図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池用含水量制御方法が実施される燃料電池システム10は、例えば、燃料電池電気自動車等の電動車両に搭載される車載用燃料電池システムを構成する。
燃料電池システム10は、複数の燃料電池12が積層される燃料電池スタック14と、前記燃料電池スタック14に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給装置16と、前記燃料電池スタック14に燃料ガスを供給する燃料ガス供給装置18とを備える。燃料電池システム10は、さらに燃料電池スタック14に冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置20と、前記燃料電池システム10全体の制御を行う制御装置(ECU)22とを備える。
図2に示すように、燃料電池12は、電解質膜・電極構造体24を第1セパレータ26及び第2セパレータ28で挟持する。第1セパレータ26及び第2セパレータ28は、例えば、金属セパレータ又はカーボンセパレータにより構成される。
図2及び図3に示すように、電解質膜・電極構造体24は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜30と、前記固体高分子電解質膜30を挟持するアノード電極32及びカソード電極34とを備える。固体高分子電解質膜30は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質が使用される。
図3に示すように、カソード電極34の外周端部34endは、アノード電極32の外周端部32endよりも外側に突出するとともに、前記アノード電極32は、固体高分子電解質膜30の一方の面に配置される。アノード電極32は、固体高分子電解質膜30の外周を額縁状に露呈させる。カソード電極34は、固体高分子電解質膜30の他方の面に配置され、前記固体高分子電解質膜30の外周端部は、前記カソード電極34の外周端部34endよりも外方に突出する。なお、固体高分子電解質膜30の外周端部は、カソード電極34の外周端部34endと同一位置に配置してもよい。また、カソード電極34とアノード電極32の大小関係は、上記と逆に設定されてもよい。
アノード電極32は、固体高分子電解質膜30の一方の面に接合される電極触媒層と、前記電極触媒層に積層されるガス拡散層とを設ける。カソード電極34は、固体高分子電解質膜30の他方の面に接合される電極触媒層と、前記電極触媒層に積層されるカーボンペーパ等からなるガス拡散層とを設ける。電極触媒層は、例えば、白金や白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子を固体高分子電解質膜30の両面に一様に塗布して形成される。
電解質膜・電極構造体24は、固体高分子電解質膜30の外周を周回する樹脂製枠部材36を備える。樹脂製枠部材36は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)やPPA(ポリフタルアミド)、LCP(液晶ポリマー)、PES(ポリエーテルサルフォン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PFA(フッ素樹脂)等で構成される。なお、樹脂製枠部材36は、必要に応じて設けられていればよく、不要にすることもできる。
図2に示すように、燃料電池12は、例えば、横長形状を有しており、立位姿勢で水平方向に積層される。燃料電池12の矢印B方向(図2中、水平方向)の一端縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス入口連通孔38a及び燃料ガス出口連通孔40bが、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。酸化剤ガス入口連通孔38aは、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給する一方、燃料ガス出口連通孔40bは、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出する。
燃料電池12の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔40aと、酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔38bとが、矢印C方向に配列して設けられる。
燃料電池12の矢印C方向の上端縁部には、冷却媒体を供給するための一対の冷却媒体入口連通孔42aが設けられる。燃料電池12の矢印C方向の下端縁部には、冷却媒体を排出するための一対の冷却媒体出口連通孔42bが設けられる。なお、冷却媒体入口連通孔42a及び冷却媒体出口連通孔42bは、それぞれ1つであってもよい。
第1セパレータ26の電解質膜・電極構造体24に向かう面26aには、酸化剤ガス入口連通孔38aと酸化剤ガス出口連通孔38bとに連通する酸化剤ガス流路46が設けられる。第2セパレータ28の電解質膜・電極構造体24に向かう面28aには、燃料ガス入口連通孔40aと燃料ガス出口連通孔40bとに連通する燃料ガス流路48が形成される。酸化剤ガス流路46及び燃料ガス流路48は、水平方向に向かって酸化剤ガス及び燃料ガスを流通させる。
第1セパレータ26の面26aとは反対の面26bと、第2セパレータ28の面28aとは反対の面28bとの間には、冷却媒体入口連通孔42aと冷却媒体出口連通孔42bとに連通する冷却媒体流路50が形成される。冷却媒体流路50は、鉛直方向下方に向かって冷却媒体を流通させる。
第1セパレータ26の面26a、26bには、この第1セパレータ26の外周端部を周回して、第1シール部材52が一体化される。第2セパレータ28の面28a、28bには、この第2セパレータ28の外周端部を周回して、第2シール部材54が一体化される。
第1シール部材52及び第2シール部材54は、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材等の弾性を有するシール部材が用いられる。
第2セパレータ28には、燃料ガス入口連通孔40aを燃料ガス流路48に連通する供給孔部56と、前記燃料ガス流路48を燃料ガス出口連通孔40bに連通する排出孔部58とが形成される。
図2〜図6に示すように、燃料電池スタック14は、少なくとも1つの燃料電池12を計測用燃料電池として構成し、前記計測用燃料電池には、インピーダンス計測装置60が設けられる。インピーダンス計測装置60は、図3に示すように、電解質膜・電極構造体24を構成する固体高分子電解質膜30上に、アノード電極32側且つ前記アノード電極32の外周端部よりも外方に配置される計測用センサ部62を備える。図4及び図5に示すように、計測用センサ部62の先端には、箔状の第1電極部64a及び第2電極部64bが設けられる。第1電極部64a及び第2電極部64bは、金(Au)又は白金(Pt)で構成され、あるいは、金属薄板に白金触媒をコーティングして構成される。
第1電極部64aには、第1交流印加用基材66a及び第1測定用基材66bが接続される。第1交流印加用基材66a及び第1測定用基材66bは、第1電極部64aと同一の材料で線状に構成される。第2電極部64bには、第2交流印加用基材68a及び第2測定用基材68bが接続される。第2交流印加用基材68a及び第2測定用基材68bは、第2電極部64bと同一の材料で線状に構成される。
第1電極部64a及び第2電極部64bを囲繞(埋設)して、少なくとも前記第1電極部64aと前記第2電極部64bとの間に位置して、イオン交換樹脂層70が形成される。イオン交換樹脂層70は、例えば、3枚のシート体を有し、各シート体間に第1電極部64aと第2電極部64bとが介装(配置)され、一体化してもよい。イオン交換樹脂層70は、固体高分子電解質膜30と同一材料で構成してもよい。
イオン交換樹脂層70には、絶縁部材72が一体化され、前記絶縁部材72は、第1交流印加用基材66a、第1測定用基材66b、第2交流印加用基材68a及び第2測定用基材68bを埋設する。絶縁部材72は、複数枚、例えば、3枚のシート体を重ね合わせて構成してもよい。
絶縁部材72は、電気的絶縁性を有し、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フッ素系電解質膜又は炭化水素系電解質膜等で形成される。
第1交流印加用基材66aには、第1交流印加用配線74aが接続され、第1測定用基材66bには、第1測定用配線74bが接続される。第2交流印加用基材68aには、第2交流印加用配線76aが接続され、第2測定用基材68bには、第2測定用配線76bが接続される。図6に示すように、第1交流印加用配線74a、第1測定用配線74b、第2交流印加用配線76a及び第2測定用配線76bは、インピーダンス測定部78に接続される。通常のインピーダンス計測は、周波数を走査して計測するが、測定周波数固定の低抵抗計測計で計測してもよい。
インピーダンス測定部78は、交流電圧印加部80、電圧測定部82及び電流測定部84を有する。第1交流印加用配線74a及び第2交流印加用配線76aは、交流電圧印加部80に接続される。第1測定用配線74b及び第2測定用配線76bは、電圧測定部82及び電流測定部84に接続される。インピーダンス測定部78は、測定されたインピーダンスに基づいて、後述するように、湿度又は抵抗値を推定する。
図2に示すように、計測用センサ部62は、水分量が最も多い領域である重力方向下方で且つ燃料ガス出口連通孔40bの近傍、及び、酸化剤ガス出口連通孔38bの近傍に配置される。計測用センサ部62は、水分量が最も少ない領域である重力方向上方で且つ燃料ガス入口連通孔40aの近傍、及び、酸化剤ガス入口連通孔38aの近傍に配置される。なお、計測用センサ部62は、電解質膜・電極構造体24の水分含有量が最も多い領域又は最も少ない領域にのみ配置してもよい。但し、計測用センサ部62の配置位置は、特に限定されるものではない。
図1に示すように、酸化剤ガス供給装置16は、大気からの空気を圧縮して供給するエアコンプレッサ(ポンプ)86を備え、前記エアコンプレッサ86が空気供給流路88に配設される。空気供給流路88には、加湿器90と、バルブ92を介して前記加湿器90をバイパスするバイパス流路94とが設けられ、燃料電池スタック14の酸化剤ガス入口連通孔38aに連通する。酸化剤ガス出口連通孔38bには、空気排出流路96が連通する。空気排出流路96は、背圧制御弁98を介装して希釈器100に接続される。
燃料ガス供給装置18は、高圧水素を貯留する高圧水素タンク102を備え、この高圧水素タンク102は、水素供給流路104を介して燃料電池スタック14の燃料ガス入口連通孔40aに連通する。水素供給流路104には、バルブ106及びエゼクタ108が設けられる。
燃料電池スタック14の燃料ガス出口連通孔40bには、オフガス流路110が連通する。このオフガス流路110は、気液分離器112に接続されるとともに、前記気液分離器112には、液体成分を排出するドレン流路114と、気体成分を排出する気体流路116とが設けられる。気体流路116は、循環路118を介してエゼクタ108に接続される一方、パージ弁120の開放作用下に、希釈器100に連通する。ドレン流路114は、バルブ122を介して希釈器100に連通する。希釈器100は、燃料電池スタック14の燃料ガス出口連通孔40bから排出されるオフガス(燃料ガスを含有する)と、前記燃料電池スタック14の酸化剤ガス出口連通孔38bから排出されるオフガス(酸化剤ガスを含有する)とを混在させる。すなわち、燃料ガス濃度(水素濃度)を規定値以下に希釈する機能を有する。
冷却媒体供給装置20は、燃料電池スタック14の冷却媒体入口連通孔42aと冷却媒体出口連通孔42bとに連通し、冷却媒体を循環供給する冷却媒体循環路124を備える。冷却媒体循環路124には、冷却媒体入口連通孔42a側に近接して冷却ポンプ126が配置されるとともに、冷却媒体出口連通孔42bに近接してラジエータ128が配置される。
空気供給流路88、空気排出流路96、水素供給流路104及びオフガス流路110には、それぞれ圧力計130a、130b、130c及び130dが配置される。空気供給流路88及び水素供給流路104には、湿度計132a及び132bが配置される。空気排出流路96、気体流路116及び冷却媒体循環路124には、温度計134a、134b及び134cが配置される。
制御装置22には、インピーダンス測定部78から推定された湿度(又は抵抗値)が入力される。制御装置22は、入力された湿度(又は抵抗値)を温度補正又は圧力補正するための補正部135を有する。制御装置22は、補正された湿度又は抵抗値に基づいて、含水量を推定する含水量推定部136と、推定された含水量が、所定の含水量範囲内に維持されるように、各デバイスを制御して燃料電池12の運転条件を調整するデバイス制御部138とを有する。
このように構成される燃料電池システム10の動作について、以下に説明する。
図1に示すように、酸化剤ガス供給装置16を構成するエアコンプレッサ86を介して空気供給流路88に酸化剤ガス(空気)が送られる。この酸化剤ガスは、加湿器90を通って加湿された後、又は、バイパス流路94を通って前記加湿器90をバイパスした後、燃料電池スタック14の酸化剤ガス入口連通孔38aに供給される。
一方、燃料ガス供給装置18では、バルブ106の開放作用下に、高圧水素タンク102から水素供給流路104に燃料ガス(水素ガス)が供給される。この燃料ガスは、エゼクタ108を通った後、燃料電池スタック14の燃料ガス入口連通孔40aに供給される。
また、冷却媒体供給装置20では、冷却ポンプ126の作用下に、冷却媒体循環路124から燃料電池スタック14の冷却媒体入口連通孔42aに純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
図2に示すように、酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通孔38aから第1セパレータ26の酸化剤ガス流路46に導入され、矢印B方向に移動して電解質膜・電極構造体24のカソード電極34に供給される。一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔40aから供給孔部56を通って第2セパレータ28の燃料ガス流路48に導入される。燃料ガスは、燃料ガス流路48に沿って矢印B方向に移動し、電解質膜・電極構造体24のアノード電極32に供給される。
従って、各電解質膜・電極構造体24では、カソード電極34に供給される酸化剤ガスと、アノード電極32に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
次いで、カソード電極34に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔38bに沿って矢印A方向に排出される。同様に、アノード電極32に供給されて消費された燃料ガスは、排出孔部58を通り燃料ガス出口連通孔40bに沿って矢印A方向に排出される。
また、冷却媒体入口連通孔42aに供給された冷却媒体は、第1セパレータ26と第2セパレータ28との間の冷却媒体流路50に導入された後、矢印C方向に流通する。この冷却媒体は、電解質膜・電極構造体24を冷却した後、冷却媒体出口連通孔42bから排出される。
図1に示すように、酸化剤ガス出口連通孔38bに排出された酸化剤ガスは、空気排出流路96を流通して希釈器100に導入される。一方、燃料ガス出口連通孔40bに排出されたオフガス(一部が消費された燃料ガス)は、オフガス流路110から気液分離器112に導入される。オフガスは、液状水分が除去された後、気体流路116から循環路118を介してエゼクタ108に吸引される。
また、冷却媒体出口連通孔42bに排出された冷却媒体は、冷却媒体循環路124を通ってラジエータ128により冷却される。さらに、冷却媒体は、冷却ポンプ126の作用下に、燃料電池スタック14に循環供給される。
次いで、本発明の第1の実施形態に係る含水量制御方法について、以下に説明する。
先ず、電解質膜・電極構造体24の含水量と、インピーダンス測定により推定された湿度及び抵抗値との相関性を予め取得した。具体的には、アノード電極32側の含水量と、湿度及び抵抗値との関係を実験的に検出したところ、図7に示す変化曲線が得られ、含水量の有効範囲に対応する湿度の範囲及び抵抗値の範囲が設定された。なお、抵抗値は、検出される交流インピーダンスの直流抵抗成分であり、湿度は、前記直流抵抗成分の対数である。
その際、種々の発電条件による湿度域及び抵抗値域と含水量との関係が取得された。図8に示すように、この得られた燃料電池12の運転条件(I、II、III、IV、i、ii、iii、iv)は、含水量(Z、Y、X、W)に対応した湿度域及び抵抗値域(a、b、c、d)のマップとして制御装置22のメモリに記憶される。
ここで、運転条件(例えば、1、2)としては、燃料電池スタック14に供給される酸化剤ガスの流量、露点及び圧力、前記燃料電池スタック14から排出される酸化剤ガスの露点及び圧力が含まれる。さらに、燃料電池スタック14に供給される燃料ガスの流量、露点及び圧力、前記燃料電池スタック14から排出されるオフガス(燃料ガス)の露点及び圧力が含まれる。その他、燃料電池スタック14に供給される冷却媒体の温度、流量並びに前記燃料電池スタック14から排出される冷却媒体の温度等が含まれる。
第1の実施形態において、具体的な運転条件の調整(含水量制御)としては、アノード電極32側のパージ処理、前記カソード電極34に供給される酸化剤ガスの流量調整、圧力調整、温度調整又は湿度調整のいずれかを有する。アノード電極32側のパージ処理とは、パージ弁120を短時間だけ開く処理である。また、アノード電極32側では、パージ処理の他、前記アノード電極32に供給される燃料ガスの流量調整、圧力調整、湿度調整又は温度調整を行ってもよい。
なお、アノード電極32側には、供給される燃料ガスに含まれる水分及びカソード電極34側から固体高分子電解質膜30を逆拡散する生成水が存在している。従って、アノード電極32側のパージ処理を行うことにより、カソード電極34側から前記アノード電極32側への拡散が促進され、前記カソード電極34側の含水量を低下させることができる。
次に、燃料電池システム10が発電運転している際、インピーダンス測定部78では、燃料電池スタック14から外部負荷(図示せず)により直流電流を出力させるとともに、この直流電流に交流電流を重畳させている。
このため、図6に示すように、電圧測定部82は、交流電流に対する交流応答電圧を測定する一方、電流測定部84により交流電流が測定されている。従って、測定された交流応答電圧及び交流電流から、第1電極部64a及び第2電極部64b間の交流インピーダンスが算出される。
検出された交流インピーダンスに基づいて、該交流インピーダンスの直流抵抗成分、すなわち、抵抗値が算出される。さらに、必要に応じて、算出された抵抗値の対数である湿度が算出される。
図1に示すように、制御装置22には、インピーダンス測定部78から推定された湿度(又は抵抗値)が入力される。補正部135には、各温度、各圧力及び各湿度が入力されており、入力された湿度(又は抵抗値)が温度補正又は圧力補正された後、含水量推定部136に送られる。なお、補正部135では、複数の計測用センサ部62の値の平均値、最大値又は最小値、あるいは、複数個の前記計測用センサ部62の電位勾配を用いてもよい。
含水量推定部136では、図7に示すように、予め設定された湿度(又は抵抗値)と固体高分子電解質膜30の含水量との相関性から、入力された補正湿度(又は補正抵抗値)を用いて演算処理することにより、含水量が推定される。さらに、デバイス制御部138では、推定含水量が、所定の含水量範囲内(図7中、有効範囲参照)に維持されるように、燃料電池スタック14の運転条件を調整する。
そこで、デバイス制御部138は、例えば、燃料ガス供給装置18を構成するパージ弁120の開放作用下に、気体流路116を希釈器100に連通させる。従って、各燃料電池12の燃料ガス流路48を通って加湿された燃料ガスは、オフガスとしてオフガス流路110に排出された後、希釈器100に導入される。
オフガスは、気液分離器112を通過する際に、液状水が除去されるものの、水蒸気を含んでいる。このため、パージ弁120の開放作用下に、オフガスがパージ処理されることにより、水蒸気を含有するオフガスが希釈器100に排出される。これにより、各燃料電池12の燃料ガス流路48には、高圧水素タンク102からドライな燃料ガスが供給されるため、前記燃料ガス流路48に滞留する水分は、前記燃料ガス中に含有されて確実に除去される。
上記のように、アノード電極32側から水分が除去されるため、前記アノード電極32側の含水量が減少する。一方、カソード電極34側の滞留水は、固体高分子電解質膜30を通ってアノード電極32側への拡散が促進される。従って、カソード電極34側の含水量を低下させることができる。
アノード電極32側の含水量が低下すると、図7に示すように、検出される湿度が低く、又は検出される抵抗値が高くなる。制御装置22では、インピーダンス測定部78から入力される湿度(又は抵抗値)を監視することにより、含水量を推定し、前記含水量が有効範囲内に入った際に、アノード電極32側のパージ処理を停止させる。
一方、燃料電池システム10では、上記のアノード電極32側のパージ処理に代えて、又は、前記パージ処理に併用して、他の運転条件の調整を行うことができる。例えば、カソード電極34側では、各燃料電池12の酸化剤ガス流路46に供給される酸化剤ガスの流量を増加させる処理が行われる。
具体的には、図9に示すように、含水量の増加に伴って湿度が高くなり、既定値(閾値)を超えると判断された際、酸化剤ガス流路46に供給される酸化剤ガスの流量(Air流量)が増加される。このため、酸化剤ガス流路46からの排水性が向上し、含水量が減少するとともに、湿度が低下する。従って、簡単且つ経済的に、電解質膜・電極構造体24の含水量を所定の含水量範囲内に維持することが可能になる。
なお、抵抗値は、含水量の増加に伴って低くなり、既定値を下回ると判断された際、酸化剤ガスの流量が増加される。これにより、酸化剤ガス流路46からの排水性が向上し、含水量が減少するとともに、抵抗値が上昇する。
この場合、第1の実施形態では、インピーダンス計測装置60を構成する計測用センサ部62は、第1電極部64a及び第2電極部64bが、互いに離間した状態で、イオン交換樹脂層70に埋設されている。そして、計測用センサ部62には、交流電圧印加部80を介して交流電圧が印加されている。
このため、例えば、単一の計測用センサ部62を電解質膜・電極構造体24の所望の部位に配置するだけで、前記所望の部位の交流インピーダンスを確実に検出することができる。従って、簡単な構成で、固体高分子電解質膜30の任意の部位の交流インピーダンスを確実に計測することが可能になる。これにより、固体高分子電解質膜30の任意の部分の含水量を、正確且つ容易に制御することができるという効果が得られる。
図10は、運転条件の調整として、酸化剤ガスの流量を調整する処理に代えて、冷却媒体の流量を調整する処理の説明図である。
すなわち、燃料電池スタック14に供給される冷却媒体の流量を低下させることにより、含水量を低下させている。このため、冷却媒体の流量を低下させるだけで、含水量を低下させることができ、簡単且つ経済的に、電解質膜・電極構造体24の含水量を所定の含水量範囲内に維持することが可能になる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。なお、冷却媒体の流量を下げる方法の他、前記冷却媒体の温度を上げることにより、含水量を低下させることも可能である。
図11は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池用含水量制御方法が実施される燃料電池140を構成する電解質膜・電極構造体142の要部断面説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池12を構成する電解質膜・電極構造体24と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3以降の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
電解質膜・電極構造体142は、固体高分子電解質膜30をアノード電極32及びカソード電極34で挟持する。固体高分子電解質膜30上には、アノード電極32側及びカソード電極34側に、それぞれ計測用センサ部62が配置される。計測用センサ部62は、アノード電極32の外方及びカソード電極34の外方で、互いに積層方向に同一位置(又はずれた位置)に配置される。
このように構成される第2の実施形態では、計測用センサ部62は、アノード電極32及びカソード電極34の測定に必要とされる部位に任意に配置することができる。このため、電解質膜・電極構造体142の含水量を容易且つ確実に検出することができ、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
図12は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池用含水量制御方法が実施される燃料電池150を構成する電解質膜・電極構造体152の要部断面説明図である。
電解質膜・電極構造体152は、固体高分子電解質膜30をアノード電極154及びカソード電極156で挟持する。アノード電極154は、固体高分子電解質膜30よりも小さな平面寸法に設定されるとともに、前記アノード電極154は、カソード電極156よりも大きな平面寸法に設定される。固体高分子電解質膜30上には、アノード電極154側及びカソード電極156側に、それぞれ計測用センサ部62が配置される。
このように構成される第3の実施形態では、電解質膜・電極構造体152の含水量を容易且つ確実に検出することができ、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
図13は、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池用含水量制御方法が実施される燃料電池160を構成する電解質膜・電極構造体162の要部断面説明図である。
電解質膜・電極構造体162は、固体高分子電解質膜30をアノード電極164及びカソード電極166で挟持する。アノード電極164は、固体高分子電解質膜30よりも小さな平面寸法に設定されるとともに、前記アノード電極164は、カソード電極166よりも大きな平面寸法に設定される。固体高分子電解質膜30上には、アノード電極164の内部及びカソード電極166の内部に位置して、前記固体高分子電解質膜30上にそれぞれ計測用センサ部62が配置される。
このように構成される第4の実施形態では、電解質膜・電極構造体162の含水量を容易且つ確実に検出することができ、上記の第1〜第3の実施形態と同様の効果が得られる。
図14は、本発明の第5の実施形態に係る燃料電池用含水量制御方法が実施される燃料電池170を構成する電解質膜・電極構造体172の要部断面説明図である。
電解質膜・電極構造体172は、固体高分子電解質膜30をアノード電極174及びカソード電極176で挟持する。アノード電極174は、固体高分子電解質膜30よりも小さな平面寸法に設定されるとともに、前記アノード電極174は、カソード電極176よりも大きな平面寸法に設定される。アノード電極174の外部及びカソード電極176の外部に位置して、それぞれ計測用センサ部62が配置される。
このように構成される第5の実施形態では、電解質膜・電極構造体172の含水量を容易且つ確実に検出することができ、上記の第1〜第4の実施形態と同様の効果が得られる。
図15は、本発明の第6の実施形態に係る燃料電池用含水量制御方法が実施される燃料電池180を構成する電解質膜・電極構造体182の要部断面説明図である。
電解質膜・電極構造体182は、固体高分子電解質膜30をアノード電極184及びカソード電極186で挟持する。アノード電極184は、固体高分子電解質膜30よりも小さな平面寸法に設定された第1電極触媒層184aと、前記固体高分子電解質膜30と同一の平面寸法に設定された第1ガス拡散層184bとを有する。カソード電極186は、第1電極触媒層184aよりも小さな平面寸法に設定された第2電極触媒層186aと、固体高分子電解質膜30と同一の平面寸法に設定された第2ガス拡散層186bとを有する。
固体高分子電解質膜30には、第1電極触媒層184a及び第2電極触媒層186aの外方に位置して、それぞれ計測用センサ部62が配置される。各計測用センサ部62は、第1ガス拡散層184b及び第2ガス拡散層186bの内部に配置される。
このように構成される第6の実施形態では、電解質膜・電極構造体182の含水量を容易且つ確実に検出することができ、上記の第1〜第5の実施形態と同様の効果が得られる。
上記の第1〜第6の実施形態では、計測用センサ部62を使用しているが、これに限定されるものではない。例えば、図16及び図17に示すように、計測用センサ部190を用いることができる。
計測用センサ部190は、第1電極部64a及び第2電極部64bを囲繞(埋設)して、少なくとも前記第1電極部64aと前記第2電極部64bとの間に位置して、イオン交換樹脂層192を設ける。イオン交換樹脂層192は、例えば、3枚のシート体を有し、各シート体間に第1電極部64aと第2電極部64bとが介装(配置)され、一体化してもよい。
第1電極部64a及び第2電極部64bは、絶縁部材194に埋設されるとともに、イオン交換樹脂層192は、前記絶縁部材194に形成された開口部(窓部)196a、196bから外部に露呈する。開口部196a、196bは、矩形状(長方形状)を有しているが、丸形状等であってもよい。絶縁部材194は、複数枚(2枚以上)のシート体間に第1電極部64a及び第2電極部64bを挟持するとともに、一方のシート体に開口部196aが形成され、他方のシート体に開口部196bが形成される。開口部196a、196bは、イオン交換樹脂層192の外形寸法と同一寸法に設定される。なお、開口部196a又は196bの一方のみを設けるとともに、該一方のみにイオン交換樹脂層192を設けてもよい。
このように構成される計測用センサ部190は、上記の計測用センサ部62と同様に使用することができ、同様の効果を得ることが可能になる。
図18に示す計測用センサ部200では、第1電極部64aは、第2電極部64bに向かって膨出する膨出部64atを有する一方、前記第2電極部64bは、前記第1電極部64aに向かって膨出する膨出部64btを有する。膨出部64atと膨出部64btとは、薄膜状のイオン交換樹脂層192を挟んで互いに対向配置される。
このように構成される計測用センサ部200は、上記の計測用センサ部62と同様に使用することができ、同様の効果を得ることが可能になる。