以下、添付図面にしたがって本発明を実施するための形態について詳説する。
<システムの概要>
図1は本発明の実施形態に係る色変換テーブル作成装置を含んだ印刷システムの全体構成を示すブロック図である。印刷システム10は、画像編集装置12と、印刷制御装置14と、印刷部16とを備える。画像編集装置12は、実施形態に係る色変換テーブル作成装置としての役割を果たし、印刷部16による色再現に必要な色変換テーブルの作成処理を行う。また、画像編集装置12は、色変換テーブルを使用した色変換処理や画像データ加工(編集)などの画像処理を行う装置である。画像編集装置12で生成された印刷画像データは印刷制御装置14に送られる。
印刷制御装置14は画像編集装置12により生成された印刷画像データに基づき、印刷部16による印刷動作を制御する。印刷制御装置14は、連続調画像データから2値又は多値の網点画像のデータに変換するハーフトーン処理部を含むことができる。
本実施形態では、画像編集装置12と印刷制御装置14とを別々の構成として図示しているが、印刷制御装置14の機能を画像編集装置12に搭載する構成も可能である。例えば、1台のコンピュータを画像編集装置12及び印刷制御装置14として機能させる構成が可能である。
印刷部16は印刷制御装置14の制御にしたがい印刷を行う画像形成手段である。印刷部16における印刷方式や使用する色材の種類については、特に限定されない。印刷部16として、例えば、インクジェット印刷機、電子写真プリンタ、レーザープリンタ、オフセット印刷機、フレキソ印刷機など、各種のプリンタを採用できる。「プリンタ」という用語は、印刷機、印刷装置、画像記録装置、画像形成装置、画像出力装置などの用語と同義のものとして理解される。色材には、印刷部16の種類に応じて、インクやトナー等を使用することができる。
ここでは、説明を簡単にするために、無版式のデジタル印刷機を想定し、印刷制御装置14と印刷部16とを組み合わせた構成を印刷装置18として記載する。印刷制御装置14と印刷部16とが一体的に組み合わせた印刷装置18を構成する態様も可能であるし、印刷制御装置14と印刷部16とを別体の装置として構成し、有線又は無線の通信接続により信号の受け渡しを行う態様も可能である。
印刷部16として印刷版を用いる有版式の印刷機を採用する場合は、印刷制御装置14に加えて、画像データから印刷版を作るプレートレコーダ等の製版装置(不図示)を備えるシステム構成となる。この場合、製版装置(不図示)と印刷制御装置14と印刷部16とを組み合わせた構成が印刷装置18に相当する。
本実施形態の印刷システム10は、印刷装置18の一例として、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のインクを用いてカラー画像の形成が可能なインクジェット印刷機を用いる。ただし、インクの色数やその組み合わせはこの例に限らない。例えば、CMYK4色の他に、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)などの淡色インクを加える態様や、赤、緑などの特色のインクを用いる態様なども可能である。
画像編集装置12は、画像データ入力部20と、画像データ記憶部22と、画像処理部24と、制御部26と、を備える。また、画像編集装置12は、画像読取部30と、測色器32と、表示部34と、入力装置36と、を備える。画像編集装置12は、コンピュータのハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現することができる。ソフトウェアは「プログラム」と同義である。画像編集装置12は、RIP(Raster Image Processor)装置の一機能として実現することができる。
画像データ入力部20は、原稿画像データ40を取り込むためのデータ取得部である。画像データ入力部20は、外部又は装置内の他の信号処理部から原稿画像データ40を取り込むデータ入力端子で構成することができる。画像データ入力部20として、有線又は無線の通信インターフェース部を採用してもよいし、メモリカードなどの外部記憶媒体(リムーバブルディスク)の読み書きを行うメディアインターフェース部を採用してもよく、若しくは、これら態様の適宜の組み合わせであってもよい。
目標印刷物42は、再現すべき目標色の色見本印刷物であり、現物の色見本として与えられるものである。原稿画像データ40は、印刷しようとする画像内容を表すデジタル画像データである。本例の場合、原稿画像データ40は、目標印刷物42の原稿画像の絵柄を示す画像データである。目標印刷物42は、原稿画像データ40に基づいて印刷された印刷物である。目標印刷物42を画像出力したプリンタ(印刷装置)や印刷条件などは不明であってよい。目標印刷物42の出力手段として任意のプリンタを用いることができる。原稿画像データ40と目標印刷物42は、印刷の依頼者(クライアント)から提供される。原稿画像データ40は、目標印刷物42の印刷面における全体の画像内容を示す全体画像のデータであってもよいし、印刷面に記録される画像の一部としての画像部品(原稿部品)のデータであってもよい。
原稿画像データ40のデータ形式は、特に限定されない。本例では原稿画像データ40として、CMYK各色それぞれ8bit (256階調)の画像データを用いるが、CMYK信号に限らず、RGB信号の形式でもよいし、CMYK信号と特色信号の組み合わせの形式などでもよい。また、信号の階調数(ビット数)についてもこの例に限らない。
画像データ記憶部22は、画像データ入力部20を介して取得された原稿画像データ40を記憶しておく手段である。画像データ入力部20から取り込まれた原稿画像データ40は、画像データ記憶部22に記憶される。
画像読取部30は、目標印刷物42や印刷装置18で印刷された印刷物50などの印刷物を読み取って、光学像を電子画像データに変換し、読取画像を表すカラー画像としての読取画像データを生成する。例えば、画像読取部30には、読取画像をRGB画像のデータとして出力が可能なカラーイメージスキャナを用いることができる。本例の画像読取部30には、R/G/Bの色成分の画像信号で表される読取画像データを取得できるスキャナが用いられる。画像読取部30から取得した読取画像を「スキャン画像」と呼ぶ場合がある。なお、スキャナに代えて、カメラを利用することも可能である。
画像読取部30は、目標印刷物42の読取画像データを取得する手段として機能する。また、画像読取部30は、印刷装置18で印刷された印刷物50を読み取り、印刷物50の読取画像データを取得する手段として機能する。画像読取部30を介して取得した読取画像データは画像処理部24に送られる。画像読取部30によって得られた読取画像データを画像処理部24に取り込む機能が「読取画像データを取得する機能」に相当する。
画像処理部24は、画像読取部30から取得した読取画像データと原稿画像データ40を基に色変換テーブルの作成処理を行う。また、画像処理部24は、原稿画像データ40に対して色変換テーブルを用いた色変換処理を行い、印刷装置18に受け渡すための印刷画像データを生成する機能を有する。画像処理部24は、必要に応じて、原稿画像データ40や読取画像データに対して解像度変換や階調変換などの処理を行う機能を備える。画像処理部24における処理内容の詳細は後述する。
また、本例の印刷システム10は、画像読取部30による読取画像の色情報の精度を高めるために、測色部として機能する測色器32を備えている。測色器32には分光測色器が用いられる。分光測色器は、可視光の波長領域を所定の波長刻み幅で反射率を測定し、人間の視覚の分光感度を表すXYZ等色関数を用いてXYZ値を算出して測色値を取得する。測色器32として用いられる分光測色器は、例えば、可視光の波長領域である380nm−730nmの波長領域を10nmの波長刻み幅(波長ステップ)で反射率を測定し、測色値を得る。測色器32から得られるXYZ値は、公知の変換式により、L*a*b*表色系などのデバイス非依存色空間の色座標値に変換することができる。
本実施形態では、色の目標値を表すデバイス非依存色空間の表色系(色座標系)として、L*a*b*表色系を用いる例について説明するが、表色系はこれに限定されるものではない。例えば、国際照明委員会が定めるXYZ表色系(輝度(明るさ)を含む刺激値Y、色の刺激値X,Z))、Yxy表色系(輝度Y、色度座標x,y)、L*u*v*表色系の他、HSV表色系(色相H(hue)、彩度S(saturation)、明度V(value)又はB(brightness))、HLS表色系(色相H(hue)、彩度S(saturation)、輝度L(luminance))、YCbCr表色系(輝度Y、色差Cb,Cr)を用いることが可能である。
本明細書では表記を簡略化するため、L*a*b*表色系の色空間を「Lab色空間」と表記し、Lab色空間の座標値で表される色度値を「Lab値」と表記する。また、各画素の画像信号値がLab値によって記述される画像データを「Lab画像」と表記する場合がある。Lab色空間のように、デバイスに依存しない色空間(デバイス非依存色空間)の表色系座標で表される色の値を「色度値」或いは「非デバイス値」と表記する場合がある。本明細書の「色度値」という用語は、XYZ表色系に限らず、デバイス非依存色空間の表色系座標で表される色の値を意味する。また、RGB色空間やCMYK色空間のようなデバイス依存色空間の表色系座標で表される色の値を「デバイス値」と表記する場合がある。
測色器32から得られる測色値の情報は画像処理部24に送られる。画像処理部24は、画像読取部30から得られる読取画像データの他、測色器32から取得される測色値の情報も加味して色変換テーブルを作成する。
制御部26は、画像編集装置12の各部の動作を制御する。表示部34と入力装置36はユーザインターフェースとして機能する。入力装置36は、キーボード、マウス、タッチパネル、トラックボールなど、各種の手段を採用することができ、これらの適宜の組み合わせであってもよい。なお、タッチパネルを表示部34の画面上に配置した構成のように、表示部34と入力装置36とが一体的に構成されている形態も可能である。
オペレータは、表示部34の画面に表示される内容を見ながら入力装置36を使って印刷条件の入力や、画質モードの選択、測色位置の指定、付属情報の入力/編集、情報の検索など各種情報の入力を行うことができる。また、入力内容その他の各種情報は表示部34の表示を通じて確認することができる。
本例の印刷システム10は、与えられた目標印刷物42と原稿画像データ40とを基に、印刷装置18によって目標印刷物42と同等の色を再現した印刷物50が得られるように適切な色変換テーブルを作成して色合わせを行う機能を備える。「同等の色」とは、依頼者が許容できる色の差の範囲で実質的に同等なものとして満足できる許容範囲を含むものである。
<第一実施形態に係る色変換テーブル作成装置の構成>
図2は第一実施形態に係る色変換テーブル作成装置の要部構成を示したブロック図である。図2中、図1で説明した要素と同一の要素には同一の符号を付した。
図2に示すように、色変換テーブル作成装置60は、画像読取部30と、第一の低解像度画像生成部61と、第二の低解像度画像生成部62と、画像対応付け部63と、色変換部64と、色変換テーブル作成部66と、を備えている。
第一の低解像度画像生成部61は、画像読取部30から得られる第一の解像度の読取画像データから、第一の解像度よりも低解像度である第二の解像度の画像データを生成する処理部である。第一の低解像度画像生成部61として、第一の解像度の読取画像データに対して画素を一定の割合で間引く間引き処理、又は画素補間手法を用いて画素値を求める画素補間処理を実施する低解像度化処理部を採用することができる。画素補間手法として例えば、バイリニア法やバイキュービック方などがある。第一の解像度は、画像読取部30の読取解像度に対応している。第一の解像度は、一般的な印刷物の印刷線数(150ラインパーインチ[lpi]から175[lpi])の二倍以上であり、かつ、画像読取部30であるスキャナの特性から信頼性の高い読取解像度であることが好ましい。
画像読取部30には、読取解像度を可変設定できるスキャナを用いることができる。スキャナの特性として、読取解像度によっては読取画像にモアレが発生するなど信頼性が低くなる場合がある。「信頼性の高い読取解像度」は、使用するスキャナの光学系に依存する。したがって、画像読取部30の読取解像度については、事前にスキャナの特性を把握し、信頼性の高い解像度を選定することが望ましい。例えば、線数メーターのような周波数特性把握チャートを用いて読取解像度と印刷線数の干渉で起こるモアレの特性を予め把握しておき、読取解像度と信頼度の対応関係から、信頼度の高い読取解像度を選定する。
第二の解像度は、印刷線数の二倍程度であることが好ましい。一般的な印刷物の印刷線数は150[lpi]〜175[lpi]である。したがって、第二の解像度は、300ドットパーインチ[dpi]から350[dpi]程度とすることが好ましい。
次に示す[表1]は、一般的な印刷物のスキャナ読取時におけるスキャナの読取解像度とモアレの発生等に関するメリット/デメリットの例を示した図表である。[表1]に示す関係は、一般的な傾向として把握される。
また、次に示す[表2]は、画像読取部30に用いたスキャナの読取解像度と信頼度(モアレの発生特性)の関係の例を示した図表である。なお、[表2]に示す信頼度は、スキャナの使用機種によって変化するものであり、[表2]に示す関係に限定されない。
[表2]中の信頼度の評価は次のとおりである。
「B」は、指定読取解像度以外でも周波数特性把握チャートでモアレが発生する。
「A」は、指定読取解像度以外は周波数特性把握チャートでほぼモアレが発生しない。
「AA」は、指定読取解像度以外は周波数特性把握チャートでモアレが発生しない。
なお、[表2]では「1200dpi」が光学解像度の上限のときの関係を示したものとなっているが、使用するスキャナの機種に応じて、その使用機種の光学解像度上限まで指定解像度と信頼度の対応関係を得ていることが望ましい。
[表1]及び[表2]に示す条件を考慮して、本例では、具体的な数値例として、画像読取部30の読取解像度を600dpiに設定し、第一の解像度は読取解像度と同等の600dpi、第二の解像度は300dpiとする。
第二の低解像度画像生成部62は、原稿画像データ40から、原稿画像データ40の解像度である第三の解像度よりも低解像度である第四の解像度の画像データを生成する処理部である。第三の解像度は、与えられる原稿画像データ40に依存しており、様々な値が想定される。第三の解像度は、第一の解像度に合わせることができる。また、第三の解像度が、一般的な印刷用の原稿の解像度(300dpi〜350dpi程度)である場合は、第二の解像度を、この第三の解像度に合致させることが好ましい。
第四の解像度は、第二の解像度に近い値であることが好ましく、特に、第四の解像度は第二の解像度と同等の解像度であることがより好ましい形態である。
第三の解像度が一般的な印刷用の原稿の解像度(300dpi〜350dpi程度)であり、かつ、第二の解像度が第三の解像度と同等である場合などには、第二の低解像度画像生成部62による処理を省略することができる。つまり、第三の解像度が第二の解像度と同等又は同程度である場合は第二の低解像度画像生成部62を省略する構成も可能である。「同程度」とは、完全に一致しないまでも、画像対応付け部63における画像位置の対応付けの精度が許容可能な範囲に収まる解像度の違いを含む。
本例では、具体的な数値例として、原稿画像データ40の解像度である第三の解像度が600dpiであり、第四の解像度が第二の解像度と同等の300dpiであるとして説明する。
なお、第一の解像度と第三の解像度が同等であり、かつ第二の解像度と第四の解像度とが同等である場合は、第一の低解像度画像生成部61と第二の低解像度画像生成部62の処理を共通化して、同一の処理で低解像度変換する構成とすることができる。
画像対応付け部63は、原稿画像データ40と、目標印刷物42の読取画像データの画像位置の対応付けを行い、対応する位置の画像領域から色情報の抽出を行う。本例の画像対応付け部63では、第一の低解像度画像生成部61から得られる第二の解像度の画像データと、第二の低解像度画像生成部62から得られる第四の解像度の画像データを基に、これら二つの画像データの位置合わせの処理を行い、両画像データの対応関係を特定して、対応する位置の画像領域から色情報を抽出する処理を行う。
色抽出の処理に関しては、対応する位置の画素単位で色情報を抽出してもよいし、1画素の面積よりも大きな面積の単位領域(例えば、一辺が1mmの正方形領域)から色情報を取得してもよい。色抽出のための単位領域を構成する画素の数は、2以上任意の数に設定することができる。色の抽出条件として、例えば、着目する単位領域である着目領域内にエッジを含んでいないこと、かつ、着目領域内における色の差が閾値以下であること、という二つの条件要素を満たす場合に、その注目領域の色を抽出する構成とすることができる。
エッジは、画像中の濃淡(明るさ)や色が急激に変化している箇所である。上述の色の抽出条件は、色の差が閾値以下となる範囲で色の誤差(ばらつき)が許容される一様な領域を抽出するための条件である。色の抽出条件について、この例に限らず、他の抽出条件を定めることができる。
画像対応付け部63の処理により、原稿画像データ40に基づく第四の解像度の画像データと、画像読取部30から得られた目標印刷物42の読取画像データに基づく第二の解像度の画像データから、原稿画像データ40と第二の解像度の画像データ(読取画像データ)との対応関係が特定される。
本実施形態では、原稿画像データ40はCMYK、画像読取部30から得られる読取画像データはRGBとして説明するが、発明の実施に際して、適用する色空間はこの例に限らない。原稿画像データ40は、RGB画像データでもよいし、CMY画像データでもよく、また、CMYK信号と特色信号とが組み合わされた画像データであってもよい。
画像対応付け部63によって原稿画像データ40のCMYK値と、読取画像データのRGB値の対応関係(CMYK−RGB)を示すデータが得られる。なお、対応関係はルックアップテーブル(LUT:Look up table)の形としてデータ化することができる。
色変換部64は、画像読取部30から得られるデバイス依存色空間の色成分の信号値(本例ではRGB)で表される色情報を、デバイス非依存色空間の色成分の信号値(本例ではLab)で表される色情報に変換する処理を行う。
画像対応付け部63において、対比される二つの画像データの画像位置の対応付け(位置合わせ)の処理には、公知の画像位置合わせ方法を利用可能である。例えば、画像位置合わせ方法として特許文献2の段落[0064]−[0068]に記載の技術を用いることができる。画像の位置合わせ処理に関して、詳細は後述する。
色変換部64は、読取色変換テーブル68を用いて、RGB色空間の色情報をLab色空間の色情報に変換する色変換処理を行う。読取色変換テーブル68は、スキャナプロファイルに相当する色変換テーブルである。読取色変換テーブル68は、画像読取部30から得られるデバイス依存色空間の読取画像信号値であるRGB値とデバイス非依存のLab値との対応関係を表す色変換テーブルである。なお、ここでは、デバイス非依存色空間としてLab色空間を用いるが、他のデバイス非依存色空間を用いることも可能である。画像読取部30から得られる読取画像信号(RGB)の色空間が「第三の色空間」に相当し、Lab色空間で例示されるデバイス非依存色空間が「第二の色空間」に相当する。
色変換部64による色変換処理を経て、原稿画像データ40のCMYK値とLab値の対応関係(CMYK−Lab)を示すデータが得られる。
色変換テーブル作成部66は、画像対応付け部63による処理と、色変換部64による処理とを経て生成される対応関係(CMYK−Lab)のデータを基に、ターゲットプロファイルの色変換テーブル70を作成する。この色変換テーブル70は、CMYK−Labの多次元の変換関係(ここでは四次元→三次元の変換関係)を規定するテーブルである。
ターゲットプロファイルは、「目標プロファイル」、或いは「入力プロファイル」とも呼ばれる。ターゲットプロファイルの色変換テーブル70は、原稿画像データ40のCMYK信号のターゲットカラー(目標色)をデバイス非依存色空間(ここではLab空間)で定義したCMYK→Labの変換関係を記述した色変換テーブルである。原稿画像データ40の色空間(ここではCMYK色空間)が「第一の色空間」に相当する。
図2に示した第一の低解像度画像生成部61、第二の低解像度画像生成部62、画像対応付け部63、色変換部64、及び色変換テーブル作成部66の各部は、図1で説明した画像編集装置12の画像処理部24に含まれる。
[色変換テーブル作成部66について]
画像読取部30、第一の低解像度画像生成部61、第二の低解像度画像生成部62、画像対応付け部63、及び色変換部64のそれぞれの処理を経ることで、原稿画像データ40の画像信号値(本例ではCMYK値)と、目標印刷物42の読取画像である第二の解像度の画像データにおける色度値(本例ではLab値)との対応関係を表すデータが得られる。色変換テーブル作成部66は、この「原稿画像信号と色度値の対応関係データ」を基に、画像信号値(CMYK)から色度値(Lab)に変換する変換関係(CMYK→Lab)を規定する色変換テーブルを作成する。
従来の印刷システムの場合、このような色変換テーブルを作成する際は、一般に、カラーチャートを用いて、色空間全体に規則的に配置された画像信号値と色度値との対応関係を求め、この対応関係から所定の補間方法で補間して色変換テーブルする。
これに対し、本実施形態では、現物の再現目標である目標印刷物42とその原稿画像データ40とを基にするため、色空間における部分的かつ不規則な配置の画像信号値と色度値の対応関係から色変換テーブルを作成する必要がある。そのため、従来の一般的な補間による手法は利用できない。そのため、以下のような方法をとる。
[実施例1]原稿画像信号と色度値の対応関係データを色変換テーブルに直接対応付ける方法について
原稿画像信号と色度値の対応関係データを色変換テーブルの色空間の格子点に直接対応付ける方法について、図3及び図4の例で説明する。ここでは説明を簡単にするために、CM2色の色変換テーブルの概念を示す。図3は原稿画像信号(CM)と色度値(Lab)の対応関係データの例である。図4は色変換テーブルの入力側に相当する原稿画像データの色空間(ここではCM面)の格子点を表している。
図4では、C軸、M軸のそれぞれについて、信号値の取り得る範囲(変域、値域)を0−100%で表し、各軸10%の刻みで格子点を設定している。なお、発明の実施に際して、格子点を規定する各軸の信号の刻み幅は10%に限らない。また、画像信号の信号値として8bitの整数値(0から255)を用いるとき信号値「0」を0%、信号値「255」を100%として、0−255の間の値を線型式で対応付けることができる。
図4に示した10%刻みの格子点は、色変換テーブルにおける入力側の原稿画像信号の格子点を示すものとなる。各格子点に対して、対応するLab値が割り当てられたものが色変換テーブルに相当するものとなる。
図3の「ID」は原稿画像データで使用されている色(CM値)を特定する識別符号である。C値とM値はそれぞれ0−100%の値域における信号値を表している。Lab値は、L値,a値,b値の各成分の値を含む。
ID=1のCM値は、(C,M)=(20,90)であり、このCM値に対応するLab値が(L,a,b)=(50,60,−13)であることを示している。
ID=2の色は(C,M)=(24,66)であり、このID=2のCM値色に対応するLab値は(L,a,b)=(60,36,−17)であることを示している。
色変換テーブルの作成に際しては、図4に示すID毎の原稿画像信号値(CM値)に対応する色変換テーブルの格子点に、対応する色度値(Lab値)を設定する。
ID=1のCM値は図4における格子点P1に対応する色である。ID=1に対応する格子点P1に、対応するLab値(50,60,−13)が設定される。
ID=2〜5については、直接的に対応する格子点がないため、近隣の格子点に対して)色度値を設定する。図4に示すように、ID=2,3,4について、原稿画像信号値を取り囲む周囲4つの格子点に色度値を設定する。
ID=2は(C,M)=(24,66)を取り囲む4つの格子点P21,P22,P23,P24に対してそれぞれ同じLab値(60,36,−17)を設定する。ID=3とID=4についても同様に、原稿画像信号値を取り囲む4つの格子点に対して色度値を設定する。ただし、ID=3とID=4のように、それぞれの原稿画像信号値を取り囲む4つの格子点の一部が重複し、同じ格子点に対し異なる色度値の候補が存在する場合は、候補の色度値を平均化して設定する。
すなわち、ID=3の(C,M)=(35,35)を取り囲む4つの格子点はP31,P32,P33,P34であり、ID=4の(C,M)=(47,23)を取り囲む4つの格子点はP41(=P33),P42,P43,P44である。(C,M)=(40,30)で表される格子点(P33=P41)に対しては、ID=3の色度値の候補(71,9,−20)と、ID=4の色度値の候補(72,−4,−26)が存在するため、ID=3とID=4のLab値の平均値(71.5,2.5,−23)を割り当てる。
他の格子点P31、P32,P34については、ID=3のLab値(71,9,−20)を設定する。また、P42,P43,P44については、ID=4のLab値(72,−4,−26)を設定する。
ID=5については、C値が「10%」であるため、「取り囲む4つの格子点」に代えて、「2つの格子点」P51,P52となり、これら格子点P51,P52に対して、対応するLab値(89,6,−8)が設定される。
色変換テーブルの全格子点のうち、原稿画像信号値に関係のない格子点は、原稿画像データ40の色変換に使用されないため、適当な値に設定しておく。図4における白丸で示した格子点については、例えば、Lab=(100,0,0)のような任意の値を設定しておくことができる。
図3及び図4では、説明を簡単にするために、CM2色の色変換テーブルとして説明したが、3色以上の色変換テーブルでも同様にして格子点に色度値を設定できる。
2色の場合は任意のCM値を取り囲む格子点は最大4点だが、3色の場合は最大8点、4色の場合は最大16点となる。
また、図3及び図4ではID=1はCM値が対応する格子点に直接Lab値(色度値)を対応付けたが、色変換テーブルを参照する際の演算誤差等により、僅かにずれた点が参照されてしまい、隣接格子点の色度値と補間演算される可能性も考えられる。そのため直接対応する格子点のみならず周囲の隣接格子点にも同一の色度値を設定しておくのも好ましい。
この実施例1で説明した手法で作成した色変換テーブルを用いて原稿画像データ40を色変換して印刷装置18で印刷するのに不都合はない。
しかし、本実施例1の手法で作成した色変換テーブルを用いて印刷した結果を見てオペレータがさらに色の調整のため原稿画像データを調整(修正)すると不都合が起こり得る。つまり、オペレータが原稿画像データ40を調整した場合に所望の色の変化が起こらない、或いはオペレータが意図した色の変動方向と異なる色の変動が発生すること等も考えられ、原稿画像データに対する色の調整が困難となる。
上記のように原稿画像データを調整する際の不都合がなるべく発生しないようにするには、色空間全体が(原稿画像データと直接関係しない色部分でも)、相応の色度値(オペレータが想像する色に近い色)になっており、かつ、色の変化の滑らかさが確保されていることが好ましい。そのような色空間全体の滑らかな連続性を確保できるようにする場合は、以下に述べる実施例2、3、4のような手法を用いるのがよい。
[実施例2]仮の色変換テーブルを原稿画像信号と色度値の対応関係データによって修正する方法について
実施例2では、予め色空間全体に相応の色変化の滑らかさが確保されている「仮の色変換テーブル」を用意し、原稿画像信号と色度値の対応関係データを用いて仮の色変換テーブルを局所的(部分的)に修正する。
ここでいう「仮の色変換テーブル」は、例えば、CMYKの入力であれば、Japan Color(登録商標)、 SWOP(Specifications Web Offset Printing)、 GRACoL(General Requirements for Applications in Commercial Offset Lithography)、 Fogra等のオフセット印刷における標準色再現を表す色変換テーブルのいずれかを用いることができ、RGBの入力であればsRGB、AdobeRGB等の色変換テーブルのいずれかを用いることができる。
また、上述のような標準の色変換テーブルと、過去に本実施例2の手法で作成した色変換テーブルとをデータベースに蓄積しておき、今回の目標印刷物42の読取画像と原稿画像データ40から新たに取得した原稿画像信号と色度値の対応関係データに最も近い色変換テーブルを、データベースの中から選択して、当該選択された色変換テーブルを「仮の色変換テーブル」として用いることもできる。標準の色変換テーブルや過去に作成した色変換テーブルが「既存の色変換テーブル」、或いは「既存のターゲットプロファイル」に相当する。
「原稿画像信号と色度値の対応関係データ」に最も近い色変換テーブルの選択に際しては、原稿画像信号と色度値の対応関係データとの色差の平均値が最も小さいもの、原稿画像信号と色度値の対応関係データとの色差の最大値が最も小さいもの、などをデータベースから自動抽出し、「仮の色変換テーブル」とすることができる。なお、自動抽出により、「仮の色変換テーブル」の候補が複数抽出された場合には、それらの候補を表示部34に表示させ、ユーザに選択させる構成も可能である。
この「仮の色変換テーブル」に対し、[実施例1]で説明した格子点に対する色度値の設定を実施する。つまり、図3で説明したID=1〜5に対応する格子点P1、P21〜P24、P31〜P34、P41〜P44、P51〜P52(図4参照)については、実施例1と同様に色度値を設定し、図3の白丸で示した格子点に対する色度値は「仮の色変換テーブル」の値そのままとなるように、仮の色変換テーブルを修正する。
こうして得られる修正後の色変換テーブルは、仮の色変換テーブルについて局所的に格子点の色度値を置き換えるため、色度値を置き換えた格子点と置き換えていない格子点との間で色度値の連続性(滑らかさ)が悪くなることが予想される。そのため修正後の色変換テーブルに対し、更に平滑化(スムージング)処理を実施し、色度値の変換の滑らかさを確保することが好ましい。
[実施例3]色再現モデルを利用する方法について
色再現モデルとして例えばノイゲバウア(Neugebauer)モデルが利用できる。Neugebauerモデルとは各色材(一次色)の0%と100%の掛け合わせ色の色度値を各色材の面積率に応じて加算することで、各色材任意の面積率の掛け合わせによる再現色の色度値を求めるモデルである。Neugebauerモデルでは、一般には「色度値」としてXYZ値を用いる。
ここでは、図5を参照しながら、CMY3色材での例で色再現モデルを説明する。予測対象色のCMY面積率が(fc,fm,fy)とすると、各色材の0%と100%の掛け合わせの面積率Fi(i=w,c,m,y,cm,my,yc,cmy)は、次式のように算出することができる。式中の「
・」は乗算を表す。
Fw=(1-fc)・(1-fm)・(1-fy)
Fc=fc・(1-fm)・(1-fy)
Fm=(1-fc)・(1-fm)・fy
Fcm=fc・fm・(1-fy)
Fmy=(1-fc)・fm・fy
Fyc=fc・(1-fm)・fy
Fcmy=fc・fm・fy
ここで「w」は、印刷用紙など印刷物の基材(印刷基材)そのものを表す。面積率は、印刷基材上における単位面積あたりの被覆率を示している。ここでは、面積率は0以上1以下の値として表される。fc,fm,fyは、画像データの信号値(画像信号値)から把握される値である。
各色材の0%と100%の掛け合わせの色度値(例えばXYZ値のX)をXpi(i=w,c,m,y,cm,my,yc,cmy)とすると、CMY面積率(fc,fm,fy)に対する色度値Xは次式で求めることができる。
XYZ値のY,Z値についても同様に求めることができ、さらにXYZ値からLab値への変換も簡単にできる。また、3色印刷以外の2色や4色以上の印刷でも同様にして適用可能である。
このNeugebauerモデルを色変換テーブルの作成に利用するには各色材の0%及び100%の掛け合わせの色度値が必要となる。
しかし、本実施形態では、カラーチャートではなく、現実の印刷物(目標印刷物42)を基にするため、目標印刷物42の読み取りから把握される画像信号値(CMYK)と目標印刷物42の色度値(XYZ)の対応関係の中に、各色材の0%と100%の掛け合わせの色は必ずしも存在しない。
そこで、Neugebauerモデルの各色材0%と100%の掛け合わせに対応した色度値(Xpi, Ypi, Zpi)を未知数とし、画像信号値(CMYK)、すなわち「Fi」と、目標印刷物の色度値(Xm,Ym,Zm)の対応関係を正解データとして最適化手法により(Xpi, Ypi, Zpi)を推定することを考える。つまり、次式に示す差の二乗和を最小化する(Xpi,Ypi,Zpi)を見つける最適化を行う。
次式はXに関する式である。Y,Zに関する式も同様に表すことができる。
ここで、jは画像信号値(CMYK)と目標印刷物の色度値(XmYmZm)の対応関係データのID(つまり各画素)を意味する添え字である。
最適化の手法は、例えば、ニュートン法、準ニュートン法、シンプレックス法などが利用できる。ここに例示した方法以外の手法を用いることも可能であり、適用する手法について限定するものではない。
上記の最適化によって求められた(Xpi,Ypi,Zpi)を用いることで、Neugebauerモデルにより色変換テーブルの各格子点の色度値を算出することができる。
このように最適化の演算により(Xpi,Ypi,Zpi)を推定したが、画像信号中に色材の0%と100%の掛け合わせの色があれば、対応する色度値をそのまま(Xpi,Ypi,Zpi)の値として採用してよい。未知数が減り最適化が容易になる。
また上記の説明ではNeugebauerモデルとしたが、次式のYule-Nielsen補正付きNeugebauerモデルを利用することもできる。nはいわゆるYule-Nielsenの補正係数でありNeugebauerモデルに対し掛け合わせの非線形性を補正する。
この補正係数付きモデルを利用する場合は、nを未知数に追加して最適化を実施すればよい。nはXYZ値で共通でも良いし、X,Y,Zでそれぞれ異なる係数(nx,ny,nz)として求めてもよい。
この他にも、色予測の基本となる色(Xpi,Ypi,Zpi)を中間面積率も含む掛け合わせ色(例えば、0%,40%,100%)に拡張したCellular-Neugebauerモデル等の利用も可能である。また本発明の実施に際しては、Neugebauerモデルに限定されるものではない。画像信号と色度値の関係を表すモデルであればよく、Neugebauerモデル以外の色再現モデルを利用することもできる。また適当なマトリクスや多項式などで色再現(画像信号と色度値の関係)を数式化し、マトリクスの要素や多項式の係数などを最適化することで新たなモデルを作ることもできる。
[実施例4]実施例3と実施例2の組合せ方法について
実施例4として、色再現モデルを利用して色変換テーブルを作成し、さらに、原稿画像信号と色度値の対応関係データによって、当該色変換テーブル(色再現モデルを利用して作成した色変換テーブル)を修正する方法がある。つまり、実施例4は、実施例3で作成した色変換テーブルを「仮の色変換テーブル」として、さらに実施例2の方法を実施するという方法である。
[色変換テーブル作成方法について]
図2に示した構成において、色変換テーブル70の作成処理は次の手順で行われる。
[手順1]原稿画像データ40を基に印刷された目標印刷物42を画像読取部30で読み取り、読取画像データを取得する。本例では読取画像データとしてRGB画像が得られるものとする。目標印刷物42を読み取って目標印刷物42の読取画像を表す読取画像データを取得する工程が「画像読取工程」の一形態に相当する。また、画像読取部30で得られた読取画像データを画像処理部24に取り込む機能が「第一の解像度の読取画像データを取得する機能」の一形態に相当する。
[手順2]画像読取部30から得られた第一の解像度の読取画像データを低解像度化処理して、第二の解像度の画像データを生成する処理を行う(第一の低解像度画像生成工程)。第一の低解像度画像生成部61によって第二の解像度の画像データを生成する機能が「第一の低解像度画像生成機能」の一形態に相当する。
[手順3]第三の解像度の原稿画像データ40を低解像度化処理して、第四の解像度の画像データを生成する処理を行う(第二の低解像度画像生成工程)。第二の低解像度画像生成工程は、手順2で説明した第一の低解像度画像生成工程の後に実施してもよいし、先に実施してもよく、或いは、両工程を並行に実施してもよい。なお、原稿画像データ40の解像度(第三の解像度)によっては、当該第二の低解像度画像生成工程を省略することができる。
[手順4]画像対応付け部63では、読取画像データから生成した第二の解像度の画像データと、原稿画像データ40から生成した第四の解像度の画像データとの位置関係の対応付けを行う処理を行う(画像対応付け工程)。なお、原稿画像データ40を取り込む工程(原稿画像データ取得工程)は、目標印刷物の読取画像データ取得工程の前でもよいし、後でもよい。
画像対応付け部63において原稿画像と読取画像の画素位置の対応関係が特定され、原稿画像データの信号値(CMYK値)と読取画像データの信号値(RGB値)との対応関係を示すデータ(「原稿画像と読取画像の対応関係データ」)が得られる。
[手順5]色変換部64では、スキャナプロファイルに相当する読取色変換テーブル68を用い、RGB値をLab値に変換する処理を行う(色変換工程)。色変換部64により、読取画像データのRGB値がデバイス非依存色空間の色度値に変換される。
[手順6]こうして、原稿画像信号(CMYK値)と色度値(Lab値)の対応関係を示すデータ(「原稿画像信号と色度値の対応関係データ」)が得られる。この「原稿画像信号と測色値の対応関係データ」を基に、色変換テーブル作成部66により、色変換テーブル70が作成される(「色変換テーブル作成工程」)。
すなわち、色変換テーブル作成部66は、目標印刷物42の読取画像データと原稿画像データ40から対応付けて取得した色情報(デバイス値と非デバイス値のセット)によって、既存プロファイルのデバイス値と非デバイス値の対応関係(LUT)を修正することにより、目標印刷物42の色再現に適したターゲットプロファイルを生成する。
上述のように、第一の実施形態に係る色変換テーブル作成装置60によれば、実画像の目標印刷物42からモアレが発生しにくい比較的に高解像度の第一の解像度による読取画像データを取得でき、この第一の解像度の読取画像データを低解像度化処理して第二の解像度の画像データを生成している。そして、第二の解像度の画像データと原稿画像データ40を用いて、画像対応付け部63による画像の位置合わせの処理と色抽出の処理を行う。このため、色情報の信頼性が高く、かつ、取り扱うデータサイズを削減できる。
すなわち、第一の実施形態に係る色変換テーブル作成装置60によれば、目標印刷物42の読み取りに際して、モアレによる偽色の発生を抑え、信頼性の高い読取画像データの色情報を使用してターゲットプロファイルの色変換テーブル70を作成することができる。また、データ処理に関してデータサイズの削減により、処理の負荷を低減できる。
<<変形例>>
図2では、画像対応付け部63による処理の後に色変換部64による処理を実施しているが、これらの処理順序を入れ替えた構成も可能である。すなわち、第二の解像度の画像データであるRGBの画像データに対して、色変換部64によるRGB→Lab変換の処理を行い、その後、この得られた読取画像のLab画像と、原稿画像データ40(第四の解像度の画像データ)との画像対応付け処理を行う、という構成も可能である。
[原稿画像データに対する色変換について]
図6は、ターゲットプロファイルを用いて原稿画像データの色変換処理を行う構成を示すブロック図である。図6で説明する色変換の機能を、図2で説明した色変換部64の機能と区別するために、図2で説明した色変換部64を「第一の色変換部」と呼び、図6で説明する構成を「第二の色変換部」と呼ぶ。図6に示す第二の色変換部80は、ICCプロファイルの形式に則したターゲットプロファイル92と、プリンタプロファイル94とを用いて、原稿画像データ40の変換処理を行い、印刷装置18(図1参照)に適したデータ形式の画像信号である印刷画像データ96を生成する。ここでは、印刷装置18に適したデータ形式の画像信号として、CMYK信号の形式による出力デバイス信号を生成する例を述べる。
ターゲットプロファイル92の色変換テーブル(「入力色変換テーブル」という。)には、図2で説明した色変換テーブル作成部66によって作成された色変換テーブル70を用いることができる。プリンタプロファイル94は、出力プロファイルとも呼ばれる。プリンタプロファイル94の色変換テーブル(「出力色変換テーブル」という。)は、印刷装置18(図1参照)に与えるCMYK信号と印刷装置18による出力色のLab値との対応関係を規定した色変換テーブルである。出力色変換テーブルは、再現すべきLab値に対応する出力CMYK値への変換関係(Lab→CMYK)を記述したテーブルとなっている。
第二の色変換部80は、ターゲットプロファイル92とプリンタプロファイル94を使って、入力CMYK信号を出力CMYK信号に変換するCMYK→CMYKの色変換処理を行う。図3に示した第二の色変換部80は、図1に示した画像編集装置12の画像処理部24に含まれる。
こうして、原稿画像データ40は、第二の色変換部80により、CMYK→CMYK変換され、色変換後の印刷画像データ96としてのCMYKデータが得られる。なお、図6では2つの色変換テーブル(92,94)によって、段階的に色変換処理を行うものとして説明したが、実際の処理に際しては、これら2つの色変換テーブル(92,94)を統合して1つのCMYK→CMYK変換の色変換テーブルにまとめることができる。この統合された多次元(CMYK→CMYK)の色変換テーブルを用いて、1回の処理で色変換を行うことができる。
なお、上述の第一実施形態では、第一の解像度として600dpiを採用した例を述べたが、発明の実施に際して、第一の解像度は600dpiに限定されない。信頼度の高い読取解像度の範囲で適宜の解像度を「第一の解像度」として採用することができる。例えば、[表2]に示した関係が得られた場合は、600dpiに限らず、1200dpiでもよい。
<第二実施形態に係る色変換テーブル作成装置の構成>
図7は第二実施形態に係る色変換テーブル作成装置の構成を示すブロック図である。図7中、図2で説明した構成と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。図7に示した色変換テーブル作成装置100は、画像位置合わせ部102と、第一の色抽出部103と、第三の低解像度画像生成部121と、第四の低解像度画像生成部122と、第二の色抽出部123と、色変換部124とを備える。
画像位置合わせ部102と第一の色抽出部103は、画像対応付け部63に含まれている。画像位置合わせ部102は、目標印刷物42の読取画像データから生成した第二の解像度の画像データと、原稿画像データ40から生成した第四の解像度の画像データとの位置合わせの処理を行う。
第一の色抽出部103は、画像位置合わせ部102によって位置合わせが行われた位置合わせ処理済みの読取画像のデータ(ここでは、第二の解像度の画像データ)と原稿画像のデータ(ここでは、第四の解像度の画像データ)から、それぞれ対応する画像位置の色情報を抽出する処理を行う。
第一の色抽出部103によって、原稿画像に係る第四の解像度の画像データから抽出したCMYK値と、読取画像に係る第二の解像度の画像データから抽出したRGB値との対応関係(CMYK−RGB)が特定されたデータが得られる。この対応関係を示す色情報におけるRGB値を色変換部64によって非デバイス値(ここではLab値)に変換することにより、原稿画像に係る第四の解像度の画像データから抽出したCMYK値と、読取画像に係る第二の解像度の画像データから色変換されたLab値との対応関係(CMYK−Lab)が特定されたデータが得られる。
第一の色抽出部103によって得られる対応関係(CMYK−RGB)、又は、これを色変換部64で色変換処理して得られる対応関係(CMYK−Lab)が「第一の対応関係」の一形態に相当する。ここでは、説明の便宜上、色変換部64による色変換処理後の対応関係(CMYK−Lab)を第一の対応関係と呼ぶことにする。
第三の低解像度画像生成部121は、画像位置合わせ部102による位置合わせ処理後の読取画像データに基づき、第二の解像度よりも更に低解像度である第五の解像度の画像データを生成する低解像度化処理を行う。すなわち、第三の低解像度画像生成部121は、画像位置合わせ部102によって位置合わせが行われた位置合わせ処理済みの読取画像に係る第二の解像度の画像データから、前記第二の解像度よりも更に低解像度である第五の解像度の画像データを生成する。
第四の低解像度画像生成部122は、原稿画像データ40に基づき、第二の解像度よりも更に低解像度である第六の解像度の画像データを生成する低解像度化処理を行う。すなわち、第四の低解像度画像生成部122は、画像位置合わせ部102によって位置合わせが行われた原稿画像に係る第四の解像度の画像データから、第二の解像度よりも更に低解像度である第六の解像度の画像データを生成する。
第五の解像度は、人間の視覚の周波数特性に近似した解像度とすることが好ましい。特開2006−197457号公報の段落0069によれば、人間の視覚の周波数特性に近似した出力上の解像度が25〜120dpi程度であればよいことが記載されている。本実施形態における第五の解像度は、25〜120dpi程度とすることが好ましく、より好ましくは、50〜100dpiとする。本例では、第五の解像度の具体的な値として、50dpiを採用した例を述べる。
第六の解像度は、第五の解像度と近い値であることが好ましく、特に、第六の解像度は第五の解像度と同等の解像度であることがより好ましい。本例では、第六の解像度の具体的な値として、第五の解像度と同等の50dpiを採用した例を述べる。
第三の低解像度画像生成部121と第四の低解像度画像生成部122のそれぞれは、入力される画像データに対して、画素を一定の割合で間引く間引き処理、又は画素補間手法を用いて画素値を求める画素補間処理を実施することによって、50dpiの画像データを生成する低解像度化処理を行う。なお、第三の低解像度画像生成部121と、第四の低解像度画像生成部122とは、同一の処理内容とすることができ、第三の低解像度画像生成部121と、第四の低解像度画像生成部122の処理機能を統合した共通の低解像度化処理部で構成することができる。なお、低解像度画像の生成処理に関して、ガウシアンフィルタなどぼかしフィルタをかけることにより平均化された画像を低解像度画像とみなしてもよい。ぼかしフィルタの適用により、エッジが鈍り、多少構造がある画像領域から平均的な色を抽出することができるという点で、上述の間引き処理や画素補間処理による解像度変換と同等の効果が得られる。
第三の低解像度画像生成部121による第五の解像度の画像データの生成処理と、第四の低解像度画像生成部122による第六の解像度の画像データの生成処理とは、それぞれ画像位置合わせ部102による画像位置合わせの処理の後に実施される。これは、仮に、第五の解像度の画像データと第六の解像度の画像データとを生成した後に、画像位置合わせの処理を行うとすると、極めて低解像度の画像データに基づいて画像位置合わせの処理を行うことになり、位置合わせの精度が悪くなるためである。
第二の色抽出部123は、第三の低解像度画像生成部121で生成された第五の解像度の画像データと、第四の低解像度画像生成部122で生成された第六の解像度の画像データから、対応する位置の色情報を抽出する処理を行う。第二の色抽出部123で抽出される色は、第一の色抽出部103で抽出される色に比べて、色の数が少ないものとなるが、より平均的な色が抽出されることになる。
第五の解像度の画像データは、目標印刷物42の読取画像データから生成されており、第六の解像度の画像データは、原稿画像データ40から生成されている。第二の色抽出部123によって、第六の解像度の画像データから抽出したCMYK値と、第五の解像度の画像データから抽出したRGB値との対応関係(CMYK−RGB)が特定されたデータが得られる。
色変換部124は、既述した色変換部64と同様に、読取色変換テーブル68を用いてRGB値を非デバイス値(ここではLab値)に変換する処理を行う。色変換部64と、色変換部124とは、同一の処理内容とすることができ、これらの処理機能を統合した共通の色変換部として構成することができる。
第二の色抽出部123によって得られた対応関係(CMYK−RGB)を示す色情報におけるRGB値を色変換部124によって非デバイス値(ここではLab値)に変換することにより、原稿画像に係る第六の解像度の画像データから抽出したCMYK値と、読取画像に係る第五の解像度の画像データから色変換されたLab値との対応関係(CMYK−Lab)が特定されたデータが得られる。
第二の色抽出部123によって得られる対応関係(CMYK−RGB)、又は、これを色変換部124で色変換処理して得られる対応関係(CMYK−Lab)が「第二の対応関係」の一形態に相当する。ここでは、説明の便宜上、色変換部124による色変換処理後の対応関係(CMYK−Lab)を第二の対応関係と呼ぶことにする。
図7に示した色変換テーブル作成部66は、第一の色抽出部103及び色変換部64の処理を介して生成される第一の対応関係と、第二の色抽出部123及び色変換部124の処理を介して生成される第二の対応関係を基に、色変換テーブル70を作成する。
すなわち、図7に示した色変換テーブル作成部66は、まず、第二の対応関係を基に、一旦、色変換テーブルを作成し、その後、更に、この色変換テーブルに対して、第一の対応関係を加えてテーブルを修正し、最終的な色変換テーブル70を作成する。こうして、第二の対応関係を基に、一旦、作成された色変換テーブルに対し、第一の対応関係のデータが追加されて、色変換テーブル70が作成される。第一の対応関係と第二の対応関係とで、同じCMYK値に対して異なるLab値が対応付けられている場合には、第一の対応関係の値が優先されて、色変換テーブル70に反映される。
<第三実施形態>
図2及び図7では、一つの目標印刷物42から一つのターゲットプロファイルとしての色変換テーブル70を作成する例を説明したが、複数の異なる目標印刷物から一つのターゲットプロファイルを生成することも可能である。すなわち、複数の原稿画像データと、それぞれの原稿画像データに基づいて印刷された複数の目標印刷物が与えられた場合に、図2で説明した構成によって、これらの複数の目標印刷物をそれぞれ画像読取部30で読み取り、それぞれの原稿画像と読取画像の対応関係を統合して、一つの色変換テーブルを作成することができる。
また、複数の目標印刷物から一つの平均的なターゲットプロファイルを作成することもできる。かかる平均的なターゲットプロファイルを作成するにあたり、複数の目標印刷物が類似した色を含んでおり、複数の目標印刷物の読取画像データから類似した色が抽出された場合には、色変換テーブルを作成する際の格子点に対する色の対応付けに際して、色の取り合いが発生し、格子点の修正Lab値は、類似した複数の色の平均値になる。「色の取り合い」とは、例えば、図3のID=3とID=4とで同じ格子点に、複数の色度値が対応しているような場合を意味する。
そのため、図7で説明した構成のように、平均的な色を抽出できる、第五の解像度の画像データと、第六の解像度の画像データから作成した対応関係を複数個まとめて、平均的な色変換テーブルを作成することも考えられる。
図8から図10は複数の目標印刷物から一つの(単一の)色変換テーブルを作成する構成を示したブロック図である。図8から図10において、図7で説明した構成と同一つ又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
ここでは、説明を簡単にするために、二つの目標印刷物から一つの色変換テーブルを作成する例を説明する。互いに異なる二種類の目標印刷物と、それぞれの目標印刷物に対応する原稿画像データ、並びに、それぞれの目標印刷物を読み取って生成される対応関係を区別して理解容易に表記するために、図8では目標印刷物42Aを「目標印刷物A」、原稿画像データ40Aを「原稿画像データA」、対応関係データ136Aを「原稿画像と色度値の対応関係A」と表記し、図9では目標印刷物42Bを「目標印刷物B」、原稿画像データ40Bを「原稿画像データB」、対応関係データ136Bを「原稿画像と色度値の対応関係B」と表記している。
図8に示す色変換テーブル作成装置130における画像対応付け部63は、画像位置合わせ部102と、第三の低解像度画像生成部121と、第四の低解像度画像生成部122と、色抽出部133とを備えている。色抽出部133は、図7で説明した第二の色抽出部123に相当するものである。
図8に示す目標印刷物42Aは、原稿画像データ40Aを基に印刷されたものである。図8に示す構成により、目標印刷物42Aを画像読取部30で読み取った読取画像データと、原稿画像データ40Aを基に、原稿画像と色度値の対応関係A(CMYK−Lab)を示す対応関係データ136Aが得られる。この対応関係データ136Aは、第三の低解像度画像生成部121で生成された第五の解像度の画像データと、第四の低解像度画像生成部122で生成された第六の解像度の画像データとから抽出される色情報により生成される。こうして生成された対応関係データ136Aは、対応関係データ記憶部144(図10参照)に記憶される。対応関係データ記憶部144は、図1で説明した画像編集装置12の画像処理部24に備えられる。
図9に示す目標印刷物42Bは、原稿画像データ40Bを基に印刷されたものである。図9に示したように、目標印刷物42Bを画像読取部30で読み取った読取画像データと、原稿画像データ40Bを基に、原稿画像と色度値の対応関係B(CMYK−Lab)を示す対応関係データ136Bが得られる。この対応関係データ136Bは、第三の低解像度画像生成部121で生成された第五の解像度の画像データと、第四の低解像度画像生成部122で生成された第六の解像度の画像データとから抽出される色情報により生成される。
こうして生成された対応関係データ136Bは、対応関係データ記憶部144(図10参照)に記憶される。
その後、図10に示したように、色変換テーブル作成部66は、対応関係データ記憶部144に保持されている複数の対応関係データ136A、136Bを基に、これらをまとめて、単一の色変換テーブル70を作成する。複数の対応関係データ136A、136Bをまとめて作成される色変換テーブル70は、複数の目標印刷物42A、42Bの色再現に共通して利用できる平均的なターゲットプロファイルとなる。
図7から図10では、二つの目標印刷物42A、42Bから一つの色変換テーブル70を作成する例を述べたが、三つ以上更に多数の目標印刷物から一つの色変換テーブルを作成する場合に拡張適用できることは自明である。
[画像の位置合わせ処理について]
ここで、画像対応付け部63(図2及び図7参照)における画像の位置合わせ処理の例を説明する。図11は画像対応付け部63(図2及び図7参照)に含まれる画像位置合わせ部102の具体例を示したブロック図である。画像位置合わせ部102は、幾何対応関係推定部152と、幾何変換部154とを備える。幾何対応関係推定部152は、原稿画像データ40と読取画像データ160とを取り込み、これら2つの画像の幾何対応関係を推定する。ここに示した読取画像データ160は、第一の低解像度画像生成部61(図2及び図7参照)で生成された第二の解像度の画像データを意味している。また、図11に示した原稿画像データ40は、第二の低解像度画像生成部62(図2参照)で生成された第四の解像度の画像データとすることができる。
幾何対応関係には、対比される2画像間の画像の変位量、回転角、変倍率のうち少なくとも1つの要素が含まれる。
幾何変換部154は、幾何対応関係推定部152にて推定された幾何対応関係に基づいて、2つの画像のどちらか一方、或いは両方に対し、両者を一致させるような幾何変換の処理を行う。例えば、読取画像データ160に対して幾何変換を行うものとし、原稿画像データ40については幾何変換を実施しない構成とすることができる。また、幾何変換の一例としてアフィン変換を適用することができる。
2つの画像の幾何対応関係の推定には、例えば、(a)マーカーを利用する方法、(b)パターンマッチングを用いる方法、(c)位相限定相関法を用いる方法などが利用できる。以下、特許文献2の記載事項を援用しながら説明する。
(a)マーカーを用いる方法
印刷業界でいわゆる「トンボ」と呼ばれる基準位置を示すマーカーが原稿画像の四隅や各辺の中央に配置された印刷物が出力される。このようなマーカー付きの印刷物を読み取った際に、このマーカーの位置のずれ量を測定して、画像間の変位量や回転角、変倍率を求めることができる。
例えば、1枚の印刷物に4つから6つのトンボ(マーカー)が形成される。原稿画像データ上のマーカーと印刷物の読取画像データ上のマーカーとの位置ずれを比較することで、幾何学変換パラメータを求めることができる。
原稿画像データにおけるマーカーの特徴点の位置を示す点と、読取画像データにおけるマーカーの特徴点の位置を示す点どうしの対応関係を求めることで、幾何学変換パラメータが得られる。ここで、2つの画像のうち一方の画像に例えばアフィン変換を行うことで2つの点パターンをマッチングさせることが知られている。したがって、幾何学変換パラメータを求めるには、2つの点パターンの各位置が最も近似する最適なアフィンパラメータを探し出せばよい。例えば、読取画像データにおけるマーカーの特徴点を原稿画像データにおけるマーカーの特徴点にアフィン変換するためのアフィンパラメータの評価関数を定め、評価関数が最小になるときのアフィンパラメータを幾何学変換パラメータとする。
(b)パターンマッチング法を用いる方法
変位量のみを推定する方法の一例としては、テンプレートマッチング法が挙げられる。テンプレートマッチング法は一方の画像をテンプレートとし、位置を少しずつずらしながら他方の画像と一致度を求め、最も一致度の高くなる位置を検出するものである。幾何学変換が変位だけに限定できない場合には、回転角を推定する方法(ハフ変換など)や変倍量を推定する方法(マルチスケール解析など)と組み合わせて利用する必要がある。
テンプレートマッチングを応用したブロックマッチング法では、一方の画像をブロックに分割し、ブロックごとに他方の画像と最も一致度の高くなる位置を検出することにより変位量を求めることができる。ブロックマッチング法では、ブロックごとの変位量から回転角や変倍率を推定することも可能である。
(c) 位相限定相関法を用いる方法
高い精度で変位量や回転角、変倍率を求める方法の例として、位相限定相関法(POC;Phase Only Correlation)や回転不変位相限定相関法(RIPOC;Rotation Invariant Phase Only Correlation)がある。位相限定相関法は、画像に対して離散フーリエ変換をかけて得られる位相画像を用い、比較対象の2枚の画像から得られる2つの位相画像の相関が最も高くなる位置を検出することにより、変位量を求める手法である。また、回転不変位相限定相関法は、上記位相画像を対数極座標変換することにより、回転角と変倍率を変換された位相画像上での変位量として検出できるようにしたものである。
上記例示の手法(a)〜(c)などにより、幾何学変換パラメータを求めた後、幾何変換部154は読取画像データ160(又は原稿画像データ40)に幾何学変換を実行する。変換に際してサブピクセル精度の移動や何らかの回転、実数値での変倍などにより変換前後の画素が一対一で対応付かないようなケースでは、適宜画素補間手法を用いて画素値を導出すればよい。画素補間手法の例としては、バイリニア法、バイキュービック法などが挙げられる。
こうして、原稿画像データ40との位置関係の対応付けが定まり、対応付け済み読取画像データ160が得られる(図11参照)。対応付け済み読取画像データ162は第一の色抽出部103(図7参照)に送られる。また、対応付け済み読取画像データ162は第三の低解像度画像生成部121(図7及び図8参照)に送られる。
[画像対応付け(位置合わせ)のための前処理について]
図11に示した原稿画像データ40の解像度と読取画像データ160の解像度とが異なる場合には、画像対応付け部63(図2及び図7参照)にて、読取画像データ160に対し、原稿画像データ40の解像度と一致させる解像度変換を行うことが好ましい。画像対応付け部63は、解像度変換の処理を行うための解像度変換部(不図示)を含む構成とすることができる。
また、例えば、原稿画像データ40がCMYK画像、読取画像データ160がRGB画像である場合のように、原稿画像データ40と読取画像データ160の色空間が異なる場合には、画像対応付け部63による画像の位置合わせ(対応付け)を行う前に、両者をグレースケール変換し、同じ色空間に変換しておくのが好ましい。
グレースケール変換は、例えば、読取画像データ160をスキャナプロファイル(図2で説明した読取色変換テーブル68)でLab値に変換し、L値(明度)のみ取り出したモノクロ画像とすることで実現できる。原稿画像データ40に対しては、図2や図7の構成によってターゲットプロファイルを作成する時点では目標印刷物42のカラープロファイルは存在しないが、例えばJapan Color(登録商標)など代表的なプロファイルを利用できる。
また、原稿画像データ40と読取画像データ160の両者をグレースケールに変換したとしても画素値(濃度値)が異なることが想定されるため、グレースケール画像に対し、さらにエッジ抽出処理を実施し、2値のエッジ画像に変換してから位置合わせを実施しても良い。エッジ抽出処理には、公知のソーベル(Sobel)法やプレウィット(Prewitt)法などが利用できる。
また2つのエッジ画像のエッジ太さは異なってくることも想定されるため、それぞれのエッジ画像に対してさらに細線化処理を実施し、エッジ太さを揃えてから位置合わせを実施するようにしても良い。細線化処理には、公知のヒルディッチ(Hilditch)の方法や田村の方法などが利用できる。
このように原稿画像データ40と読取画像データとで画像の色空間が異なる場合は、画像の幾何対応関係を推定し易いように、位置合わせのための前処理をしておくことが好ましい。なお、原稿画像データ40と読取画像データが同じ色空間の場合でも前処理を実施してもよい。
さらにまた、目標印刷物42は、印刷装置18以外の他の印刷装置で印刷した印刷物の現物(実際に出荷された印刷物)であり、目標印刷物42と原稿画像データ40とが一対一対応していない場合が考えられる。例えば、目標印刷物42と原稿画像データ40とが一対一対応していない場合として、次のような例を挙げることができる。
<例1>:目標印刷物42が、同じ原稿画像データ40を同一印刷面内に多数配置した印刷物の場合。
<例2>:目標印刷物42が、原稿画像データ40と色合わせ対象ではない画像データ(原稿画像データ40とは異なる他の画像データ)とを同一印刷面内に配置した印刷物の場合。なお、互いに異なる複数の画像データを同一印刷面内に配置することを「異種面付け」又は「ギャンギング」などと言う。
<例3>:原稿画像データ40が目標印刷物42の一部(デザイン/レイアウトの一部)を構成している場合。
上記の<例1>から<例3>に例示したように目標印刷物42と原稿画像データ40とが一対一対応していない場合には、目標印刷物42の読取画像の中から注目する原稿画像データ40に対応する部分画像を抜き出す部分画像抜き出し処理を行うことが有用である。
ここでは、<例1>の更なる具体例として、目標印刷物42が同じ原稿画像データ40を同一印刷面内に多数配置(面付け)された印刷物である場合を説明する。
図12(A)(B)にその例を示す。図12(A)は原稿画像データの例を示し、図12(B)は目標印刷物の例である。図12(B)に示した目標印刷物は、図12(A)の原稿画像データを印刷面内に入れ子状に多数配置(面付け)して印刷した印刷物である。
このような場合、目標印刷物の読取画像データをそのまま使用するのではなく、画像対応付け部63による位置合わせの前に読取画像データ中で原稿画像データと対応する部分画像を予め抜き出しておくのが好ましい。
部分画像を抜き出す処理の方法としては、公知のパターンマッチングを用いて原稿画像と対応する部分画像を特定して自動で抜き出す方法や、モニタとしての表示部34に読取画像を表示させ、ユーザが原稿画像と対応する部分画像の範囲を手動で指定する方法などが考えられる。
<例1>の場合に限らず、<例2>や<例3>の場合でも同様に、部分画像抜き出し処理を行うことが有用である。
なお、上記の部分画像抜き出し処理は、例えば、依頼者から原稿画像1つ分の色見本が提供されている場合など、原稿画像データ40と目標印刷物42とが一対一対応していれば不要である。
図13は上述した前処理を含む画像対応付けの処理を行う構成のブロック図である。図13中、図11で説明した構成と同一又は類似する要素には同一の符号を付した。図13に示した画像対応付け部63は、原稿対応画像抜き出し部170と、グレースケール変換部172と、エッジ抽出部174と、細線化部176と、幾何対応関係推定部152と、幾何変換部154と、を備える。
原稿対応画像抜き出し部170は、図12(B)で例示したような複数の画像が面付け配置された目標印刷物42を読み取って得られた読取原画像データ180から原稿画像データ40に対応する部分画像を抽出する処理を行う画像抜き出し部として機能する。読取原画像データ180は図12(B)のような目標印刷物の印刷面の全体を読み取って生成される読取画像のデータである。読取原画像データ180はRGB画像でもよいし、Lab画像でもよい。図13に示した読取原画像データ180は、第一の低解像度画像生成部61(図2及び図7参照)で生成される第二の解像度の画像データに相当する。
原稿対応画像抜き出し部170によって抜き出された部分画像のデータが、原稿画像データ40と対比される読取画像データ160となる。
グレースケール変換部172は、原稿画像データ40と読取画像データ160のそれぞれについて、グレースケールに変換する処理を行う。エッジ抽出部174は、グレースケール画像からエッジ抽出の処理を行う。細線化部176は、エッジ抽出部174で生成されたエッジ画像の細線化処理を行う。
細線化部176により細線化処理されたエッジ画像が幾何対応関係推定部152に入力され、幾何対応関係推定部152にて、原稿画像データ40と読取画像データ160の幾何対応関係が特定される。こうして求めた幾何対応関係を利用して、幾何変換部154により読取画像データ160に対する幾何変換の処理が実施され、対応付け済み読取画像データ162が得られる。
画像対応付け部63による対応付けの処理機能が「画像対応付け機能」に相当する。なお、原稿画像データ40と目標印刷物42の印刷画像とが一対一対応している場合は、図13における読取原画像データ180がそのまま読取画像データ160として扱われる。
[測色器32の活用について]
目標印刷物42をスキャナ等の画像読取部30で読み取って取得した色度値には様々な誤差要因が考えられる。誤差要因として、例えば、スキャナの読み取り誤差、スキャナプロファイルの誤差、画像信号と色度値の対応付けの誤差、色変換テーブル作成の誤差などがあり得る。
したがって、このような誤差要因の影響を低減し、色合わせの精度をより一層高めるために、分光測色器(測色器32)を併用することが好ましい。画像読取部30を介して取得される情報と、分光測色器で測色した情報とを組み合わせることで色合わせ精度を向上させることができる。
[測色方法、測色値と画像位置の対応付け方法について]
印刷物のグラデーション部や絵柄部に関しては、所望の画像信号値に対応する測色値を分光測色器で取得するのは、物理的に難しい。その主な理由として、第1に、分光測色器のアパーチャーが、ある大きさを持つこと、第2に、測色位置を所望の位置に精密に合わせることが困難であること、が挙げられる。
この点、分光測色器のアパーチャーのサイズより十分広い面積を持つ平網部分(一定の画像信号値が広がっている部分)であれば、所望の画像信号値に対する測色値を容易に取得可能である。
本実施形態では、測色器32によって画像信号値と対応する測色値を取得する方法として、以下の方法がある。
(1)第1の方法は、原稿画像データを解析して、測色器32によって測定可能な平網部分を自動で特定し、測色推奨位置を表示部34に表示し(図1参照)、ユーザに測色させる方法である。
この場合、原稿画像データの中で、同じ色の画素数が多い色ほど、優先順位が高いものとして、グラフィカルユーザインターフェース(GUI;graphical user interface)で上から優先順に、測色推奨位置の候補を並べるようにしてもよい。
(2)第2の方法は、表示部34に原稿画像データの画像内容(原稿画像)を表示させ、ユーザが画面上で測色位置を選択して測色を行う方法である。
なお、位置を指定して自動で測色できる測色器であれば、測色器に指示して自動測色させることもできる。
ユーザが測色位置を画面上で指定する第2の方法において、ユーザがグラデーション部や絵柄部を指定した場合、測色対象画像信号値はユーザ指定位置に対応する画像中のある範囲内(例えば、測色器32のアパーチャーの範囲程度)を平均化することで取得し、測色値は指定位置で測色を実施することで、アパーチャー範囲内の平均化された測色値として取得可能である。
この場合、測色はユーザ指定位置(その近傍を含む)で複数回実施するようにユーザに促し、複数回の測色結果を平均化して測色値を得るようにすることが好ましい。すなわち、ユーザが手動で測色器32の位置を合わせる作業を行うと、測色位置に微妙なずれが生じるため、複数回の測色を実施し、複数回の測色結果を平均化することで、位置ずれによる測定誤差の影響を低減することが好ましい。
測色器32による測色の対象となった位置の画像信号(原稿画像信号或いは読取画像信号)と測色器32で取得した測色値の組合せデータが得られる。この組合せデータの利用方法に関する具体例を以下に説明する。
[測色値利用方法の第1例]
測色器32から得られる測色値の利用方法の第1例として、原稿画像と色度値の対応関係に測色値を直接反映させる方法を説明する。
図14は測色値利用方法の第1例に係る構成を示したブロック図である。図14中、図2で説明した構成と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。図14に示す構成は、図2で説明した色変換テーブル作成装置60の主要構成に対して、測色器32、測色位置対応付け部192及び色度値置換部194が追加された構成となっている。
測色位置対応付け部192は、測色器32によって測色値が得られる測色位置と原稿画像データ40における位置と対応付けの処理を行う。すなわち、測色位置対応付け部192は、測色器32を用いて印刷物を測色した測色位置に対応する原稿画像上の位置を把握して、原稿画像データ40の中の測色位置に相当する画像位置の原稿画像信号値(「測色対象原稿画像信号値」という。)を取得する手段として機能する。また、測色位置対応付け部192は、画像読取部30から得られる読取画像データを基に、測色器32を用いて印刷物を測色した測色位置に対応する読取画像データ上の位置を把握して、読取画像データ中の測色位置に相当する画像位置の画像信号値(「測色対象読取画像信号値」という。)を取得する手段として機能する。
測色位置対応付け部192は、既に説明した測色推奨位置を提供する手段や、測色位置をユーザが設定できるGUI、指定された測色位置について自動的に測色を実施する自動測色手段などを含むことができる。
色度値置換部194は、目標印刷物42の読取画像データに対して画像対応付け部63及び色変換部64による処理が行われて生成された原稿画像信号と色度値の対応関係データに対し、測色器32から取得される測色値(ここではLab値)と、測色位置対応付け部192から得られる測色対象原稿画像信号値(CMYK値)とを基に、対応関係データにおける測色対象原稿画像信号値に対応する色度値データを測色器32で取得した測色値に置き換える置換処理を行う。
色度値置換部194による置換処理を経て生成される置換処理後の「原稿画像信号と色度値の対応関係データ」を基に、色変換テーブル作成部66によって色変換テーブル70が作成される。このようにして画像信号と色度値の対応関係のデータに、測色器32からの測色値を反映することにより、色変換の精度がより一層向上する。
なお、図14で説明した測色器32、測色位置対応付け部192、及び色度値置換部194の構成は、図7に示した構成や図8に示した構成にも同様に追加することができる。
[測色値利用方法の第2例]
測色器32から得られる測色値の利用方法の第2例として、測色値を基にスキャナプロファイルの選択又は補正を行う方法を説明する。
画像読取部30に用いられるスキャナは、一般にはRGB3原色のフィルタを通して取得した画像信号(スキャナ画像信号)を取得する。RGB3原色のフィルタの分光感度は、分光測色器のXYZ等色関数とは異なるものである。
スキャナプロファイルとは、スキャナ画像信号と、測色値(デバイス非依存色空間の色度値)との対応付けをしたものである。スキャナにおけるRGB3原色のフィルタの分光感度(すなわち、スキャナの分光感度)は、分光測色器のXYZ等色関数とは異なるものである。そのため、異なる分光特性を持つ色材や基材の場合に、スキャナで取得したRGB信号値は同じになる場合でも、測色器32で取得されるXYZ値(Lab値)は異なる事も起こり得る。つまり、スキャナプロファイルは印刷物の色材や基材に依存性がある。
そこで、予め様々な色材や基材に対する複数のスキャナプロファイルをデータベースに用意しておき、測色対象読取画像信号と測色値の関係から、実際の印刷物での測色値に対して、最も近いスキャナプロファイルを選択する構成が好ましい。
また、測色対象読取画像信号と測色値の関係からスキャナプロファイルの色変換テーブルを補正し、画像読取部30で得られる色度値を実際の印刷物から得られる測色値に近くなるようにする構成も好ましい。
図15は測色値を基にスキャナプロファイルの選択と補正を行う手段を備えた構成例である。ここでは、測色器32から得られる測色値を用いてスキャナプロファイルの選択と修正をどちらも実施する場合を説明するが、スキャナプロファイル選択と修正のどちらか一方を実施する形態も可能である。すなわち、スキャナプロファイルの選択のみ実施する形態でもよいし、スキャナプロファイルを1つだけ用意しておき、適応的に修正のみ実施するような形態でもよい。
図15中、図2及び図14で説明した構成と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。図15に示した構成例は、図2で説明した色変換テーブル作成装置60の主要構成に対して、測色器32、測色位置対応付け部192、読取色変換テーブルデータベース200、読取色変換テーブル選択部202、及び読取色変換テーブル補正部204が追加された構成となっている。
読取色変換テーブルデータベース200には、様々な色材や基材の組合せに対する複数の読取色変換テーブル(スキャナプロファイル)が蓄積されている。また、読取色変換テーブルデータベース200には、過去に本システムで作成又は修正された読取色変換テーブルを保存しておくことができる。
読取色変換テーブルデータベース200には、印刷装置18(図1参照)による印刷に使用することができる色材種と基材種の様々な組み合わせに対して、組み合わせ毎の画像読取部30からの読取信号と色度値の対応関係を表すスキャナプロファイルとしての読取色変換テーブルが格納されている。
読取色変換テーブル選択部202は、測色器32から得られる測色値と、測色位置対応付け部192から得られる測色対象読取画像信号値とを基に、読取色変換テーブルデータベース200の中から適切なスキャナプロファイルを選択する処理を行う。
読取色変換テーブル補正部204は、読取色変換テーブルデータベース200から読み出されたスキャナプロファイルの読取色変換テーブルに対し、測色器32から得られる測色値と、測色位置対応付け部192から得られる測色対象読取画像信号値とを基に、テーブル値を補正する処理を行う。
読取色変換テーブル選択部202による選択処理、及び読取色変換テーブル補正部204によるテーブル補正処理のうち少なくとも一方の処理を経て得られた読取色変換テーブル68が色変換部64に適用される。
[スキャナプロファイルの選択方法の例について]
読取色変換テーブル選択部202は、次の処理を行う。
測色した位置に対応する測色対象読取画像信号値(ここではRGB値)からスキャナプロファイルの読取色変換テーブル(RGB→Lab変換テーブル)を参照して得られるLab値と、測色器32で測色して得たLab値(測色値)の色差を算出し、平均色差又は最大色差、若しくはその両方を算出する。
このような処理を、予め用意した読取色変換テーブルデータベース200内のスキャナプロファイルのすべてに対して実施し、平均色差や最大色差が最も小さくなるスキャナプロファイルを、色変換部64で使用するスキャナプロファイルとして選択する。
こうして選択されたスキャナプロファイルの読取色変換テーブルをそのまま色変換部64に適用してもいし、当該スキャナプロファイルの読取色変換テーブルを読取色変換テーブル補正部204にてさらに補正して、補正後の読取色変換テーブルを色変換部64に適用してもよい。
[スキャナプロファイルの補正方法の第1例について]
次に、読取色変換テーブル補正部204における補正方法の第1例について説明する。読取色変換テーブル補正部204は、色変換テーブル作成部66に関する[実施例2]として説明した色変換テーブルの修正方法と、同様の方法で色変換テーブルを直接的に補正する構成とすることができる。
既述の[実施例2]では、原稿画像信号と色度値の対応関係データを用いて、既存の色変換テーブルの格子点の色度値を修正することで所望の色変換テーブルを得るものであった。
これに対し、読取色変換テーブル補正部204では、画像読取部30から得られる読取画像信号と、測色値との対応関係データを用いて、既存のスキャナプロファイルの色変換テーブルにおける格子点の色度値を修正することで所望のスキャナプロファイルの色変換テーブルを得る。すなわち、測色値が存在する読取画像信号周囲の格子点について、つまり、印刷物上の平網部分で測色器32による測色が可能であった読取画像信号周囲の格子点について、局所的に色度値を測定値に置換して、読取色変換テーブルを補正することができる。
また、[実施例2]で説明した例と同様に、この補正後の色変換テーブルに対して、さらに、平滑化(スムージング)処理を実施することも好ましい。
[スキャナプロファイルの補正方法の第2例について]
次に、読取色変換テーブル補正部204における補正方法の第2例について説明する。読取色変換テーブル補正部204は、読取画像信号と測色値との対応が特定されている局所的な読取画像信号と測色値の対応関係データから画像読取部30の色再現モデルを推定し、既存のスキャナプロファイルの色変換テーブル全体へ補正を行う構成とすることができる。
例えば、画像読取部30に用いられるスキャナの色再現モデルとして、以下のような3×3マトリクスとRGBのガンマ(γ)値を想定する。3×3マトリクスは、RGB原色のXYZ値を成分とするマトリクスである。γ値はRGB単色階調の非線形性を表す。
R,G,Bは、画像読取部30のデバイス信号値(読取画像信号値)であり、画像読取部30から得られる信号値を「0−1」に規格化した値である。
X,Y,Zは、読取画像信号値に対応する測色値となる。色再現モデルのパラメータはR原色のXYZ値(Xr,Yr,Zr)、G原色のXYZ値(Xg,Yg,Zg)、B原色のXYZ値(Xb,Yb,Zb)、RGBのγ値(γr,γg,γb)の合計12個となる。
測定点1つにつき読取画像信号値(R,G,B)に対する測色値X,Y,Zの正解値が得られるので方程式が3つ得られる。よって、現在の印刷物に対応した画像読取部30の色再現モデルを求めるには、印刷物上の測定点を4つ以上用意すればよい。測定点を4つ以上用意することにより、方程式が12個以上となり、これら方程式を連立して解くことで12個の未知パラメータを求めることができる。なお、測定点が5点以上であれば最適化して解くことになる。
既存の色変換テーブルも上記の色再現モデルに当てはめることができる。
つまりR,G,Bの原色のXYZ値及びRGB階調のγ値を色変換テーブルから取得すればよい。
このようにして現在の印刷物に対応したスキャナの色再現モデルと既存の色変換テーブルに対応したスキャナの色再現モデルが得られる。
色再現モデルが得られたら、既存の色変換テーブルの各格子点(R,G,B)に対して以下のような補正をする。
補正後色変換テーブル格子点XYZ値=既存色変換テーブル格子点XYZ値+(現在の印刷物に対するスキャナ色再現モデルのXYZ値 −既存色変換テーブルからのスキャナ色再現モデルのXYZ値)
なお、推定した現在の印刷物に対応したモデルを利用して色変換テーブルを新たに作成してもよい。ただし、印刷物上の測色点数は少ないことが想定されるため、少ない情報に基づいて1から色変換テーブルを作成するよりは、既存の色変換テーブルの大局的な色再現特性をベースに色材や基材の違いによる微小なズレ分をモデルで推定して修正する方が精度が良いことが期待できる。
[測色値利用方法の第3例]
測色器32から得られる測色値の利用方法の第3例として、色変換テーブル作成部66で生成した色変換テーブルに対して、測色値を直接反映させて修正する方法を説明する。
図16は測色値利用方法の第3例に係る構成を示したブロック図である。図16中、図2及び図14で説明した構成と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。図16に示す構成は、図14で説明した構成における色度値置換部194に代えて、色変換テーブル修正部214を備えている。
図16に示す構成例の場合、色変換テーブル作成部66は、画像対応付け部63及び色変換部64による処理が行われて生成された「原稿画像信号と色度値の対応関係データ」を基に、一旦、暫定的な色変換テーブルを作成する。色変換テーブル修正部214は、色変換テーブル作成部66によって作成された暫定的な色変換テーブルと、測色器32から取得される測色値(ここではLab値)と、測色位置対応付け部192から得られる測色対象原稿画像信号値(CMYK値)とを基に、暫定的な色変換テーブルにおける色度値を、測色器32で取得した測色値に置き換える修正処理を行う。色変換テーブル修正部214による修正処理を経て、最終的な色変換テーブル70が生成される。
図16に示す構成例によれば、色変換テーブル作成部66によって暫定的に作成された色変換テーブルであるプロファイルを測色器32の測色値で直接修正するため、測色器32による測色値が色変換テーブルに対して高精度に反映される。
<他の変形例>
図13から図16で説明した構成は、図7から図10で説明した構成に適宜組み合わせることができる。
<コンピュータを色変換テーブル作成装置として機能させるプログラムについて>
上述の実施形態で説明した色変換テーブル作成装置として、コンピュータを機能させるためのプログラムをCD−ROMや磁気ディスクその他のコンピュータ可読媒体(有体物たる非一時的な情報記憶媒体)に記録し、該情報記憶媒体を通じて当該プログラムを提供することが可能である。このような情報記憶媒体にプログラムを記憶させて提供する態様に代えて、インターネットなどの通信ネットワークを利用してプログラム信号をダウンロードサービスとして提供することも可能である。
また、このプログラムをコンピュータに組み込むことにより、コンピュータに色変換テーブル作成装置の各機能を実現させることができ、上述の実施形態で説明した色変換テーブルの作成機能や色変換機能を実現することができる。
<実施形態の利点>
(1)特許文献1の技術では、読取画像の色味は再現されるが、読取画像そのものを再出力するため、原稿画像がもつ高精細感は失われる。これに対し、本発明の実施形態によれば、原稿画像と目標印刷物の読取画像を位置合わせ後に、原稿画像信号値と読取画像信号値を対応付けて、ターゲットプロファイル92の色変換テーブル70を作成している。そして、ターゲットプロファイル92とプリンタプロファイル94でカラーマッチングさせて原稿画像データ40を印刷出力するため、高精細感があり、かつ、目標印刷物と色味が合致した印刷物を得ることができる。
(2)特許文献2の技術では、色見本となる印刷物と、出力側の印刷物の両方の印刷物について読み取りが必要であるが、本発明の実施形態によれば、原稿画像データを色見本としての目標印刷物の読取画像に基づいて、ターゲットプロファイルの色変換テーブル70を作成する。本発明の実施形態によれば、ターゲットプロファイルを作成するに際し、印刷装置18による印刷の実施や、その印刷物の読み取りを行う必要がなく、印刷の手間や読み取り作業の手間がかからない。
(3)本発明の実施形態によれば、画像データと対応する色度値の多次元の対応関係を表す色変換テーブル70を作成して、目標印刷物42と印刷装置18による印刷物との色を合わせるため、より高精度な色合わせが可能となる。
(4)本発明の実施形態によれば、原稿画像データ40と目標印刷物42とが一対一対応しない場合でも、目標印刷物42の読取画像から原稿画像対応部分を抜き出して、画像の対応付けをすることができる。これにより、原稿画像データ40と目標印刷物42が一対一対応しない場合でも色合わせを実施可能となる。
(5)本発明の実施形態によれば、測色器32を備え、測色器32による測色値を利用して画像読取部30からの色情報を修正する構成を採用したことにより、画像読取部30による測色の誤差を低減し、色合わせの精度をより一層向上させることができる。
(6)本発明の実施形態によれば、目標印刷物42を画像読取部30で読み取る際の読取解像度と、印刷線数の干渉によるモアレ(偽構造や偽色)の発生を抑えて、実用的な計算コストで信頼性のある読取画像データを得ることができ、この読取画像データを用いて画像の位置合わせと色抽出を行うことができる。したがって、信頼性の高い画像と色を使用して高精度の色再現が可能な色変換テーブルを作成することができる。
(7)図7から図10で説明した形態によれば、特に、第三の低解像度画像生成部121及び第四の低解像度画像生成部122による低解像度化処理によって、平均的な色を抽出できるため、プロファイル修正のためのサンプリング点が増え、プロファイル修正のロバスト性が上がる。
(8)本実施形態によれば、色再現目標が現物の印刷物(目標印刷物)で指定されている場合でも、適切な色変換テーブルを作成することができ、ICCプロファイルを利用したカラーマネージメントが可能となる。また、目標印刷物に対する色合わせ工程を効率化できる。
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものでは無く、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。