以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.第1の実施形態>
[1.1.連続鋳造装置の全体構成]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る軽圧下装置が適用される連続鋳造装置の全体構成について説明する。図1は、本実施形態に係る軽圧下装置が適用される連続鋳造装置を示す側断面図である。
図1に示すように、連続鋳造装置は、連続鋳造用の鋳型1を用いて溶融金属2(例えば溶鋼)を連続鋳造し、スラブ等の鋳片3を製造するための装置である。かかる連続鋳造装置は、鋳型1と、取鍋4と、タンディッシュ5と、浸漬ノズル6と、二次冷却装置7と、鋳片切断機8とを備える。
取鍋4は、溶融金属2を外部からタンディッシュ5まで搬送するための可動式の容器である。取鍋4は、タンディッシュ5の上方に配置され、取鍋4内の溶融金属2をタンディッシュ5に供給する。タンディッシュ5は、鋳型1の上方に配置され、溶融金属2を貯留して、溶融金属2中の介在物を除去する。浸漬ノズル6は、タンディッシュ5の下端から鋳型1に向けて、先端を鋳型1内の溶融金属2に浸漬するように下方に延びている。浸漬ノズル6は、タンディッシュ5にて介在物が除去された溶融金属2を鋳型1内に連続供給する。
鋳型1は、製造される鋳片3の幅および厚みに応じた四角筒状であり、例えば、一対の長辺鋳型板によって一対の短辺鋳型板を幅方向両側から挟むようにして組み立てられる。これら鋳型板は、例えば水冷銅板で構成される。鋳型1は、上述した鋳型板と接触する溶融金属2を冷却し、外殻の凝固部3aの内部に未凝固部3bを含んだ鋳片3を製造する。凝固部3aが鋳型1下方に向かって移動するにつれて、内部の未凝固部3bの凝固が進行し、外殻の凝固部3aの厚みは、徐々に厚くなる。このような凝固部3aと未凝固部3bを含む鋳片3は、鋳型1の下端から引き抜かれる。
二次冷却装置7は、鋳型1の下方の二次冷却帯9に設けられ、鋳型1下端から引き抜かれた鋳片3を支持および搬送しながら冷却する。この二次冷却装置7は、鋳片3の厚み方向両側に配置される複数対の支持ロール(例えば、サポートロール11、ピンチロール12、およびセグメントロール13)と、鋳片3に対して冷却水を噴射する複数のスプレーノズル(図示せず)と、を有する。
二次冷却装置7が備える支持ロールは、鋳片3の厚み方向両側に対となって配置され、鋳片3を支持しながら搬送する支持搬送手段として機能する。支持ロールにより鋳片3を厚み方向両側から支持することにより、二次冷却帯9において凝固途中の鋳片3のブレークアウトやバルジングを防止できる。
このような支持ロールは、例えば、図1に示すサポートロール11、ピンチロール12、およびセグメントロール13を含む。サポートロール11、ピンチロール12、およびセグメントロール13は、二次冷却帯9における鋳片3の搬送経路(パスライン)を形成する。このパスラインは、図1に示すように、鋳型1の直下では垂直であり、次に曲線状に湾曲し、最終的には水平になる。なお、二次冷却帯9において、パスラインが垂直である部分を垂直帯9A、湾曲している部分を湾曲帯9B、水平である部分を水平帯9Cと称し、湾曲帯9Bと水平帯9Cとの境目をクレーターエンド3cと称する。このようなパスラインを有する連続鋳造装置は、垂直曲げ型の連続鋳造装置と称される。ただし、本発明に係る軽圧下装置は、上記で例示した垂直曲げ型の連続鋳造装置に限定されず、湾曲型または垂直型など各種の連続鋳造装置に適用可能である。
ここで、上記サポートロール11、ピンチロール12、およびセグメントロール13について説明する。サポートロール11は、鋳型1の直下の垂直帯9Aに設けられる無駆動式ロールであり、鋳型1から引き抜かれた直後の鋳片3を支持する。鋳型1から引き抜かれた直後の鋳片3は、凝固部3aが薄い状態であるため、ブレークアウトやバルジングを防止するために比較的短い間隔(ロールピッチ)で支持する必要がある。そのため、サポートロール11としては、ロールピッチを短くすることが可能な小径のロールを用いることが望ましい。図1では、垂直帯9Aにおける鋳片3の両側に、小径ロールからなる3対のサポートロール11が、比較的短いロールピッチで設けられている。
ピンチロール12は、モータ等の駆動手段により回転する駆動式ロールであり、鋳片3を鋳型1から引き抜く機能を有する。ピンチロール12は、垂直帯9A、湾曲帯9Bおよび水平帯9Cの適切な位置に配置される。鋳片3は、ピンチロール12から伝達される力によって鋳型1から引き抜かれ、上記パスラインに沿って搬送される。なお、ピンチロール12の配置は、図1に示す例には限られず、任意に設定されてもよい。
セグメントロール13(ガイドロールとも称する)は、湾曲帯9Bおよび水平帯9Cに設けられる無駆動式ロールであり、上記パスラインに沿って鋳片3を支持および案内する。セグメントロール13は、パスライン上の位置によって、および鋳片3のF面(Fixed面、図1では左下側の面)とL面(Loose面、図1では右上側の面)とのいずれの面側に配置されているかによって、それぞれ異なるロール径およびロールピッチで配置されてもよい。
鋳片切断機8は、上記パスラインの水平帯9Cの終端に配置され、パスラインに沿って搬送された鋳片3を所定の長さに切断する。切断された厚板状の鋳片14は、テーブルロール15により次工程の設備に搬送される。
次に、上記で説明した連続鋳造装置の動作について説明する。取鍋4で搬送されてきた溶融金属2はタンディッシュ5に供給され、溶融金属2の介在物が除去される。次に、タンディッシュ5内の溶融金属2は、浸漬ノズル6を通じて鋳型1内に注入される。
鋳型1内では、鋳型1の内面に接触した溶融金属2の外周部分が凝固して、凝固部3aが形成される。また、鋳型1下方に向かうにつれて、凝固が徐々に進行し、凝固部3aの厚みは増加する。そして、この凝固部3a内に未凝固部3bが存在した状態で、鋳片3は鋳型1の下方に引き抜かれる。
次に、鋳型1下方の二次冷却帯9において、鋳型1から引き抜かれた鋳片3は、二次冷却装置7の複数対のロールにより、上記垂直曲げ型のパスラインに沿って支持および搬送されながら、徐々に冷却される。これにより、鋳片3内部の未凝固部3bの凝固がさらに進行し、クレーターエンド3c以降の水平帯9Cにて凝固が完了する。その後、凝固完了した鋳片3は、鋳片切断機8により、所定長の鋳片14に切断されて、外部に搬出される。
なお、上記の連続鋳造装置によって製造される鋳片3の種類およびサイズは、特に限定されない。例えば、鋳片3は、厚みが250〜400mm程度のスラブ、500mmを超えるブルームまたはビレットであってもよい。また、鋳片3は、厚みが100mm程度の薄スラブ、50mm以下の薄帯連続鋳造鋳片などであってもよい。さらに、鋳片3の素材は、例えば、鉄鋼、特殊鋼であるが、他にもアルミニウム、アルミニウム合金、チタンなど、連続鋳造が可能な各種の金属であってもよい。
[1.2.軽圧下装置の構成]
次に、図2を参照して、本施形態に係る軽圧下装置の構成について説明する。図2は、本実施形態に係る軽圧下装置の構成を示した側断面図である。
本実施形態に係る軽圧下装置50は、例えば、二次冷却帯9の水平帯9Cにおいて、軽圧下ロールを用いて鋳片3を厚み方向に軽圧下する装置である。この軽圧下装置50は、二次冷却帯9の鋳片のパスライン上において、鋳片3の大部分が凝固部3aになり、未凝固部3bがわずかとなった凝固末期の鋳片を軽圧下するために適用される。具体的には、軽圧下装置50は、図1に示すクレーターエンド3c以降に適用され、凝固末期の鋳片の未凝固部3bを軽圧下することにより、中心偏析を抑制するものである。
なお、軽圧下装置50の適用箇所は、上記例示に限定されない。例えば、軽圧下装置50は、図1で示した垂直帯9Aまたは湾曲帯9B等において凝固初期の鋳片3を軽圧下するために用いることも可能である。
図2に示すように、軽圧下装置50は、上下に対向配置される複数対の軽圧下ロール21a、21bと、圧下機構23と、支持部材25と、を備える。なお、支持部材25によって一体に構成された軽圧下装置50は、セグメントとも称される。なお、図2では、軽圧下装置50は、8対の軽圧下ロール21a、21bを備えるが、本発明は、上記例示に限定されない。軽圧下装置50は、少なくとも1対以上の軽圧下ロール21a、21bを備えていればよい。
軽圧下ロール21a、21bは、鋳片3の厚み方向両側に対となって配置され、両側から鋳片3の未凝固部3bを軽圧下する。また、軽圧下ロール21a、21bの少なくとも一方は、鋳片3と接触するロール部が鋳片幅方向に複数片に分割されており、これら複数のロール部が鋳片幅方向に独立して移動可能に設けられている。したがって、軽圧下ロール21a、21bは、複数のロール部を鋳片幅方向に独立して移動させることにより鋳片3の未凝固部3bを選択的に軽圧化することができるため、未凝固部3bの形状変化に柔軟に対応して軽圧下することができる。なお、軽圧下ロール21a、21bの詳細については、図3Aおよび3Bを参照して後述する。
圧下機構23は、支持部材25の上部等に設置されたアクチュエータであり、例えば、圧下機構23は、油圧シリンダーなどの動力シリンダーである。圧下機構23は、軽圧下ロール21a、21b間の距離を調節することにより、所定の圧下設定にて鋳片3を厚み方向に軽圧下する。なお、圧下機構23は、支持部材25に支持される軽圧下ロール21a、21bの圧下設定を一様に変更してもよく、軽圧下ロール21a、21bの対ごとに圧下設定を変更してもよい。
支持部材25は、軽圧下装置50の各構成を支持する構造部材であり、軽圧下ロール21aを支持する上フレームと、軽圧下ロール21bを支持する下フレームと、上フレームおよび下フレームを連結する連結フレームとからなる。支持部材25は、軽圧下ロール21a、21bを鋳片3の厚み方向の両側に支持する。具体的には、支持部材25は、軽圧下ロール21a、21bの両端を軸受け部(図示せず)によって軸支し、軽圧下ロール21a、21bが鋳片幅方向を回転軸方向として回転可能となるように支持する。なお、軽圧下ロール21a、21bは、図示しないモータ等の駆動手段により回転する駆動式ロールであってもよく、駆動手段を有さない無駆動式ロールであってもよい。
[1.3.軽圧下ロールの構成]
続いて、図3A〜図7を参照して、本実施形態に係る軽圧下装置が備える軽圧下ロールについて詳細に説明する。図3Aは、凝固の一様態における軽圧下ロールの構成を示した説明図であり、図3Bは、凝固の他の様態における軽圧下ロールの構成を示した説明図である。なお、図3Aおよび3Bでは、説明の便宜上、図2で説明した圧下機構23および支持部材25等を省略している。
図3Aおよび3Bに示すように、本実施形態に係る軽圧下装置では、上側の軽圧下ロール100と、下側の対向ロール200とが対向配置される。軽圧下ロール100は、ロール軸102と、複数のロール部104とを備える。また、対向ロール200は、ロール軸202と、ロール部204とを備える。したがって、鋳片300の未凝固部304は、軽圧下ロール100のロール部104と、対向ロール200のロール部204との間で軽圧下される。
軽圧下ロール100のロール軸102は、鋳片幅方向に延伸された棒状の部材である。ロール部104は、略円筒形状を有し、鋳片幅方向に複数片に分割されている。また、円筒形状のロール部104の軸方向がロール軸102の軸方向と一致するように、分割されたそれぞれのロール部104は、ロール軸102の外周部に嵌合される。ロール軸102の両端は支持部材25に設けられた軸受け部(図示せず)によって軸支されており、ロール軸102および複数のロール部104は、鋳片幅方向を回転軸方向として一体に回転するように構成される。
なお、軽圧下ロール100は、図示しないモータ等の駆動手段により回転する駆動式ロールであってもよく、駆動手段を有さない無駆動式ロールであってもよい。ここで、軽圧下ロール100が駆動式ロールである場合のロール軸102およびロール部104の断面形状を図4に示す。図4は、ロール軸102の軸方向に対して垂直な断面において軽圧下ロール100を切断した場合の断面図である。
図4に示すように、軽圧下ロール100が駆動式ロールである場合、ロール軸102とロール部104は、キー構造により連結されることで一体的に回転可能となる。具体的には、ロール軸102の軸方向に垂直な断面は、円と十字を組み合わせた形状を有し、ロール部104と嵌合する凸部103を有する。また、ロール部104の軸方向に垂直な断面は、上述したロール軸102の凸部103の形状に対応した凹部105を有し、ロール軸102の凸部103と嵌合する。このような断面形状を有するロール軸102と、ロール部104とが連結されることにより、軽圧下ロール100は、鋳片幅方向を軸方向としてロール軸102およびロール部104を一体的に回転させることができる。したがって、駆動式の軽圧下ロール100は、鋳片300に対して、該鋳片300を鋳造方向に搬送する力を伝達することができる。なお、ロール軸102およびロール部104の軸方向に垂直な断面形状は、ロール軸102とロール部104とが互いに嵌合可能であれば、上記に限定されず、多様な変形が可能である。
また、ロール部104は鋳片幅方向に移動可能に設けられる。したがって、図3Aに示すように、鋳片幅方向の中央部が未凝固である場合、ロール部104は、それぞれのロール部104を鋳片幅方向の中央部に寄せて配置することで、未凝固部304を軽圧下することができる。また、図3Bに示すように、鋳片幅方向の両端部が未凝固である場合、ロール部104は、ロール部104を2つずつの2グループに分けて、鋳片幅方向の両端部に配置することで、未凝固部304を軽圧下することができる。
したがって、本実施形態に係る軽圧下ロール100は、未凝固部304が2箇所以上に分かれて存在する場合であっても、複数のロール部104をそれぞれの未凝固部304に対して振り分けることにより、未凝固部304を適切に軽圧下することができる。
また、複数のロール部104は、未凝固部304の位置が鋳片の一方の端部に偏っている場合であっても、複数のロール部104を未凝固部304の位置に移動させることにより、未凝固部304を適切に軽圧下することができる。
さらに、複数のロール部104は、未凝固部304の幅が変動した場合であっても、ロール部104同士の間隔を変化させることにより、未凝固部304の一端から他端までを軽圧下することができる。
具体的には、ロール部104によって鋳片300が軽圧下された場合、ロール部104が当接している領域の両側の領域についても軽圧下による圧力分布が裾を引くため、該両側の領域も軽圧下されている。そのため、間隔を設けてそれぞれのロール部104を配置し、鋳片300を軽圧下した場合でも、それぞれのロール部104における軽圧下の圧力分布の裾が重ね合うため、未凝固部304の一端から他端までを適切に軽圧下することができる。したがって、このような軽圧下ロール100によれば、鋳片300の未凝固部304の幅が変動した場合であっても、それぞれの鋳片300に対して適切に軽圧下することができる。
ここで、図5に示すように、ロール部104bは、鋳片幅方向において鋳片300と接触しない位置に移動可能に設けられていてもよい。図5は、ロール部104bが鋳片300と接触しない位置に移動可能に設けられた軽圧下ロールを示した説明図である。
具体的には、軽圧下ロール110のロール軸112は、少なくとも一方向が鋳片300の幅より延伸されており、ロール軸112は、鋳片300の幅よりもさらに突出した退避部112aを備える。なお、退避部112aの幅は、1つのロール部104a、104bの鋳片幅方向の幅よりも大きい。退避部112aに移動したロール部104bは、鋳片300と接触しないため、他のロール部104aが鋳片300を軽圧下した場合でも鋳片300を軽圧下しなくなる。
この構成によれば、例えば、未凝固部304の幅がすべてのロール部104a、104bの幅の和よりも小さい場合に、一部のロール部104bを退避部112aに移動させることで、凝固部302を軽圧下することなく、適切に未凝固部304を軽圧下することができる。
一方、ロール軸112が退避部112aを備えていない場合、すべてのロール部104a、104bを隣接させて配置したとしても、ロール部104a、104bによって軽圧下される幅は、未凝固部304の幅よりも大きくなる。そのため、軽圧下ロール110は、未凝固部304に加えて凝固部302の一部も軽圧下せざるを得ないため、より高い圧力で軽圧下しなくてはならず、好ましくない。ただし、ロール部104が軽圧下する鋳片300の幅は、未凝固部304を確実に軽圧下するためには、未凝固部304の幅と同じか、軽圧下の圧力が増加しない範囲で未凝固部304の幅よりも大きいことが好ましい。
なお、図3Aおよび3Bでは、軽圧下ロール100のロール部104が4つに分割されている例を示したが、本実施形態に係る軽圧下装置は、上記の例示に限定されない。本実施形態に係る軽圧下装置が有する軽圧下ロール100のロール部104は、2つ以上に分割されていればよく、未凝固部304の形状変化に対してより柔軟に対応するためには、より多く分割されていることが好ましい。
また、図3Aおよび3Bに示すように、対向ロール200のロール軸202は、鋳片幅方向に延伸された棒状の部材である。また、ロール部204は、鋳片幅方向で同一の径を有し、鋳片幅方向で一体化された円筒形状を有し、ロール軸202の軸方向と、ロール部204の軸方向とが一致するようにロール軸202の外周部に嵌合される。また、ロール軸202の両端は支持部材25に設けられた軸受け部(図示せず)によって軸支されており、ロール軸202およびロール部204は、鋳片幅方向を回転軸方向として一体に回転するように構成される。
このロール部204の形状により、対向ロール200は、軽圧下ロール100に対して基準面となる機能を果たす。具体的には、鋳片300は、鋳片幅方向で同一の径を有し、鋳片幅方向で一体化された1つのロール部204により、鋳片幅方向において均等な圧力で軽圧下されるため、鋳片300の厚み分布が抑制され、形状が良好になる。鋳造の後工程である圧延等は、鋳片300が矩形断面であることを前提としているため、このような対向ロール200を用いて鋳片300の形状を良好にした場合、後工程における鋳片300の歩留まりを向上させることができる。
なお、本実施形態に係る軽圧下装置は、上記で説明した対向ロール200に替えて、鋳片300の下側にも複数のロール部104が設けられた軽圧下ロール100を備えてもよい。このような場合、軽圧下装置は、鋳片300をロール部104が分割された軽圧下ロール100同士で挟み込んで軽圧下することになる。この時、複数のロール部104の鋳片幅方向における位置は、上下の軽圧下ロール100それぞれで同じ位置になることが好ましい。
鋳片300は、凝固部302と、未凝固部304とを含む。本実施形態に係る軽圧下装置によって軽圧下される鋳片300は、凝固末期の鋳片であり、例えば、鋳片の幅および厚みの中心に相当する位置の中心固相率が0.8以上1.0未満の鋳片である。本実施形態に係る軽圧下装置は、このような鋳片300に対して軽圧下することにより鋳片300の中心偏析を抑制することができる。
なお、凝固部302は、流動性を失い完全凝固した(すなわち、固相率が1.0である)鋳片である。凝固部302は、未凝固部304よりも固いため、本実施形態に係る軽圧下装置は、軽圧下時の圧力を増加させないために凝固部302を避けて未凝固部304を軽圧下する。
また、未凝固部304は、流動性を有し、完全凝固していない(すなわち、固相率が1.0未満である)鋳片である。本実施形態に係る軽圧下装置は、未凝固部304を軽圧下することにより不純物元素の流動を抑制し、中心偏析を抑制することができる。
ここで、図6を参照して、鋳片300における未凝固部304の形状を例示する。図6は、鋳片300における未凝固部304の形状を例示する側断面図である。本実施形態に係る軽圧下装置は、図6で例示した未凝固部304の形状変化に柔軟に対応することができるため、凝固部302を軽圧下せず、未凝固部304のみを適切に軽圧下することが可能である。
図6(a)に示す鋳片300は、鋳片幅方向の中央部に未凝固部304を有する鋳片である。このような場合、軽圧下ロール100は、ロール部104の間隔を調整することにより、ロール部104により軽圧下される幅を未凝固部304の幅と対応させることができる。
図6(b)に示す鋳片300は、鋳片幅方向の両端部に未凝固部304を有する鋳片である。このような場合、軽圧下ロール100は、ロール部104を2グループに分け、それぞれのグループのロール部104を未凝固部304に対応した位置に移動させることにより、未凝固部304を適切に軽圧下することができる。なお、分割されたロール部104の数が奇数である場合、例えば、上述した退避部112aにロール部104を1つ移動させることによって、複数のロール部104を2つのグループに分けることを可能にしてもよい。
図6(c)に示す鋳片300は、鋳片幅方向の中央部および両端部に未凝固部304を有する鋳片である。このような場合、軽圧下ロール100は、複数のロール部104を3グループに分け、それぞれのグループのロール部104を未凝固部304に対応した位置に移動させることにより、未凝固部304を適切に軽圧下することができる。なお、分割されたロール部104の数が偶数である場合、例えば、上述した退避部112aにロール部104を1つの移動させることによって、複数のロール部104を3つのグループに分けることを可能にしてもよい。
図6(d)に示す鋳片300は、鋳片幅方向の一方の端部に偏って未凝固部304を有する鋳片である。このような場合、軽圧下ロール100は、複数のロール部104を未凝固部304の位置に対応させて移動させることにより、未凝固部304を適切に軽圧下することができる。なお、図6(a)と同様に、軽圧下ロール100は、ロール部104の間隔を調整することにより、複数のロール部104により軽圧下される幅を未凝固部304の幅と対応させることができる。
図6(e)に示す鋳片300は、鋳片幅方向の両端部に未凝固部304が存在し、それぞれの未凝固部304の幅が異なる鋳片である。このような場合、軽圧下ロール100は、ロール部104を未凝固部304の幅に対応した数で2グループに分け、それぞれのグループのロール部104を未凝固部304に対応する位置に移動させることによって、未凝固部304を適切に軽圧下することができる。
以上説明したように、本実施形態に係る軽圧下装置50は、鋳片300の幅および厚みや未凝固部304の位置または形状が多様に変化する場合であっても。該未凝固部304の変化に柔軟に対応し、適切に未凝固部304を軽圧下することが可能である。
なお、第1の実施形態において、複数のロール部104の移動は、例えば、鋳片300の製造バッチごとに人力により、または図示しないモータ等からの動力により行われる。また、移動されたロール部104は、ロール軸102に対して着脱可能なスペーサによって位置決めされ、固定される。以下では、ロール部104の位置を固定するスペーサについて、図7を参照して説明する。図7は、ロール部104の位置を固定するスペーサ400の構造を示した説明図である。
図7に示すように、スペーサ400は、軽圧下ロール100のロール軸102に着脱自在な構造を有する。具体的には、スペーサ400は、一対の半環状部402、402と、ヒンジ部404と、一対の当接部406、406と、ボルト408とを備える。
半環状部402、402は、相互に対称な形状を有する半環状の部材であり、該半環状部402の形状および曲率は、軽圧下ロール100のロール軸102の外径に対応している。半環状部402、402の一端は、ヒンジ部404により相互に連結されている。これにより、半環状部402、402は、ヒンジ部404を中心として開閉可能となる。
また、半環状部402、402の他端には、それぞれ当接部406、406が設けられている。さらに、当接部406、406には図示しないボルト孔が貫通形成されている。このような構成により、図7(a)に示すように、半環状部402、402が閉じられたときに、一対の当接部406、406は、相互に当接し、該当接した当接部406、406をボルト408にて締結して固定することで、半環状部402、402は開かないように固定される。一方、図7(b)に示すように、ボルト408を外し、当接部406、406を離隔させることで、半環状部402、402は自由に開くことができる。
このような構成のスペーサ400は、軽圧下ロール100のロール軸102に対して、鋳片幅方向の適宜の位置に着脱可能である。したがって、かかるスペーサ400を上記ロール部104の両側に装着することにより、ロール軸102に装着されたロール部104を鋳片幅方向に固定することができる。
以上にて、本発明の第1の実施形態に係る軽圧下ロールの構成について詳しく説明を行った。
[1.4.ロール部の設計例]
以下では、上述した本発明の第1の実施形態に係る軽圧下ロール100におけるロール部104の一設計例について説明する。
例えば、下記の表1にて示した厚みおよび幅の異なる鋳片A〜Fを軽圧下することを検討する。なお、鋳片の凝固の様態としては、図6(a)で示した鋳片幅方向の中央部に未凝固部304が存在する場合、および図6(b)で示した鋳片幅方向の両端部に未凝固部304が存在する場合の2通りが主であるため、これらの場合について検討する。なお、以下では、図6(a)で示した凝固の様態をセンター凝固と称し、図6(b)で示した凝固の様態をメガネ凝固と称する。
一般的に、センター凝固の場合、鋳片幅方向の未凝固部304の幅は、鋳片幅から鋳片厚みを差し引いた値である。また、メガネ凝固の場合、鋳片幅方向の未凝固部304のそれぞれの幅は、センター凝固における未凝固部304の幅の半分である。したがって、鋳片A〜Fのそれぞれの未凝固部の幅は、下記の表1のとおりとなる。
表1からわかるように、鋳片A〜Fをそれぞれ軽圧下するためには、センター凝固において、幅700mm〜1150mmの未凝固部304を軽圧下する必要があり、メガネ凝固において、幅350mm〜575mmの未凝固部304を軽圧下する必要がある。
例えば、軽圧下ロール100に設けられたロール部104の個数を4つとすると、センター凝固時の未凝固部304の最小幅(700mm)からロール部104の幅は、700mm/4=175mmと算出することができる。また、センター凝固時の未凝固部304の最大幅(1150mm)におけるロール部104の間隔は、(1150mm−175mm×4)/3=150mmと算出される。センター凝固時において未凝固部304が最大幅となる場合(鋳片E)でも、ロール部104の間隔(150mm)がロール部104の幅(175mm)よりも小さくなるため、軽圧下ロール100は、センター凝固した鋳片A〜Fを適切に軽圧下することができる。
また、メガネ凝固において、上記で算出したロール部の幅(175mm)にて鋳片A〜Fを適切に軽圧下することができるか確認する。ロール部104の個数を4つであるため、メガネ凝固時の未凝固部304は、それぞれ2つのロール部104によって軽圧下される。ここで、メガネ凝固時の未凝固部304が最小幅(350mm)である場合(鋳片B)、350mm≧175mm×2である。したがって、メガネ凝固時の未凝固部304の最小幅が2つのロール部104の幅の和以上となるため、軽圧下ロール100は、メガネ凝固した鋳片A〜Fを適切に軽圧下することが可能であると確認できる。
一方、従来の軽圧下ロールでは、特定の鋳片の幅および厚みに合わせてロール部の形状が設計される。例えば、鋳片Dの鋳造量が最も多い場合、鋳片Dの幅および厚みにて軽圧下ロールにおけるロール部の形状が設計される。ここで、鋳片Dの未凝固部の幅よりも未凝固部の幅が大きい鋳片C、E、Fを鋳片Dの幅および厚みで設計されたロール部にて軽圧下した場合、軽圧下されていない未凝固部が発生し、中心偏析が生じるため、鋳片の品質が低下する。また、鋳片Dの未凝固部の幅よりも未凝固部の幅が小さい鋳片A、Bを鋳片Dの幅および厚みで設計されたロール部にて軽圧下した場合、凝固部を軽圧下しなくてはいけないため圧下力が不足し、軽圧下することができない。
以上で説明した鋳片A〜Fにおける本発明に係る軽圧下ロール(本発明の設計例)と、従来の軽圧下ロール(従来例)との鋳片の品質を以下の表2にまとめる。表2において、「○」は鋳片の品質が良好であることを示し、「△」は鋳片の一部で品質が低下していることを示し、「×」は適切に軽圧下されておらず、鋳片の全体で品質が低下していることを示す。
表2からわかるように、本発明に係る軽圧下ロール100は、異なる幅および厚みを有する鋳片A〜Fがセンター凝固およびメガネ凝固した場合のそれぞれに対して、適切に未凝固部304を軽圧下し、良好な品質の鋳片を製造できることがわかる。一方、従来の軽圧下ロールは、設計時に用いた幅および厚みを有する鋳片以外では、適切に未凝固部304を軽圧下することができないため、鋳片の品質が劣化することがわかる。
以上説明したように、本実施形態に係る軽圧下装置は、軽圧下ロール100に独立して移動可能に設けられたロール部104により、鋳片300における未凝固部304の形状変化に柔軟に対応することができるため、未凝固部304を適切に軽圧下することができる。
<2.第2の実施形態>
次に、図8を参照して、本発明の第2の実施形態に係る軽圧下装置について説明する。図8は、本発明の第2の実施形態に係る軽圧下装置の構造の一部を示した斜視図である。
本発明の第2の実施形態に係る軽圧下装置は、第1の実施形態に対して、支持部材120が移動機構128を備え、移動機構128によりロール部124が移動される点が相違する。以下、かかる相違点を中心に説明し、第1の実施形態と同様の構成の説明を省略する。なお、図8では、支持部材120は、鋳片幅方向に一列に並ぶ軽圧下ロール123を支持する構成のみを抽出して示している。
図8に示すように、本実施形態に係る軽圧下装置は、支持部材120と、軽圧下ロール123とを備える。また、支持部材120は、支持レール122と、ロール収容部126と、移動機構128と、を備え、軽圧下ロール123は、ロール部124と、ロール軸125と、を備える。なお、本実施形態に係る軽圧下ロール123は、無駆動式ロールである。
支持部材120が備える支持レール122は、鋳片幅方向に延伸された2本の部材からなるレール状の部材であり、支持レール122の両端は、軽圧下装置の図示しない上フレームまたは下フレームと連結されている。ロール収容部126は、支持レール122の下方に懸吊されたコの字形状の部材であり、該コの字形状の中に軽圧下ロール123を収容する。また、ロール収容部126は、収容した軽圧下ロール123のロール軸125を軸受け部(図示せず)にて回転可能に支持する。
移動機構128は、支持レール122上に架設されて、ロール収容部126を支持レール122から吊り下げるように支持する。また、移動機構128は、支持レール122に沿って鋳片幅方向に移動可能なアクチュエータを含み、例えば、電動モータ等の動力により鋳片幅方向に移動する。したがって、移動機構128は、支持レール122に沿って鋳片幅方向に移動することにより、移動機構128によって支持されているロール収容部126、およびロール収容部126に収容された軽圧下ロール123を鋳片幅方向に移動させることができる。
軽圧下ロール123が備えるロール軸125は、鋳片幅方向に延伸された棒状の部材である。また、ロール部124は、略円筒形状を有し、ロール部124の軸方向がロール軸125の軸方向と一致するようにロール軸102の外周部に嵌合される。ロール軸125の両端はロール収容部126に軸受け部(図示せず)によって軸支されており、ロール軸125およびロール部124は、鋳片幅方向を回転軸方向として一体に回転するように構成される。
以上説明したように、本実施形態に係る軽圧下装置は、移動機構128により軽圧下ロール123のロール部124を鋳片幅方向にそれぞれ独立して移動させることができる。よって、本実施形態に係る軽圧下装置は、鋳片300の製造バッチ間だけでなく鋳片300の製造中においても、軽圧下ロール123のロール部124を移動させ、鋳片300に対して軽圧下する位置を変更することができる。
したがって、本実施形態に係る軽圧下装置は、鋳片300の製造中に未凝固部304の形状が変化した場合であっても、移動機構128により鋳片300に対して軽圧下する位置を変更し、未凝固部304を適切に軽圧下することができる。
<3.第3の実施形態>
次に、図9〜10Bを参照して、本発明の第3の実施形態に係る軽圧下装置について説明する。図9は、本発明の第3の実施形態に係る軽圧下装置が有する制御に関する内部構成を示したブロック図である。
本発明の第3の実施形態に係る軽圧下装置は、第2の実施形態の構成に加えて、さらに制御部を備える。本発明の第3の実施形態に係る軽圧下装置は、制御部によって鋳片の幅および厚みや鋳片の状態から鋳片の幅方向における未凝固部の位置や形状を予測し、予測した未凝固部の位置に合わせて軽圧下ロール123のロール部124の位置を制御するものである。以下では、かかる特徴を中心に説明を行い、第2の実施形態と同様の構成の説明を省略する。
図9に示すように、本実施形態に係る軽圧下装置500は、測定部510と、予測部522および位置制御部524を含む制御部520とを備える。軽圧下装置500は、測定部510が鋳片300より測定した情報を用いて鋳片の幅方向における未凝固部の位置や形状を予測し、位置制御部524によって、軽圧下ロール123が予測した未凝固部の位置を軽圧下するように移動機構128を制御する。なお、鋳片300については、第1の実施形態で説明したとおりであり、移動機構128については、第2の実施形態で説明したとおりであるので、ここでの説明を省略する。
測定部510は、例えば、各種センサを備え、鋳片300の情報を測定し、予測部522は、測定部510が測定した情報を用いて軽圧下ロール123の鋳造方向の位置における鋳片300の未凝固部304の形状を予測する。
測定部510は、例えば、製造する鋳片300の幅および厚み、二次冷却帯9における冷却水を噴出するスプレーの配置および冷却水流量、支持ロールの配置、鋳片300における冷却水のたまり水状態を測定する。なお、測定部510は、上記の情報のうち、軽圧下装置500または連続鋳造装置1において別途設定されている情報(例えば、製造する鋳片300の幅および厚み、二次冷却帯9におけるスプレーの配置および冷却水流量、支持ロールの配置など)については、該設定を記憶している連続鋳造装置1の記憶部等から取得してもよい。
このような場合、予測部522は、測定した鋳片300の幅および厚みから決定される未凝固部304の形状をデータベースから取得し、取得した未凝固部の形状を軽圧下ロール123の鋳造方向の位置における鋳片300の未凝固部304の形状として予測してもよい。ここで、データベースから取得した鋳片300の幅および厚みから決定される未凝固部304の形状とは、例えば、所定の幅および厚みの鋳片300において最も形成される頻度が高い未凝固部の形状である。なお、予測部522は、二次冷却帯9におけるスプレーの配置および冷却水流量、支持ロールの配置、鋳片300における冷却水のたまり水状態から鋳片300の二次冷却の状態を判断し、取得した典型的な未凝固部の形状を鋳片300の二次冷却の状態を用いてFEMの計算により補正することで、鋳片300の未凝固部304の形状を予測してもよい。
また、測定部510は、例えば、放射温度計により鋳片300の幅方向における表面温度を測定してもよい。このような場合、予測部522は、鋳片幅方向において、表面温度が低い領域は凝固が進行しており、表面温度が高い領域は未凝固であると判断して、軽圧下ロール123の鋳造方向の位置における鋳片300の未凝固部304の形状を予測してもよい。
また、測定部510は、例えば、鋳片300に対して電磁波を照射し、反射波の分布を測定してもよい。このような場合、鋳片300に対して照射された電磁波は、鋳片300の未凝固部304と凝固部302との界面で反射するため、予測部522は、反射波の分布を解析することにより鋳片300の未凝固部304の形状を予測することができる。
さらに、測定部510は、例えば、連続鋳造装置1の鋳造方向の上流に位置する他の軽圧下ロールに備えられた歪みゲージを用いて、他の軽圧下ロールのロール部のそれぞれが鋳片300から受ける反力を測定してもよい。このような場合、予測部522は、鋳片幅方向において、鋳片300から受ける反力が大きい位置は凝固が進行しており、鋳片300から受ける反力が小さい位置は未凝固であると判断して、下流の軽圧下ロール123の鋳造方向の位置における鋳片300の未凝固部304の形状を予測してもよい。
位置制御部524は、予測部522が予測した鋳片300の未凝固部304の形状に対応した位置をロール部124が軽圧下することができるように移動機構128を制御する。例えば、位置制御部524は、移動機構128の電動モータ等の動力を制御することにより、予測部522が予測した鋳片300の未凝固部304の形状に対応する位置に各軽圧下ロール123のロール部124をそれぞれ移動させる。
なお、予測部522および位置制御部524を含む制御部520は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)などのハードウェアによって構成される。具体的には、CPUは、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って制御部520が行う制御を実行する。また、ROMは、CPUが使用するプログラム、演算パラメータを記憶し、RAMは、CPUの実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。
ここで、図10Aおよび10Bを参照して、位置制御部524が行う軽圧下ロール123のロール部124に対する位置制御をさらに具体的に説明する。図10Aおよび10Bは、本実施形態に係る軽圧下装置が有する軽圧下ロール123におけるロール部124の配置の一例を示す説明図である。なお、図10Aおよび10Bでは、上から下へ向かう方向が、連続鋳造装置における鋳片300の鋳造方向である。なお、1つの支持部材120に支持された各軽圧下ロール123のロール部124については、それぞれ同一の符号を付した。
図10Aおよび10Bに示すように、鋳片300は、凝固部302と、未凝固部304とを有する。また、鋳片300は、情報取得位置512にて取得された情報に基づいて位置制御されたロール部124a〜124hにより軽圧下されている。
凝固部302は、完全凝固した鋳片であり、具体的には、中心固相率が1.0の鋳片である。また、未凝固部304は、未凝固の鋳片であり、具体的には、中心固相率が1.0未満の鋳片である。なお、未凝固部304は、中心固相率が0.8以上1.0未満である凝固末期の鋳片を含む。
ここで、測定部510は、情報取得位置512にて鋳片300の情報を取得し、予測部522は、取得された鋳片300の情報に基づいて、各軽圧下ロール123の鋳造方向の位置における鋳片300の未凝固部の形状を予測する。また、位置制御部524は、移動機構128を制御し、予測された未凝固部304の形状に対応した位置に各軽圧下ロール123が備えるロール部124a〜124hを移動させる。
例えば、位置制御部524は、図10Aおよび10Bに示すように、各軽圧下ロール123におけるロール部の位置を制御してもよい。
例えば、図10Aで示す鋳片300は、センター凝固の鋳片であり、鋳片幅方向の中央部に存在する未凝固部304は鋳片300の鋳造方向に進むにつれて幅が縮小している。したがって、それぞれの軽圧下ロール123に備えられたロール部の間隔は、鋳片300の鋳造方向に進むにつれて狭くなる。具体的には、ロール部124c同士の間隔は、ロール部124b同士の間隔より狭く、ロール部124b同士の間隔は、ロール部124a同士の間隔より狭い。また、ロール部124dでは、未凝固部304の幅が十分小さいため、2つのロール部124dを上述した退避部112aに移動させ、2つのロール部124dにて軽圧下している。
また、図10Bで示した鋳片300は、メガネ凝固の鋳片であり、鋳片幅方向の両端部にそれぞれ存在する未凝固部304は、鋳片300の鋳造方向に進むにつれて幅が縮小している。したがって、それぞれの軽圧下ロール123は、ロール部を2グループに分けてそれぞれの未凝固部304を軽圧下している。また、各グループのロール部同士の間隔は、鋳片300の鋳造方向に進むにつれ狭くなる。具体的には、右側2つのロール部124gの間隔は、右側2つのロール部124fの間隔より狭く、右側2つのロール部124fの間隔は、右側2つのロール部124eの間隔より狭い。また、ロール部124hでは、未凝固部304の幅が十分小さいため、2つのロール部124hを上述した退避部112aに移動させ、それぞれ1つのロール部124hにて軽圧下している。
以上説明したように、本実施形態に係る軽圧下装置は、鋳片300の板厚および幅、または測定部510によって測定した鋳片300の情報に基づいて、軽圧下ロール123の鋳造方向の位置における鋳片300の未凝固部の形状を予測することができる。また、本実施形態に係る軽圧下装置は、移動機構128を制御することにより予測された未凝固部304の形状に対応した位置に軽圧下ロール123が備えるロール部124をそれぞれ独立して移動させることができる。これにより、本実施形態に係る軽圧下装置は、鋳片300の凝固の様態に合わせて、動的に軽圧下ロール123が備えるロール部124の位置をそれぞれ制御することができるため、常に未凝固部304を適切に軽圧下することができる。
<4.まとめ>
以上説明したように、本発明の第1の実施形態に係る軽圧下装置によれば、軽圧下ロール100におけるロール部の鋳片幅方向の位置を自由に移動させることができる。したがって、本発明の第1の実施形態に係る軽圧下装置は、鋳片300の未凝固部304の形状変化に対応して、適切に未凝固部304を軽圧下することができる。
また、本発明の第2の実施形態に係る軽圧下装置は、移動機構128によって軽圧下ロール123のロール部124を鋳片幅方向に移動させることができる。したがって、本発明の第2の実施形態に係る軽圧下装置は、鋳片300の製造中に未凝固部304の形状が変化した場合であっても、移動機構128によって軽圧下ロール123のロール部124の位置を移動させることで鋳片の製造を止めずに適切に未凝固部304を軽圧下することができる。
さらに、本発明の第3の実施形態に係る軽圧下装置は、鋳片300の板厚および幅、または鋳片300から測定した情報等を用いて鋳片300の未凝固部304の形状を予測することができる。したがって、本発明の第3の実施形態に係る軽圧下装置は、予測した未凝固部304の形状に対応する位置に軽圧下ロール123のロール部124を移動させることによって、常に適切に未凝固部304を軽圧下することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。