以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
図1は、本発明の溶接ワイヤの往復駆動機構300(図2〜図5)が適用される溶接装置100の一例を示す全体構成図である。溶接装置100は、複数のアームからなる多関節型ロボットとして構成されたマニピュレータ110を備える。マニピュレータ110にはワイヤ送給装置111が搭載され、マニピュレータ110の手首部112には、溶接トーチ200が取り付けられている。ワイヤリール120に巻かれた溶加材としての溶接ワイヤW(図2参照)は、コンジットケーブル130に通され、ワイヤ送給装置111によって溶接トーチ200に送給される。ワイヤ送給装置111を経た溶接ワイヤWは、一線式パワーケーブル140にガイドされてその内部を送給される。
溶接トーチ200には、溶接用電源装置190から一線式パワーケーブル140を介して電力が供給され、この電力は、溶接トーチ200内部の後述する給電チップ233を介して溶接ワイヤWに供給される。溶接トーチ200にはまた、ガスボンベ150からのシールドガスが供給される。シールドガスの供給および停止、圧縮空気の供給および停止は、図示しない弁装置を切り替えて行う。
ティーチペンダント170からロボット制御装置180に指令信号が入力され、このロボット制御装置180からの信号がマニピュレータ110に入力されて、溶接トーチ200の先端位置が制御される。ロボット制御装置180はまた、溶接ワイヤWの送給、シールドガスの送給、およびエアブロー用の圧縮空気の送給をも制御する。ロボット制御装置180はさらに、溶接トーチ200に設けられた後述の溶接ワイヤの往復駆動機構300(図1では図示略)に対しても電力を供給する。
図2〜図5は、本発明に係る溶接ワイヤの往復駆動機構(以下、「往復駆動機構」という。)の第1実施形態を示しており、この実施形態では、溶接トーチ200に往復駆動機構300が組み込まれている。
図2に示す溶接トーチ200は、消耗電極ガスシールドアーク溶接を行うように構成されたものであり、マニピュレータ110の手首部112に連結される筒状のワイヤ導入部210と、このワイヤ導入部210に連続するハウジング部220と、このハウジング部220に連続するトーチ本体部230とを有する。トーチ本体部230は、その先端にワイヤ導出部240を有する。
ハウジング部220は、ワイヤ導入部210に連通する収容空間220aを有する。トーチ本体部230は、上記収容空間220aに連通する内部空間231aを有するトーチボイディ231およびこのトーチボディ231の先端に接続されるチップボディ232を有する。チップボディ232の先端(ワイヤ導出部240)には、導電性部材からなる給電チップ233が取り付けられている。
トーチ本体部230は、その中間部230aにおいて湾曲しており、ハウジング部220の収容空間220aに連通する入口部230bおよびワイヤ導出部240は、それぞれ互いに交差する軸心を有する。内部空間231aは、これら軸心を含む平面(図2において紙面の面内方向に拡がる平面P)内で湾曲するように形成されている。入口部230bの軸心は、ワイヤ導入部210の軸心と一致している。また、この内部空間231aは、平面Pに沿う幅が、トーチ本体部230の基端から先端に向かうにつれて次第に拡大し、最大となった後に次第に縮小するように形成されている。一方、この内部空間231aの平面Pと直交する方向の幅は、後記するワイヤガイド400の第2部分420の外径に対応してこのワイヤガイド400の横ぶれ(平面Pと直交する方向のぶれ)を防止できる程度としてある。すなわち、この内部空間231aの横断面は、図3に示すように平面P方向に長手軸を有し、平面Pと直交する方向にワイヤガイド400の外径と対応する短手軸を有する、たとえば長矩形状である。なお、トーチボディ231は、たとえば絶縁性の収縮チューブ(図示略)によって被覆されている。
ハウジング部220の収容空間220aないしトーチ本体部230の内部空間231aには、溶接トーチ200に送給される溶接ワイヤWを給電チップ233までガイドするためのワイヤガイド400が設けられている。このワイヤガイド400は、全体として筒状をしており、ハウジング部220内に大部分が位置する第1部分410と、トーチ本体部230内に大部分が位置する第2部分420とを有する。第1部分410は、剛性を有して直線状に延び、たとえば、金属パイプにより構成される。第1部分410の入口部411は、拡径された上、ワイヤ導入部210内に部分的に進入している。第2部分420は、可撓性を有してトーチ本体部230の内部空間231a内を湾曲状に延びて先端421がワイヤ導出部240に固定されている。この第2部分420は、たとえば、金属線材をコイル状に巻回して構成されたコイルライナを用いることができる。溶接トーチ200に送給されてワイヤ導入部210から導入される一連の溶接ワイヤWは、ワイヤガイド400に通挿、案内され、ワイヤ導出部240、給電チップ233を経た上で外部に導出される。
ハウジング部220の収容空間220aには、ワイヤガイド400の第1部分410を軸線方向に往復運動させることにより、溶接ワイヤWに送給方向の往復運動を付与するための往復駆動機構300が設けられる。
この往復駆動機構300は、ワイヤガイド400の第1部分410を保持してその軸方向に往復運動させられる第1の運動体310と、この第1の運動体310の往復運動と逆方向に往復運動させられる第2の運動体320と、を備える。
本実施形態において、第1の運動体310は、ワイヤガイド400の第1部分410を先端に保持し、当該第1部分410の軸線に対して側方(図2における下方)に離間した位置を揺動中心311とし、当該第1部分410の軸線を含む平面内(図2における紙面に沿った平面内)で揺動可能な第1の揺動アーム312によって構成されている。また、第2の運動体320は、第1の揺動アーム312と平行をなして延びる第2の揺動アーム322によって構成されている。第2の揺動アーム322は、第1の揺動アーム312の揺動中心311に対して第1部分410の軸線方向(図2における左右方向)に離間した位置を揺動中心321とし、第1部分410の軸線を含む平面内で揺動可能である。なお、本実施形態において、第2の揺動アーム322には、重り325が設けられている。この重り325については、第2の揺動アーム322と一体的に形成したり、或いは第2の揺動アーム322に対して重量が異なる複数種のものを着脱可能に取り付ける、などの構成を採用することができる。重り325の意義については後述する。
第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322の駆動は、第1の揺動アーム312と第2の揺動アーム322の中間位置において出力軸331が配置されたモータ330(図4、図5を参照)を駆動源として行われる。出力軸331に対し、その軸心Oxに対する第1の偏心位置O1において第1のクランク部材340の一端が回転可能に連結されている。第1のクランク部材340の他端は、第1の揺動アーム312の中間部に対して回転可能に連結されている。また、出力軸331に対し、当該出力軸331の軸心Oxを挟んで第1の偏心位置O1と反対側に同距離偏心する第2の偏心位置O2において、第2のクランク部材350の一端が回転可能に連結されている。第2のクランク部材350の他端は、第2の揺動アーム322の中間部に対して回転可能に連結されている。以下、さらに詳細に説明する。
図4、図5に示すように、第1のクランク部材340および第2のクランク部材350は、連結部材360を介して出力軸331に対して連結されている。連結部材360は、モータ330の出力軸331に外嵌されて当該出力軸331に固定されている。連結部材360は、第1の偏心軸部361および第2の偏心軸部362を有する。第1の偏心軸部361および第2の偏心軸部362は、出力軸331の軸心Ox方向において互いに異なる位置に形成されている。
第1の偏心軸部361は、第1の偏心位置O1を中心とする横断面円形の外周面を有し、当該外周面にベアリング370の内輪371が圧入保持されている。第1のクランク部材340は、一端側筒部341および他端側筒部342を有し、ベアリング370の外輪372に対して一端側筒部341が外嵌されている。また、他端側筒部342には、第1の揺動アーム312の中間位置から出力軸331の軸心Oxと平行に、かつ軸心Oxが延びる方向において第1の偏心軸部361寄りに延びるピン313が、僅かな隙間を介して嵌挿されている(図4参照)。このような構成により、第1のクランク部材340の一端は、出力軸331と一体的な連結部材360に対し、出力軸331の軸心Ox(中心)から変位した第1の偏心位置O1を中心として回動可能に連結されている(図2、図5参照)。また、第1のクランク部材340の他端は、第1の揺動アーム312の中間部に対して回動可能に連結されている。
第2の偏心軸部362は、第2の偏心位置O2を中心とする横断面円形の外周面を有し、当該外周面にベアリング380の内輪381が圧入保持されている。第2のクランク部材350は、一端側筒部351および他端側筒部352を有し、ベアリング380の外輪382に対して一端側筒部351が外嵌されている。また、他端側筒部352には、第2の揺動アーム322の中間位置から出力軸331の軸心Oxと平行に、かつ軸心Oxが延びる方向において第2の偏心軸部362寄りに延びるピン323が、僅かな隙間を介して嵌挿されている(図4参照)。このような構成により、第2のクランク部材350の一端は、連結部材360に対し、出力軸331の軸心Ox(中心)を挟んで第1の偏心位置O1と反対側に当該軸心Oxから変位した第2の偏心位置O2を中心として回動可能に連結されている(図2、図5参照)。また、第2のクランク部材350の他端は、第2の揺動アーム322の中間部に対して回動可能に連結される。
図4に示されるように、第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322は、出力軸331の軸心Oxを挟んで反対側に位置しており、軸心Oxの延びる方向においてモータ330からの距離が等しい位置にある。詳細は後述するが、かかる構成によって、モータ330が回転駆動すると、第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322は、ワイヤガイド400の第1部分410の軸心を含む平面に沿って、相互に反対方向に揺動する。
図2に示すように、第1の揺動アーム312の先端にある円筒部314は、ワイヤガイド400の第1部分410一端にある大径部412を、出力軸331の軸心Oxと平行な軸心周りに回動可能な状態で保持している。第2の揺動アーム322の先端にある円筒部324は、その内径が第1部分410の外径よりも大とされており、当該円筒部324に第1部分410が挿通されている。これにより、円筒部324(第2の揺動アーム322)は第1部分410(ワイヤガイド400)をその軸線方向にスライド可能に保持している。なお、第1部分410の外周において、たとえば円筒部324との摺動抵抗を低減するための樹脂製チューブ(図示略)を装着してもよい。
次に、往復駆動機構300の動作について説明する。
モータ330の出力軸331が回転駆動すると、連結部材360が回転し、この連結部材360に対して第1のクランク部材340および第2のクランク部材350が回動する。より詳細には、出力軸331が図2に示す状態から反時計周り(図中矢印N1方向)に90°回転すると、図6に示す状態となる。図6に示されるように、第1の偏心位置O1および第1のクランク部材340は、最も右側に変位する。第1のクランク部材340の変位に伴い、この第1のクランク部材340の他端に対して中間部が回動可能に連結された第1の揺動アーム312は、揺動中心311周りに揺動する。図6に示された第1の揺動アーム312は、その先端の円筒部314(図中上方端)が最も右側に変位した状態である。
このとき、第1の揺動アーム312の先端の円筒部314に保持された、ワイヤガイド400の第1部分410(大径部412)は、最も右側に移動する。ここで、可撓性を有する第2部分420は、その先端421がワイヤ導出部240に固定されているため、第1部分410の右方への移動に伴い、内部空間231aにおいて矢印N2に示すように湾曲形状の凸側に変位する。そうすると、ワイヤガイド400(第2部分420)によってガイドされた溶接ワイヤWについては、トーチ本体部230内における経路長さが図2に示す場合よりも長くて最大となり、溶接ワイヤWが引き戻される。
一方、出力軸331の軸心Oxを挟んで第1の偏心位置O1と反対側に同距離偏心する第2の偏心位置O2、および第2のクランク部材350は、図6に示されるように、最も左側に変位する。第2のクランク部材350の変位に伴い、この第2のクランク部材350の他端に対して中間部が回動可能に連結された第2の揺動アーム322は、揺動中心321周りに揺動する。図6に示された第2の揺動アーム322は、その先端の円筒部324(図中上方端)が最も左側に変位した状態である。
このように、図2に示す状態から図6に示す状態まで出力軸331が90°回転すると、第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322は、これらの先端どうし(円筒部314および円筒部324)が遠ざかるように、相互に反対方向に揺動する。なお、第1のクランク部材340が第1の揺動アーム312の中間部に連結されているため、第1の揺動アーム312の先端(円筒部314)の変位量は、当該中間部の変位量の約2倍である。
次いで、図6に示す状態から出力軸331が反時計周りにさらに180°回転すると、図7に示す状態となる。このとき、第1の偏心位置O1および第1のクランク部材340は、最も左側に変位する。第1のクランク部材340の変位に伴い、この第1のクランク部材340の他端に対して中間部が回動可能に連結された第1の揺動アーム312は、揺動中心311周りに揺動する。図7に示された第1の揺動アーム312は、その先端の円筒部314(図中上方端)が最も左側に変位した状態である。
ここで、第1の揺動アーム312の先端の円筒部314に保持された第1部分410(大径部412)は、最も左側に移動する。可撓性を有する第2部分420は、その先端421がワイヤ導出部240に固定されているため、第1部分410の左方への移動に伴い、内部空間231aにおいて矢印N3に示すように湾曲形状の凹側に変位する。そうすると、ワイヤガイド400によってガイドされた溶接ワイヤWについては、トーチ本体部230内における経路長さが最小となり、溶接ワイヤWが送り出される。
一方、出力軸331の軸心Oxを挟んで第1の偏心位置O1と反対側に同距離偏心する第2の偏心位置O2、および第2のクランク部材350は、図7に示されるように、最も右側に変位する。第2のクランク部材350の変位に伴い、この第2のクランク部材350の他端に対して中間部が回動可能に連結された第2の揺動アーム322は、揺動中心321周りに揺動する。図7に示された第2の揺動アーム322は、その先端の円筒部324(図中上方端)が最も右側に変位した状態である。
このように、図6に示す状態から図7に示す状態まで出力軸331が180°回転すると、第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322は、これらの先端どうし(円筒部314および円筒部324)が近づくように、相互に反対方向に揺動する。
そして、図2、図6、図7を参照すると理解されるように、モータ330が回転駆動すると、第1の揺動アーム312は、揺動中心311周りに所定の角度範囲で往復揺動する。第1の揺動アーム312の先端の円筒部314に保持された第1部分410(大径部412)は、所定の長さ範囲で往復運動させられ、トーチ本体部230内の溶接ワイヤWについては、引き戻しと送り出しとが交互に繰り返される。また、第2の揺動アーム322については、常に第1の揺動アーム312の揺動方向と反対方向に往復揺動させられる。ここで、モータ330の出力軸331が1回転すると、第1の揺動アーム312は1往復揺動し、溶接ワイヤWについては、1回の往復運動(引き戻し動作と送り出し動作を1回ずつ)を行う。たとえば、モータ330の回転数が6,000rpm程度で一定に維持されると、溶接ワイヤWの動作の周波数は100Hz程度となる。
次に、上記した実施形態に係る溶接装置100および往復駆動機構300の作用について説明する。
溶接作業時において、往復駆動機構300によって第1の揺動アーム312の先端の円筒部314に保持されたワイヤガイド400の第1部分410(大径部412)を軸方向に往復運動させることにより、溶接トーチ200の先端(ワイヤ導出部240付近)において、溶接ワイヤWを軸方向に沿って高速で往復移動させることができる。モータ330は一方向のみに回転させて使用するので、たとえばワイヤ送給装置111の駆動モータについて正転ないし逆転の切り換えを行うことなく、溶接トーチ200先端における溶接ワイヤWの送り出しと引き戻しを高速で繰り返すことができる。このことは、溶接時における溶接ワイヤW先端と母材との間に発生する短絡現象を回避するのに適しており、溶接品質を高めるうえで好ましい。
ワイヤガイド400の第2部分420が可撓性を有しているため、第1部分410の軸方向への往復動により、ワイヤガイド400は、湾曲したままその湾曲状態が所定範囲で変化する。これにより、ワイヤガイド400によってガイドされた溶接ワイヤWについては、変形が抑えられてワイヤガイド400との間でスムーズな相対移動を可能にしつつ、トーチ本体部230内の経路長さを変えることができるので、溶接ワイヤWの送給を円滑に行わせることができる。
往復駆動機構300は、第1の揺動アーム312(第1の運動体310)の往復運動と逆方向に往復運動させられる第2の揺動アーム322(第2の運動体320)を備えている。このような構成によれば、第1の揺動アーム312が100Hz以上の動作周波数で往復運動することによって生じる慣性力が、第1の揺動アーム312と逆方向の動きをする第2の揺動アーム322によって打ち消される。したがって、第1の揺動アーム312の往復運動時の慣性力に起因した振動発生が抑制される。溶接時における振動の抑制は、溶接品質を高めるうえで好ましい。
本実施形態において、第2の揺動アーム322には、重り325が設けられている。これにより、第1の揺動アーム312に保持されて往復運動させられるワイヤガイド400との重量のバランスをとることができ、振動発生を効率よく抑制することが可能となる。
第1のクランク部材340は、その他端が第1の揺動アーム312の中間部に対して回動可能に連結されている。このような構成によれば、第1の揺動アーム312が往復揺動する際、当該第1の揺動アーム312の先端の円筒部314の変位量は、中間部の変位量の約2倍となるため、第1の揺動アーム312の先端の円筒部314に保持された第1部分410(ワイヤガイド400)の軸方向への往復動のストロークを大きくするのに適する。
第2の揺動アーム322(円筒部324)は、第1部分410(ワイヤガイド400)をその軸線方向にスライド可能に保持している。このような構成によれば、往復動させられる第1部分410が第2の揺動アーム322にガイドされてほぼ同じ姿勢をとり続けるので、不当な振動の発生を抑制することができる。
図8〜図14は、本発明に係る溶接ワイヤの往復駆動機構の他の実施形態を示している。なお、図8以降の図においては、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
図8、図9は、本発明の第2実施形態に係る往復駆動機構を示している。本実施形態の往復駆動機構300Aは、第2の揺動アーム322の先端にワイヤガイド500(追加のワイヤガイド)が保持され、かかる点において上記の往復駆動機構300と大きく異なっており、これに伴い種々の変更が施されている。なお、往復駆動機構300Aにおいては、図2に示した往復駆動機構300の重り325は具備していない。
ワイヤガイド500は、ワイヤガイド400と実質的に同じ構成とされており、剛性を有して直線状に延びる第1部分510と、可撓性を有する第2部分520とを有する。本実施形態において、第1部分410は、第1の揺動アーム312に保持される一端部(大径部412)から他端部の開口までの寸法が上記の往復駆動機構300の場合と比べて小さい。ワイヤガイド500の第1部分510もワイヤガイド400の第1部分410と同様の構成であり、第1部分510の開口端は、第1部分410開口端と対向している。第1部分410,510の相対向する開口端部は、ハウジング部220に設けられたガイドパイプ221内に挿入されている。一連に延びる溶接ワイヤWは、ワイヤガイド400およびワイヤガイド500それぞれに挿通している。
第2の揺動アーム322の先端によって第1部分510を保持する構造は、第1の揺動アーム312よる第1部分410の保持構造と同様である。即ち、第2の揺動アーム322の先端にある円筒部326は、第1部分510一端にある大径部512を、出力軸331の軸心Oxと平行な軸心周りに回動可能な状態で保持している。
ワイヤ導入部210には、ワイヤガイド500の第2部分520を収容するための収容室600が接続されている。収容室600は、トーチボディ231とほぼ同じ形状とされており、図8において出力軸331の軸心Oxを通って上下に延びる対称軸に対して、トーチボディ231と線対称となるように配置されている。収容室600は、ハウジング部220の収容空間220aに連通する内部空間600aをする。内部空間600aは、トーチボディ231の内部空間231aと同様に湾曲状とされており、平面Pに沿う幅が、収容室600の基端から先端に向かうにつれて次第に拡大し、最大となった後に次第に縮小するように形成されている。なお、図示は省略するが、ワイヤガイド500の第2部分520の先端は、収容室600の先端部に固定されている。
本実施形態の往復駆動機構300Aの駆動時には、第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322は、上記した往復駆動機構300の場合と同様に相互に反対方向に往復揺動する。図9は、図8に示す状態からモータ330の出力軸331が反時計周り(図中矢印N1方向)に90°回転した状態を示す。このとき、第2の揺動アーム322の先端の円筒部326に保持された、ワイヤガイド500の第1部分510(大径部512)は、最も左側に移動する。ここで、可撓性を有する第2部分520は、その先端が収容室600の先端部に固定されているため、第1部分510の左方への移動に伴い、内部空間600aにおいて矢印N4に示すように湾曲形状の凸側に変位する。
図8、図9を参照すると理解されるように、本実施形態において、2つのワイヤガイド400,500によってガイドされた溶接ワイヤWについては、トーチ本体部230内および収容室600内における経路長さが同調して長くなり、或いは短くなる。したがって、溶接ワイヤWの送給方向に沿った往復運動(引き戻しおよび送り出し)のストロークは、上記往復駆動機構300の場合の約2倍となって、溶接ワイヤWをより大きなストロークをもって往復運動させることができる。
本実施形態において、第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322の先端(円筒部314および円筒部326)には、ワイヤガイド400,500が各別に保持されている。また、第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322は、相互に反対方向に往復揺動する。このような構成によれば、第1の揺動アーム312に保持されて往復運動させられるワイヤガイド400と、第2の揺動アーム322に保持されて往復運動するワイヤガイド500との重量バランスが最適な状態であり、駆動時の振動発生をより効率よく抑制することができる。
図10、図11は、本発明の第3実施形態に係る往復駆動機構を示している。本実施形態の往復駆動機構300Bは、モータ330の駆動力を第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322に伝達する機構としてカム機構を採用しており、かかる点において上記実施形態と大きく異なっている。
本実施形態において、図10に示すように、モータ330の出力軸331には、カム部材390が外嵌固定されている。第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322には、カム部材390に係合する第1のカムフォロア317および第2のカムフォロア327が設けられている。第1のカムフォロア317および第2のカムフォロア327は、第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322のそれぞれの中間部において、出力軸331の軸心Oxと平行な軸線周りに回転可能に設けられている。
本実施形態では、カム部材390の外周と第1のカムフォロア317および第2のカムフォロア327のそれぞれの外周とが当接している。また、第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322の先端には、弾性体としての引張コイルばね391が設けられている。引張コイルばね391は、第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322の先端どうしが互いに近接する方向への力を付与する。
カム部材390は、第1のカムフォロア317および第2のカムフォロア327との係合部位について、頂点の数が偶数の点対称形状とされている。本実施形態では、カム部材390は、頂点の数が2つである楕円カムとして構成されており、外周が楕円形状とされている。
ここで、カム部材390の頂点とは、係合部位において、出力軸331の軸心Ox(カム部材390の中心軸線)からの距離が周囲よりも大きい位置である。カム部材390が図10に示した楕円カムの場合、当該カム部材390の頂点は、長軸と係合部位(外周)との交点2箇所である。
図10に示すように、カム部材390における第1のカムフォロア317の係合位置P1と第2のカムフォロア327の係合位置P2とは、出力軸331の軸心Ox(カム部材390の中心軸線)を挟んで反対側にあり、軸心Oxから同距離離れた位置にある。
図2を参照して上記した往復駆動機構300と同様に、第1の揺動アーム312の先端にある円筒部314は、ワイヤガイド400の第1部分410一端にある大径部412を、出力軸331の軸心Oxと平行な軸心周りに回動可能な状態で保持している。第2の揺動アーム322の先端にある円筒部324は、その内径が第1部分410の外径よりも大とされており、当該円筒部324に第1部分410が挿通されている。これにより、円筒部324(第2の揺動アーム322)は第1部分410(ワイヤガイド400)をその軸線方向にスライド可能に保持している。
本実施形態の往復駆動機構300Bにおいて、モータ330の出力軸331が回転駆動すると、カム部材390が回転し、第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322が揺動する。より詳細には、まず、図10に示す状態において、カム部材390における第1のカムフォロア317の係合位置P1および第2のカムフォロア317の係合位置P2は、それぞれ出力軸331の軸心Oxから最も近接する位置である。出力軸331が図10に示す状態から反時計周り(図中矢印N1方向)に90°回転すると、図11に示す状態となる。図11に示されるように、カム部材390における第1のカムフォロア317の係合位置P1は、出力軸331の軸心Oxから最も遠ざかる位置(図中右側)に変位し、カム部材390の頂点と一致する。当該係合位置P1の変位に伴い、中間部に第1のカムフォロア317が設けられた第1の揺動アーム312は、揺動中心311周りに揺動する。図11に示された第1の揺動アーム312は、その先端の円筒部314(図中上方端)が最も右側に変位した状態である。
このとき、第1の揺動アーム312の先端の円筒部314に保持された、ワイヤガイド400の第1部分410(大径部412)は、最も右側に移動する。ここで、可撓性を有する第2部分420は、その先端421がワイヤ導出部240に固定されているため、第1部分410の右方への移動に伴い、内部空間231aにおいて矢印N2に示すように湾曲形状の凸側に変位する。そうすると、ワイヤガイド400(第2部分420)によってガイドされた溶接ワイヤWについては、トーチ本体部230内における経路長さが図10に示す場合よりも長くて最大となり、溶接ワイヤWが引き戻される。
一方、出力軸331の軸心Oxを挟んでカム部材390における係合位置P1と反対側に位置する、第2のカムフォロア327の係合位置P2は、図11に示されるように、出力軸331の軸心Oxから最も遠ざかる位置(図中左側)に変位し、カム部材390の頂点と一致する。当該係合位置P2の変位に伴い、中間部に第2のカムフォロア327が設けられた第2の揺動アーム322は、揺動中心321周りに揺動する。図11に示された第2の揺動アーム322は、その先端の円筒部324(図中上方端)が最も左側に変位した状態である。
このように、図10に示す状態から図11に示す状態まで出力軸331が90°回転すると、第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322は、これらの先端どうしが遠ざかるように、相互に反対方向に揺動する。なお、第1のカムフォロア317が第1の揺動アーム312の中間部に連結されているため、第1の揺動アーム312の先端(円筒部314)の変位量は、当該中間部の変位量の約2倍である。
次いで、図11に示す状態から出力軸331が反時計周りにさらに90°回転すると、図10に示す状態に戻る。このとき、カム部材390における係合位置P1および係合位置P2は、それぞれ出力軸331の軸心Oxから最も近接する位置に変位する。当該係合位置P1の変位に伴い、中間部に第1のカムフォロア317が設けられた第1の揺動アーム312は、揺動中心311周りに揺動する。図10に示された第1の揺動アーム312は、その先端の円筒部314(図中上方端)が最も左側に変位した状態である。
ここで、第1の揺動アーム312の先端の円筒部314に保持された第1部分410(大径部412)は、最も左側に移動する。可撓性を有する第2部分420は、その先端421がワイヤ導出部240に固定されているため、第1部分410の左方への移動に伴い、内部空間231aにおいて湾曲形状の凹側に変位する。そうすると、ワイヤガイド400によってガイドされた溶接ワイヤWについては、トーチ本体部230内における経路長さが最小となり、溶接ワイヤWが送り出される。
一方、出力軸331の軸心Oxを挟んでカム部材390における係合位置P1と反対側に位置する係合位置P2は、図10に示されるように、出力軸331の軸心Oxから最も近接する位置(図中右側)に変位する。当該係合位置P2の変位に伴い、中間部に第2のカムフォロア327が設けられた第2の揺動アーム322は、揺動中心321周りに揺動する。図10に示された第2の揺動アーム322は、その先端の円筒部324(図中上方端)が最も右側に変位した状態である。
このように、図11に示す状態から図10に示す状態まで出力軸331が90°回転すると、第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322は、これらの先端どうし(円筒部314および円筒部324)が近づくように、相互に反対方向に揺動する。
なお、第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322には、引張コイルばね391によって先端どうしが互いに近接する方向の力が作用している。このため、カム部材390が回転する際に当該カム部材390がどのような姿勢であっても、第1のカムフォロア317および第2のカムフォロア327は、カム部材390に的確に当接する。
そして、図10、図11を参照すると理解されるように、モータ330が回転駆動すると、第1の揺動アーム312は、揺動中心311周りに所定の角度範囲で往復揺動する。第1の揺動アーム312の先端の円筒部314に保持された第1部分410(大径部412)は、所定の長さ範囲で往復運動させられ、トーチ本体部230内の溶接ワイヤWについては、引き戻しと送り出しとが交互に繰り返される。また、第2の揺動アーム322については、常に第1の揺動アーム312の揺動方向と反対方向に往復揺動させられる。本実施形態では、カム部材390は2つの頂点を有する。これにより、モータ330の出力軸331が1回転すると、第1の揺動アーム312は2往復揺動し、溶接ワイヤWについては、2回の往復運動(引き戻し動作と送り出し動作を2回ずつ)を行う。たとえば、モータ330の回転数が6,000rpm程度で一定に維持されると、溶接ワイヤWの動作の周波数は200Hz程度となる。
次に、上記した実施形態に係る溶接装置100および往復駆動機構300Bの作用について説明する。
溶接作業時において、往復駆動機構300Bによって第1の揺動アーム312の先端の円筒部314に保持されたワイヤガイド400の第1部分410(大径部412)を軸方向に往復運動させることにより、溶接トーチ200の先端(ワイヤ導出部240付近)において、溶接ワイヤWを軸方向に沿って高速で往復移動させることができる。モータ330は一方向のみに回転させて使用するので、たとえばワイヤ送給装置111の駆動モータについて正転ないし逆転の切り換えを行うことなく、溶接トーチ200先端における溶接ワイヤWの送り出しと引き戻しを高速で繰り返すことができる。このことは、溶接時における溶接ワイヤW先端と母材との間に発生する短絡現象を回避するのに適しており、溶接品質を高めるうえで好ましい。
本実施形態では、上記のようにカム部材390は軸心Oxを挟んで反対側に位置する2つの頂点を有し、モータ330の出力軸331が1回転すると、溶接ワイヤWは2回の往復動作を行う。このような構成によれば、溶接ワイヤWについて、より高速で往復運動させることが可能となる。
ワイヤガイド400の第2部分420が可撓性を有しているため、第1部分410の軸方向への往復動により、ワイヤガイド400は、湾曲したままその湾曲状態が所定範囲で変化する。これにより、ワイヤガイド400によってガイドされた溶接ワイヤWについては、変形が抑えられてワイヤガイド400との間でスムーズな相対移動を可能にしつつ、トーチ本体部230内の経路長さを変えることができるので、溶接ワイヤWの送給を円滑に行わせることができる。
往復駆動機構300Bは、第1の揺動アーム312(第1の運動体310)の往復運動と逆方向に往復運動させられる第2の揺動アーム322(第2の運動体320)を備えている。このような構成によれば、第1の揺動アーム312が200Hz以上の動作周波数で往復運動することによって生じる慣性力が、第1の揺動アーム312と逆方向の動きをする第2の揺動アーム322によって打ち消される。したがって、第1の揺動アーム312の往復運動時の慣性力に起因した振動発生が抑制される。溶接時における振動の抑制は、溶接品質を高めるうえで好ましい。
本実施形態において、第2の揺動アーム322には、重り325が設けられている。これにより、第1の揺動アーム312に保持されて往復運動させられるワイヤガイド400との重量のバランスをとることができ、振動発生を効率よく抑制することが可能となる。
カム部材390は、第1の揺動アーム312の中間部に設けられた第1のカムフォロア317と係合している。このような構成によれば、第1の揺動アーム312が往復揺動する際、当該第1の揺動アーム312の先端の円筒部314の変位量は、中間部の変位量の約2倍となるため、第1の揺動アーム312の先端の円筒部314に保持された第1部分410(ワイヤガイド400)の軸方向への往復動のストロークを大きくするのに適する。
第2の揺動アーム322(円筒部324)は、第1部分410(ワイヤガイド400)をその軸線方向にスライド可能に保持している。このような構成によれば、往復動させられる第1部分410が第2の揺動アーム322にガイドされてほぼ同じ姿勢をとり続けるので、不当な振動の発生を抑制することができる。
図12は、本発明の第3実施形態に係る往復駆動機構の変形例を示している。同図に示した往復駆動機構300B'は、カム機構を採用する点において上記の往復駆動機構300Bと同様であるが、カム部材390と第1および第2のカムフォロア317,327の係合に関する構成が上記した往復駆動機構300Bと異なっている。
往復駆動機構300B’において、カム部材390は、軸心Ox周りに形成された環状の係合溝392を有する。係合溝392は、楕円形状をなしている。第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322には、中間部から軸心Oxに向かって延びる支持片318,328が設けられている。支持片318,328の先端に第1のカムフォロア317および第2のカムフォロア327が取り付けられ、当該第1および第2のカムフォロア317,327は係合溝392に嵌挿されている。本実形態においては、係合溝392が第1のカムフォロア317および第2のカムフォロア327との係合部位に該当し、当該係合部位において、軸心Oxを挟んで反対側に位置する2つの頂点を有する。なお、往復駆動機構300B’においては、図10に示した往復駆動機構300Bの引張コイルばね391は具備していない。
詳細な図示説明は省略するが、図12に示した往復駆動機構300B’の構成において、モータ330が回転駆動すると、第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322は、相互に反対方向に往復揺動する。また、カム部材390が2つの頂点を有することから、モータ330の出力軸331が1回転すると、溶接ワイヤWは2回の往復動作を行う。往復駆動機構300B’によれば、図10、図11を参照して上記した往復駆動機構300Bと同様の効果を奏する。
図13、図14は、本発明の第4実施形態に係る往復駆動機構を示している。本実施形態の往復駆動機構300Cは、第2の揺動アーム322の先端にワイヤガイド500(追加のワイヤガイド)が保持され、かかる点において上記の往復駆動機構300Bと大きく異なっており、これに伴い種々の変更が施されている。なお、往復駆動機構300Cにおいては、図10に示した往復駆動機構300Bの重り325は具備していない。
ワイヤガイド500は、ワイヤガイド400と実質的に同じ構成とされており、剛性を有して直線状に延びる第1部分510と、可撓性を有する第2部分520とを有する。本実施形態において、第1部分410は、第1の揺動アーム312に保持される一端部(大径部412)から他端部の開口までの寸法が上記の往復駆動機構300Bの場合と比べて小さい。ワイヤガイド500の第1部分510もワイヤガイド400の第1部分410と同様の構成であり、第1部分510の開口端は、第1部分410開口端と対向している。第1部分410,510の相対向する開口端部は、ハウジング部220に設けられたガイドパイプ221内に挿入されている。一連に延びる溶接ワイヤWは、ワイヤガイド400およびワイヤガイド500それぞれに挿通している。
第2の揺動アーム322の先端によって第1部分510を保持する構造は、第1の揺動アーム312よる第1部分410の保持構造と同様である。即ち、第2の揺動アーム322の先端にある円筒部326は、第1部分510一端にある大径部512を、出力軸331の軸心Oxと平行な軸心周りに回動可能な状態で保持している。
ワイヤ導入部210には、ワイヤガイド500の第2部分520を収容するための収容室600が接続されている。収容室600は、トーチボディ231とほぼ同じ形状とされており、図13において出力軸331の軸心Oxを通って上下に延びる対称軸に対して、トーチボディ231と線対称となるように配置されている。収容室600は、ハウジング部220の収容空間220aに連通する内部空間600aをする。内部空間600aは、トーチボディ231の内部空間231aと同様に湾曲状とされており、平面Pに沿う幅が、収容室600の基端から先端に向かうにつれて次第に拡大し、最大となった後に次第に縮小するように形成されている。なお、図示は省略するが、ワイヤガイド500の第2部分520の先端は、収容室600の先端部に固定されている。
本実施形態の往復駆動機構300Cの駆動時には、第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322は、上記した往復駆動機構300Bの場合と同様に相互に反対方向に往復揺動する。図14は、図13に示す状態からモータ330の出力軸331が反時計周り(図中矢印N1方向)に90°回転した状態を示す。このとき、第2の揺動アーム322の先端の円筒部326に保持された、ワイヤガイド500の第1部分510(大径部512)は、最も左側に移動する。ここで、可撓性を有する第2部分520は、その先端が収容室600の先端部に固定されているため、第1部分510の左方への移動に伴い、内部空間600aにおいて矢印N4に示すように湾曲形状の凸側に変位する。
図13、図14を参照すると理解されるように、本実施形態において、2つのワイヤガイド400,500によってガイドされた溶接ワイヤWについては、トーチ本体部230内および収容室600内における経路長さが同調して長くなり、或いは短くなる。したがって、溶接ワイヤWの送給方向に沿った往復運動(引き戻しおよび送り出し)のストロークは、上記往復駆動機構300Bの場合の約2倍となって、溶接ワイヤWをより大きなストロークをもって往復運動させることができる。
本実施形態において、第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322の先端(円筒部314および円筒部326)には、ワイヤガイド400,500が各別に保持されている。また、第1の揺動アーム312および第2の揺動アーム322は、相互に反対方向に往復揺動する。このような構成によれば、第1の揺動アーム312に保持されて往復運動させられるワイヤガイド400と、第2の揺動アーム322に保持されて往復運動するワイヤガイド500との重量バランスが最適な状態であり、駆動時の振動発生をより効率よく抑制することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に包摂される。
上記実施形態において、第1および第2の揺動アームの中間部に対してクランク部材やカム部材が作用する構成とされていたが、本発明はこれに限定されない。第1および第2の揺動アームの先端部に対してクランク部材やカム部材が作用する構成としてもよい。また、第1および第2の運動体として、第1および第2の揺動アームによって構成される場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。第1および第2の運動体としては、互いに逆方向に往復運動させられる構成であれば、如何なる構成であってもよい。
上記実施形態において、カム部材390(カム機構)を用いてモータ330の駆動力を伝達する構成においては、カム部材の形状を種々変更することが可能である。上記実施形態のように、カム部材における第1および第2のカムフォロアとの係合部位が楕円形状の場合、往復駆動機構の駆動時に溶接ワイヤが送給方向に引き戻しと送り出しを繰り返す往復動作についての時間経過と速度の関係を表すワイヤ速度線図は、図15(a)に示すような正弦波形となる。一方、カム部材の上記係合部位の形状を工夫することにより、たとえば、図15(b)に示すように、送り方向と戻り方向との間でデューティー比や速度比を異ならせるといったことが可能であり、種々の溶接条件に適した溶接ワイヤの送給速度制御を容易に行うことが可能となる。
上記実施形態において、溶接トーチに溶接ワイヤの往復駆動機構を設ける場合について説明したが、これに限定されない。本発明に係る溶接ワイヤの往復駆動機構は、溶接ワイヤの送給経路のいずれの場所に設けてもよい。