JP6288581B2 - アルミニウムまたはアルミニウム合金製伝熱管の拡管方法 - Google Patents
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図8に示す熱交換器の構造において伝熱管100は、フィン材101を直線状に貫通する複数のU字状の主管100Aと、隣接する主管100Aの隣り合う端部開口どうしをU字形のエルボ管100Bで図9に示すように接続してなる。また、フィン材101を貫通している伝熱管100の一方の端部側に冷媒の入口部106が形成され、伝熱管100の他方の端部側に冷媒の出口部107が形成されることで図8に示す熱交換器105が構成されている。
しなしながら、上述したような拡管プラグ112による拡管工程は、従来の銅あるいは銅合金製の伝熱素管103を用い、これを拡管して伝熱管100にするのであるならば、加工上問題を生じるおそれは低かったが、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の伝熱管を用いる場合、以下に説明する課題が新たに発生することがわかった。
このため、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の伝熱管を用い、その伝熱管が溝付きタイプであったとしても、溝の形を崩すことなくできるだけ円滑に拡管できる技術の提供が望まれている。
本発明に係る伝熱管の拡管方法は、アルミニウムあるいはアルミニウム合金からなり、内周面に複数の放熱フィンとフィン溝が所定の間隔で複数交互に形成された溝付き伝熱素管の内側に該伝熱素管の内径より大きい外径を有するヘッド部を備えた拡管プラグを強制的に挿入して前記伝熱素管の外径を拡張させて伝熱管を形成する伝熱管の拡管方法であって、
前記拡管プラグとして、軸部とこの軸部先端側に形成されたヘッド部を有し、前記ヘッド部を硬度HRA87〜94の超硬合金から形成し、前記ヘッド部の外周表面に厚さを1.0〜2.7μm、膜硬さを15〜60GPa、臨界剥離荷重を15〜60N、表面粗さRaを0.028〜0.18μmとしたダイヤモンドライクカーボン皮膜を被覆してなる拡管プラグを用い、前記伝熱素管と前記拡管プラグとの間を潤滑する潤滑油として、引火点17〜98℃、動粘度1.06〜4.90mm2/S(at40℃)の潤滑油を用い、拡管荷重140〜250Nで拡管することにより、内面フィン高さ減少率4.9〜10.0%、拡管率6.00〜6.22%で拡管することを特徴とする。
本発明において、表面粗さRaを0.028〜0.08μmとしたダイヤモンドライクカーボン皮膜を用い、拡管荷重140〜210Nで拡管することにより、内面フィン高さ減少率4.9〜7.5%で拡管することができる。
本発明において、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製のフィン材を複数配列してなるフィン集合体を貫通するように複数の伝熱素管を配置し、これらの伝熱素管を前記拡管プラグにより拡管して伝熱管とすることでこれらの伝熱管をフィン集合体と接合することを特徴とする方法でも良い。
本発明において、前記伝熱素管として、管内面の周方向に間隔をあけて管の長さ方向に延在された複数の螺旋溝を有する螺旋溝付き伝熱素管を用いることができる。
また、低い拡管抵抗で従来よりも円滑に伝熱管を拡管できることから、拡管後の伝熱管の外径を均一化することができる。従って、伝熱管とフィン材を組み合わせて熱交換器を構成する場合、伝熱管とフィン材を精度良く結合することができ、伝熱管とフィン材との熱伝導性に優れ、熱交換特性の良好な熱交換器を提供できる。
特に、内面側に複数の螺旋溝を備えた螺旋溝付き伝熱素管を拡管する場合、拡管プラグのヘッド部が拡管時に内面側の螺旋溝を押圧し、螺旋溝を変形させ、螺旋溝を潰すおそれがあるが、前記構成の拡管プラグを用いて拡管するならば、螺旋溝に変形を生じていない螺旋溝形状の整った伝熱管を得ることができる。
図1は本発明に係る一実施形態の拡管プラグを示すもので、この実施形態の拡管プラグ1は、軸部2とその先端側に一体形成されたヘッド部3とからなる。軸部2の後端側にはねじ軸2aが形成されている。ヘッド部3は樽型をなして軸部2より若干径が大きくなるように膨出形成され、先端側に平坦面3aを有し、ヘッド部3の長さ方向中央部側に最大径部3bが形状されている。このヘッド部3の最大径部3bが後述する伝熱素管を拡管して伝熱管とする場合の伝熱管の径を規定する。
本実施形態の拡管プラグ1において、ヘッド部3はHRA85以上HRA95以下の超硬合金から一体形成されている。HRAはロックウエル硬さの一種であり、先端半径0.2mm、かつ、先端角120゜のダイヤモンド円錐圧子をスケールとして用い、試験荷重600N、基本荷重100Nで測定される値である。まず、試験面に基本荷重を付加し、次いで試験荷重を足した合成荷重を加え、塑性変形させ、その後負荷を基準荷重に戻し、この際の基準面の永久窪みの深さを読み取り、この値から硬さを算出する方法で得られる硬さの指標である。
ヘッド部3は軸部2に対しカシメ加工により結合されているか、銀ろう等を用いたろう付け手段により結合されている。
ヘッド部3を構成する超硬合金の硬さがHRA95を超えると、超硬合金のじん性が低下し、拡管プラグによる加工ができなくなる。
より具体的な一例としてWC粒子にCoを5〜17質量%添加した超硬合金においてHRC85〜95の範囲を得ることができるので、本実施形態の拡管プラグ1の構成材料に適用することができる。
より具体的に例えば、上述の超硬合金としてJISV10、V20、V30、V40、V50、V60などで規定されている種類の超硬合金を利用することができる。
ダイヤモンドライクカーボン皮膜5の膜厚が0.5μm未満であると、アルミニウムの凝集抑制効果が低下し、拡管時に拡管プラグ1に対するアルミニウムの凝着が生じ易くなる。また、ダイヤモンドライクカーボン皮膜5の膜厚が3.0μmを超えるようであると、ダイヤモンドライクカーボン皮膜5の膜剥がれを生じ易くなる。
ダイヤモンドライクカーボン皮膜5の硬さについては、20GPa以上70GPa以下であることが好ましい。ダイヤモンドライクカーボン皮膜5の硬さが20GPa未満では耐摩耗性が低下して拡管プラグ1の寿命が短くなり、70GPaを超える硬さでは成膜自体が困難となる。
この条件に用いることができる潤滑油として例示するならば、ダフニーパンチオイル AF−2A(出光興産製:動粘度1.37mm2/S)を挙げることができる。
この例の伝熱素管10は、ルームエアコン用熱交換器の伝熱管に適用する場合、例えば、直径5〜10mm程度の外径の管本体11の内部に複数の突条型の放熱フィン12が形成されてなる。
放熱フィン12は、それぞれ管本体11の内周面から管本体11の中心に向いて突出形成され、管本体11の内面の長さ方向全長に渡り延在するように、管本体11の内周面の周方向に所定の間隔で複数隣接形成されている。
各フィン材15においてヘアピンパイプ17を挿通する予定位置に透孔を複数形成しておき、複数のフィン材15を平行に配置した場合、これらの透孔が一直線状に並ぶようにした上で図3に示すようにヘアピンパイプ17を必要本数フィン集合体16の透孔に挿通する。この挿通作業の場合、各ヘアピンパイプ17の開口部17aはフィン集合体16の一側に揃えておく。
なお、拡管プラグ1のねじ軸2aの部分に対し、嵌合自在なねじ穴を有する図示略の延長ロッドをねじ接合して拡管プラグ1の長さを調整しておく。これにより、拡管プラグ1の長さを調整し、ヘアピンパイプ17の全長に渡り、拡管できるように調整しておく。
また、放熱フィン12の変形を抑制しつつ拡管できることにより、得られる伝熱管18の外径を均一になるように拡管できるので、フィン材15と伝熱管18の接合時の密着強度を高めることができる。このため、伝熱管18とフィン材15との熱伝導性を良好として優れた熱交換性能を維持することができる。
拡管プラグ1において、ダイヤモンドライクカーボン皮膜5の硬さが20〜70GPaの範囲であるならば、多数の伝熱素管10を拡管加工したとしても、耐摩耗性の低下が少ないので拡管プラグ1として寿命を長くすることができる。
ダイヤモンドライクカーボン皮膜5の表面粗さRaを小さい値とした方が拡管荷重を少なくすることが可能となり、拡管する上で望ましく、内面フィン高さ減少率を小さくすることができる。例えば、ダイヤモンドライクカーボン皮膜5の表面粗さRaを0.1μm以下とすることが好ましく、0.05μm以下とすることがより好ましい。表面粗さRaの調整は、ダイヤモンドライクカーボン皮膜を成膜する際の条件の最適化により調整することができる。
管本体21の内部に形成されている複数の放熱フィン22は全ての放熱フィン22が同じピッチで螺旋状に形成されていて、放熱フィン22の間に形成されているフィン溝23についても管本体21の内部において所定のピッチで螺旋を描くように、即ち螺旋溝状に形成されている。
本実施形態の放熱フィン22を備えた伝熱管20であっても、先の第1実施形態の伝熱管18と同様に拡管プラグ1により拡管することができる。
この点において先に説明したダイヤモンドライクカーボン皮膜5を備えた拡管プラグ1であるならば、放熱フィン22を倒したり、螺旋溝状のフィン溝23を潰したりすることを抑制しつつ拡管処理ができる。
なお、更に放熱フィン23の変形を防止する目的で、拡管プラグ1が放熱フィン22を倒すと想定される方向と反対側に予め放熱フィン22を傾斜させておくなどの工夫をすることが好ましい。このように予め放熱フィン22を傾斜させておくことで、拡管プラグによる拡管後においても放熱フィン22が潰れていない、目的の構造を提供できる。
拡管用の伝熱素管として、外径7.0mm、底肉厚0.5mm、放熱フィン(幅0.15mm、内面フィン高さ0.3mm)を内周に45個有する伝熱素管を前記拡管プラグ(最大外径φ5.9mm、プラグ前面R=10mm)で拡管した。この伝熱素管は、JIS3003合金からなる。
前記構成の拡管プラグにより前記構成の伝熱素管を拡管することにより、前記伝熱素管を外径10mmの伝熱管に拡管した。
拡管の結果、拡管荷重299N、図6に示すように変形やつぶれの少ない内面性状に優れた放熱フィンを有する伝熱管を得ることができた。この伝熱管の拡管率は6.0%、放熱フィン高さ減少率は10%になっている。放熱フィン高さ減少率とは、拡管する前の伝熱素管の状態の放熱フィン高さと、拡管後の図6に示す伝熱管30の放熱フィン31の高さHを比較し、高さの減少した割合を示す。
内面フィン高さ減少率とは、{(拡管前フィン高さ−拡管後フィン高さ)/拡管前フィン高さ}}×100の式で計算される値を示す。なお、これら個々の高さは、CCDカメラを用いた各管の断面撮像の結果を用いて算出できる。
この場合、拡管荷重は600Nであり、図7に示す断面形状の伝熱管33が製造された。この伝熱管の放熱フィン高さ減少率は25%であり、拡管率は5.36%であった。
得られた伝熱管33の断面は図7に示すように放熱フィン35がいびつに変形した形状となった。これは、拡管荷重が600Nと極めて高く、拡管荷重が高いために放熱フィン35に拡管プラグから作用する力が大きく作用し、放熱フィン35が変形したものと推定できる。
表1、表2の評価項目において、内面フィン高さ減少率は、上述の計算式に従う拡管試験前後における高さ減少率(分母は拡管前のフィン高さ)を示す。拡管率は、拡管試験前後における外径拡管率(分母は拡管前)を示し、アルミ凝集条体は、拡管後拡管プラグの外観を観察し、拡管プラグ周方向に凝着が無い場合を○印、凝着範囲が1/2程度生じていた場合を△印、1/2を超える凝着範囲であった場合を×印で示した。拡管プラグ寿命は、各拡管距離後に拡管プラグを外観観察し、ダイヤモンドライクカーボン皮膜の摩滅によってアルミ凝着状態に変化が見られないことを評価し、凝着無しの場合を◎印、周方向1/4以下を○印、周方向1/3以下を△印、周方向1/2以下を▲印、周方向1/2を超える場合を×印で示した。油乾燥性とは、シャーレに1gの潤滑油を採取し、140℃×2分加熱後の重量が加熱前の5%以下の場合を○印、10%以下の場合を△印、10%超えの場合を×印で示した。
なお、No.1〜13、17〜28の試料の試験結果において、臨界剥離荷重30N以上のNo.9〜13、17〜28の試料は拡管プラグ寿命が特に優れていることが判る。
また、試料1〜16のダイヤモンドライクカーボン皮膜においてその表面粗さRaの測定結果比較から、Raを0.1μm以下とした方が、拡管荷重削減の面で望ましく、0.05μm以下とした方が、拡管荷重を削減した上に、内面フィン高さ減少率を少なくできる上でより望ましいことがわかる。
Claims (5)
- アルミニウムあるいはアルミニウム合金からなり、内周面に複数の放熱フィンとフィン溝が所定の間隔で複数交互に形成された伝熱素管の内側に該伝熱素管の内径より大きい外径を有するヘッド部を備えた拡管プラグを強制的に挿入して前記伝熱素管の外径を拡張させて伝熱管を形成する伝熱管の拡管方法であって、
前記拡管プラグとして、軸部とこの軸部先端側に形成されたヘッド部を有し、前記ヘッド部を硬度HRA87〜94の超硬合金から形成し、前記ヘッド部の外周表面に厚さを1.0〜2.7μm、膜硬さを15〜60GPa、臨界剥離荷重を15〜60N、表面粗さRaを0.028〜0.18μmとしたダイヤモンドライクカーボン皮膜を被覆してなる拡管プラグを用い、
前記伝熱素管と前記拡管プラグとの間を潤滑する潤滑油として、引火点17〜98℃、
動粘度1.06〜4.90mm2/S(at40℃)の潤滑油を用い、拡管荷重140〜250Nで拡管することにより、内面フィン高さ減少率4.9〜10.0%、拡管率6.00〜6.22%で拡管することを特徴とする伝熱管の拡管方法。 - 前記ダイヤモンドライクカーボン皮膜として、硬さが30〜60GPaの範囲であり、臨界剥離荷重が30〜60Nのダイヤモンドライクカーボン皮膜を用いることを特徴とする請求項1に記載の伝熱管の拡管方法。
- 表面粗さRaを0.028〜0.08μmとしたダイヤモンドライクカーボン皮膜を用い、拡管荷重140〜210Nで拡管することにより、内面フィン高さ減少率4.9〜7.5%で拡管することを特徴とする請求項1または2に記載の伝熱管の拡管方法。
- アルミニウムあるいはアルミニウム合金製のフィン材を複数配列してなるフィン集合体を貫通するように複数の伝熱素管を配置し、これらの伝熱素管を前記拡管プラグにより拡管して伝熱管とすることでこれらの伝熱管をフィン集合体と接合することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の伝熱管の拡管方法。
- 前記伝熱素管として、管内面の周方向に間隔をあけて管の長さ方向に延在された複数の螺旋溝を有する螺旋溝付き伝熱素管を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の伝熱管の拡管方法。
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