JP6293636B2 - 排気弁駆動装置およびこれを備えた内燃機関 - Google Patents

排気弁駆動装置およびこれを備えた内燃機関 Download PDF

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Description

本発明は、カムによって駆動される機械式とされた排気弁駆動装置およびこれを備えた内燃機関に関するものである。
例えば低速2ストロークサイクルディーゼル機関とされた舶用ディーゼル機関(内燃機関)は、油圧機構を用いて排気弁を駆動している。この油圧機構の油圧制御に電磁弁を用いる電子制御方式のエンジンでは、運転負荷に応じて排気弁の開閉タイミングが最適になるように制御されている。一方、機械式のエンジンは、カム駆動のプランジャによって発生された油圧の圧力変化に応じて排気弁アクチュエータを動作させるカム油圧駆動方式であるため、排気弁の開閉タイミングはカムプロファイルに依存してしまうため運転中に変更することが難しい。
これを解決するために、特許文献1では、排気弁を駆動する排気弁アクチュエータに作動油を供給する油圧管からバッファタンクに作動油を抜くことで、排気弁アクチュエータに導かれる作動油の油量を減少させる構成が採用されている。これにより、カムプロファイルにより定められた排気弁の開タイミングを遅らせ、かつ、閉タイミングを早めるようになっている。
特開平6−288210号公報(図1及び図5参照)
しかし、特許文献1に記載された排気弁駆動装置では、排気弁の開タイミングを遅らせる期間と排気弁の閉タイミングを早める期間とが同等となってしまい、排気弁の開タイミングに関わらず排気弁の閉タイミングを任意に変化させることができず、内燃機関の運転状態に応じて柔軟に排気弁動作を調整することができない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、内燃機関の運転状態に応じて柔軟に排気弁動作を調整することができるカム油圧駆動方式とされた排気弁駆動装置およびこれを備えた内燃機関を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の排気弁駆動装置およびこれを備えた内燃機関は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の参考例にかかる排気弁駆動装置は、内燃機関の排気弁を動作させるアクチュエータと、該アクチュエータを動作させる作動油を供給する油圧経路と、該油圧経路に接続されたプランジャと、該プランジャを収容するシリンダと、前記プランジャを往復動させるカムと、前記アクチュエータと前記プランジャとの間の前記油圧経路に一端部が接続される分岐経路と、前記分岐経路に設けられた開閉弁と、前記分岐経路の他端部が接続されるとともに前記作動油を収容する付加容積部と、前記開閉弁を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記プランジャによって前記作動油を加圧する間は前記開閉弁を閉とし、前記プランジャによって加圧された前記作動油を減圧するに前記開閉弁を閉から開とする開閉弁動作を行うことを特徴とする。
カムによってプランジャを動作させる機械式の排気弁駆動装置とされている。すなわち、カムの動作によって駆動されたプランジャの往復動に応じて排気弁が開閉される。例えば、プランジャによって加圧された作動油によってアクチュエータが動作して排気弁が開とされ、加圧された作動油をプランジャによって減圧することによってアクチュエータが動作して排気弁が閉とされる。
本発明では、プランジャによって作動油を加圧する間は開閉弁を閉とし、付加容積部内の圧力を油圧経路よりも低く保っておく。そして、プランジャによって加圧された作動油を減圧する際に、開閉弁動作にて開閉弁を閉から開とし、分岐経路を介して作動油を付加容積部へ導くようにした。これにより、プランジャが加圧後の作動油を減圧する際に作動油の圧力をさらに低下させることができ、排気弁の閉タイミングを早めることができる。
一方、プランジャが作動油を加圧する行程では、開閉弁は閉とされているので、カムのプロファイル通りに動作するプランジャに従った作動油の圧力上昇が行われ、排気弁の開タイミングはカムプロファイルによって決定されるタイミングとなり変更されることがない。
このように、排気弁の開タイミングを変更することなく閉タイミングのみを調整することができるので内燃機関の運転状態に応じた柔軟な排気弁動作を実現することができる。
さらに、本発明の参考例に係る排気弁駆動装置によれば、前記制御部は、前記内燃機関が低負荷とされている場合に、前記開閉弁動作を行うことを特徴とする。
閉弁動作によって排気弁が閉となるタイミングが早くなると、次のサイクルの際に内燃機関の燃焼空間に新気を取り入れる期間が長くなるため圧縮される新気が多くなり内燃機関の圧縮圧力および燃焼圧力が高くなる。したがって、内燃機関が低負荷であっても内燃機関の燃焼改善が行われて燃料消費率が改善される。
なお、内燃機関の低負荷とは、例えば内燃機関の定格負荷を100%とした場合、75%以下をいう。
さらに、本発明の参考例に係る排気弁駆動装置によれば、前記開閉弁動作にて前記開閉弁が開とされるタイミングは、前記排気弁が閉とされるタイミングを0°とした場合に前記内燃機関のクランク角度で−100°以上−30°以下とされていることを特徴とする。
排気弁が閉とされるタイミングを0°とした場合に内燃機関のクランク角度で−100°以上−30°以下のタイミングで開閉弁を開とすることとしたので、排気弁の閉タイミングを適切に制御することができる。−30°よりも大きいクランク角度で開閉弁を開とすると、排気弁の閉タイミングに近づき過ぎて油圧経路内の作動油圧力を有効に低下させることができず、排気弁の閉タイミングを早めることが困難となる。一方で、−100°を超えて早めに開閉弁を開としても、油圧経路内の作動油圧力が依然として高い状態であるため有効に油圧経路内の作動油の圧力を下げることができず、排気弁の閉タイミングを早めることが困難となる。
なお、開閉弁動作にて開閉弁が開とされた後に開閉弁が閉とされるタイミングは、好ましくは排気弁が閉とされた後とされ、次のサイクルに影響を及ぼさない範囲で決定される。
また、本発明の排気弁駆動装置は、内燃機関の排気弁を動作させるアクチュエータと、該アクチュエータを動作させる作動油を供給する油圧経路と、該油圧経路に接続されたプランジャと、該プランジャを収容するシリンダと、前記プランジャを往復動させるカムと、前記アクチュエータと前記プランジャとの間の前記油圧経路に一端部が接続される分岐経路と、前記分岐経路に設けられた開閉弁と、前記分岐経路の他端部が接続されるとともに前記作動油を収容する付加容積部と、前記開閉弁を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記プランジャによって前記作動油を加圧して前記排気弁を開とする際に前記開閉弁を所定時間だけ開とする第開閉弁動作を行い、前記プランジャによって加圧された前記作動油を減圧した後でかつ前記排気弁が閉となる前に前記開閉弁を閉から開とする第開閉弁動作を行うことを特徴とする。
カムによってプランジャを動作させる機械式の排気弁駆動装置とされている。すなわち、カムの動作によって駆動されたプランジャの往復動に応じて排気弁が開閉される。例えば、プランジャによって加圧された作動油によってアクチュエータが動作して排気弁が開とされ、加圧された作動油をプランジャによって減圧することによってアクチュエータが動作して排気弁が閉とされる。
本発明では、プランジャによって作動油を加圧して排気弁が開とされる際に開閉弁を所定時間だけ開とする第開閉弁動作を行うことにより、分岐経路を介して付加容積部内に加圧された作動油を導いて蓄圧しておく。その後、プランジャによって加圧された作動油を減圧する際に、開閉弁を閉から開とする第開閉弁動作を行うこととした。これにより、付加容積部で蓄圧した作動油を供給することによって、減圧しつつある油圧経路内の圧力を再び上昇させることができ、排気弁が閉となるタイミングを遅らせることができる。また、プランジャによる加圧行程で得られた油圧を付加容積部で蓄圧してこれを利用することとしたので、排気弁の閉タイミングを遅らせるために必要な油圧を別の油圧ポンプ等を用いる必要がなく、簡便でかつ低コストにて実現することができる。
一方、プランジャが作動油を加圧して排気弁を開とした後に開閉弁を開とする第開閉弁動作では、後の第開閉弁動作にて排気弁の閉タイミングを遅らせるために必要な油圧を蓄圧するだけなので、排気弁の開タイミングはカムプロファイルによって決定されるタイミングから大幅に変更されることがない。
このように、排気弁の開タイミングを大幅に変更することなく排気弁の閉タイミングのみを調整することができるので内燃機関の運転状態に応じた柔軟な排気弁動作を実現することができる。
さらに、本発明の排気弁駆動装置によれば、前記制御部は、前記内燃機関が高負荷とされている場合に、前記第開閉弁動作および前記第開閉弁動作を行うことを特徴とする。
開閉弁動作及び第開閉弁動作によって排気弁の閉タイミングを遅らせることができ、次のサイクルにて筒内に取り込む新気の量を低下させることができので、内燃機関が高負荷であっても筒内の設計許容圧力を超えて圧縮圧力および燃焼圧力が高くならず、内燃機関の損傷を回避することができる。
なお、内燃機関の高負荷とは、例えば内燃機関の定格負荷を100%とした場合、75%以上をいう。
さらに、本発明の排気弁駆動装置によれば、前記第開閉弁動作にて前記開閉弁が開とされるタイミングは、前記排気弁が開とされるタイミングを0°とした場合に前記内燃機関のクランク角度で−50°以下とされ、前記第開閉弁動作にて前記開閉弁が閉とされるタイミングは、前記排気弁が開とされるタイミングを0°とした場合に前記内燃機関のクランク角度で−20°以上+10°以下とされ、前記第開閉弁動作にて前記開閉弁が開とされるタイミングは、前記排気弁が閉とされるタイミングを0°とした場合に前記内燃機関のクランク角度で−80°以上−40°以下とされることを特徴とする。
開閉弁動作にて開閉弁が開とされるタイミングを、排気弁の閉タイミングを0°とした場合に内燃機関のクランク角度で−50°以下とした。これにより、油圧経路内で生じた圧力を効果的に付加容積部に蓄えることができる。−50°よりも後に開閉弁を開くと油圧経路内の圧力の上昇直前または上昇中に開閉弁を開くことになり、油圧経路内に脈動を生じさせるおそれがあるので好ましくない。
開閉弁動作にて開閉弁が閉とされるタイミングを、排気弁の閉タイミングを0°とした場合に内燃機関のクランク角度で−20°以上+10°以下とした。これにより、付加容積部内に油圧を効果的に蓄えることができる。−20°よりも前に開閉弁を閉じてしまうと油圧経路内の油圧上昇の途中で蓄圧が終わってしまうので好ましくはなく、+10°よりも後とすると、油圧経路内の油圧が下降する時に開閉弁を閉じることになり蓄圧が十分にできないおそれがあるので好ましくない。
開閉弁動作にて開閉弁が開とされるタイミングを、排気弁が閉とされるタイミングを0°とした場合に−80°以上−40°以下とした。これにより、第開閉弁動作にて付加容積部内に蓄圧された油圧を油圧経路に導いて排気弁の閉タイミングを効果的に制御することができる。−40°よりも排気弁の閉タイミングに近い側で開閉弁を開としても、排気弁の閉タイミングに近づき過ぎて排気弁の閉タイミングを制御できないおそれがあるので好ましくない。一方、−80°よりも早めに開閉弁を開とすると、油圧経路内の油圧が依然として高い状態にあるので、開閉弁を開として蓄圧した油圧を油圧経路内に導入しても油圧経路内の圧力を上昇させる効果が得られないおそれがあるので好ましくない。
なお、第開閉弁動作にて開閉弁が開とされた後に開閉弁が閉とされるタイミングは、排気弁が閉とされた後であればよく、次のサイクルに影響を及ぼさない範囲で決定される。
さらに、本発明の排気弁駆動装置によれば、前記付加容積部の容積は、前記油圧経路の容積の1倍以上3倍以下とされていることを特徴とする。
付加容積部の容積を油圧経路の容積の1倍以上3倍以下とすることにより、排気弁の閉タイミングを適切に調整することができる。付加容積部の容積が油圧経路の容積の1倍未満では、付加容積部の容積が小さすぎて油圧を十分に蓄えることができず排気弁の閉タイミングの調整が困難となるおそれがあるので好ましくない。一方、付加容積部の容積が油圧経路の容積の3倍を超えると、付加容積部に蓄えられる油圧が過大となり、開閉弁動作時に開閉弁が開いたときの圧力の低下速度が増加して排気弁の着座速度が大きくなり機械的損傷に到るおそれがあるので好ましくない。また、付加容積部の容積が油圧経路の容積の3倍を超えると、第開閉弁動作時に大きな油圧を付加容積部で吸収することになり油圧経路内の油圧が十分に上がらずに排気弁のリフト動作が不安定となるおそれがあるので好ましくない。さらに、付加容積部の容積が油圧経路の容積の3倍を超えて大きくなるとスペースが必要となり好ましくない。
また、本発明の内燃機関は、上記のいずれかに記載の排気弁駆動装置を備えていることを特徴とする。
上記のいずれかの排気弁駆動装置を備えているので、柔軟に排気弁動作を調整することができる内燃機関を提供することができる。
排気弁の閉タイミングを調整することができるので、内燃機関の運転状態に応じた柔軟な排気弁動作が可能となる。
本発明の参考実施形態にかかる排気弁駆動装置を示した概略構成図である。 参考実施形態にかかる作動油の圧力変化および排気弁リフトの変化を示したグラフである。 本発明の一実施形態にかかる作動油の圧力変化および排気弁リフトの変化を示したグラフである。
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
参考実施形態]
図1には、本参考実施形態にかかる排気弁駆動装置1が示されている。排気弁駆動装置1は、船舶主機用ディーゼルエンジン(内燃機関)に設けられている。船舶主機用ディーゼルエンジン(以下「ディーゼルエンジン」という。)は、例えば低速2ストロークサイクル機関とされており、下方から給気して上方へ排気するように1方向に掃気されるユニフロー型が採用されている。ディーゼルエンジンからの出力は、図示しないプロペラ軸を介してスクリュープロペラに直接的または間接的に接続されている。
排気弁駆動装置1は、ディーゼルエンジンの各気筒に対して設けられている。この排気弁駆動装置1は、図1に示されているように、シリンダヘッド3に形成された排気流路を開閉する排気弁5と、排気弁5を駆動するピストン(アクチュエータ)7と、ピストン7へ作動油を供給する油圧経路9と、油圧経路9に接続されたプランジャ11と、プランジャ11を往復動させるカム13とを備えている。
ピストン7は、上下方向に延在する排気弁5の軸部5aに接続されており、第1シリンダ15内を上下方向に往復動するようになっている。第1シリンダ15とピストン7とによって形成された油圧室17には、油圧経路9の一端9aが接続されている。なお、排気弁5は、図示しない空気ばね等の付勢手段によって上方すなわち第1シリンダ15方向に付勢されている。
排気弁5のリフト量は、図示しないセンサによって常時計測されており、このセンサの出力は図示しない制御部へと送信される。これにより、制御部では、排気弁5が開とされる開タイミングおよび閉とされる閉タイミングが把握できるようになっている。
油圧経路9には、第1分岐点9bから分岐したオリフィス用経路19が接続されている。オリフィス用経路19には固定絞りとされたオリフィス21が設けられている。
油圧経路9内の圧力が所定値以上となった場合に、オリフィス21から所定量の作動油が油圧経路9の外部へと排出されるようになっている。これにより、プランジャ11による加圧時に所定量の作動油を油圧経路9外へ排出し、プランジャ11による減圧時に吸い込む際の油量をプランジャ11の加圧時に押し込む際の油量よりも少なくしておく。そして、プランジャ11を押し下げて作動油を吸い込む際には加圧時よりも少なくなった油量を吸い込むことになるので、ピストン7が確実に上方へ吸い上げられて排気弁5が安定的に閉とされるようになっている。
油圧経路9には、第2分岐点9cから分岐した低圧作動油供給経路23が接続されている。低圧作動油供給経路23には、排気弁5を開閉する際に用いるベースとなる油圧が図示しない低圧作動油源から供給されるようになっている。低圧作動油供給経路23には、逆止弁25が設けられており、油圧経路9内の油圧が所定値以下になった場合に、低圧作動油供給経路23から不足分の作動油が供給されるようになっている。これによりベースとなる油圧、具体的には図2(c)に示した最低作動油圧であるベース圧力が維持される。一方、逆止弁25は、油圧経路9内の圧力が所定値以上の場合には閉とされたままとされる。すなわち、プランジャ11による加圧行程の際には逆止弁25は閉とされる。
油圧経路9には、ピストン7とプランジャ11との間、より具体的には第1分岐点9bと第2分岐点9cとの間の第3分岐点9eに分岐経路40の一端部が接続されている。分岐経路40には、開閉弁42が設けられており、分岐経路40の他端部に付加容積部44が設けられている。
開閉弁42は、例えば電磁弁が用いられ、図示しない制御部によってその開閉が制御される。本参考実施形態では、後述するが、開閉弁42は、制御部によって、プランジャ11によって作動油を加圧する間は閉とされ、プランジャ11によって加圧された作動油を減圧する前に閉から開とされるように制御される。
付加容積部44は、作動油を収容することができる所定体積を有するタンクとなっている。付加容積部44の容積は、油圧経路9の容積の1倍以上3倍以下とされている。付加容積部44内の作動油圧は、常態において、低圧作動油供給経路23から供給される作動油圧、具体的には図2(c)に示したベース圧力が維持される。
プランジャ11は、第2シリンダ27内を上下方向に往復動するようになっている。第2シリンダ27とプランジャ11とによって形成された加圧室(加圧空間)29には、油圧経路9の他端9dが接続されている。
プランジャ11の下部には、接続軸35が取り付けられており、この接続軸35の下端にはカムローラ37が設けられている。カムローラ37は、下方のカム13の外周面すなわちプロファイル上を転動するようになっている。
カム13は、カム軸39に固定されており、カム軸39とともに回転する。カム軸39は、ディーゼルエンジンのクランク軸と同期して回転するようになっている。
次に、上記構成の排気弁駆動装置1の動作について説明する。
先ず、参考として開閉弁42が常時閉とされた場合について説明し、次に、本参考実施形態のように開閉弁が開閉タイミングを制御する場合について説明する。
<開閉弁42;常時閉>
開閉弁42が常時閉とされた場合は、分岐経路40を介して油圧経路9から作動油が排出されることがないので、カム13のプロファイルに従った排気弁5の開閉が行われる。
図2には、(a)にカム13のリフト量、(b)に開閉弁42の弁開度、(c)に作動油圧、(d)に排気弁5のリフト量が示されている。同図において、開閉弁42が常時閉の場合は、実線にて示されている。
同図(b)の実線にて示すように、開閉弁42の開度は、カムリフト量が上昇して低下する1サイクルにわたって常時閉とされている。
時刻t0にてカム13のプロファイルに従いカムリフト量が増大してプランジャ11が押し上げられ始めると、加圧室29すなわち油圧経路9の作動油圧が上昇し始める。カムリフト量が時刻t2にて最大値に達してプランジャ11が上死点まで押し上げられる間に、作動油圧が所定値に達すると、時刻t1にて、ピストン7側の油圧室17における油圧が作用し、図示しない空気ばねの付勢力および筒内圧力に打ち勝ってピストン7を押し下げる。すなわち時刻t1が排気弁の開タイミングとなる。そして、排気弁リフト量が増大して、時刻t3にて排気弁5が完全に開となる。このとき、ピストン7が押し下げられるに伴い、作動油が油圧室17に取り込まれるので、作動油圧は所定の脈動を伴いながら減少する。
そして、カム13のプロファイルに従いプランジャ11が上死点に維持されている期間は、排気弁リフト量も最大で維持されており、排気弁5は開のままとされる。
時刻t5にてカム13のプロファイルに従いカムリフト量が減少してプランジャ11が下降し始めると、作動油圧が低下し始める。作動油圧が所定値を下回ると、図示しない空気ばねの付勢力および筒内圧力が打ち勝って時刻t6からピストン7が上方へと押し上げられることによって排気弁リフト量が減少し始める。カムリフト量が最小値に達してプランジャ11が下死点まで下げられる間に、排気弁5が時刻t7にて全閉となる。
<本参考実施形態による開閉弁42の制御>
ディーゼルエンジンの負荷が減少し、低負荷(例えば定格負荷を100%とした場合に75%以下)となった場合には、図示しない制御部からの指示に従い、開閉弁42を所定のタイミングにて開閉動作を行う。具体的には、図2(b)に破線で示すように、開閉弁42は、プランジャ11によって作動油を加圧する間は閉とされ、プランジャ11によって加圧された作動油を減圧するに閉から開とされるように制御される(開閉弁動作)。
時刻t0から、開閉弁42が閉から開とされる時刻Ta1までは、上述したように図2の実線の通りに動作する。なお、付加容積部44内の作動油圧は、低圧作動油供給経路23から供給される作動油圧すなわちベース圧力(図2(c)参照)に維持されている。
時刻t5にてカムリフト量が低下してプランジャ11によって減圧が行われる際の時刻Ta1にて、開閉弁42が開とされると、油圧経路9内の作動油圧が分岐経路40を介して付加容積部44内へと導かれ、時刻Ta1の直後の時刻Ta1’あたりで作動油圧がさらに低下し始める。
開閉弁42が開とされるタイミングは、排気弁5が閉とされる閉タイミング(時刻t7’)を0°とした場合にディーゼルエンジンのクランク角度で−100°以上−30°以下とすることが好ましい。これにより、排気弁5の閉タイミングを適切に制御することができる。
−30°よりも大きいクランク角度で開閉弁42を開とすると、排気弁5の閉タイミングに近づき過ぎて油圧経路9内の作動油圧力を有効に低下させることができず、排気弁5の閉タイミングを早めることが困難となる。一方で、−100°を超えて早めに開閉弁42を開としても、油圧経路9内の作動油圧力が依然として高い状態であるため有効に油圧経路9内の作動油の圧力を下げることができず、排気弁5の閉タイミングを早めることが困難となる。
開閉弁42の開閉タイミングは、図示しない制御部によって、排気弁5のリフト量を検出するセンサから得られた結果に基づいて行われる。具体的には、排気弁5のリフト量を検出するセンサから排気弁5の閉タイミング(時刻t7’)を制御部にて得て、この閉タイミングに対して次回のサイクルにおける開閉弁42の開タイミングを決定する。このようなフィードバック制御を行うことにより、開閉弁42の開閉タイミングを所定のタイミングに設定する。
時刻Ta1の後で開閉弁42が開状態で維持される時刻Ta2までの時間間隔は、作動油圧の所望の低下量によって決定され、本参考実施形態では、カムリフト量がゼロとなる直後まで開閉弁42の開状態が維持される。そして、時刻Ta2にて、制御部の指示によって開閉弁42は閉とされる。この開閉弁42の閉タイミングは、排気弁5が閉とされた後であればよく、次のサイクルに影響を及ぼさない範囲で決定される。
このように開閉弁42を一定時間の間だけ開として油圧経路9内の加圧後の作動油圧をプランジャ11で減圧する際にさらに低下させているので、排気弁リフト量は時刻Ta1にて開閉弁42を常時閉とした場合よりも早めに減少し始め、その結果として、排気弁5の閉タイミングである時刻t7’にて時刻t7よりも早めに排気弁5は全閉となる。
参考実施形態の排気弁駆動装置1によれば、以下の作用効果を奏することができる。
プランジャ11によって作動油を加圧する間は開閉弁を閉とし、付加容積部44内の圧力を油圧経路9よりも低く保っておく。そして、プランジャ11によって加圧された作動油を減圧する際に、開閉弁42を閉から開とする開閉弁動作を行い、分岐経路40を介して作動油を付加容積部44へ導くようにした。これにより、プランジャ11が加圧後の作動油を減圧する際に作動油の圧力をさらに低下させることができ、排気弁5の閉タイミングを早めることができる。
一方、プランジャ11が作動油を加圧する行程では、開閉弁42は閉とされているので、カム13のプロファイル通りに動作するプランジャ11に従った作動油の圧力上昇が行われ、排気弁5の開タイミングはカムプロファイルによって決定されるタイミングとなり変更されることがない。
このように、排気弁5の開タイミングを変更することなく閉タイミングのみを調整することができるのでディーゼルエンジンの運転状態に応じた柔軟な排気弁動作を実現することができる。
排気弁5が閉となるタイミングが早くなると、次のサイクルの際にディーゼルエンジンの燃焼空間に新気を取り入れる期間が長くなるため圧縮される新気が多くなりディーゼルエンジンの圧縮圧力および燃焼圧力が高くなる。したがって、本参考実施形態では、上記開閉弁42の制御をディーゼルエンジンが低負荷とされているときに行うこととしたので、ディーゼルエンジンの燃焼改善が行われて燃料消費率を改善することができる。
付加容積部44の容積を油圧経路の容積の1倍以上3倍以下とすることにより、排気弁5の閉タイミングを適切に調整することができる。付加容積部44の容積が油圧経路の容積の1倍未満では、付加容積部の容積が小さすぎて油圧を十分に蓄えることができず排気弁の閉タイミングの調整が困難となるおそれがあるので好ましくない。一方、付加容積部44の容積が油圧経路9の容積の3倍を超えると、付加容積部44に蓄えられる油圧が過大となり、開閉弁動作時に開閉弁42が開いたときの圧力の低下速度が増加して排気弁5の着座速度が大きくなり機械的損傷に到るおそれがあるので好ましくない。また、付加容積部44の容積が油圧経路9の容積の3倍を超えて大きくなるとスペースが必要となり好ましくない。
[実施形態]
次に、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、参考実施形態に対して開閉弁42の開閉タイミングの制御が異なるのみで、その他は同様であるので、同一構成については同一符号を付してその説明を省略することとする。
以下では、参考実施形態と相違する開閉弁42の制御について図3を用いて説明する。
本実施形態では、ディーゼルエンジンの負荷が増大し、高負荷(例えば定格負荷を100%とした場合に75%以上)となった場合には、図示しない制御部からの指示に従い、開閉弁42を所定のタイミングにて開閉動作を行う。具体的には、図3(b)に破線で示すように、プランジャ11によって作動油を加圧して排気弁5を開とする際に開閉弁42を所定時間だけ開とする第開閉弁動作を行い、プランジャ11によって加圧された作動油を減圧する際に開閉弁42を所定時間だけ開とする第開閉弁動作を行う。
なお、図3における実線は、開閉弁42が常時閉とされている場合であり、図2の実線と同様である。
先ず、カム13のカムリフト量が増大し始める時刻t0よりも前のタイミングである時刻Tb1にて開閉弁42が開とされる(第開閉弁動作)。そして、時刻t0にてカム13のプロファイルに従いカムリフト量が増大してプランジャ11が押し上げられ始めると、加圧室29すなわち油圧経路9の作動油圧が上昇し始める。この際に、分岐経路40を介して作動油が油圧経路9から付加容積部44へと導かれ付加容積部44内が蓄圧される。したがって、図3(c)の破線で示されているように、開閉弁42を常時閉とした実線に対して少し遅れて圧力が上昇する。この圧力上昇の遅れに伴い、図3(d)に示すように排気弁5は時刻t1’にて開となる。このように排気弁5は、開閉弁42を常時閉とした場合の排気弁5の開タイミングの時刻t1よりも少し遅れて開となるが、ディーゼルエンジンの運転に影響が出ない程度の許容できる遅れとされている。
開閉弁42が開とされるタイミングは、排気弁5の開タイミング(t1’)を0°とした場合にディーゼルエンジンのクランク角度で−50°以下とするのが好ましい。これにより、油圧経路9内で生じた圧力を効果的に付加容積部44に蓄えることができる。−50°よりも後に開閉弁42を開くと油圧経路9内の圧力の上昇直前または上昇中に開閉弁42を開くことになり、油圧経路9内に脈動を生じさせるおそれがあるので好ましくない。
開閉弁動作にて開閉弁42が閉とされる時刻Tb2は、カムリフト量が減少してプランジャ11が減圧を始める前までに設定され、付加容積部44内に蓄圧しておくべき所望圧力に応じて決定される。
開閉弁42が閉とされるタイミングは、排気弁5の開タイミング(t1’)を0°とした場合にディーゼルエンジンのクランク角度で−20°以上+10°以下とするのが好ましい。これにより、付加容積部44内に油圧を効果的に蓄えることができる。
−20°よりも前に開閉弁42を閉じてしまうと油圧経路9内の油圧上昇の途中で蓄圧が終わってしまうので好ましくはなく、+10°よりも後とすると、油圧経路9内の油圧が下降する時に開閉弁42を閉じることになり蓄圧が十分にできないおそれがあるので好ましくない。
油圧経路9内の作動油圧は、付加容積部44内に導かれた分だけ低下することになり(図2(c)の破線参照)、これに伴い排気弁5のリフト量も低下する(図2(d)の破線参照)。ただし、このリフト量の低下はディーゼルエンジンの運転に支障を来すものではない。
時刻t5にてカムリフト量が低下してプランジャ11によって減圧が行われると、時刻t6’にて排気弁5のリフト量が低下し始める。そして、時刻Tc1にて開閉弁42を開く(第開閉弁動作)。これにより、付加容積部44で蓄圧した作動油を油圧経路9内に供給することによって、減圧しつつある油圧経路9内の圧力を時刻Tc1直後の時刻Tc1’あたりで再び上昇させることができ、排気弁5が閉となるタイミングを時刻t7’まで遅らせることができる。
開閉弁42が開とされるタイミングは、排気弁5が閉とされるタイミング(時刻t7’)を0°とした場合に−80°以上−40°以下とすることが好ましい。これにより、開閉弁42が閉じる前に付加容積部44内に蓄圧された油圧を油圧経路9に導いて排気弁5の閉タイミングを効果的に制御することができる。
−40°よりも排気弁5の閉タイミングに近い側で開閉弁42を開としても、排気弁5の閉タイミングに近づき過ぎて排気弁5の閉タイミングを制御できないおそれがあるので好ましくない。一方、−80°よりも早めに開閉弁42を開とすると、油圧経路9内の油圧が依然として高い状態にあるので、開閉弁42を開として蓄圧した油圧を油圧経路9内に導入して油圧経路9内の圧力を上昇させる効果が得られないおそれがあるので好ましくない。
開閉弁42は、付加容積部44内に蓄圧された作動油が油圧経路9内に戻された後に時刻Tc2にて閉とされる。このタイミングは、排気弁5が閉とされた後であればよく、次のサイクルに影響を及ぼさない範囲で決定される。
本実施形態の排気弁駆動装置1によれば、以下の作用効果を奏することができる。
プランジャ11によって作動油を加圧して排気弁5が開とされる際に開閉弁42を所定時間だけ開とする第開閉弁動作を行うことにより、分岐経路40を介して付加容積部44内に加圧された作動油を導いて蓄圧しておく。その後、プランジャ11によって加圧された作動油を減圧する際に、開閉弁42を所定時間だけ開とする第開閉弁動作を行うこととした。これにより、付加容積部44で蓄圧した作動油を供給することによって、減圧しつつある油圧経路9内の圧力を再び上昇させることができ、排気弁5が閉となるタイミングを遅らせることができる。
また、プランジャ11による加圧行程で得られた油圧を付加容積部44で蓄圧してこれを利用することとしたので、排気弁5の閉タイミングを遅らせるために必要な油圧を別の油圧ポンプ等を用いる必要がなく、簡便でかつ低コストにて実現することができる。
また、排気弁5の開タイミングを大幅に変更することなく閉タイミングを調整することができるのでディーゼルエンジンの運転状態に応じた柔軟な排気弁動作を実現することができる。
排気弁5の閉タイミングを遅らせることができ、ディーゼルエンジンの筒内に取り込む新気の量を低下させることができので、ディーゼルエンジンが高負荷であっても筒内の設計許容圧力を超えて圧縮圧力および燃焼圧力が高くならず、ディーゼルエンジンの損傷を回避することができる。
付加容積部44の容積を油圧経路9の容積の1倍以上3倍以下とすることにより、排気弁5の閉タイミングを適切に調整することができる。付加容積部44の容積が油圧経路9の容積の1倍未満では、付加容積部44の容積が小さすぎて油圧を十分に蓄えることができず排気弁の閉タイミングの調整が困難となるおそれがあるので好ましくない。一方、付加容積部44の容積が油圧経路9の容積の3倍を超えると、第開閉弁動作時に大きな油圧を付加容積部44で吸収することになり油圧経路9内の油圧が十分に上がらずに排気弁5のリフト動作が不安定となるおそれがあるので好ましくない。また、付加容積部44の容積が油圧経路9の容積の3倍を超えて大きくなるとスペースが必要となり好ましくない。
1 排気弁駆動装置
3 シリンダヘッド
5 排気弁
7 ピストン
9 油圧経路
11 プランジャ
13 カム
15 第1シリンダ
17 油圧室
19 オリフィス用経路
21 オリフィス
23 低圧作動油供給経路
25 逆止弁
27 第2シリンダ
29 加圧室
35 接続軸
37 カムローラ
40 分岐経路
42 開閉弁
44 付加容積部

Claims (5)

  1. 内燃機関の排気弁を動作させるアクチュエータと、
    該アクチュエータを動作させる作動油を供給する油圧経路と、
    該油圧経路に接続されたプランジャと、
    該プランジャを収容するシリンダと、
    前記プランジャを往復動させるカムと、
    前記アクチュエータと前記プランジャとの間の前記油圧経路に一端部が接続される分岐経路と、
    前記分岐経路に設けられた開閉弁と、
    前記分岐経路の他端部が接続されるとともに前記作動油を収容する付加容積部と、
    前記開閉弁を制御する制御部と、
    を備え、
    前記制御部は、前記プランジャによって前記作動油を加圧して前記排気弁を開とする際に前記開閉弁を所定時間だけ開とする第開閉弁動作を行い、前記プランジャによって加圧された前記作動油を減圧した後でかつ前記排気弁が閉となる前に前記開閉弁を閉から開とする第開閉弁動作を行うことを特徴とする排気弁駆動装置。
  2. 前記制御部は、前記内燃機関が高負荷とされている場合に、前記第開閉弁動作および前記第開閉弁動作を行うことを特徴とする請求項に記載の排気弁駆動装置。
  3. 前記第開閉弁動作にて前記開閉弁が開とされるタイミングは、前記排気弁が開とされるタイミングを0°とした場合に前記内燃機関のクランク角度で−50°以下とされ、
    前記第開閉弁動作にて前記開閉弁が閉とされるタイミングは、前記排気弁が開とされるタイミングを0°とした場合に前記内燃機関のクランク角度で−20°以上+10°以下とされ、
    前記第開閉弁動作にて前記開閉弁が開とされるタイミングは、前記排気弁が閉とされるタイミングを0°とした場合に前記内燃機関のクランク角度で−80°以上−40°以下とされることを特徴とする請求項又はに記載の排気弁駆動装置。
  4. 前記付加容積部の容積は、前記油圧経路の容積の1倍以上3倍以下とされていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の排気弁駆動装置。
  5. 請求項1からのいずれかに記載の排気弁駆動装置を備えていることを特徴とする内燃機関。
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