(実施の形態1)
まず図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態1における電子部品実装装置1の構造について説明する。電子部品実装装置1は基板2に電子部品Pを実装する機能を有している。基台1aの上面には基板搬送機構3がX方向(基板搬送方向)に配設されている。基板搬送機構3は、実装対象の基板2を搬送して電子部品Pの実装作業が行われる実装作業位置に位置決めする。基板搬送機構3の両側方には、トレイフィーダ4と、複数のテープフィーダ40とがそれぞれ配設されている。トレイフィーダ4は、電子部品Pをマトリクス状に格納したトレイ5を後述する実装ヘッド8に供給する機能を有している。トレイフィーダ4の詳細は後述する。
基台1aのX方向の一端部には、サーボモータ駆動のY軸移動機構6YがX方向と水平面内において直交するY方向に配設されている。このY軸移動機構6Yには、同様にサーボモータ駆動の2基のX軸移動機構6XがY方向に移動自在に結合されている。それぞれのX軸移動機構6Xには移動プレート7がX方向に移動自在に装着されており、移動プレート7には実装ヘッド8が取り付けられている。Y軸移動機構6Y及びX軸移動機構6Xは、実装ヘッド8をXY方向に移動させるヘッド移動機構6を構成する。ヘッド移動機構6を駆動することにより、実装ヘッド8はトレイフィーダ4によって所定の部品供給位置に供給されたトレイ5と、基板搬送機構3によって所定の実装作業位置に位置決めされた基板2との間を移動する。
実装ヘッド8は複数の単位移載ヘッド9を備えた多連型ヘッドであり、各単位移載ヘッド9の下端部には吸着ノズル10(図2)が装着されている。吸着ノズル10は、単位移載ヘッド9に内蔵されたノズル駆動機構によって上下方向(Z方向とする)の移動及びZ軸回りの回転動作を行う。また、吸着ノズル10は真空吸引機構によって電子部品Pの吸着及び解除を行う。吸着ノズル10、ノズル駆動機構及び真空吸引機構は、トレイ5に格納された電子部品Pを吸着する吸着機構11(図4)を構成する。また、実装ヘッド8、ヘッド移動機構6及び吸着機構11は、トレイ5に格納された電子部品Pを吸着ノズル10によって吸着して基板2に実装する部品実装機構12(図4)を構成する。
真空吸引機構の真空経路には流量センサ13(図4)が設けられており、吸着ノズル10の吸引口から流入するエアの流量を計測する。エア流量の計測結果は、後述する吸着ミス検出処理部34(図4)によって電子部品Pの吸着ミスを検出する際に用いられる。
移動プレート7には、X軸移動機構6Xの下面側に位置して第1の認識カメラ(認識カメラ)14が設けられている。第1の認識カメラ14は実装ヘッド8と一体的に移動し、基板2及びトレイ5を上方から撮像する。トレイフィーダ4と基板搬送機構3との間には第2の認識カメラ15が設けられており、その上方を移動する実装ヘッド8に保持された電子部品Pを下方から撮像する。
次に図1及び図2を参照して、トレイフィーダ4について説明する。トレイフィーダ4は、複数の車輪20によって移動自在な台車21上に、トレイ収納部22とトレイ移動機構23を配設して構成される。トレイ収納部22には、複数のトレイ保持棚24が上下方向に設けられている。トレイ保持棚24には、パレット25に保持された状態のトレイ5が水平方向に出し入れ自在に収納されている。トレイ5は、パレット25に保持されたままトレイフィーダ4内を移動する。
図3において、トレイ5には部品格納部5aがマトリクス状に設けられており、それぞれの部品格納部5aに1個の電子部品Pが格納される。本実施の形態においては、図3に示すトレイ5の長手方向(紙面横方向)を行方向とし、長手方向と直交する方向(紙面縦方向)を列方向とする。図3に示すように、トレイ5には、複数の行にわたって複数の電子部品Pが行方向に並ぶことによって電子部品Pがマトリクス状に格納される。通常、吸着ノズル10は矢印a,b,cに示す順序で全ての部品格納部5aにアクセスし、電子部品Pを吸着する。
トレイ5は略矩形状に成形されており、一のコーナ部にはトレイ5の収納方向を指し示すため略45度にカットされた切り欠き部26が形成されている。オペレータは、切り欠き部26のある長辺側を電子部品実装装置1の中心側に向けた状態で(図1)、トレイ保持棚24にトレイ5を収納する。なお、トレイ5は必ずしも全ての部品格納部5aに電子部品Pが格納された満杯の状態でトレイフィーダ4にセットされるわけではない。すなわち、実装基板を製造する製造メーカは、生産計画に応じて満杯の状態よりも少ない数の電子部品Pを格納したトレイ5を部品メーカに発注し、トレイフィーダ4にセットする場合がある。
図2において、トレイ移動機構23は、トレイ収納部22から引き出されたトレイ5を所定の位置まで移動させる機能を有しており、昇降自在なトレイ保持ステージ27を備えている。トレイ保持ステージ27は、トレイ収納部22からパレット25ごと引き出されたトレイ5を保持する。トレイ移動機構23を駆動してトレイ保持ステージ27を昇降させることにより、電子部品Pを実装ヘッド8に供給するための部品供給位置T1までトレイ5を移動させることができる。トレイ5を部品供給位置T1まで移動させた状態において、実装ヘッド8が所望の部品格納部5aの上方まで移動し、ここで吸着ノズル10が所定の高さ位置まで下降することによって電子部品Pは吸着される。
トレイ保持ステージ27の上面にはトレイ出し入れ機構28(図4)が設けられている。トレイ出し入れ機構28は、トレイ保持棚24からトレイ5をパレット25ごと水平方向に引き出してトレイ保持ステージ27に移し替える機能を有する。トレイ5をトレイ保持棚24に戻す際には、トレイ出し入れ機構28によってトレイ保持ステージ27からトレイ5をパレット25ごとトレイ保持棚24側へ移動させる。
次に図4を参照して、電子部品実装装置1の制御系について説明する。電子部品実装装置1に備えられた制御部30は、記憶部31、機構駆動部32、認識処理部33、吸着ミス検出処理部34、及び吸着順序変更処理部35を含んで構成される。また制御部30は、基板搬送機構3、吸着機構11、部品実装機構12、流量センサ13、第1の認識カメラ14、第2の認識カメラ15、トレイ移動機構23、トレイ出し入れ機構28と外部で接続されている。
記憶部31は、実装データ31a及びトレイ情報31bを記憶する。実装データ31aは基板2に電子部品を実装するためのデータであり、電子部品実装装置1を構成する各機構の制御パラメータ、基板2及び電子部品Pの種類やサイズ、基板2に設定された電子部品実装位置に関する情報を含む。トレイ情報31bは吸着ノズル10によってトレイ5から電子部品Pを吸着するためのデータであり、トレイ5内における電子部品Pの配列に関する情報、吸着順序に関する情報を含む。電子部品Pの配列に関する情報には、トレイ5に格納されている電子部品Pの数、トレイ5に設定された行数、行方向における電子部品Pの数、各部品格納部5aにおける電子部品Pの吸着位置が含まれる。
機構駆動部32は、実装データ31aに基づいて基板搬送機構3、吸着機構11、部品実装機構12を制御することにより、実装作業位置に位置決めされた基板2に電子部品Pを実装する。このとき、吸着ノズル10は後述する吸着順序の変更がない限り、トレイ情報31bに基づいてトレイ5から電子部品Pを所定の順序(図3に示す矢印a,b,c)に従って吸着する。また、機構駆動部32はトレイ移動機構23及びトレイ出し入れ機構28を制御することにより、トレイ保持ステージ27を昇降させ、またトレイ保持棚24からトレイ5を引き出す。
認識処理部33は、第1の認識カメラ14による撮像を介して取得した画像データを認識処理することにより、実装作業位置に位置決めされた基板2の位置を検出する。また、認識処理部33は、第2の認識カメラ15による撮像を介して取得した画像データを認識処理することによって、吸着ノズル10に吸着された電子部品Pの位置を検出する。
吸着ミス検出処理部34は、流量センサ13によるエア流量の計測結果に基づいて、吸着ノズル10に電子部品Pが正常に吸着されなかった吸着ミスを検出する。ここでの吸着ミスには、電子部品Pが存在しないトレイ5上の部品格納部5aで吸着ノズル10が吸着動作を行ったことで、吸着ノズル10に電子部品Pが吸着されないケースも含む。
吸着順序変更処理部35は、吸着ミス検出処理部34による吸着ミスの検出結果に基づいて、トレイ5における電子部品Pの吸着順序を変更する。すなわち、同じ行における複数の吸着位置で吸着ミスが所定回数だけ連続して発生したとき、その行には電子部品Pが存在しないものと判断し、トレイ情報31bを無視して電子部品Pの吸着順序を変更する。そして、吸着順序変更処理部35は変更後の吸着順序に基づいて吸着ノズル10の移動を制御する。吸着ノズル10は変更された吸着順序に従って電子部品Pを吸着する。
次に、図3に示すトレイ5及び図5〜図8のフローチャートを参照して、電子部品実装処理について説明する。図3に示すトレイ5においては、行番号を紙面下側から順番に第1行、第2行、第3行とし、列番号を紙面右側から順番に第1列、第2列・・・第5列とする。そして、部品格納部5aの位置は行番号と列番号を組み合わせて、例えば「第2行第3列」のようにあらわす。また、トレイ情報31bに含まれる吸着順序によれば、吸着ノズル10は第1行第1列の部品格納部5a(1)に格納されている電子部品PAから行方向である矢印a,b,cに沿って順次吸着し、第3行第5列の部品格納部5a(15)に格納されている電子部品POを最後に吸着することとする。
まず、吸着ノズル10によって、所定の吸着位置で電子部品Pを吸着する。(ST1:吸着工程)。すなわち、吸着ノズル10は吸着対象となる電子部品Pを格納した部品格納部5aの上方まで移動する。そして、吸着ノズル10は部品格納部5aに対して所定の吸着高さ位置まで下降した後、真空吸引を行う。このとき、電子部品Pが部品格納部5aに格納されていれば、吸着ノズル10は電子部品Pを吸着する。このように吸着工程(ST1)では、トレイ5上の所定行の電子部品Pを吸着する。図3に示すトレイ5においては、吸着ノズル10は第1行第1列の部品格納部5a(1)に格納された電子部品PAをはじめに吸着する。
次いで、吸着ミス検出処理部34によって吸着ミスの検出を行う(ST2:吸着ミス検出工程)。吸着ミスの検出は、吸着ノズル10が吸着高さ位置から所定の高さ位置まで上昇する間の任意のタイミングで行ってよい。吸着ミスが検出されなかった場合、換言すれば吸着ノズル10が電子部品Pを吸着した場合、その吸着した電子部品Pを基板2に実装する(ST3:実装工程)。すなわち、吸着ノズル10は実装作業位置に位置決めされた基板2の上方まで移動し、ここで基板2に対して昇降することによって電子部品Pを実装する。
電子部品Pを実装後、制御部30はトレイ5に格納された電子部品Pの残数がゼロになったかを判断する(ST4:残数判断工程)。ここでの判断は、例えば直近に吸着した電子部品Pの吸着位置に基づいて行う。すなわち、電子部品Pを吸着したときの吸着ノズル10のXY座標が、トレイ5内において最後に吸着されるべき電子部品POを格納した部品格納部5a(15)に対応しているとき、制御部30は電子部品Pの残数がゼロになったと判断する。
電子部品Pの残数がゼロではないとき、吸着ノズル10は次の吸着位置で電子部品Pを吸着する(ST5:吸着工程)。例えば、前工程で第1行第1列の部品格納部5a(1)に格納された電子部品PAを基板2に実装した場合、吸着ノズル10は次の吸着位置である第1行第2列の部品格納部5a(2)の上方まで移動し、電子部品PBを吸着する。そして、(ST2)に戻って吸着ミス検出処理部34による吸着ミスの検出を再び行う。その一方で、電子部品Pの残数がゼロであるとき、そのトレイ5を用いた電子部品実装処理は終了する。
(ST2)において吸着ミスが検出された場合、電子部品Pの吸着順序を変更するか否かの判定がなされる(ST6:吸着順序変更判定工程)。ここで図6を参照して、吸着順序変更処理部35によって実行される吸着順序変更判定処理について説明する。まず、吸着順序変更処理部35は、吸着ミスが連続して所定回数だけ発生したかを判断する(ST11:吸着ミス連続発生回数判断工程)。ここでの判断方法は、吸着ミス検出処理部34によって吸着ミスが連続して検出された回数に基づいて行う。この工程での判断基準となる所定回数は、作業員によって予め設定される。
吸着ミスが連続して所定回数だけ発生していないとき、吸着順序変更処理部35は「吸着順序変更なし」と判定する。その一方で、吸着ミスが連続して所定回数だけ発生しているとき、吸着順序変更処理部35は吸着ミスが発生した複数の吸着位置が同じ行であるかを判断する(ST12:吸着位置判断工程)。例えば、第1行第3列、第4列で吸着ミスが発生した場合には、吸着順序変更処理部35は同じ行であると判断する。その一方で、第1行の最後の列である第5列と、第2行の最初の列である第1列で吸着ミスが発生した場合には、吸着順序変更処理部35は同じ行でないと判断する。吸着ミスが発生した複数の吸着位置が同じ行ではないとき、吸着順序変更処理部35は「吸着順序変更なし」と判定する。
その一方で、複数の吸着位置が同じ行であるとき、吸着順序変更処理部35はその行がトレイ5における最後の行であるか判断する(ST13:行判断工程)。図3に示すトレイ5では第3行がこれに該当する。前述の工程で判断の対象となる行が最後の行であるとき、吸着順序変更処理部35は「吸着順序変更なし」と判定する。その一方で最後の行ではないとき、吸着順序変更処理部35は「吸着順序変更」と判定する。以上の工程を経て吸着順序変更判定処理は終了する。
図5のフローチャートに戻る。制御部30は、吸着順序変更判定工程(ST6)における判定結果を確認する(ST7:判断結果確認工程)。判定結果が「吸着順序変更なし」である場合、(ST4)に戻る。例えば、第1行第2列の部品格納部5a(2)に格納された電子部品Pを実装した後に第1行第3列の部品格納部5a(3)において吸着ミスが発生した場合、吸着順序の変更はないものとして吸着ノズル10は第1行第4列の電子部品Pを吸着する。
その一方で判定結果が「吸着順序変更」である場合、制御部30(吸着順序変更処理部35)は吸着順序を変更して電子部品Pの実装処理を行う(ST8:吸着順序変更後実装処理工程)。次に図7のフローチャートを参照して、吸着順序変更後の電子部品実装処理について説明する。まず、制御部30は吸着ミスが連続して発生した複数の吸着位置のうち、最初に吸着ミスが発生した吸着位置にフラグを立てる(ST21:フラグ立て工程)。例えば、第1行第3列、第4列の部品格納部5a(3),(4)において吸着ミスが連続して発生し、且つ吸着順序変更の判定基準となる吸着ミスの連続発生回数を「2」に設定している場合、制御部30は第1行第3列にフラグを立てる。
次いで、吸着ノズル10はフラグを立てた行(すなわち吸着ミスが連続して発生した行)をスキップして次の行に移行し(ST22:次行移行工程)、第1列の電子部品Pを吸着する(ST23:吸着工程)。そして、吸着ノズル10は電子部品Pを基板2に実装する(ST24:実装工程)。このように、実施の形態1における「吸着順序の変更」は、吸着ミスが所定回数だけ連続して発生した行をスキップして吸着ノズル10が次の行へ移行する動作を含む。
電子部品Pを実装後、制御部30は次の吸着位置がフラグに対応する吸着位置であるかを判断する(ST25:吸着位置判断工程)。ここでの判断は、次に吸着すべき電子部品Pの列がフラグを立てた列と一致するか否かに基づいて行う。次の吸着位置がフラグに対応する吸着位置である場合、その行がトレイ5において最後の行であるかを判断する(ST26:行判断工程)。最後の行ではない場合には次の行に移行する(ST22)。その一方で最後の行である場合、そのトレイ5を用いた電子部品実装作業は終了する。(ST25)において、次の吸着位置がフラグに対応する吸着位置でない場合、吸着ノズル10は次の吸着位置で電子部品を吸着し(ST27:吸着工程)、電子部品Pを基板2に実装する(ST24)。
次に図8〜図10を参照して、トレイ5から電子部品Pを吸着する具体的な動作例について説明する。ここでは図8(a)に示すように、各行第3列目以降の部品格納部5aに電子部品Pが格納されていないトレイ5を対象として説明する。まず図8(b)に示すように、吸着ノズル10は最初の吸着対象である第1行第1列の部品格納部5a(1)に格納された電子部品PAを吸着し、基板2に実装する。次いで図8(c)に示すように、吸着ノズル10は第1行第2列の部品格納部5a(2)に格納された電子部品PBを吸着し、基板2に実装する。
次いで図9(a)に示すように、吸着ノズル10は次の吸着位置である第1行第3列の部品格納部5a(3)において電子部品Pの吸着動作を実行するが、この部品格納部5a(3)には電子部品Pが存在しないことから吸着ミスが検出される。次いで図9(b)に示すように、吸着ノズル10は次の吸着位置である第1行第4列の部品格納部5a(4)において電子部品Pの吸着動作を実行するが、この部品格納部5a(4)にも電子部品Pが存在しないことから吸着ミスが再び検出される。このとき、吸着ミスが2回連続して発生したことになる。
ここで、吸着順序変更の判定基準となる吸着ミスの連続発生回数を「2」と設定しているとき、第1行第3列と第4列は行が同じであり、且つ第1行はトレイ5において最後の行ではない。したがって、吸着順序変更処理部35は第1行第3列目以降には電子部品Pがないものと判断して、電子部品Pの吸着順序を変更する。これにより、制御部30は最初に吸着ミスが発生した吸着位置である第1行第3列にフラグを立てる。
吸着順序の変更を受け、吸着ノズル10は第1行をスキップして第2行における電子部品Pの吸着に移行する。すなわち図9(c)に示すように、吸着ノズル10は第2行第1列の部品格納部5a(6)に格納された電子部品PCを吸着し、基板2に実装する。次いで図10(a)に示すように、吸着ノズル10は第2行第2列の部品格納部5a(7)に格納された電子部品PDを吸着し、基板2に実装する。そして、通常であれば次に吸着ノズル10は次の吸着位置である第2行第3列の部品格納部5a(8)において吸着動作を行うが、第3列は第1行においてフラグを立てた列と同じである。したがって、吸着ノズル10は第2行第3列目以降の部品格納部5a(8),(9),(10)には電子部品Pがないものとして吸着動作を実行せず(第2行をスキップ)、第3行における電子部品Pの吸着に移行する。
すなわち図10(b)に示すように、吸着ノズル10は第3行第1列の部品格納部5a(11)に格納された電子部品PEを吸着し、基板2に実装する。次いで図10(c)に示すように、吸着ノズル10は第3行第2列の部品格納部5a(12)に格納された電子部品PFを吸着し、基板2に実装する。そして、次の吸着位置である第3行第3列は第1行でフラグを立てた列と同じであり、さらに第3行は最後の行である。したがって、吸着ノズル10は吸着動作を行うことなくこのトレイ5を対象とした電子部品実装作業を終了する。
以上説明したように、実施の形態1における電子部品実装方法は、複数の行にわたって複数の電子部品Pが行方向に並ぶことによってマトリクス状に格納されたトレイ5から、吸着ノズル10によって電子部品Pを行方向に沿って順次吸着して基板2に実装するものであり、トレイ5上の所定行の電子部品Pを吸着する吸着工程と、吸着した電子部品Pを基板2に実装する実装工程を含んでいる。そして、吸着工程において吸着ミスが少なくとも2回以上連続して発生した場合、所定行には電子部品Pがないと判断して次の行の電子部品Pの吸着に移行するようにしている。これにより、電子部品Pが格納されていない吸着位置での吸着動作がスキップされてタクトロスの発生を抑制することができる。また、所定行(第1行)の次の行以降の各行(第2行、第3行)においては、所定行(第1行)において連続して吸着ミスが発生した複数の吸着位置(第3列、第4列)のうち、最初に発生した吸着位置(第3列)に対応する吸着位置以降(第3列、第4列、第5列)に設定された全ての吸着位置に対する吸着をスキップして次の行の吸着に移行することで、電子部品Pの吸着動作の効率をさらに向上させることができる。
(実施の形態2)
次に図11、図12及び図13を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。なお、実施の形態1と同一の構成については説明を省略する。実施の形態2においては、吸着順序変更判定処理及び吸着順序変更後の電子部品実装処理の内容が実施の形態1と一部で異なる。まずは図11を参照して、吸着順序変更判定処理について説明する。
トレイ5から電子部品Pを吸着して基板2に実装する過程で吸着ミスが検出された場合(図5に示す(ST2))、第1の認識カメラ14を用いて吸着ミスが検出された吸着位置を認識する(ST31:吸着位置認識工程)。すなわち、第1の認識カメラ14は吸着ミスが発生した部品格納部5aの上方まで移動し、ここで部品格納部5aを撮像する。そして、認識処理部33は撮像データを認識処理することにより、吸着ミスが発生した吸着位置を認識する。このように吸着位置認識工程(ST31)では、吸着工程において吸着ミスが発生した場合、当該吸着ミスが発生した吸着位置を第1の認識カメラ14によって認識する。
次いで、吸着順序変更処理部35は吸着位置の認識結果に基づいて吸着位置に電子部品Pがあるか否かを判断する(ST32:部品有無判断工程)。これにより、吸着ミスの具体的な内容が、吸着位置に電子部品Pが存在しているにもかかわらず何らかの理由により吸着できなかったものであるか否かが特定される。認識の結果、吸着位置に電子部品Pがある場合、吸着順序変更処理部35は「吸着順序変更なし」と判定する。その一方で電子部品Pがない場合、吸着順序変更処理部35はその行が最後の行であるか判断する(ST33:行判断工程)。そして、判断の対象である行が最後の行であるとき、吸着順序変更処理部35は「吸着順序変更なし」と判定する。その一方で最後の行ではないとき、吸着順序変更処理部35は「吸着順序変更」と判定する。以上の工程を経て、吸着順序変更判定処理は終了する。
吸着順序変更後の電子部品実装処理においては、図12に示すように、制御部30は吸着ミスが発生した吸着位置にフラグを立てる(ST41:フラグ立て工程)。その後の電子部品実装処理については実施の形態1で説明した内容と同一である。すなわち、吸着ノズル10はフラグを立てた行をスキップして次の行における電子部品Pの吸着に移行する。そして、各列の部品格納部5aから電子部品Pから電子部品Pを吸着し、基板2に実装する。
次に図13を参照して、実施の形態2における動作例について簡潔に説明する。ここでは実施の形態1と同様に、各行第3列目以降に電子部品Pが格納されていないトレイ5を対象として説明する。まず図13(a)に示すように、吸着ノズル10は第1行第1列、第2列の部品格納部5a(1),(2)に格納された電子部品PA,PBを順次吸着し、基板2に実装する。次いで図13(b)に示すように、吸着ノズル10は第1行第3列の部品格納部5a(3)において吸着動作を行うが、この部品格納部5aには電子部品Pが格納されていないため吸着ミスが検出される。
吸着ミスの検出を受け、図13(c)に示すように、第1の認識カメラ14は部品格納部5a(3)内における吸着位置の上方まで移動し、ここで吸着位置を撮像する。そして、吸着順序変更処理部35は撮像データの認識結果に基づいて吸着位置に電子部品Pがないと判断し、吸着順序を変更する。次いで、制御部30は第1行第3列における吸着位置にフラグを立てる。その後、吸着ノズル10は第1行をスキップして第2行各列における電子部品Pの吸着に移行する。
第2行においては、吸着ノズル10は第1列、第2列の部品格納部5a(6),(7)に格納された電子部品PC,PDを順次吸着し、基板2に実装する。そして、吸着ノズル10は第1行でフラグを立てた列と同じ第3列及びそれ以降の第4列、第5列をスキップし、第3行における電子部品Pの吸着に移行する。次いで、吸着ノズル10は第3行第1列、第2列の部品格納部5a(11),(12)に格納された電子部品PE,PFを吸着し、基板2に実装する。そして、吸着ノズル10は第3行第3列以降の部品格納部5a(13),(14),(15)に対して吸着動作を行うことなく、このトレイ5を対象とする電子部品実装作業を終了する。
このように実施の形態2では、吸着工程において吸着ミスが発生した場合、当該吸着ミスが発生した吸着位置を第1の認識カメラ14によって認識する吸着位置認識工程をさらに含んでいる。そして、吸着位置認識工程における認識の結果、吸着位置に電子部品がない場合、所定行には電子部品Pがないと判断して次の行の電子部品の吸着に移行するようにしている。これにより、実施の形態1における効果に加えて、流量センサ13によって検出された吸着ミスが、吸着位置に電子部品Pがあったにもかかわらず吸着することができなかったものであるか、吸着位置に電子部品Pがなかったために生じたものかを的確に判断することができる。また、所定行の次の行以降の各行においては、所定行において電子部品Pがないと判断された吸着位置に対応する吸着位置以降に設定された全ての吸着位置に対する電子部品Pの吸着をスキップして次の行の吸着に移行することで、電子部品Pの吸着効率をさらに高めて生産性をより向上させることができる。
(実施の形態3)
次に図14、図15及び図16を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。図14に示すように、トレイ5において電子部品Pが格納されていない所定の部品格納部5aには、紙等の材料で所定の形状に成形されたマーカー41が粘着シート等を介して貼着されている。マーカー41は作業員によって予め作成され、電子部品Pが格納されていない最初の部品格納部5aの吸着位置に貼着される。図14で示すトレイ5においては、第1行第3列の部品格納部5a(3)にマーカー41を貼着した例を示している。なお、マーカー41の形状は第1の認識カメラ14による吸着位置の認識時において、電子部品Pや誤って混入される可能性がある異物等との区別が容易なサイズ・形状が望ましい。
次に図15を参照して、実施の形態3における吸着順序変更判定処理について説明する。吸着ノズル10によってトレイ5から電子部品Pを吸着して基板2に実装する過程で吸着ミスが検出された場合(図5に示す(ST2))、第1の認識カメラ14を用いて吸着ミスが発生した吸着位置を認識する(ST51:吸着位置認識工程)。この工程は、実施の形態2で説明した吸着位置認識工程(ST41)と同一であるため詳細な説明を省略する。
次いで、吸着順序変更処理部35は吸着位置の認識結果に基づいて吸着位置にマーカー41があるか否かを判断する(ST52:マーカー有無判断工程)。マーカー41がない場合、吸着順序変更処理部35は「吸着順序変更なし」と判定する。そしてマーカー41がある場合、吸着順序変更処理部35はその行が最後の行であるか判断する(ST53:行判断工程)。そして、判断の対象である行が最後の行であるとき、吸着順序変更処理部35は「吸着順序変更なし」と判断する。その一方で最後の行ではないとき、吸着順序変更処理部35は「吸着順序変更」と判定する。
吸着順序変更後の電子部品実装処理においては、図16に示すように、まず制御部30はマーカー41が検出された吸着位置にフラグを立てる(ST61:フラグ立て工程)。マーカー41が検出された吸着位置とは、吸着ミスが発生した吸着位置を意味する。その後の電子部品実装処理については実施の形態1,2で説明した内容と同一である。すなわち、吸着ノズル10はフラグを立てた行をスキップして次の行における電子部品Pの吸着に移行する。そして、各列の部品格納部5aから電子部品Pから電子部品Pを吸着し、基板2に実装する。
次に図14(b),(c)を参照して、実施の形態3における動作例について簡潔に説明する。ここでは実施の形態1,2と同様に、各行第3列目以降に電子部品Pが格納されていないトレイ5を対象として説明する。まず図14(b)に示すように、吸着ノズル10は第1行第1列、第2列の部品格納部5a(1),(2)に格納された電子部品PA,PBを順次吸着し、基板2に実装する。次いで、吸着ノズル10は第1行第3列の部品格納部5a(3)において吸着動作を行うが、ここには電子部品Pが格納されていないため吸着ミスが検出される。
吸着ミスの検出を受け、図14(c)に示すように、第1の認識カメラ14は部品格納部5a(3)内における吸着位置の上方まで移動し、ここで吸着位置を撮像する。そして、吸着順序変更処理部35は撮像データの認識結果に基づいてマーカー41を検出し、これにより吸着順序を変更する。次いで、制御部30は第1行第3列における吸着位置にフラグを立てる。その後、吸着ノズル10は第1行をスキップして第2行各列における電子部品Pの吸着に移行する。その後の電子部品Pの吸着順序は、実施の形態1,2で説明したものと同一である。
このように実施の形態3では、吸着工程において吸着ミスが発生した場合、当該吸着ミスが発生した吸着位置を第1の認識カメラ14によって認識する吸着位置認識工程をさらに含んでいる。そして、吸着位置認識工程における認識の結果、マーカー41を検出した場合、所定行には電子部品Pがないと判断して次の行の電子部品Pの吸着に移行するようにしている。このように、マーカー41を用いて電子部品Pの有無を判断することにより、電子部品Pや誤って混入した異物との区別を容易にするとともに、吸着位置認識工程での認識ミスをより確実に防止することができる。また、実施の形態1,2と同様に、電子部品Pが格納されていない吸着位置での吸着動作がスキップされてタクトロスの発生を抑制することができる。さらに、所定行の次の行以降の各行においては、所定行において電子部品Pがないと判断された吸着位置に対応する吸着位置以降に設定された全ての吸着位置に対する電子部品Pの吸着をスキップして次の行の吸着に移行することで、電子部品Pの吸着効率をさらに高めて生産性をより向上させることができる。
(実施の形態4)
最後に図17及び図18を参照して、実施の形態4について説明する。図17(a)に示すように、トレイ5において電子部品Pが格納されていない所定の部品格納部5aには複数のマーカー42A,マーカー42Bが粘着シートを介して貼着されている。マーカー42A,42Bの配列パターンは、トレイ5内における電子部品Pの配列と関連付けられた状態で予め設定されている。例えば、図17(a)に示すマーカー42A,42Bの配列パターンAは、第1行第1,2列、第2行第1,2列、第3行第1,2,3列に電子部品Pを格納した配列と関連付けられている。記憶部31には、マーカー42A,42Bの配列パターンと電子部品Pの配列に関する情報が関連付けられた状態で記憶されている。このようにマーカー42A,42Bは、トレイ5内における電子部品Pの配列に関する情報を記録した記録媒体として機能する。
なお、マーカー42A,42Bの配列パターンと関連付けられる電子部品Pの配列は、そのマーカー42A,42Bが貼着された吸着位置以降についての情報のみで足りる。すなわち、マーカー42A,42Bが貼着される吸着位置よりも前の部品格納部5aに格納される電子部品Pは、吸着ノズル10によって先に吸着されるため、マーカー42A,42Bの配列パターンと関連付ける必要性がない。図17(a)においては、部品格納部5a(1),(2)に格納された電子部品PA,PBがこれに該当する。
実施の形態4における吸着順序変更判断処理は、実施の形態3と同一である。すなわち図15に示すように、吸着ノズル10によってトレイ5から電子部品Pを吸着して基板2に実装する過程で吸着ミスが検出された場合(図5に示す(ST2))、第1の認識カメラ14を用いて吸着ミスが発生した吸着位置を認識する(ST51)。次いで、吸着順序変更処理部35は吸着位置の認識結果に基づいてマーカー42A,42Bがあるか否かを判断する(ST52)。そしてマーカー42A,42Bがなかった場合、吸着順序変更処理部35は「吸着順序変更なし」と判定する。その一方でマーカー42A,42Bがある場合、吸着順序変更処理部35は「吸着順序変更」と判定する。
次に図18を参照して、実施の形態4における吸着順序変更後の電子部品実装処理について説明する。まず、制御部30は認識したマーカー42A,42Bの配列パターンから、当該配列パターンと関連付けられた電子部品Pの配列に関する情報を記憶部31から抽出する。これにより、制御部30は電子部品Pの配列に関する情報を取得する(ST71:配列情報取得工程)。次いで、吸着ノズル10は取得した電子部品Pの配列に関する情報に基づいて移動し、トレイ5から電子部品Pを吸着する(ST72:吸着工程)。そして、吸着ノズル10は吸着した電子部品Pを基板2に実装する(ST73:実装工程)。
次に図17(b),(c)を参照して、実施の形態4における動作例について簡潔に説明する。ここでは、図17(a)に示すように電子部品Pの格納数が各行において異なるトレイ5を対象として説明する。まず図17(b)に示すように、吸着ノズル10は第1行第1列、第2列の部品格納部5a(1),(2)に格納された電子部品PA,PBを順次吸着し、基板2に実装する。次いで、吸着ノズル10は第1行第3列の部品格納部5a(3)において吸着動作を行うが、ここには電子部品Pが格納されていないため吸着ミスが検出される。
吸着ミスの検出を受け、図17(c)に示すように、第1の認識カメラ14は部品格納部5a(3)内における吸着位置の上方まで移動し、ここで吸着位置を撮像する。次いで、制御部30は取得した撮像データの認識結果に基づいて電子部品Pの配列に関する情報を取得する。そして、制御部30は取得した電子部品Pの配列に関する情報に従って吸着ノズル10の移動を制御する。すなわち、吸着ノズル10は第1行をスキップして第2行に移行し、同行第1列、第2列の部品格納部5a(6),(7)から電子部品PC,PDを順次吸着して基板2に実装する。そして、吸着ノズル10は第2行をスキップして第3行に移行し、同行第1列、第2列、第3列の部品格納部5a(11),(12),(13)から電子部品PE,PF,PGを順次吸着して基板2に実装する。
このように第4の実施の形態では、吸着位置認識工程おける認識の結果、吸着位置に貼着された記録媒体からトレイ5内における電子部品Pの配列に関する情報を取得した場合には、その情報に従って次の行以降の電子部品Pの吸着を実行するようにしている。これにより、各行における電子部品Pの格納数がばらついた複雑な配列であっても、電子部品Pを効率よく吸着して生産性を向上させることができる。
なお、実施の形態4においては、記録媒体そのものに電子部品Pの配列に関する情報を記録させて所定の部品格納部5aの吸着位置に貼着してもよい。この場合、第1の認識カメラ14によって記録媒体を撮像し、取得した撮像データを認識処理部33によって認識する。ここでの認識結果に基づいて、吸着順序変更処理部35は電子部品Pの配列に関する情報を取得する。記録媒体としては、光の反射と吸収を利用して表されるバーコード等の幾何学図形の集合体がある。
本発明の電子部品実装方法は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。例えば、実施の形態1〜3においては、所定行には電子部品Pがないと判断して次の行の電子部品Pの吸着に移行する際に、次の行の最初の吸着位置は先頭列(第1列)に限定されることなく、例えば第2列から開始するようにしてもよい。また、所定行に電子部品Pが無い旨の判断は、1回に限定されるものではなく、同じトレイで再度、電子部品Pが無いと判断された場合は、吸着ミスのフラグを更新することもできる。
以上のように、実施の形態1〜4における電子部品実装方法によれば、トレイ5に格納される電子部品Pの数や配列にばらつきがある場合でも、トレイ5から電子部品Pを効率良く吸着して生産性を向上させることができる。また、制御部30が想定していない位置で吸着ミスが発生することによって、トレイ5内に電子部品Pが存在するにも関わらず電子部品実装装置1をエラー停止させるような事態を防止することができる。さらに、作業者がトレイ5内において電子部品Pを並び替える作業や、電子部品実装装置1に組み込まれるデータ(トレイ情報31b)の変更が不要になる。