JP6279176B1 - 成膜装置及び成膜方法並びに太陽電池の製造方法 - Google Patents

成膜装置及び成膜方法並びに太陽電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、成膜対象基板の両面側に形成されるスパッタ膜同士の短絡を発生させることなく安価に成膜を行うことができる技術を提供する。本発明では、基板保持器搬送機構3において、第1の搬送部によって基板保持器11を第1の成膜領域を通過するように搬送し、基板保持器11に保持された成膜対象基板50の第1面上にスパッタによって成膜を行い、基板保持器11を上下関係を維持した状態で第1の搬送部から第2の搬送部に向って折り返して搬送し、第2の搬送部によって基板保持器11を第2の成膜領域を通過するように第1の搬送部の搬送方向と反対方向に搬送し、成膜対象基板50の第2面上にスパッタによる成膜を行う。基板保持器11は、成膜対象基板50の第1及び第2面が露出する開口部14、15を有するとともに、成膜対象基板50の縁部に対する第2のスパッタ源からの成膜材料を遮蔽する遮蔽部16が設けられている。

Description

本発明は、真空中で基板の両面上にスパッタリングによって成膜を行う成膜装置の技術に関し、特にヘテロ接合型太陽電池の基板の両面上に透明導電酸化物層を形成する技術に関する。
近年、クリーンで安全なエネルギー源として太陽電池が実用化されているが、その中でも、ヘテロ接合型の太陽電池に注目が集まっている。
図19は、一般的なヘテロ接合型太陽電池セルの概略構成を示す断面図である。
図19に示すように、このヘテロ接合型太陽電池セル100は、n型結晶シリコン基板101の一方側(太陽光側)の面上に、i型アモルファスシリコン層102、p型アモルファスシリコン層103、第1の透明導電酸化物層104、電極層105が順次形成され、さらに、n型結晶シリコン基板101の他方側の面上に、i型アモルファスシリコン層106、n型アモルファスシリコン層107、第2の透明導電酸化物層108、電極層109が順次形成されて構成されている。
ヘテロ接合型太陽電池は、単結晶シリコン太陽電池と比較して変換効率が高く、また、アモルファスシリコン層を用いているため、シリコンの使用量を減らすことができる等の利点がある。
また、ヘテロ接合型太陽電池は、n型結晶シリコン基板を挟んで両面側で発電が可能であるため、高い発電効率を達成することができるという利点もある。
しかし、ヘテロ接合型太陽電池は、単結晶シリコン太陽電池と比べて構成が複雑であることから、製造プロセスが多く、太陽電池自体並びに製造装置のコストが嵩むという問題がある。
また、ヘテロ接合型太陽電池は、n型結晶シリコン基板の両面側に透明導電酸化物層が存在することに起因する問題もある。
すなわち、これら透明導電酸化物層は、変換効率を向上させるためには下地層となるアモルファスシリコン層上においてできるだけ広い面積で、つまり全面成膜によって形成することが好ましいのであるが、n型結晶シリコン基板の両面側において透明導電酸化物層をそれぞれスパッタリングによって全面成膜すると、基板の側部に付着した材料によって透明導電酸化物層同士が短絡するおそれがあるという問題がある。
これに対し、n型結晶シリコン基板の一方の面側(例えば太陽光側)の透明導電酸化物層を全面成膜し、n型結晶シリコン基板の他方の面側においてはマスクを介してスパッタリングを行い基板の縁部を除く領域に成膜を行うことによってこの問題を回避することも可能であるが、その場合、成膜時にマスクを使用しなければならず、コストアップの原因になるという問題もある。
そして、上述した課題は、ヘテロ接合型太陽電池の成膜対象基板の両面に透明導電酸化物層を形成する場合のみならず、成膜対象基板の両面上に種々のスパッタ膜を形成する場合にも生ずるものである。
特開2001−044461号公報
本発明は、このような従来の技術の課題を考慮してなされたもので、その目的とするところは、成膜対象基板の両面側に形成されるスパッタ膜同士の短絡を発生させることなく安価に成膜を行うことができる技術を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、成膜対象基板の両面側に形成される透明導電酸化物層同士の短絡を発生させることなく、安価に変換効率を向上させることができるヘテロ接合型太陽電池の製造技術を提供することにある。
上記目的を達成するためになされた本発明は、単一の真空雰囲気が形成される真空槽と、前記真空槽内に設けられ、成膜対象基板の第1面上に成膜を行う第1のスパッタ源を有する第1の成膜領域と、前記真空槽内に設けられ、前記成膜対象基板の第2面上に成膜を行う第2のスパッタ源を有する第2の成膜領域と、鉛直面に対する投影形状が一連の環状となるように形成され、前記第1及び第2の成膜領域を通過するように設けられた搬送経路と、前記成膜対象基板を水平状態に保持する基板保持器を、前記搬送経路に沿って搬送する基板保持器搬送機構とを備え、前記基板保持器搬送機構は、前記基板保持器を前記第1の成膜領域を通過するように所定方向に搬送する第1の搬送部と、前記基板保持器を前記第2の成膜領域を通過するように前記第1の搬送部の搬送方向と反対方向に搬送する第2の搬送部と、前記基板保持器を上下関係を維持した状態で前記第1の搬送部から前記第2の搬送部に向って折り返して搬送する搬送折り返し部とを有し、前記基板保持器は、前記成膜対象基板の第1及び第2面が露出する開口部を有するとともに、前記成膜対象基板の縁部に対する、前記第1及び第2のスパッタ源の少なくとも一方からの成膜材料を遮蔽する遮蔽部が設けられている成膜装置である。
本発明は成膜装置であって、前記基板保持器は、当該搬送方向に対して直交する方向に複数の成膜対象基板を並べて保持するように構成されている成膜装置である。
本発明は前記いずれかに記載の成膜装置を用いた成膜方法であって、前記基板保持器搬送機構の第1の搬送部によって前記基板保持器を前記第1の成膜領域を通過するように前記搬送経路に沿って所定方向に搬送し、当該基板保持器に保持された前記成膜対象基板の第1面上にスパッタリングによって成膜を行う工程と、前記基板保持器搬送機構の搬送折り返し部によって前記基板保持器を上下関係を維持した状態で前記搬送経路に沿って前記第1の搬送部から前記第2の搬送部に向って折り返して搬送する工程と、前記基板保持器搬送機構の第2の搬送部によって前記基板保持器を前記第2の成膜領域を通過するように前記搬送経路に沿って前記第1の搬送部の搬送方向と反対方向に搬送し、当該基板保持器に保持された前記成膜対象基板の第2面上に成膜を行う工程とを有する成膜方法である。
本発明は前記いずれかに記載の成膜装置を用いた太陽電池の製造方法であって、前記成膜対象基板として、n型結晶シリコン基板の第1面上に、i型アモルファスシリコン層及びp型アモルファスシリコン層が順次設けられるとともに、前記n型結晶シリコン基板の第2面上に、i型アモルファスシリコン層及びn型アモルファスシリコン層が順次設けられた基板を用意し、前記基板保持器搬送機構の第1の搬送部によって前記基板保持器を前記第1の成膜領域を通過するように前記搬送経路に沿って所定方向に搬送し、当該基板保持器に保持された前記成膜対象基板の第1面上にスパッタリングによって第1の透明導電酸化物層を形成する工程と、前記基板保持器搬送機構の搬送折り返し部によって前記基板保持器を上下関係を維持した状態で前記搬送経路に沿って前記第1の搬送部から前記第2の搬送部に向って折り返して搬送する工程と、前記基板保持器搬送機構の第2の搬送部によって前記基板保持器を前記第2の成膜領域を通過するように前記搬送経路に沿って前記第1の搬送部の搬送方向と反対方向に搬送し、当該基板保持器に保持された前記成膜対象基板の第2面上にスパッタリングによって第2の透明導電酸化物層を形成する工程とを有する太陽電池の製造方法である。
本発明では、基板保持器搬送機構において、第1の搬送部によって基板保持器を第1の成膜領域を通過するように搬送経路に沿って所定方向に搬送し、基板保持器に保持された成膜対象基板の第1面上にスパッタリングによって成膜を行い、搬送折り返し部によって基板保持器を上下関係を維持した状態で搬送経路に沿って第1の搬送部から第2の搬送部に向って折り返して搬送し、第2の搬送部によって基板保持器を第2の成膜領域を通過するように搬送経路に沿って第1の搬送部の搬送方向と反対方向に搬送し、基板保持器に保持された成膜対象基板の第2面上にスパッタリングによって成膜を行う。
この場合、本発明に用いる基板保持器は、成膜対象基板の第1及び第2面が露出する開口部を有するとともに、成膜対象基板の縁部に対する、第1及び第2のスパッタ源の少なくとも一方からの成膜材料を遮蔽する遮蔽部が設けられており、第1及び第2の搬送部においてこの基板保持器に保持された成膜対象基板の第1及び第2面上にそれぞれスパッタリングによって成膜を行うと、成膜対象基板の縁部に対し第1及び第2のスパッタ源の少なくとも一方からの成膜材料が遮蔽される。
その結果、本発明によれば、成膜対象基板の第1及び第2面の一方側において当該基板上に例えば全面成膜を行う一方で、他方側の成膜対象基板上では、その縁部を除いた領域のみに成膜を行うことができるので、成膜対象基板の両面側に形成されるスパッタ膜同士の短絡を確実に防止することができる。
また、本発明においては、搬送経路が、鉛直面に対して投影した場合に一連の環状となるように形成されており、この搬送経路に沿って基板保持器を上下関係を維持した状態で搬送経路に沿って第1の搬送部から第2の搬送部に向って折り返して搬送し、第1及び第2の搬送部においてそれぞれ第1及び第2の成膜領域を通過させてスパッタリングを行うことから、マスクを用いることなくコンパクトな通過型の成膜装置によって成膜対象基板の両面上に所望のスパッタ膜を形成することができ、これにより、コストダウンを図ることができる。
そして、このような本発明によれば、成膜対象基板の両面側に形成される透明導電酸化物層同士の短絡を発生させることなく、例えば太陽光側における透明導電酸化物層の面積を最大限大きくすることができるので、ヘテロ接合型太陽電池の変換効率を向上させることができる。
また、本発明において、当該搬送方向に対して直交する方向に複数の成膜対象基板を並べて保持するように構成されている場合には、従来技術のような基板の搬送方向に複数の基板を並べて保持する基板保持器を搬送して成膜を行う場合と比較して、基板保持器の長さ及びこれに伴う余剰スペースを削減することができるので、成膜装置の省スペース化を達成することができる。
本発明に係る成膜装置の実施の形態の全体を示す概略構成図 本実施の形態における基板保持器搬送機構の概略構成を示す平面図 同基板保持器搬送機構の要部を示す正面図 (a)〜(c):本実施の形態に用いる基板保持器の構成を示すもので、図4(a)は、基板を保持していない状態の平面図、図4(b)は、基板を保持している状態の平面図、図4(c)は、図4(a)のA−A線断面図 (a)(b):本実施の形態の基板保持器搬送機構の搬送折り返し部の構成を示すもので、図5(a)は平面図、図5(b)は、図5(a)のB−B線断面図 本実施の形態の成膜装置の動作並びに成膜方法の説明図(その1) 同成膜装置の動作並びに成膜方法の説明図(その2) 同成膜装置の動作並びに成膜方法の説明図(その3) (a)(b):本実施の形態の基板保持器搬送機構の動作説明図(その1) (a)〜(c):同基板保持器搬送機構の搬送折り返し部の動作説明図 (a)(b):同基板保持器搬送機構の動作説明図(その2) (a)(b):同基板保持器搬送機構の動作説明図(その3) 同成膜装置の動作の説明図(その4) 同成膜装置の動作の説明図(その5) 同成膜装置の動作の説明図(その6) (a)〜(c):本実施の形態における透明導電酸化物層の形成方法を示す断面工程図 基板に対して複数回の成膜を行う場合の動作説明図(その1) 基板に対して複数回の成膜を行う場合の動作説明図(その2) 一般的なヘテロ接合型太陽電池セルの概略構成を示す断面図
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る成膜装置の実施の形態の全体を示す概略構成図である。
また、図2は、本実施の形態における基板保持器搬送機構の概略構成を示す平面図、図3は、同基板保持器搬送機構の要部を示す正面図である。
さらに、図4(a)〜(c)は、本実施の形態に用いる基板保持器の構成を示すもので、図4(a)は、基板を保持していない状態の平面図、図4(b)は、基板を保持している状態の平面図、図4(c)は、図4(a)のA−A線断面図ある。
さらにまた、図5(a)(b)は、本実施の形態の基板保持器搬送機構の搬送折り返し部の構成を示すもので、図5(a)は平面図、図5(b)は、図5(a)のB−B線断面図である。
図1に示すように、本実施の形態の成膜装置1は、真空排気装置1aに接続された単一の真空雰囲気が形成される真空槽2を有している。
真空槽2の内部には、後述する基板保持器11を搬送経路に沿って搬送する基板保持器搬送機構3が設けられている。
この基板保持器搬送機構3は、成膜対象基板50を保持する基板保持器11を、複数個連続して搬送するように構成されている。
ここで、基板保持器搬送機構3は、その詳細な構成は後述するが、例えばスプロケット等からなる同一径の円形の第1及び第2の駆動輪31、32を有し、これら第1及び第2の駆動輪31、32が、それぞれの回転軸線を平行(水平)にした状態で所定距離をおいて配置されている。
そして、これら第1及び第2の駆動輪31、32に例えばチェーン等からなる一連の搬送駆動部材33が架け渡され、これにより以下に説明するように鉛直面に対して一連の環状となる搬送経路が形成されている。
本実施の形態では、第1及び第2の駆動輪31、32に、図示しない駆動機構から回転駆動力が伝達されて動作するように構成されている。
そして、搬送経路を構成する搬送駆動部材33のうち上側の部分に、第1の駆動輪31から第2の駆動輪32に向って移動して基板保持器11を搬送する往路側搬送部(第1の搬送部)33aが形成されるとともに、第2の駆動輪32の周囲の部分の搬送駆動部材33によって基板保持器11の搬送方向を折り返して反対方向に転換する折り返し部33bが形成され、さらに、搬送駆動部材33のうち下側の部分に、第2の駆動輪32から第1の駆動輪31に向って移動する復路側搬送部(第2の搬送部)33cが形成されている。
また、基板保持器搬送機構3には、基板保持器11を導入する基板保持器導入部30Aと、基板保持器11を折り返して搬送する搬送折り返し部30Bと、基板保持器11を排出する基板保持器排出部30Cが設けられている。
一方、基板保持器搬送機構3の搬送駆動部材33の周囲には、搬送する基板保持器11の脱落を防止するためのガイド部材38が設けられている。
このガイド部材38は、一連のレール状に形成され、図3に示すように、第1の駆動輪31の上部の基板保持器導入部30Aから搬送折り返し部30Bを経て第1の駆動輪31の下部の基板保持器排出部30Cに渡って、搬送駆動部材33と平行に設けられている。
なお、ガイド部材38は、第1の駆動輪31に対し、後述する基板搬入搬出機構6側の領域には設けられていない。
真空槽2内には、第1及び第2の成膜領域4、5が設けられている。
本実施の形態では、基板保持器搬送機構3を挟んで真空槽2内の上部に第1のスパッタ源4Tを有する第1の成膜領域4が設けられ、真空槽2の下部に第2のスパッタ源5Tを有する第2の成膜領域5が設けられている。
これら第1及び第2の成膜領域4、5には、所定のスパッタガスを導入するガス導入機構(図示せず)がそれぞれ設けられている。
ここで、搬送駆動部材33の往路側搬送部33aは、第1の成膜領域4を直線的に通過するように構成され、復路側搬送部33cは、第2の成膜領域5を直線的に通過するように構成されている。
そして、搬送経路を構成するこれら搬送駆動部材33の往路側搬送部33a及び復路側搬送部33cを基板保持器11が通過する場合に、基板保持器11に保持された成膜対象基板50の平面的な成膜面が水平状態で搬送されるようになっている。
真空槽2内の基板保持器搬送機構3の近傍の位置、例えば第1の駆動輪31に隣接する位置には、基板保持器搬送機構3との間で基板保持器11を受け渡し且つ受け取るための基板搬入搬出機構6が設けられている。
本実施の形態の基板搬入搬出機構6は、昇降機構60によって例えば鉛直上下方向に駆動される駆動ロッド61の先(上)端部に設けられた支持部62を有している。
本実施の形態では、基板搬入搬出機構6の支持部62上に搬送ロボット64が設けられ、この搬送ロボット64上に上述した基板保持器11を支持して基板保持器11を鉛直上下方向に移動させ、かつ、搬送ロボット64によって基板保持器搬送機構3との間で基板保持器11を受け渡し且つ受け取るように構成されている。
本実施の形態では、後述するように、基板搬入搬出機構6から基板保持器搬送機構3の往路側搬送部33aの基板保持器導入部30Aに基板保持器11を受け渡し(この位置を「基板保持器受け渡し位置」という。)、かつ、基板保持器搬送機構3の復路側搬送部33cの基板保持器排出部30Cから基板保持器11を取り出す(この位置を「基板保持器取り出し位置」という。)ように構成されている。
真空槽2の例えば上部には、真空槽2内に成膜対象基板50を搬入し且つ真空槽2から成膜対象基板50を搬出するための基板搬入搬出室2Aが設けられている。
この基板搬入搬出室2Aは、例えば上述した基板搬入搬出機構6の支持部62の上方の位置に連通口2Bを介して設けられており、例えば基板搬入搬出室2Aの上部には、開閉可能な蓋部2aが設けられている。
そして、後述するように、基板搬入搬出室2A内に搬入された成膜対象基板50を基板搬入搬出機構6の支持部62の搬送ロボット64上の基板保持器11に受け渡して保持させ、かつ、成膜後の成膜対象基板50を基板搬入搬出機構6の支持部62の搬送ロボット64上の基板保持器11から例えば真空槽2の外部の大気中に搬出するように構成されている。
なお、本実施の形態の場合、基板搬入搬出機構6の支持部62の上部の縁部に、成膜対象基板50を搬入及び搬出する際に基板搬入搬出室2Aと真空槽2内の雰囲気を隔離するための例えばOリング等のシール部材63が設けられている。
この場合、基板搬入搬出機構6の支持部62を基板搬入搬出室2A側に向って上昇させ、支持部62上のシール部材63を真空槽2の内壁に密着させて連通口2Bを塞ぐことにより、真空槽2内の雰囲気に対して基板搬入搬出室2A内の雰囲気を隔離するように構成されている。
一方、第1の成膜領域4の近傍には、基板保持器11に保持された成膜対象基板50を加熱及び冷却するための、それぞれ加熱機能及び冷却機能を有する一対の加熱冷却機構7a、7bが設けられている。
本実施の形態では、加熱冷却機構7a、7bは第1の駆動輪31と第1の成膜領域4との間で搬送経路を上下から挟むように配置され、第1の成膜領域4による成膜対象基板50に対して成膜面及び反対側の非成膜面の両面を加熱又は冷却できるようになっている。
図2に示すように、本実施の形態の基板保持器搬送機構3は、水平面と平行に設けられた平板状の基部フレーム25上に、所定間隔をおいて鉛直方向で平行に設けられた一対の平板状の側部フレーム26を有するフレーム構造体8を備え、このフレーム構造体8に、後述する各部材が例えば搬送方向に対して対称となるように組み付けられ、一体的なユニットとして、基板保持器搬送機構3が構成されている。
この基板保持器搬送機構3は、フレーム構造体8に設けられた取付部17によって上述した真空槽2内に着脱自在に取り付けられるようになっている。
基板保持器搬送機構3には、上述した第1及び第2の駆動輪31、32が一対の側部フレーム26にそれぞれ設けられている。
ここで、第1の駆動輪31は、搬送方向に対して直交する方向の回転軸線を中心として回転する駆動軸31aを有し、この駆動軸31aを中心として回転するようになっている。
一方、第2の駆動輪32は、搬送方向に対して直交する同一の回転軸線を中心として回転駆動される駆動軸35をそれぞれ有し、各駆動軸35は連結部材34を介して第2の駆動輪32にそれぞれ連結されている(図2、図5(a)(b)参照)。
そして、一対の側部フレーム26にそれぞれ設けられた第1及び第2の駆動輪31、32にそれぞれ上述した搬送駆動部材33が架け渡され、これにより基板保持器11を搬送する搬送経路が形成されている。
このように、本実施の形態の基板保持器搬送機構3は、各搬送駆動部材33の上側に位置する往路側搬送部(第1の搬送部)33aと、各搬送駆動部材33の下側に位置する復路側搬送部(第2の搬送部)33cとがそれぞれ対向し、鉛直方向に関して重なるように構成されている(図1、図2参照)。
図3に示すように、一対の搬送駆動部材33には、それぞれ所定の間隔をおいて複数の保持駆動部36が設けられている。
これら保持駆動部36は、基板保持器11を保持して搬送駆動するためのもので、搬送駆動部材33の外方側に突出するように搬送駆動部材33に取り付けられ、その先端部には、例えば搬送方向下流側に向けて形成された例えばJフック形状(搬送方向下流側の突部の高さが搬送方向上流側の突部の高さより低い形状)の保持凹部37が設けられている。
また、図2に示すように、一対の搬送駆動部材33の内側の位置で、第1及び第2の駆動輪31、32の間には、搬送する基板保持器11を支持する一対の基板保持器支持機構18が設けられている。
基板保持器支持機構18は、例えば複数のローラ等の回転可能な部材からなるもので、それぞれ搬送駆動部材33の近傍に設けられている。
本実施の形態では、図2及び図3に示すように、搬送駆動部材33の往路側搬送部33aの近傍に往路側基板保持器支持機構18aが設けられるとともに、搬送駆動部材33の復路側搬送部33cの近傍に復路側基板保持器支持機構18bが設けられ、搬送される基板保持器11の下面の両縁部を支持するように配置構成されている。
ここで、往路側基板保持器支持機構18aは、基板保持器導入部30A内に設けた端部を始端部として第1の成膜領域4(図1参照)を経由して搬送折り返し部30Bの直近の位置が終端部となるように直線状に設けられている。
一方、復路側基板保持器支持機構18bは、搬送折り返し部30Bの第2の駆動輪32側の位置を始端部として第2の成膜領域5(図1参照)を経由して基板保持器排出部30Cの位置が終端部となるように直線状に設けられている。
本実施の形態に用いる基板保持器11は、成膜対象基板50の両面上に成膜を行うもので、貫通した開口部を有するトレイ状のものからなる。
図4(a)〜(c)に示すように、この基板保持器11は、例えば長尺枠状の本体部11Aに、その長手方向即ち搬送方向に対して直交する方向に例えば矩形状の複数の成膜対象基板50を一列に並べてそれぞれ保持する複数の保持部13が設けられている。
ここで、各保持部13には、本体部11Aの搬送時の表面(第1面)側に、各成膜対象基板50と同等の大きさ及び形状で各成膜対象基板50の表側面が全面的に露出する例えば矩形状の開口部14が設けられるとともに、本体部11Aの搬送時の裏面(第2面)側には、上記各開口部14とそれぞれ連通し成膜対象基板50の大きさより小さい例えば矩形状の開口部15が設けられている。
そして、各保持部13における本体部11Aの中腹部分には、各成膜対象基板50を載置可能な矩形枠状の凹部からなる遮蔽部16がそれぞれ設けられている。
これら各遮蔽部16は、凹部の底面が例えば本体部11Aの表面及び裏面と平行な平面状に形成され、成膜の際に各成膜対象基板50を水平に載置して保持するように構成されている。
このような構成を有する本実施の形態の基板保持器11では、複数の保持部13に保持された複数の成膜対象基板50の両面上にそれぞれ成膜を行う場合に、各成膜対象基板50の表側面(第1面)が全面的に露出し、各成膜対象基板50の裏側面(第2面)については、その縁部が本体部11Aの遮蔽部16の肉厚部分によって覆われた状態になり、これにより第2のスパッタ源5Tから飛翔する成膜材料であるスパッタ粒子が遮蔽される。
一方、基板保持器11の本体部11Aの長手方向の両端部で且つ幅方向即ち搬送方向の一方側の端部には、支持軸12がそれぞれ設けられている。
これらの支持軸12は、本体部11Aの長手方向に延びる回転軸線を中心として断面円形状に形成され、それぞれの基部12aが両側に向って細くなるような円錐台形状に形成され、それぞれの先端部12bが基部12aより小径の円柱形状に形成されている。
そして、基板保持器11の支持軸12の各先端部12bが、上述した搬送駆動部材33の保持駆動部36の保持凹部37にそれぞれ嵌り、この支持軸12を中心として回転可能に保持されるように各部分の寸法が定められている。
このような構成により、基板保持器11の支持軸12の各先端部12bが搬送駆動部材33の保持駆動部36の保持凹部37にそれぞれ嵌って保持されて搬送される場合に、保持駆動部36の保持凹部37と上述した先細形状の支持軸12との当接によって基板保持器11の支持軸12方向の位置決めがなされるようになっている。
また、本実施の形態では、基板保持器11の支持軸12の各先端部12bが搬送駆動部材33の保持駆動部36の保持凹部37にそれぞれ嵌って支持された状態において、基板保持器11の支持軸12の先端部12bとガイド部材38との間に若干の隙間が形成されるように各部材の寸法が定められている。
このような構成により、基板保持器11の支持軸12の各先端部12bが搬送駆動部材33の保持駆動部36の保持凹部37にそれぞれ嵌って支持されて搬送される場合に、ガイド部材38と基板保持器11の支持軸12の先端部12bとの当接によって基板保持器11の搬送経路からの脱落が防止されるようになっている。
本実施の形態の基板保持器搬送機構3の搬送折り返し部30Bは、以下に説明するように構成されている。
まず、図3及び図5(a)(b)に示すように、基板保持器搬送機構3における第2の駆動輪32に対して第1の駆動輪31側の隣接する位置には、成膜対象基板50を折り返して搬送する際に基板保持器11を支持してその姿勢を制御する姿勢制御機構20が設けられている。
この姿勢制御機構20は、搬送方向に対して直交する方向に延びる駆動軸21を有し、この駆動軸21は、一対の側部フレーム26を貫通して回転自在に支持されている。
そして、この駆動軸21に、一対の基板保持器支持機構18の間隔より小さい間隔をおいて、一対の支持アーム22が取り付けられている(図5(a)参照)。
これらの支持アーム22は、直線棒状の部材からなり、その両端部にそれぞれ支持ローラ23が設けられている。
一方、支持アーム22の駆動軸21は、第2の駆動輪32の駆動軸35と例えばベルト状の動力伝達部材24によって連結され、これにより、第2の駆動輪32と支持アーム22とが、後述するように、所定の関係で同期して同方向に回転するように構成されている。
以下、本実施の形態の成膜装置1の動作、並びに、この成膜装置1を用いた成膜方法を、図6〜図16を参照して説明する。また、本明細書では、ヘテロ接合型太陽電池の透明導電酸化物層を形成する場合を例にとって説明する。
ここでは、理解を容易にするため、一つの基板保持器11に一つの成膜対象基板50を保持して成膜を行う場合を例にとって説明する。
また、基板保持器11の支持軸12が設けられた側を前方にして基板保持器11を基板保持器導入部30Aに対して導入するものとする(図9(a)参照)。
本実施の形態では、まず、図6に示すように、基板搬入搬出機構6の支持部62上のシール部材63を真空槽2の内壁に密着させて真空槽2内の雰囲気に対して基板搬入搬出室2A内の雰囲気を隔離した状態で、基板搬入搬出室2Aの蓋部2aを開け、図示しない搬送ロボットを用いて成膜対象基板50を基板搬入搬出機構6の支持部62の搬送ロボット64上の基板保持器11に装着して保持させる。
ここで、成膜対象基板50は、図16(a)に示すように、n型結晶シリコン基板51の第1面(図中上側面)上に、i型アモルファスシリコン層52及びp型アモルファスシリコン層53が順次設けられるとともに、このn型結晶シリコン基板51の第2面(図中下側面)上に、i型アモルファスシリコン層56及びn型アモルファスシリコン層57が順次設けられているものである。
そして、図7に示すように、基板搬入搬出室2Aの蓋部2aを閉じた後、基板搬入搬出機構6の支持部62を基板保持器受け渡し位置まで下降させ、基板保持器11の高さが搬送駆動部材33の往路側搬送部33aと同等の高さ位置となるようにする。
さらに、図8に示すように、基板搬入搬出機構6の支持部62に設けた搬送ロボット64によって基板保持器11を基板保持器搬送機構3の基板保持器導入部30Aに配置する。
これにより、図9(a)に示すように、基板保持器11の下面11bが往路側基板保持器支持機構18aによって支持される。
次に、基板保持器搬送機構3の第1及び第2の駆動輪31、32を動作させ、搬送駆動部材33の往路側搬送部33aを第1の駆動輪31から第2の駆動輪32に向って移動させるとともに、搬送駆動部材33の復路側搬送部33cを第2の駆動輪32から第1の駆動輪31に向って移動させる。
これにより、図9(b)に示すように、搬送駆動部材33上に設けられた保持駆動部36の保持凹部37が基板保持器11の一対の支持軸12と嵌り合って当該支持軸12が保持駆動部36に保持され、基板保持器11が搬送駆動部材33の往路側搬送部33a上を第2の駆動輪32近傍の搬送折り返し部30Bに向って搬送される。
そして、基板保持器11及び成膜対象基板50を、図8に示す加熱冷却機構7a、7bによって加熱した後に、第1の成膜領域4の位置を通過する際に、基板保持器11に保持された成膜対象基板50の第1面である表面上に、基板保持器11の上方に位置する第1のスパッタ源4Tによってスパッタリングによる成膜を行う(図1参照)。
具体的には、図16(a)に示す成膜対象基板50のp型アモルファスシリコン層53の表面に、スパッタリングによって第1の透明導電酸化物層54を形成する(図16(b)参照)。
上述したように、本実施の形態では、基板保持器11に保持された成膜対象基板50の表面(第1面)が全面的に露出しているため、第1のスパッタ源4Tから飛翔するスパッタ粒子によって、図16(b)に示すように、成膜対象基板50のp型アモルファスシリコン層53の表面に第1の透明導電酸化物層54が全面的に形成される。
図10(a)〜(c)は、本実施の形態の基板保持器搬送機構の搬送折り返し部の動作を示す説明図である。
本実施の形態では、上述したように、搬送駆動部材33の保持駆動部36によって基板保持器11の支持軸12が保持されるとともに、基板保持器11の下面11bが往路側基板保持器支持機構18aによって支持された状態で搬送折り返し部30Bに向って搬送される(図9(a)(b)参照)。
そして、図10(a)に示すように、基板保持器11の支持軸12が搬送折り返し部30Bの第2の駆動輪32の上部に到達した時点で基板保持器11の後端部が、往路側基板保持器支持機構18aの終端部18cから外れるように、基板保持器11の寸法及び支持軸12の配置位置と、往路側基板保持器支持機構18aの寸法がそれぞれ設定されている。
ここで、基板保持器11は、上述したように一対の支持軸12の先端部12bが搬送駆動部材33の保持駆動部36の保持凹部37に保持された状態において、支持軸12を中心として回転可能になっていることから、本実施の形態では、基板保持器11が往路側基板保持器支持機構18aの終端部18cから外れた時点において、姿勢制御機構20の一対の支持アーム22の一方の端部に設けた支持ローラ23によって基板保持器11の支持軸12に対し後端部側の下面11bを支持して水平状態を保つように構成されている。
この姿勢制御機構20の一対の支持アーム22は、上述したように、第2の駆動輪32と同期して第2の駆動輪32と同一方向に回転するように構成されている。
図10(b)に示すように、本実施の形態においては、搬送駆動部材33の移動に伴い、保持駆動部36が、往路側搬送部33aから折り返し部33bを経由して復路側搬送部33cに向って移動する。
この移動の際、基板保持器11の支持軸12は第2の駆動輪32の周囲を円弧状に移動して下降するが、本実施の形態では、その際、姿勢制御機構20の一対の支持アーム22の一方の端部の支持ローラ23によって基板保持器11の後端部側の下面11bを支持し、基板保持器11の姿勢がほぼ水平状態に保たれるように、姿勢制御機構20の支持アーム22の寸法及び回転角度を設定している。
また、この移動の際には、保持駆動部36の保持凹部37に支持された基板保持器11の支持軸12が、保持駆動部36の保持凹部37より下方に位置するようになるため、重力の作用によって保持駆動部36の保持凹部37から離脱する方向の力が基板保持器11の支持軸12に働くが、本実施の形態においては、基板保持器11の支持軸12の各先端部12bが搬送駆動部材33の保持駆動部36の保持凹部37にそれぞれ嵌って保持された状態において、基板保持器11の支持軸12の先端部12bとガイド部材38との間に若干の隙間が形成されるように構成されていることから、基板保持器11の支持軸12の先端部12bは、保持駆動部36の保持凹部37に対して若干隙間が生じた状態でガイド部材38の内側の部分に接触して支持される。
その結果、本実施の形態では、搬送折り返し部30Bを通過する際に、基板保持器11が搬送駆動部材33の保持駆動部36から脱落することはない。
さらに、図10(c)に示すように、基板保持器11の支持軸12が搬送折り返し部30Bの第2の駆動輪32の下部に到達すると、基板保持器11の支持軸12が設けられた側と反対側の端部が搬送方向側の先端部となるが、本実施の形態では、この時点において、基板保持器11の当該先端部の下面11bが円滑に復路側基板保持器支持機構18bに支持されるとともに、支持アーム22の支持ローラ23が基板保持器11の下面11bから離れるように、姿勢制御機構20の支持アーム22の寸法及び回転角度を設定している。
また、この時点では、この支持アーム22の他方側の端部の支持ローラ23aが、後続の基板保持器11の下面11bを支持するように姿勢制御機構20の支持アーム22の寸法及び回転角度を設定している。
その後、基板保持器搬送機構3の第1及び第2の駆動輪31、32の動作を継続することにより、図11(a)(b)に示すように、復路側基板保持器支持機構18bに支持された基板保持器11を、搬送駆動部材33の復路側搬送部33cの保持駆動部36の動作によって搬送折り返し部30Bから基板保持器排出部30Cに向って移動させる。
この動作の際、基板保持器11に保持された成膜対象基板50に対し、第2の成膜領域5の位置を通過する際に、基板保持器11の下方に位置する第2のスパッタ源5Tによってスパッタリングによる成膜を行う(図1参照)。
この場合、本実施の形態の基板保持器搬送機構3では、上述したように、搬送折り返し部30Bを経由して搬送される際に基板保持器11の上下関係は変わらないため、基板保持器11に保持された成膜対象基板50の第1面と反対側の第2面即ち裏面上に成膜を行うことになる。
具体的には、図16(b)に示す成膜対象基板50のp型アモルファスシリコン層57の表面に、スパッタリングによって以下に説明する透明導電酸化物層58を形成する。
上述したように、本実施の形態では、基板保持器11に保持された成膜対象基板50の裏面(第2面)側は、その縁部が上述した遮蔽部16によって覆われているため、図16(c)に示すように、下地層であるp型アモルファスシリコン層57の表面の縁部を除いた領域のみに透明導電酸化物層58が形成され、これにより目的とする成膜済の成膜対象基板59を得る。
その後、基板保持器11が基板保持器排出部30Cに到達した後、基板保持器11が基板保持器排出部30Cのガイド部材38の終端部に到達すると、図12(a)に示すように、基板保持器11の搬送方向下流(前方)側の部分が復路側基板保持器支持機構18b及びガイド部材38の終端部から突出した状態になることから、基板搬入搬出機構6の支持部62を基板保持器取り出し位置に配置し(図13参照)、上述した基板搬入搬出機構6の搬送ロボット64を構成する載置部65によって基板保持器11の下面11bを支持する。
さらに、搬送駆動部材33の動作を継続すると、第1の駆動輪31の周囲の搬送駆動部材33と共に移動する保持駆動部36が円弧状の搬送駆動部材33と共に基板保持器11の支持軸12から離間して上方に移動することから、図12(b)に示すように、搬送駆動部材33の保持駆動部36と基板保持器11の支持軸12との嵌合が外れ、基板保持器11はその位置で停止する。
そこで、基板搬入搬出機構6の搬送ロボット64を用い、図13に示すように、基板保持器11を基板保持器排出部30Cから基板搬入搬出機構6側に取り出して搬送ロボット64と共に支持部62上に配置する。
その後、図14に示すように、基板搬入搬出機構6の支持部62を上昇させ、支持部62上のシール部材63を真空槽2の内壁に密着させて真空槽2内の雰囲気に対して基板搬入搬出室2A内の雰囲気を隔離する。
そして、図15に示すように、基板搬入搬出室2Aの蓋部2aを開け、図示しない搬送ロボットを用い、成膜済の成膜対象基板59を基板保持器11から大気中に取り出す。
これにより、本実施の形態における成膜工程が終了する。
なお、本実施の形態による成膜済の成膜対象基板59の第1及び第2の透明導電酸化物層54、58上に電極層を設ける場合には、公知の方法を用いればよい。
以上述べたように、本実施の形態では、基板保持器搬送機構3において、往路側搬送部33aによって基板保持器11を第1の成膜領域4を通過するように搬送経路に沿って所定方向に搬送し、基板保持器11に保持された成膜対象基板50の第1面上にスパッタリングによって成膜を行い、搬送折り返し部30Bによって基板保持器11を上下関係を維持した状態で搬送経路に沿って往路側搬送部33aから復路側搬送部33cに向って折り返して搬送し、復路側搬送部33cによって基板保持器11を第2の成膜領域5を通過するように搬送経路に沿って往路側搬送部33aの搬送方向と反対方向に搬送し、基板保持器11に保持された成膜対象基板50の第2面上にスパッタリングによって成膜を行う。
この場合、本実施の形態に用いる基板保持器11は、成膜対象基板50の第1及び第2面が露出する開口部14、15を有するとともに、成膜対象基板50の縁部に対する、第2のスパッタ源5Tからの成膜材料を遮蔽する遮蔽部16が設けられており、往路側搬送部33a及び復路側搬送部33cにおいてこの基板保持器11に保持された成膜対象基板50の第1及び第2面上にそれぞれスパッタリングによって成膜を行うと、成膜対象基板50の縁部に対し第2のスパッタ源5Tからの成膜材料が遮蔽される。
その結果、本実施の形態によれば、成膜対象基板50の第1面側においてp型アモルファスシリコン層53の表面に第1の透明導電酸化物層54の全面的に形成する一方で、成膜対象基板50の第2面側のp型アモルファスシリコン層57の表面の縁部を除いた領域のみに第2の透明導電酸化物層58を形成することができるので、成膜対象基板50の両面側に形成される第1の透明導電酸化物層54と第2の透明導電酸化物層58同士の短絡を確実に防止することができる。
また、本実施の形態においては、搬送経路が、鉛直面に対して投影した場合に一連の環状となるように形成されており、この搬送経路に沿って基板保持器11を上下関係を維持した状態で往路側搬送部33aから復路側搬送部33cに向って折り返して搬送し、往路側搬送部33a及び復路側搬送部33cにおいてそれぞれ第1及び第2の成膜領域4、5を通過させてスパッタリングを行うことから、マスクを用いることなくコンパクトな通過型の成膜装置1によって成膜対象基板50の両面上に第1及び第2の透明導電酸化物層54、58を形成することができ、これによりコストダウンを図ることができる。
そして、このような本実施の形態によれば、成膜対象基板50の両面側に形成される第1及び第2の透明導電酸化物層54、58同士の短絡を発生させることなく、例えば太陽光側における透明導電酸化物層54の面積を最大限大きくすることができるので、ヘテロ接合型太陽電池の変換効率を向上させることができる。
また、本実施の形態においては、搬送方向に対して直交する方向に複数の成膜対象基板50を並べて保持する複数の基板保持器11を、搬送経路に沿って搬送するように構成されていることから、従来技術のような基板の搬送方向に複数の基板を並べて保持する基板保持器を搬送して成膜を行う場合と比較して、基板保持器の長さ及びこれに伴う余剰スペースを削減することができるので、省スペース化を達成することができる。
さらにまた、本実施の形態においては、基板保持器搬送機構3が、真空槽2に対して着脱自在のフレーム構造体8に一体的に組み付けられていることから、製造工程及びメンテナンスを容易に行うことができる。
なお、本発明は上述した実施の形態に限られず、種々の変更を行うことができる。
例えば上記実施の形態では、基板保持器11として、長尺枠状の本体部11Aの長手方向に複数の成膜対象基板50を一列に並べて保持するものを例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、例えば本体部11Aの長手方向に複数の成膜対象基板50を複数列(二〜三列)に並べて保持するように構成することもできる。
また、上記実施の形態では、基板保持器11に設けた遮蔽部16として、矩形枠状のものを採用したが、本発明はこれに限られず、成膜対象基板の縁部を覆うことができれば、種々の形状のものを採用することができる。また、成膜対象基板の縁部全てではなく、例えば短絡が生じやすい成膜対象基板の領域の縁部を部分的に遮蔽するように構成することもできる。
さらに、上記実施の形態では、各保持部13は、本体部11Aの搬送時の表面(第1面)側に各成膜対象基板50と同等の大きさ及び形状で各成膜対象基板50の表側面が全面的に露出する開口部14を設けるとともに、本体部11Aの搬送時の裏面(第2面)側に、上記各開口部14と連通し成膜対象基板50の大きさより小さい開口部15を設けるようにしたが、本発明はこれに限られず、成膜対象基板50を確実に保持することができる限り、これら開口部14と開口部15の上下関係を逆にすることもできる。
さらにまた、本発明は、基板保持器において成膜対象基板を円滑に着脱し確実に保持できる限り、成膜対象基板の第1及び第2面の両方の縁部に対する、第1及び第2のスパッタ源からの成膜材料を遮蔽する遮蔽部を設けることもできる。
さらにまた、上記実施の形態では、ヘテロ接合型太陽電池の成膜対象基板の両面に透明導電酸化物層を形成する場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、成膜対象基板の両面上に種々のスパッタ膜を形成する場合に適用することができる。
ただし、本発明は、ヘテロ接合型太陽電池の成膜対象基板の両面に透明導電酸化物層を形成する場合に特に有効となるものである。
一方、上記実施の形態においては、基板保持器搬送機構3を構成する搬送駆動部材33のうち上側の部分を第1の搬送部である往路側搬送部33aとするとともに、搬送駆動部材33のうち下側の部分を第2の搬送部である復路側搬送部33cとするようにしたが、本発明はこれに限られず、これらの上下関係を逆にすることもできる。
また、上記実施の形態では、基板保持器搬送機構3について、一対のスプロケットと、これら一対のスプロケットに架け渡されたチェーンから構成するようにしたが、例えばベルトやレールを用いた環状形状の搬送駆動機構を用いることもできる。
さらに、基板保持器支持機構18については、ローラではなくベルトやレールを用いて構成することもできる。
また、上記実施の形態では、成膜対象基板50に対し、第1及び第2の成膜領域4、5において1回の成膜を行う場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、第1及び第2の成膜領域4、5を複数回通過して複数回の成膜を行うように構成することもできる。
この場合は、例えば図17に示すように、基板搬入搬出機構6の支持部62を基板保持器取り出し位置に配置して搬送ロボット64を用い、1回目の成膜が終了した成膜対象基板59を保持した基板保持器11を、基板保持器排出部30Cから基板搬入搬出機構6側に取り出して搬送ロボット64と共に支持部62上に配置する。
そして、図18に示すように、基板搬入搬出機構6の支持部62を基板保持器受け渡し位置まで上昇させ、基板保持器11の高さが搬送駆動部材33の往路側搬送部33aと同等の高さ位置となるように配置し、基板搬入搬出機構6の支持部62上の搬送ロボット64によって基板保持器11を基板保持器搬送機構3の基板保持器導入部30Aに配置する。
その後、上述した工程を経ることにより、当該成膜対象基板59に対する2回目の成膜を行う。
さらに、上述した動作及び工程を繰り返すことにより、当該成膜対象基板59に対して3回以上の成膜を行うことも可能である。
さらに、本発明は、上記実施の形態のように、成膜前の処理対象基板50を真空槽2内に搬入し、成膜済の成膜対象基板59を真空槽2から搬出する場合のみならず、成膜前の処理対象基板50を基板保持基11と共に真空槽2内に搬入し、成膜済の成膜対象基板59を基板保持器11と共に真空槽2から搬出する場合にも適用することができる。
1…成膜装置
2…真空槽
3…基板保持器搬送機構
4…第1の成膜領域
4T…第1のスパッタ源
5…第2の成膜領域
5T…第2のスパッタ源
6…基板搬入搬出機構
11…基板保持器
13…保持部
14…開口部
15…開口部
16…遮蔽部
30A…基板保持器導入部
30B…搬送折り返し部
30C…基板保持器排出部
33…搬送駆動部材
33a…往路側搬送部(第1の搬送部)
33b…折り返し部
33c…復路側搬送部(第2の搬送部)
50…成膜対象基板
51…n型結晶シリコン基板
52…i型アモルファスシリコン層
53…p型アモルファスシリコン層
54…第1の透明導電酸化物層
56…i型アモルファスシリコン層
57…n型アモルファスシリコン層
58…第2の透明導電酸化物層
59…成膜済の成膜対象基板

Claims (4)

  1. 単一の真空雰囲気が形成される真空槽と、
    前記真空槽内に設けられ、成膜対象基板の第1面上に成膜を行う第1のスパッタ源を有する第1の成膜領域と、
    前記真空槽内に設けられ、前記成膜対象基板の第2面上に成膜を行う第2のスパッタ源を有する第2の成膜領域と、
    鉛直面に対する投影形状が一連の環状となるように形成され、前記第1及び第2の成膜領域を通過するように設けられた搬送経路と、
    前記成膜対象基板を水平状態に保持する基板保持器を、前記搬送経路に沿って搬送する基板保持器搬送機構とを備え、
    前記基板保持器搬送機構は、前記基板保持器を前記第1の成膜領域を通過するように所定方向に搬送する第1の搬送部と、前記基板保持器を前記第2の成膜領域を通過するように前記第1の搬送部の搬送方向と反対方向に搬送する第2の搬送部と、前記基板保持器を上下関係を維持した状態で前記第1の搬送部から前記第2の搬送部に向って折り返して搬送する搬送折り返し部とを有し、
    前記基板保持器は、前記成膜対象基板の第1及び第2面が露出する開口部を有するとともに、前記成膜対象基板の縁部に対する、前記第1及び第2のスパッタ源の少なくとも一方からの成膜材料を遮蔽する遮蔽部が設けられている成膜装置。
  2. 前記基板保持器は、当該搬送方向に対して直交する方向に複数の成膜対象基板を並べて保持するように構成されている請求項1記載の成膜装置。
  3. 単一の真空雰囲気が形成される真空槽と、前記真空槽内に設けられ、成膜対象基板の第1面上に成膜を行う第1のスパッタ源を有する第1の成膜領域と、前記真空槽内に設けられ、前記成膜対象基板の第2面上に成膜を行う第2のスパッタ源を有する第2の成膜領域と、鉛直面に対する投影形状が一連の環状となるように形成され、前記第1及び第2の成膜領域を通過するように設けられた搬送経路と、前記成膜対象基板を水平状態に保持する基板保持器を、前記搬送経路に沿って搬送する基板保持器搬送機構とを備え、前記基板保持器搬送機構は、前記基板保持器を前記第1の成膜領域を通過するように所定方向に搬送する第1の搬送部と、前記基板保持器を前記第2の成膜領域を通過するように前記第1の搬送部の搬送方向と反対方向に搬送する第2の搬送部と、前記基板保持器を上下関係を維持した状態で前記第1の搬送部から前記第2の搬送部に向って折り返して搬送する搬送折り返し部とを有し、前記基板保持器は、前記成膜対象基板の第1及び第2面が露出する開口部を有するとともに、前記成膜対象基板の縁部に対する、前記第1及び第2のスパッタ源の少なくとも一方からの成膜材料を遮蔽する遮蔽部が設けられている成膜装置を用いた成膜方法であって、
    前記基板保持器搬送機構の第1の搬送部によって前記基板保持器を前記第1の成膜領域を通過するように前記搬送経路に沿って所定方向に搬送し、当該基板保持器に保持された前記成膜対象基板の第1面上にスパッタリングによって成膜を行う工程と、
    前記基板保持器搬送機構の搬送折り返し部によって前記基板保持器を上下関係を維持した状態で前記搬送経路に沿って前記第1の搬送部から前記第2の搬送部に向って折り返して搬送する工程と、
    前記基板保持器搬送機構の第2の搬送部によって前記基板保持器を前記第2の成膜領域を通過するように前記搬送経路に沿って前記第1の搬送部の搬送方向と反対方向に搬送し、当該基板保持器に保持された前記成膜対象基板の第2面上に成膜を行う工程とを有する成膜方法。
  4. 単一の真空雰囲気が形成される真空槽と、前記真空槽内に設けられ、成膜対象基板の第1面上に成膜を行う第1のスパッタ源を有する第1の成膜領域と、前記真空槽内に設けられ、前記成膜対象基板の第2面上に成膜を行う第2のスパッタ源を有する第2の成膜領域と、鉛直面に対する投影形状が一連の環状となるように形成され、前記第1及び第2の成膜領域を通過するように設けられた搬送経路と、前記成膜対象基板を水平状態に保持する基板保持器を、前記搬送経路に沿って搬送する基板保持器搬送機構とを備え、前記基板保持器搬送機構は、前記基板保持器を前記第1の成膜領域を通過するように所定方向に搬送する第1の搬送部と、前記基板保持器を前記第2の成膜領域を通過するように前記第1の搬送部の搬送方向と反対方向に搬送する第2の搬送部と、前記基板保持器を上下関係を維持した状態で前記第1の搬送部から前記第2の搬送部に向って折り返して搬送する搬送折り返し部とを有し、前記基板保持器は、前記成膜対象基板の第1及び第2面が露出する開口部を有するとともに、前記成膜対象基板の縁部に対する、前記第1及び第2のスパッタ源の少なくとも一方からの成膜材料を遮蔽する遮蔽部が設けられている成膜装置を用いた太陽電池の製造方法であって、
    前記成膜対象基板として、n型結晶シリコン基板の第1面上に、i型アモルファスシリコン層及びp型アモルファスシリコン層が順次設けられるとともに、前記n型結晶シリコン基板の第2面上に、i型アモルファスシリコン層及びn型アモルファスシリコン層が順次設けられた基板を用意し、
    前記基板保持器搬送機構の第1の搬送部によって前記基板保持器を前記第1の成膜領域を通過するように前記搬送経路に沿って所定方向に搬送し、当該基板保持器に保持された前記成膜対象基板の第1面上にスパッタリングによって第1の透明導電酸化物層を形成する工程と、
    前記基板保持器搬送機構の搬送折り返し部によって前記基板保持器を上下関係を維持した状態で前記搬送経路に沿って前記第1の搬送部から前記第2の搬送部に向って折り返して搬送する工程と、
    前記基板保持器搬送機構の第2の搬送部によって前記基板保持器を前記第2の成膜領域を通過するように前記搬送経路に沿って前記第1の搬送部の搬送方向と反対方向に搬送し、当該基板保持器に保持された前記成膜対象基板の第2面上にスパッタリングによって第2の透明導電酸化物層を形成する工程とを有する太陽電池の製造方法。
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