JP6296620B2 - 細胞評価用ハイドロゲル基材、細胞評価用ハイドロゲル基材の作製方法および細胞評価手法 - Google Patents

細胞評価用ハイドロゲル基材、細胞評価用ハイドロゲル基材の作製方法および細胞評価手法 Download PDF

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Description

本発明は、細胞評価用ハイドロゲル基材、細胞評価用ハイロドゲル基材の作製方法および細胞評価手法に関する。
癌に対して効果および選択性が高く、また副作用の少ない抗癌剤を開発するためには、膨大な数の新薬候補の中から、有用なものを絞り込むためのスクリーニング操作が必要であり、現在、実験動物を用いた薬効評価を行う前段階として、培養した癌細胞を用いた薬剤アッセイが行われている。
癌細胞に対し抗癌剤がどの程度作用するかについて評価を行う場合に、癌細胞の浸潤および転移を定量的に評価することが重要である。
現在、癌細胞の浸潤挙動や転移を解明するためには、マルチウェルプレート等を利用した通常の平面培養のほか、直径数ミクロンの穴の開いたメンブレンを組み込んだマルチウェルプレートを利用した培養手法も利用されており、細胞の生存率あるいは浸潤度に対する、抗癌剤の半数阻害濃度(IC50)の測定などが行われている。
また、平面における単独培養と比較して、生体内における癌細胞の挙動を、より忠実に生体外において再現するための細胞培養システムに関する研究も盛んに行われている。例として、特許文献1に示されるように、3次元的なハイドロゲルの内部の一定の位置に癌細胞を包埋し、ゲル中における癌細胞の挙動を評価するシステムが提案されており、立体的な環境における浸潤評価や薬効試験が可能となっている。
また、非特許文献1に示されるように、平面上での培養ではあるものの、癌細胞と他の細胞を共培養するシステムも提案されている。このシステムでは、中央にバルブを有するチャンバー内に、ヒト子宮頸癌細胞およびヒト血管内皮細胞を播種することで、2次元的な環境下において共培養を行っており、複数種の細胞が存在する生体組織に近い環境における癌細胞の挙動の観察が可能となる。
さらにまた、非特許文献2に示されるように、腫瘍組織内部の低酸素領域が腫瘍の悪性度に関わる様々な遺伝子を発現していることに着目し、癌細胞の球状の凝集体(スフェロイド)を構築し、3次元的な低酸素領域を再現する手法も提案されている。格子状の凹凸構造を底面に有する培養プレート上に様々な種類の癌細胞を播種し、培養することで、均一な大きさの球状の細胞凝集体(スフェロイド)を構築し、生体内の腫瘍内部にしばしば見られる低酸素領域が再現されている。
特開2010−110272号公報
「アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)」、2012、84、2088−2093. 「バイオマテリアルズ(Biomaterials)、2011、32、6052−6058.
しかしながら、マルチウェルプレートを用いた通常の薬剤アッセイでは、平面的な培養基材上に播種した癌細胞が用いられているため、3次元的かつ複数種の細胞が高密度で存在する生体内組織の環境を再現できているとは言い難く、抗癌剤の効果を、生理学的環境と同様の条件下で正確に評価することは不可能である。そのため、より生体に近い細胞培養環境において細胞評価を行うシステムや手法の開発が必要とされている。
また、特許文献1、あるいは非特許文献2に示される技術を用いた場合、3次元的な空間において癌細胞の浸潤評価を行うという意味において、生体環境と一部類似する環境を再現しているものの、癌細胞と正常細胞が相互作用を及ぼしあっている生体内の腫瘍とは大きく異なるため、抗癌剤の薬効を正確に評価することは不可能となる、という問題点がある。
また、非特許文献1に示される技術を用いた場合、複数種の細胞が存在するという意味において生体内の環境と類似するものの、2次元平面的な細胞培養系であるため、生体内の3次元的な腫瘍組織との相関が得られない、という問題点がある。
つまり、生体内環境により近い条件下において癌細胞の挙動を評価するためには、これらの技術の利点を兼ね備えた、(1)3次元的な環境下において、(2)複数種の細胞を共培養する、システムを構築することが望ましいが、このような条件を満たすシステムはこれまでに開発されていない。
さらに、癌細胞の浸潤度合いを評価する上で、癌細胞の初期位置を一定に制御できれば、癌細胞の浸潤を定量的かつ正確に評価する上で非常に有利であるが、マイクロメートルの正確さで、3次元的な培養環境の内部に細胞を配置する手法も、これまでにほとんど開発されていない。
本発明は、従来の技術の有する上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来技術と比較してより生理的環境に近い条件下において、正確に癌細胞の浸潤挙動を評価するために、3次元的な環境であり、かつ複数種の細胞が共存する新規細胞培養系を構築しようとするものである。
また本発明は、癌細胞の初期位置を一定の範囲に制限することによって、非常に簡便かつ正確に、癌細胞浸潤の定量評価を行うことを可能とする、新規細胞培養系を提供しようとするものである。
さらに本発明は、作製した新規細胞培養基材を利用することによって、簡便かつ正確に、生体内の環境と類似した環境において、癌細胞の浸潤評価を可能とする、新規細胞評価手法を提供しようとするものである。
上記目的を達成するための、本発明の一観点に係る発明は、ハイドロゲルによって構成され、ファイバー状、あるいは、シート状の形態を有し、長さ方向の軸に対して垂直な平面における断面Sの内部において、周縁部が断面Sの周縁部に接しておらず、かつ、第一の細胞が存在する、領域Aを有し、さらに、領域Aは、断面Sにおける領域A以外の領域Bと比較して、弾性率の低いハイドロゲルによって構成されている、細胞評価用ハイドロゲル基材である。このような基材を用いることによって、3次元的なファイバー状またはシート状のハイドロゲル基材の内部の特定の位置に、癌細胞などの、評価対象となる第一の細胞を配置することが可能となり、また、第一の細胞が浸潤し増殖する領域および方向を、内部の一定の領域のみに制限することが可能となり、正確な浸潤挙動評価を行うことが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記ハイドロゲル基材は、断面Sにおいて、部分的に領域Aおよび領域Bに接し、かつ、部分的に断面Sの周縁部に接する、領域Cを有し、さらに、領域Cは、領域Bと比較して、弾性率の低いハイドロゲルによって構成されていることが望ましい。このようにすることによって、ハイドロゲル基材中に内包した、評価対象となる第一の細胞の浸潤する方向を、領域Aから領域Cを通じてハイドロゲル基材の外側方向へと制御することが可能となり、より正確かつ簡便に、領域Aに包埋した第一の細胞の浸潤挙動評価を行うことが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、領域Bには、前記第一の細胞とは異なる第二の細胞が存在することが望ましい。このようにすることによって、たとえば第一の細胞として癌細胞の存在する領域Aの周囲に、癌細胞以外の細胞が存在し、癌細胞と相互作用を及ぼしあう環境において、癌細胞がハイドロゲル基材の外部に向かって浸潤する状況を再現することができるため、癌細胞の浸潤挙動を正確かつ簡便に評価することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、領域Cには、前記第二の細胞が存在することが望ましい。このようにすることによって、癌細胞の浸潤方向である領域に、癌細胞以外の細胞が存在する状況を再現することができるため、癌細胞の浸潤挙動を正確かつ簡便に評価することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、領域A、領域B、および領域Cを構成するハイドロゲルは、アルギン酸、あるいは、アルギン酸の誘導体によって構成されていることが好ましい。このようにすることによって、容易に成型しやすく、生体適合性に優れ、細胞の生存を維持しながら細胞を包埋でき、機械的強度が高く、細胞培養液中において比較的長期にわたって安定な、ハイドロゲル基材を利用することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、領域Aおよび領域Cを構成するハイドロゲルには、アルギン酸プロピレングリコールが含まれていることが好ましい。このようにすることによって、弾性率の低い、領域Aおよび領域Cを構成することが可能となり、第一の細胞が領域Aから領域Cを通過してハイドロゲル基材の外へとより効率的に浸潤することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、領域A乃至領域Cを構成するハイドロゲルのマトリックス中には、細胞外マトリックスを構成するタンパク質、あるいは、細胞接着性のペプチド分子の少なくともいずれかが含まれていることが好ましい。このようにすることによって、コラーゲン等のマトリックス成分が含まれる生体環境をより高度に模倣した環境における細胞の浸潤挙動の評価が可能となるほか、細胞のマトリックスへの接着性が向上し、細胞の浸潤が促進され、評価にかかる時間を大幅に短縮することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第一の細胞とは、癌細胞であることが好ましい。このようにすることによって、癌細胞の浸潤を評価するためのハイドロゲル基材の提供が可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第二の細胞とは、癌細胞以外の細胞であることが好ましい。このようにすることによって、癌細胞と正常細胞が存在し相互作用を及ぼしあう生体環境と同様の環境における、癌細胞の浸潤挙動の評価が可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第二の細胞とは、繊維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、中皮細胞、実質細胞、腺細胞、表皮細胞、神経細胞、骨芽細胞、これらの細胞の前駆細胞、各種幹細胞より分化させた細胞、の少なくともいずれかであることが好ましい。このようにすることによって、これらの細胞と癌細胞が相互作用を及ぼしあう生体環境と同様の環境における、癌細胞の浸潤挙動の評価が可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、領域Aの面積は、前記第一の細胞の平均直径をDとすると、10D以下であることが好ましい。このようにすることによって、領域Aに包埋する第一の細胞の初期位置を、一定の範囲に制限することが可能となるため、その浸潤挙動をより正確かつ簡便に評価することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、領域Aの面積をSとし、領域Aの周囲長をLとすると、領域Aの円形度4πS/Lは0.5以上であることが好ましい。このようにすることによって、領域Aに包埋する第一の細胞の初期位置を、断面における一定の範囲に制限することが可能となるため、その浸潤挙動をより正確かつ簡便に評価することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第一の細胞の平均直径をDとすると、領域Cの幅は3D以下であることが好ましい。このようにすることによって、癌細胞が外部へと浸潤する際に通過する領域Cの幅を制限することができるため、より効率的かつ迅速な癌細胞の浸潤評価が可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、ハイドロゲル基材は、直径500マイクロメートル以下のファイバー状であることが好ましい。こ
のようにすることによって、酸素あるいは栄養分の不足による内部に包埋した細胞の壊死を防ぐことが可能となるほか、癌細胞がハイドロゲル基材の外部へと浸潤するために必要となる時間を短縮することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、ハイドロゲル基材は、厚さ500マイクロメートル以下のシート状であり、断面Sの内部において、領域Aは複数個所存在していてもよい。このようにすることによって、ファイバー状のハイドロゲル基材の場合と同様に、細胞の壊死を防ぎ、癌細胞の浸潤時間を短縮することが可能となるほか、第一の細胞が存在する領域Aを複数個所設けることによって、評価対象となる細胞を並列的に配置した、より高密度な細胞評価系の構築も可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、領域Aに含まれる、前記第一の細胞の密度は、1立方センチメートル当たり10万個以上であることが好ましい。このようにすることによって、内部に高密度に癌細胞を包埋したハイドロゲル基材の利用が可能となり、より効率的に癌細胞の浸潤挙動を評価することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、領域B乃至領域Cに含まれる、前記第二の細胞の密度は、1立方センチメートル当たり100万個以上であることが好ましい。このようにすることによって、内部に正常細胞を高密度に包埋したハイドロゲル基材の利用が可能となり、より生体環境に近い状況における癌細胞の浸潤挙動評価が可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、ハイドロゲル基材は、少なくとも2つの入口I1〜In(n≧2)と、入口I1〜Inにそれぞれ接続する入口流路CI1〜CInと、入口流路CI1〜CInが同時あるいは段階的に合流する少なくとも1つの合流点P1〜Pm(m≧1)と、合流点P1〜Pmより下流に存在する合流流路Gと、合流流路Gの下流に存在する出口Oを有する、流路構造Xに対し、アルギン酸ナトリウムを含み、かつ前記第一の細胞を懸濁させた、第一の水溶液を、入口I1を介して、また、アルギン酸ナトリウムを含む第二の水溶液を、入口I2を介して、それぞれ連続的に導入し、流路構造Xの内部において、前記第一の水溶液および前記第二の水溶液を接触させ、さらに流路構造Xの内部乃至外部において、前記第一の水溶液および前記第二の水溶液をゲル化剤水溶液と接触させることによって、前記第一の水溶液および前記第二の水溶液が接触した状態で連続的にゲル化することによって作製されたものであり、また、領域Aは前記第一の水溶液がゲル化することによって形成されたものであり、かつ、領域Bは前記第二の水溶液がゲル化することによって形成されたものであることが望ましい。このようにすることによって、組成の異なる複数の部分によって構成された断面パターンを有し、包埋した細胞の位置が正確に制御され、細胞を生きたまま包埋可能な、ファイバー状あるいはシート状のハイドロゲル基材を、簡便かつ連続的に作製することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、ハイドロゲル基材は、少なくとも3つの入口I1〜In(n≧3)と、入口I1〜Inにそれぞれ接続する入口流路CI1〜CInと、入口流路CI1〜CInが同時あるいは段階的に合流する少なくとも1つの合流点P1〜Pm(m≧1)と、合流点P1〜Pmより下流に存在する合流流路Gと、合流流路Gの下流に存在する出口Oを有する、流路構造Xに対し、アルギン酸ナトリウムを含み、かつ前記第一の細胞を懸濁させた、第一の水溶液を、入口I1を介して、また、アルギン酸ナトリウムを含む第二の水溶液を、入口I2を介して、さらに、アルギン酸ナトリウムを含む第三の水溶液を、入口I3を介して、それぞれ連続的に導入し、流路構造Xの内部において、前記第一の水溶液、前記第二の水溶液、前記第三の水溶液を接触させ、さらに流路構造Xの内部乃至外部において、前記第一の水溶液、前記第二の水溶液、および前記第三の水溶液をゲル化剤水溶液と接触させることによって、前記第一の水溶液および前記第二の水溶液が接触した状態で連続的にゲル化することによって作製されたものであり、また、領域Aは前記第一の水溶液がゲル化することによって形成されたものであり、かつ、領域Bは前記第二の水溶液がゲル化することによって形成されたものであり、さらに、領域Cは前記第三の水溶液がゲル化することによって形成されたものであってもよい。このようにすることによって、断面が組成の異なる少なくとも3つの領域によって構成される、ハイドロゲル基材を利用することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第二の水溶液乃至前記第三の水溶液には、前記第二の細胞が懸濁されていることが好ましい。このようにすることによって、前記第二の細胞が領域B乃至領域Cに包埋されたハイドロゲル基材を作製することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、流路構造Xは、少なくとも一つの入口G1〜Gn(n≧1)および、入口G1〜Gnにそれぞれ接続し、合流点P1〜Pmのいずれかにおいて合流流路Gに合流する、入口流路CG1〜CGnを有しており、入口G1〜Gnを介して、前記ゲル化剤水溶液は流路構造Xに連続的に導入されることが好ましい。このようにすることによって、流路構造内部においてゲル化した、より径あるいは厚みの均一なハイドロゲル基材を利用することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、流路構造Xは、少なくとも一つの入口B1〜Bn(n≧1)および、入口B1〜Bnにそれぞれ接続し、合流点P1〜Pmのいずれかにおいて合流流路Gに合流する、入口流路CB1〜CBnを有しており、入口B1〜Bnを介して、バッファー水溶液は流路構造Xに連続的に導入されることが好ましい。このようにすることによって、より一層径あるいは厚みの均一な、ハイドロゲル基材を利用することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、合流点P1〜Pmのうち少なくとも一つの合流点において、前記第一の水溶液は、その上下左右の少なくともいずれかおいて前記第二の水溶液と接触することが好ましい。このようにすることによって、断面が複数の領域によって構成されたハイドロゲル基材をより簡便に形成することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、流路構造Xは、少なくとも部分的にキャピラリー状の管によって構成されていてもよい。このようにすることによって、前記第一の水溶液、前記第二の水溶液、および前記第三の水溶液を、キャピラリー管を通して接触させ、その後ゲル化させることによって、効率的に作製されたハイドロゲル基材を利用することが可能となるほか、任意の位置に並列的に配置されたキャピラリー管や多重管を利用することによって、任意の断面形状を有するハイドロゲル基材を簡便に作製することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、流路構造Xは、少なくとも部分的に、微細加工技術を用いて作製されたマイクロ流路構造によって構成されても良い。このようにすることによって、任意の断面形状を有する、直径あるいは厚さ1ミリメートル以下のハイドロゲル基材を、正確かつ簡便に作製することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、流路構造Xは、その幅、深さ、直径等の値のうち少なくともいずれか一つが、少なくとも部分的に1ミリメートル以下であることが好ましい。このようにすることで、直径100〜500マイクロメートル程度のハイドロゲル材料を正確かつ簡便に作製することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第一の水溶液乃至前記第三の水溶液に含まれるアルギン酸ナトリウムの濃度は、それぞれ100mLあたり1g以下であることが好ましい。このようにすることによって、領域Aおよび領域Cの弾性率が低いハイドロゲル基材を、簡便かつ正確に作製することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第二の水溶液に含まれるアルギン酸ナトリウムの濃度は、100mLあたり1g以上であることが好ましい。このようにすることによって、領域Bの弾性率が高いハイドロゲル基材を、簡便かつ正確に作製することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記ゲル化剤水溶液は、塩化バリウムを含むことが好ましい。このようにすることによって、ゲル化剤としてカルシウムイオンのみを含むハイドロゲル基材と比較して、リン酸塩等を含む培養液中に浸した際のハイドロゲル基材の膨潤が抑制されるため、包埋した細胞密度を高く保つことが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記ゲル化剤水溶液乃至前記バッファー水溶液は、増粘剤を含むことが好ましい。このようにすることによって、流路内に形成した層流の流れを安定化することが可能となり、径あるいは厚みの均一なハイドロゲル材料の作製および利用が可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第一の水溶液乃至前記第三の水溶液は、アルギン酸プロピレングリコールを含むことが好ましい。このようにすることによって、断面が弾性率の異なる複数の部分からなるハイドロゲル基材を、簡便かつ正確に作製することが可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第一の水溶液乃至前記第三の水溶液に含まれるアルギン酸プロピレングリコールの濃度は、それぞれ100mLあたり1g以上であることが好ましい。このようにすることによって、領域Aおよび領域Cの弾性率が十分に低いハイドロゲル基材の作製と利用が可能となる。
また、本発明の他の一観点に係る発明は、請求項1乃至32のいずれか一項に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材を用いる、細胞評価手法である。このような評価法は、複数種の細胞を、3次元的なハイドロゲルのマトリックス中に位置を制御して配置できるため、これまでに利用されている平面的な培養基材を用いた細胞浸潤評価法などと比較して、より生体内の環境に近い条件における細胞の評価が可能となる。
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記ハイドロゲル基材内部に包埋した細胞に対し、培養操作を行い、前記第一の細胞が前記ハイドロゲル基材の内部を浸潤しゲル外部にまで達する個数あるいは割合を、計測することによって、細胞の浸潤を定量的に評価することが好ましい。このようにすることによって、ハイドロゲル基材の内部を浸潤し、外部へと増殖した細胞の割合を、簡便、迅速、かつ正確に定量することが可能となるため、癌細胞等の細胞の浸潤挙動を評価する上で、非常に効果的である。
本発明は、以上に述べられたように構成されているため、癌細胞の浸潤評価を行う上で有用な、癌細胞が断面内部の任意の位置に配置され、その周囲が他の細胞によって取り囲まれた、ファイバー状あるいはシート状のハイドロゲル基材の利用が可能となる。そして、ハイドロゲル基材中の細胞に対し培養操作を行うことによって、既存の細胞培養手法では不可能であった、3次元的に密接した状態における癌細胞と癌細胞以外の細胞の培養操作が可能となる。
また本発明は、以上に述べられたように構成されているため、ハイドロゲル基材中に包埋した癌細胞の初期位置を一定の範囲内に制御することが可能となるほか、ハイドロゲル基材の断面に設けられた弾性率の低い軟化部分や、内部に導入された細胞外マトリックス成分を利用することによって、癌細胞の浸潤を促進することが可能と
なる。そのため、既存の手法やシステムと比較して、癌細胞の浸潤挙動をより再現性高く、正確に、簡便に、かつ効率的に評価することが可能となる。
さらに本発明は、以上に述べられたように構成されているため、微細な流路構造を利用して正確かつ簡便に作製されたシート状あるいはファイバー状のハイドロゲル基材を利用することが可能となる。そのため、ハイドロゲル基材を作製する際に、包埋される細胞の位置を制御するための複雑な装置や機構を必要としない、という優れた効果を発揮する。
さらに本発明は、以上に述べられたように構成されているため、包埋される細胞の位置が正確に制御されたハイドロゲル基材を利用した、生体内により近い環境における細胞の浸潤挙動を評価するための、正確かつ簡便な手法の提供が可能となる。そのため、たとえば培養時に、必要に応じて抗癌剤等の薬剤を培養液に添加することで、生体内環境に近い状態における薬剤アッセイを行うことが可能となるほか、癌細胞研究のためのモデルとしての利用が可能となり、創薬分野において、あるいは細胞生理学の研究において有用な、新規手法を提供できる。
実施形態に係る、ファイバー状の細胞評価用ハイドロゲル基材の一例を示した概略図であり、図1(a)はファイバー状のハイドロゲルの一部分を立体的に示した概略図であり、図1(b)は細胞評価用ハイドロゲル基材の図1(a)における平面bにおける断面Sを示した概略図であり、図1(c)は細胞評価用ハイドロゲル基材の平面cにおける断面図である。 実施形態に係る、2種類の細胞を包埋した細胞評価用ハイドロゲル基材における、培養操作前後の細胞の様子を模式的に示した概略図であり、図2(a)は、培養前後における、ハイドロゲル基材の断面を立体的に示した模式図であり、図2(b)は、培養前後における、ハイドロゲル基材の、長さ方向の軸と直行する平面における断面を示した模式図である。 実施形態に係る、ファイバー状あるいはシート状のハイドロゲル基材例を示した概略図であり、図3(a)は、断面が円形であり、かつ領域Aおよび領域Bからなるハイドロゲルファイバーの概略図であり、図3(b)は、断面が矩形であり、かつ領域A、領域B、および領域Cからなるハイドロゲルファイバーの概略図であり、図3(c)は、一定の厚みを有し、複数の領域Aおよび領域C、および領域Bからなる、ハイドロゲルシートの概略図である。 実施形態に係る、流路構造を利用した、細胞評価用ハイドロゲル基材を作製する様子を示した模式図であり、図4(a)は、平面的に形成された流路構造Xを状面から観察した様子、および、その内部における溶液および細胞の流れの様子を模式的に示した概略図であり、図4(b)は、図4(a)におけるA−A’線における流路構造Xの断面を示した模式図であり、図4(c)は、図4(a)におけるB−B’線における流路構造Xの断面を示した模式図である。 実施形態に係る、シート状の細胞評価用ハイドロゲル基材を作製するための、並列に配置されたキャピラリー管によって一部が構成された流路構造Xにおける、キャピラリー管の部分を模式的に示した概略図であり、図中の数字1、2、3は、それぞれ、第一の水溶液、第二の水溶液、第三の水溶液を吐出する出口である。 実施例において、ファイバー状の細胞評価用ハイドロゲル基材を作製するために利用した、4枚のアクリル板を重ね合わせて作製された流路構造Xを有するマイクロ流体デバイスを示した概略図であり、図6(a)〜図6(d)は、それぞれ、上から一層目のアクリル板の下面に形成された流路構造、二層目のアクリル板の下面に形成された流路構造、三層目のアクリル板の上面に形成された流路構造、三層目の流路構造の下面に形成された流路構造を、それぞれ示した概略図であるとともに、図6(f)および図6(g)におけるマイクロ流体デバイスのC矢視図であり、図6(e)は、図6(d)における領域eの拡大図であるとともに、図6(f)および図6(g)におけるマイクロ流体デバイスのC矢視図であり、図6(f)および図6(g)は、それぞれ、マイクロ流体デバイスの、図6(a)〜図6(e)における、A−A’線、B−B’線における断面図である。 実施例において、図6に示される流路構造を用いて作製した、断面が領域A、B、Cからなるファイバー状のハイドロゲル基材中の、細胞培養前後における様子を示した顕微鏡写真であり、図7(a)は、領域Aに癌細胞を包埋したハイドロゲル基材の、作製直後の顕微鏡写真であり、図7(b)は、図7(a)に示したハイドロゲル基材の、細胞培養1週間後の顕微鏡写真であり、図7(c)は、領域Aに癌細胞を包埋し、領域Bおよび領域Cに繊維芽細胞を包埋したハイドロゲル基材の、作製直後の顕微鏡写真であり、図7(d)は、図7(c)に示したハイドロゲル基材の、細胞培養1週間後の顕微鏡写真である。 実施例において、シスプラチン濃度を0.1〜100μMの間で変化させた際の癌細胞の浸潤割合について、図6に示される流路構造を用いて作製したハイドロゲル基材内部において繊維芽細胞と共培養した場合および共培養せずに癌細胞を単独で培養した際のそれぞれの条件におけるデータを示したグラフであり、縦軸の浸潤割合比とは、抗癌剤を投与せずに培養した条件においてファイバー外部へと浸潤した細胞数に対する、各抗癌剤濃度条件においてファイバー外部へと浸潤した細胞数の相対的な割合を示している。 実施例において、図6に示される流路構造を用いて作製した、断面が領域A、B、Cからなるファイバー状ハイドロゲル基材内部において繊維芽細胞と共培養した癌細胞、および、平面培養した癌細胞に対し、シスプラチンを投与した際の、癌細胞特異的な遺伝子発現を定量評価した結果を示したグラフであり、図9(a)はHIF−1a(低酸素誘導因子)、図9(b)はMMP2(マトリックスメタロプロテアーゼ)、図9(c)はVEGF(血管内皮細胞増殖因子)の遺伝子発現をそれぞれ定量した結果を示したグラフである。
以下、本発明に係る細胞評価用ハイドロゲル基材および細胞評価方法の最良の形態を詳細に説明するものとする。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例の例示にのみ限定されるものではない。
図1には、ファイバー状の細胞評価用ハイドロゲル基材の一例を示した概略図が示されており、図1(a)はファイバー状のハイドロゲルの一部分を立体的に示した概略図であり、図1(b)は細胞評価用ハイドロゲル基材の図1(a)における平面bにおける断面Sを示した概略図であり、図1(c)は細胞評価用ハイドロゲル基材の平面cにおける断面図である。なお、本図において、内部に包埋した細胞は描かれていない。
図1に示すハイドロゲル基材は、弾性率が相対的に低いハイドロゲルによって構成された領域Aおよび領域Cと、弾性率が相対的に高いハイドロゲルによって構成された領域Bによって構成されている。
図1に示すハイドロゲル基材は、アルギン酸を主成分とする高分子によって形成されている。アルギン酸は、たとえばカルシウムやバリウムといった、多価のカチオンの存在下において、迅速にゲル化し、また、ゲル化時、ゾル化時、あるいは溶解時に、温度制御を行う必要がないため、細胞の生存および機能を維持しながら細胞をハイドロゲル基材中に包埋する上で、都合が良い。なお、アルギン酸以外にも、天然あるいは合成の高分子を利用して形成されたハイドロゲル基材を用いることも可能であり、たとえば、ポリエチレングリコールジアクリレートの重合によって形成された高分子や、ポリアクリルアミド、アガロース、コラーゲン、架橋ゼラチンなどを用いることも可能である。さらに、これらの高分子のうち複数種を用いて形成されたハイドロゲル基材を用いることも可能である。
なお、アルギン酸を用いて形成されたハイドロゲル基材の場合には、領域Aおよび領域Cを構成するハイドロゲル基材中に、アルギン酸プロピレングリコールが含まれていることが好ましい。アルギン酸プロピレングリコールは、アルギン酸のエステル誘導体であり、多価のカチオンの存在下でもゲル化しにくいという特性をもつ。そのため、アルギン酸プロピレングリコールを、アルギン酸に対し一定量添加することによって、ハイドロゲル基材の作製時に、ゲル化時に生じるアルギン酸の収縮防ぎ、かつ、領域Aおよび領域Cの弾性率を効率的に低下させることが可能である。
図2には、2種類の細胞を包埋した細胞評価用ハイドロゲル基材における、培養操作前後の細胞の様子を模式的に示した概略図が示されており、図2(a)は、培養前後における、ハイドロゲル基材の断面を立体的に示した模式図であり、図2(b)は、培養前後における、ハイドロゲル基材の、長さ方向の軸と直行する平面における断面を示した模式図である。
図2に示すように、ハイドロゲルの中心部付近に位置する領域Aに包埋した、評価対象となる第一の細胞は、培養操作を行うことによって、ハイドロゲル基材の外側方向へと移動および/あるいは増殖し、浸潤する。なおこの際、ハイドロゲル基材における領域Aは、ハイドロゲル基材の断面Sの周縁部に接触していなければ良いため、中心部付近に位置していなくても構わない。
領域Aの内部に包埋する第一の細胞として、癌細胞を用いることで、癌細胞の浸潤評価を行うことが可能であり、たとえば、新規抗癌剤の探索のためのスクリーニングや薬効評価、あるいは癌細胞の生理学的解析を行うことが可能となる。癌細胞としては、各種培養細胞株を用いることができるほか、必要に応じてプライマリの細胞を用いることも可能である。また、癌細胞に限らず、各種幹細胞や増殖能の高い正常細胞を用いることで、それらの評価を行うことも可能である。
なお、ハイドロゲル基材における領域Bおよび領域Cに、第二の細胞を包埋せずとも、第一の細胞を単独で培養することで、3次元的な環境におけるその浸潤挙動の評価を行うことが可能である。しかしながら、領域Bおよび領域Cに第二の細胞を包埋することによって、より生体の組織を模倣した環境における癌細胞の浸潤評価を行うことが可能となる。
第二の細胞としては、各種培養細胞やプライマリ細胞などの、任意の細胞を用いることが可能である。しかし、対象となる癌細胞に応じて、その種類を適切に選択することが好ましい。第二の細胞の例としては、繊維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、中皮細胞、実質細胞、腺細胞、表皮細胞、神経細胞、骨芽細胞、これらの細胞の前駆細胞、各種幹細胞より分化させた細胞等を用いることが可能である。
また、ハイドロゲル基材を構成するマトリックス中に、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン等の細胞外マトリックス分子や、マトリゲル等の細胞外マトリックス混合物などを添加することが可能であり、また、ハイドロゲルを構成する主成分として、細胞接着性のRGD等のペプチドが共有結合したアルギン酸等を用いることもできる。このようにすることで、細胞接着性のマトリックスが豊富に存在する生体内の環境をより高度に模倣できるほか、特に領域AおよびCにこれらの成分を導入することによって、癌細胞のマトリックスへの接着を高め、浸潤速度を増加し、さらに、浸潤に必要な時間を短縮することが可能となる。
ハイドロゲル基材の全体の大きさは、癌細胞の浸潤評価を行うことができる範囲であれば、どの程度であっても構わない。しかし、外部に出てきた細胞の割合を計測することによってその浸潤度合いを評価する場合には、ハイドロゲル基材の直径あるいは厚みは、値がある程度小さい方が好ましい。ただし、酸素欠乏の度合いを測定する際には、領域Bに包埋された第二の細胞によって、中心部に位置する癌細胞に対し酸素の供給が不足する欠乏する程度の値である
ことが好ましい場合もありうる。これらの観点から、ハイドロゲルの直径は、50マイクロメートル以上500マイクロメートル以下であることが好ましく、50マイクロメートル以上300マイクロメートル以下であることがより好ましい。
なお、ハイドロゲル基材は、その長さ方向において、部分的に径あるいは厚みが不均一であっても良く、また、断面における領域A、領域B、および領域に変化が生じていても良く、また、途中に分岐を有するような形態であっても良く、さらには、各領域の化学的組成が異なっていても良い。しかし、断面およびそれを構成する領域の形状および組成が均一なハイドロゲル基材は、包埋した細胞の培養時の諸条件を均一にできるという観点から、より好ましい。
ハイドロゲル基材の長さは、用途に応じて、適切な長さとすることが好ましい。ただし、信頼性の高い評価実験を行うためには、評価対象となる第一の細胞が、100個以上存在することが好ましく、300個以上存在することがより好ましい。このような観点から、ハイドロゲル基材の長さは、1ミリメートル以上であることが好ましく、10ミリメートル以上であることがより好ましい。
断面Sにおける領域Aの面積は、包埋した第一の細胞の初期位置を一定に制限するという観点から、前記第一の細胞の平均直径をDとすると、10D以下であることが好ましい。
また、領域A内に包埋した第一の細胞が存在する位置の違いによって、培養条件の違いが生じさせることを防ぐという観点から、断面Sにおける領域Aの相対的な位置は、断面Sの周縁部から比較的均一な距離にあることが望ましい。そのため、領域Aの面積をSとし、領域Aの周囲長をLとすると、領域Aの円形度4πS/Lは0.5以上であることが好ましい。
また、領域Cの幅が細胞の平均直径と近い値となることによって、細胞の浸潤方向が一定方向に制御される効率が高まるため、前記第一の細胞の平均直径をDとすると、領域Cの幅は3D以下であることが好ましい。
領域Aに包埋する第一の細胞の密度は、その値があまりに低すぎる場合には、細胞の評価を行う効率が下がる。そのため、その密度は高いほうが好ましく、ハイドロゲル基材1立方センチメートル当たり10万個以上であることが好ましい。ただし、密度があまりに高すぎると、長さ方向において隣り合う細胞同士が互いに接着して一つのコロニーを形成してしまうため、一定の値以下であることも必要となる。この場合の一定の値とは、たとえば、ハイドロゲル基材1立方センチメートル当たり1000万個であり、あるいは、隣り合う細胞間の平均距離が、100マイクロメートル以下となるような密度である。
領域B乃至領域Cに包埋する第二の細胞の密度は、細胞が高密度にパッキングされた生体組織を模倣するという観点から、高いほうが好ましく、ハイドロゲル基材1立方センチメートル当たり100万個以上であることが好ましい。第二の細胞に関しては、長さ方向において隣り合う細胞同士が互いに接着して一つのコロニーを形成しても構わない。
図2に示すように、適切な培養操作を行うことによって、癌細胞が外部へと浸潤する。その後、必要に応じて3次元的な培養環境における癌細胞の浸潤度合いを定量的に評価することで、細胞の評価を行うことが可能となる。浸潤度合いの定量化のための最も簡便な手段は、顕微鏡などを用いて、外部へと浸潤した細胞を観察し、その割合を単純に計測することである。また、それ以外にも、染色などによる生存率の評価、画像解析技術を利用したハイドロゲルマトリックス中の浸潤度合いの定量、リアルタイムPCRによる遺伝子発現の定量、などを、独立に、あるいは同時に行うことも可能である。
細胞の培養操作としては、作製したハイドロゲル基材を培養液中に浸して、制御された温度、酸素濃度、炭酸ガス濃度条件下において保持することが好ましい。培養操作において用いる培養液としては、対象とする細胞種に応じた一般的な細胞培養用培養液を用いることができる。また、培養時には、ハイドロゲル基材を、シャーレやフラスコ等に満たした培養液中に浸し、CO2インキュベーター等の培養装置を用いて培養することが好ましい。さらに、必要に応じて振盪操作を行うことも可能である。
また、たとえば薬剤が細胞の浸潤に与える影響を評価する際には、薬剤を培養液中に添加して培養を行うことで、培養液中の薬剤濃度と浸潤度合いの定量的評価を、簡便に行うことが可能である。また、ハイドロゲル基材を一定時間、薬剤を含む溶液中に浸漬した後に、薬剤を含まない培養液中で培養することによって、一定の時間、薬剤を作用させ、その影響を評価することも可能である。
なお、ハイドロゲル基材としては、図1および図2に概略図を例示したもの以外にも、様々な形状のものを用いることが可能である。
図3には、ファイバー状あるいはシート状のハイドロゲル基材例を示した概略図が示されており、図3(a)は、断面が円形であり、かつ領域Aおよび領域Bからなるハイドロゲルファイバーの概略図であり、図3(b)は、断面が矩形であり、かつ領域A、領域B、および領域Cからなるハイドロゲルファイバーの概略図であり、図3(c)は、一定の厚みを有し、複数の領域Aおよび領域C、および領域Bからなる、ハイドロゲシートの概略図である。
図3(a)のようなハイドロゲル基材を用いることで、領域Aに包埋した第一の細胞が、ハイドロゲル基材の外側ではなく、領域A内部を、ハイドロゲル基材の長さ方向に浸潤する様子を観察することが可能となる。また、図1に示したような、領域A、領域B、領域Cの3つの領域からなるハイドロゲル基材の場合、図3(b)に示すように、断面が矩形であっても良く、さらに、図3(c)に示すように、シート状のハイドロゲル基材であって、その内部に、第一の細胞を含む領域Aを複数有するものであっても良い。特に、図3(c)に示すシート状のハイドロゲル基材の場合は、平面的な形態の中に、評価対象となる第一の細胞を高密度かつ高効率に包埋することが可能となり、細胞の評価をより効率的に行うことが可能となる。
これらのハイドロゲル基材を作製するプロセスとして、マイクロ流路構造を用いるものは非常に効率的である。
図4には、流路構造を利用した、細胞評価用ハイドロゲル基材を作製する様子を示した模式図が示されており、図4(a)は、平面的に形成された流路構造Xを状面から観察した様子、および、その内部における溶液および細胞の流れの様子を模式的に示した概略図であり、図4(b)は、図4(a)におけるA−A’線における流路構造Xの断面を示した模式図であり、図4(c)は、図4(a)におけるB−B’線における流路構造Xの断面を示した模式図である。
図4に示す流路構造Xは、8つの入口I1、I2、I2’、I3、B1、B1’、G1、G1’にそれぞれ接続される入口流路CI1、CI2、CI2’、CI3、CB1、CB1’、CG1、CG1’と、入口流路が段階的に合流する合流点P1、P2、P3、P4と、合流点P4と出口Oの間に存在する合流流路G、を有している。
なお、図4に示すような平面的に構成された流路構造を作製する場合、デバイスの材質としては、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、アクリル等の各種ポリマー材料、ガラス、シリコン、セラミクス、ステンレスなどの各種金属、などを用いることができ、また、これらの材料のうちの任意の複数種類の基板を組み合わせて用いることも可能である。ただし、平面的な流路を安価に作製するためには、少なくとも部分的にポリマー材料を用いることが好ましい。また、流路構造の加工技術としては、モールディングやエンボッシングといった鋳型を利用した作製技術は、流路構造を容易に作製可能であるという点において好ましいが、その他にも、ウェットエッチング、ドライエッチング、レーザー加工、電子線直接描画、機械加工等の作製技術を用いることも可能である。
図4に示した流路構造は、作製対象とするハイドロゲル基材の大きさに応じて、適切な内径、幅、深さとなるように設計する必要がある。ただし、直径あるいは厚みが500マイクロメートル以下のハイドロゲル基材を効率的に作製するためには、流路構造の径、深さ、あるいは幅等のいずれかの値は、1ミリメートル以下であることが好ましく、500マイクロメートル以下であることがより好ましい。
図4に示した流路構造Xに対し、ハイドロゲルを構成するためのゾル水溶液であり、かつ細胞を懸濁させた、第一の水溶液、第二の水溶液、第三の水溶液を、それぞれ入口I1、入口I2およびI2’、入口I3を通して連続的に導入する。また、ゲル化剤水溶液を入口G1および入口G1’から、バッファー水溶液を入口B1および入口B1’から、それぞれ連続的に導入する。
合流点P4おいて、導入流量を適切に調節することによって、第一の水溶液、第二の水溶液、および第三の水溶液は、それぞれが接した状態において層流を形成する。そして、その下流における合流流路Gにおいて、外側からゲル化剤が拡散してくることによって、これらの水溶液は次第にゲル化し、出口Oより、連続的にファイバー状のハイドロゲル基材が形成される。
入口流路構造の立体的配置、分岐点P1およびP2における流路の3次元的構造、および各導入流量等を工夫することによって、流路途中において、第一の水溶液、第二の水溶液、第三の水溶液が、任意の配置となるようにすることが可能であり、その配置を保ったままこれらの溶液をゲル化させることによって、そのパターンを保持したハイドロゲル基材を得ることが可能である。たとえば、合流流路Gにおいて、図4(b)に示すような断面パターンを形成することによって、図1および図2に示すようなハイドロゲル基材を作製することが可能となる。
ゲル化剤水溶液に含まれるゲル化剤としては、アルギン酸をゲル化することのできる多価の金属カチオンであれば、任意のものを用いることが可能である。しかしながら、細胞毒性の観点から、それらのイオンはカルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウムうちのいずれかの2価カチオン、あるいはそれらの任意の混合物であることが好ましい。また、これらのイオンは水溶性である必要があるため、ゲル化剤水溶液は、それらの塩化物を溶解した水溶液であることが好ましい。中でも、作製したハイドロゲル材料の培養液中での膨潤を抑制し、ハイドロゲル基材中の細胞密度を高く保つ、という観点から、ゲル化剤水溶液は塩化バリウムを含むことがより好ましい。なお、細胞へのダメージを低減するためにも、ゲル化剤水溶液の浸透圧はあらかじめ最適な値に調節されていることが望ましい。
なお、図4に示した流路構造Xは、その内部においてゲル化を行うものであるため、流路途中から、ゲル化剤水溶液を導入できるように設計されており、また、アルギン酸の急速なゲル化による流路の閉塞を防ぐために、ゲル化剤を含まないバッファー水溶液を導入できるように設計されている。しかしながら、これらの水溶液を導入せず、入口B1、B2’、G1、G1’を閉鎖し、出口Oをゲル化剤溶液に浸しておくことで、流路外においてゲルを形成しても良い。ただし、得られるファイバー状のハイドロゲル基材の径を正確に調節しやすい、という観点から、このように流路内部においてゲル化を行う系は好ましい。
また、アルギン酸ナトリウムを含む水溶液は一般的に高粘度であるため、ゲル化剤水溶液および/あるいはバッファー水溶液には、予め増粘剤が添加されていることが好ましい。なお、増粘剤としては、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリメチルセルロース、アルギン酸プロピレングリコール、あるいはそれらのうちの任意の組み合わせを用いることが可能である。これらの増粘剤をゲル化剤水溶液やバッファー水溶液に添加すること
によって、図4に示すように流路内でゲル化を行う際に、層流を安定的に形成することが可能となり、ハイドロゲル材料の作製時の操作性を向上させることが可能である。なお、第一の水溶液、第二の水溶液、第三の水溶液、ゲル化剤水溶液、バッファー水溶液のうち、室温において、粘度の最小のものと最大のものの粘度の比が、1:1〜1:100の範囲にあることが好ましく、1:1〜1:10の範囲にあることがより好ましい。なお、流路外においてゲル化を行う場合には、この限りではない。
なお、図4に示した平面的な流路構造以外にも、キャピラリー管を並列化あるいは多重化させたような流路構造を用いることも可能である。
図5には、シート状の細胞評価用ハイドロゲル基材を作製するための、並列に配置されたキャピラリー管によって一部が構成された流路構造Xにおける、キャピラリー管の部分を模式的に示した概略図が示されており、図中の数字1、2、3は、それぞれ、第一の水溶液、第二の水溶液、第三の水溶液を吐出する出口である。このような並列化キャピラリー構造を用いて、第一の水溶液、第二の水溶液、第三の水溶液を合流させ、その後連続的にゲル化剤水溶液中へと吐出することによって、図3(d)に示すような、シート状のハイドロゲル構造を作製することも可能である。
なお、以上のような流路構造に導入する、第一の水溶液、第二の水溶液、および第三の水溶液に含まれるアルギン酸は、ナトリウム塩のものを用いることが一般的である。アルギン酸としては、多価のカチオンの存在下でハイドロゲルを形成するものであれば、どのような分子量のものを用いても良い。しかしながら、ハイドロゲル作製時の操作性の観点から、水100mLにアルギン酸1gを溶解し室温に保った場合の粘度が、10cP〜400cPの範囲にあるものが好ましい。また、作製されたゲルの強度が一定以上であれば、作製したハイドロゲル材料を培養液中に浸した際の膨潤の程度が低くなり、細胞を高密度で包埋する上で都合が良いため、アルギン酸ポリマーを構成する単位であるウロン酸のうち、グルロン酸の割合が60%以上のものを用いることが好ましい。
第一の水溶液および第三の水溶液に含まれるアルギン酸ナトリウムの濃度は、領域Aおよび領域Cを形成するハイドロゲルの弾性率を低く保つためにも、各溶液100mLあたり、1g以下であることが好ましく、さらには0.5g以下であることがより好ましい。また、これらの水溶液に含まれるアルギン酸プロピレングリコールの濃度は、領域Aおよび領域Cを形成するハイドロゲルの弾性率を低くするためにも、各溶液100mLあたり、1g以上であることが好ましい。
一方で、第二の水溶液に含まれるアルギン酸ナトリウムの濃度は、領域Bを形成するハイドロゲルの弾性率を高めるためにも、溶液100mLあたり、1g以上であることが好ましい。また、第二の水溶液は、アルギン酸プロピレングリコールを含まないことが好ましい。
以下、上記実施形態に係る細胞評価用ハイドロゲル基材を作製し、細胞評価を実際に行うことで、本発明の効果を確認した。以下説明する。
図6には、ファイバー状の細胞評価用ハイドロゲル基材を作製するために利用した、4枚のアクリル板を重ね合わせて作製された流路構造Xを有するマイクロ流体デバイスを示した概略図が示されており、図6(a)〜図6(d)は、それぞれ、上から一層目のアクリル板の下面に形成された流路構造、二層目のアクリル板の下面に形成された流路構造、三層目のアクリル板の上面に形成された流路構造、三層目の流路構造の下面に形成された流路構造を、それぞれ示した概略図であるとともに、図6(f)および図6(g)におけるマイクロ流体デバイスのC矢視図であり、図6(e)は、図6(d)における領域eの拡大図であるとともに、図6(f)および図6(g)におけるマイクロ流体デバイスのC矢視図であり、図6(f)および図6(g)は、それぞれ、マイクロ流体デバイスの、図6(a)〜図6(e)における、A−A’線、B−B’線における断面図である。
図6に示した流路構造は、微細加工技術を用いて切削を施した、厚さ2ミリメートルのアクリルの平板を3枚と、切削を施していない厚さ2ミリメートルのアクリルの平板を、熱圧着により積層化することによって形成されている。
流路構造Xの各部分における流路幅は、たとえば、一層目の平板の下面に存在する流路の幅及び深さは、100マイクロメートル〜500マイクロメートルであった。二層目の平板の下面に存在する流路は、幅5ミリメートル、3.5ミリメートル、1.5ミリメートルのものがあり、深さはそれぞれ900マイクロメートル、1.2ミリメートル、1.5ミリメートルであった。三層目の平板の上面に存在する流路の幅及び深さは、500マイクロメートルであった。三層目の平板の下面に存在する流路の幅及び深さは、100マイクロメートル〜500マイクロメートルであった。なお、これらの値のうち、一層目の平板の下面に存在する流路の径によって、得られるファイバー状のハイドロゲル基材の径が制御されるため、必要に応じてより太い、あるいはより細い流路構造を使用することが好ましい。
癌細胞としては、ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞であるA549を用い、癌細胞以外の細胞としては、チャイニーズハムスター由来肺繊維芽細胞株である、V79−379A細胞を用いた。これらの細胞は、予め通常の細胞培養ディッシュ上で培養することで、一定量増殖させ、酵素処理によってプレートから剥離し、遠心分離によって培養液を除くことによって調製した。
第一の水溶液および第三の水溶液としては、水50mLに対し、アルギン酸プロピレングリコールを0.5g、RGDアルギン酸を0.1g、塩化ナトリウムを0.45g、HEPESを5mM、それぞれ溶解させた水溶液を用い、A549細胞を1mLあたり約3000万個、V79−379A細胞を1mLあたり約2億個、それぞれ懸濁させた。なお、これらの成分のうち、RGDアルギン酸は、細胞機能の維持および浸潤の促進のため、HEPESはpH調整のため、また塩化ナトリウムは浸透圧調整のため、それぞれ使用したが、必要に応じて他の成分を加える、あるいはこれらを他の成分と置き換えることも可能である。
第二の水溶液としては、水50mLに対し、アルギン酸ナトリウムを0.5g、RGDアルギン酸を0.1g、塩化ナトリウムを0.45g、HEPESを5mM、それぞれ溶解させた水溶液を用い、V79−379A細胞を、1mLあたり約2億個懸濁させた。
また、ゲル化剤水溶液としては、ゲル化剤として塩化バリウムを20mM、増粘剤として分子量50万のデキストランを10%(w/v)、浸透圧調整のための塩化ナトリウムを120mM、pH調整のためのHEPESを10mM含む水溶液を用いた。
バッファー水溶液としては、増粘剤として分子量50万のデキストランを10%(w/v)、浸透圧調整のための塩化ナトリウムを150mM、pH調整のためのHEPESを10mM含む水溶液を用いた。
なおこれらの溶液すべては、予め加熱あるいはフィルター処理を施すことによって滅菌操作を行ったものである。
これらの水溶液を、シリンジポンプを用いて、流路構造Xに連続的に導入した。なお、シリンジと、流路構造Xにおける各入口を接続するために、PTFEチューブを使用した。
各入口から導入した水溶液の流量は、作製対象とする細胞評価用ハイドロゲル基材のサイズに応じて変化させた。各入口からの導入流量は、合流流路Gの幅が300マイクロメートル、深さが300マイクロメートルの場合には、入口I1より導入した第一の水溶液は5〜10マイクロリットル毎分、入口I2、I2’、およびI2’’より導入した第二の水溶液は各10〜50マイクロリットル毎分、入口I3より導入した第三の水溶液は5〜20マイクロリットル毎分、入口G1より導入したゲル化剤水溶液は50〜300マイクロリットル毎分、入口B1より導入したバッファー水溶液は5〜20マイクロリットル毎分であった。
入口I1から導入された第一の水溶液は、入口流路CI1を通過して、三層目の平板の下面に形成された垂直上方向の流路構造へと導入され、三層目の平板の上面に存在する、合流点P1において、入口I3から導入され入口流路CI3を通過した第3の水溶液と合流した。さらに、入口I2、I2’、およびI2’’から導入された第二の水溶液と合流点P2において合流し、一層目の平板の下面に存在する合流点P3においてバッファー水溶液と、さらに下流の合流点P4においてゲル化剤水溶液と、それぞれ合流した。そして、合流流路Gの内部において、第一の水溶液、第二の水溶液、第三の水溶液が合流した流れはゲル化し、連続的にファイバー状のハイドロゲル基材が形成され、出口Oより回収された。
図7には、図6に示された流路構造を用いて作製した、断面が領域A、B、Cからなるファイバー状のハイドロゲル基材中の、細胞培養前後における様子を示した顕微鏡写真が示されており、図7(a)は、領域Aに癌細胞を包埋したハイドロゲル基材の、作製直後の顕微鏡写真であり、図7(b)は、図7(a)に示したハイドロゲル基材の、細胞培養1週間後の顕微鏡写真であり、図7(c)は、領域Aに癌細胞を包埋し、領域Bおよび領域Cに繊維芽細胞を包埋したハイドロゲル基材の、作製直後の顕微鏡写真であり、図7(d)は、図7(c)に示したハイドロゲル基材の、細胞培養1週間後の顕微鏡写真である。
図7に示したハイドロゲル基材は、入口I1より導入した第一の水溶液の流量が3マイクロリットル毎分、入口I2、I2’、およびI2’’より導入した第二の水溶液の流量が合計72マイクロリットル毎分、入口I3より導入した第三の水溶液の流量が15マイクロリットル毎分、入口B1より導入したバッファー水溶液の流量が25マイクロリットル毎分、入口G1より導入したゲル化剤水溶液の流量が100マイクロリットル毎分の場合に得られたものである。図7(a)に示すように、平均直径約120マイクロメートルのハイドロゲル基材が得られ、その中心部である領域Aに、癌細胞であるA549細胞が長さ方向に間隔をあけて配置されることが観察された。また、第二の水溶液および第三の水溶液に肺繊維芽細胞であるV79−379A細胞を懸濁させて作製したハイドロゲル基材の場合には、A549細胞の周囲にV79−379A細胞が密に配置されている様子が確認された。
また、図7に示すように、CO濃度5%雰囲気下において培養液を用いて1週間培養を行ったところ、肺繊維芽細胞を包埋した場合、および、包埋しない場合のいずれの条件でも、中心の癌細胞が領域Cに相当する弾性率の低いハイドロゲル部分を外部へと浸潤し、図2に示すようにハイドロゲル基材の外部にコロニーを形成する様子が確認された。
ハイドロゲル内の癌細胞が、繊維芽細胞が包埋されたゲル内を浸潤し、ゲル外部に飛び出した数を、顕微鏡画像を用いて計測することで癌細胞浸潤挙動を評価したところ、正確かつ簡便に、癌細胞の浸潤割合を評価することが可能であった。
また、断面における領域Aに癌細胞を包埋したハイドロゲル基材、また、領域Aに癌細胞を、領域Bおよび領域Cに繊維芽細胞を包埋したハイドロゲル基材を作製した。細胞を5日間培養した後、抗癌剤としてシスプラチン培地に添加して24時間培養した後に、さらにシスプラチンを含まない培地を用いて細胞を24時間培養した。その後、抗癌剤が癌細胞の浸潤挙動に与える影響を定量的に評価するため、包埋した癌細胞の数に対する、ファイバー外部に浸潤した癌細胞の割合を、総計300個の癌細胞についてカウントし、浸潤割合を算出した。また、領域Bおよび領域Cに繊維芽細胞を包埋せずに単独培養を行い、共培養との比較を行った。
図8は、シスプラチン濃度を0.1〜100μMの間で変化させた際の癌細胞の浸潤割合について、図6に示される流路構造を用いて作製したハイドロゲル基材内部において繊維芽細胞と共培養した場合および共培養せずに癌細胞を単独で培養した際のそれぞれの条件におけるデータを示したグラフであり、縦軸の浸潤割合比とは、抗癌剤を投与せずに培養した条件においてファイバー外部へと浸潤した細胞数に対する、各抗癌剤濃度条件においてファイバー外部へと浸潤した細胞数の相対的な割合を示している。また、各データは独立した4つのサンプルについてそれぞれ300個の細胞をカウントして得られた値について、その平均値±標準偏差を示している。
図8に示すように、抗癌剤の濃度に応じて癌細胞の浸潤度合いが異なること、および、ハイドロゲル基材内部において癌細胞を単独培養した場合と、癌細胞および繊維芽細胞を共培養した場合を比較すると浸潤挙動が大きく異なること、などが観察された。特に、2種類の細胞を共培養した系では、抗癌剤濃度が10−5M以上の場合に浸潤割合比が大きく低下した、つまり抗癌剤が効果的に作用したのに対し、癌細胞を単独培養した系では、当該濃度は10−6M以上の場合であり、大きな差が観察された。これらの結果から、共培養と単独培養では、抗癌剤の薬効が大きくことなることが観察された。
また、癌細胞の機能を評価するために、ハイドロゲル基材内部において繊維芽細胞と共培養した癌細胞、および、通常の細胞培養プレートを用いて平面培養した癌細胞を準備し、上記実験と同様の条件で抗癌剤としてシスプラチンを投与した。さらに、mRNAを抽出し、cDNAを合成した後に、それぞれハウスキーピング遺伝子としてGAPDH、蛍光プローブとしてTaqManプローブを用いて、リアルタイムPCRによって遺伝子発現の定量評価を行った。なお、対象として、HIF−1a(低酸素誘導因子)、MMP2(マトリックスメタロプロテアーゼ)、およびVEGF(血管内皮細胞増殖因子)の3種類の遺伝子について定量評価を行った。
図9には、図6に示される流路構造を用いて作製した、断面が領域A、B、Cからなるファイバー状ハイドロゲル基材内部において繊維芽細胞と共培養した癌細胞、および、平面培養した癌細胞に対し、シスプラチンを投与した際の、癌細胞特異的な遺伝子発現を定量評価した結果を示したグラフが示されており、図9(a)はHIF−1a(低酸素誘導因子)、図9(b)はMMP2(マトリックスメタロプロテアーゼ)、図9(c)はVEGF(血管内皮細胞増殖因子)の遺伝子発現をそれぞれ定量した結果を示したグラフである。なお、縦軸の相対的遺伝子発現量とは、平面培養においてシスプラチンを投与しなかった場合の各遺伝子発現量を基準として示した相対値である。
図9に示すように、平面培養した癌細胞では、シスプラチン濃度が100μMである条件において、全ての遺伝子発現量が大きく減少したことが確認された。一方で、ハイドロゲル基材内部において繊維芽細胞と共培養した癌細胞では、抗癌剤を100μM投与した際においても発現量は大幅に低下することなく、これらの遺伝子発現が活発であることが確認された。これは、3次元的な環境かつ、癌細胞周囲に正常細胞が存在する、生体内に近い環境を模倣しているためであると考えられ、この結果からも、本発明において提案した3次元的な共細胞培養環境の優位性および生体との類似性が実証された。
本発明は、以上説明したように構成されているため、創薬のスクリーニングや、細胞を用いた薬剤代謝・毒性評価試験などにおいて通常用いられる、平面的な培養基材を利用した細胞培養系と比較して、3次元的かつ生体を模倣した環境における細胞の浸潤挙動の評価を簡便かつ正確に行うことが可能となる。通常の平面培養は、操作や装置がシンプルになるという利点はあるものの、その環境は、細胞にとって通常の生体環境とは大きく異なるため、細胞を用いたアッセイを行う上で生体内の環境を正確に再現しているとは言い難い。そのため、本発明による3次元的なハイドロゲル基材は、生体構造を反映した環境において細胞アッセイを簡便かつ正確に行うためのツールとして、製薬産業のみならず、細胞生化学的研究の場においても幅広く利用される、重要かつ汎用的な新規ツールとなりうると考えられる。
また本発明は、以上説明したように構成されているため、評価対象となる細胞を3次元的な培養環境の中の特定の位置に、正確に配置した、ハイドロゲル基材を提供することが可能となる。細胞の初期位置を制御することによって、その浸潤挙動の評価を行う際に、データのばらつきが少なくなり、信頼性が高くなるため、より正確な細胞評価を可能とするシステムとして、幅広く利用されうるものと期待される。
さらに本発明は、以上説明したように構成されているため、通常は非常に手間がかかり、さらに信頼性の低い、細胞を用いたアッセイを、より簡便に行うための手法を提供できる。特に、ハイドロゲル基材の外部に浸潤した細胞の個数をカウントするだけで、その浸潤割合を簡便に測定することが可能となるため、複雑な画像解析技術や光学系が不要なシステムを提供できる可能性が高い。そのため、コストの面において、既存のシステムよりも優位であり、細胞を用いた評価を行う産業分野や学術分野において幅広く使用される、新規細胞評価手法を提供できるものと考えられる。

Claims (24)

  1. ハイドロゲルによって構成され、直径500マイクロメートル以下のファイバー状の形態を有し、長さ方向の軸に対して垂直な平面における断面Sの内部において、周縁部が前記断面Sの周縁部に接しておらずかつ第一の細胞が存在する領域Aを有し、さらに前記領域Aは、前記断面Sにおける前記領域A以外の領域Bと比較して、弾性率の低いハイドロゲルによって構成されており、また、前記断面Sにおいて部分的に前記領域A及び前記領域Bに接し、かつ、部分的に前記断面Sの周縁部に接する領域Cを有し、さらに前記領域Cは、前記領域Bと比較して、弾性率の低いハイドロゲルによって構成されており、前記第一の細胞を前記領域Cを通過して浸潤させる細胞評価用ハイドロゲル基材であって、前記領域Aの面積は前記第一の細胞の平均直径をDとすると10D 以下であり、前記第一の細胞の平均直径をDとすると領域Cの幅は3D以下である細胞評価用ハイドロゲル基材。
  2. 前記領域A、前記領域B及び領域Cを構成するハイドロゲルの少なくともいずれかは、アルギン酸によって構成されている請求項1に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材。
  3. 前記領域A及び前記領域Cを構成するハイドロゲルの少なくともいずれかには、アルギン酸プロピレングリコールが含まれている請求項1に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材。
  4. 前記領域A、前記領域B及び領域Cを構成するハイドロゲルのマトリックス中には、細胞外マトリックスを構成するタンパク質及び細胞接着性のペプチド分子の少なくともいずれかが含まれている請求項1に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材。
  5. 前記第一の細胞とは、癌細胞である請求項1に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材。
  6. 前記領域Bには、繊維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、中皮細胞、実質細胞、腺細胞、表皮細胞、神経細胞、骨芽細胞、これらの細胞の前駆細胞、各種幹細胞より分化させた細胞の少なくともいずれかが存在する請求項1に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材。
  7. 前記領域Aの面積をSとし、前記領域Aの周囲長をLとすると、前記領域Aの円形度4πS/L は0.5以上である請求項1に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材。
  8. ハイドロゲルによって構成され、厚さ500マイクロメートル以下のシート状であり、長さ方向の軸に対して垂直な平面における断面Sの内部において、周縁部が前記断面Sの周縁部に接しておらずかつ第一の細胞が存在する領域Aを有し、さらに前記領域Aは、前記断面Sにおける前記領域A以外の領域Bと比較して、弾性率の低いハイドロゲルによって構成されており、また、前記断面Sにおいて部分的に前記領域A及び前記領域Bに接し、かつ、部分的に前記断面Sの周縁部に接する領域Cを有し、さらに前記領域Cは、前記領域Bと比較して、弾性率の低いハイドロゲルによって構成されており、前記第一の細胞を前記領域Cを通過して浸潤させる細胞評価用ハイドロゲル基材であって、前記断面Sの内部において、前記領域Aは複数個所存在する細胞評価用ハイドロゲル基材。
  9. 前記領域Aに含まれる、前記第一の細胞の密度は、1立方センチメートル当たり10万個以上である請求項1に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材。
  10. 前記領域Bに含まれる細胞の密度は、1立方センチメートル当たり100万個以上である請求項6に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材。
  11. 少なくとも3つの入口I1〜In(n≧3)と、前記入口I1〜Inにそれぞれ接続する入口流路CI1〜CInと、前記入口流路CI1〜CInが同時あるいは段階的に合流する少なくとも1つの合流点P1〜Pm(m≧1)と、前記合流点P1〜Pmより下流に存在する合流流路Gと、前記合流流路Gの下流に存在する出口Oを有する、流路構造Xを使用した細胞評価用ハイドロゲル基材の作製方法であり、前記細胞評価用ハイドロゲル基材は、直径500マイクロメートル以下のファイバー状の形態を有し、長さ方向の軸に対して垂直な平面における断面Sの内部において、周縁部が前記断面Sの周縁部に接しておらずかつ第一の細胞が存在する領域Aを有し、さらに前記領域Aは、前記断面Sにおける前記領域A以外の領域Bと比較して、弾性率の低いハイドロゲルによって構成されており、また、前記断面Sにおいて部分的に前記領域A及び前記領域Bに接し、かつ、部分的に前記断面Sの周縁部に接する領域Cを有し、さらに前記領域Cは、前記領域Bと比較して、弾性率の低いハイドロゲルによって構成されており、前記第一の細胞を前記領域Cを通過して浸潤させる細胞評価用ハイドロゲル基材であって、前記領域Aの面積は前記第一の細胞の平均直径をDとすると10D 以下であり、前記第一の細胞の平均直径をDとすると領域Cの幅は3D以下であり、アルギン酸ナトリウムを含み、かつ前記第一の細胞を懸濁させた、第一の水溶液を、前記入口I1を介して、また、アルギン酸ナトリウムを含む第二の水溶液を、前記入口I2を介して、さらに、アルギン酸ナトリウムを含む第三の水溶液を、前記入口I3を介して、それぞれ連続的に導入し、前記流路構造Xの内部において、前記第一の水溶液、前記第二の水溶液、前記第三の水溶液を接触させ、さらに、前記流路構造Xの内部又は外部において、前記第一の水溶液、前記第二の水溶液、および前記第三の水溶液をゲル化剤水溶液と接触させることによって、前記第一の水溶液および前記第二の水溶液が接触した状態で連続的にゲル化することによって前記細胞評価用ハイドロゲル基材を作製、また、前記領域Aは前記第一の水溶液がゲル化することによって形成、かつ、前記領域Bは前記第二の水溶液がゲル化することによって形成、さらに、前記領域Cは前記第三の水溶液がゲル化することによって形成する細胞評価用ハイドロゲル基材の作製方法
  12. 前記流路構造Xは、少なくとも一つの入口G1〜Gn(n≧1)および、前記入口G1〜Gnにそれぞれ接続し合流点P1〜Pmのいずれかにおいて合流流路Gに合流する入口流路CG1〜CGnを有しており、前記入口G1〜Gnを介して前記ゲル化剤水溶液流路構造Xに連続的に導入する請求項11に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材の作製方法
  13. 前記流路構造Xは、少なくとも一つの入口B1〜Bn(n≧1)および、前記入口B1〜Bnにそれぞれ接続し合流点P1〜Pmのいずれかにおいて合流流路Gに合流する入口流路CB1〜CBnを有しており、前記入口B1〜Bnを介してバッファー水溶液が流路構造Xに連続的に導入する請求項11に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材の作製方法
  14. 前記合流点P1〜Pmのうち少なくとも一つの合流点において、前記第一の水溶液は、その上下左右の少なくともいずれかにおいて前記第二の水溶液と接触する請求項11に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材の作製方法
  15. 前記流路構造Xは、少なくとも部分的に、キャピラリー状の管によって構成されている請求項11に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材の作製方法
  16. 前記流路構造Xは、少なくとも部分的に、微細加工技術を用いて作製されたマイクロ流路構造によって構成されている請求項11に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材の作製方法
  17. 前記流路構造Xは、その幅、深さ、直径の値のうち少なくともいずれか一つが、少なくとも部分的に1ミリメートル以下である請求項11に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材の作製方法
  18. 前記第一の水溶液、前記第二の水溶液及び前記第三の水溶液の少なくともいずれかに含まれるアルギン酸ナトリウムの濃度は、それぞれ100mLあたり1g以下である請求項11に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材の作製方法
  19. 前記第二の水溶液に含まれるアルギン酸ナトリウムの濃度は、100mLあたり1g以上である請求項11に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材の作製方法
  20. 前記ゲル化剤水溶液は、塩化バリウムを含む請求項11に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材の作製方法
  21. 前記ゲル化剤水溶液は、増粘剤を含む請求項11に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材の作製方法
  22. 前記第一の水溶液乃至前記第三の水溶液は、アルギン酸プロピレングリコールを含む請求項11に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材の作製方法
  23. 前記第一の水溶液乃至前記第三の水溶液に含まれる前記アルギン酸プロピレングリコールの濃度は、それぞれ100mLあたり1g以上である請求項22に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材の作製方法
  24. 請求項1に記載の細胞評価用ハイドロゲル基材を用いる細胞評価手法であって、
    前記ハイドロゲル基材内部に包埋した細胞に対し、培養操作を行い、前記第一の細胞が前記ハイドロゲル基材の内部を浸潤しゲル外部にまで達する個数あるいは割合を、計測することによって、細胞の浸潤を定量的に評価する細胞評価手法。
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