JP6282940B2 - 林相解析装置及びプログラム - Google Patents

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Description

本発明は、航空レーザ計測データから森林の林相区画を抽出する林相解析装置、林相解析方法及びプログラムに関する。
林相は樹種・樹齢、樹冠や木の生育状態などによる森林の様子・形態であり、林相区画は林相によって区分された森林領域である。林相区画は、航空写真などの高分解能画像データを用いたより高精度の林相区分・樹種分類の基本処理単位となっており、さらに、林班や小班の境界線の生成、及び林相区分の目視確認に重要な要素となる。従って、林相区分・樹種分類を正確かつ効率的に行う上で、林相区画を適切に生成することが必要となる。
ここで、航空機などによる上空からのリモートセンシングは、広範囲での地上の状況把握が可能であり、森林の林相区画の抽出などの林相の解析に利用されている。具体的には、従来、林相の解析には主として航空写真等の上空からの高分解能画像データが利用されている。そして当該データを利用した林相区画の抽出や林相区分図の作成は基本的に人間が実体視鏡やデジタル図化機等を用いて目視判読で行っている。しかし、広範囲にわたる林相判読は膨大な労力・時間を要するため、自動的に林相解析を行う手法の研究が進められている。
他のリモートセンシング技術として航空レーザ計測がある。航空レーザ計測で取得した3次元点群データは森林の地形や樹高の計測、立木密度や材積の推定などに幅広く利用されているが、林相区画や林相区分図作成に関しては、航空写真等の画像データと併用することが多い。
なお、下記特許文献1には航空レーザ計測データのみを用いて植生図を作成する技術が示されているが、林相区画を伴う林相解析は示されていない。
特開2013−54660号公報
航空写真を用いた林相解析は、撮影の時期、撮影の方向・角度、及び太陽の方位角・高度角などにより画像が影響を受けるので精度が低下し得、またそれを避けようとすると撮影機会が制限されるという問題を有する。この点、航空レーザ計測は地物の3次元構造情報を直接計測によって取得し、またレーザを自ら照射する能動的なセンシングであるのでデータ収集時に関する条件が緩やかである。そのため、航空レーザ計測に基づく解析では、より安定かつ正確に林相区画の抽出などの林相解析が可能となる。
ここで従来の航空写真とレーザデータとを併用する解析手法は、航空写真を用いた解析の上述の問題を有する上、撮影やデータ処理のコストが増える。
そこで本発明は、林相区画の抽出を、画像データに頼らず航空レーザ計測データのみを利用して、かつ自動的に行うことを可能とする林相解析装置、林相解析方法及びプログラムを提供することを目的とする。
(1)本発明に係る林相解析装置は、森林を含む対象地域をスキャンして取得した航空レーザ計測データに基づき、予め定められた1又は複数種類の特徴量を各計測地点について求め、当該特徴量を画素値とする前記対象地域の特徴量画像を生成する特徴量画像生成手段と、前記特徴量の類似性に基づいて前記特徴量画像上にて前記対象地域を複数領域に分割して林相区画を生成する林相区画生成手段と、を有する。
(2)上記(1)に記載する林相解析装置において、前記1又は複数種類の特徴量は、レーザの照射パルスに対する反射パルスの個数に応じて定まる前記各計測地点での反射パルス指標を含む構成とすることができる。
(3)上記(1)又は(2)に記載する林相解析装置において、前記1又は複数種類の特徴量はレーザの反射強度を含む構成とすることができる。
(4)上記(2)又は(3)に記載する林相解析装置において、前記特徴量はさらに樹高を含んでもよい。
(5)本発明に係る林相解析方法は、森林を含む対象地域をスキャンして取得した航空レーザ計測データに基づき、予め定められた1又は複数種類の特徴量を各計測地点について求め、当該特徴量を画素値とする前記対象地域の特徴量画像を生成する特徴量画像生成ステップと、前記特徴量の類似性に基づいて前記特徴量画像上にて前記対象地域を複数領域に分割して林相区画を生成する林相区画生成ステップと、を有する。
(6)本発明に係るプログラムは、コンピュータに林相解析を行わせるためのプログラムであって、当該コンピュータを、森林を含む対象地域をスキャンして取得した航空レーザ計測データに基づき、予め定められた1又は複数種類の特徴量を各計測地点について求め、当該特徴量を画素値とする前記対象地域の特徴量画像を生成する特徴量画像生成手段、及び、前記特徴量の類似性に基づいて前記特徴量画像上にて前記対象地域を複数領域に分割して林相区画を生成する林相区画生成手段、として機能させる。
本発明によれば、林相区画の抽出を、画像データに頼らず航空レーザ計測データのみを利用して、かつ自動的に行うことが可能となる。
本発明の第1の実施形態である林相解析システムの概略の構成を示すブロック図である。 本発明の実施形態である林相解析システムの概略の処理フロー図である。 航空レーザ計測データから得られる特徴量の例を説明する模式図である。 特徴量画像生成部の概略の処理フロー図である。 対象地域の空中写真画像(オルソ画像)の一例である。 図5に示す対象地域のFPR画像の一例である。 図5に示す対象地域のIPR画像の一例である。 図5に示す対象地域のRI画像の一例である。 図5に示す対象地域のDCHM画像の一例である。 林相区画生成部の概略の処理フロー図である。 林相区画生成部により生成された林相区画の一例を示す画像である。 本発明の第2の実施形態である林相解析システムの概略の構成を示すブロック図である。
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態である林相解析システム2の概略の構成を示すブロック図である。本システムは、演算処理装置4、記憶装置6、入力装置8及び出力装置10を含んで構成される。演算処理装置4として、本システムの処理を行う専用のハードウェアを作ることも可能であるが、本実施形態では演算処理装置4は、コンピュータ及び、当該コンピュータ上で実行されるプログラムを用いて構築される。
演算処理装置4は、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)からなり、後述する特徴量画像生成部20、林相区画生成部22として機能する。
記憶装置6はROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置である。記憶装置6は演算処理装置4にて実行される各種のプログラムや、本システムの処理に必要な各種データを記憶し、演算処理装置4との間でこれらの情報を入出力する。例えば、記憶装置6には、航空レーザ計測データ30、林相区画に関する特徴量条件32及び幾何条件34が予め格納される。
航空レーザ計測データ30は、例えば、航空機やヘリコプターなどに搭載されたレーザ計測システムを用いて取得される。レーザ計測システムはレーザスキャナ及びGPS/IMU(Global Positioning System/Inertial Measurement Unit)を含んで構成される。レーザスキャナは上空から地上へ向けてレーザパルスを掃射し、その反射パルスを受信する。航空レーザ計測データ30の取得に用いるレーザスキャナは近赤外レーザパルスを照射し、また1つの照射パルスに対する所定数(例えば、4点とする装置が多い)の反射パルスを記録できるものを用いる。レーザスキャナによりレーザパルスの反射強度、レーザパルスの照射方向、パルスの発射から受信までの時間差が得られ、一方、GPS/IMUにより航空機の位置・姿勢が得られ、これらのデータからレーザパルスの反射点の座標が算出される。航空レーザ計測データ30には例えば、レーザパルスの反射強度、レーザパルスごとの各反射点の座標が含まれる。
特徴量条件32及び幾何条件34は、特徴量画像生成部20により生成される特徴量画像を領域分割して生成されるオブジェクト領域である林相区画が満たすべき条件である。特徴量条件32は林相区画における特徴量画像の画素値(特徴量)に関する条件を規定する。一方、幾何条件34は林相区画の幾何特徴量である形状(Shape)に関する条件を規定する。例えば、形状は、コンパクトネス(Compactness)やスムースネス(Smoothness)といったパラメータで表される。
入力装置8は、キーボード、マウスなどであり、ユーザが本システムへの操作を行うために用いる。
出力装置10は、ディスプレイ、プリンタなどであり、本システムにより生成された林相区画を画面表示、印刷等によりユーザに示す等に用いられる。また、林相区画に関するデータを他のシステムで利用できるよう、データとして出力してもよい。
図2は林相解析システム2における概略の処理フロー図である。特徴量画像生成部20は航空レーザ計測データ30から特徴量画像を生成し(S10)、林相区画生成部22は特徴量画像から画像領域分割処理(S20)により林相区画(林相区画データ40)を自動生成する。当該画像領域分割処理は階層的に行っても良く、以下の実施例では、画像領域分割処理を階層的に行う場合を例に説明する。
特徴量画像生成部20は、航空レーザ計測データ30に基づき、予め定められた1又は複数種類の特徴量(レーザ特徴量)を、森林を含む対象地域の各計測地点について求め、当該特徴量を画素値とする対象地域の特徴量画像を生成する。このとき、特徴量が取得される計測地点間にて内挿処理を行い、各画素での特徴量を定義する。
レーザ特徴量は航空レーザ計測データ30に基づいて生成され、その値や値の分布範囲に林相に応じて差異が生じる量である。図3はレーザ特徴量の例を説明する模式図であり、森林を含む或る対象地域を秋に観測した例を示している。同図には複数のレーザ特徴量それぞれについて観測により得られた数値が示されており、例えば、“D”に対応する数値は広葉樹林での特徴量の値であり、同様に、“H”,“S”,“NF”の数値はヒノキ林、スギ林、非森林領域での値である。
NDSM(Normalized Digital Surface Model)は数値表層モデル(Digital Surface Model:DSM)に含まれる数値標高モデル(Digital Terrain Model:DTM)の影響を除去し正規化したDSMである。ちなみに、航空レーザ計測データ30からDSM及びDTMを生成し、DSMからDTMを減算してNDSMが生成される。NDSMが森林から想定される或るしきい値(例えば、図3の例では15cm程度)より低い場所は、水域、草地、更地などの非森林領域(NF)とすることができる。また、建物の領域ではNDSMから得られる高さが建物に想定されるしきい値以上で、高さの分散が森林に比べて小さくなる場合がある。よって、NDSMは森林領域と非森林領域である建物領域とを区別し得る。
NDSMは森林領域では樹高を反映する。森林地域ではレーザの反射パルスのうちファーストパルスに基づいてDSMを生成し、ラストパルスに基づいてDTMを生成し、そのDSMからDTMを減算してデジタル樹冠高モデル(Digital Canopy Height Model:DCHM)が生成される。DCHMは樹高を表すデータとして用いられる。図3には示していないが、樹高は森林の生育状況、樹齢といった林相情報を反映する。
レーザパルスの反射強度(Reflection Intensity:RI)は、樹木の反射断面積や吸収率を反映する。特に、近赤外領域の波長を有する光に対する反射率の相違は、従来より植生のリモートセンシングに利用されている。図3に示す観測結果では、ヒノキ林(H)及び広葉樹林(D)がスギ林(S)より高い値を示している。ちなみに反射強度はファーストパルスの強度に基づいて定義している。なお、計測に用いられるレーザスキャナの照射パルスの強度が一定であれば、反射強度は反射パルスの強度の絶対値で表すことができ、一方、照射パルスの強度が変わり得る場合には、反射強度は照射パルスの強度で規格化した相対値で表すのが好適である。
図3には、反射パルス指標の例として、トータルパルス(Total Pulse:TP)、ファーストパルス比(First Pulse Ratio:FPR)、及び中間パルス比(Intermediate Pulse Ratio:IPR)を示している。ここで、レーザの照射パルスに対する反射パルスの個数に応じて定まる値を反射パルス指標と総称している。その指標値は各計測地点にて定義される。マルチパルス機能を有したレーザスキャナにより取得した航空レーザ計測データに基づく反射パルス指標は森林の内部の構造情報を反映し得る。
TPは各照射パルスに対する反射パルスの総数に基づく指標であり、例えば、地表の計測地点の単位面積当たりでの反射パルス数とすることができる。なお、上述のようにマルチパルス機能を有したレーザスキャナにより取得したTPは基本的に、単位面積の地表への照射パルス数とは必ずしも一致しない。
図3に示すように、ヒノキ林(H)、スギ林(S)及び広葉樹林(D)におけるTPは、広葉樹林、スギ林、ヒノキ林の順に小さくなる結果が観測された。
FPRは、計測地点の例えば単位面積からの反射パルス総数(つまりTP)に対するファーストパルスの数の比の値である。ちなみにファーストパルスは照射パルスに対して最初に検知される反射パルスである。例えば、単位面積に2発のレーザパルスが照射され、1発に対しては2つの反射パルスが受信され、他の1発に対しては3つの反射パルスが受信された場合、TPは5、ファーストパルスの数は2となるので、FPRは2/5、つまり40%である。
IPRは、計測地点の例えば単位面積からの反射パルス総数(つまりTP)に対する中間パルスの数の比の値である。ちなみに中間パルスは照射パルスに対する反射パルスのうち最初に検知されるファーストパルス及び最後に検知されるラストパルスを除いた残りのパルスであり、1つの照射パルスに対する反射パルスの数が1又は2の場合は中間パルスの数は0となる。例えば、単位面積に2発のレーザパルスが照射され、1発に対しては2つの反射パルスが受信され、他の1発に対しては3つの反射パルスが受信された場合、TPは5、中間パルスの数は1となるので、IPRは1/5、つまり20%である。
図3の観測結果においてFPRは基本的にTPに反比例する傾向を示している。またIPRは基本的にTPと正の相関を有するが、樹種間における差異の程度はTPとIPRとで異なる。なお、FPR、IPRは無次元量であり、レーザパルスの照射密度の影響を受けにくい。
図4は特徴量画像生成部20の概略の処理フロー図である。本実施形態では、特徴量画像生成部20は、レーザ特徴量として反射パルス指標、反射強度及び樹高を利用し、反射パルス指標に関してはFPR(又はIPR)を利用する。つまり、特徴量画像生成部20は航空レーザ計測データ30からFPR又はIPRを算出し(S30)、反射強度を取得し(S32)、またDCHMを生成する(S34)。
特徴量画像生成部20は特徴量として算出したFPR又はIPRから特徴量画像であるFPR画像又はIPR画像を生成し(S40)、また反射強度、DCHMからそれぞれ特徴量画像であるRI画像、DCHM画像を生成する(S42,S44)。
図5は対象地域の空中写真画像(オルソ画像)の一例である。図6〜図9は図5に示す対象地域にて取得された航空レーザ計測データ30に基づく特徴量画像の例であり、図6はFPR画像、図7はIPR画像、図8はRI画像、図9はDCHM画像である。
林相区画生成部22は、特徴量画像生成部20により生成された特徴量画像上にてレーザ特徴量の類似性に基づいて対象地域を複数領域に分割して林相区画を生成する。例えば、林相区画生成部22は初期区画部50及び後続区画部52を有し、特徴量画像に対して階層的に領域分割処理を行って林相区画(林相区画データ40)を生成する。本実施形態では複数種類のレーザ特徴量を用いることに対応して、林相区画生成部22はレーザ特徴量ごとに生成された特徴量画像を複合した複合特徴量画像に対して画像領域分割処理を行う。例えば、複合特徴量画像の画素値は、レーザ特徴量ごとに生成された特徴量画像の互いに対応する画素における画素値(レーザ特徴量)の組で定義することができる。なお、目的とする林相の区別が1種類のレーザ特徴量だけで精度良く行える場合には、当該レーザ特徴量の特徴量画像だけを用いて林相区画の生成を行うこともできる。
初期区画部50は階層的な領域分割処理の最初の階層の処理を行う。具体的には複合特徴量画像の画素値及び幾何特徴量を区画用特徴量とし、初期区画部50は複合特徴量画像(原画像)を複数領域に分割し1次の林相区画を生成する。初期区画部50は、互いに隣接する複数の画素からなる領域を1次の林相区画とするか否かを、それら画素の画素値の類似性(特徴量条件32)と、それら画素を結合して得られる領域についての幾何特徴量の類似性(幾何条件34)とに基づいて決定する。ここで、結合される領域間や結合前後の領域間での画素値の類似性は、画素値の平均値、標準偏差などの統計量に基づいて判断することができる。以下、複合特徴量画像の画素値を画素特徴量と称する。
後続区画部52は階層的な領域分割処理の第2の階層以降の処理を行う。具体的には後続区画部52は、隣接する林相区画を結合して新たな林相区画を生成する逐次区画処理を1回又は複数回行う。逐次区画処理は、互いに隣接する複数の低次の林相区画について、それらにおける画素値の類似性に関する特徴量条件32と、それらを結合して得られる高次の林相区画についての幾何条件34とに基づいて、それら低次の林相区画を結合するか否かを決める。
画像領域分割には領域併合(region merging)に基づく手法を利用する。この手法において画像領域分割処理の対象とされる画像に存在する隣接する2つのオブジェクトを統合するかどうかは、統合後に生成される新しいオブジェクトの異質性(heterogeneity)と統合前のオブジェクトの異質性との間の変化を評価することによって決定される。ちなみに、初期区画部50での処理ではオブジェクトは原画像の画素であり、後続区画部52での処理ではオブジェクトは既に生成されている林相区画である。
具体的には、領域併合によるオブジェクトの異質性の変化Δhは、併合前後における画素特徴量の異質性の変化Δhと形状の異質性の変化Δhとから次式によって算出される。
Figure 0006282940
ここで、wは画素特徴量の異質性の重み、wは形状の異質性の重みである。
併合前後の画素特徴量の異質性の変化Δhは、対象画像の併合前後のオブジェクト内の画素値を構成するレーザ特徴量それぞれの標準偏差を用いて、次式によって計算される。
Figure 0006282940
ここで、Nは特徴量画像の画素値を構成するレーザ特徴量の種類の数、wは第i種類のレーザ特徴量(特徴量i)の重み、nabは併合後の新しいオブジェクトの画素数、n,nは併合前の2つのオブジェクトの画素数、σi,abは併合後のオブジェクトの特徴量iにおける標準偏差、σi,a,σi,bは併合前の2つのオブジェクトの特徴量iにおける標準偏差である。
また、併合前後の形状の異質性の変化Δhは、コンパクトネスとスムースネスという2つの基準で次式により定義される。
Figure 0006282940
ここで、Δhは併合前後のコンパクトネスの変化、Δhは併合前後のスムースネスの変化、wはコンパクトネスの重み、wはスムースネスの重みである。
オブジェクトのコンパクトネス基準はオブジェクトの周囲長と面積から計算され、一方、スムースネス基準はオブジェクトの周囲長と境界ボックスの直径(長軸)から計算される。具体的にはΔh,Δhは次式で定義される。
Figure 0006282940
ここで、labは併合後のオブジェクトの周囲長、l,lは併合前の2つのオブジェクトの周囲長、sabは併合後のオブジェクトの面積、s,sは併合前の2つのオブジェクトの面積、babは併合後のオブジェクトの境界ボックスの直径、b,bは併合前の2つのオブジェクトの境界ボックスの直径、nabは併合後の新しいオブジェクトの画素数、n,nは併合前の2つのオブジェクトの画素数である。
併合前後のオブジェクトの異質性の変化Δhが設定されたしきい値を超えない場合、領域の併合処理が実施され、しきい値を上回る場合、領域の併合処理を停止する。設定されたしきい値はスケールパラメータ(scale parameter)と呼ばれ、画像の分割処理によって生成されるオブジェクトの大きさを表している。スケールパラメータが大きいほど、より多くのオブジェクトが併合され、領域分割によって最終的に生成されるオブジェクトのサイズが大きくなる。
(1)式に示すように、初期区画部50における画素の結合の判断、又は後続区画部52における低次の林相区画の結合の判断に対する画素特徴量及び幾何特徴量それぞれの寄与比率は重みw,wにより調節することができる。ここで、初期区画部50及び後続区画部52の一方又は両方は、林相区画の生成判断において、幾何条件を用いず画素特徴量の類似性だけに基づいて行う構成にすることもできる。
図10は林相区画生成部22の概略の処理フロー図である。林相解析システム2は原画像を領域分割した林相区画を階層的に領域分割して、内部が一様な林相からなる領域に対応した林相区画を生成する(S60)。この領域分割処理S60は初期区画部50及び後続区画部52により行われる。領域分割処理は特徴量画像を構成する画素の画素値を用いた区画処理が少なくとも1回行われる。具体的には、初期区画部50は原画像を領域分割してスケールが小さい林相区画を生成する(S62)。後続区画部52は林相区画同士を結合することによりスケールが大きくなった林相区画を生成する(S64)。
領域分割処理は特徴量条件32及び幾何条件34を満たすように行われる。その際、特徴量条件32と幾何条件34との比重、つまりそれぞれを領域分割に寄与させる度合は調節することができる。
ここで、領域分割処理の階層ごとに、林相区画を生成する際の条件は異なり得る。すなわち、初回の画素を結合して初期の林相区画を生成する際や、低次の林相区画同士を結合して高次の林相区画を生成する際に、スケールパラメータであるΔhは生成される林相区画のスケールが徐々に大きくなることを可能とするように設定される。Δhの増加により、特徴量条件32に関しては、結合対象となる複数の画素又は林相区画についての画素特徴量の類似性の判断基準(Δh)が領域分割処理が高階になるにつれ緩和される。また、幾何条件34に関しても幾何特徴量の類似性の判断基準(Δh)が緩和され、領域分割処理が高階になるにつれより複雑な形状あるいは大きな面積を有する林相区画が許容されるようになり結合が促進される。一方、特徴量条件32と幾何条件34とで総合的に結合が緩和されればよいので、特徴量条件32により結合を緩和しつつ、幾何条件34は結合を或る程度抑制する方向に変化させより単純な形状の林相区画の生成を促す条件に設定することもできる。例えば、そのような調整は(1)式の重みw,wを変えることで可能であり、具体的にはwを低下させ、一方、wを増加させて、ΔhがΔhに寄与しにくくし、ΔhがΔhに寄与しやすくすることで実現できる。なお、本実施例では階層的な処理を例に説明したが、必ずしも階層的に行わなくてもよい。
図11は林相区画生成部22の処理の例を示す画像であり、FPR画像、RI画像及びDCHM画像を複合した特徴量画像から生成された林相区画を示している。同図には、図5に示す対象地域にて抽出された林相区画の境界が黒線で描かれている。図3から理解されるように、FPRには3種類の樹種(ヒノキ林、スギ林及び広葉樹林)間に差が存在し、FPRのみで樹種の弁別は可能であるが、これにRIを組み合わせることで、3つの樹種がより正確に弁別される。これらにDCHMを加えて林相区画生成部22による処理を行うことで、樹種の弁別に加え、同じ高さを持つ林相を1つの区画に集約することができる。また、DCHMを利用することにより樹齢が異なる同じ樹種の林相を区別できる。よって、FPR、RI及びDCHMの全部の組み合わせは、それらのうちのいずれか2つの組み合わせ又は1つのみよりも好適な林相区画を与える。
一方、FPR及びRIを併用しDCHMを利用しない場合に林相区画生成部22により生成される林相区画では、同じ高さを持つ林相が1つの区画に集約されることは期待できないものの、樹種の弁別は好適になされる。
また、上述したように、FPRのみで3種類の樹種の弁別は可能であるので、FPRのみを利用して林相区画を生成することも可能である。さらに、FPRとDCHMとを組み合わせると、同じ高さを持つ林相が1つの区画に集約されるので、FPRのみの場合より好適な林相区画が得られる。
RIはスギ林を広葉樹林及びヒノキ林から区別できる。よって、RIのみを用いてもスギ林と他の2つの樹種とが区分けされた林相区画を生成することができる。
なお、本実施形態では林相区画生成部22が特徴量画像を階層的に領域分割して林相区画を生成する例を説明したが、領域分割は特徴量の同一林相での類似性や異なる林相間での差異が区画生成に反映されるものであれば他の手法を用いることもできる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態の林相解析システムにおいて上記第1の実施形態と同じ構成要素は同一の符号を付して説明を省略する。以下、第2の実施形態の林相解析システム200について第1の実施形態の林相解析システム2との相違点を説明する。
図12は第2の実施形態である林相解析システム200の概略の構成を示すブロック図である。林相解析システム200と林相解析システム2との相違点は林相区画をどのような条件に基づいて行うかという点にある。第1の実施形態では林相区画生成部22は画素特徴量についての特徴量条件32及び幾何特徴量についての幾何条件34を満たすように領域分割処理を行って林相区画を生成している。これに対し、第2の実施形態の林相解析システム200では領域併合前後のオブジェクト、つまり、劣化画像の画素又は林相区画の画素値、形状、テクスチャ及び面積を区画用特徴量とし、これらについての画素値条件202、形状条件204、テクスチャ条件206及び面積条件208を満たすように領域分割処理を行って林相区画を生成する。
画素値条件202、形状条件204、テクスチャ条件206及び面積条件208は、特徴量画像生成部20により生成される特徴量画像を領域分割して生成されるオブジェクト領域である林相区画が満たすべき条件である。画素値条件202は林相区画における特徴量画像の画素値(画素特徴量)に関する条件を規定し、第1の実施形態の特徴量条件32に相当する。形状条件204は林相区画の形状に関する条件を規定する。テクスチャ条件206は林相区画の画像テクスチャに関する条件を規定する。画像テクスチャはテクスチャ特徴量で評価される。面積条件208は林相区画の面積に関する条件を規定する。なお、林相区画の形状、面積は林相区画の幾何特徴量である。
初期区画部50は、互いに隣接する複数の画素からなる領域を1次の林相区画とするか否かを、それら画素の画素値の類似性、領域の画像テクスチャの類似性、及び領域の形状や面積などの幾何特徴量の類似性に基づいて決定する。ここで、結合される領域間や結合前後の領域間での画素値の類似性は、画素値の平均値などの統計量などの特徴量に基づいて判断することができる。
後続区画部52は第1の実施形態と同様、逐次区画処理を行う。本実施形態では逐次区画処理は、互いに隣接する複数の低次の林相区画について、それらにおける画素値の類似性に関する画素値条件202と、それらを結合して得られる高次の林相区画についての形状条件204と、テクスチャ条件206と、面積条件208とに基づいて、それら低次の林相区画を結合するか否かを決める。
画像領域分割には第1の実施形態と同様、領域併合に基づく手法を利用する。本実施形態では、領域併合によるオブジェクトの異質性の変化Δhは、併合前後における画素特徴量の異質性の変化Δhcolorと、形状の異質性の変化Δhshapeと、テクスチャの異質性の変化Δhtextureと、面積の異質性の変化Δhaeraとから次式によって算出される。
Figure 0006282940
ここで、wcolorは画素特徴量の異質性の重み、wshapeは形状の異質性の重み、wtextureはテクスチャの異質性の重み、wareaは面積の異質性の重みである。
併合前後の画素特徴量の異質性の変化Δhcolor、形状の異質性の変化Δhshape、テクスチャの異質性の変化Δhtexture、面積の異質性の変化Δhaeraは、例えば、それぞれ次式によって計算される。
Figure 0006282940
ここで、nabは併合後の新しいオブジェクトの画素数、n,nは併合前の2つのオブジェクトの画素数である。また、CIabは併合後のオブジェクトの画素値情報指数(例えば、画素値)、CI,CIは併合前の2つのオブジェクトの画素値情報指数、SIabは併合後のオブジェクトの形状情報指数(例えば、スムースネス)、SI,SIは併合前の2つのオブジェクトの形状情報指数、TIabは併合後のオブジェクトのテクスチャ情報指数(例えば、画素値の標準偏差値)、TI,TIは併合前の2つのオブジェクトのテクスチャ情報指数、AIabは併合後のオブジェクトの面積情報指数(例えば、面積値)、AI,AIは併合前の2つのオブジェクトの面積情報指数である。
(5)式に示すように、初期区画部50における画素の結合の判断、又は後続区画部52における低次の林相区画の結合の判断に対する画素値条件、形状条件、テクスチャ条件及び面積条件それぞれの寄与比率は重みwcolor,wshape,texture,areaにより調節することができる。ここで、初期区画部50及び後続区画部52の一方又は両方は、林相区画の生成判断において、画素値条件、形状条件、テクスチャ条件及び面積条件の何れか1つもしくは複数の組み合わせに基づいて行う構成にすることもできる。
以上説明したように、本発明による林相解析システム2,200は航空レーザ計測データ30のみを利用し林相区画を自動生成する。林相解析システム2,200により生成された林相区画を利用することで、例えば、林相の目視判読が容易となる。また、当該林相区画は林相区分図の自動作成においてベースとして利用することができる。さらに、林相データの更新や、災害個所の特定等にも活用することができる。
2,200 林相解析システム、4 演算処理装置、6 記憶装置、8 入力装置、10 出力装置、20 特徴量画像生成部、22 林相区画生成部、30 航空レーザ計測データ、32 特徴量条件、34 幾何条件、40 林相区画データ、50 初期区画部、52 後続区画部、202 画素値条件、204 形状条件、206 テクスチャ条件、208 面積条件。

Claims (4)

  1. 森林を含む対象地域をスキャンして取得した航空レーザ計測データに基づき、予め定められた1又は複数種類の特徴量を各計測地点について求め、当該特徴量を画素値とする前記対象地域の特徴量画像を生成する特徴量画像生成手段と、
    前記特徴量の類似性に基づいて前記特徴量画像上にて前記対象地域を複数領域に分割して林相区画を生成する林相区画生成手段と、
    を有し、
    前記1又は複数種類の特徴量は、レーザの照射パルスに対する反射パルスの個数に応じて定まる前記各計測地点での反射パルス指標を含むこと、
    を特徴とする林相解析装置。
  2. 請求項1に記載の林相解析装置において、
    前記1又は複数種類の特徴量はレーザの反射強度を含むこと、を特徴とする林相解析装置。
  3. 請求項又は請求項に記載の林相解析装置において、
    前記特徴量はさらに樹高を含むこと、を特徴とする林相解析装置。
  4. コンピュータに林相解析を行わせるためのプログラムであって、当該コンピュータを、
    森林を含む対象地域をスキャンして取得した航空レーザ計測データに基づき、予め定められた1又は複数種類の特徴量を各計測地点について求め、当該特徴量を画素値とする前記対象地域の特徴量画像を生成する特徴量画像生成手段、及び、
    前記特徴量の類似性に基づいて前記特徴量画像上にて前記対象地域を複数領域に分割して林相区画を生成する林相区画生成手段、
    として機能させ
    前記1又は複数種類の特徴量は、レーザの照射パルスに対する反射パルスの個数に応じて定まる前記各計測地点での反射パルス指標を含むこと、
    を特徴とするプログラム。
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