JP6292105B2 - 圧力調整システム - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンに作動油を循環させるオイルポンプの吐出圧を調整する圧力調整システムに関する。
従来、オイルポンプの吐出圧を調整する圧力調整システムとして、エンジンとオイルポンプとの間に配置されるリリーフバルブを用いたものが知られている(例えば、特許文献1−2参照)。このリリーフバルブは、作動油が流通する内部流路と該内部流路から作動油を排出するリリーフポートとを有するハウジングと、ハウジングの内部で往復移動する弁体とを備えている。この弁体の上面に作動油の圧力を作用させると共に、弁体には該圧力と対向する方向にスプリングの付勢力を作用させている。この圧力がスプリングの付勢力を上回ったときにリリーフポートが開放され、オイルポンプより上流側に作動油を排出することでオイルポンプの吐出圧を低減するものである。
特許文献1には、リリーフバルブが、スプリングの弁体とは反対側の端部を保持しつつ往復移動可能な支持部を備え、オイルポンプから吐出される作動油を、三方弁を介して支持部の背面に供給する技術が開示されている。エンジンの通常運転時には、支持部の背面に作動油を供給するように三方弁を制御し、スプリングを短縮させることでリリーフ圧を増加させている。一方、エンジンの暖機運転時には、支持部の背面にある作動油を排出するように三方弁を制御し、スプリングを伸長させることでリリーフ圧を低下させている。また、作動油の粘度に応じて三方弁の切換え閾値を設定しており、例えば、粘度が低い場合に支持部の背面に作動油を供給する頻度を高めてリリーフ量を減らし、エンジンに作動油を多く供給することで焼付きを防止すると記載されている。
特許文献2には、オイルポンプとリリーフバルブとの間に切換弁を備え、切換弁を開操作することで弁体の受圧面積を増大させ、リリーフバルブの開弁をアシストする技術が開示されている。つまり、スプリングの付勢力を一定に保った状態で弁体の受圧面積を増減させることで、高圧リリーフモードと低圧リリーフモードとを選択できるように構成されている。また、切換弁を開閉操作する際、オイルポンプと切換弁との間に設けた電磁弁をON/OFF制御することで、切換弁のスプールに対して作動油を供給/排出させている。
特開2009−191634号公報 特開2014−98326号公報
ところで、エンジン潤滑用に用いるオイルポンプでは、リリーフ圧を通常モードと低圧モードとの間の中圧モードに設定することで、ポンプの運転効率を高めて燃費の改善が図られる場合がある。しかしながら、従来の圧力調整システムにあっては、弁体のリリーフ圧が2段階設定と限定されており、改善の余地があった。
特に、特許文献1のシステムは、作動油の粘度に応じて三方弁の切換え閾値を設定してリリーフ圧の最適化を図っているが、支持部の背面に作動油を給排するのにタイムラグが発生するので応答性に乏しい。また、特許文献2のシステムは電磁弁を介して切換弁を開閉操作しているので、作動油の粘度が高い場合、電磁弁のスプールの移動が阻害され易い。これを防止するために、電磁弁に印加する電圧を高めに設定することが考えられるが、電力を無駄に消費してしまう。
そこで、本発明の目的は、作動油の圧力を多段階に調整することができ、且つ消費電力を抑制しながら応答性を高めることのできる圧力調整システムを提供することにある。
本発明に係る圧力調整システムの特徴構成は、エンジンに作動油を循環させるオイルポンプと、前記オイルポンプから吐出される作動油が流通する内部流路を有するハウジングと、前記ハウジングの内部で往復移動可能であり、前記内部流路に流通する作動油の圧力を受ける弁体と、前記弁体を前記圧力に対向する方向に付勢するスプリングと、前記スプリングの前記弁体とは反対側の端部を保持する支持部と、回転角度を調整して前記支持部を往復移動させるモータとを有する付勢力調整機構と、前記作動油の温度を計測する温度センサと、前記モータの駆動力を調整する制御部と、を備え、前記制御部は、前記温度センサで計測された測定温度が第一温度以下であるとき、前記モータに第一電圧を印加する高電圧モードに設定し、前記測定温度が前記第一温度を超えたとき、前記モータに前記第一電圧より小さい第二電圧を印加する低電圧モードに設定する点にある。
本構成では、モータの回転角度を調整すれば、支持部の位置が任意に変更されるので、スプリングの付勢力を多段階に設定することができる。また、本構成のような付勢力調整機構を備えることで、従来のように、支持部の背面に作動油を供給してスプリングの付勢力を調整する場合に比べ、作動油の給排によるタイムラグが発生せず、応答性が高まる。
ところで、作動油の粘度に応じて弁体に作用する圧力が異なるので、該圧力に対抗して支持部の往復移動させるモータの必要駆動力が異なる。そこで、本構成では、作動油が低温で粘度が高い場合、弁体に作用する圧力が高いので、モータの駆動に印加する電圧を高電圧モードに設定している。一方、作動油が高温で粘度が低い場合、弁体に作用する圧力が低いので、モータの駆動に印加する電圧を低電圧モードに設定している。これによって、モータに対する印加電圧の最適化が図られ、消費電力を節約することができる。しかも、低電圧モードに設定すれば、モータの自己発熱量が小さくなるのでモータの耐久性が高まる。逆に、作動油が低温のときは、モータ周辺の雰囲気温度が低いので、モータへの印加電圧を連続して高電圧モードに設定してもモータの耐久性を低下させ難い。
このように、作動油の圧力を多段階に調整することができ、且つ消費電力を抑制しながら応答性を高めることのできる圧力調整システムを提供できた。
他の特徴構成は、前記制御部は、前記測定温度が前記第一温度を超えたときに、前記エンジンの負荷情報に基づいて前記高電圧モードに変更可能に構成されている点にある。
例えば、車両の急加速時などのエンジン負荷が大きい場合は、エンジンを円滑に稼働させるために求められる作動油の必要油圧が高くなる。つまり、エンジン負荷が大きい場合は、低電圧モードで消費電力の節約を図っているときでも、モータを高速駆動させてスプリングの付勢力を速やかに変更する必要がある。本構成のように、作動油の温度が第一温度を超えた場合でも高電圧モードに変更可能に構成することで、モータの駆動力を確保してスプリングの付勢力を確実に変更することができる。その結果、モータの応答性を高めて、エンジンの状態を安定させることができる。
他の特徴構成は、前記モータは、ステッピングモータである点にある。
本構成のようにステッピングモータを支持部の移動制御に使用することで、パルス数に応じたステップ角を細かく設定することが可能となるので、支持部の位置を精度よく設定して、作動油の圧力を多段階に調整することができる。
他の特徴構成は、前記制御部は、前記測定温度が前記第一温度より小さい第二温度以下であるとき、前記モータに印加する電圧を前記第二電圧より小さい第三電圧に低下させ、前記モータを脱調させる点にある。
作動油は、第二温度(例えば−10℃)以下になったとき、急激に粘度が上昇する傾向がある。このため、作動油の圧力が弁体を介してステッピングモータに作用する負荷トルクが極めて大きくなり、モータの駆動力が不足するおそれがある。このとき、本構成では、モータの印加電圧を極めて低い値に設定して、意図的に脱調させることとしている。つまり、高粘度の作動油の圧力変動に対抗させるのではなく、作動油の圧力が過度に高まったときにモータを脱調させることで支持部を下限位置に変位させ、作動油のリリーフを促進させる。これにより、例えば本構成の圧力調整システムにリリーフバルブを用いた場合、エンジンに循環する作動油の圧力を低下させ、暖気を促進することができる。
実施形態1に係る流路構成を示す図である。 リリーフバルブが最低圧設定時の閉弁状態を示す断面図である。 リリーフバルブの分解斜視図である。 リリーフバルブが最低圧設定時の全開状態を示す断面図である。 リリーフバルブが最高圧設定時の閉弁状態を示す断面図である。 リリーフバルブが最高圧設定時の全開状態を示す断面図である。 全体の制御フローを示す図である。 モータに対する印加電圧を決定する制御フローを示す図である。 モータに対する印加電圧の概念図である。 実施形態2に係る流路構成を示す図である。 リリーフバルブの斜視図である。 図11のXII−XII断面図である。 図11のXIII−XIII断面図である。 リリーフバルブが最低圧設定の全開状態を示す断面図である。 リリーフバルブが最高圧設定の閉弁状態を示す断面図である。 リリーフバルブが最高圧設定の全開状態を示す断面図である。 実施形態2に係る脱落防止部材の斜視図である。 実施形態3に係る圧力調整システムを示す図である。 実施形態4に係る圧力調整システムを示す図である。 別実施形態1を示す背圧逃がし構造の断面図である。 別実施形態2を示すストッパピンの断面図である。 別実施形態3を示す脱落防止部材の断面図である。
以下に、本発明に係る圧力調整システムの実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、エンジンオイル(作動油の一例。以下、単に作動油と言う。)をエンジンEに循環させるオイルポンプ6(以下、単にポンプ6と言う。)の吐出圧を調整する圧力調整システムとして、リリーフバルブXを使用した場合として説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
[実施形態1の全体構成]
図1に示すように、ポンプ6は、作動油を貯留するオイルパン7とエンジンEとの間に配置され、エンジンEのピストン、シリンダ、クランクシャフトの軸受等の被潤滑部材に作動油を循環させる。
オイルパン7に貯留された作動油は、ポンプ6の作動によって汲み上げられ、吸入流路71を介して、ポンプ6の吸入ポート61に流入する。吸入ポート61からポンプ6に流入した作動油は、インナーロータ63の回転中心とアウターロータ64の回転中心との偏心量に応じた吐出圧で、吐出ポート62から排出される。
ポンプ6から吐出された作動油は、第一流路72のオイルフィルタFで濾過された後、エンジンEに供給される。本実施形態におけるリリーフバルブXは、ポンプ6とエンジンEとの間に配置され、第一流路72から分岐した第二流路74に接続されている。本実施形態では、第二流路74をオイルフィルタFの下流側で分岐させている。これにより、作動油に混入した異物がリリーフバルブXに流入する頻度が抑制される。一方、オイルフィルタFの目詰まり等によって、ポンプ6からの吐出圧が急上昇した場合に開弁するチェックバルブGを、ポンプ6とオイルフィルタFとの間で、第一流路72から分岐した第三流路73上に配置している。なお、リリーフバルブXを、ポンプ6とオイルフィルタFとの間に配置しても良く、特に限定されない。また、チェックバルブGは、リリーフバルブで構成しても良く特に限定されない。
第二流路74を経由してリリーフバルブXに導入された作動油は、リリーフバルブXの内部流路18を流通する。リリーフバルブXが開弁状態のとき、内部流路18に流通する作動油は、第四流路75に排出され、ドレーン流路78を介してオイルパン7に戻される。その結果、ポンプ6からの吐出圧が減少した状態で、作動油がエンジンEに流通する。一方、リリーフバルブXが閉弁状態のときは、ポンプ6からの吐出圧は減少することなく、作動油がエンジンEに循環する。つまり、リリーフバルブXは、ポンプ6から吐出された作動油の圧力を調整する機能を有している。また、リリーフバルブXの上方には第五流路76が接続されており、この第五流路76もドレーン流路78に連通している。リリーフバルブXのハウジング1と弁体2との隙間から漏れ出た作動油は、この第五流路76を介してドレーンされる。
なお、第四流路75や第五流路76は、ドレーン流路78に合流させずに直接オイルパン7に連通させても良いし、ポンプ6とオイルパン7との間の吸入流路71に連通させても良い。
ポンプ6より下流側の第一流路72には、温度センサTと圧力センサPとを備えている。詳細は後述するが、圧力センサPの測定圧力Pdや温度センサTの測定温度Tdは、モータMの駆動力を調整する制御部9に入力される。さらに、制御部9には、図示しないが、クランクシャフトに設置された回転センサから測定されるエンジンEの実回転数や、スロットル開度等から測定されるエンジンEの負荷情報などが入力される。
[リリーフバルブ]
図2に示すように、リリーフバルブXは、ハウジング1と弁体2とスプリング3とリテーナ4(支持部の一例)とモータMとを備えている。以下、弁体2側を上方、モータM側を下方として適宜説明する。
ハウジング1には、ポンプ6から吐出される作動油を導入する導入ポート11と、導入された作動油を排出するリリーフポート12とが、側壁に形成されている。また、ハウジング1の上方には、弁体2が移動するときの呼吸孔であると共に、漏れ出た作動油を排出するドレーンポート13が形成されている。
ハウジング1の内周面には、弁体2とスプリング3とリテーナ4とが収容される円筒状の内孔部14が形成されている。また、ハウジング1は、内孔部14に囲まれた空間のうち、導入ポート11とリリーフポート12との間に、ポンプ6から吐出された作動油が流通する内部流路18を有している。図3に示すように、導入ポート11およびリリーフポート12の断面は矩形状に形成され、リリーフポート12の断面積は、導入ポート11の断面積より大きく構成されている。また、図2に示すように、リリーフポート12の径方向の長さは、内孔部14の径方向の長さより大きく構成されている。なお、導入ポート11やリリーフポート12の断面を矩形状に形成せずに、円形状などどのような形状であっても良い。
弁体2は、ハウジング1の内部に収容され、内部流路18に流通する作動油の圧力を受けて往復移動する。弁体2の往復移動は、ハウジング1の内孔部14に摺接しながらガイドされる。この弁体2は、少なくとも、図2に示す位置から図4に示す位置までの可動領域19で往復移動可能である。
弁体2は、内部流路18を流通する作動油の圧力を受ける第一受圧部21と第二受圧部22とを備えている。第二受圧部22は、スプリング3側で第一受圧部21と対向して配置され、第一受圧部21と連結部材23で連結されている。
第一受圧部21には、内部流路18を流通する作動油の圧力を受ける第一受圧面21aと、この第一受圧面21aとは反対側に円錐台状の天面部21bとが形成されている。第二受圧部22には、第一受圧面21aより大きな受圧面積で、内部流路18を流通する作動油の圧力を受ける第二受圧面22aと、第二受圧面22aとは反対側に有底筒状の第一凹部22bとが形成されている。図3に示すように、第二受圧部22の外表面には環状溝22cが形成され、この環状溝22cにリリーフポート12と連通する貫通孔部22dを複数設けている。なお、貫通孔部22dは一つでも良いし、環状溝22cを形成しなくても良く、特に限定されない。
弁体2は、第二受圧部22がリリーフポート12を閉塞する排出不能位置(図2参照)から、第二受圧部22の第一凹部22bの下端部がリリーフポート12の下端部に接触する排出全開位置(図4参照)までの可動領域19で往復移動する。つまり、第一凹部22bの貫通孔部22dは、第一凹部22bの可動領域19a(特に弁体2が図4の位置に移動した場合)において、リリーフポート12と連通するように構成されており、弁体2が往復移動する際の呼吸孔となる。
スプリング3は、弁体2に作用する作動油の圧力と対向する方向(導入ポート11の側)に、弁体2を付勢している。スプリング3の一端は、弁体2の第一凹部22bに支持され、スプリング3の他端は、後述するリテーナ4の第二凹部42に支持される。
リテーナ4は、有底筒状に形成され、ハウジング1の内部を往復移動する。リテーナ4の往復移動は、ハウジング1の内孔部14に摺接しながらガイドされる。図3に示すように、リテーナ4は、スプリング3の他端(弁体2とは反対側の端部)を保持する有底筒状の第二凹部42と、第二凹部42とは反対側(モータM側)の端部41を径外方向に環状に突出させた突出部41aとを有している。図5に示すように、突出部41aは、ハウジング1の内孔部14に形成された段差部16と当接してリテーナ4の上限位置OSが決定される。
図3に示すように、リテーナ4の端部41の中央には、モータMのシャフト51がスライド挿入されるスライド孔部41bが切欠き形成されている。また、図2に示すように、スプリング3の収容空間が、リテーナ4とモータMとの間の空間と連通するように、スライド孔部41bの側方を貫通形成した孔部41cが形成されている。
本実施形態におけるモータMは、回転角度を調整してリテーナ4を往復移動させるステッピングモータで構成されている。なお、ステッピングモータは公知なので、詳細な説明は省略する。
モータMは、ケース52を備え、このケース52の内部には、後述する制御部9からの信号を受けて通電される固定子コイル54と、固定子コイル54からの磁束を受けて回転するロータ53とが収容されている。また、モータMは、リテーナ4と接続されるシャフト51を有し、シャフト51の外表面には、ロータ53の雌ねじ部53aと螺合される雄ねじ部51aが形成されている。
ロータ53が回転することで、ロータ53の内表面に形成された雌ねじ部53aと螺合している雄ねじ部51aが直動する。つまり、ロータ53の雌ねじ部53aとシャフト51の雄ねじ部51aとで、モータMの回転運動を直動運動に変換する直動変換機構を構成している。なお、この直動変換機構には、ウォームギアなどを用いて構成しても良いし、リテーナ4にシャフト51の雄ねじ部51aと螺合する雌ねじ部を設けても良く、どのような形態であっても良い。
続いて、本実施形態におけるリリーフバルブXの組立手順について説明する。図3に示すように、リテーナ4のスライド孔部41bに、径方向からモータMのシャフト51を挿入する。次いで、ハウジング1に弁体2、後述するスナップリング20、スプリング3、リテーナ4及びモータMを順番に挿入する。次いで、モータMのケース52に形成したフランジ部55を、ハウジング1に形成したフランジ部15に重ねた状態で、ボルトBで締結する。このとき、図2に示すように、ケース52のフランジ部55とハウジング1のフランジ部15との間には環状のシール部材S1が装着されている。このシール部材S1によって、ハウジング1の内部に存在する作動油が外部に漏れ出ることが防止される。
[付勢力調整機構]
図2には、リテーナ4が下限位置OLにある状態が示され、図5にはリテーナ4が上限位置OSにある状態が示される。上述したように、モータMによってリテーナ4を往復移動させる。その結果、図2に示されるスプリング3が最も伸長された状態から、図5に示されるスプリング3が最も短縮された状態までの間で、スプリング3のセット長が変更される。このように、モータMの駆動力を受けてリテーナ4が往復移動することで、スプリング3のセット長を変更する付勢力調整機構Dが構成されている。つまり、この付勢力調整機構Dは、スプリング3とリテーナ4とモータ5とで構成されている。
図2の状態では、スプリング3の付勢力が最も小さいので、リリーフバルブXのリリーフ圧が最低圧設定となっている。一方、図5の状態では、スプリング3の付勢力が最も大きいので、リリーフバルブXのリリーフ圧が最高圧設定となっている。
上述したように、本実施形態のモータMはステッピングモータなので、モータMに印加されるパルス数Pnに応じたステップ角Asを細かく調整することで、リテーナ4の位置を細かく設定することができる。例えば、1パルスのステップ角Asが15度であるとすると、24パルスでモータMが一回転する。一回転当たりのリテーナ4の移動距離Lを1mmとした場合、モータMが10回転することでリテーナ4を10mm移動させることができる。つまり、スプリング3のセット長を、パルス数Pnに応じて多段階(例えば、240通り)に変更することができるのである。しかも、モータMによってリテーナ4の位置を設定する構成なので、作動油の粘性や脈動等に影響を受けることなく、スプリング3の付勢力を精度よく調整することができる。
スプリング3の付勢力が調整された状態で、ハウジング1の内部流路18に作動油が流通すると、両受圧面21a,22aの面積差に応じて作動油の圧力が付与される。この圧力がスプリング3の付勢力を上回ると弁体2が下降し始め、リリーフポート12が開口し、作動油がオイルパン7にドレーンされる。さらに、弁体2が下降すると、リリーフポート12の開口面積に応じた作動油の量がドレーンされる。つまり、ポンプ6の吐出圧が所定の閾値を超えると、エンジンEに流通する作動油の圧力がリリーフされる構成になっている。
図2に示すようにリリーフ圧が最低圧設定の場合、両受圧面21a,22aの面積差に応じた圧力が第一圧力まで上昇すると弁体2が下降し始め、第二圧力に到達すると、図4に示すようにリリーフポート12が全開状態となる。一方、図5に示すようにリリーフ圧が最高圧設定の場合、両受圧面21a,22aの面積差に応じた圧力が第一圧力より大きい第三圧力で弁体2が下降し始め、第二圧力より大きい第四圧力に到達すると、図6に示すようにリリーフポート12が全開状態となる。
つまり、上述したような付勢力調整機構Dによって、リリーフバルブXの開弁開始圧を第一圧力から第三圧力の間で設定でき、リリーフバルブXの全開圧を第二圧力から第四圧力の間で任意に設定することができる。このため、エンジンEの運転状態に応じてスプリング3のセット長を変更すれば、ポンプ6の運転効率の最適化を図ることができる。また、モータMのパルス数Pnを調整すれば、リテーナ4の移動距離Lを速やかに変更することができる。
しかも、本実施形態では、両受圧面21a,22aの面積差に応じて、弁体2に圧力が付与される。つまり、流体圧力に対して比較的小さな差圧力によって弁体2を開弁させることができるので、スプリング3の付勢力が小さく設定される。その結果、スプリング3のセット長を変更させるモータMの駆動力を小さく設定でき、モータMの小型化が図られる。
一方、弁体2とリテーナ4との間にスプリング3を配置して、リテーナ4を弁体2に対して相対移動させる場合、スプリング3の収容空間に存在する空気や、ハウジング1と弁体2との隙間から侵入した作動油が背圧抵抗となって、弁体2やリテーナ4の往復移動を阻害する。しかしながら、上述したように、弁体2の第一凹部22bの貫通孔部22dは、第一凹部22bの可動領域19aにおいて、リリーフポート12と連通するように構成されているので、スプリング3の収容空間に存在する空気や作動油が常に排出される。よって、弁体2やリテーナ4を円滑に移動させることができる。しかも、リリーフポート12が背圧逃がし孔の機能を兼ねるので、ハウジング1に別途、背圧逃がし孔を形成する必要がなく合理的である。
弁体2に、最低圧設定時に第二圧力より大きい、又は最高圧設定時に第四圧力より大きい作動流体の圧力を受けると、第一凹部22bの貫通孔部22dがリリーフポート12に連通しなくなるおそれがある。そこで、本実施形態では、図4に示すように、弁体2のリテーナ4側への移動を制限するスナップリング20(移動阻止部の一例)を、弁体2の第一凹部22bとリテーナ4との間に設けても良い。これによって、スプリング3の収容空間に存在する空気や作動油を確実に排出することができる。このスナップリング20は、ハウジング1の内孔部14に形成した溝に嵌め込まれる。なお、移動阻止部は、弁体2のリテーナ4側への移動を制限するものであれば、ハウジング1の側壁にストッパを突出形成するなどしても良く、特に限定されない。
このスプリング3の収容空間に存在する作動油は、リテーナ4とハウジング1との隙間からリテーナ4とモータMのケース52と間の空間に漏れ出すことがある。しかし、リテーナ4の端部41には孔部41cが形成されているので、スプリング3の収容空間に戻され、リリーフポート12からドレーンされる。同時に、リテーナ4とモータMのケース52と間の空間にある空気も、孔部41cからスプリング3の収容空間に戻されるので、リテーナ4の往復移動を阻害することはない。
[基準位置設定機構]
ところで、モータMを構成するステッピングモータは、所定の電圧Vcを印加して駆動している場合でも、弁体2に付与される高圧力などに起因して、モータMに付与される負荷トルクが大きくなれば、モータMの回転制御または静止制御が阻止される脱調現象が発生する。この脱調現象が発生した場合、リテーナ4の現在位置が把握できないので、次にモータMを所定のステップ角Asで回転させても、リテーナ4が所望の位置に設定されない。
そこで、本実施形態では、上述したリテーナ4の突出部41aをハウジング1の段差部16に当接させてモータMを脱調させ、モータMの基準位置を設定する基準位置設定機構Cを備えている。これは、リテーナ4の機械的な移動位置とモータMが認識する電気的な移動位置とがずれないように、定期的にリテーナ4の位置をリセットするために脱調させるのである。具体的には、図5に示すように、リテーナ4を、上限位置OSでハウジング1に当接させることで、スプリング3の付勢力を最大に設定する。その結果、リリーフ圧が最高圧設定となるので、例えば、エンジンEの回転数が高くエンジンEに循環させる作動油の圧力が必要となる状況下で基準位置設定機構Cを実行した場合であっても、ポンプ6の吐出圧を低下させることがない。
この基準位置設定機構Cは、例えば、作動油が高温で粘度が低下し、圧力センサPの測定圧力Pdが低いときに実行するのが好ましい。これによって、スプリング3の付勢力を増大させてリリーフポート12が閉じ状態となるので、エンジンEに循環させる作動油量を確保して、エンジンEの焼付きを確実に防止することができる。また、基準位置設定機構Cを、エンジンEが始動されてモータMが起動するタイミングで実行しても良い。この場合、エンジンEの始動時には、エンジンEの停止前におけるモータMの脱調の有無に関わらず、常にモータMの基準位置を再設定した状態で付勢力調整機構Dを実行することができるので、制御精度が高まる。
[制御部]
図7には、リリーフバルブXの制御フローが示される。制御部9は、モータMの駆動力を調整してリテーナ4の往復移動を制御する。以下、図7〜図9を用いて、リリーフバルブXの制御方法を説明する。
まず、モータMの基準位置を設定する基準位置設定機構Cを実行するか判定する(♯70)。基準位置設定機構Cは、モータMの起動から所定時間経過する毎に実行しても良いし、リリーフポート12が閉じ状態となるように、温度センサTの測定温度Tdが所定値以上又は圧力センサPの測定圧力Pdが所定値以下のときに実行しても良い。また、温度センサTの測定温度Tdが所定値以下で作動油の粘度が高い場合はモータMが脱調し易いので、基準位置設定機構Cの実行頻度を高めても良い。基準位置設定機構Cを実行する場合(♯70Yes判定)、リテーナ4を下限位置OLから上限位置OSまで移動させる距離に等しい最大パルス数でモータMを駆動させる(♯701)。これによって、リテーナ4が下限位置OL付近にあったとしても、リテーナ4を上限位置OSまで移動させ、モータMの基準位置を確実に設定することができる。一方、リテーナ4が下限位置OLと上限位置OSとの間にあった場合は、リテーナ4がハウジング1に当接する上限位置OSで、モータMを脱調させてモータMの基準位置が設定される。
次いで、圧力センサPの測定圧力Pd、温度センサTの測定温度Td、エンジンEの実回転数やスロットル開度に基づくエンジン負荷などを計測する(♯71)。次いで、温度センサTの測定温度Td、エンジンEの実回転数やエンジン負荷をエンジン状態関数φ(i)(iは入力変数の種類数)に入力して、目標圧力Pcを演算する(♯72)。ここで、エンジン状態関数φ(i)は、実験値や経験則に基づいて関数化されている。なお、エンジン状態関数φ(i)を所定の入力変数に対してマップ化しても良い。このとき、例えば、作動油の測定温度Tdが高く、且つエンジンEの負荷が大きい場合は、エンジンEの焼付きを確実に防止するために、リリーフ圧が高圧設定側になるよう目標圧力Pcに補正係数を乗算しても良い。
次いで、圧力差Px(測定圧力Pd−目標圧力Pc)と、エンジン状態関数φ(i)とにより、リテーナ4の移動距離Lを演算する(♯73)。移動距離Lは、目標圧力Pcに測定圧力Pdが近づくように、スプリング3の伸縮量を決定する。
次いで、エンジン状態関数φ(i)、目標圧力Pc、測定圧力Pdに基づきリテーナ4の移動速度である応答時間Timeを決定する(♯74)。例えば、圧力差Pxが大きく、且つエンジンEの回転数が大きい場合は、エンジンEに作動油を早急に供給するべく、応答時間Timeを早める。一方、エンジンEの始動時など、作動油の測定温度Tdが低く粘度が高い場合は、モータMに対する負荷トルクが大きいので、モータMが適正に起動できる最大自起動周波数を超えないように、応答時間Timeを複数に分割設定しても良い。この場合、最初の第一応答時間Time1を、次の第二応答時間Time2以降より長く設定し、モータMが加速するにつれて後述するパルス周波数PPSを高めに設定すれば、モータMの脱調を防止することができる。
次いで、モータMへの印加電圧Vcを設定する(♯75)。この印加電圧Vcを設定について、図8〜図9を用いて説明する。本実施形態では、モータMへの印加電圧Vcの設定において、温度センサTの測定温度Tdを考慮する。
一般的に、作動油の粘度は作動油の温度と負の相関関係があり、作動油の温度が低いと粘度が高く、作動油の温度が高いと粘度が低くなる。また、粘度が高いほど作動油の圧力が増加し、粘度が低いほど作動油の圧力が低下する。つまり、弁体2に作用する圧力が作動油の温度に反比例し、この圧力がモータMへの負荷トルクとなるので、作動油の温度に応じてモータMへの印加電圧Vcを決定すれば、無駄な電力消費を抑制することとしている。
図8に示すように、まず、温度センサTの測定温度Tdが第一温度T1(例えば20℃)以下であるか否かが判定される(♯81)。測定温度Tdが第一温度T1以下である場合(♯81Yes判定)、測定温度Tdが第二温度T2(−10℃付近)以下であるかが判定される(♯82)。
ところで、作動油の温度が極低温となる例えば第二温度T2(−10℃付近)より低くなると粘度が急増することが知られている。この場合、モータMには、保持トルクを超える負荷トルクが付与されるおそれがある。このため、測定温度Tdが第二温度T2以下の場合(♯82Yes判定)、モータMを意図的に脱調させる脱調モード(♯89)に設定する。つまり、モータMへの印加電圧Vcを0Vに近い第三電圧V4に設定する。
測定温度Tdが第二温度T2より大きい場合(♯82Nо判定)、モータMへの負荷トルクに対抗できるように、モータMへの印加電圧Vcを高電圧V1(第一電圧、例えば12V)とする高電圧モードに設定する(♯88)。この場合、モータMを高電圧に設定しても、作動油が低温であるのでモータM周辺の雰囲気温度が低く、モータMの耐久性を低下させ難い。
一方、測定温度Tdが第一温度T1より大きい場合(♯81No判定)、エンジンEに至急作動油を供給する必要があるか否かの判断値となる高速作動判断値Kを演算する(♯83)。この高速作動判断値Kは、例えば、スロット開度などによるエンジン負荷情報に基づき、マップなど用いて数値化したものである。高速作動判断値Kが大きいほど、エンジンEに対する作動油の供給量(圧力)が大きくするように定義されている。なお、高速作動判断値Kに、目標圧力Pc、測定圧力Pd、又は応答時間Timeのいずれか一つ又は複数組み合わせてマップ化しても良い。
次いで、高速作動判断値Kが所定の閾値K1より大きいか否かが判定される(♯84)。高速作動判断値Kが所定の閾値K1より大きい場合(♯84Yes判定)、モータMの応答速度を上げても脱調しないように高電圧モードに設定する(♯88)。
高速作動判断値Kが所定の閾値K1以下の場合(♯84No判定)、モータMの駆動電力を抑制するため、低電圧モードに移行する。これによって、モータMに対する消費電力を節約することができると共に、高電圧の継続運転に起因するモータMの耐久性の低下を防止することができる。ここで、本実施形態では、更なる消費電力の節約を図るため、低電圧モードを2分割している。このため、測定温度Tdが第三温度T3(例えば80℃)より大きいか否かが判定される(♯85)。
測定温度Tdが第三温度T3以下である場合(♯85No判定)、モータMへの印加電圧Vcを低電圧V2(第二電圧の一例、例えば8V)とする低電圧モード(1)に設定する(♯87)。一方、測定温度Tdが第三温度T3より大きい場合(♯85Yes判定)、モータMへの印加電圧Vcを低電圧V2より低い低電圧V3(第二電圧の一例、例えば5V以下)とする低電圧モード(2)に設定する(♯86)。これは、作動油の粘度がかなり低下し、モータMへの負荷トルクが相当小さくなるので、小さな低電圧V3でもモータMを駆動することができるからである。
図9では、温度センサTの測定温度Tdに応じたモータMへの印加電圧Vcの設定モードを模式的に示している。上述したように、測定温度Tdが第一温度T1以下であるとき、モータMに高電圧V1を印加する高電圧モードに設定される。一方、測定温度Tdが第一温度T1を超えたとき、モータMに高電圧V1より小さい低電圧V2又は低電圧V3を印加する低電圧モードに設定される。また、測定温度Tdが第一温度T1を超え、且つ、高速作動判断値Kが所定の閾値K1より大きい場合は、高電圧モードに設定される。さらに、測定温度Tdが第一温度T1より小さい第二温度T2以下であるとき、モータMに低電圧V2又は低電圧V3より小さい第三電圧V4に低下させて、モータMを意図的に脱調させる。これによって、リリーフバルブXのリリーフ圧が最低圧設定となり、エンジンEに循環する作動油の圧力が減少するので、エンジンEの暖機が促進される。なお、エンジンEの始動時において、エンジンEの暖機を促進するために、モータMを意図的に脱調させてリリーフバルブXから作動油をリリーフさせても良い。また、電圧モードの分割数は、さらに細分化しても良いし、低電圧モード(1)と低電圧モード(2)を一つにしても良いし、測定温度Tdが大きくなるにつれて、印加電圧Vcを連続的に低くしても良く、特に限定されない。
続いて、モータMの印加電圧Vcを設定した後、図7のフローに戻り、リテーナ4の移動距離Lに対するパルス数Pn=Si×(L/Li)(Siはモータ1回転当たりのステップ数、Liはモータ1回転当たりのリテーナ移動距離)を演算する(♯76)。次いで、パルス数Pnおよび応答時間Timeから、パルス周波数PPS=Pn/Timeを演算する(♯77)。次いで、モータMにパルス周波数PPSで所定の電圧Vcを印加すれば(♯78)、モータMがパルス数Pnに応じたステップ角Asだけ回転する(♯79)。その結果、リテーナ4の位置が移動距離Lだけ変化して、スプリング3が伸長又は短縮されることでリリーフ圧が変更される(♯80)。よって、エンジンEの状況に応じて、ポンプ6の運転効率が最も高いリリーフ圧を選択することができる。なお、制御部9の制御方法として、温度センサTの測定温度Tdに応じてモータMへの印加電圧Vcを変更する例を示したが、温度センサTの測定温度Tdに応じてモータMに印加する電流値を変更する構成としても良い。
以下、実施形態2〜4および別実施形態について説明する。基本構成は、上述した実施形態1と同様であるため、異なる構成についてのみ図面を用いて説明する。なお、図面の理解を容易にするため、実施形態1と同じ部材名称及び符号を用いて説明する。
[実施形態2]
図12に示すように、本実施形態では、実施形態1の弁体2の第一凹部22bの側壁に形成した貫通孔部22dとリリーフポート12とを連通させる構成に代えて、ハウジング1の側壁に、スプリング3の収容空間と連通する背圧孔部17が貫通形成されている。
リリーフバルブXが最低圧設定では、弁体2が閉弁している図12の状態から弁体2が全開する図14の状態に移行したとき、背圧孔部17は、第一凹部22bと第二凹部42との間の領域にほぼ等しい長さを有している。また、リリーフバルブXが最高圧設定では、弁体2が閉弁している図15の状態から弁体2が全開する図16の状態に移行したとき、背圧孔部17の半分が第一凹部22bと第二凹部42との間の領域に等しい長さとなっている。このように、背圧孔部17は、弁体2の第一凹部22bとリテーナ4の第二凹部42とが最も接近したとき、スプリング3の収容空間(少なくとも第一凹部22bと第二凹部42との間の領域)に連通している。また、弁体2の移動は、ハウジング1に固定されたスナップリング20によって制限されるので、第一凹部22bが背圧孔部17を閉塞することがない。なお、本実施形態では、背圧孔部17を長孔形状に構成しているが、円形状や矩形状などどのような形状であっても良い。また、弁体2の第一凹部22bとリテーナ4の第二凹部42とが最も接近したときに、スプリング収容空間の背圧を逃がす構造であれば、背圧孔部17を分割して複数設けても良く、特に限定されない。
図10〜図11に示すように、本実施形態では、スプリング3の収容空間にある空気や作動油を逃がす背圧孔部17を、ドレーン流路78に繋がる第六流路77と接続させている。これによって、スプリング3の収容空間にある空気や作動油がオイルパン7に排出されるので、リテーナ4を円滑に往復移動させることができる。なお、第六流路77は、ドレーン流路78に合流せずに直接オイルパン7に連通させても良いし、ポンプ6とオイルパン7との間の吸入流路71に連通させても良い。
図12〜図13に示すように、本実施形態では、実施形態1のリテーナ4の第二凹部42に形成した突出部41aに代えて、モータMのシャフト51の端部に形成された孔部51bに挿入される棒状のストッパピン8を備えている。つまり、基準位置設定機構Cは、ハウジング1の段差部16と、ストッパピン8と、モータMとで構成される。
図15に示すように、このストッパピン8をハウジング1の段差部16に当接させることで、リテーナ4の上限位置OSでモータMの基準位置が設定される。シャフト51をリテーナ4の端部41の中央に挿入しつつ、ストッパピン8を径方向からシャフト51の端部に形成された孔部51bに挿入すれば、モータMがリテーナ4に接続される。つまり、ストッパピン8は、シャフト51の抜け止め機能と、モータMの基準位置を設定する機能とを兼ねている。
図12に示すように、本実施形態では、実施形態1のハウジング1とモータMとの接合面に設けた環状のシール部材S1に代えて、ハウジング1の内周面とリテーナ4の外周面との間に環状のシール部材S2を装着している。つまり、シール部材S2によって、ハウジング1とリテーナ4との隙間からモータMの方に作動油が漏れ出るといった不都合が防止される。このため、本実施形態では、実施形態1のようにリテーナ4の端部41に孔部41cを形成していない。なお、リテーナ4とモータMとの間の空気を逃がす貫通孔部を、ハウジング1の側壁やモータMのケース52に設けても良い。
また、シール部材S2の脱落を防止する筒状の脱落防止部材90を、シール部材S2とモータMとの間に配置している。図17に示すように、脱落防止部材90は、ストッパピン8の往復移動を許容する凹部91と、リテーナ4の往復移動を許容するリテーナ収容部92とを有している。この凹部91によって、リテーナ4の円滑な移動が担保される。凹部91は、脱落防止部材90の底部を径方向に切欠き形成され、リテーナ収容部92は、脱落防止部材90を軸方向に沿って貫通形成している。なお、図15に示すように、凹部91は、ストッパピン8が上限位置OSに移動した際、ストッパピン8と凹部91の底部とが当接しない形状である。これによって、ストッパピン8が脱落防止部材90に当接することによるシール部材S2の損傷を防止することができる。
[実施形態3]
図18に示すように、本実施形態では、実施形態1〜2に示すようにリリーフバルブXを用いてポンプ6の吐出圧を調整するのではなく、インナーロータ63に対するアウターロータ64の偏心量を調整部材の操作によって変更し、ポンプ6の吐出圧を調整することとしている。
ポンプ6は、ハウジング1と、インナーロータ63と、アウターロータ64と、調整リング65(調整部材の一例)と、操作部65a(弁体の一例)と、付勢力調整機構Dとを備えている。インナーロータ63は、エンジンEのクランクシャフトからの回転動力が伝達され、第一回転軸芯Y1で回転する。アウターロータ64は、第一回転軸芯Y1に対して偏心する第二回転軸芯Y2でインナーロータ63の回転に応じて回転する。
ハウジング1は、吸入ポート61と吐出ポート62とを備え、吐出ポート62から吐出された作動油が流通する内部流路18を有している。吐出ポート62から吐出された作動油は、第一流路72を経由してエンジンEの被潤滑部材に流通すると共に、第一流路72から分岐した第二流路74上にある電磁弁Hを介して内部流路18に流通する。この電磁弁Hは、内部流路18に作動油を供給する供給状態と、内部流路18の作動油を排出するドレーン状態とに切換え可能に構成されている。なお、電磁弁Hを設けない構成としても良い。
調整リング65は、アウターロータ64を径方向外側から相対回転自在に支持し、第二回転軸芯Y2と同軸芯のリング状に形成され、径外方向に突出する操作部65aが接続されている。電磁弁Hが供給状態となり、調整リング65の操作部65aに内部流路18を流通する作動油の圧力が付与されると、操作部65aがハウジング1の内部で往復移動することで、調整リング65が第二回転軸芯Y2周りで公転する。その結果、ガイドピン65bとガイド溝65cとが互いに所期の範囲に亘って摺動し、第一回転軸芯Y1と第二回転軸芯Y2とが接近することで、ポンプ6の吐出圧が減少する。つまり、調整リング65が公転することで、アウターロータ64のインナーロータ63に対する偏心量が調整され、ポンプ6の吐出圧が調整されるように構成されている。
調整リング65には、付勢力調整機構Dが接続されている。付勢力調整機構Dは、スプリング3とリテーナ4とモータMとで構成される。なお、この付勢力調整機構Dやその他の構成は、上述した実施形態1〜2と同様の機能を有し、同様の作用効果を奏するので詳細な説明は省略する。
[実施形態4]
図19に示すように、実施形態1〜2のリリーフバルブXに代えて、ハウジング1の内部流路18の流通面積を変更する流量制御弁としても良い。本実施形態では、弁体2の第一受圧部21が内部流路18に突出、引退することによって流路面積が変更され、第一流路72から内部流路18に流入した作動油の圧力が調整される。この圧力が調整された作動油は、第七流路79を経由してエンジンEに供給される。本実施形態においても、上述した実施形態1〜2と同様の作用効果が期待できる。
[別実施形態1]
図20に示すように、スプリング3の収容空間の背圧逃がし構造として、リテーナ4の第二凹部42の側壁に貫通孔部42aを形成し、ハウジング1の側壁に形成した背圧孔部17と連通させても良い。ハウジング1の背圧孔部17は、リリーフバルブXの最低圧設定となるリテーナ4の下限位置OLから、リリーフバルブXの最高圧設定となるリテーナ4の上限位置OSまでにおける第二凹部42の可動領域19a(特にリテーナ4が図15の位置に移動した場合)において、貫通孔部42aと連通するように形成され、弁体2やリテーナ4が往復移動する際の呼吸孔となる。この場合、ハウジング1の上方や中央付近に背圧孔部17を設ける場合に比べ、リテーナ4まで下降した作動油を速やかに排出させることができる。
なお、図20に示すように、リテーナ4の外表面に環状溝42bを形成しても良い。また、環状溝42bに代え、ハウジング1の内孔部14に環状溝を形成して第二凹部42の貫通孔部42aに連通させても良いし、ハウジング1の背圧孔部17の開口面積を大きくして第二凹部42の貫通孔部42aに連通させても良く、特に限定されない。
[別実施形態2]
図21に示すように、ストッパピン8の形状を十字状に形成し、脱落防止部材90の底部を十字状に切欠き形成しても良い。この場合、周方向にバランスよくストッパピン8が延在しているので、ストッパピン8の移動姿勢を安定させることができる。
[別実施形態3]
図22に示すように、脱落防止部材90を、シール部材S2とモータMとの間で、ハウジング1に当接させると共に、ストッパピン8を脱落防止部材90の凹部91の底面に当接させて、リテーナ4の上限位置OSを設定する構成としても良い。この場合、ストッパピン8が脱落防止部材90に当接しても、この脱落防止部材90がハウジング1と当接して移動が阻止されるので、シール部材S2が強く押し付けられるといった不都合が生じない。よって、シール部材S2の損傷を確実に防止することができる。
[その他の実施形態]
(1)上述した各実施形態の構成は、適宜組み合わせても良い。例えば、実施形態1に係るリテーナ4の突出部41aを、実施形態2や別実施形態2のようなピン形状にしても良い。また、実施形態1のリリーフバルブXに、実施形態2のごとく、ハウジング1の内周面とリテーナ4の外周面との間に環状のシール部材S2を配置し、シール部材S2の脱落を防止する筒状の脱落防止部材90を設けても良い。
(2)制御部9のエンジン状態関数φ(i)に対する入力変数は、少なくとも作動油の温度とエンジンEの回転数とで構成されていれば良く、エンジンEの負荷情報等を省略しても良い。この場合でも、作動油の粘度に応じてモータMへの印加電圧Vcを設定することで、消費電力を節約できると共に、エンジンEの回転数に応じてスプリング3の付勢力を調整すればポンプ6の運転効率を高めることができる。
(3)上述した実施形態1〜2のエンジンEの被潤滑部材に供給する流路を、実施形態4のようにハウジング1の内部流路18を介して第七流路79に接続しても良い。
(4)上述した実施形態におけるモータMは、ステッピングモータに限定されず、例えば、フィードバック制御によって回転角度を調整可能なサーボモータなどで構成しても良い。
(5)上述した実施形態に係るポンプ6は、トロコイドポンプの例を示したが、ベーンポンプ等どのような形態であっても良い。
(6)上述した実施形態における各構成物品の形状は、その機能が確保される限りにおいて適宜変更することが可能である。
本発明は、エンジンの被潤滑部材に作動油を循環させるオイルポンプといった各種作動ポンプの吐出圧を調整する圧力調整システムに利用可能である。
1 ハウジング
18 内部流路
2 弁体
3 スプリング
4 リテーナ(支持部)
6 オイルポンプ
9 制御部
D 付勢力調整機構
E エンジン
K 高速作動判断値
L 移動距離
M モータ(ステッピングモータ)
T 温度センサ
T1 第一温度
T2 第二温度
Td 測定圧力
Vc 印加電圧
V1 第一電圧
V2,V3 第二電圧
V4 第三電圧

Claims (4)

  1. エンジンに作動油を循環させるオイルポンプと、
    前記オイルポンプから吐出される作動油が流通する内部流路を有するハウジングと、
    前記ハウジングの内部で往復移動可能であり、前記内部流路に流通する作動油の圧力を受ける弁体と、
    前記弁体を前記圧力に対向する方向に付勢するスプリングと、前記スプリングの前記弁体とは反対側の端部を保持する支持部と、回転角度を調整して前記支持部を往復移動させるモータとを有する付勢力調整機構と、
    前記作動油の温度を計測する温度センサと、
    前記モータの駆動力を調整する制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記温度センサで計測された測定温度が第一温度以下であるとき、前記モータに第一電圧を印加する高電圧モードに設定し、前記測定温度が前記第一温度を超えたとき、前記モータに前記第一電圧より小さい第二電圧を印加する低電圧モードに設定する圧力調整システム。
  2. 前記制御部は、前記測定温度が前記第一温度を超えたときに、前記エンジンの負荷情報に基づいて前記高電圧モードに変更可能に構成されている請求項1に記載の圧力調整システム。
  3. 前記モータは、ステッピングモータである請求項1又は2に記載の圧力調整システム。
  4. 前記制御部は、前記測定温度が前記第一温度より小さい第二温度以下であるとき、前記モータに印加する電圧を前記第二電圧より小さい第三電圧に低下させ、前記モータを脱調させる請求項3に記載の圧力調整システム。
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