以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
[第1の実施形態]
図2は、本実施形態に係るエンジン制御装置1を含む車両の構成の一例を示すブロック図である。
エンジン制御装置1は、当該車両の駆動力源であるエンジン10を制御し、スタータ11、オルタネータ12、バッテリ20、エンジンECU30、アイドルストップECU40、補機負荷50、MC圧センサ60、車速センサ70、シフトレンジセンサ80を含む。
スタータ11は、エンジン10を始動させる始動装置である。後述するバッテリ20からの電力供給により駆動する。
オルタネータ12は、エンジン10の動力により駆動される直流発電機であり、交流発電機と該交流発電機による三相交流電力を直流化する整流器等により構成されてよい。クランク軸10cからベルト10bを介して、エンジン10の動力が伝達され、オルタネータ12は、発電することができる。
バッテリ20は、スタータ11、エンジンECU30、アイドルストップECU40、補機負荷50等に電気的に接続され、これらに電力を供給可能な蓄電装置である。例えば、鉛バッテリ等が用いられてよく、定格電圧(両端電圧)は、約12Vである。また、バッテリ20は、オルタネータ12と接続され、オルタネータ12により発電された電力を充電することができる。
エンジンECU30は、エンジン10を制御する電子制御ユニットである。例えば、マイクロコンピュータにより構成されてよく、ROMに格納された各種プログラムをCPU上で実行することにより後述する各種制御処理を実行してよい。具体的には、アクセル開度、車速、クランク角、カム角、エンジン回転数等に基づいて、エンジン10の燃料インジェクタ(燃料噴射時期、量等)、点火プラグ(点火時期等)、吸排気バルブ(開閉時期等)等を制御する。
また、エンジンECU30は、バッテリ20からスタータ11への電力供給経路に設けられるリレー11rを制御することによりスタータ11を駆動し、エンジン10を始動する。例えば、運転者がイグニッションスイッチ(IGスイッチ)をオンにしたら、該オン信号がエンジンECU30に入力され、エンジンECU30はリレー11rを通電することによりエンジン10を始動させる。また、エンジンECU30は、エンジン10への燃料供給をカットすることによりエンジン10を停止させる。例えば、運転者がIGスイッチをオフにしたら、該オフ信号がエンジンECU30に入力され、エンジンECU30はエンジン10の各気筒への燃料供給を所定のタイミングでカットすることによりエンジン10を停止させる。
また、エンジンECU30は、後述するアイドルストップECU40から出力されるエンジン停止要求を受信し、該エンジン停止要求に応じて、燃料供給をカットすることで、エンジン10を停止させる。また、エンジンECU30は、アイドルストップECU40から出力されるエンジン始動要求を受信し、該エンジン始動要求に応じて、リレー11rを制御することによりスタータ11を駆動し、エンジン10を始動させる。このように、エンジンECU30は、当該車両のアイドルストップ動作におけるエンジン停止又はエンジン始動の制御を直接実行する。なお、エンジンECU30は、エンジン10内のクランク角センサ(不図示)等からの信号によりエンジン10の停止、始動を検出可能であり、エンジン10が停止又は始動した旨の信号(エンジン停止信号、エンジン始動信号)をアイドルストップECU40に出力する。
アイドルストップECU40は、当該車両のアイドルストップ制御を行う電子制御ユニットである。例えば、マイクロコンピュータにより構成されてよく、ROMに格納された各種プログラムをCPU上で実行することにより後述する各種制御処理を実行してよい。具体的には、所定のエンジン停止条件を満足するか否かを判定し、該エンジン停止条件を満足する場合、エンジンECU30に対してエンジン停止要求を出力する。例えば、アイドルストップECU40は、マスタシリンダ圧(以下、MC圧と呼ぶ)が所定踏み込み圧以上になっており(所定以上のブレーキの踏み込みがあり)、かつ、当該車両の車速が所定の速度以下に下がっていることを検出すると、当該条件を含むエンジン停止条件を満足するか否かを判定してよい。
また、アイドルストップECU40は、所定のエンジン始動条件を満足するか否かを判定し、該エンジン始動条件を満足する場合、エンジンECU30に対してエンジン始動要求を出力する。例えば、アイドルストップECU40は、アイドルストップ制御によるエンジン10の停止後、所定時間毎に、MC圧が所定開放圧以下になっている(ブレーキの踏み込みが解除された)こと等を含むエンジン始動条件を満足するか否かを判定してよい。
なお、アイドルストップECU40は、MC圧センサ60、車速センサ70と車載LAN等を介して通信可能に接続され、MC圧センサ60からのMC圧信号、車速センサ70からの車速信号を受信することにより、当該車両の車速やMC圧を取得することができる。
エンジン停止条件及びエンジン始動条件は、上述したMC圧、車速に関する条件の他、例えば、エンジン10の回転数、冷却水温、バッテリの状態(電流、電圧、温度、充電状態、劣化状態等)、シフトポジション、ドアカーテシスイッチ等に関する条件を含んでよい。例えば、エンジン停止条件は、バッテリの電流、電圧等から算出されるSOC(State of Charge;充電状態)が所定割合以上であるという条件を含んでよい。また、エンジン始動条件は、ドアカーテシスイッチがオンである(ドアが閉まっている)という条件を含んでよい。
また、アイドルストップECU40は、エンジン10の停止中(エンジン停止要求出力後)、シフト位置がRレンジ(後進ポジション)に変更され、Rレンジの状態が所定時間T継続した場合、エンジン始動要求を出力して、エンジン10を始動させる。この際、アイドルストップECU40は、エンジン10の停止からシフト位置がRレンジに変更されるまでの経過時間に応じて、所定時間Tを変更する。エンジン10の停止中にシフト位置がRレンジに変更された場合における具体的な制御処理については、後述する。
なお、アイドルストップECU40は、シフトレンジセンサ80と車載LAN等を介して通信可能に接続され、シフトレンジセンサ80からのシフトレンジ信号を受信することによりシフト位置の情報を取得することが可能である。また、アイドルストップECU40は、エンジンECU30からエンジン10が停止した旨の信号(エンジン停止信号)を受信することで、エンジン10の停止を検出することができる。
また、上述したエンジンECU30、及び、アイドルストップECU40の機能は、任意のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はそれらの組み合わせにより実現されてもよい。また、エンジンECU30、及び、アイドルストップECU40の機能の一部又は全部は、他のECUにより実現されてもよい。また、エンジンECU30、及び、アイドルストップECU40は、他のECUの機能の一部又は全部を実現するものであってもよい。例えば、アイドルストップECU40の機能の一部又は全部は、エンジンECU30により実現されてもよいし、エンジンECU30の機能の一部又は全部は、アイドルストップECU40により実現されてよい。
補機負荷50は、オルタネータ12及びバッテリ20と接続され、これらからの電力供給により駆動する。補機負荷50は、ヘッドランプ、ワイパー、エアコン、オーディオ、メータ等の電装品を含んでよい。
MC圧センサ60は、MC圧を検出する検出手段である。MC圧センサ60は、車載LAN等を介してアイドルストップECU40と通信可能に接続され、MC圧信号をアイドルストップECU40に出力する。
車速センサ70は、当該車両の車速を検出する検出手段である。車速センサ70は、車載LAN等を介してアイドルストップECU40と通信可能に接続され、車速信号をアイドルストップECU40に出力する。
シフトレンジセンサ80は、当該車両のシフト位置を検出する検出手段である。例えば、運転者がシフト位置の選択を行うためのシフトデバイス内に配置され、運転者がシフトレバーを操作することにより選択したシフト位置を検出する。なお、図1のシフトパターンの一例のように、シフト位置には、Pレンジ(駐車ポジション)、Rレンジ(後進ポジション)、Nレンジ(ニュートラルポジション)、Dレンジ(走行ポジション)等が含まれる。
次に、本実施形態に係るエンジン制御装置1の特徴的な動作、即ち、エンジン10の停止中(アイドルストップECU40からのエンジン停止要求の出力後)、シフト位置がRレンジに変更された場合の制御処理について説明をする。
図3は、本実施形態に係るエンジン制御装置1(アイドルストップECU40)による制御処理、具体的には、エンジン10の停止中(エンジン停止要求の出力後)に、シフト位置がRレンジに変更された場合の制御処理の一例を示すフローチャートである。当該フローチャートは、エンジン停止要求の出力後、かつ、エンジン始動要求の出力前に、シフトレンジセンサ80からのシフトレンジ信号に基づき、シフト位置がRレンジに変更されたことが検出される度に実行される。
ステップS101では、エンジン10の停止からシフト位置がRレンジに変更されるまでの経過時間が、判定時間Tth以上か否かを判定する。エンジン10の停止からシフト位置がRレンジに変更されるまでの経過時間が判定時間Tth以上の場合、ステップS102に進み、判定時間Tthより短い場合、ステップS103に進む。
なお、アイドルストップECU40は、エンジンECU30からのエンジン停止信号を受信した際に、内部タイマのカウントを開始することで、エンジン10の停止からシフト位置がRレンジに変更されるまでの経過時間を計測してよい。
ステップS102では、Rレンジの状態が第1の時間T1以上継続したか否かを判定する。Rレンジの状態が第1の時間T1以上継続した場合は、ステップS104に進む。そして、エンジンECU30にエンジン始動要求を送信し、エンジン10を始動させて、今回の処理を終了する。Rレンジの状態が第1の時間T1以上継続しなかった場合は、今回の処理を終了する。
なお、アイドルストップECU40は、シフトレンジセンサ80からのシフトレンジ信号に基づき、シフト位置がRレンジに変更されたことを検出した際に、内部タイマのカウントを開始することで、Rレンジの状態の継続時間を計測してよい。
一方、ステップS103では、Rレンジの状態が第2の時間T2以上継続したか否かを判定する。ここで、第2の時間T2は、ステップS102における第1の時間T1より短い時間に設定される。Rレンジの状態が第2の時間T2以上継続した場合は、ステップS104に進む。そして、エンジンECU30にエンジン始動要求を送信し、エンジン10を始動させて、今回の処理を終了する。Rレンジの状態が第2の時間T2以上継続しなかった場合は、今回の処理を終了する。
上述したとおり、アイドルストップECU40は、エンジン10の停止中(エンジン停止要求の出力後)、シフト位置がRレンジに変更され、Rレンジ状態が所定時間T継続した場合、エンジン始動要求を出力して、エンジン10を始動させる。この際、アイドルストップECU40は、エンジン10の停止からシフト位置がRレンジに変更されるまでの経過時間に応じて、所定時間Tを変更する。
本例では、エンジン10の停止からシフト位置がRレンジに変更されるまでの経過時間が判定時間Tth以上の場合に、所定時間Tを第1の時間T1に設定し、判定時間Tthより短い場合に、所定時間Tを第1の時間T1より短い第2の時間T2に設定する。
このように、エンジン10の停止からシフト位置がRレンジに変更されるまでの経過時間が比較的短い(判定時間Tthより短い)場合、比較的長い(判定時間Tth以上)場合より所定時間Tを短くする。これにより、運転者が車両を後進させる可能性が高い場合に、より早期にエンジン10を始動させることができるため、発進が遅くなることにより運転者に与える違和感を軽減することができる。
より具体的に説明すると、エンジン10の停止からシフト位置がRレンジに変更されるまでの時間が比較的短い場合、運転者は、車両を停車させ、直ぐに後進させる意図を持っている可能性が高い。そのため、実際に車両が後進する可能性が高い場合に所定時間Tをより短く設定することで、シフト位置がRレンジに変更されてから当該車両の発進までの時間が早くなり、運転者に与える違和感を軽減することができる。但し、シフト位置がRレンジに変更されてすぐにではなく、Rレンジの状態が所定時間T継続した場合に、エンジン10の始動を行うことで、例えば、Pレンジにシフト変更するために、一瞬だけRレンジを通過した場合等のエンジン10の始動を防止することができる。即ち、一瞬だけRレンジを通過した場合等におけるエンジン10の始動を防止しつつ、運転者がRレンジへのシフト変更により車両を後進させる可能性が高い場合には、より早期にエンジン10を始動させ、運転者に与える違和感を軽減させることができる。
なお、本例では、エンジン10の停止からシフト位置がRレンジに変更されるまでの時間に対して、2段階で所定時間Tが変更されるようにしたが、2段階以上の多段階で変更されるようにしてもよい。この際、所定時間Tは、全体として、エンジン10の停止からシフト位置がRレンジに変更されるまでの時間が短くなるにつれて、短くなるように設定されるとよい。これにより、本例と同様の作用・効果を奏する。
また、本例では、エンジン10の停止からシフト位置がRレンジに変更されるまでの時間に対して、段階的に所定時間Tが変更されたが、少なくとも一部において、連続的に所定時間Tが変更されてもよい。この際、所定時間Tは、全体として、エンジン10の停止からシフト位置がRレンジに変更されるまでの時間が短くなるにつれて、短くなるように設定されるとよい。これにより、本例と同様の作用・効果を奏する。
以上をまとめると、運転者に車両を後進させる意図があるか否かの指標として、エンジン10の停止からシフト位置がRレンジに変更されるまでの経過時間に応じて、所定時間Tを変更する。これにより、一瞬だけRレンジを通過した場合等におけるエンジン10の始動を防止しつつ、運転者がRレンジへのシフト変更により車両を後進させる可能性が高い場合には、より早期にエンジン10を始動させ、運転者に与える違和感を軽減させることができる。
[第2の実施形態]
次いで、第2の実施形態について説明をする。
以下、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して、異なる部分を中心に説明をする。
図4は、本実施形態に係るエンジン制御装置1を含む車両の構成の一例を示すブロック図である。
エンジン制御装置1は、当該車両の駆動力源であるエンジン10を制御し、スタータ11、オルタネータ12、バッテリ20、エンジンECU30、アイドルストップECU40、補機負荷50、MC圧センサ60、車速センサ70、シフトレンジセンサ80、カーナビゲーション装置90を含む。ここで、第1の実施形態と異なるアイドルストップECU40、カーナビゲーション装置90を中心に説明を行う。
アイドルストップECU40は、エンジン10の停止中(エンジン停止要求出力後)、シフト位置がRレンジに変更され、Rレンジの状態が所定時間T継続した場合、エンジン始動要求を出力して、エンジン10を始動させる。この際、アイドルストップECU40は、当該車両の位置情報に応じて、所定時間Tを変更する。より具体的には、エンジン10の停止に伴う当該車両の停車が信号によるものか否かに応じて、所定時間Tを変更する。エンジン10の停止中にシフト位置がRレンジに変更された場合の具体的な制御処理については、後述する。
なお、アイドルストップECU40は、カーナビゲーション装置90と車載LAN等を介して通信可能に接続され、カーナビゲーション装置90から当該車両の位置情報を取得することが可能である。
カーナビゲーション装置90は、当該車両の位置、地図情報、通信手段を介して受信した交通情報(プローブ情報、VICS(登録商標))等に基づいて、目的地までの経路案内を行う経路案内手段である。カーナビゲーション装置90は、当該車両の位置及び当該車両の位置に対応する地図情報等に基づいて、地図画面(経路案内画面)を生成し、ディスプレイ(不図示)に表示させる。カーナビゲーション装置90は、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号を受信し、当該車両の位置を検出することができる。また、カーナビゲーション装置90は、地図情報を内部の記憶装置に格納しており、当該車両の位置を地図情報と対応させることで、地図上のどの位置に当該車両が位置しているかを検出することができる。カーナビゲーション装置90は、アイドルストップECU40と車載LAN等により通信可能に接続され、当該車両の位置、当該車両の位置に対応する地図情報等を含む当該車両の位置情報をアイドルストップECU40に送信する。なお、地図情報には、信号の設置位置に関する情報や駐車場の位置に関する情報も含まれる。
次に、本実施形態に係るエンジン制御装置1の特徴的な動作、即ち、エンジン10の停止中(アイドルストップECU40からのエンジン停止要求の出力後)、シフト位置がRレンジに変更された場合の制御処理について説明をする。
図5は、本実施形態に係るエンジン制御装置1(アイドルストップECU40)による制御処理、具体的には、エンジン10の停止中(エンジン停止要求の出力後)に、シフト位置がRレンジに変更された場合の制御処理の一例を示すフローチャートである。当該フローチャートは、エンジン停止要求の出力後、かつ、エンジン始動要求の出力前に、シフトレンジセンサ80からのシフトレンジ信号に基づき、シフト位置がRレンジに変更されたことが検出される度に実行される。
ステップS201では、カーナビゲーション装置90から送信された当該車両の位置情報に基づいて、今回のエンジン10の停止に伴う当該車両の停車が信号によるものか否かを判定する。信号での停車の場合、ステップS202に進み、信号での停車でない場合、ステップS203に進む。
ステップS202では、Rレンジの状態が第3の時間T3以上継続したか否かを判定する。Rレンジの状態が第3の時間T3以上継続した場合は、ステップS204に進む。そして、エンジンECU30にエンジン始動要求を送信し、エンジン10を始動させて、今回の処理を終了する。Rレンジの状態が第3の時間T3以上継続しなかった場合は、今回の処理を終了する。
一方、ステップS203では、Rレンジの状態が第4の時間T4以上継続したか否かを判定する。ここで、第4の時間T4は、ステップS202における第3の時間T3より短い時間に設定される。Rレンジの状態が第4の時間T4以上継続した場合は、ステップS204に進む。そして、エンジンECU30にエンジン始動要求を送信し、エンジン10を始動させて、今回の処理を終了する。Rレンジの状態が第4の時間T4以上継続しなかった場合は、今回の処理を終了する。
上述したとおり、アイドルストップECU40は、エンジン10の停止中(エンジン停止要求の出力後)、シフト位置がRレンジに変更され、Rレンジ状態が所定時間T継続した場合、エンジン始動要求を出力して、エンジン10を始動させる。この際、アイドルストップECU40は、当該車両の位置情報に応じて、所定時間Tを変更する。
本例では、エンジン10の停止に伴う当該車両の停車が信号によるものである場合に、所定時間Tを第3の時間T3に設定し、信号によるものでない場合に、所定時間Tを第3の時間T3より短い第4の時間T4に設定する。
このように、エンジン10の停止に伴う当該車両の停車が信号によるものでない場合、信号によるものである場合より所定時間Tを短くする。これにより、運転者が車両を後進させる可能性が高い場合に、より早期にエンジン10を始動させることができるため、発進が遅くなることにより運転者に与える違和感を軽減することができる。
より具体的に説明すると、信号で当該車両が停車した場合、当該車両が後進する可能性は低い。換言すれば、当該車両が信号で停車した場合と比べれば、当該車両が信号以外で停車した場合に、運転者が当該車両を後進させる可能性は高い。そのため、運転者が車両を後進させる可能性が高い場合、即ち、信号以外で停車した場合に所定時間Tをより短く設定することで、シフト位置がRレンジに変更されてから当該車両の発進までの時間が早くなり、運転者に与える違和感を軽減することができる。但し、シフト位置がRレンジに変更されてすぐにではなく、Rレンジの状態が所定時間T継続した場合に、エンジン10の始動を行うことで、例えば、Pレンジにシフト変更するために、一瞬だけRレンジを通過した場合等のエンジン10の始動を防止することができる。即ち、一瞬だけRレンジを通過した場合等におけるエンジン10の始動を防止しつつ、運転者がRレンジへのシフト変更により車両を後進させる可能性が高い場合には、より早期にエンジン10を始動させ、運転者に与える違和感を軽減させることができる。
[第3の実施形態]
次いで、第3の実施形態について説明をする。
以下、第1、第2の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して、異なる部分を中心に説明をする。
本実施形態に係るエンジン制御装置1を含む車両の構成は、第2の実施形態と同様、図4で表される。
エンジン制御装置1は、当該車両の駆動力源であるエンジン10を制御し、スタータ11、オルタネータ12、バッテリ20、エンジンECU30、アイドルストップECU40、補機負荷50、MC圧センサ60、車速センサ70、シフトレンジセンサ80、カーナビゲーション装置90を含む。ここで、第2の実施形態と異なるアイドルストップECU40を中心に説明を行う。
アイドルストップECU40は、エンジン10の停止中(エンジン停止要求出力後)、シフト位置がRレンジに変更され、Rレンジの状態が所定時間T継続した場合、エンジン始動要求を出力して、エンジン10を始動させる。この際、アイドルストップECU40は、当該車両の位置情報に応じて、所定時間Tを決定する。より具体的には、エンジン10の停止に伴い当該車両が停車した場所が駐車場か否かに応じて、所定時間Tを変更する。エンジン10の停止中にシフト位置がRレンジに変更された場合における具体的な制御処理については、後述する。
なお、アイドルストップECU40は、第2の実施形態と同様、カーナビゲーション装置90と車載LAN等を介して通信可能に接続され、カーナビゲーション装置90から当該車両の位置情報を取得することが可能である。
次に、本実施形態に係るエンジン制御装置1の特徴的な動作、即ち、エンジン10の停止中(アイドルストップECU40からのエンジン停止要求の出力後)、シフト位置がRレンジに変更された場合の制御処理について説明をする。
図6は、本実施形態に係るエンジン制御装置1(アイドルストップECU40)による制御処理、具体的には、エンジン10の停止中(エンジン停止要求の出力後)に、シフト位置がRレンジに変更された場合の制御処理の一例を示すフローチャートである。当該フローチャートは、エンジン停止要求の出力後、かつ、エンジン始動要求の出力前に、シフトレンジセンサ80からのシフトレンジ信号に基づき、シフト位置がRレンジに変更されたことが検出される度に実行される。
ステップS301では、カーナビゲーション装置90から送信された当該車両の位置情報に基づいて、今回のエンジン10の停止に伴い当該車両が停車した場所が駐車場か否かを判定する。駐車場での停車でない場合、ステップS302に進み、駐車場での停車の場合、ステップS303に進む。
ステップS302では、Rレンジの状態が第5の時間T5以上継続したか否かを判定する。Rレンジの状態が第5の時間T5以上継続した場合は、ステップS304に進む。そして、エンジンECU30にエンジン始動要求を送信し、エンジン10を始動させて、今回の処理を終了する。Rレンジの状態が第5の時間T5以上継続しなかった場合は、今回の処理を終了する。
一方、ステップS303では、Rレンジの状態が第6の時間T6以上継続したか否かを判定する。ここで、第6の時間T6は、ステップS302における第5の時間T5より短い時間に設定される。Rレンジの状態が第6の時間T6以上継続した場合は、ステップS304に進む。そして、エンジンECU30にエンジン始動要求を送信し、エンジン10を始動させて、今回の処理を終了する。Rレンジの状態が第6の時間T6以上継続しなかった場合は、今回の処理を終了する。
上述したとおり、アイドルストップECU40は、エンジン10の停止中(エンジン停止要求の出力後)、シフト位置がRレンジに変更され、Rレンジ状態が所定時間T継続した場合、エンジン始動要求を出力して、エンジン10を始動させる。この際、アイドルストップECU40は、当該車両の位置情報に応じて、所定時間Tを変更する。
本例では、エンジン10の停止に伴い当該車両が停車した場所が駐車場でない場合に、所定時間Tを第5の時間T5に設定し、駐車場である場合に、所定時間Tを第5の時間T5より短い第6の時間T6に設定する。
このように、エンジン10の停止に伴い当該車両が停車した場所が駐車場である場合、駐車場でない場合より所定時間Tを短くする。これにより、運転者が車両を後進させる可能性が高い場合に、より早期にエンジン10を始動させることができるため、Rレンジへのシフト変更に対して発進が遅くなることにより運転者に与える違和感を軽減することができる。
より具体的に説明すると、駐車場で当該車両が停車した場合、その後、運転者は当該車両を後進させて駐車する可能性が高い。そのため、運転者が車両を後進させる可能性が高い場合、即ち、駐車場で停車した場合に所定時間Tをより短く設定することで、シフト位置をRレンジに変更してから発進までの時間が早くなり、運転者に与える違和感を軽減することができる。但し、シフト位置がRレンジに変更されてすぐにではなく、Rレンジの状態が所定時間T継続した場合に、エンジン10の始動を行うことで、例えば、Pレンジにシフト変更するために、一瞬だけRレンジを通過した場合等のエンジン10の始動を防止することができる。即ち、一瞬だけRレンジを通過した場合等におけるエンジン10の始動を防止しつつ、運転者がRレンジへのシフト変更により車両を後進させる可能性が高い場合には、より早期にエンジン10を始動させ、運転者に与える違和感を軽減させることができる。
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、上述した第2、第3の実施形態において、カーナビゲーション装置90からの当該車両の位置情報に基づいて、エンジン10の制御処理を実行したが、他の手段からの当該車両の位置情報に基づいて、エンジン10の制御処理を実行してもよい。一例として、カーナビゲーション装置90の代わりに、当該車両の周辺を撮像するカメラにより撮像された車両周辺の画像を画像処理して、当該車両の位置(場所)を検出する処理装置からの当該車両の位置情報に基づいて、エンジン10の制御処理を実行してよい。具体的には、該処理装置が、当該車両の前方の信号の存在を検出し、信号の有無に関する情報をアイドルストップECU40に送信してよい。また、該処理装置が、当該車両周辺の画像に基づき、当該車両の停車した場所が駐車場であるか否かを判断し、当該情報をアイドルストップECU40に送信してよい。これらの場合においても、エンジン制御装置1は、上述した実施形態と同様の作用・効果を奏する。
また、上述した第1〜第3の実施形態は、組み合わせて実施されてもよい。例えば、第1〜第3の実施形態(図3、図5、図6)における所定時間Tをより短く設定(変更)するための各条件(即ち、運転者が当該車両を後進させる可能性が高くなる条件)の少なくとも一つでも満足する場合に、所定時間Tをより短く設定(変更)するようにしてよい。また、第1〜第3の実施形態(図3、図5、図6)における所定時間Tをより短く設定(変更)するための各条件のうち、満足する条件が複数の場合、所定時間Tを更に短く設定(変更)するようにしてよい。具体的には、エンジン10の停止からシフト位置がRレンジに変更されるまでの経過時間が判定時間Tthより短く、かつ、駐車場での停車である場合、単に経過時間が判定時間Tthより短い場合に比べて、更に所定時間Tを短くしてよい。これらの場合においても、エンジン制御装置1は、上述した実施形態と同様の作用・効果を奏する。