JP6292768B2 - 貼付剤及び貼付剤製品の製造方法 - Google Patents
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ロピニロールを貼付剤化した場合の利点としては、副作用が生じた場合に、製剤の取り外しの容易性などの利点が挙げられる。
したがって、これまでに貼付剤中における有効成分であるロピニロールの安定性の向上についての検討が種々なされてきており、例えば、ロピニロール含有貼付剤の包装袋として、脱酸素剤を封入した包装袋を使用して、包装袋内をある一定湿度以上に調整することにより、貼付剤製品中のロピニロールの分解生成物の生成を抑制できることが提案されている(特許文献6)。
また、使用する脱酸素剤によっては、十分にロピニロールの分解反応を抑制することができない場合がある。
特に、貼付剤の着色の主要な原因とされるロピニロール分解生成物の一つである、ビニルオキシ体に関しては、本発明の貼付剤の製造方法により、その生成を大幅に抑制できることが可能となり、本願発明を完成させるに至った。
(1)ロピニロールを含有する貼付剤であって、粘着剤としてアクリル系粘着剤を用い、100℃未満の沸点を有する有機溶剤に均一に混合して得た膏体溶液を、剥離フィルムまたは支持体上に塗布し、60℃以上80℃未満の乾燥温度にて4〜20分間乾燥することにより製造されることを特徴とする、前記ロピニロール含有貼付剤;
(2)アクリル系粘着剤が、カルボキシル基を有さず、水酸基或いはピロリドン基を有するアクリル系粘着剤である上記(1)に記載のロピニロール含有貼付剤;
(3)アクリル系粘着剤が、アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸2−ヒドロキシエチル・メタクリル酸グリシジルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸2−ヒドロキシエチルコポリマー、またはアクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体である上記(1)または(2)に記載のロピニロール含有貼付剤;
(4)有機溶媒が、酢酸エチルである上記(1)〜(3)に記載のロピニロール含有貼付剤;
(5)貼付剤中のロピニロールの分解物の生成を抑制し、保存安定性が向上した上記(1)〜(4)に記載のロピニロール含有貼付剤;
である。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のロピニロール含有貼付剤を、酸化セリウムを脱酸素剤として含有する包材から成る包装袋に封入したことを特徴とする、ロピニロール含有貼付剤製品;
(7)貼付剤製品中のロピニロールの分解物の生成を抑制し、保存安定性が向上した上記の(6)に記載のロピニロール含有貼付剤製品;
である。
(8)粘着剤としてアクリル系粘着剤を用いたロピニロール含有貼付剤の製造方法であって、
基剤成分を100℃未満の沸点を有する有機溶剤に均一に混合し、
得られた膏体溶液を、剥離フィルムまたは支持体上に塗布し、
60℃以上80℃未満の乾燥温度にて4〜20分間乾燥する、
ことを特徴とする、前記ロピニロール含有貼付剤の製造方法;
(9)上記(1)〜(4)に記載のロピニロール含有貼付剤を、酸化セリウムを脱酸素剤として含有する包材から成る包装袋に封入することを特徴とする、ロピニロール含有貼付剤製品の製造方法;
である。
(10)粘着剤としてアクリル系粘着剤を用いたロピニロール含有貼付剤におけるロピニロールの分解物の生成を抑制する方法であって、
膏体溶液を100℃未満の沸点を有する有機溶剤に均一に混合して調製し、
調製され膏体溶液を、剥離フィルムまたは支持体上に塗布し、60℃以上80℃未満の乾燥温度にて4〜20分間乾燥する、
ことを特徴とする方法;
(11)酸化セリウムを脱酸素剤として含有する包材から成る包装袋に封入することを特徴とする、粘着剤としてアクリル系粘着剤を用いたロピニロール含有貼付剤製品中のロピニロールの分解物の生成を抑制する方法;
(12)粘着剤としてアクリル系粘着剤を用いたロピニロール含有貼付剤が、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のロピニロール含有貼付剤である、上記の(11)に記載の方法;
である。
したがって、粘着層に分解生成物による着色の見られない、高い品質を有するロピニロール含有貼付剤、並びに貼付剤製品を得ることが可能になった。
(1)アクリル系粘着剤を含む基剤成分と、主薬成分であるロピニロールとを特定の有機溶剤中に均一に混合し、膏体溶液を得る混合工程;
(2)上記の混合工程により得た膏体溶液を、支持体、または剥離フィルムに塗工(展延)する塗工(展延)工程;
(3)塗工(展延)した膏体溶液から、有機溶剤を揮発させる乾燥工程;
(4)上記の乾燥工程を経て得られた膏体層(膏体溶液から、有機溶媒が揮発したもの)に、支持体、または剥離フィルムを張り合わせる転写工程。
ロピニロールの配合量が3重量%未満であると、経皮吸収性が不十分であり、また、30重量%以上であると貼付剤の物性を損なうばかりか、経済的にも不利で好ましいものではない。
その中でも、モノマーとして水酸基若しくはピロリドン基を有しており、かつ、カルボキシル基を有していないアクリル系粘着剤が、ロピニロールの溶解性が高いため、好ましい。
しかしながら、架橋剤を配合しなければ膏体層の物性を保つことができない場合には、該薬物と架橋剤との反応を抑制する手段を講じる必要性がある。
かかる点からみれば、本発明にあっては、使用するアクリル系粘着剤として、架橋剤を含有しないもの、あるいは架橋剤を配合しなくても凝集力が高められたアクリル系粘着剤を使用するのが好ましい。
また、使用するアクリル系粘着剤の含有量としては、膏体層の組成全体の質量を基準として、30〜98重量%が好ましく、より好ましくは、50〜95重量%である。
本発明で使用する有機溶剤自体は乾燥工程で揮発し、貼付剤中には殆んど残留しないものであり、例えば酢酸エチル、メタノール、エタノール及びへキサン等が挙げられるが、本発明に使用するロピニロール、あるいは各基材成分の溶解性を考慮すると、特に酢酸エチルが好ましい。
有機溶剤量が5倍量を超えてそれ以上添加すると、乾燥効率が悪く、その結果、分解生成物の生成量が増加する。一方、有機溶剤量の添加量が、1倍量以下であると、膏体溶液の粘性が高くなり、支持体等に塗工できなくなり、また未溶解の基剤成分の析出が見られ、好ましくない。
その中でも、クエン酸トリエチル、グリセリン、オレイルアルコール、モノラウリン酸ソルビタン、およびミリスチン酸イソプロピルから選択される1種あるいは2種以上を使用するのが好ましく、オレイルアルコール及びミリスチン酸イソプロピルから選択される1種あるいは2種以上がさらに好ましい。
その配合量としては、膏体層の組成全体の質量を基準として、0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%である。
軟化剤としては、例えばポリイソブチレン、ポリブテン、ラノリン、ヒマシ油、アーモンド油、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油、ラッカセイ油、プロセスオイル、エキステンダーオイル、および流動パラフィン等が挙げられる。
溶解剤としては、例えばミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、およびグリセリン等の多価アルコールが挙げられる。
かかる基剤成分としては特に限定されないが、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等の水溶性高分子;エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;無水ケイ酸、軽質無水ケイ酸等のケイ素化合物;酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、シリカ類、酸化マグネシウム、酸化鉄、ステアリン酸等の無機充填剤等が挙げられる。
さらに必要に応じて防腐剤、清涼剤、殺菌剤、着香剤、着色剤等を添加することができる。
具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン等の合成樹脂で形成されたフィルムもしくはシートまたはこれらの積層体、多孔質膜、発泡体、織布および、不織布、あるいは紙材を用いることができる。
剥離ライナーは、剥離力を至適にするため、必要に応じてシリコン処理をしてもよい。
脱酸素剤を含有する包装フィルムは、鉄、および酸化セリウム等の無機系の脱酸素剤を含有するもの、あるいは有機系の脱酸素剤含有フィルムに分類することができ、それぞれの特性を考慮した上で使用することができるが、本発明の貼付剤製品には、特に無機系の酸化セリウムを含有する包装フィルムが分解生成物の抑制効果が高く、好ましい。
具体的には、混合機を用いて、アクリル系粘着剤、ロピニロール、及びその他の基剤成分を、沸点が100℃未満の有機溶剤に、均一に混合させ膏体溶液を得る。
なお、膏体層の厚みとしては、30〜200μmが好ましく、特に好ましくは50〜100μmである。
膏体層の厚みが30μm未満であると、薬物放出の持続性が乏しくなるとともに粘着力が低下し、200μmより厚くなると、膏体層中に含有される薬物の量が増え、製造コストが高くなる。
最後に、得られた貼付剤を所望のサイズに裁断し、特定の脱酸素剤として酸化セリウムを含有する包材からなる包装袋に封入し、本発明の貼付剤製品を得ることができる。
ロピニロールと、アクリル系粘着剤(アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸2−ヒドロキシエチルコポリマー;製品名:Duro-tak 87-4287)とを、混合機を用いて、酢酸エチルに均一に混合して膏体溶液を得た。
この膏体溶液を離型処理された剥離フィルム上に展延し、60℃の温度に設定された燥機で、5分間乾燥させ、酢酸エチルを除去し、厚さ55〜65μmの膏体層を形成した。その後、膏体層を支持体に圧着転写させることにより、貼付剤を得た
なお、各成分の配合量(単位:重量%)、乾燥温度、及び乾燥時間は、下記の表1に示すとおりである。
表1に示す組成(単位:重量%)、および乾燥条件により、上記実施例1の製法と同様の方法に従い、実施例2〜3の各製剤を得た。なお、表中の有機溶剤(酢酸エチル)の添加量は、膏体溶液中における、全基剤成分に対する有機溶剤の重量比で示す。
表1に示す組成(単位:重量%)、および乾燥条件により、上記実施例1の製法に従い、比較例1〜5の各製剤を得た。なお、表中の有機溶剤(酢酸エチル)の添加量は、膏体溶液中における、全基剤成分に対する有機溶剤の重量比で示す。
<分解生成物の定量>
表1に記載の各貼付剤を8cm2のサイズに打ち抜いた製剤につき、剥離フィルムを剥がし、メタノール15mLを加え、30分間振とう抽出した。この抽出液を分取し、さらに残留物にメタノール15mLを加え、30分間振とう抽出を行った。この抽出液を先の抽出液に合わせ、メタノールで正確に50mLとした。この液を、メンブランフィルターを使用して濾過したものを試験液とした。得られた試験液につき、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用い、下記表2に示した操作条件で、ロピニロールの分解物を定量した。
<HPLC操作条件>
各貼付剤中に含有されている、主要なロピニロールの分解生成物(ビニルオキシ体)の含量、および分解生成物の総量を表3に示した。各分解生成物の生成量は、上記液体クロマトグラフ法により測定された、ロピニロールのピーク面積値に対する、各分解生成物のピーク面積値の比率(%)で示している。
*:ロピニロールに対する相対保持時間(RRT)
下記表4に示す組成(単位:重量%)により、実施例1の製法に従い、実施例4〜5の製剤を得た。なお、表中の有機溶剤(酢酸エチル)の添加量は、膏体溶液中における、全基剤成分に対する有機溶剤の重量比で示す。
表4に示す組成(単位:重量%)により、実施例1の製法に従い、比較例6の製剤を得た。なお、表中の有機溶剤(酢酸エチル)の添加量は、膏体溶液中における、全基剤成分に対する有機溶剤の重量比で示す。
下記表5に示す組成(単位:重量%)により、貼付剤1の製法に従い、ロピニロールを含有しないプラセボである参考例1〜6の製剤を得た。なお、表中の有機溶剤(酢酸エチル)の添加量は、膏体溶液中における全基剤成分に対する有機溶剤の重量比で示す。
<膏体中の残留溶剤の測定>
表4、表5に記載の各貼付剤、および実施例1の各製剤を8cm2のサイズに打ち抜き、剥離フィルムを剥がし、アセトン5mLを加え、30分間振とう抽出した。この抽出液を、メンブランフィルターを使用して濾過したものを試験液とした。得られた試験液につき、ガスクロマトグラフ(GC)を用い、下記操作条件で、各製剤中の酢酸エチルの残存量を定量した。
<GC操作条件>
実施例1及び実施例4〜5に残留している酢酸エチルの量を、下記表7に示した。また、各参考例の貼付剤に残留している酢酸エチル量を、下記表8に示した。
実施例1の貼付剤を8cm2のサイズに裁断した後、脱酸素剤として酸化セリウムを含有する包材[オキシキャッチ(登録商標)(共同印刷社製)]からなる包装袋に封入・包装して、貼付剤製品(実施例6)を得た。
脱酸素剤として鉄を含有する包材からなる包装袋を使用した他は、貼付剤製品(実施例6)と同様の方法で、貼付剤製品(比較例2)を得た。
高分子樹脂を脱酸素剤とする、有機系の脱酸素剤を含有する包材からなる包装袋を使用した他は、貼付剤製品(実施例6)と同様の方法で、貼付剤製品(比較例3)を得た。
<製剤の外観の観察>
貼付剤製品(実施例6、比較例2、及び比較例3)の各貼付剤製品を、40℃/75%RHの温度条件で、1箇月間保存し、各製剤につき、保存後における膏体の色の変化を観察した。その結果を下記表10に示した。
<分解生成物の定量>
貼付剤製品(実施例6、比較例2、及び比較例3)の各貼付剤製品を、40℃/75%RHの温度条件で、1箇月間保存した製剤につき、分解生成物の含量を測定した。試料の調製法、及び高速液体クロマトグラフの測定条件を下記に示し、結果を表10に示した。
各試料につき、剥離フィルムを剥がし、メタノール15mLを加え、30分間振とう抽出した。この抽出液を分取し、さらに残留物にメタノール15mLを加え、30分間振とう抽出を行った。この抽出液を先の抽出液に合わせ、メタノールで正確に50mLとした。この液を、メンブランフィルターを使用して濾過したものを試験液とした。得られた試験液につき、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用い、下記の操作条件で、ロピニロールの分解物を定量した。
<HPLC操作条件>
各貼付剤中に含有されている主要なロピニロールの分解生成物(ビニルオキシ体)の含量、および分解生成物の総量を表7に示した。分解生成物の生成量は、上記液体クロマトグラフ法により測定されたロピニロールのピーク面積値に対する、分解生成物のピーク面積値の比率(%)で示している。
Claims (6)
- 粘着剤として、カルボキシル基を有さず、水酸基或いはピロリドン基を有するアクリル系粘着剤を用いたロピニロール含有貼付剤の製造方法であって、
膏体成分を100℃未満の沸点を有する有機溶剤に均一に混合し、
得られた膏体溶液を、剥離フィルムまたは支持体上に塗布し、
60℃以上80℃未満の乾燥温度にて4〜20分間乾燥する、
ことを特徴とする、前記ロピニロール含有貼付剤の製造方法。 - アクリル系粘着剤が、アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸2−ヒドロキシエチル・メタクリル酸グリシジルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸2−ヒドロキシエチルコポリマー、またはアクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体である請求項1に記載のロピニロール含有貼付剤の製造方法。
- 有機溶媒が、酢酸エチルである請求項1又は2に記載のロピニロール含有貼付剤の製造方法。
- 貼付剤中のロピニロールの分解物の生成を抑制し、保存安定性を向上させる請求項1〜3のいずれかに記載のロピニロール含有貼付剤の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の方法で得られたロピニロール含有貼付剤を、酸化セリウムを脱酸素剤として含有する包材から成る包装袋に封入することを特徴とする、ロピニロール含有貼付剤製品の製造方法。
- 酸化セリウムを脱酸素剤として含有する包材から成る包装袋に、粘着剤としてカルボキシル基を有さず、水酸基或いはピロリドン基を有するアクリル系粘着剤を用いたロピニロール含有貼付剤を封入することを特徴とする、貼付剤中に含有されるロピニロールの分解物の生成を抑制する方法。
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