設定電圧Vrefを選択して、CMOSインバータ55の入力端子に入力する。
また、基準電圧検出モードにおいては、VIN端子からコンパレータ50に、充放電制御回路300が動作する目標電圧が入力される。本例では、ヒステリシス動作すべく、充放電制御回路300は第1目標電圧V1および第2目標電圧V2の2つの目標電圧で動作する。この場合、VIN端子には、第1目標電圧V1および第2目標電圧V2が順番に入力される。VIN端子は、コンパレータ50の電源端子に接続される。
コンパレータ50は、入力された設定電圧Vrefおよび目標電圧に応じて動作する。設定電圧Vrefが徐々に変化するので、設定電圧Vrefおよび目標電圧の差分が所定値以上となった場合に、コンパレータ50の出力状態が遷移する。コンパレータ50の出力端子は、OUT端子に接続される。コンパレータの出力状態が遷移したときの設定電圧Vrefのレベルが、当該目標電圧に対応する基準電圧のレベルとなる。コンパレータ50の出力状態は、OUT端子に接続される外部機器が監視してよく、電圧計75等の充放電制御回路300の内部回路が監視してもよい。
図11は、基準電圧検出モードにおける基準電圧(VrefH、VrefL)の検出方法の概要を示す。縦軸は、VIN端子から入力される入力電圧Vin、CMOSインバータ55の入力端子に入力される設定電圧Vrefおよび基準電圧(VrefH、VrefL)の電圧レベル[V]を示しており、横軸は時刻tを示す。
VIN端子に入力される目標電圧は、時刻の経過に伴い徐々に増加して、予め定められた目標電圧に到達すると一定に保持される。設定電圧Vrefは、予測される上側基準電圧VrefHよりも予め定められた値だけ大きい初期値まで、目標電圧と共に増加する。設定電圧Vrefが初期値になった後、設定電圧Vrefを徐々に変化(本例では減少)させて、CMOSインバータ55の出力が反転するときの設定電圧Vrefを検出する。検出された設定電圧Vrefは、入力されている目標電圧に対する基準電圧となる。このような処理を、第1目標電圧V1および第2目標電圧V2の双方に対して行い、それぞれに対応する基準電圧VrefHおよびVrefLを検出する。モード選択部80は、検出した設定電圧に基づいて、基準電圧生成部20を設定する。なお、入力電圧Vinおよび設定電圧の変化の態様は、図11に示した例に限定されない。入力電圧Vinが目標電圧に達した後で、コンパレータ50の出力状態が遷移するように設定電圧を変化させればよい。
図12は、本実施形態に係る基準電圧生成部20の備える基本回路を示す。上側基準電圧生成部25および下側基準電圧生成部26は、それぞれ基準電圧生成部20と同一の回路を有してよい。本実施形態に係る基準電圧生成部20は、図12(b)に示すように、エンハンスメント状態とディプレッション状態の2状態にすることができる素子を利用して、基準電圧を生成する。
図12(a)は、ディプレッション型MOSトランジスタM1とエンハンスメント型MOSトランジスタM2で構成される基準電圧生成部20を示す。図12(a)の各MOSトランジスタは、ドープ量等の製造時におけるパラメータの相違により、それぞれディプレッション型およびエンハンスメント型として機能する。
図12(b)は、ディプレッション型として機能させる第1MOSトランジスタM1と、エンハンスメント型として機能させる第2MOSトランジスタM2とを有する基準電圧生成部20を示す。第1MOSトランジスタM1と第2MOSトランジスタM2は、フローティングゲートおよびコントロールゲートをそれぞれ有する。本例の第1MOSトランジスタM1および第2MOSトランジスタM2は、コントロールゲートに印加される電圧に応じて、フローティングゲートが保存する電荷の状態が制御され、保存された電荷量に応じた特性を示す不揮発性記憶素子として機能する。フローティングゲートが保存する電荷の状態とは、例えばフローティングゲートが保存する電荷の正負および電荷量を指す。本例では、第1MOSトランジスタM1および第2MOSトランジスタM2の閾値電圧が、フローティングゲートが保存する電荷の状態に応じて変化する。これにより、それぞれのMOSトランジスタは、ディプレッション型またはエンハンスメント型として機能する。
第1MOSトランジスタM1は、ゲート端子とソース端子とが互いに接続され、ドレイン端子は電源に接続される。第1MOSトランジスタM1は、フローティングゲートにプラスチャージが注入されてディプレッション型として機能する。ディプレッション型とは、ゲート端子に電圧0Vが入力された場合に、トランジスタがオフする素子のことであり、いわゆるノーマリーオフの素子を指す。
第2MOSトランジスタM2は、ゲート端子とドレイン端子とが互いに接続され、ソース端子は接地される。また、第2MOSトランジスタM2のドレイン端子は、第1MOSトランジスタM1のソース端子に接続される。第2MOSトランジスタM2は、フローティングゲートにマイナスチャージが注入されてエンハンスメント型として機能する。エンハンスメント型とは、ゲート端子に電圧0Vが入力された場合に、トランジスタがオンする素子のことであり、いわゆるノーマリーオンの素子を指す。基準電圧生成部20は、第1MOSトランジスタM1および第2MOSトランジスタM2の接続点から基準電圧を出力する。
図12(b)に示した基準電圧生成部20は、製造後に不揮発性記憶素子の状態を変更できるので、設計時と製造後の特性のバラツキを補償できる。そのため、基準電圧生成部20は、第1MOSトランジスタM1および第2MOSトランジスタM2の接続点から出力される基準電圧を調整できる。モード選択部80は、第1MOSトランジスタM1および第2MOSトランジスタM2のフローティングゲートが保存する電荷の状態を制御することで、基準電圧を調整する。
図13は、トンネル酸化膜を備える不揮発性記憶素子90を示す。不揮発性記憶素子90は、基板91、トンネル酸化膜94、フローティングゲート95、絶縁膜96およびコントロールゲート97を備える。
不揮発性記憶素子90は、フローティングゲート95を有することにより、エンハンスメント状態とディプレッション状態にすることができるNMOSタイプの素子である。本例の基板91は、p型基板で構成される。基板91は、ソース領域92およびドレイン領域93を有する。ソース領域92およびドレイン領域93は、イオン注入等の一般的なCMOSプロセスを用いて形成される。基板91上には、トンネル酸化膜94、フローティングゲート95、絶縁膜96およびコントロールゲート97の順に積層して形成される。
コントロールゲート97は、不揮発性記憶素子90のゲート端子に印加された電圧により、ソース領域92とドレイン領域93との間に形成されたチャネル領域を制御する。これにより、不揮発性記憶素子90は、ソース領域92とドレイン領域93との間に流れる電流をオンオフする。
絶縁膜96は、フローティングゲート95とコントロールゲート97との間を絶縁する。絶縁膜96は、CMOSプロセスで使用される一般的な絶縁膜で形成される。フローティングゲート95に蓄積された電荷の状態は、コントロールゲート97に印加された電圧に応じて変化する。例えば、コントロールゲート97に印加された電圧に応じて、フローティングゲート95に蓄積された電荷量が、正または負の方向に変動する。これにより、不揮発性記憶素子90の閾値電圧が変動し、ディプレッション状態またはエンハンスメント状態に制御される。
トンネル酸化膜94は、通常、基板91とフローティングゲート95との間を絶縁する。しかし、トンネル酸化膜94は、コントロールゲート97に予め定められた値以上の電圧が印加されると、FNトンネリング(ファウラーノルドハイム トンネリング)により導通状態となる。FNトンネリングとは、絶縁体の中を電子がトンネルする場合の移動状態を指す。フローティングゲート95は、FNトンネリングによりソース領域92から電子が注入され、または、電子を放出する。これにより、フローティングゲート95が保存する電荷の状態が制御される。
図14は、基準電圧生成部20の回路構成の一例を示す。基準電圧生成部20が、基準電圧を出力している状態において、スイッチ(SW)は以下のように制御される。
SWl:VDD(VIN)
SW2:VSS
SW3、SW4:OPEN
SW5、SW6、SW7、SW8:SHORT(接続)
SW9、SW10:任意
基準電圧生成部20は、スイッチが図14のように制御された状態において、第1MOSトランジスタMlがディプレッション状態、第2MOSトランジスタM2がエンハンスメント状態のとき、基準電圧が生成される。なお、VDD端子は、上側基準電圧生成部25および下側基準電圧生成部26としては、電源電圧を印加する端子として機能する。一方で、VDD端子には、充放電制御回路300のVIN端子から入力される電圧が入力されるので、充放電制御回路300のVIN端子に対応する。
より具体的には、基準電圧生成部20は、コントロールゲートおよびフローティングゲートを有して、ディプレッション型として機能する第1MOSトランジスタMlを備える。また、基準電圧生成部20は、コントロールゲートおよびフローティングゲートを有して、エンハンスメント型として機能する第2書込MOSトランジスタM2を備える。第2書込MOSトランジスタM2は、第1MOSトランジスタMlと直列に接続される。第1MOSトランジスタMlおよび第2書込MOSトランジスタM2は、フローティングゲートに注入される電荷がトンネルするトンネル酸化膜を有する不揮発性記憶素子である。これにより、基準電圧生成部20は、第1MOSトランジスタMlおよび第2書込MOSトランジスタM2の接続点から基準電圧を出力する。
図15は、基準電圧生成部20の回路構成の一例を示す。上側基準電圧生成部25および下側基準電圧生成部26は、それぞれ図15に示す基準電圧生成部20と同一の回路を有してよい。基準電圧生成部20は、トンネル酸化膜を有する第1書込MOSトランジスタM1wおよびトンネル酸化膜を有さない第1出力MOSトランジスタM1r、ならびに、トンネル酸化膜を有する第2書込MOSトランジスタM2wおよびトンネル酸化膜を有さない第2出力MOSトランジスタM2rを含む。
第1書込MOSトランジスタM1w、および、第1出力MOSトランジスタM1rは、フローティングゲートおよびコントロールゲートをそれぞれ有する。第1書込MOSトランジスタM1wのフローティングゲートおよびコントロールゲートは、第1出力MOSトランジスタM1rのフローティングゲートおよびコントロールゲートとそれぞれ電気的に接続される。
第1書込MOSトランジスタM1wのソース端子は、第2書込MOSトランジスタM2wのドレイン端子に接続される。図14に示した構成と同様に、第1書込MOSトランジスタM1wおよび第2書込MOSトランジスタM2wを接続するか否かを切り替えるスイッチが更に設けられてもよい。スイッチSW1は、第1書込MOSトランジスタM1wのドレイン端子に、電圧VPPを印加するか、接地電位等の電圧VSSを印加するかを選択する。スイッチSW2は、第2書込MOSトランジスタM2wのソース端子に、電圧VPPを印加するか、接地電位等の電圧VSSを印加するかを選択する。
第1出力MOSトランジスタM1rのドレイン端子には、所定の電圧VDDが印加される。第1出力MOSトランジスタM1rのソース端子は、第2出力MOSトランジスタM2rのドレイン端子に接続される。当該接続点における電圧が、基準電圧として出力される。第2出力MOSトランジスタM2rのソース端子には、電圧VSSが印加される。
第2書込MOSトランジスタM2wおよび第2出力MOSトランジスタM2rは、フローティングゲートおよびコントロールゲートをそれぞれ有する。第2書込MOSトランジスタM2wのフローティングゲートおよびコントロールゲートは、第2出力MOSトランジスタM2rのフローティングゲートおよびコントロールゲートとそれぞれ電気的に接続される。
第1書込MOSトランジスタM1wおよび第2書込MOSトランジスタM2wは、トンネル酸化膜を有している。このため、当該トンネル酸化膜を介して、第1書込MOSトランジスタM1wおよび第2書込MOSトランジスタM2wのフローティングゲートの電荷の状態を制御して、それぞれの閾値電圧Vthを制御することができる。そして、上述したように、2つの第1MOSトランジスタM1w、rのフローティングゲートおよびコントロールゲートが互いに電気的に接続されるので、第1出力MOSトランジスタM1rは、第1書込MOSトランジスタM1wと同一の閾値電圧Vthを有する。また、第2出力MOSトランジスタM2rも同様に、第2書込MOSトランジスタM2wと同一の閾値電圧Vthを有する。
なお、第1出力MOSトランジスタM1rおよび第2出力MOSトランジスタM2rは、トンネル酸化膜を有していないので、電源電圧VDDを印加し続けた場合においても、不揮発性記憶素子のトンネル酸化膜から電子がリークするディスターブによる閾値電圧Vthの変動がない。このため、基準電圧を精度よく生成できる。また、第1出力MOSトランジスタM1rおよび第2出力MOSトランジスタM2rは、基準電圧生成部20において電流パスを形成するが、電流パスにスイッチを有さない。そのため、スイッチのオン抵抗が基準電圧に影響せず、基準電圧を精度よく生成できる。
図16は、基準電圧の設定方法の一例を示すフロー図である。ステップS100において、CMOSインバータ55の電源端子に入力される目標電圧を予め定められた値に設定する。
基準電圧検出モードでは、コンパレータ50が目標電圧に応じて動作するためにCMOSインバータ55の入力端子に入力されるべき電圧を検出する。ステップS200において、図11において説明したように、ステップS100で設定した目標電圧に対応する基準電圧(VrefH、VrefL)を検出する。検出された基準電圧(VrefH、VrefL)は、充放電制御回路300の外部機器に記憶される。検出された基準電圧(VrefH、VrefL)は、充放電制御回路300の内部に記憶されてもよい。
基準電圧設定モードでは、ステップS200において検出した基準電圧(VrefH、VrefL)を基準電圧生成部20に設定する。基準電圧設定モードを実行するステップS300は、ステップS310〜ステップS330を有する。なお、それぞれの目標電圧に対してステップS300の処理を行う。設定された目標電圧は、CMOSインバータ55の電源端子に入力される。
ステップS310において、第1書込MOSトランジスタM1wのフローティングゲートに保存された電荷の状態を、予め定められた基準状態に設定する。ステップS310における基準状態は、第1MOSトランジスタM1w、rの閾値電圧を十分高くして、第1MOSトランジスタM1w、rから第2MOSトランジスタM2w、rに電流が流れなくする状態を指してもよい。基準状態は、フローティングゲートに保存されていた電荷が消去された状態(すなわち、フローティングゲートにおける電荷量が略零の状態)を指してもよい。ステップS310では、第1書込MOSトランジスタM1wのコントロールゲートに制御パルスを印加することでフローティングゲートにおける電荷の状態を基準状態に調整し、第1MOSトランジスタM1w、rから第2MOSトランジスタM2w、rに電流が流れなくする。
ステップS320において、第2出力MOSトランジスタM2rにカレントミラー71が生成した調整用電流を印加した状態で、第2書込MOSトランジスタM2wのコントロールゲートに制御パルスを印加する。制御パルスを印加することで、第2書込MOSトランジスタM2wの閾値電圧を正方向に変動させる。これにより、2つの第2MOSトランジスタM2を所定のエンハンスメント状態に設定する。調整用電流は、実動作時に第2出力MOSトランジスタM2rに流れるべき電流と略等しい電流が与えられてよい。ステップS320においては、基準電圧生成部20から出力される基準電圧が、目標電圧に対してステップS200で検出した基準電圧と略等しくなるまで、第2書込MOSトランジスタM2wのコントロールゲートに制御パルスを印加する。
次に、ステップS330において、第2出力MOSトランジスタM2rにカレントミラー71が生成した調整用電流を印加しない状態で、第1書込MOSトランジスタM1wのコントロールゲートに制御パルスを印加する。制御パルスを印加することで、第1書込MOSトランジスタM1wの閾値電圧を負方向に変動させる。これにより、2つの第1MOSトランジスタM1を所定のディプレッション状態に設定する。ステップS330においても、基準電圧生成部20から出力される基準電圧が、目標電圧に対してステップS200で検出した基準電圧と略等しくなるまで、第1書込MOSトランジスタM1wのコントロールゲートに制御パルスを印加する。このような処理を、上側基準電圧生成部25および下側基準電圧生成部26に対して行う。これにより、ステップS200で検出した基準電圧と等しい電圧を、上側基準電圧生成部25および下側基準電圧生成部26に出力させることができる。ステップS300では、上側基準電圧VrefHを下側基準電圧VrefLよりも先に設定しても、下側基準電圧VrefLを先に設定してもどちらでも構わない。
図17は、基準電圧の設定方法を説明するための図である。図17(a)は、エンハンスメント型として機能させる第2MOSトランジスタM2w、rの設定方法を示す。初めに、第1書込MOSトランジスタMlwのフローティングゲートにチャージされた電荷を基準状態に設定する。例えば、第1書込MOSトランジスタMlwの閾値電圧を十分高くする制御パルスを、コントロールゲートに印加することで、電荷の状態を基準状態に設定する。コントロールゲートに印加される電圧の極性は、スイッチSW1およびSW9を切り替えることで制御できる。これにより、エンハンスメント型として機能させる第2MOSトランジスタM2w、rを設定するときに、第1MOSトランジスタMlw、rに電流が流れないようにする。
次に、第2出力MOSトランジスタM2rに、調整用電流Irefを印加した状態で、第2書込MOSトランジスタM2wのコントロールゲートに制御パルスを印加して、フローティングゲートに電荷をチャージする。このとき、基準電圧生成部20が出力する基準電圧が所定の電圧となるように、第2書込MOSトランジスタM2wのフローティングゲートに電荷をチャージする。
図17(b)は、ディプレッション型として機能させる第1MOSトランジスタM1w、rの設定方法を示す。第1MOSトランジスタM1w、rを設定する場合、調整用電流Irefを止める。そして、第2出力MOSトランジスタM2rに流れる電流が、調整用電流Irefと略同一となるように、第2書込MOSトランジスタM2wのコントロールゲートに制御パルスを印加して、フローティングゲートに電荷をチャージする。本例では、第2出力MOSトランジスタM2rに流れる電流を検出する代わりに、基準電圧生成部20が出力する基準電圧が、上述した所定の電圧となるように、第2書込MOSトランジスタM2wのフローティングゲートに電荷をチャージする。
図18は、不揮発性記憶素子90の設定方法を示す。不揮発性記憶素子90は、上述した第1書込MOSトランジスタM1wおよび第2書込MOSトランジスタM2wに対応する。不揮発性記憶素子90は、コントロールゲートおよびフローティングゲートを有するNMOSタイプの素子である。不揮発性記憶素子90は、FNトンネリングにより、フローティングゲートに電荷を蓄積させて閾値電圧が調整される。
図18(a)は、不揮発性記憶素子90の閾値電圧を正方向に変動させる場合のバイアス条件を示す。図18(b)は、不揮発性記憶素子90の閾値電圧を負方向に変動させる場合のバイアス条件を示す。これらのバイアス条件において、コントロールゲートに制御パルスを印加することで、不揮発性記憶素子90の閾値電圧を制御する。
閾値電圧を正方向に変動させる場合、図18(a)に示すように、コントロールゲート端子に電圧VPPを印加して、ソース端子を接地して、ドレイン端子をフローティング状態にする。これにより、不揮発性記憶素子90のフローティングゲートには、FNトンネリングにより電子が注入され、不揮発性記憶素子90の閾値電圧Vthが上がる。なお、電圧VPPは、不揮発性記憶素子90のトンネル酸化膜においてFNトンネリングするために必要な電圧である。
閾値電圧を正方向に変動させる場合、図18(b)に示すように、コントロールゲート端子を接地して、ソース端子に電圧VPPを印加して、ドレイン端子をフローティング状態にする。これにより、不揮発性記憶素子90は、FNトンネリングによりフローティングゲートから電子が放出され、不揮発性記憶素子90の閾値電圧Vthが下がる。図18(a)および(b)において説明した動作を組み合わせることで、不揮発性記憶素子90の閾値電圧を所定の電圧に調整することができる。上述したように、第1書込MOSトランジスタM1wおよび第2書込MOSトランジスタM2wの閾値電圧を調整すれば、第1出力MOSトランジスタM1rおよび第2出力MOSトランジスタM2rの閾値電圧も同様に調整される。
図19は、基準電圧設定モードにおける充放電制御回路300の動作の一例を示す。本例の充放電制御回路300は、上側基準電圧生成部25の第2書込MOSトランジスタM2wへの書き込みを行う状態を示す。本例で用いられる構成は、主に太線で示される。
モード選択部80は、上側基準電圧生成部25の第2書込MOSトランジスタM2wに制御パルスを印加する。モード選択部80は、電圧選択部40に、Vref端子を選択させる。この場合、Vref端子には、外部から電圧が入力されない。カレントミラー71は、外部電流IREFに基づいて、外部電流IREFよりも小さな調整用電流Irefを生成して、上側基準電圧生成部25に出力する。例えばカレントミラー71は、外部電流IREFの1/n倍(ただしn>1)の大きさの調整用電流Irefを生成する。これにより、微小な調整用電流Irefを精度よく生成できる。なお、充放電制御回路300がカレントミラー71を有さない場合、充放電制御回路300の外部から微小な調整用電流Irefを入力してもよい。
アンプ回路72は、電圧選択部40を介して上側基準電圧生成部25の出力を受け取り、当該出力を増幅した信号をVMON端子に出力する。電圧計75には、アンプ回路72が出力した増幅信号が入力される。これにより、VMON端子に接続される計測機器における信号対雑音比を向上させる。電圧計75は、アンプ回路72が出力した増幅信号の電圧を検出する。また、充放電制御回路300の外部に電圧計75が設けられてもよい。モード選択部80は、アンプ回路72が出力する電圧が、設定すべき基準電圧に応じた電圧となるように、上側基準電圧生成部25の第2書込MOSトランジスタM2wに制御パルスを印加する。
本例の上側基準電圧生成部25は、後述する調整シーケンス(1)から(5)を用いて、上側基準電圧VrefHが設定される。また、下側基準電圧生成部26に基準電圧VrefLが設定される場合も本例の上側基準電圧生成部25と同様の構成で設定される。
図20は、第2書込MOSトランジスタM2wへの書き込み動作の一例を示す。縦軸はモニター電圧[V]を示して、横軸は時刻tを示す。第2書込MOSトランジスタM2wには、モード選択部80から制御パルスが入力される。
まず、第2書込MOSトランジスタM2wのコントロールゲートに第1制御パルスを印加して、第2書込MOSトランジスタM2wのフローティングゲートに蓄積された電荷の状態を、予め定められた初期状態に設定する。これにより、基準電圧生成部20が出力する電圧をモニターしたモニター電圧Vmonは増加する。制御パルスは、基準電圧生成部20のモニター電圧Vmonが、設定すべき終了電圧よりも十分大きくなるまで第2書込MOSトランジスタM2wのコントロールゲートに印加される。
次に、第2書込MOSトランジスタM2wのコントロールゲートに第2制御パルスを印加して、第2書込MOSトランジスタM2wのフローティングゲートの電荷の状態を制御する。第2制御パルスは、第1制御パルスとは正負の極性が逆のパルスである。本例では、第2制御パルスを印加することで、基準電圧生成部20のモニター電圧Vmonは低下する。第2制御パルスは、基準電圧生成部20のモニター電圧Vmonが終了電圧に徐々に近づくように印加される。
制御パルスは、パルス幅が広い場合、または、パルス電圧が大きい場合、パルス1回当たりのフローティングゲートが保存する電荷の変動量が大きくなる。電荷の変動量が大きいと、モニター電圧が終了電圧を大きく超えやすくなる。そのため、モード選択部80は、モニター電圧Vmonが終了電圧に近づくほど、第2制御パルスのパルス幅または電圧の少なくとも一方を調整して、第2制御パルスの強度を小さくする。なお、モード選択部80は、第2制御パルスが印加されて、モニター電圧Vmonが終了電圧よりも小さくなった場合、第1制御パルスをコントロールゲートに入力してもよい。これによりモニター電圧Vmonを終了電圧に近づけられる。このような処理を、モニター電圧Vmonと終了電圧との差が許容範囲となるまで続行する。
なお、モード選択部80は、VPP端子、DATA端子、SCLK端子およびPULSE端子に接続される。モード選択部80は、VPP端子から入力される電圧により、制御パルスの電圧を制御する。また、モード選択部80は、PULSE端子から入力される周期信号により、制御パルスのパルス幅を制御する。SCLK端子は、モード選択部80の動作クロックとなるクロック信号をモード選択部80に出力する。DATA端子は、テストモードに関するデータ信号をモード選択部80に出力する。
図21は、基準電圧設定モードにおける充放電制御回路300の動作の一例を示す。本例の充放電制御回路300は、上側基準電圧生成部25の第1書込MOSトランジスタM1wへの書き込みを行う状態を示す。本例で用いられる構成は、太線で示される。
第1書込MOSトランジスタM1wへの書き込みは、図19で示した第2書込MOSトランジスタM2wへの書き込みを行う場合と、上側基準電圧生成部25にカレントミラー71の出力が入力されない点で異なる。その他の構成は、基本的に図19の場合と同一である。
図22は、第1書込MOSトランジスタM1wへの書き込み動作を示す。縦軸はモニター電圧[V]を示して、横軸は時刻tを示す。第1書込MOSトランジスタM1wには、モード選択部80から制御パルスが入力される。
まず、第1書込MOSトランジスタM1wのコントロールゲートに第1制御パルスを印加して、第1書込MOSトランジスタM1wのフローティングゲートに蓄積された電荷の状態を、予め定められた初期状態に設定する。これにより、基準電圧生成部20のモニター電圧Vmonは低下する。第1制御パルスは、基準電圧生成部20のモニター電圧Vmonが終了電圧よりも十分小さくなるまで第1書込MOSトランジスタM1wのコントロールゲートに印加される。
次に、第1書込MOSトランジスタM1wのコントロールゲートに第2制御パルスを印加して、第1書込MOSトランジスタM1wのフローティングゲートに蓄積された電荷の状態を制御する。第2制御パルスは、第1制御パルスとは正負の極性が逆のパルスである。本例では、第2制御パルスを印加することで、基準電圧生成部20のモニター電圧Vmonは増加する。第2制御パルスは、基準電圧生成部20のモニター電圧Vmonを終了電圧に徐々に近づくように調整される。
第1書込MOSトランジスタM1wへの書き込み動作の場合も、モード選択部80は、モニター電圧Vmonが終了電圧に近づくほど、第2制御パルスのパルス幅または電圧の少なくとも一方を調整して、第2制御パルスの強度を小さくする。基準電圧設定モードは、モニター電圧Vmonが終了電圧と略一致した場合に終了する。モニター電圧Vmonが終了電圧と略一致するとは、必ずしも完全に一致する必要はなく、使用状況により実質的に一致するとみなされる程度であってよい。
図23は、本実施形態に係る基準電圧生成部20の回路構成の一例を示す。各構成は、図15に示した基準電圧生成部20の回路構成と同一である。実動作モードにおいて基準電圧生成部20が基準電圧を出力している状態では、図23に示すようにスイッチは以下のように制御される。
SWl:VSS
SW2:VSS
SW3、SW4:OPEN
SW5、SW7:SHORT(接続)
SW9、SW10:任意
基準電圧生成部20は、スイッチが本例の通り制御された状態で、ディプレッション状態に設定された第1MOSトランジスタM1w、r、および、エンハンスメント状態に設定された第2MOSトランジスタM2w、rを用いて、基準電圧を生成する。
基準電圧生成部20の出力する基準電圧は、調整シーケンス(1)から(5)を用いて調整される。
<調整シーケンス(1)>
図24は、基準電圧生成部20の回路構成の一例を示す。モード選択部80は、第1MOSトランジスタM1wのコントロールゲートに制御パルスを印加することで、第1MOSトランジスタM1w、rのフローティングゲートが保存する電荷の状態を基準状態にする。本例では、第1MOSトランジスタM1w、rの閾値電圧が、基準電圧生成部20に設定すべき基準電圧よりも十分高くなるように制御する。調整シーケンス(1)において、スイッチは以下のように制御される。これにより、第1MOSトランジスタM1から第2MOSトランジスタM2に電流が流れない状態にする。
SWl:VSS
SW2:VSS
SW3:SHORT
SW4:OPEN
SW5、SW7:OPEN
SW9:VPP
SW10:任意
<調整シーケンス(2)>
図25は、基準電圧生成部20の回路構成の一例を示す。モード選択部80は、第2書込MOSトランジスタM2wのコントロールゲートに第1制御パルスを印加することで、第2MOSトランジスタM2w、rを、図20において説明した初期状態に設定する。調整シーケンス(2)において、スイッチは以下のように制御される。
SWl:VSS
SW2:VSS
SW3:OPEN
SW4:SHORT
SW5、SW7:OPEN
SW9:任意
SW10:VPP
<確認シーケンス>
なお、調整シーケンス(2)および後述する調整シーケンス(3)における第2MOSトランジスタM2w、rの状態は、基準電圧生成部20が出力する基準電圧をモニタすることで判別できる。
図26は、基準電圧生成部20の回路構成の一例を示す。本例の充放電制御回路300は、第2出力MOSトランジスタM2rに調整用電流Irefを流すことにより、基準電圧生成部20が出力する基準電圧を確認する。確認シーケンスにおいて、スイッチは以下のように制御される。
SWl、SW2:VSS
SW3、SW4、SW5:OPEN
SW7:SHORT
SW9、SW10:任意
図27は、調整シーケンス(2)における、第1制御パルスの書き込み時間に対する閾値電圧Vthの変化量を示す。縦軸は第2MOSトランジスタM2w、rの閾値電圧Vthを、横軸は第2MOSトランジスタM2w、rに対する第1制御パルスの書き込み時間を示す。
第2MOSトランジスタM2w、rの閾値電圧Vthは、第1制御パルスの書き込み時間が増大するに伴い、図27に示すように経時的に変化する。モード選択部80は、図20において説明した初期状態になるまで、第1制御パルスを生成する。
<調整シーケンス(3)>
図28は、基準電圧生成部20の回路構成の一例を示す。モード選択部80は、第2書込MOSトランジスタM2wのコントロールゲートに第2制御パルスを印加することで、図20において説明したように、基準電圧生成部20が出力する基準電圧を所定の終了電圧に近づける。調整シーケンス(3)においては、調整用電流Irefを第2出力MOSトランジスタM2rに流しながら、第2制御パルスを印加する。調整シーケンス(3)において、スイッチは以下のように制御される。基準電圧が予め定められた電圧より下がりすぎた場合は、第2書込MOSトランジスタM2wのコントロールゲートに第1制御パルスを印加して、基準電圧を増大させてよい。
SWl:VSS
SW2:VPP
SW3:OPEN
SW4:SHORT
SW5、SW7:OPEN
SW9:任意
SW10:VSS
図29は、調整シーケンス(2)および(3)における閾値電圧Vthの変化を示す。縦軸は第2MOSトランジスタM2w、rの閾値電圧Vthを、横軸は時間を示す。
図28に係る構成では、第2MOSトランジスタM2w、rの閾値電圧Vthが、図29の調整シーケンス(3)に示すように、第2制御パルスの書き込み時間に応じて減少する。書き込み時間を調整することで第2MOSトランジスタM2w、rの閾値電圧Vthを基準電圧となるように調整する。
図30は、調整シーケンス(3)と確認シーケンスを交互に行う場合の、閾値電圧Vthの変化を示す。確認シーケンスでは、第2書込MOSトランジスタM2wのコントロールゲートに制御パルスを印加しないので、基準電圧は変化しない。モード選択部80は、調整シーケンス(3)において生成する第2制御パルスのパルス幅および電圧を、直前の確認シーケンスで確認した基準電圧に応じて制御してよい。
調整シーケンス(3)は、基準電圧生成部20が出力する基準電圧が予め定められた値になると終了する。これにより、第2MOSトランジスタM2w、rの調整は終了する。次に、第1MOSトランジスタM1w、rを調整する。
<調整シーケンス(4)>
図31は、基準電圧生成部20の回路構成の一例を示す。モード選択部80は、第1書込MOSトランジスタM1wのコントロールゲートに第1制御パルスを印加することで、第1MOSトランジスタM1w、rを、図22において説明した初期状態に設定する。調整シーケンス(4)において、スイッチは以下のように制御される。
SWl:VPP
SW2:VSS
SW3:SHORT
SW4、SW5、SW7:OPEN
SW9:VSS
SW10:任意
<調整シーケンス(5)>
図32は、基準電圧生成部20の回路構成の一例を示す。モード選択部80は、第1書込MOSトランジスタM1wのコントロールゲートに第2制御パルスを印加することで、図30において説明したように、基準電圧生成部20が出力する基準電圧を所定の終了電圧に近づける。なお、調整シーケンス(4)および(5)においては、外部から調整用電流Irefが印加されない。ただし、第1MOSトランジスタM1w、rが、調整用電流Irefに対応する電流を生成する。調整シーケンス(5)において、スイッチは以下のように制御される。
SWl、SW2:VSS
SW3、SW4:OPEN
SW5、SW7:SHORT
SW9、SW10:任意
図33は、調整シーケンス(4)および(5)における閾値電圧Vthの変化を示す。縦軸は第1MOSトランジスタM1w、rの閾値電圧Vthを、横軸は時間を示す。調整シーケンス(4)において、第1MOSトランジスタM1w、rの閾値電圧Vthは、第1制御パルスの書き込み時間が増大するに伴い、図33に示すように経時的に減少する。モード選択部80は、図22において説明した初期状態になるまで、第1制御パルスを生成する。
調整シーケンス(5)では、第1MOSトランジスタM1w、rの閾値電圧Vthが、第2制御パルスの書き込み時間に応じて増大する。書き込み時間を調整することで第1MOSトランジスタM1w、rの閾値電圧Vthを基準電圧となるように調整する。確認シーケンスでは、第1書込MOSトランジスタM1wのコントロールゲートに制御パルスを印加しないので、基準電圧は変化しない。モード選択部80は、調整シーケンス(5)において生成する第2制御パルスのパルス幅および電圧を、直前の確認シーケンスで確認した基準電圧に応じて制御してよい。
調整シーケンス(5)は、基準電圧生成部20が出力する基準電圧が予め定められた値になると終了する。これにより、第1MOSトランジスタM1w、rの調整は終了し、基準電圧生成部20の調整が終了する。なお、調整シーケンス(4)および(5)における基準電圧を確認する場合、各スイッチは実動作時と同様に制御されてよい。例えば各スイッチは、図15に示した例と同様に制御される。
図34は、カレントミラー71の接続例を示す図である。本例のモード選択部80は、ゲート制御部として動作する書き込み回路85を備える。書き込み回路85は、図14から図33に関連して説明したスイッチSW1からSW10を制御することで、基準電圧生成部20の第1書込MOSトランジスタM1wおよび第2書込MOSトランジスタM2wのコントロールゲートに制御パルスを入力する。
カレントミラー71は、基準電圧設定モードにおいて、充放電制御回路300の外部から入力された外部電流IREFに基づいて、外部電流IREFよりも小さい調整用電流Irefを生成する。例えば、カレントミラー71は、充放電制御回路300の外部から入力された外部電流IREFに基づいて、n分の1の大きさの調整用電流Irefを生成する。本例のカレントミラー71は、第1出力MOSトランジスタM1rと共通の外部端子に接続される。カレントミラー71は、当該外部端子から入力される外部電流IREFに基づいて、外部電流IREFより小さい微小な調整用電流Irefを生成する。
また、カレントミラー71と、基準電圧生成部20の出力端子との間には、スイッチSW0が設けられる。各調整シーケンスに応じて、モード選択部80は、スイッチSW0を制御する。例えば、調整シーケンス(3)においては、モード選択部80は、スイッチSW0をオンにする。また、調整シーケンス(4)、(5)においては、モード選択部80は、スイッチSW0をオフにして、第2出力MOSトランジスタM2rに流れる調整用電流Irefを遮断する。
本例の基準電圧の設定方法は、調整シーケンス(1)において第1MOSトランジスタM1w、rのフローティングゲートに蓄積された電荷が基準状態で、調整シーケンス(3)において第2出力MOSトランジスタM2rに調整用電流Irefが入力される。そのため、第2出力MOSトランジスタM2rに調整用電流Irefが流れる場合に、第1出力MOSトランジスタM1rから第2出力MOSトランジスタM2rに電流が流れない。このため、第2MOSトランジスタM2w、rの設定精度が向上する。よって、第1出力MOSトランジスタM1rのドレイン端に、ディプレッション型MOSトランジスタM1rに蓄積された電荷の影響を遮断するためのスイッチを設ける必要がない。
図35は、実動作モードにおける充放電制御回路300の構成の一例を示す。充放電制御回路300は、モード選択部80が実動作モードを選択した場合、VIN端子、OUT端子、GND端子を使用する。充放電制御回路300は、VIN端子から入力された電圧が予め定められた目標電圧以上か否かを検出して、OUT端子に出力する。
上側基準電圧生成部25は、上側基準電圧VrefHを出力する。また、下側基準電圧生成部26は、下側基準電圧VrefLを出力する。コンパレータ50には、基準電圧(VrefH、VrefL)および入力電圧Vinが入力される。コンパレータ50は、OUT端子に基準電圧(VrefH、VrefL)および入力電圧Vinに応じた信号を出力する。
電圧選択部40は、コンパレータ50の出力に応じて、基準電圧(VrefH、VrefL)を選択する。電圧選択部40は、選択した基準電圧(VrefH、VrefL)をコンパレータ50に入力する。これにより、CMOSインバータ55の目標電圧は、ヒステリシス動作すべくコンパレータ50の出力に応じて変更される。
図36は、基準電圧生成部20における第1MOSトランジスタM1および第2MOSトランジスタM2の他の接続例を示す。なお、図36(a)の第1MOSトランジスタM1および第2MOSトランジスタM2は、図12(a)の第1MOSトランジスタM1および第2MOSトランジスタM2と同様の素子である。図36(b)の第1MOSトランジスタM1および第2MOSトランジスタM2は、図12(b)の第1MOSトランジスタM1および第2MOSトランジスタM2と同様の不揮発性記憶素子である。
本例においては、第1MOSトランジスタM1のゲートが第2MOSトランジスタM2のソースに接続される。また、第1MOSトランジスタM1のソース、第2MOSトランジスタM2のドレイン、および、第2MOSトランジスタM2のゲートは互いに接続される。基準電圧生成部20は、当該接続点から、基準電圧を出力する。
図15に示した構成において、書込側および出力側の第1MOSトランジスタM1および第2MOSトランジスタM2は、図36における第1MOSトランジスタM1および第2MOSトランジスタM2と同一の接続を有してよい。この場合であっても、図10から図35において説明した方法と同様の方法で、書込側および出力側の第1MOSトランジスタM1および第2MOSトランジスタM2を設定することができる。なお、図10から図35においては、主に充放電制御回路300が過放電防止回路100として動作する場合について説明した。しかし、入力電圧Vinを充電電圧Vchgに適宜読み替えることにより、充放電制御回路300が過充電防止回路200として動作する場合にも同様の方法で、基準電圧を設定できる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。