JP6271933B2 - 表面処理方法および金属部材の製造方法 - Google Patents

表面処理方法および金属部材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は表面処理方法および金属部材に関し、詳しくは大気圧近傍の圧力下で発生させた熱プラズマを用いて金属部材表面の硬化処理を行う方法および金属部材に関する。
高い精度で加工され、さらに耐摩耗性が要求される精密金型等の金属部材には、従来から炭素鋼等に代表される鉄系の金属材料(以下鉄鋼材料とする)が多く利用されている。このような鉄鋼材料を高精度かつ高耐摩耗な金属部材として利用する際には、比較的柔らかい生材の状態で精度良く機械加工し、後処理により耐摩耗性を高めて用いる方法が一般的である。また近年では光学機器に用いられる光学素子を超精密金型によって成形する手法が一般的となってきている。そして、その金型には数ナノメートルから数十ナノメートルオーダーの平滑性および形状精度と同時に、数千から数十万ショットの成形に耐えうる耐摩耗性が要求されつつある。
一方、前述した鉄鋼材料の後処理として、窒化処理により金属表面の耐摩耗性を向上させる技術は良く知られている。その中でイオン窒化法は、真空チャンバー内でグロー放電により発生する窒素イオンを被処理物に衝突させながら、被処理物全体を500℃程度まで加熱し、被処理物の表面に窒素化合物を形成させるものである。しかし、イオン窒化法では高速イオンにより被処理物の表面がスパッタリングされ、表面粗さが悪化する事が知られている。
この問題を解決する方法として、例えば特許文献1に開示されているようなラジカル窒化法がある。従来のラジカル窒化法では、真空チャンバー内で低電力のグロー放電により低エネルギー状態のプラズマを発生させ、被処理物の表面硬化を行う。その際、放電とは別の外部加熱機構により被処理物全体を500℃程度に加熱する。この方法では、低電力のグロー放電によりイオン化率やエネルギー状態を低く抑え、イオンの割合に対して反応性の高い中性活性種の割合を多くする事が出来る。その結果、高速イオンによるスパッタリングを防ぎ、表面粗さの悪化を抑えると同時に、窒素化合物の形成も抑制される事が知られている。その代わりに、中性活性種が部材の表面に吸着され、吸着された窒素が熱により内部に拡散し、被処理物の表面に窒素固溶体が形成されると考えられている。このような方法で窒素固溶体を選択的に形成すると、平滑性を維持しつつ表面を硬化出来る事が知られている。
また、平滑性を維持しつつ表面を硬化する別の方法として、特許文献2に開示されているような電子ビーム励起プラズマ窒化法がある。この方法では放電プラズマを生成する放電室と、処理材料を配置する窒化処理室とを備え、放電プラズマから引き出した電子線を窒化処理室内の窒素ガスに照射して解離させ、生成した中性活性種を被処理材料表面に作用させるものである。この処理方法においてもイオンによるスパッタリングは起こらず、また中性活性種によって窒素固溶体を選択的に形成出来るため、平滑性を維持しつつ表面を硬化出来る事が知られている。
しかしながら、前述したラジカル窒化方法および電子ビーム励起プラズマ窒化法の両者は被処理物全体を500℃近傍の高温に加熱する必要があり、熱応力による塑性変形等よって被処理物が変形する問題がある。特に、高い機械強度が求められるような金属部材では、鉄鋼材料に焼き入れを施して利用する事が多い。焼き入れ後の鉄鋼材料にはマルテンサイト組織の他に残留オーステライト組織が含まれているが、これを200℃以上で保持すると、残留オーステライト組織からマルテンサイト組織への変態が進行し、組織膨張による変形を生じる。そのため、窒化処理後には再加工による形状修正の工程が増えてしまうが、窒化された表面は非常に硬く、再加工に多大な労力を要する。
さらに、前述した両者の窒化方法は真空排気装置を必要としているので装置コストが高く、量産性にも問題があった。これらの事から、高い精度と耐摩耗性が求められる金属部材を大量生産する目的に対し、加工後の後処理としてラジカル窒化や電子ビーム励起プラズマ窒化を用いた場合は、結果として生産コストを増大させていた。
また別の問題として、前述した両者の窒化方法は、金属部材の表面全体を窒化処理してしまう。これは、材料の一部を処理したい場合には無駄なエネルギーを消費すると同時に、金属部材が付帯する他材料の部材に対し悪影響を及ぼすので、金属部材の設計自由度を低減させていた。
一方、特許文献3には、真空排気装置を使わず、また外部温度制御機構も必要とせず、所望の場所のみを加熱および硬化出来る技術として、熱プラズマによる窒化方法が開示されている。熱プラズマは大気圧下で発生させた数千℃の高温プラズマのジェット流であり、被処理物に照射する事で表面を短時間で昇温させ、同時に大量の活性種を供給する事で、窒化を行う事が出来る。この方法を用いると、真空排気装置を必要とせず、低い生産コストで、金属部材の所望の部位のみを窒化することが出来る。また被処理物全体を加熱せずに局所的な加熱および窒化処理が可能なので、熱応力による被処理物全体の変形を抑制出来ると期待される。しかしながら、特許文献3には、熱プラズマを用いて表面平滑性の高い窒素固溶体を選択的に形成したり、被処理物の変形を抑制したりする技術は報告されていない。
特開平6−220606号公報 特開2002−194527号公報
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、被処理物の表面の平滑性の悪化および形状変化を抑制しながら、被処理物の表面の耐摩耗性を向上させる表面処理方法を提供するものである。また、本発明は、表面の平滑性、耐摩耗性に優れた金属部材を提供するものである。
上記の課題を解決する表面処理方法は、被処理物の表面を窒素ガスの雰囲気下で熱プラズマにより処理する表面処理方法において、前記被処理物に対し窒素ガスフローを行うとともに、前記窒素ガスフローに対しマイクロ波により励起されたアルゴンガスの熱プラズマを導入し、前記被処理物の表面及び表面近傍に、前記窒素ガス及び前記アルゴンガスのイオン流領域を形成し、前記熱プラズマが有する、前記熱プラズマの中心軸における、前記イオン流領域の下流側端部と前記被処理物の表面との間の距離が、−4mm以上+33mm以下(但し、前記下流側端部の位置を0として、イオン流領域の上流側を−、イオン流領域の下流側を+とした値を表す)となるように、前記熱プラズマと前記被処理物とを相対的に移動させて、前記被処理物の表面に窒素固溶体を形成し、前記被処理物の表面を窒化することを特徴とする。
上記の課題を解決する金属部材の製造方法は、材を機械加工した後、上記の表面処理方法で表面処理したことを特徴とする。
本発明によれば、被処理物の表面の平滑性の悪化および形状変化を抑制しながら、被処理物の表面の耐摩耗性を向上させる表面処理方法を提供することができる。また、本発明によれば、表面の平滑性、耐摩耗性に優れた金属部材を提供することができる。
本発明に係る表面処理方法の一実施態様を示す説明図である。 本発明に係る表面処理方法の結果の一例を説明する図である。 本発明における熱プラズマによる表面処理方法を説明する説明図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る表面処理方法は、被処理物の表面を窒素ガスの雰囲気下で熱プラズマにより処理する表面処理方法において、前記熱プラズマと前記被処理物との距離を制御することで、前記被処理物の表面を窒化することを特徴とする。本発明の表面処理方法によれば、高価な真空チャンバーを用いる事無く、生産コストの低い手法により、また外部温度制御手段による被処理物の加熱も必要とせずに、被処理物の表面に窒素固溶体もしくは窒素化合物を選択的に、さらに被処理物の所望の部位に形成する事が出来る。その結果として、被処理物の表面の特性を所望の性質に変化させる事が出来る。
本発明において、前記熱プラズマと前記被処理物との距離は、前記熱プラズマが有するイオン流領域の下流側端部と前記被処理物の表面との間の距離が−4mm以上+33mm以下(但し、イオン流領域の下流側端部の位置を0として、イオン流領域の上流側を−、イオン流領域の下流側を+とした値を表す。)の範囲となるように制御することが好ましい。この方法によれば、被処理物の表面に窒素固溶体を形成する事が出来る。その結果として、被処理物の形状変化や表面粗さを抑制しつつ、表面を硬化させ耐摩耗性を向上させる事が出来る。
本発明において、前記イオン流領域の下流側端部の位置は、プラズマの発光強度を測定する事によって決定されることが好ましい。また、前記被処理物が少なくとも鉄およびクロムのいずれかを含むことが好ましい。この方法によれば、被処理物の表面に窒素固溶体を選択的に形成する条件を、再現性良く容易に設定する事が出来る。
本発明に係る金属部材は、鉄鋼材料からなる基材を機械加工した後、上記の表面処理方法で表面処理したことを特徴とする。この金属部材によれば、低価格で高耐久な金属部材による金型を用いた成形品の生産が実現され、製品の生産コスト削減が可能となる。
前記金属部材は、表面粗さが5nmRa以下であり、形状精度が2μmPV以下であることが好ましい。この金属部材によれば、低価格で高耐久、さらに高精度かつ高平滑な金属部材による金型を用いた光学部品等の成形品の生産が実現され、製品の生産コスト削減ならびに製品の高機能化が可能となる。
次に、本発明にかかる表面処理方法を具体的に説明する。
本発明者らは、鉄鋼材料に対して本発明の表面処理方法をすることで、処理過程における被処理物の形状変化や表面平滑性の悪化を防止しつつ、表面を硬化し耐摩耗性の向上が可能であることを見出した。
図3は、本発明における熱プラズマによる表面処理方法を説明する説明図である。図3には、本発明による諸々の条件において表面処理を行った結果を示す。ここで用いた被処理物の材料は、SUS400に高周波焼き入れを施したものであり、形状は60mm角、厚さ5mmの板状である。処理面となる60mm角の一面は表面粗さが約0.2nmRMS、平面精度が約50nmPVとなるように研磨されている。一方、処理に用いられる熱プラズマは、流量150sccmのアルゴンガスと流量40sccmの水素ガスを混合したものを、出力400Wのマイクロ波によって励起したものである。なお、処理環境は大気圧であり、酸素濃度が0.01%以下となるように、窒素ガスによって置換されている。また、本例では熱プラズマと被処理物の相対動作による面処理を行い、処理温度は400℃、処理時間は約30分である。また、硬度測定にはアジレントテクノロジー社製ナノインデンター(G200)を、表面粗さ測定には日本ビーコ社製AFM(L−TRACE)を用いた。また、形状測定にはザイゴ社製干渉計(VerifireAT)を、表面元素分析にはアルバック・ファイ社製XPS(QUANTERA SXM)を用いた。
図3(a)は、表面処理方法に用いた熱プラズマを撮影した像を製図した図面である。本発明者らはこの熱プラズマを詳しく分析したところ、図に示すように、プラズマは上流から下流に向かうジェット状のガス流を有していた。さらにその内部には、数千℃の高温領域(以下高温領域とする)301と、イオンが拡散して流れる領域(以下イオン流領域とする)302と、中性の活性種流が残存する領域(以下中性活性種流領域とする)303とを有する事が明らかとなった。304は中心軸である。さらに、高温領域301およびイオン流領域302は可視光線、すなわち波長約400nmから800nmの光を強く発光するが、それと比較して、中性活性種流領域303の発光は非常に弱く、それらの境界判別が可視光線の発光強度測定によって簡易に実施可能である事も明らかとなった。
図3(b)は、熱プラズマと被処理物との距離に対する、熱プラズマの発光強度、被処理物の表面の物性を示す図である。図3(b)の横軸は熱プラズマと被処理物との距離(mm)を示し、具体的にはプラズマの中心軸304上における被処理物の表面の位置を示し、イオン流領域の下流側端部位置を原点(0)とし、イオン流領域の上流側(イオン流領域302側)を負(−)、イオン流領域の下流側(中性活性種流領域303側)を正(+)としている。
またここでは、イオン流領域の下流側端部(0)の位置の規定方法として、下流側端部の位置における発光強度が、プラズマの発光強度が最大となる箇所の発光強度に対して3%となるように、前記下流側端部の位置を決定している。熱プラズマと被処理物との距離は、前記熱プラズマが有するイオン流領域の下流側端部と前記被処理物の表面との間の距離が−4mm以上+33mm以下、好ましくは0mm以上+25mm以下が望ましい。但し、下流側端部の位置を0として、イオン流領域の上流側を−、イオン流領域の下流側を+とした値を表す。
また、縦軸は各位置で処理した被処理物の、表面粗さ、変形量および硬度である。図3(b)から分かるように、被処理物の表面の位置がイオン流領域の下流側端部(0)に対して−4mmより下流側となる条件では、表面平滑性が比較的良好に保たれており、また形状変化も小さい。一方、被処理物の表面の位置がイオン流領域の下流側端部(0)に対して−4mmより上流側となる条件では、表面平滑性が悪化しており、また形状変化も大きくなっている。しかしながら処理後の表面硬度に注目すると、被処理物の表面の位置がイオン流領域の下流側端部から下流側+33mm以下の範囲では、被処理物の表面が硬化している事がわかる。
さらに、処理後の被処理物の表面におけるクロムの結合状態をXPSにより分析した結果、表面平滑性が悪化し変形が大きい被処理物では、窒化クロムが3重量%以上計測された。それに対し、表面平滑性が維持され変形が小さい被処理物では窒化クロムの量は検出限界以下であった。またどちらの被処理物からも6から20wt%の窒素が観察された。これらの分析結果から、処理過程における表面平滑性の悪化および変形の原因は、窒素化合物の析出によると考えられる。すなわち、粗れと変形が大きい被処理物においては、窒素化合物の析出による凹凸の生成および、化学変化に伴う体積膨張による変形が引き起こされていると考えられる。また、窒素化合物が計測されていない被処理物は窒素を含有しており、さらに硬度も上昇していることから、それらにおいては、被処理物の表面には窒素固溶体が形成されていると結論づけられる。
以上の結果から本発明者らは、被処理物の表面を熱プラズマにより加熱および窒化する表面処理方法において、熱プラズマと被処理物との距離を制御することで、被処理物の表面に窒素化合物もしくは窒素固溶体のどちらか一方を選択的に形成出来る事を見出した。また、熱プラズマが有するイオン流領域の下流側端部と被処理物の表面との距離が適正な値、好ましくは−4mmから+33mmの範囲にする事で、被処理物の表面に窒素固溶体を形成可能であった。その結果、処理過程において被処理物の表面平滑性は維持されると同時に、形状変化も小さく抑えつつ、表面を硬化出来る事を見出した。このとき、イオン流領域の下流側端部位置を肉眼で明確に決定する事は困難であり、再現性が低い。そこで本発明者は、このイオン流領域の下流側端部位置を可視域の発光を測定する事で決定する方法も見出した。ここでは図示しないが、条件を変えて数多くの処理をした結果、イオン流領域の下流側端部位置を以下のように設定する事で、実験条件によらず、再現性の高い結果が得られる事が明らかとなった。具体的には、イオン流の下流側端部における発光強度が、プラズマの発光強度が最大となる箇所の発光強度に対して例えば3%となるようにイオン流の下流側端部の位置を決定する。そうすることで、高周波の出力やガス流量等の条件によらず、被処理物の表面粗さを5nmRa以内に、被処理物の形状変化を2μmPV以下に、再現性良く制御する事が可能である。
以上の方法を用いると、低価格で加工性の優れた鉄鋼材料に対し、切削加工やプレス加工等の低価格で高精度な加工を施した後、真空チャンバーの要らない低価格な表面処理によって、表面平滑性と形状精度を維持しつつ、耐摩耗性の向上が可能となる。すなわち、従来は材料費や加工費の制約により高価だった、超硬やセラミックで製作された特殊材料部材を、あるいは何度も修正加工を重ねる事で仕上げられた高価な金属部材を、より低価格な金属部材に置き換える事が可能となる。また、被処理物の大きさに対して十分小さい熱プラズマを用いた処理を行えば、所望の部位のみを処理する事が可能であり、その結果、生産におけるエネルギーコストが節約され、また金属部材が付帯する他材料の部材への悪影響も無くなる。また、金属部材の設計自由度が広がり、その結果として製品の高機能化にもつながる。また本発明は、特に表面粗さ5nmRa以下、形状精度2μmPV以下の加工が施された鉄鋼材材料に対しては、その平滑性および精度を維持しつつ硬化が可能な唯一の手段となるので、他の窒化手法と比べて著しく有利である。
以下、本発明の好適な実施形態について説明するが、本発明はこれによって限定されるものでは無い。例えば、本発明におけるマイクロ波によって励起された熱プラズマは、RFプラズマやDCプラズマによっても同様の現象が起こる事は可能である。さらに、処理圧力やガスの種類、被処理物材料を変えても同様の現象が起こる事も可能である。また、使用する装置構成を大きく変えれば、イオン流領域の下流側端部の適正な判別条件や、窒素固溶体が生成される距離範囲の条件が若干変化する事も可能であるが、本発明はこれによって限定されるものでも無い。
(実施例1)
図1は本発明に係る表面処理方法の一実施態様を示す説明図である。本発明にかかる、熱プラズマによる金属部材の処理例を示す。101は同軸構造をしたプラズマトーチの断面図を表したものであり、図示しない電源から発せられた2.45MHzのマイクロ波によって中心軸110の先端のガスが励起され、熱プラズマ102が鉛直下向きに吹き出される。またプラズマの発光強度分布は光ファイバー103と位置制御機構104および図示しない分光器によって計測される。
一方、被処理物105の材料は純鉄であり、高さ10mm、直径50mmの円柱形状をしている。また、上面は表面粗さ2.1nmRa、形状精度100nmPVの平面に仕上げられており、処理部の表面温度は放射温度計106によって計測される。さらに被処理物105は駆動機構107によって、鉛直方向および水平方向に移動可能となっている。また被処理物の裏面108は図示しない冷却機構により23℃以下に冷却されている。装置はカバー109で覆われており、カバー内部の空気は窒素ガスフロー112によって窒素に置換される構造となっている。本装置を用いて行った処理結果を以下に述べる。
まず駆動機構上に被処理物を配置した後、カバー内部の残留酸素濃度が0.001%以下となるまで流量10L/minの窒素ガスフローを行った。その後も流量5L/minの窒素ガスフローを継続し、カバー内部への空気の逆流を防止した。次に、図示しない配管によりプラズマトーチ101にアルゴンガス150sccmを導入し、400Wのマイクロ波により熱プラズマを点火した。次に、プラズマ中心軸上のガス流方向113における発光強度分布を計測し、イオン流領域の下流側端部の位置を決定した。ここでは、イオン流領域の下流側端部における発光強度が、プラズマの発光強度が最大となる箇所の発光強度に対して3%となるように、イオン流領域の下流側端部の位置を決定した。
次に、被処理物の表面がイオン流領域の下流側端部(0)から下流側+1mmの位置となるように被処理物を移動し、処理部表面の温度が520℃になるまで保持した。その後は処理部表面の温度が520℃で一定となるように、被処理物を水平方向に走査し、被処理物の表面全体を約30分間かけて処理した。
処理前後の被処理物の表面硬度を、アジレントテクノロジー社製ナノインデンター(G200)を用いて計測した結果を図2に示す。図2(a)のように、被処理物を処理する前の表面硬度が180HVであったのに対し、処理後の表面硬度は最大で1240HVとなっていた。また、処理前後における被処理物の表面粗さを、日本ビーコ社製AFM(L−TRACE)を用いて計測した結果を図2(b)に示す。図2(b)のように、処理前の表面粗さが2.1nmRaであったのに対し、処理後の表面粗さは2.2nmRaとほぼ変わらない値となっていた。さらに、処理過程における形状変化を、ザイゴ社製干渉計(VerifireAT)を用いて計測した結果を図2(c)に示す。図2(c)のように、処理前後の差分形状、すなわち変形量は24nmPVとなっていた。ただし、差分形状は、差分形状=処理後形状−処理前形状をコンピューターを用いて演算した。
(実施例2)
図1に示した装置を用いて別の表面処理を実施した。被処理物の材料はSTAVAX(登録商標)に高周波焼き入れを施したものであり、高さ30mm、直径40mmの円柱形状である。また上面は曲率120mmの凹球面形状を成しており、その表面粗さは1.5nmRa、形状精度は30nmPVに仕上げられている。なお、STAVAX(登録商標)はウッデホルム社製のクロム合金ステンレス工具であり、成分はクロム13.6%の他にバナジウム、マンガン、シリコン、炭素などを含有している。
まずステージに被処理物を配置した後、カバー内部の残留酸素濃度が0.01%以下となるまで10L/minの窒素ガスフローを行った。その後も流量5L/minの窒素ガスフローを継続し、カバー内部への空気の逆流を防止した。次に、図示しない配管によりプラズマトーチにアルゴンガス150sccmと水素ガス40sccmとを導入し、300Wのマイクロ波により熱プラズマを点火した。次に、プラズマ中心軸上のガス流方向における発光強度分布を計測し、イオン流領域下流側端部の位置を決定した。ここでは、イオン流領域の下流側端部における発光強度が、プラズマの発光強度が最大となる箇所の発光強度に対して3%となるように、イオン流領域の下流側端部の位置を決定した。次に、被処理物の表面がイオン流領域の下流側端部(0)から下流側+5mmの位置となるように被処理物を移動し、処理部表面の温度が400℃になるまで保持した。その後は処理部表面の温度が400℃で一定となるように、被処理物を水平方向に走査すると同時に、被処理物の表面とイオン流領域の下流側端部との距離が常に+5mmとなるように、被処理物位置を垂直方向に制御しながら、凹球面全体の処理を約35分間行った。
処理前後の被処理物の表面硬度を計測した結果、被処理物を処理する前の表面硬度が630HVであったのに対し、処理後の表面硬度は最大で1320HVとなっていた。また、処理前後における被処理物の表面粗さを計測した結果、処理前の表面粗さが1.5nmRaであったのに対し、処理後の表面粗さは1.9nmRaと、ほぼ変わらない値となっていた。さらに、処理過程における形状変化を計測した結果、変形量は19nmPVとなっていた。
さらに、処理後の被処理物の凹球面を型として、凸球面プラスチックレンズの転写成形を行った。ここではレンズ材料としてポリカーボネートを用いた。転写成形を繰り返し行い、金型の耐久性試験を行った結果、10000回の転写成形においても良好な凸球面レンズを安定して製作する事が可能であり、金型に変形や摩耗は観察されなかった。
本発明の表面処理方法は、被処理物の表面の平滑性の悪化および形状変化を抑制しながら、被処理物の表面の耐摩耗性を向上させることができるので、金型や軸受け等の表面の平滑性、耐摩耗性が要求される金属部材の表面処理に利用することができる。
101 プラズマトーチ
102 熱プラズマ
103 光ファイバー
104 位置制御機構
105 被処理物
106 放射温度計
107 駆動機構
108 被処理物の裏面
109 カバー
110 中心軸
111 換気
112 窒素ガスフロー
113 ガス流方向
301 高温領域
302 イオン流領域
303 中性活性種流領域
304 中心軸

Claims (7)

  1. 被処理物の表面を窒素ガスの雰囲気下で熱プラズマにより処理する表面処理方法において、前記被処理物に対し窒素ガスフローを行うとともに、前記窒素ガスフローに対しマイクロ波により励起されたアルゴンガスの熱プラズマを導入し、
    前記被処理物の表面及び表面近傍に、前記窒素ガス及び前記アルゴンガスのイオン流領域を形成し、
    前記熱プラズマが有する、前記熱プラズマの中心軸における、前記イオン流領域の下流側端部と前記被処理物の表面との間の距離が、−4mm以上+33mm以下(但し、前記下流側端部の位置を0として、イオン流領域の上流側を−、イオン流領域の下流側を+とした値を表す)となるように、前記熱プラズマと前記被処理物とを相対的に移動させて、前記被処理物の表面に窒素固溶体を形成し、前記被処理物の表面を窒化することを特徴とする表面処理方法。
  2. 前記下流側端部の位置は、前記熱プラズマの発光強度を測定する事によって決定されることを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
  3. 前記下流側端部の位置は、前記下流側端部における発光強度が、前記熱プラズマの発光強度が最大となる箇所の発光強度に対して、3%となる位置であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面処理方法。
  4. 前記被処理物が少なくとも鉄およびクロムのいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の表面処理方法。
  5. 前記窒化された被処理物の表面が窒素固溶体を有すること特徴とする請求項1乃至4のいずれかの項に記載の表面処理方法。
  6. 基材を機械加工した後、請求項1乃至5のいずれかに記載の表面処理方法で表面処理したことを特徴とする金属部材の製造方法。
  7. 前記表面処理した面の表面粗さが5nmRa以下であり、形状精度が2μmPV以下であることを特徴とする請求項6に記載の金属部材の製造方法。
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