以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る回転体試験装置を示す斜視図である。回転体試験装置1は、被測定物を回転させたときに顕在化する動バランスを測定する。すなわち、第1実施形態に係る回転体試験装置1は、動バランス測定装置や二面不釣り合い測定装置であるとも言える。被測定物とは、例えば、車両用タイヤのホイールである。回転体試験装置1は、ホイール100(図6参照)を保持し、回転軸線A1のまわりに回転させる。ホイール100が不釣り合いを有する場合、この回転により所定の大きさを有する不釣り合い力が周期的に発生する。回転体試験装置1は、不釣り合い力に関する情報を取得すると共に、不釣り合い力を利用して動バランスに関する情報を得る。本実施形態でいう動バランスとは、いわゆる二面アンバランスと呼ばれるものであり、所定の面における不釣り合い質量及び基準位置からの位相と、所定の面とは異なる別の面における不釣り合い質量及び基準位置からの位相と、により示される。動バランスの詳細については後述する。
回転体試験装置1は、筐体2と、チャック3と、回転駆動部4と、計測部6と、処理部7と、コンプレッサ8と、を有する。ここで、チャック3と回転駆動部4とは、協働して回転軸部を構成する。筐体2は、回転駆動部4の一部と、計測部6の一部とを収容する。チャック3は、ホイール100を着脱可能に保持するものであり、筐体2の外部に配置される。回転駆動部4は、チャック3に連結されて、チャック3を回転軸線A1のまわりに回転させる。計測部6は、回転駆動部4に設けられて、不釣り合いを有するホイール100を回転させたときに生じる不釣り合い力に関する情報を取得する。処理部7は、計測部6から不釣り合い力に関する情報を受け取り、当該情報を利用して動バランスに関する情報を算出する。
筐体2は、フレームユニット11と、カバー12とを有する。フレームユニット11は、直方体状の収容空間を画成するように、複数のL型鋼などの構造部材を組み合わせてなる。カバー12は、フレームユニット11にねじ止めされてフレームユニット11が有する開口を覆うように閉鎖する。
図2は、図1の回転体試験装置1のチャック3と回転駆動部4とを正面視した図である。図2に示されるように、回転駆動部4は、主軸ユニット13と、駆動ユニット14と、支持ユニット16とを有する。主軸ユニット13は、駆動ユニット14において発生された駆動力によって回転することにより、上端に取り付けられたチャック3を回転させる。主軸ユニット13及び駆動ユニット14を構成する部品は、それぞれ支持ユニット16に対して固定されることにより、相対的な位置関係を維持する。
主軸ユニット13は、メインシャフト17と、軸受18A,18Bと、プーリ19Aと、ロータリエンコーダ21と、ロータリジョイント22と、を有する。メインシャフト17は、円筒状の部材であり、貫通穴17aが設けられている。メインシャフト17は、鉛直方向Zに延び、上端側に配置された軸受18Aと、下側に配置された軸受18Bと、により回転可能に支持されている。メインシャフト17の上端は、チャック3に連結されている。メインシャフト17の下端側には、プーリ19Aとロータリエンコーダ21が取り付けられる。さらに、メインシャフト17の下端には、ロータリジョイント22が取り付けられる。
プーリ19Aは、駆動ユニット14において発生される回転力を駆動ベルト25を介して受け入れる部品である。プーリ19Aは、メインシャフト17に対して固定されている。ロータリエンコーダ21は、メインシャフト17の回転数を測定する。回転数は、処理部7に出力されてもよいし、回転数を示す表示部(不図示)に数値が表示されてもよい。ロータリジョイント22は、メインシャフト17に対して相対的に回転可能に取り付けられる。ロータリジョイント22は、メインシャフト17に対して固定されるシャフト取付部とシャフト取付部に対して回転自在に連結される自在部とを有する。この自在部には、コンプレッサ8から供給された圧縮空気を導くチューブ22aが接続される。圧縮空気は、自在部とシャフト取付部とを介して、メインシャフト17の貫通穴17aに導かれる。
駆動ユニット14は、被測定物であるホイール100を回転させる力を発生させる。駆動ユニット14は、モータ24と、プーリ19Bとを有する。モータ24において発生された回転力は、プーリ19Bから駆動ベルト25に伝達され、駆動ベルト25から主軸ユニット13のプーリ19Aに伝達される。また、ホイール100の重量に応じたトルクを得るために、主軸ユニット13のプーリ19Aの直径と、駆動ユニット14のプーリ19Bの直径と、が適宜調整される。
図3に示されるように、主軸ユニット13は、枠ユニット91と、連結フレーム92と、弾性支持部93と、計測部押圧部94と、を有する。枠ユニット91は、2個の支持枠91A,91Bを有する。支持枠91A,91Bは、枠体であり、回転軸線A1の方向に沿って互いに離間して配置される。連結フレーム92は、枠ユニット91をフレームユニット11に連結する。この連結フレーム92に対して、支持枠91A,91Bは弾性支持部93によって連結される。弾性支持部93は、2個の支持枠91A,91Bのそれぞれに設けられる。計測部6は、圧電素子26A及び圧電素子26Bと、ロータリエンコーダ21(図2参照)と、を有する。それぞれの圧電素子26A,26Bは、回転軸線A1に対して平行な軸線上において、上下方向(鉛直方向Z)に離間して配置される。圧電素子26A,26Bは、検出軸線ASの方向における枠ユニット91に作用する不釣り合い力の大きさに応じた電圧を出力する。圧電素子26A,26Bまわりの構造は、互いに位置が異なるだけである。以下、圧電素子26Aまわりの構造を例に、詳細に説明する。
図4に示されるように、支持枠91Aは、回転軸線A1の方向から平面視して矩形枠状をなす。支持枠91Aは、軸受18Aが配置される貫通孔部91sと、第1辺部91a(第1の面)と、第2辺部91b(第2の面)と、第3辺部91cと、第4辺部91dと、を有する。第1辺部91aと第2辺部91bとは、互いに対面する。第3辺部91cと第4辺部91dとは、互いに対面する。貫通孔部91sに配置された軸受18Aは、一対の傾動支持部95を介して支持枠91Aに連結される。一方の傾動支持部95は第3辺部91cに設けられる。他方の傾動支持部95は第4辺部91dに設けられる。
弾性支持部93は、一対の板バネ96を有する。板バネ96は、その厚み方向において所定の弾性係数を有し、力が加わったときに弾性係数に応じた変位を許容する。一方、板バネ96は、厚み方向に交差する方向において高い剛性を有する。例えば、板バネ96は、鉛直方向Zにおける変位を許容しない。そこで、板バネ96は、厚み方向がX軸方向に揃うように支持枠91A及びベース97に取り付けられる。一方の板バネ96(第1バネ)は、第1辺部91aに連結される。他方の板バネ96(第2バネ)は第2辺部91bに連結される。このような板バネ96の配置によれば、不釣り合い力が作用しない状態において鉛直方向Zにおける支持枠91Aの位置を保持する。一方、不釣り合い力が作用する状態においてX軸方向における支持枠91Aの変位を許容する。この相対的な変位が許容される方向を、以下の説明において「検出方向」と呼ぶ。
連結フレーム92は、平面視してL字状を有し、ベース97と、起立部98と、を有する。ベース97は、支持ユニット16を構成するフレームに対してボルト等により連結される。このベース97は、支持枠91A,91Bの第3辺部91cに対面する。ベース97は、平面視してX軸方向に沿った長さが支持枠91A,91Bの第1辺部91aから第2辺部91bまでの長さよりも長い。ベース97の第1辺部91a側の端部には、起立部98の基端がボルト等により連結される。
起立部98は、ベース97の端部から延びる梁状の部分であり、Y軸方向に沿って延びる。すなわち、起立部98は、支持枠91Aの第3辺部91cから第4辺部91dに向かう方向に延びる。起立部98の基端は、前述したようにベース97の端部に連結される。起立部98の先端98aは、第3辺部91cと第4辺部91dとの間に配置される。より具体的には、起立部98の先端98aは、回転軸線A1よりも第4辺部91d側に配置される。従って、起立部98は、検出軸線ASと交差する部分を有する。
圧電素子26Aは、支持枠91Aと連結フレーム92との間において、検出軸線AS上に配置される。具体的には、圧電素子26Aは、支持枠91Aにおける第1辺部91aと、連結フレーム92における起立部98との間に挟まれる。従って、圧電素子26Aの一端面は第1辺部91aの外面に接触する。圧電素子26Aの他端面は起立部98の内面とに接触する。この構成によれば、支持枠91Aが検出軸線ASの方向における不釣り合い力を受けたとき、圧電素子26Aは、その力の大きさに対応する電圧を出力する。
さらに、計測部押圧部94について説明する。計測部押圧部94は、圧電素子26Aを支持枠91Aに押圧する力を発生する。計測部押圧部94は、圧電素子26A,26Bのそれぞれに対して配置される。
計測部押圧部94は、ボルトB1とバネ99とを有する。ボルトB1は、連結フレーム92における起立部98に設けられた通し孔98hと圧電素子26Aの通し孔26hとを介して、支持枠91Aの第1辺部91aにおけるねじ穴91hにねじ込まれる。ボルトB1の中心軸線は、検出軸線ASと重複する。従って、通し孔98h,26h及びねじ穴91hの中心軸線も検出軸線ASと重複する。バネ99は、いわゆる圧縮つるまきバネであり、その中心軸線の方向に圧縮されたとき、圧縮する力と逆向きの力を発生させる。バネ99の弾性係数は、一対の板バネ96の弾性係数よりも小さい。
バネ99は、起立部98の外面とボルトB1のボルトヘッドBHとの間に配置される。具体的には、バネ99の中心軸線がボルトB1の中心軸線と重複するように、バネ99にボルトB1が差し込まれる。そして、バネ99の一端はボルトヘッドBHの底面に当接し、バネ99の多端は起立部98の外面に当接する。
このような構成において、ボルトB1を締めると、ボルトヘッドBHと起立部98との間の距離が縮まる。この距離の縮みによって、バネ99が圧縮される。バネが圧縮されると、起立部98が圧電素子26Aを支持枠91A側に押圧する。従って、圧電素子26Aは、その初期状態において一端面と支持枠91Aとの間及び他端面と連結フレーム92との間に隙間を有しない。
そして、一方向(矢印Ap)に沿った不釣り合い力が作用したとき、その不釣り合い力は、連結フレーム92とボルトヘッドBHとの間の距離を広げるように働く。つまり、不釣り合い力は、バネ99を緩めるように働く。従って、一方向(矢印Ap)に沿った不釣り合い力の検出において、バネ99は圧電素子26Aの動作に影響を及ぼさない。逆に、逆方向(矢印An)に沿った不釣り合い力が作用したとき、その不釣り合い力は、連結フレーム92とボルトヘッドBHとの間の距離を縮めるように働く。つまり、不釣り合い力は、バネ99を縮めるように働く。バネ99が縮まると圧電素子26Aを押圧する力が大きくなるものの、逆方向に沿う不釣り合い力に起因する変位は許容される。従って、計測部押圧部94は、初期位置に対して正の方向(矢印Ap)及び負の方向(矢印An)の両方向への支持枠91Aへの不釣り合い力の作用と、不釣り合い力に起因する変位を許容する。
次に、チャック3について詳細に説明する。図5は、チャック3を拡大して示す斜視図であり、チャック3の一部を切り欠いて内部構造を示している。
図5に示されるように、チャック3は、メインシャフト17の上端に固定されている。チャック3は、本体部27と、爪部28と、バネ29と、支持板31と、蓋32と、コーン33(押出部)と、を有する。本体部27は、軸部34とフランジ部36とを有する。軸部34は、円筒状を呈し、軸穴34aを有する。軸穴34aには、メインシャフト17の上端側と、コーン33が挿入される。軸穴34aの内周面とメインシャフト17の外周面との間にはOリング23Aが設けられており、気密状態を保つことができる。同様に、軸穴34aの内周面とコーン33の外周面との間にはOリング23Bが設けられており、気密状態を保ちつつ、軸穴34aに沿ってコーン33を上下動させることができる。
フランジ部36は、軸部34よりも大きい外径を有する。フランジ部36は、爪部28を回転軸線A1と直交する方向に案内する案内溝37と、軸部34の軸穴34aと連通するフランジ穴36aと、を有する。案内溝37は、フランジ部36の上面において回転軸線A1のまわりに等間隔に6個設けられている。従って、互いに隣接する案内溝37の配置角度は60°である。案内溝37は、一端がフランジ穴36aに対して開口し、他端がフランジ部36の外周面に対して開口している。案内溝37の他端側には、支持板31が取り付けられている。従って、案内溝37の他端の開口は支持板31によって閉鎖されている。
フランジ穴36aは、フランジ部36の上面において回転軸線A1を中心軸線とする穴である。フランジ穴36aには、コーン33が配置される。フランジ穴36aの深さは、案内溝37の深さよりも大きく、コーン33の高さよりも小さい。フランジ穴36aの内径は、コーン33の外径と略同等である。
爪部28は、角柱状の部材であり、回転軸線A1と直交する第2の方向D2に延びるように放射状に配置される。爪部28は、上述したように案内溝37に配置されるので、爪部28は、フランジ部36の上面において回転軸線A1のまわりに等間隔に6個設けられている。従って、互いに隣接する爪部28の配置角度は60°である。爪部28は、案内溝37によって第2の方向D2に往復移動が可能とされている。
爪部28は、回転軸線A1に近い端部に設けられた起立部38及び第1の当接面39と、回転軸線A1から遠い端部に設けられた後端面41とを有する。起立部38は、蓋32の上面よりも上方に突出する凸部であり、ホイール100のホイールハブ101に設けられたハブ穴103の内部に配置され、ハブ穴103の内周面を外側に向けて押圧する(図6の(b)部、図7等参照)。第1の当接面39は、第1の方向D1及び第2の方向D2に対して傾斜する斜面である。第1の当接面39は、コーン33と接触している。後端面41は、バネ29が当接する平面であり、バネ29から付勢力が付与される。
6個の案内溝37のそれぞれにおいて、爪部28の後端面41と支持板31との間には、圧縮バネであるバネ29が一個ずつ配置されている。バネ29は、爪部28が回転軸線A1に近接するように、第2の方向D2に沿って爪部28を移動させる付勢力を発生する。バネ29の一端は、爪部28の後端面41に当接される。バネ29の他端は、支持板31に当接される。
コーン33は、コンプレッサ8から供給された圧縮空気により回転軸線A1(第1の方向D1)に沿って上下動され、この上下動の運動を爪部28の第2の方向D2へ沿った運動へ変換する。すなわち、コーン33の上下動により、それぞれの爪部28がバネ29の付勢力に抗して第2の方向D2に移動する。従って、爪部28の起立部38が構成する仮想的な保持円の直径が拡大又は縮小される。コーン33は、錐台である円錐形状を有するコーンヘッド42と、コーンヘッド42の底面に設けられたコーンシャフト43とを有する。コーンヘッド42の斜面は、爪部28と当接する第2の当接面42aである。斜面のなす角度は、回転軸線A1の方向へのコーン33の移動量と、爪部28の構成する仮想保持円の直径(すなわち爪部28の移動量)との関係により規定される。
次に、チャック3の動作と爪部28の動作との関係について説明する。図6の(a)部は、第1の形態であるときのチャック3の断面を示す図であり、図6の(b)部は、第2の形態であるときのチャック3の断面を示す図である。
図6の(a)部に示されるように、第1の形態は、ホイール100をチャック3に取り付ける場合の形態である。また、第1の形態は、ホイール100をチャック3から取り外す場合の形態である。第1の形態であるとき、コーンヘッド42の下面は、フランジ穴36aの底面に当接している。このときのコーン33の位置は、回転軸線A1の方向において最も下方である。従って、爪部28は回転軸線A1に最も近い位置にあるので、仮想保持円の直径は最も小さい。
第1の形態から第2の形態へ切り替えるとき、コンプレッサ8は圧縮空気をロータリジョイント22、メインシャフト17の貫通穴17aを介して、コーンシャフト43へ提供する。コーンシャフト43は、爪部28の第2の当接面42aを押圧しながら上方へ移動する。このコーン33の押圧力に起因して爪部28が回転軸線A1から離間する方向(一方向)に移動する。この移動は、爪部28の起立部38がハブ穴103の内周面に当接するまで継続される。
図6の(b)部に示されるように、第2の形態は、ホイール100をチャック3に対して固定した場合の形態である。第2の形態であるとき、コーン33は第1の形態の場合よりも上方に位置する。このコーン33の位置は、メインシャフト17の貫通穴17aから供給される圧縮空気の圧力によって制御される。爪部28は、フランジ穴36aの底面からメインシャフト17の下面までの距離に対応するように、第2の方向D2に移動している。コーンヘッド42は、円錐台状であるので、6個の爪部28のそれぞれ移動距離は互いに等しい。従って、仮想保持円は円形の形状を保ちつつ拡大される。爪部28の起立部38は、ホイール100のハブ穴103の内周面に当接している。
第2の形態から第1の形態へ切り替えるとき、コンプレッサ8は圧縮空気の提供を徐々に減少させる。そうすると、バネ29の付勢力に起因して爪部28が回転軸線A1に近接する方向(一方向とは逆の方向)の力にコーン33が抗しきれなくなり、コーン33が徐々に下方へ移動する。そして、爪部28の起立部38がハブ穴103の内周面から離間した状態となり、再び第1の形態へ切り替えられる。
ここで、爪部28の数とホイール100との関係について説明する。図7の(a)部は、ホイール100の断面を示す図であり、図7の(b)部は、ホイールハブ101を平面視した図である。図7の(b)部に示されるように、ホイールハブ101のパット面102には、1個のハブ穴103(取付穴)と、5個のボルト穴104とが設けられている。ボルト穴104は、ハブ穴103の中心軸線A2の周りに等間隔に設けられている。また、パット面102には、ホイール100の軽量化のためのパット面逃し部106が設けられている。このパット面逃し部106は、溝状であるので水がたまりやすい。そこで、パット面逃し部106に溜まった水を排出させるための排水溝107が設けられている。
上述したように、チャック3は、6個の爪部28を有する。これらの爪部28がハブ穴103の内周面に押し当てられることにより、ホイール100を保持する。このような保持構成は、6点チャック式とも呼ぶことができ、ハブ穴103の形状歪を吸収し、ホイール100とメインシャフト17の回転軸線A1とを正確に一致させることができる。従って、ホイール100を回転させたときの遠心力を計測する動バランス測定にあっては、ホイール100の回転軸線とメインシャフト17の回転軸線A1とを互いに精度良く一致させることができるので、精度の良い動バランスの計測が可能になる。
ここで、爪部28の数は6個であり、パット面逃し部106の数(即ち排水溝107の数)は5個であり、爪部28の数がパット面逃し部106の数より多い。このような爪部28の数とパット面逃し部106の数との関係によれば、それぞれの爪部28が排水溝107に嵌ることなく、全てハブ穴103の内周面に当接させることができる。従って、ハブ穴103の中心軸線A2とチャック3の回転軸線A1とのずれの発生を抑制することができる。要するに、6個の爪部28を有するチャック3は、5個のボルト穴104を有するホイール100の保持に適している。
一方、図18の(a)部及び図18の(b)部は、爪部28の数とホイール200のボルト穴204の数(すなわち排水溝207の数)が一致する構成を示す図である。図18の(a)部に示されるように、爪部28の数とボルト穴204の数が一致する場合であっても、それぞれの爪部28が排水溝207に嵌ることなくハブ穴203の内周面に当接させることができる。しかし、図18の(b)部に示されるように、全ての爪部28が全ての排水溝207に嵌ってしまう場合も生じ得る。この場合には、チャック3がホイール200を好適に保持することが難しい。また、第2実施形態で述べるように、コーンヘッド42の回転軸線A1の方向における位置を利用してハブ穴203のハブ径を得る場合には、信頼できる測定結果が得られにくくなる。これにより、爪部28の数とボルト穴204の数とが同じである場合には、ホイール200をチャック3に取り付ける際に、爪部28と排水溝207との位置とを互いにずらす必要がある。このような工程は、動バランスを測定する作業において、作業効率の向上を妨げる要因になり得る。
さらに図18の(c)部及び図18の(d)部は、爪部28の数がボルト穴304の数(すなわち排水溝307の数)より少ない構成を示す図である。図18の(c)部に示されるように、爪部28の数がボルト穴304の数より少ない場合であっても、それぞれの爪部28が排水溝307に嵌ることなくハブ穴303の内周面に当接させることができる。しかし、図18の(d)に示されるように、1個の爪部28が排水溝307に嵌ってしまうと、回転軸線A1とハブ穴303の中心軸線A2とがずれた状態で保持されてしまう。これにより、爪部28の数がボルト穴304の数より少ない場合にも、ホイール300をチャック3に取り付ける際に、爪部28と排水溝307との位置とを互いにずらす必要がある。このような工程は、動バランスを測定する作業において、作業効率の向上を妨げる要因になり得る。
従って、本実施形態のチャック3のように、ホイール100のボルト穴104の数より、爪部28の数を多くすることにより、爪部28が排水溝107に嵌る状態を回避できるので、爪部28と排水溝107との位置とを互いにずれていることを確認する作業や、爪部28と排水溝107との位置とを互いにずらす作業を排除することが可能になる。従って、動バランスを測定する作業において、作業効率を向上させることができる。
図8は、処理部の構成を示す機能ブロック図である。続いて、図8を参照しつつ、処理部7について説明する。処理部7は、圧電素子26A,26Bから入力される情報と、ロータリエンコーダ21から入力される情報と、を利用して動バランスに関する情報を得る。処理部7は、例えば、パーソナルコンピュータといったコンピュータである。処理部7は、動バランス演算部7a(第1の演算部)と、補正動バランス演算部7b(第3の演算部)と、仮想不釣り合い情報保持部7c(第2の演算部)とを有する。これらの動バランス演算部7a、補正動バランス演算部7b及び仮想不釣り合い情報保持部7cは、機能的構成要素であり、各部の具体的な処理内容を記載したプログラムがメモリ上に展開されてCPUによって実行されることにより実現される。
動バランス演算部7aは、圧電素子26A,26Bから入力される情報と、ロータリエンコーダ21から入力される情報と、を利用して動バランスに関する情報を算出する。ここで、図9を参照しつつ、動バランスについて詳細に説明する。
図9において、ホイール100の回転速度が一定である場合、圧電素子26Aに作用する力(F1)と、圧電素子26Bに作用する力(F2)と、は式(1)により示される。また、力(F1)及び力(F2)は、図10に示されるような波形により示される。図10において、グラフP1は力(F1)を示し、グラフP2は力(F2)を示す。
A1:圧電素子26Aに作用する動バランスによる力の大きさ
A2:圧電素子26Bに作用する動バランスによる力の大きさ
φ1:圧電素子26Aに作用する動バランスによる力の位相
φ2:圧電素子26Bに作用する動バランスによる力の位相
式(1)において、力の大きさ(A1)は、圧電素子26Aにより得られる。力の大きさ(A2)は、圧電素子26Bにより得られる。力の位相(φ1)は、圧電素子26Aとロータリエンコーダ21とにより得られる。力の位相(φ2)は、圧電素子26Bとロータリエンコーダ21とにより得られる。
圧電素子26A,26Bの感度特性と位相特性とを考慮すると、式(1)は、式(2)のように示される。
K1:圧電素子26Aの感度係数
K2:圧電素子26Bの感度係数
θ1:圧電素子26Aの位相係数
θ2:圧電素子26Bの位相係数
そして、動バランスの大きさは、下記式(3)により示される。下記式(3)において、右辺の数値は全て既知である。従って、動バランス(U1,U2)が算出される。
F11:圧電素子26Aに作用する力
F22:圧電素子26Bに作用する力
L1:アウターリムとインナーリムとの回転軸線A1に沿った距離
L2:インナーリムと圧電素子との回転軸線A1に沿った距離
L3:圧電素子間の回転軸線A1に沿った距離
R:回転軸線A1からバランスウエイト取り付け位置U1までの距離
なお、動バランス(U1,U2)は、周期的に変化するので、式(3)は式(4)のように示される。
B1:動バランスの大きさ
B2:動バランスの大きさ
Z1:位相角
Z2:位相角
ところで、近年、ホイールにセンサを取り付けて当該センサによりタイヤ圧をモニタリングするタイヤが普及しつつある。TPMS(Tire Pressure Monitoring System)と呼ばれるセンサは、タイヤ圧を測定する圧力計と圧力計のデータを送信する送信機と有し、バルブホールに取り付けられる追加部品である。このセンサは、ホイールメーカから出荷されるときには、まだホイールには取り付けられていない。一方、ホイールは、センサを取り付けたときに動バランスが仕様を満たすように製造されている。従って、センサを取り付けていないホイールは、所定の動バランスを必ず含んでしまう。そこで、ホイールメーカにおける出荷試験では、センサを模擬したダミーマスをホイールに取り付けて、動バランス試験を行う。そうすると、動バランス試験を行うごとに、ダミーマスの付け外しという作業が発生してしまう。また、ダミーマスの取付精度も動バランスの測定結果に影響を及ぼす。
そこで、本実施形態の処理部7は、ダミーマスの取付を行うことなく、ホイールの動バランス試験を行うための構成として、仮想不釣り合い情報保持部7cと、補正動バランス演算部7bとを有する。具体的には、仮想不釣り合い情報とは、例えば、TPMSの重量やホイール100における取付位置を示す寸法がある。これらのパラメータは、予め予備的な試験を行う、或いは数値計算を行うことにより取得される。
仮想不釣り合い情報保持部7cは、質量(m)を有するセンサが、半径(r)の位置に取り付けられたとしたときの動バランスに関する情報を保持する。補正動バランス演算部7bは、動バランス演算部7aの演算結果と、仮想不釣り合い情報保持部7cの仮想不釣り合い情報とを利用して、補正動バランスを演算する。補正動バランスとは、センサをホイール100に取り付けたと仮定した場合の動バランスである。
動バランスの結果の補正は、具体的には以下の手順に沿って実行される。
図11の(a)部は、補正前におけるホイール100のバランス特性を模式的に示す図である。アウターアンバランスN1、インナーアンバランスN2及び静バランスN3は、回転軸線A1と交差する基準水平軸A3からの角度位置K1(55°),K2(66°),K3(29.76°)と質量M1(35g),M2(15g),M3(30.15g)とにより示される。ここで、例えば角度位置K1(55°)におけるかっこ内の数値55°は具体的な数値の例示である。図11の(b)部は、回転軸線A1の方向からホイール100を平面視した図である。仮想不釣り合い情報保持部7cに保持されたTPMSに関する情報は、TPMSの半径RT(436mm)と質量MT(36g)と角度位置KT(118°)である。
次に、図11の(b)部に示されたTPMSに関する情報を補正する。具体的には、図11の(c)部に示されるように、半径RT(436mm)に配置されている質量MT(36g)であるTPMSが、アウターアンバランスN1が配置されている半径R1(496mm)に配置されたと仮定したときのTPMSの補正質量MTa(31.71g)を得る。
次に、図12の(a)部に示されるように、補正されたTPMSに関する情報と測定により得たアウターアンバランスN1に関する情報とを利用して、TPMSを取り付けたと仮定した時の仮想アウターアンバランスN5を算出する。この算出は、TPMSの補正質量MTa(31.71g)、角度位置KT(118°)、アウターアンバランスN1の質量M1(35g)、角度位置K1(55°)とを用いて、ベクトル内積を求めることによる。この算出によれば、仮想アウターアンバランスN5の質量M5(5.23°)と角度位置K5(26.27°)とが得られる。
次に、図12の(b)部に示されるように、仮想アウターアンバランスN5に関する情報とインナーアンバランスN2に関する情報とを利用して、仮想静アンバランスN6を算出する。仮想静アンバランスN6は、質量M6(19.4g)により示される。仮想静アンバランスN6に関する情報を用いて、ホイール100にTPMSを取り付けたと仮定したときのホイールバランスを評価する。
以下、回転体試験装置1の作用効果について説明する。
回転体試験装置1において、チャック3に保持されたアンバランスを有するホイール100がチャック3及び回転駆動部4によって回転すると、回転軸線A1に直交する方向(検出方向)に正弦波状の不釣り合い力が発生する。支持枠91A,91Bは、検出軸線ASの方向に沿う弾性を有する弾性支持部93を介して支持されている。従って、支持枠91A,91Bの検出軸線ASに沿った連結フレーム92に対する相対距離を変化させるような不釣り合い力が発生したとき、この不釣り合い力の大きさは圧電素子26A,26Bによって検出される。ここで、支持枠91A,91Bと連結フレーム92との間にわずかな隙間が存在すると、不感帯が生じ得る。そこで、計測部押圧部94は、圧電素子26A,26Bを支持枠91A,91Bに押圧する力を生じさせる。この力によれば、不釣り合い力が発生していない初期状態においても圧電素子26A,26Bを支持枠91A,91Bに確実に密着させることができる。従って、支持枠91A,91Bと連結フレーム92との間にわずかな相対距離の変化が生じたときにその変化を確実に捉えることができる。さらに、支持枠91A,91Bは、検出軸線ASの方向への変位が弾性支持部93によって許容されており、計測部押圧部94も支持枠91A,91Bの検出軸線ASの方向への変位を許容する。このため、初期位置を基準として往復移動する場合に、正の方向及び負の方向の両方の変位を捉えることができる。従って、回転試験の精度を高めることができる。
また、この回転体試験装置1は、被測定物であるホイール100がチャック3によって保持される。このチャック3は、ホイール100を保持する第1の形態とホイール100を取り付け及び取り外す第2の形態とを相互に切替可能である。第1の形態と第2の形態とを切り替える作業は、コーン33の動作によって行われる。コーン33の動作は、回転軸線A1に沿った往復移動という単純な動作であり、ホイール100を保持又は解放する作業においてボルト締めなどの作業を要することない。従って、ホイール100の保持と解放が容易に行えるので、効率よくホイール100の試験を行うことができる。
コーン33は、爪部28に当接する第1の当接面39を含む円錐台形状である。爪部28は、第1の当接面39と接触する第2の当接面42aを含み、第2の当接面42aは、回転軸線と交差する方向に延在し、回転軸線A1側の端部に設けられている。これらの構成によれば、回転軸線A1の方向に沿ったコーン33の動作を、回転軸線A1と交差する第2の方向D2に沿った爪部28の動作に確実に伝達することが可能になる。従って、ホイール100の保持及び解放を確実に行うことができる。
回転体試験装置1は、コンプレッサ8をさらに備える。回転駆動部4は、チャック3に連結され、圧力媒体を導く貫通穴17aが設けられたメインシャフト17を有する。コーン33の底部には、17aを介して圧力媒体が供給され、コーン33は、圧力媒体から提供される圧力によって回転軸線A1に沿う位置が制御される。この構成によれば、確実にコーン33を上下動させて、ホイール100の保持及び解放をさらに確実に行うことができる。
回転体試験装置1では、処理部7が、不釣り合い力に関する情報を利用して、動バランスに関する情報を得る動バランス演算部7aと、ホイール100にTPMSが取り付けられたと仮定したときに生じる仮想不釣り合いに関する情報を保持する仮想不釣り合い情報保持部7cと、動バランスに関する情報と仮想不釣り合いに関する情報とを利用して、TPMSが取り付けられていないホイール100の動バランスに関する情報を、TPMSが取り付けられたホイール100の動バランスに関する情報に補正する補正動バランス演算部7bと、を有する。この構成によれば、実際の使用状態ではTPMSが取り付けられて使用されるホイール100の特性を、当該TPMSを取り付けることなく得ることが可能になる。従って、試験時においてダミーマスといった一時的な部品をホイール100に取り付ける必要がない。これにより、作業工程が簡略化されるのでより効率よくホイール100の試験を行うことができる。
<第2実施形態>
第2実施形態に係る回転体試験装置について説明する。図13は、第2実施形態に係る回転体試験装置1Aを示す斜視図である。図13に示されるように、回転体試験装置1Aは、動バランスを測定する機能に加えて、ハブ径を測定するための機能をさらに有する点で、第1実施形態に係る回転体試験装置1と相違する。動バランスを測定するための構成は、第1実施形態に係る回転体試験装置1と同様であるため、詳細な説明は省略する。以下、ハブ径を測定するための構成について、詳細に説明する。
回転体試験装置1Aは、ハブ径測定ユニット51を有する。ハブ径測定ユニット51は、レーザ測距計52と、フレームユニット53と、駆動ユニット54と、を有する。駆動ユニット54によりフレームユニット53の一部が回動されて、フレームユニット53に取り付けられたレーザ測距計52が計測用のレーザSを出射し、コーン33(図14参照)の高さを測定する。具体的には、コーン33の高さとは、コーン33の頂面33a(図14参照)から、レーザ測距計52までの距離をいう。ハブ径測定ユニット51は、このコーン33の高さを利用してハブ径を算出する。
フレームユニット53は、支持フレーム56,57と、ポスト58と、アーム60と、を有する。支持フレーム56,57は、断面コ字状の部材であり、筐体2に固定される。支持フレーム56は、駆動ユニット54を所定の位置に保持する。支持フレーム57は、支持フレーム56よりも上方に配置されて、ポスト58及びアーム60を所定の位置に保持する。ポスト58は、支持フレーム57に対して回動可能に設けられる。ポスト58の上端には、アーム60が固定されている。アーム60の自由端側には、レーザ測距計52が取り付けられている。従って、ポスト58を回転させると、アーム60に取り付けられたレーザ測距計52の位置を所望の位置に移動させることができる。
駆動ユニット54は、モータ59と、プーリ61,62と、駆動ベルト63と、駆動シャフト64とを有する。モータ59は、その回転軸が回転軸線A1と平行となるように支持フレーム56上に取り付けられている。モータ59の回転軸には、プーリ61が取り付けられている。プーリ61は、駆動ベルト63によって別のプーリ62と連動している。別のプーリ62は、駆動シャフト64に取り付けられている。駆動シャフト64の回転軸線は、ポスト58の回転軸線と重複する。
このようなハブ径測定ユニット51によれば、モータ59の回転軸が所定角度だけ回転すると、プーリ61、駆動ベルト63、プーリ62、駆動シャフト64を通じて、ポスト58が所定角度に対応する角度だけ回転させられる。従って、モータ59の回転角度を制御することにより、レーザ測距計52の位置を制御することができる。この構成によれば、ホイール100をチャック3に取り付けるとき及び取り外すときにレーザ測距計52をホイール100の上方から逃すことができる。従って、ホイール100の脱着を容易に行うことができる。
図14は、ハブ径を測定する原理を説明するための図である。前述したように、チャック3は、第1の形態と第2の形態とをとり得る。第1の形態であるときのコーン33と爪部28とを一点鎖線で示している。一点鎖線で示されたコーン33の頂面33aとレーザ測距計52までの距離は距離G1である。この距離G1を式(5)に適用すると、爪部28が形成する仮想保持円の直径C1が得られる。次に、第2の形態であるときのコーン33と爪部28とを実線で示している。第2の形態は、チャック3がホイール100を保持した状態であるので、爪部28がハブ穴103の内周面に当接している。実線で示されたコーン33の頂面33aとレーザ測距計52までの距離は距離G2である。この距離G2を式(5)に適用すると、爪部28が形成する仮想保持円の直径C2が得られる。従って、この直径C2が、ハブ径RHに相当する。この距離G1,G2を直径C1,C2に換算する処理は、処理部7によって行われる。例えば、コーン33の頂角が90度である場合には、下記式(5)が成立する。
式(5)によれば、下記式(6)が得られる。
式(6)におけるC1をマスターリングなどに置き換えることにより、コーン33の頂面33aとレーザ測距計52までの距離の変化(G1−G2)と、マスターリングの直径C1とを式(6)に代入すればコーン33の頂面33aとレーザ測距計52までの距離G2であるときの直径C2が得られる。
なお、ハブ径RHは、第2の形態における距離G2を利用する算出方法のほかに、第1の形態から第2の形態に変化したときに生じた頂面33aの移動距離(G2−G1)を利用してもよい。また、ハブ径RHの算出には、回転軸線A1に沿ったコーン33の位置(或いは移動距離)を利用する。このコーン33の位置(或いは移動距離)を取得する構成は、レーザ測距計52とは別の手段を用いてもよい。
第2実施形態に係る回転体試験装置1Aによれば、ホイール100の動バランスに加えてホイール100のハブ径RHを測定することができる。従って、ホイール100をチャック3に取り付けた状態において、2個のホイール特性を得ることができる。従って、回転体試験装置1Aによれば、より効率よくホイールの特性試験を行うことができる。
<第3実施形態>
第3実施形態に係る回転体試験装置について説明する。図15は、第3実施形態に係る回転体試験装置1Bを示す斜視図である。図15に示されるように、回転体試験装置1Bは、動バランスを測定する機能と、ハブ径を測定するための機能とに加えて、ホイール100の振れを測定する機能をさらに有する点で、第1実施形態に係る回転体試験装置1及び第2実施形態に係る回転体試験装置1Aと相違する。動バランスを測定するための構成は、第1実施形態に係る回転体試験装置1と同様であるため、詳細な説明は省略する。また、ハブ径を測定するための構成は、第2実施形態に係る回転体試験装置1Aと同様であるため、詳細な説明は省略する。以下、ホイール100の振れを測定するための構成について、詳細に説明する。
回転体試験装置1Bは、第1の振れ測定ユニット71と、第2の振れ測定ユニット81とを有する。第1の振れ測定ユニット71は、ホイール100のアウターリムの振れを測定する。第2の振れ測定ユニット81は、ホイール100のインナーリムの振れを測定する。第1の振れ測定ユニット71と第2の振れ測定ユニット81とは、それぞれ2個のレーザ測距計を有し、回転軸線A1に沿った方向(ホイール100のリム幅方向)への振れと、回転軸線A1に直交する方向(ホイール100のリム径方向)への振れと、を測定する。
第1の振れ測定ユニット71は、横スライダー72と、縦スライダー73と、可動テーブル74と、アウター測距ユニット76と、を有する。横スライダー72は、アウター測距ユニット76を水平方向に移動させる。横スライダー72は、角柱状の部材であり、筐体2に固定される。横スライダー72には、縦スライダー73の下端部を水平方向に案内する水平ガイド部が設けられている。縦スライダー73は、アウター測距ユニット76を鉛直方向に移動させる。縦スライダー73は、角柱状の部材であり、長手方向が鉛直方向と一致するように配置される。縦スライダー73は下端部が水平ガイド部と係合し、水平方向に移動可能とされる。縦スライダー73の上端側には、可動テーブル74を鉛直方向に案内する鉛直ガイド部が設けられている。可動テーブル74は、アウター測距ユニット76を保持すると共に鉛直方向に移動させる。
図16の(a)部に示されるように、アウター測距ユニット76は、第1のレーザ測距計76aと第2のレーザ測距計76bと支持台76cとを有する。アウターリムの縦振れ(リム幅方向への振れ)を測定する第1のレーザ測距計76aは、レーザS1の出射方向が鉛直上向きとなるように支持台76cに固定されている。アウターリムの横振れ(リム径方向への振れ)を測定する第2のレーザ測距計76bは、レーザS2の出射方向が水平方向となるように支持台76cに固定されている。
再び図15に示されるように、第2の振れ測定ユニット81は、横スライダー82と、縦スライダー83と、可動テーブル84と、インナー測距ユニット86と、を有する。横スライダー82、縦スライダー83、可動テーブル84は、第1の振れ測定ユニット71の横スライダー72と、縦スライダー73と、可動テーブル74と、と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
図16の(b)部に示されるように、インナー測距ユニット86は、第3のレーザ測距計86aと第4のレーザ測距86bと支持台86cとを有する。インナーリムの縦振れ(リム幅方向への振れ)を測定する第3のレーザ測距計86aは、レーザS3の出射方向が鉛直下向きとなるように支持台86cに固定されている。インナーリムの横振れ(リム径方向への振れ)を測定する第4のレーザ測距計86bは、レーザS4の出射方向が水平方向となるように支持台86cに固定されている。
第3実施形態に係る回転体試験装置1Bによれば、ホイール100の動バランス及びホイール100のハブ径RHに加えて、ホイール100の振れを測定することができる。従って、ホイール100をチャック3に取り付けた状態において、3個のホイール特性を得ることができる。従って、回転体試験装置1Bによれば、さらに効率よくホイールの特性試験を行うことができる。
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
第1実施形態のチャック3は、6個の爪部28を有していたが、爪部の数は6個に限定されることはない。図17の(a)部に示されるように、爪部28Aの数は7個であってもよい。7個の爪部28Aを有するチャックによれば、6個のボルト穴104を有するホイール100Aを好適に保持できる。また、図17の(b)部に示されるように、爪部28の数は5個であってもよい。5個の爪部28Bを有するチャックによれば、4個のボルト穴104を有するホイール100Bを好適に保持できる。
上記実施形態では、被測定物として車両用のホイールを例示した。被測定物は車両用のホイールに限定されることはなく、例えばタイヤ実装後のホイールや、鉄道用車輪、航空機用車輪など高速回転する回転体であってもよい。
例えば、回転体試験装置は、動バランスを測定する構成と、ホイールの振れを測定する構成とを組み合わせた構成であってもよい。
また、コーン33を上下動させる構成は、圧縮空気を提供するコンプレッサ8に限定されない。例えば、コーン33を動作させる構成には、空気圧のほかに、水圧又は油圧を利用する構成を利用してもよい。
また、計測部押圧部は、第1実施形態における構成に限定されない。図19に示されるように、変形例に係る計測部押圧部94Sは、バネ99Sが支持枠91Aを挟んで圧電素子26Aの逆側に配置されている点で、第1実施形態に係る計測部押圧部94と相違する。以下、変形例に係る計測部押圧部94Sを有する回転体試験装置1Sについて詳細に説明する。
回転体試験装置1Sの回転駆動部4Sは、主軸ユニット13Sと、駆動ユニット14と、支持ユニット16とを有する。主軸ユニット13Sは、枠ユニット91と、連結フレーム92Sと、弾性支持部93と、計測部押圧部94Sとを有する。連結フレーム92Sは、ベース97と起立部98A、98Bとを有する。起立部98Bは、第2辺部91bに対面する。ここで起立部98Aが第1辺部91aに対面しているので、起立部98A、98Bは、支持枠91Aを挟むように設けられるとも言える。具体的には、検出軸線AS上には、起立部98A、第1辺部91a、メインシャフト17、第2辺部91b及び起立部98Bがこの順に配置される。別の起立部98Bにおいて、検出軸線ASと重複する部分には、ねじ穴98Sが設けられる。ねじ穴98Sには、ボルトB2がねじ込まれる。ボルトB2は、その先端が半球状である。ボルトB2を締めこむことにより、ボルトB2の先端位置を検出軸線ASに沿ってX軸方向に移動させることができる。ボルトB2の先端と第2辺部91bとの間には、バネ99Sが配置される。従って、バネ99Sは、メインシャフト17を挟んで圧電素子26Aの逆側に配置されるとも言える。このバネ99Sは、圧縮つるまきバネである。このような構成では、ボルトB2を締めこむことによりバネ99Sが圧縮されて、第2辺部91bがX軸方向に押圧される。従って、圧電素子26Aに支持枠91Aが押圧された状態にできる。従って、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。