図1および図2を参照して、この発明の一実施例であるケーブル保護管路の施工方法は、通信ケーブルや電力ケーブル等のケーブル(図示せず)を地中に配線するために、内部にケーブルが挿通される小口径の複数の鞘管102とこれら鞘管102を収容して保護する大口径のボディ管104とを備えるケーブル保護管路100を所定の施工区間に対して施工するものである。
このケーブル保護管路の施工方法は、ケーブルの接続や点検などのために設けられるハンドホール106a,106b間を1区切りの施工区間としており、図3−図10に示すようなケーブル保護管部材10、ボディ管やりとり継手12、および鞘管やりとり継手14などを用いて実施される。詳細は後述するように、この実施例では、2つのハンドホール106a,106bのそれぞれを起点として、つまり施工区間の両端を起点として、ケーブル保護管部材10を順次接続してケーブル保護管路100を施工する。そして、施工区間の途中の任意の直線区間において、各ハンドホール106a,106bから施工したケーブル保護管路100の端部同士をボディ管やりとり継手12と鞘管やりとり継手14とを用いてやりとり接続することにより、一連のケーブル保護管路100を形成する。
先ず、ケーブル保護管路100の施工に用いる主要な部材について説明する。図3および図4に示すように、ケーブル保護管部材10は、その軸方向の端部同士を接続して連続させることによってケーブル保護管路100を形成するものであり、ボディ管部材20と、ボディ管部材20の内部に所定の配置態様で収容される複数の鞘管部材22と、これら鞘管部材22をスライド可能に所定の配置態様で保持する整列部材24とを含む。
図5に示すように、ボディ管部材20は、ボディ管104を構成するための直管状の部材であり、土圧などの外力に耐え得る強度を有する。具体的には、ボディ管部材20は、円筒状に形成される直管部26を含み、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルおよびABS等の合成樹脂によって形成される。直管部26の一方端部には、拡径されたゴム輪受口28が形成され、他端部は差口30として利用される。ゴム輪受口28には、先端付近の内周面にゴム輪溝が形成されており、このゴム輪溝に止水用のゴム輪32が装着される。ボディ管部材20の長さは、たとえば5210mmであり、ボディ管部材20(直管部26)の内径は、たとえば250mmである。このようなボディ管部材20は、ゴム輪受口28に他のボディ管部材20の差口30を差し込んでゴム輪接合することによって、ボディ管104を形成する。
図6に示すように、鞘管部材22は、ボディ管104内で複数のケーブル収容スペースを個別に確保する鞘管102を構成するための直管状の部材である。この実施例では、8つの鞘管部材22aおよび6つの鞘管部材22bがボディ管部材20の内部に所定の配置態様で収容されている(図3および図4参照)。なお、説明の際に鞘管部材22aと鞘管部材22bとを区別する必要がない場合には、単に鞘管部材22と記載する。
具体的には、鞘管部材22は、円筒状に形成される直管部34を含み、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルおよびABS等の合成樹脂によって形成される。直管部34の一方端部には、拡径された接着受口36が形成され、他端部は差口38とされる。鞘管部材22の長さは、たとえば5110mmである。また、鞘管部材22aの内径は、たとえば50mmであり、鞘管部材22bの内径は、たとえば30mmである。なお、鞘管部材22の長さがボディ管部材20の長さよりも小さい理由は、鞘管部材22の接着受口36の受容長さがボディ管部材20のゴム輪受口28の受容長さよりも小さく設定されているためであり、鞘管部材22同士を接合したものとボディ管部材20同士を接合したものとでは、ほぼ同じ長さとなる。このような鞘管部材22は、接着受口36に他の鞘管部材22の差口38を差し込んで接着接合することによって、鞘管102を形成する。
また、図3および図4に示すように、整列部材24は、ボディ管部材20内において各鞘管部材22を所定の配置態様に整列させた状態で保持するものである。整列部材22は、スポンジ等の軟質材料によって複数の貫通孔40を有する円板状に形成され、軸方向に移動可能かつ軸周りに回転可能な状態でボディ管部材20の直管部26の両端部に配置される。各貫通孔40には、対応する鞘管部材22が軸方向にスライド(摺動)可能に挿通される。
図7に示すように、ボディ管やりとり継手(スライド管)12は、ボディ管部材20をやりとり接続するために用いられる直管状の部材であり、ボディ管部材20と同様に、土圧などの外力に耐え得る強度を有する。具体的には、ボディ管やりとり継手12は、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルおよびABS等の合成樹脂によって、ボディ管部材20の外径よりも若干大きい内径を有する円筒状に形成される。ボディ管やりとり継手12の両端部の内周面には、ゴム輪溝が形成されており、このゴム輪溝には止水用のゴム輪42が装着される。ボディ管やりとり継手12の長さは、たとえば1000mmである。
ボディ管やりとり継手12には、図8に示すように、その両端部から長さ調整用のボディ管部材44が差し込まれ、これによってボディ管やりとりユニット46が形成される。ボディ管部材44は、両端部が差口となっており、ボディ管やりとり継手12に対して軸方向にスライド可能とされる。つまり、ボディ管やりとりユニット46は、ボディ管部材44をスライドさせることによって、その軸方向長さを自由に変化させることができる。
また、図9に示すように、鞘管やりとり継手14は、鞘管部材22をやりとり接続するために用いられる直管状の部材であり、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルおよびABS等の合成樹脂によって形成される。鞘管やりとり継手14は、一方端部に形成されるスライド受口48と他端部に形成される差口50とを有し、スライド受口48の奥部にはテーパ状の当たり部52が形成される。スライド受口48の内径は、対応する鞘管部材22の外径よりも若干大きめに設定され、差口50の外径は、対応する鞘管部材22の直管部34の外径と同じまたはほぼ同じ大きさに設定される。また、スライド受口48の軸方向長さ(奥行)は、鞘管部材22の移動、熱伸縮、施工誤差、施工上必要な長さ、および押込み代などを考慮して、最悪条件となった場合でも長さ調整用の鞘管部材54が抜け出ない長さに設定され、たとえば1500mmである。差口50の軸方向長さは、たとえば110mmである。
鞘管やりとり継手14のスライド受口48には、図10に示すように、長さ調整用の鞘管部材54が差し込まれ、これによって鞘管やりとりユニット56が形成される。鞘管部材54は、両端部が差口となっており、鞘管やりとり継手14のスライド受口48に対して軸方向にスライド可能とされる。つまり、鞘管やりとりユニット56は、鞘管部材54をスライドさせることによって、その軸方向長さを自由に変化させることができる。なお、この実施例では、径の異なる2種類の鞘管部材22a,22bが用いられるので、鞘管やりとり継手14(鞘管やりとりユニット56)も径の異なる2種類のものが用いられる。また、図示は省略するが、複数の鞘管やりとり継手14(鞘管やりとりユニット56)を個別に識別できるように、鞘管やりとり継手14のそれぞれに対して識別情報を付与しておくとよい。識別情報の付与方法は、たとえば、鞘管やりとり継手14をカラー化して色分けすることであってもよいし、色分けしたり個別の番号を記載したりしたテープやキャップ等を鞘管やりとり継手14に取り付けることであってもよい。
以下、図11−図17を参照して、ケーブル保護管部材10、ボディ管やりとり継手12および鞘管やりとり継手14などを用いて、所定の施工区間に対してケーブル保護管路100を施工する施工方法について説明する。なお、図12−図17、後述する図18−図20および図23では、図面の簡素化のため、代表して1つの鞘管部材22(鞘管102)を示し、他の鞘管部材22の図示を省略している。
この実施例のケーブル保護管路の施工方法では、先ず、施工区間の一方端に第1ハンドホール106aを設け、この第1ハンドホール106aを起点として、施工区間の途中の任意地点までケーブル保護管路100を順次施工する。一方、第1ハンドホール106aを起点とするケーブル保護管路100の施工と並行して、或いはその前後に、施工区間の他端に第2ハンドホール106bを設け、この第2ハンドホール106bを起点として、施工区間の途中の任意地点までケーブル保護管路100を順次施工する。すなわち、図11−図13に示すように、第1ハンドホール106aおよび第2ハンドホール106bの双方を起点として、ケーブル保護管路100を順次施工していく。
具体的には、先ず、図11に示すように、第1ハンドホール106aが備えるダクトスリーブ108に対して、複数の鞘管ダクトスリーブ110を備えるボルト固定式ロータス管112を取り付ける。ダクトスリーブ108およびボルト固定式ロータス管112は、ハンドホール106a,106bに対してボディ管部材20および鞘管部材22を接続するための部材であり、複数の鞘管ダクトスリーブ110は、ケーブル保護管路100が備える鞘管102の本数や配列などに応じて設けられる。なお、ダクトスリーブ108およびボルト固定式ロータス管112については、公知技術であるので、この技術に関する詳しい説明および図示は省略する。
続いて、図12に示すように、鞘管ダクトスリーブ110のそれぞれに端末用の鞘管部材58を差し込んで接続すると共に、ダクトスリーブ108に端末用のボディ管部材60を差し込んで接続する。ここで、端末用の鞘管部材58としては、たとえば2本の鞘管部材22を連結および切断する等して、その先端部が端末用のボディ管部材60から100−200mm程度突出するように長さが調整されたものを用いる。これは、次の鞘管部材22との接合を容易にするためである。
なお、ハンドホール106a,106bに対してボディ管部材20および鞘管部材22を接続するための部材ないし構造は、上述のものに限定されず、公知技術を適宜採用し得る。たとえば、ボルト固定式ロータス管112を用いる代わりに、ボディ管用のロータス管と鞘管用の鞘管ダクトスリーブとが予めユニット化されたロータス管ユニットを用いるようにしてもよい。
図12に戻って、ハンドホール106aに対して端末用の鞘管部材58およびボディ管部材60を接続すると、続いて、ケーブル保護管部材10(つまり複数の鞘管部材22およびボディ管部材20のそれぞれ)を順次接続して、施工区間の途中の任意の直線区間の手前、つまりやりとり接続を行う場所までケーブル保護管路100を施工する。
具体的には、端末用の鞘管部材58およびボディ管部材60に対してケーブル保護管部材10を接続する際には、端末用の鞘管部材58の接着受口に対し、それと配置位置が対応するケーブル保護管部材10の鞘管部材22の差口38を挿入して、それらを接着接合する。この際には、ケーブル保護管部材10の鞘管部材22をボディ管部材20から外側に引き出して、引き出した鞘管部材22の差口38の外面に塩化ビニル樹脂系やエポキシ樹脂系などの接着剤を塗布し、端末用の鞘管部材58の接着受口に挿入するとよい。この作業を1本ずつ繰り返して、複数の鞘管部材22の全ての接続作業が終了すると、端末用のボディ管部材60のゴム輪受口に対し、ケーブル保護管部材10のボディ管部材20の差口30を挿入して、それらをゴム輪接合する。後続するケーブル保護管部材10を接続する作業もこれと同様に行うとよい。なお、上述のような構成のケーブル保護管部材10を用いることにより、ボディ管部材20内で所定の配置位置に整列保持された鞘管部材22を順次引き出して接続作業を行うことができるので、鞘管部材22を他の鞘管部材22と混同することなく、正確かつ簡単に接続することができる。
一方、第2ハンドホール106b側においても、第1ハンドホール106a側と同様にして、第2ハンドホール106bが備えるダクトスリーブ108に対してボルト固定式ロータス管112を装着して、端末用の鞘管部材58およびボディ管部材60を接続する。そして、ケーブル保護管部材10を順次接続して、施工区間の途中の任意の直線区間の手前、つまりやりとり接続を行う場所までケーブル保護管路100を施工する。
なお、道路規制などの理由で施工区間の一部に施工を行えない区間がある場合には、両ハンドホール106a,106bを起点としてその規制区間の手前までケーブル保護管路100を施工しておくとよい。つまり、規制区間を残してケーブル保護管路100が施工された状態にしておくとよい。そして、規制区間の施工が可能となった時点で施工を再開し、一方側または両側のケーブル保護管路100の最終番目のケーブル保護管部材10に対して次のケーブル保護管部材10を適宜接続することにより、任意の直線区間を残してケーブル保護管路100が施工された状態にするとよい。
上述の施工作業によって、図13に示すような、任意の直線区間114、つまりやりとり接続を行うための間隔(たとえば2500−6000mmの間隔)を残してケーブル保護管路100が施工された状態になる。この際、鞘管部材22がボディ管部材20からはみ出す長さが所定範囲内、たとえば100−200mmの範囲内となっているかどうかを確認(計測)しておくとよい。
任意の直線区間114を残してケーブル保護管路100が施工された状態になると、続いて、やりとり接続を行う。すなわち、図14−図17に示すように、第1ハンドホール106aを起点として順次接続した最終番目のケーブル保護管部材10の鞘管部材22およびボディ管部材20のそれぞれと、第2ハンドホール106bを起点として順次接続した最終番目のケーブル保護管部材10の鞘管部材22およびボディ管部材20のそれぞれとを、鞘管やりとり継手14およびボディ管やりとり継手12を用いてやりとり接続し、2つのハンドホール106a,106bを連結する一連のケーブル保護管路100を形成する。
具体的には、先ず、残った直線区間114の長さを測定し、それに応じた長さを有する長さ調整用の鞘管部材54およびボディ管部材44を製作する。そして、長さ調整用の鞘管部材54と鞘管やりとり継手14とを接続した鞘管やりとりユニット56(図10参照)を鞘管部材22(鞘管102)の本数分用意すると共に、長さ調整用のボディ管部材44とボディ管やりとり継手12とを接続したボディ管やりとりユニット46(図8参照)を用意する。なお、長さ調整用の鞘管部材54およびボディ管部材44は、鞘管部材22およびボディ管部材20を適宜切断する等して製作するとよい。
次に、図14に示すように、鞘管やりとりユニット56の一方端を一方の鞘管部材22に接続する。すなわち、長さ調整用の鞘管部材54を鞘管やりとり継手14のスライド受口48の奥まで差し込んだ状態(鞘管やりとりユニット56を縮めた状態)で、接着剤を塗布した鞘管やりとり継手14の差口50を鞘管部材22の接着受口36に挿入して接着接合する。この作業を1本ずつ繰り返して、複数の鞘管部材22の全てに鞘管やりとりユニット56の一方端を接続する。
続いて、ボディ管やりとりユニット46の一方端を一方のボディ管部材20に接続する。すなわち、図15に示すように、長さ調整用のボディ管部材44の双方をボディ管やりとり継手12の中央部まで差し込んだ状態(ボディ管やりとりユニット46を縮めた状態)で、鞘管やりとりユニット56の端部を持ち上げるようにして、ボディ管やりとりユニット46内に複数の鞘管やりとりユニット56全体を挿通していく。そして、ボディ管部材20のゴム輪受口28に対し、長さ調整用のボディ管部材44の差口を挿入して、それらをゴム輪接合する。
続いて、図16に示すように、鞘管やりとりユニット56の他端を他方の鞘管部材22に接続する。すなわち、長さ調整用の鞘管部材54を外側にスライドさせて鞘管やりとりユニット56を伸ばし、接着剤を塗布した長さ調整用の鞘管部材54の差口を鞘管部材22の接着受口36に挿入して接着接合する。なお、鞘管部材22のやりとり接続を行う際には、長さ調整用の鞘管部材54の差口を先に接続し、その後に鞘管やりとり継手14の差口50を接続するようにしてもよい。
そして最後に、図17に示すように、ボディ管やりとりユニット46の他端を他方のボディ管部材20に接続する。すなわち、2つの長さ調整用のボディ管部材44のそれぞれを外側にスライドさせてボディ管やりとりユニット46を伸ばし、ボディ管部材20のゴム輪受口28に対して長さ調整用のボディ管部材44の差口を挿入して、それらをゴム輪接合する。
以上の施工作業によって、図1および図2に示すような、2つのハンドホール106a,106bを連結する一連のケーブル保護管路100が形成される。その後、ケーブル保護管路100の各鞘管102の内部(ケーブル収容スペース)には、適宜ケーブルが挿通される。
この実施例によれば、施工区間の両端を起点としてケーブル保護管路100を形成していくので、道路規制などの理由で施工区間の一部に施工を行えない区間がある場合でも、規制区間以外の部分を先に施工してしまうことができ、工期短縮を図ることができる。また、鞘管やりとり継手14およびボディ管やりとり継手12を用いてやりとり接続を行うため、施工区間のいずれかに直線区間があればやりとり接続が可能となり、施工の自由度が高まる。つまり、施工区間の中間地点においてもやりとり接続を行うことができるので、ハンドホール106a,106bの近傍が曲線区間となっている場合にも適切に対応できる。さらに、施工区間の両端からの施工を並行して(同時に)行うようにすれば、作業効率がより向上する。すなわち、この実施例によれば、施工の自由度を高めることができ、作業効率を向上させることができる。
なお、上述の実施例では、ボディ管部材20と鞘管部材22とが整列部材24を介して一体化されたケーブル保護管部材10を用いたが、ケーブル保護管部材の態様はこれに限定されず、公知のケーブル保護管部材(鞘管部材およびボディ管部材)を適宜利用できる。たとえば、鞘管部材とボディ管部材とは一体化されていなくてもよい。また、たとえば、複数の鞘管部材を個別に識別できるように、鞘管部材のそれぞれに対して識別情報を付与しておくこともできる。識別情報の付与方法は、たとえば、鞘管部材をカラー化して色分けすることであってもよいし、色分けしたり個別の番号を記載したりしたテープやキャップ等を鞘管部材に取り付けることであってもよい。
また、上述の実施例では、任意の直線区間114を残してケーブル保護管路100を施工した後に、最終番目の鞘管部材22がボディ管部材24からはみ出す長さが所定範囲内となっているかどうかを確認した際、はみ出し長さが所定範囲内にあるものとして説明を進めた(図13参照)。しかしながら、図18に示すように、鞘管部材22の一方または双方のはみ出し長さが所定範囲を超える場合には、そのはみ出し長さが所定範囲内(たとえば100−200mmの範囲内)となるように、鞘管部材22の先端部を切断するとよい。これによって、続くやりとり接続の工程を行い易くなり、作業効率がより向上する。なお、双方の鞘管部材22のはみ出し長さが所定範囲を超える場合には、一方のみを切断してもよいし、双方を切断してもよい。
ここで、上述のように鞘管部材22の先端部(接着受口36)を切断すると、鞘管部材22の接続端部は差口形状となる。たとえば、一方の鞘管部材22の先端部を切断すると、図19に示すように、一方の鞘管部材22の接続端部が差口70であり、他方の鞘管部材22の接続端部が接着受口36である状態となる。この場合には、長さ調整用の鞘管部材54として一方端部に接着受口72を有するものを用いて、やりとり接続を行うとよい。具体的には、鞘管やりとり継手14の差口50を鞘管部材22の接着受口36に挿入して接着接合すると共に、長さ調整用の鞘管部材54の接着受口72に鞘管部材22の差口70を挿入して接着接合するとよい。
なお、ボディ管部材20(ボディ管104)のやりとり接続については、図14−図17に示す工程において説明したものと同様であるので、図19においてはボディ管やりとりユニット46の図示およびその説明を省略している。後述する図20および図23においても同様である。
また、たとえば、双方の鞘管部材22の先端部を切断すると、図20に示すように、双方の鞘管部材22の接続端部が差口70である状態となる。この場合には、一方端部に接着受口72を有する長さ調整用の鞘管部材54を備える鞘管やりとりユニット56と、両端部に接着受口を有する鞘管ソケット74とを用いて、やりとり接続を行うとよい。具体的には、図20(a)に示すように、先ず、鞘管ソケット74の接着受口に鞘管部材22の差口70を挿入して接着接合する。そして、図20(b)に示すように、鞘管やりとり継手14の差口50を鞘管ソケット74の接着受口に挿入して接着接合すると共に、長さ調整用の鞘管部材54の接着受口72に鞘管部材22の差口70を挿入して接着接合するとよい。
さらに、双方の鞘管部材22の接続端部が差口70である状態となる場合には、鞘管ソケット74を用いる代わりに、図21に示すような鞘管やりとり継手14を用いることもできる。図21に示す鞘管やりとり継手14は、図9に示す鞘管やりとり継手14とほぼ同じであるが、差口50の代わりに接着受口76を有する点が異なる。すなわち、図21に示す鞘管やりとり継手14は、一方端部に形成されるスライド受口48と他端部に形成される接着受口76とを有する。また、スライド受口48の奥部にはテーパ状の当たり部52が形成され、接着受口76の奥部にはテーパ状の当たり部78が形成される。図21に示す鞘管やりとり継手14のスライド受口48には、図22に示すように、一方端部が接着受口72となっている長さ調整用の鞘管部材54が差し込まれ、これによって両端が受口となる鞘管やりとりユニット56が形成される。
そして、図22に示す鞘管やりとりユニット56を用いてやりとり接続を行う際には、図23に示すように、鞘管やりとり継手14の接着受口76に鞘管部材22の差口70を挿入して接着接合すると共に、長さ調整用の鞘管部材54の接着受口72に鞘管部材22の差口70を挿入して接着接合するとよい。もちろん、図21に示す鞘管やりとり継手14に対して両端部が差口となっている長さ調整用の鞘管部材54を接続して、一方の鞘管部材22の接続端部が差口70であり、他方の鞘管部材22の接続端部が接着受口36である場合のやりとり接続に用いることもできる。
また、上述の実施例では、ボディ管部材20をやりとり接続するためのボディ管やりとり継手12として、その内周面両端部にゴム輪42を装着したゴム輪タイプの継手(図7参照)を用いたが、これに限定されない。たとえば、図24に示すようなバンド固定タイプのボディ管やりとり継手(スライド管)12を用いることもできる。図24に示すように、このボディ管やりとり継手12は、継手本体80、ゴムジョイント82および締めバンド84を備える。
具体的に説明すると、継手本体80は、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルおよびABS等の合成樹脂によって円筒状に形成される所謂プレーン管である。継手本体80の長さは、たとえば1000mmである。また、継手本体80の内径は、長さ調整用のボディ管部材44(ボディ管部材20)の外径よりも若干大きくなるように設定され、後述のように継手本体80に長さ調整用のボディ管部材44を差し込んだ際には、継手本体80の内周面とボディ管部材44の外周面との間には、若干の隙間が形成される。これにより、継手本体80とボディ管部材44との接続部分で可撓性が生じ、この部分で角度を付けることが可能になる。たとえば、継手本体80とボディ管部材44との接続部分で0−6°程度の角度を付けることができるように、継手本体80の内周面とボディ管部材44の外周面との間の隙間の大きさが設定される。ただし、継手本体80の内周面とボディ管部材44の外周面との間には必ずしも隙間が形成される必要はない。
また、継手本体80の両端部には、EPDMなどのゴムによって円筒状に形成されるゴムジョイント82が設けられる。ゴムジョイント82の一方端部82aは、継手本体80の外径と略同じ大きさの内径を有し、継手本体80の端部に外嵌めされる。一方、ゴムジョイント82の他端部82bは、ボディ管部材44の外径と略同じ大きさを有し、継手本体80の管端から軸方向外側に延びる。ゴムジョイント82の長さは、たとえば150mmであり、その厚みは、たとえば7mmである。
また、ゴムジョイント82の一方端部82aおよび他端部82bの外周面のそれぞれには、ステンレス製などの締めバンド84が設けられる。締めバンド84は、ボルト締め付け機構またはインシュロック機構(図示せず)などを有し、その内径を任意に調整できるバンドである。ゴムジョイント82の一方端部82aに装着される締めバンド84は、ゴムジョイント82の一方端部82aと継手本体80の端部との接合時に締め込まれる。一方、ゴムジョイント82の他端部82bに装着される締めバンド84は、ボディ管部材44をスライド(挿入)するときには緩めたままの状態とされ、やりとり接続が終わってボディ管部材44の位置を固定するときに締め込まれる。締めバンド84を締め付けることによって、ゴムジョイント82の内周面と継手本体80またはボディ管部材44の外周面とが密着してこの間が止水される。
このようなボディ管やりとり継手12には、図25に示すように、たとえば、その両端部から長さ調整用のボディ管部材44が差し込まれ、これによってボディ管やりとりユニット46が形成される。ボディ管部材44は、両端部が差口となっており、ボディ管やりとり継手12に対して軸方向にスライド可能とされる。つまり、ボディ管やりとりユニット46は、ボディ管部材44をスライドさせることによって、その軸方向長さを自由に変化させることができる。
ここで、上述の図7に示すボディ管やりとり継手12では、その内周面とボディ管部材44の外周面との間でゴム輪42を圧縮する必要があるので、ボディ管やりとり継手12の内周面から内方に突出するようにゴム輪42が装着される。つまり、ゴム輪42の内径はボディ管部材44の外径より小さい。このため、ボディ管やりとり継手12に対してボディ管部材44を接続するときには、ボディ管部材44の管端がゴム輪42を適切に乗り越えることができるように、ディスグラインダ等を用いてボディ管部材44の管端外周面に対して面取り加工を行う。しかしながら、この面取り加工には大きな手間および時間がかかる。また、ボディ管部材44をスライド(または挿入)するときには、ゴム輪42の抵抗が大きいので、ボディ管部材44を手作業でスライドさせることが難しい。このため、図7に示すボディ管やりとり継手12では、荷締め機などを用いてボディ管部材44をスライドさせる必要があるが、これには手間および時間がかかる。特に、ボディ管やりとり継手12の管軸とボディ管部材44の管軸とがずれた状態(角度ずれまたは芯ずれの状態)においては、ゴム輪42の抵抗がより大きくなって、施工が困難となる。
これに対して、図24に示すボディ管やりとり継手12では、ゴムジョイント82の内径とボディ管部材44の外径とは略同一であるため、ボディ管やりとり継手12に接続するボディ管部材44の管端に対して面取り加工を行う必要がない。また、ゴムジョイント82の他端部82bに装着される締めバンド84を緩めた状態では、ボディ管部材44に作用するゴムジョイント82の抵抗は小さいので、ボディ管部材44を手作業で簡単にスライドさせることができ、荷締め機などを用いてボディ管部材44をスライドさせる必要がない。さらに、ボディ管やりとり継手12の管軸とボディ管部材44の管軸とがずれた状態においても、ボディ管部材44をスライド(または挿入)することが可能である。
したがって、図24に示すボディ管やりとり継手12を用いてボディ管部材20をやりとり接続することによって、施工が容易となり、施工時間を大幅に短縮することができる。
なお、図24に示すボディ管やりとり継手12において、締めバンド84を締め込んだ施工後の状態では、ボディ管やりとり継手12(継手本体80)に対するボディ管部材44の軸方向位置は固定されるが、地震時などに大きな力が作用したときには、ボディ管部材44はスライドしてその揺れ(伸縮)を吸収することができる。
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値はいずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。