(発明が解決しようとする課題)
上記特許文献1及び2に見られるように、従来のフリーストップドアチェック装置は、ドアの開閉に伴ってロッド部材がシリンダ部材内(流体封入空間内)に進入或いはシリンダ部材内から退避する。シリンダ部材内(流体封入空間内)にはオイル等の流体が封入されているため、ロッド部材の進入・退避動作によりシリンダ部材内の流体が漏れないように、シリンダ部材とロッド部材との間にシール部材が設けられる。しかしながら、シール部材を設けた場合であっても微量の流体がロッド部材の動作とともに外部に漏れてしまう。従って、定期的に流体封入空間に流体を補充しなければならない。
また、従来のフリーストップドアチェック装置は、ロッド貫通タイプのフリーストップドアチェック装置と、ロッド非貫通タイプのフリーストップドアチェック装置に大別される。ロッド貫通タイプのフリーストップドアチェック装置は、ロッド部材がシリンダ部材(流体封入空間)を貫通するように構成される。ロッド非貫通タイプのフリーストップドアチェック装置は、ロッド部材がシリンダ部材(流体封入空間)を貫通しないように、すなわちロッド部材の先端が流体封入空間内に配設されるように、構成される。ロッド非貫通タイプのフリーストップドアチェック装置として、例えば上記特許文献2に記載の装置が好適に示される。
ロッド非貫通タイプのフリーストップドアチェック装置によれば、ロッド部材が流体封入空間内に進入或いは流体封入空間内から退避することによって、流体封入空間の空間容積が変動する。この場合、空間容積の変動を補償するための構造が必要である。上記特許文献2によれば、流体封入空間に連通する接続空間に体積補償空間が設けられており、体積補償空間内の容積が増減することにより、流体封入空間の空間容積の増減が相殺される。しかしながら、体積補償空間を形成するための構成を付加することによって、内部構造が複雑化する。また、体積補償空間の圧力が低い場合、流体封入空間からのロッド部材の退避動作に伴い流体封入空間が負圧になる虞がある。流体封入空間が負圧になるとキャビテーションが発生して装置の動作に支障を来す虞がある。キャビテーションの発生を防止するためには、体積補償空間の圧力を高めればよいが、体積補償空間の圧力が高い場合、その圧力がロッド部材を介してドアの開閉操作力に対する抵抗力としてドアに作用する。このため、大きい力でドアを開閉しなければならない。
一方、ロッド貫通タイプのフリーストップドアチェック装置によれば、ドアの開閉動作に伴ってロッド部材が動作した場合であっても流体封入空間の空間容積は変動しない。そのため体積補償空間は必要としない。しかしながら、ロッド部材が流体封入空間(シリンダ部材)を貫通するように長く構成されているために、装置が大型化する。よって、ドア内部でロッド部材の先端(シリンダ部材を貫通した先の部分)が他の部品(例えばウィンドウレギュレータ装置)と干渉する虞があり、これを回避するために他の部品の設計寸法が制限される。
このように、従来のフリーストップドアチェック装置は、様々な問題点を有する。そこで、本発明は、体積補償空間を必要とせず、且つ、コンパクトに構成されたフリーストップドアチェック装置を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段)
本発明は、一方端及び他方端を備える長尺状に形成され、一方端にてドアが取り付けられる構造体に揺動可能に連結されるとともに、構造体に取り付けられたドアの内部に延出されたロッド部材(2)と、非伸縮性材料により形成されるとともに変形可能であり、ロッド部材の表面(23a)上に閉空間である流体封入空間(S)が形成されるように、ロッド部材の表面に液密的に取り付けられた袋体(5)と、流体封入空間内に封入された非圧縮性流体(7)と、ドアに接続され、流体封入空間がロッド部材の長手方向に沿って第1空間(S1)と第2空間(S2)とに液密的に区画されるように、袋体をロッド部材の表面に押し付けるとともに、ドアの開閉動作に伴って、袋体をロッド部材の表面に押し付けたままロッド部材の表面上をロッド部材の長手方向に沿って移動するように構成された押圧部材(6)と、第1空間と第2空間とを連通するようにロッド部材内に形成された第1連通路(24)及び第2連通路(25)と、第1連通路内に配設され、第1連通路を通って第2空間から第1空間に向かう非圧縮性流体の流れを遮断するとともに、第1空間内の圧力P1と第2空間内の圧力P2との差圧ΔP12の大きさが予め定められた開弁圧以上であるときに、第1連通路を通って第1空間から第2空間に向かう非圧縮性流体の流れを許容する第1チェック弁(8)と、第2連通路内に配設され、第2連通路を通って第1空間から第2空間に向かう非圧縮性流体の流れを遮断するとともに、第2空間内の圧力P2と第1空間内の圧力P1との差圧ΔP21の大きさが予め定められた開弁圧以上であるときに、第2連通路を通って第2空間から第1空間に向かう非圧縮性流体の流れを許容する第2チェック弁(9)と、を備える、ドアチェック装置を提供する。
本発明によれば、袋体がロッド部材の表面に液密的に取り付けられることによって、ロッド部材の表面上に、ロッド部材の表面と袋体とにより囲まれた流体封入空間が形成される。また、押圧部材が袋体をロッド部材の表面に押し付けることによって、ロッド部材の表面上に形成されている流体封入空間が第1空間と第2空間とに液密的に区画される。この押圧部材は、ドアの開閉動作に伴ってロッド部材の長手方向に沿って移動するように構成される。従って、ドアの開閉時にドアに入力される操作力が押圧部材を介して流体封入空間に作用する。操作力が流体封入空間に作用することによって、第1空間内の圧力及び第2空間内の圧力が変化する。また、押圧部材がロッド部材の長手方向に移動した場合、第1空間の容積及び第2空間の容積が変化する。
第1空間内の圧力P1と第2空間内の圧力P2との差圧ΔP12(=P1−P2>0)の大きさが所定の開弁圧(第1チェック弁の開弁圧)以上となると、第1チェック弁が開成する。これにより、第1連通路が連通する。このとき、第1空間の容積が減少し且つ第2空間の容積が増加するように、ドアの開閉動作に伴って押圧部材がロッド部材の長手方向に沿って移動することにより、第1空間内の非圧縮性流体が第1連通路を通って第2空間に流れる。このような流れの形成によってドアの開閉動作(例えば閉動作)が継続される。
また、第2空間内の圧力P2と第1空間内の圧力P1との差圧ΔP21(=P2−P1>0)の大きさが所定の開弁圧(第2チェック弁の開弁圧)以上となると、第2チェック弁が開成する。これにより、第2連通路が連通する。このとき、第1空間の容積が増加し且つ第2空間の容積が減少するように、ドアの開閉動作に伴って押圧部材がロッド部材の長手方向に沿って移動することにより、第2空間内の非圧縮性流体が第2連通路を通って第1空間に流れる。このような流れの形成によってドアの開閉動作(例えば開動作)が継続される。
このように、本発明によれば、ドアの開閉操作力が押圧部材を通じて流体封入空間に外部から作用することにより、第1チェック弁或いは第2チェック弁が開くように構成される。また、ドアの開閉動作中に第1空間と第2空間の容積比は変動するものの、流体封入空間の全体の空間容積は変動しない。それ故に、体積補償空間を必要としない。また、ロッド部材は、その表面上に流体封入空間を形成することができる程度の長さを有していればよいので、ロッド貫通タイプのフリーストップドアチェック装置に用いられるロッド部材よりも短くなるようにロッド部材を構成することができる。以上のことから、本発明によれば、体積補償空間を必要とせず、且つ、コンパクトに構成することができるフリーストップドアチェック装置を提供することができる。さらに、本発明によれば、ロッド部材が流体封入空間に進入、或いは流体封入空間から退避することはないため、ロッド部材の動作により流体封入空間内の非圧縮性流体が漏れることもない。よって、流体封入空間内の非圧縮性流体の定期的な補充を廃止することができ、その結果、メンテナンス性を向上させることができる。
本発明において、「構造体」とは、内部空間を有し、内部空間と外部空間とを連通するドアが取り付けられるように構成され、ドアを開くことによって、人或いは物品が内部空間に出入りすることができる構造物を言う。例えば車体、或いは家屋が、本発明の「構造体」に相当する。
また、本発明に係るドアチェック装置は、ロッド部材の長手方向における第1の位置にてロッド部材の表面から立設された第1壁部材(3)と、ロッド部材の長手方向における第2の位置にてロッド部材の表面から立設された第2壁部材(4)と、を備えるのがよい。そして、第1壁部材と第2壁部材との間の領域におけるロッド部材の表面と、第1壁部材と、第2壁部材と、袋体とに囲まれた閉空間によって、流体封入空間が形成されるとよい。この場合において、袋体が、第1壁部材及び第2壁部材に液密的に取り付けられているのがよい。これによれば、ロッド部材の表面上であって、ロッド部材の長手方向における第1の位置と第2の位置との間の領域に、流体封入空間が形成される。
また、押圧部材は、袋体を挟んでロッド部材の表面を長手方向に向かって転動可能に配設されたローラ部材(61)と、ローラ部材を回転可能に軸支する回転軸(62)と、一方端が回転軸に取り付けられるとともに他方端がドアに取り付けられ、ローラ部材をロッド部材の表面に押し付けるようにローラ部材に弾性力を付与する弾性部材(64a,64b)と、を備えるのがよい。これによれば、弾性部材の弾性力がローラ部材に作用することによって、袋体がローラ部材によりロッド部材の表面に押し付けられる。このためロッド部材の表面上に形成されている流体封入空間が第1空間と第2空間とに液密的に区画される。また、ドアが開閉動作した場合、ローラ部材がロッド部材の表面との間に袋体を挟んだ状態のままロッド部材の表面を転動することにより、ローラ部材がロッド部材の長手方向に沿って移動する。このとき袋体には、ローラ部材の転動による転がり摩擦力が作用する。転がり摩擦力は小さい。よって、押圧部材の移動時に袋体に作用する摩擦力が大きいことによって袋体が破損することを防止することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態においては、車両に適用されるドアチェック装置について説明する。図1は本実施形態に係るドアチェック装置100が搭載される車両の概略図である。図1に示す車両Vは車体B(構造体)および車両ドアDRを備える。車体Bの側方部に乗降用の開口OPが形成される。開口OPの周縁のうち車両前方側の縁部(前縁部)FEに、一対のドアヒンジH,Hが上下方向に沿って取り付けられる。一対のドアヒンジH,Hを介して、車両ドアDRが車体Bに揺動可能に連結される。従って、車両ドアDRは、車体Bに形成された開口OPを開閉可能に車体Bに取り付けられる。
図2は図1のA部を詳細に示す図である。図2に示すように、一対のドアヒンジH,Hは、それぞれ同軸のヒンジ軸H1、H1を備える。車両ドアDRの開閉時に、車両ドアDRはヒンジ軸H1,H1を中心として車体Bに対して揺動する。また、前縁部FEにブラケットBRがボルト等の締結手段により固定される。このブラケットBRにピンPを介して、本実施形態に係るドアチェック装置100の構成要素であるロッド部材2の一方端21が連結される。一方端21が車体Bに揺動可能に連結されたロッド部材2は、車両ドアDRの全閉時に車体Bの前縁部FEに対面する部分である車両ドアDRの前端部DEに形成された孔Yを経由して、車両ドアDR内に延出される。
図3は、ドアチェック装置100の概略斜視図である。このドアチェック装置100は、車体Bと車両ドアDRとの間に設けられ、車両ドアDRを開閉する際に保持力を発生する。図3に示すように、ドアチェック装置100は、ロッド部材2と、第1壁部材3と、第2壁部材4と、袋体5と、押圧部材6と、後述する流体封入空間内に封入される非圧縮性流体7(図4参照)を備える。
ロッド部材2は、一方端21及び他方端22を備える長尺状に形成される。本実施形態において、ロッド部材2の長手方向に垂直な断面形状は、矩形状である。従って、ロッド部材2は、その長手方向に沿って形成される4つの平坦面(表面)を有する。4つの平坦面(表面)のうち、図3において上側を向いた面である上面23aに、第1壁部材3及び第2壁部材4が設けられる。
第1壁部材3は、ロッド部材2の長手方向における所定の位置(第1の位置)にてロッド部材2の上面23aから立設される。また、第2壁部材4は、ロッド部材2の長手方向における上記第1の位置とは異なる所定の位置(第2の位置)にてロッド部材2の上面23aから立設される。第1の位置は、ロッド部材2の一方端21に近い位置であり、第2の位置は、ロッド部材2の他方端22に近い位置である。
第1壁部材3は、対向する半楕円形状の表面及び裏面と、表面の周縁と裏面の周縁とを繋ぐ周面と、表面の底縁と裏面の底縁とを繋ぐ底面を有しており、底面がロッド部材2の長手方向における第1の位置にて上面23aに液密的に固定される。同様に、第2壁部材4は、対向する半楕円形状の表面及び裏面と、表面の周縁と裏面の周縁とを繋ぐ周面と、表面の底縁と裏面の底縁とを繋ぐ底面を有しており、底面がロッド部材2の長手方向における第2の位置にて上面23aに液密的に固定される。第1壁部材3と第2壁部材4は、それぞれの表面が対面するように、ロッド部材2にそれぞれ取り付けられる。第1壁部材3及び第2壁部材4は、ロッド部材2と一体的に形成されていてもよい。
袋体5は、伸び縮みし難い非伸縮性の材質により構成されたシート状の部材であり、薄いために容易に変形する。袋体5は、非伸縮性であるとともに、後述する非圧縮性流体が浸透しないように、つまり、袋体5で非圧縮性流体を包み込んだ場合に、非圧縮性流体が袋体5に浸み出さないように、構成される必要がある。例えば袋体5は、ガラス繊維が含有されたシリコンゴムにより形成されてもよい。
非伸縮性の袋体5は、第1壁部材3の表面の半楕円形状の周縁と、第2壁部材4の表面の半楕円形状の周縁と、ロッド部材2の上面23aの両側縁のうち、第1の位置と第2の位置との間の領域に、液密的に取り付けられる。従って、袋体5は、ロッド部材2の上面23aのうち第1の位置と第2の位置との間の部分を覆うように、ロッド部材2に対して配設される。このようにして袋体5がロッド部材2、第1壁部材3及び第2壁部材4に取り付けられることにより、第1壁部材3の表面と、第2壁部材4の表面と、ロッド部材2の上面23aのうち第1の位置と第2の位置との間の部分と、袋体5とに囲まれる閉空間が形成される。この閉空間が、流体封入空間である。
図4は、ドアチェック装置100をロッド部材2の長手方向における中心軸を通り且つ上下方向に平行な平面で切断した部分断面概略図である。図4に示すように、ロッド部材2の長手方向における所定の長さに亘って、具体的には、第1壁部材3が設けられる第1の位置L1と第2壁部材4が設けられる第2の位置L2との間の部分に亘って、ロッド部材2の上面23a上に流体封入空間Sが形成される。この流体封入空間S内に、オイル等の非圧縮性流体7が封入される。この流体封入空間Sは、押圧部材6によって、ロッド部材2の長手方向に沿って2つの空間に液密的に区画される。
図3及び図4に示すように、押圧部材6は、ローラ部材61と、回転軸62と、固定部材63と、第1圧縮コイルスプリング64aと、第2圧縮コイルスプリング64bとを備える。
ローラ部材61は、円筒状に形成され、その軸方向長さはロッド部材2の上面23aの幅(長手方向に垂直な方向における長さ)よりも長い。そして、ローラ部材61の回転軸方向がロッド部材2の幅方向に一致し、且つ、ローラ部材61の回転軸方向における中心位置がロッド部材2の幅方向における中心位置に上下方向において一致するように、ローラ部材61がロッド部材2の図3及び図4において上方に配設される。さらに、ローラ部材61は、図3及び図4において上方から見たときに、ロッド部材2の上面23aのうち第1の位置L1(第1壁部材3が取り付けられている位置)と第2の位置L2(第2壁部材4が取り付けられている位置)との間の部分に位置するように、ロッド部材2に対して配設される。
回転軸62はローラ部材61の軸心位置に設けられており、ローラ部材61を回転可能に軸支する。回転軸62の両端はローラ部材61の両端から突出している。回転軸62の一方の端部には第1受け部62aが形成され、他方の端部には第2受け部62bが形成される。第1受け部62a及び第2受け部62bはともに平板状に形成される。
固定部材63は細長い平板状に形成されており、その長手方向が回転軸62の軸方向に一致するように、回転軸62に対して配設される。図3からわかるように、固定部材63の一方の端部側の部分が第1受け部62aに上下方向に対面し、他方の端部側の部分が第2受け部62bに上下方向に対面する。
固定部材63の一方の端部側の部分と第1受け部62aとの間に第1圧縮コイルスプリング64a(弾性部材)が配設され、固定部材63の他方の端部側の部分と第2受け部62bとの間に第2圧縮コイルスプリング64b(弾性部材)が配設される。第1圧縮コイルスプリング64aの一方端が固定部材63に係止され、他方端が第1受け部62aに係止される。第2圧縮コイルスプリング64bの一方端が固定部材63に係止され、他方端が第2受け部62bに係止される。
固定部材63は車両ドアDRまたは車両ドアDRの内部に固定されている部材に固定される。すなわち押圧部材6は車両ドアに接続される。従って、車両ドアが開閉動作したときには、それに伴って押圧部材6が動作する。このとき、車両ドアDRの開閉動作に伴って、ローラ部材61がロッド部材2の長手方向に沿って転動(移動)するように、押圧部材6が構成される。
第1圧縮コイルスプリング64aの弾性力及び第2圧縮コイルスプリング64bの弾性力は、回転軸62を介してローラ部材61をロッド部材2の上面23aに押し付けるように、ローラ部材61に作用する。ここで、ローラ部材61は、ロッド部材2の上面23aのうち第1の位置L1と第2の位置L2との間に位置するが、この領域には袋体5が設けられている。従って、ローラ部材61によって袋体5がロッド部材2の上面23aに押し付けられる。このとき、袋体5はロッド部材2の幅方向の全域に亘って隙間なく押し付けられる。このため、図4に示すように、流体封入空間Sがロッド部材2の軸方向に沿って第1空間S1と第2空間S2とに液密的に区画される。
図4に示すように、ロッド部材2内に、第1連通路24及び第2連通路25が形成される。第1連通路24及び第2連通路25は、ロッド部材2の長手方向に沿って延びるように形成される。第1連通路24及び第2連通路25のそれぞれの一方端は、ロッド部材2の上面23aのうち第1空間S1が形成される位置にそれぞれ開口する。第1連通路24及び第2連通路25のそれぞれの他方端は、ロッド部材2の上面23aのうち第2空間S2が形成される位置にそれぞれ開口する。従って、第1連通路24及び第2連通路25は、第1空間S1と第2空間S2とを連通するように、ロッド部材2内に形成される。なお、第1連通路24及び第2連通路25のそれぞれの一方端は、ロッド部材2の上面23aのうち第1壁部材3の近傍位置に開口しているのがよい。同様に、第1連通路24及び第2連通路25のそれぞれの他方端は、ロッド部材2の上面23aのうち第2壁部材4の近傍位置に開口しているのがよい。
第1連通路24に第1弁室26が形成され、第2連通路25に第2弁室27が形成される。第1弁室26内に第1チェック弁8が配設され、第2弁室27内に第2チェック弁9が形成される。第1チェック弁8は、球体81及びバネ82を備え、第2チェック弁9は球体91及びバネ92を備える。
第1チェック弁8は、第1連通路24を通って第2空間S2から第1空間S1に向かう非圧縮性流体7の流れに対し、バネ82の弾性力により球体81が流路を塞ぐことにより、その流れを遮断する(閉成する)ように構成される。また、第1チェック弁8は、第1連通路24を通って第1空間S1から第2空間S2に向かう非圧縮性流体7の流れに対し、第1空間S1内の圧力P1と第2空間S2内の圧力P2との差圧ΔP12(=P1−P2)の大きさがバネ82の弾性係数に基づいて定められる第1開弁圧以下であるときには、球体81が流路を塞ぐことにより、その流れを遮断する(閉成する)ように構成される。一方、差圧ΔP12の大きさが第1開弁圧よりも大きいときには、球体81が流路を開くことにより、第1連通路24を通って第1空間S1から第2空間S2に向かう非圧縮性流体7の流れを許容する(開成する)ように構成される。
第2チェック弁9は、第2連通路25を通って第1空間S1から第2空間S2に向かう非圧縮性流体7の流れに対し、バネ92の弾性力により球体91が流路を塞ぐことにより、その流れを遮断する(閉成する)ように構成される。また、第2チェック弁9は、第2連通路25を通って第2空間S2から第1空間S1に向かう非圧縮性流体7の流れに対し、第2空間S2内の圧力P2と第1空間S1内の圧力P1との差圧ΔP21(=P2−P1)の大きさがバネ92の弾性係数に基づいて定められる第2開弁圧以下であるときには、球体91が流路を塞ぐことにより、その流れを遮断する(閉成する)ように構成される。一方、差圧ΔP21の大きさが第2開弁圧よりも大きいときには、球体91が流路を開くことにより、第2連通路25を通って第2空間S2から第1空間S1に向かう非圧縮性流体7の流れを許容する(開成する)ように構成される。
上記構成のドアチェック装置100において、以下に、その作動について説明する。車両ドアDRが所定の開度位置(全閉位置及び全開位置を含む)にて開閉動作を停止しているときには、図4示すように、第1チェック弁8及び第2チェック弁9がともに閉成している。このため、第1空間S1と第2空間S2との間における非圧縮性流体7の流通が遮断される。また、ローラ部材61が袋体5をロッド部材2の上面23aに押し付けている。このためローラ部材61からの押圧力によって袋体5の中央部が窪むように変形されている。こうした変形状態においては、ローラ部材61の図4において左方に第1空間S1が形成され、ローラ部材61の図4において右方に第2空間S2が形成される。また、図4に示す状態においては、第1空間S1の圧力P1と第2空間S2の圧力P2は等しい。
ユーザが車両ドアDRを閉じるように車両ドアDRに力(操作力)を加えた場合、その操作力は、車両ドアDRに接続された押圧部材6に伝えられる。車両ドアDRを閉じるように車両ドアDRに加えられた操作力は、押圧部材6に対し、図4の左方に向かう駆動力として押圧部材6に作用する。このためローラ部材61がその左側に形成されている第1空間S1に近づいてその容積を減少するように、第1空間S1を押圧する。これにより第1空間S1内の圧力P1が上昇する。また、ローラ部材61は第2空間S2から離れる方向に、すなわち第2空間S2の容積を増加する方向に移動しようとするため、第2空間S2の圧力P2は低下する。このため第1空間S1内の圧力P1と第2空間S2内の圧力P2との差圧ΔP12(=P1−P2>0)が大きくなる。つまり、車両ドアDRを閉じようとすると、差圧ΔP12が大きくなる。
差圧ΔP12が第1チェック弁8の第1開弁圧を上回らない限り、第1チェック弁8は開成しない。このとき第1チェック弁8の第1開弁圧に基づく力は、車両ドアDRを閉動作させる際の保持力として、車両ドアDRに作用する。
差圧ΔP12が第1チェック弁8の第1開弁圧よりも大きくなるように車両ドアDRに閉動作方向への大きな操作力を加えることにより、第1チェック弁8が開成する。これにより、第1連通路24が連通する。このとき車両ドアDRが閉動作することにより、ローラ部材61が図4の左方に向かうようにロッド部材2の上面23aをその長手方向に沿って転動する。またローラ部材61は、ロッド部材2の上面23aとの間に袋体5を挟んだ状態を維持したまま、すなわち第1空間S1と第2空間S2との液密状態を維持したまま、ロッド部材2の上面23a上を転動(移動)する。図5は、ローラ部材61が図4に示す位置からロッド部材2に対して左方に移動した状態を示す、ドアチェック装置100の部分断面概略図である。
ローラ部材61が図4に示す位置からロッド部材2に対して左方に移動した場合、袋体5のうちローラ部材61によってロッド部材2の上面23aに押し付けられている部分が左方に移動する。このようなローラ部材61の移動によって、図5に示すように第1空間S1の容積が減少するとともに第2空間S2の容積が増加する。このため、第1空間S1から余剰の非圧縮性流体7が第1連通路24を経由して第2空間S2に流れる。非圧縮性流体7が第1連通路24を流れることにより生じる流体圧が第1チェック弁8に作用することによって、車両ドアDRの閉動作中における第1チェック弁8の閉成が阻止される。このため車両ドアDRが閉動作を継続することができる。
車両ドアDRの閉動作を停止した場合、第1連通路24を経由した非圧縮性流体7の流れが停止する。このため第1チェック弁8が再び閉成する。これにより、第1チェック弁8の第1開弁圧相当の力が車両ドアDRの閉動作に対する保持力として作用する。
また、ユーザが車両ドアDRを開くように車両ドアDRに力(操作力)を加えた場合、その操作力は、押圧部材6に対し、図4の右方に向かう駆動力として作用する。このためローラ部材61がその右側に形成されている第2空間S2に近づいてその容積を減少するように、第2空間S2を押圧する。これにより第2空間S2内の圧力P2が上昇する。また、ローラ部材61は第1空間S1から離れる方向に、すなわち第1空間S1の容積を増加する方向に移動しようとするため、第1空間S1の圧力P1は低下する。このため第2空間S2内の圧力P2と第1空間S1内の圧力P1との差圧ΔP21(=P2−P1>0)が大きくなる。つまり、車両ドアDRを開こうとすると、差圧ΔP21が大きくなる。
差圧ΔP21が第2チェック弁9の第2開弁圧を上回らない限り、第2チェック弁9は開成しない。このとき第2チェック弁9の第2開弁圧に基づく力は、車両ドアDRを開動作させる際の保持力として、車両ドアDRに作用する。
差圧ΔP21が第2チェック弁9の第2開弁圧よりも大きくなるように車両ドアDRに開動作方向への大きな操作力を加えることにより、第2チェック弁9が開成する。これにより、第2連通路25が連通する。このとき車両ドアDRが開動作することにより、ローラ部材61が図4の右方に向かうようにロッド部材2の上面23aをその長手方向に沿って転動する。またローラ部材61は、ロッド部材2の上面23aとの間に袋体5を挟んだ状態を維持したまま、すなわち第1空間S1と第2空間S2との液密状態を維持したまま、ロッド部材2の上面23a上を転動(移動)する。図6は、ローラ部材61が図4に示す位置からロッド部材2に対して右方に移動した状態を示す、ドアチェック装置100の部分断面概略図である。
ローラ部材61が図4に示す位置からロッド部材2に対して右方に移動した場合、袋体5のうちローラ部材61によってロッド部材2の上面23aに押し付けられている部分が右方に移動する。このようなローラ部材61の移動によって、図6に示すように第2空間S2の容積が減少するとともに第1空間S1の容積が増加する。このため、第2空間S2から余剰の非圧縮性流体7が第2連通路25を経由して第1空間S1に流れる。非圧縮性流体7が第2連通路25を流れることにより生じる流体圧が第2チェック弁9に作用することによって、車両ドアDRの開動作中における第2チェック弁9の閉成が阻止される。このため車両ドアDRが開動作を継続することができる。
車両ドアDRの開動作を停止した場合、第2連通路25を経由した非圧縮性流体7の流れが停止する。このため第2チェック弁9が再び閉成する。これにより、第2チェック弁9の第2開弁圧相当の力が車両ドアDRの開動作に対する保持力として作用する。
以上のように、本実施形態に係るドアチェック装置100(フリーストップドアチェック装置)によれば、車両ドアDRの開閉動作が停止した任意の位置にて、大きな保持力を発生させることができる。
また、本実施形態に係るドアチェック装置100は、車両ドアDRの開閉時における操作力が押圧部材6を通じて流体封入空間Sに外部から作用することにより、第1空間S1と第2空間S2との差圧が生成されて、第1チェック弁8或いは第2チェック弁9が開成するように構成される。また、車両ドアDRの開閉動作中に第1空間S1と第2空間S2の容積比は変動するものの、流体封入空間Sの全体の空間容積は変動しない。それ故に、体積補償空間を必要としない。また、ロッド部材2は、その上面23aのうちの所定の領域(第1の位置L1と第2の位置L2との間の領域)に流体封入空間Sを形成することができる程度の長さを有していればよいので、ロッド貫通タイプのフリーストップドアチェック装置に用いられるロッド部材よりも短くなるようにロッド部材2を構成することができる。よって、体積補償空間を必要とせず、且つ、コンパクトに構成することができるフリーストップドアチェック装置を提供することができる。さらに、ロッド部材2が流体封入空間Sに進入、或いは流体封入空間Sから退避することはないため、ロッド部材2の動作により流体封入空間S内の非圧縮性流体7が漏れることもない。よって、流体封入空間S内の非圧縮性流体7の定期的な補充を廃止でき、メンテナンス性が向上する。
また、本発明に係るドアチェック装置100は、ロッド部材2の長手方向における第1の位置L1にてロッド部材2の上面23aから立設された第1壁部材3と、ロッド部材2の長手方向における第2の位置L2にてロッド部材2の上面23aから立設された第2壁部材4と、を備える。そして、第1壁部材3と第2壁部材4との間の領域におけるロッド部材2の上面23aと、第1壁部材3と、第2壁部材4と、袋体5とに囲まれた閉空間によって、流体封入空間Sが形成される。このような構成によって、ロッド部材2の上面23a上であって、ロッド部材2の長手方向における第1の位置L1と第2の位置L2との間の領域に、流体封入空間Sを形成することができる。また、ローラ部材61が第2壁部材3に当接することにより、車両ドアDRの全開位置を規制することができる。
また、押圧部材6は、袋体5を挟んでロッド部材2の上面23aを長手方向に向かって転動可能に配設されたローラ部材61と、ローラ部材61を回転可能に軸支する回転軸62と、一方端が回転軸62に取り付けられるとともに他方端が固定部材63を介して車両ドアDRに取り付けられ、ローラ部材61をロッド部材2の上面23aに押し付けるようにローラ部材61に弾性力を付与する圧縮コイルスプリング64a,64bと、を備える。このように押圧部材6を構成することにより、車両ドアDRが開閉動作した場合にローラ部材61がロッド部材2の上面23aとの間に袋体5を挟んだ状態のままロッド部材2の上面23aを転動する。このとき袋体5にはローラ部材61の転動による転がり摩擦力が作用するが、転がり摩擦力は小さいので、作用する摩擦力によって袋体5が破損することを防止することができる。また、圧縮コイルスプリング64a,64bによりローラ部材61が弾性的に抑えられているので、異物等が袋体5とローラ部材61との間に噛み込んだ場合にローラ部材61が持ち上げられることによって、異物の噛み込みによる袋体5の破損を防止することができる。
また、本実施形態においては、第1チェック弁8の第1開弁圧及び第2チェック弁9の第2開弁圧が、それぞれバネの弾性力に依存して定められる。バネの弾性力は温度などの周囲環境により変化しにくい。よって、常に一定の操作力によって、車両ドアDRを開閉動作させることができる。
また、本実施形態においては、ローラ部材61が袋体5をロッド部材2の上面23aに押し付けている。上面23aはロッド部材2の長手方向に沿って延びる平坦面である。袋体5が押し付けられる面がこのような平坦面であるため、ローラ部材61の押し付け力によって、流体封入空間Sを第1空間S1と第2空間S2とに容易に液密的に区画することができる。また、袋体5の押し付け面が平坦面であれば、袋体5を押し付けているローラ部材61は、容易にロッド部材2の長手方向に転動することができる。
また、袋体5は非伸縮性材料により形成されている。このため、ローラ部材61から袋体5に作用する操作力によって生成される差圧(ΔP12、ΔP21)が袋体5の伸縮動作によって低下することはない。また、流体封入空間Sに封入された流体は非圧縮性であるので、ローラ部材61から袋体5に作用する操作力によって生成される差圧(ΔP12、ΔP21)が流体の圧縮動作によって低下することもない。このため、車両ドアDRの開閉時に確実に第1空間S1と第2空間S2とに圧力差をつけることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、図7に示すドアチェック装置200のように、ロッド部材2の上面23a上のみならず、上面23aとは反対側の下面23bにも流体封入空間Sが形成されていてもよい。この場合、上面23aに形成された流体封入空間Sを構成するための部材(第1壁部材3、第2壁部材4、及び袋体5)と同じ部材が下面23b側にも設けられる。また、上面23aに袋体5を押し付けるための押圧部材6aと、下面23bに袋体5を押し付けるための押圧部材6bが、ドアチェック装置200に備えられる。なお、図7に示すドアチェック装置200においては、上面23a上に形成された第1空間S1と下面23b上に形成された第1空間S1とは連通し、上面23a上に形成された第2空間S2と下面23b上に形成された第2空間S2とが連通するように、それぞれの流体封入空間が構成される。
また、図8に示すドアチェック装置300のように、押圧部材6を、固定部材63と、圧縮コイルスプリング64と、押さえプレート65とにより構成してもよい。この場合、圧縮コイルスプリング64は、固定部材63と押さえプレート65との間に配設される。圧縮コイルスプリング64の弾性力が、押さえプレート65を介して袋体5に作用する。押さえプレート65により袋体5がロッド部材2の表面(上面23a)に押し付けられる。また、車両ドアDRの開閉動作に伴い、押さえプレート65が袋体5をロッド部材2の上面23aとの間に挟んだ状態を維持したまま、ロッド部材2の長手方向に摺動(移動)する。このように構成することにより、押圧部材6をより簡単に構成することができる。なお、押さえプレート65は、ロッド部材2との間に袋体5を挟んだ状態でも容易にロッド部材2の長手方向に摺動することができるように、図8において左右の端部が持ち上げられていて、これらの端部が袋体5に面当たりするように構成されているとよい。
また、本実施形態においては、車両ドアDRに適用されるドアチェック装置(フリーストップドアチェック装置)について説明したが、その他の構造体に設けられるドアに適用することができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。