JP6270758B2 - 内燃機関用点火装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関の点火装置に関するもので、特に、共振回路を備えた内燃機関用点火装置に関するものである。
ガソリンエンジンなどの内燃機関の点火装置では、内燃機関の燃料消費率(以下、燃費という)の改善が大きな課題である。そのため、希薄燃焼など、燃焼が不安定になりやすい条件においても、着火性能を向上させると共に燃焼時間を短くすることのできるバリア放電点火装置が提案されている。このバリア放電点火装置では、一方の電極が誘電体で覆われた点火プラグに対して非平衡プラズマ放電(誘電体バリア放電)を発生させ、ラジカルを積極的に生成することで、燃料に対して空気が過剰に供給されている状態においても着火性能を悪化させず、さらに複数のストリーマを形成させて広い体積中の多点で同時に点火させることにより燃焼室内における燃焼速度を向上させるように構成している(例えば特許文献1)。
このような内燃機関の点火装置では、放電電極間に高電圧を印加させることが必要で、この放電電極間に高電圧を発生させる電源システムとして、供給する交流電源の周波数を、インダクタンス要素とキャパシタンス要素の直列共振周波数またはその近傍に設定し、コイル及びコンデンサの共振によって電極に大きな直列共振電圧を発生させるようにした共振回路を使用するものが提案されている(例えば特許文献2)。
特許第4924275号公報 特開平9‐172788号公報
特許文献1には、内燃機関において着火性能を向上させると共に燃焼時間を短くするための点火装置が提案され、また、特許文献2には、放電電極間に必要とされる高電圧を得るための具体策として、共振回路によって共振電圧を発生させることが示されているが、内燃機関の点火装置においては、内燃機関の吸気−圧縮−点火−排気の動作と同期したタイミングで、点火プラグに交流高電圧を印加して、電極に非平衡プラズマ放電を発生させる必要がある。このため、この特許文献2の電源システムを内燃機関の点火装置に適用することを想定したとしても、交流電圧の印加開始から放電による点火が行われるまでに、共振電圧の共振成長時間(共振開始から放電電圧にまで電圧が上昇するまでの時間)による時間遅れが存在することから、エンジンコントロールユニット(Engine Control Unit、以下ECUという)が点火タイミング指令を送信してから、燃料に点火され燃焼を開始するまでに時間差が生じ、意図しないタイミングで内燃機関内の圧力が上昇することになり、内燃機関としての十分なトルクが得られず、燃費の悪化が発生するという課題が生じる。
本発明は、前述の課題を解決するために行われたもので、内燃機関にとって最大トルクが得られるタイミングで点火できるように制御可能な内燃機関用点火装置を得ることを目的としている。
本発明に係る内燃機関用点火装置は、内燃機関の点火プラグに放電電圧を印加する共振回路、前記共振回路に交流電圧を供給する電源回路前記内燃機関の燃焼における圧力上昇のタイミングを検出する圧力センサと、最大トルクが得られるタイミングを算出するエンジンコントロールユニットと、前記圧力センサにより検出された前記圧力上昇のタイミングおよび前記エンジンコントロールユニットにより算出された前記最大トルクが得られるタイミングに基づいて前記電源回路から前記共振回路への交流電圧の供給のタイミングを制御する制御回路を備えたことを特徴とするものである。
本発明の点火装置によれば、共振回路を用いた場合に発生する共振電圧の共振成長時間による点火タイミングの遅れ分を、制御回路によって制御し、電源回路を早めに動作させるように制御することによって、内燃機関が燃料の燃焼による圧力上昇で最大トルクが得られるタイミングと実際に内燃機関において燃焼による圧力上昇が発生するタイミングのずれによって生じる燃費の低下を抑制することができる。また、燃焼のタイミングに応じてインバータを停止することによって、点火に関与しないタイミングに消費する点火装置の電力損失を低減することができる。
本発明における実施の形態1によるバリア放電点火装置の回路構成を示す図である。 本発明における実施の形態1によるバリア放電点火装置の動作シーケンスを説明するタイミング図である。 本発明における実施の形態2によるバリア放電点火装置の回路構成を示す図である。 本発明における実施の形態2によるバリア放電点火装置の動作シーケンスを説明するタイミング図である。 本発明における実施の形態3によるバリア放電点火装置の回路構成を示す図である。 本発明における実施の形態3によるバリア放電点火装置の動作シーケンスを説明するタイミング図である。 本発明における実施の形態4によるバリア放電点火装置の回路構成を示す図である。 本発明における実施の形態4によるバリア放電点火装置の動作シーケンスを説明するタイミング図である。
実施の形態1
以下、この発明の実施の形態1について説明する。
図1に示すように、本発明の実施の形態1による内燃機関用のバリア放電点火装置は、バリア点火プラグ1に交流電圧を供給する電源回路100と、電源回路100を制御する制御手段200とを備えており、バリア点火プラグ1は、共振用コイル10と共に共振回路2を構成している。
電源回路100は、バッテリ9、DC/DCコンバータ5、インバータ4およびトランス3を備え、DC/DCコンバータ5によってバッテリ9の電圧を50V〜600Vの範囲の一定電圧に昇圧し、このDC/DCコンバータ5から出力された一定電圧はインバータ4によって予め定められた周波数の交流電圧に変換し、この交流電圧はトランス3によって昇圧比倍の600V〜5kVの範囲に昇圧されて共振回路2に出力される。
共振回路2は、バリア点火プラグ1のキャパシタンス成分と共振用コイル10およびトランス3の漏れインダクタンスによって構成され、このインダクタンス要素とキャパシタンス要素の直列共振周波数またはその近傍の周波数の交流電圧が供給されることによって大きな直列共振電圧が発生する現象を利用しており、5kV〜40kVまで昇圧され、バリア点火プラグ1に放電を発生させることになる。バリア点火プラグ1に放電が発生すると、内燃機関においては、燃料に点火が行われ、シリンダ(図示せず)内に爆発的に火炎が伝播する。内燃機関においては、点火後の燃料の燃焼によって上昇した圧力からエネルギーを取り出す。この内燃機関のシリンダ内の圧力は圧力センサ8によって検出され、信号が出力される。
制御手段200は、制御回路6とECU(Engine Control Unit)7を備え、圧力センサ8からの信号を受けて、ECU7から制御回路6に制御信号が出力され、制御回路6は、ECU7からのインバータ4の点火信号S0に従い、インバータ4のスイッチング素子のオンオフを制御する。なお、インバータ4のスイッチング素子をオンオフする駆動周波数は、共振回路2の共振周波数としている。
なお、共振回路2は、例えばバリア点火プラグ1の持つキャパシタンス成分と共振用コイル10とトランス3の漏れインダクタンスにより構成されるとしたが、バリア点火プラグ1の持つキャパシタンス成分とトランス3の漏れインダクタンスのみ、あるいはバリア点火プラグ1のキャパシタンス成分と共振用コイル10のみで構成してもよい。また、共振回路2のキャパシタンス成分は、バリア点火プラグ1に対して、並列あるいは直列にコンデンサを接続することで増減させてもよい。
また、トランス3は、放電に必要な出力電圧を共振回路2のみで確保できる場合には取り除いてもよい。また、インバータ4は、直流電圧を交流電圧に変換する機能と、制御信号に従って周波数を変える機能を持つものであれば、どのような回路構成でもよく、例えばフルブリッジ構成等がある。さらに、DC/DCコンバータ5は、インバータ4で必要な電圧をバッテリ電圧から生成するものであればどのような構成でもよく、例えば昇圧チョッパ等で構成される。
次に、タイミング動作について説明する。図2は本発明の実施の形態1のバリア放電点火装置の動作シーケンスを説明するタイミング図である。図中、信号S0は、ECU7から制御回路6に入力される点火信号の一例であり、信号S0の立ち上がりが、インバータ4の回路動作指令を示し、信号S0の立ち下がりがインバータ4の回路停止指令を示している。また、ECU7は、内燃機関にて燃焼による圧力上昇によって最大トルクが得られるタイミングである時刻t0を算出している。この時刻t0は、内燃機関の回転数や空燃比によって点火周期毎に変動する。信号G0は、制御回路6から出力されるインバータ4のスイッチング素子駆動信号の一例である。ここでは、信号G0のH(ハイ)状態をオン指令状態、L(ロー)状態をオフ指令状態としている。信号A0は、バリア点火プラグ1に印加される電圧波形の一例であり、縦軸は電圧値を示している。信号B0は、圧力センサ8が検出した燃料の燃焼による内燃機関の圧力上昇信号の一例であり、ECU7に入力されている。ここでは、信号G0のH(ハイ)状態を燃焼による圧力上昇を検出している状態とする。
この状態において、DC/DCコンバータ5は、常に動作しており、インバータ4に予め定めた一定の電圧を供給しているものとしている。
時刻t1にて、ECU7が信号S0を立ち上げると信号G0がHとなり、インバータ4は、予め定められた周波数でスイッチング動作することで交流電圧を出力する。インバータ4の交流電圧は、トランス3で巻数比倍されて共振回路2に入力される。共振回路2では、バリア点火プラグ1のキャパシタンス成分と共振用コイル10のインダクタンス成分のLC共振により、図2に示すように、バリア点火プラグ1に印加される電圧信号A0の振幅が徐々に成長する。電圧振幅成長に要する時間は、例えばLC共振のQ値と共振回路2のバリア点火プラグ1及び共振用コイル10等の温度特性により、点火周期毎に変動する。
時刻t2にて、バリア点火プラグ1に印加される電圧の振幅が放電開始電圧を超過すると、バリア点火プラグ1の電極間に誘電体バリア放電が発生し、内燃機関内の燃料に点火が行われる。
点火が行なわれると、内燃機関内を火炎が伝播し、燃料の燃焼による内燃機関の圧力上昇が発生する。時刻t3にて、圧力センサ8が燃焼による圧力上昇を検出すると、ECU7は信号S0を立ち下げる。制御回路6は、信号S0の立ち下がりと同時に信号G0をL状態で出力し、インバータ4を停止する。これにより、燃焼による圧力上昇後に、バリア点火プラグ1に余分な電力が投入されることを防ぎ、点火に寄与しない電力損失の発生を防ぐことができる。またECU7では、圧力センサ8からの燃焼による圧力上昇を検出した時刻t3を記録する。圧力センサ8は、燃焼終了後に圧力が低下すると、L状態に戻る。
内燃機関では、燃焼による圧力上昇で最大トルクが得られるタイミングである時刻t0と実際に燃焼による圧力上昇を検出した時刻t3の時間差t11が大きいほど、燃費が低下する。この時間差t11が生じる要因は、インバータ4のスイッチング素子駆動信号を出力した時刻t1から内燃機関内に気圧上昇が発生する時刻t3までに時間遅延があり、その時間遅延が回転周期毎に変動するため、時刻t3と時刻t0を一致させることができないことである。したがって、本発明の実施の形態1では、時間差t11ができるだけ小さくなるように、点火周期毎の信号S0の立ち上がりのタイミングをフィードバック制御することで、圧力上昇のタイミングのずれによって生じる内燃機関の燃費悪化を抑制する。
例えば、前の点火周期の時刻t3が、時刻t0よりも早かった場合においては、次の点火周期では、ECU7が、前の点火周期の時刻t1に対して時間差t11だけ遅い時刻に信号S0を立ち上げることにより、次の点火周期の時間差t11は前の点火周期に比べて小さくなる。
以上のような動作が、内燃機関の点火周期毎に繰り返される。
このように、実施の形態1では、バリア点火装置は、バリア点火プラグ1と、バリア点火プラグ1の電極間に放電を発生させるために交流電圧を5〜40kVまで昇圧する共振回路2と、交流電圧を昇圧して共振回路に供給するトランス3と、交流電圧を供給するインバータ4と、バッテリ電圧を昇圧してインバータ4へ出力するDC/DCコンバータ5と、制御回路6と、ECU7と、内燃機関内の圧力を検出する圧力センサ8と、バッテリ9によって構成されており、ECU7が最大トルクを得られる燃焼による圧力上昇のタイミングである時刻t0と圧力センサ8にて実際に燃焼による圧力上昇を検出した時刻t3の時間差t11がより小さくなるように、点火周期毎のインバータ4の駆動開始タイミングである時刻t1をフィードバック制御することによって、圧力上昇のタイミングのずれにより生じる内燃機関の燃費悪化を抑制することができる。
なお、内燃機関の火炎伝播速度は、回転数に比例するため、点火周期毎の時刻t3も回転数に従って変動する。したがって、回転数が変化する場合において、ECU7が、回転数毎の火炎伝播時間変化を補正する係数を算出し、その補正係数によって信号S0立ち上がりタイミングである時刻t1をフィードフォワード制御することによって、前記時間差t11を小さくし、内燃機関の燃費の悪化を抑制することができる。
また、エンジン始動時は、前の点火周期の時間差t11が記録されていないため、時刻t1をフィードバック制御することができず、時間差t11が大きくなってしまい、内燃機関の燃費の悪化を生じる。そこで、共振回路のQ値から共振成長に要する時間t12を算出してECU7に予め記録し、ECU7が始動時に時刻t1よりも時間t12だけ早く指令信号すなわち点火信号S0を立ち下げることにより、時間差t11を小さくし、燃費の悪化を抑制することができる。
実施の形態1では、燃焼による圧力上昇のタイミングである時刻t3を圧力センサ8で検出し、その時刻t3と最大トルクが得られるt0との差をなくすことにより、燃費の悪化を抑制する手法について記述した。これにより、少ない燃料でより多くのトルクを得ることができる。実施の形態2では、圧力センサ8を用いずにタイミングを制御することにより、コストを低減する手法について説明する。
実施の形態2
次に、この発明の実施の形態2について説明する。
図3は、実施の形態2によるバリア放電点火装置の回路構成を示す図で、図4は、この回路構成の動作を示すタイミング図ある。この図3に示した回路構成と図1の実施の形態1との違いは、バリア点火プラグ1に印加される電圧を検出するための分圧コンデンサ回路21が、バリア点火プラグ1に対して並列接続されている点と、圧力センサ8が除去されている点である。分圧コンデンサ回路21は、第1の分圧コンデンサ22と第2の分圧コンデンサ23を直列接続したものであり、第1の分圧コンデンサ22側がバリア点火プラグ1と共振用コイル10の間に接続され、第2の分圧コンデンサ23側は基準電位に接続されている。この分圧コンデンサ回路21は、バリア点火プラグ1に印加される5kV〜40kV程度の高電圧を分圧し、第2の分圧コンデンサ23において0.1V〜100V程度の電圧として検出する。したがって、第2の分圧コンデンサ23のキャパシタンス値は、第1の分圧コンデンサ22に対して十分大きいものとし、例えば第1の分圧コンデンサ22に対して400倍以上程度のキャパシタンス値を持つものを選定する。
制御回路6では、第2の分圧コンデンサ23で検出した電圧値により、バリア点火プラグ1にて放電が開始したタイミングを判定する。すなわち、図4に示す放電開始タイミングである時刻t2においては、放電によるインピーダンス変化で変動するバリア点火プラグ1への印加電圧の変化を観測し検出する。
図3および図4の信号S1は、放電の発生を検出した際に、制御回路6からECU7に出力される放電検出信号の一例である。ここでは、信号S1の立ち上がりが放電開始タイミングを示している。
次に、実施の形態2のタイミング動作について説明する。図4は、本発明の実施の形態2におけるバリア放電点火装置の動作シーケンスを説明するタイミング図である。この実施の形態2のバリア放電点火装置の動作において、実施の形態1と異なる点は、バリア点火プラグ1にて放電が発生した際に制御回路6が、第2の分圧コンデンサ23の電圧値から放電を検出し、放電開始タイミングをECU7に信号S1(制御回路6の放電検出信号)を出力する点と、圧力センサ8による燃焼圧力の検出が無い点である。
時刻t1の動作は、図2で説明した実施の形態1における動作と同様で、異なる点は、時刻t2において、制御回路6が第2の分圧コンデンサ23の電圧波形(図示せず)より、バリア点火プラグ1における放電開始を検出することである。制御回路6は、放電開始をECU7に通知するために、時刻t2にて信号S1を立ち上がりで出力する。ECU7は信号S1を受けて、放電開始タイミングである時刻t2を記録する。
時刻t1から任意の放電終了時刻t4にて、ECU7は信号S0を立ち下げ、制御回路6から出力される信号G0が立ち下がり、インバータ4は停止する。時刻t4は、放電開始時刻t2から放電終了時刻t4までの時間が、点火及び燃料の燃焼に必要な放電時間に対して十分に長くなるように、ECU7にて予め決められている。
内燃機関では、実施の形態1で説明した図2における時間差t11が大きいほど、燃費が低下する。この実施の形態2では、最大トルクが得られる時刻t0が、放電開始タイミングである時刻t2に近づくように、点火周期毎の信号S0の立ち上がりタイミングである時刻t1をフィードバック制御する。前記フィードバック制御により、時刻t2が検出できない場合においても時間差t11を低減できるため、燃焼タイミングのずれによる内燃機関の燃費の悪化を抑制することができる。
以上のような動作が、内燃機関の点火周期毎に繰り返される。
このように、実施の形態2では、バリア点火装置はバリア点火プラグ1と、バリア点火プラグ1の電極間に放電を発生させるために交流電圧を5kV〜40kVまで昇圧する共振回路2と、交流電圧を昇圧して共振回路に供給するトランス3と、交流電圧を供給するインバータ4と、バッテリ電圧を昇圧してインバータ4へ出力するDC/DCコンバータ5と、制御回路6と、ECU7と、バッテリ9と、バリア点火プラグ1に印加される電圧を検出するための分圧コンデンサ回路21によって構成されており、ECU7が最大トルクを得られる燃焼による圧力上昇のタイミングである時刻t0と第2の分圧コンデンサ23から検出される放電開始タイミングである時刻t2が近づくように、点火周期毎のインバータ4の駆動開始タイミングである時刻t1をフィードバック制御することによって、圧力センサ8が無くても、圧力上昇のタイミングのずれによって生じる内燃機関の燃費の悪化を抑制することができる。
また、放電開始タイミングt2から燃焼による圧力上昇時刻t3までの時間差t21は、エンジン構造とエンジンの動作条件により定まるため、予め測定して設定することにより、圧力センサ8を用いた場合と同等の燃費の悪化抑制効果を得ることができる。具体的には、予めECU7または制御回路6に、条件毎の時間差t21を記録しておき、これを時刻t2に加算することにより、圧力センサ8が無い場合においても圧力上昇時刻t3を得ることができる。この時刻t3と最大トルクが得られる時刻t0が近づくように制御すれば、実施の形態1と同等の燃費の悪化抑制効果を得ることができる。
なお、実施の形態2では、圧力センサ8が無い場合においても、実施の形態1と同様の燃費の悪化抑制効果を得る手法について説明した。これによる利点は、圧力センサ8とその関連部品が不要になることによるコスト低減である。実施の形態3では、DC/DCコンバータ5の出力電圧を制御することにより、電力損失を低減する手法について説明する。
実施の形態3
次に、この発明の実施の形態3について説明する。
図5は、実施の形態3によるバリア放電点火装置の回路構成を示す図であって、実施の形態2の図3との違いは、制御回路6からDC/DCコンバータ5に出力される出力電圧目標値の信号G1が追加されている点である。
信号G1は、制御回路6からDC/DCコンバータ5に出力される出力電圧目標値の一例であり、この信号の増減に応じてDC/DCコンバータ5の出力電圧が増減する。
次に、実施の形態3におけるバリア点火装置の基本動作を説明する。バリア点火装置では、DC/DCコンバータ5が制御回路6の出力電圧目標値の信号G1を参照し、バッテリ9の電圧を50V〜600Vの範囲の電圧に昇圧する。したがって、制御回路6は信号G1によってDC/DCコンバータ5の出力電圧を段階的に変更することが可能である。ここで、DC/DCコンバータ5の出力電圧はバリア点火プラグ1への印加電圧と比例するため、制御回路6はDC/DCコンバータ5の出力電圧により、放電開始タイミングである時刻t2を制御することが可能である。例えば、DC/DCコンバータ5の単位時間当たりの出力電圧変化量を大きくすれば、バリア点火プラグ1に印加される電圧の変化量も大きくなるため、時刻t1から時刻t2までの時間を短くすることができる。
また、この実施の形態3では、DC/DCコンバータ5以外の動作は、実施の形態2と等しいものとしている。
次に、タイミング動作について説明する。図6は、本発明の実施の形態3におけるバリア放電点火装置の動作シーケンスを説明するタイミング図である。信号C0は点火周期におけるDC/DCコンバータ5の出力電圧を示しており、縦軸は電圧である。時刻t1の動作は、図2によって説明した実施の形態1における動作と等しい。
実施の形態2における図4と異なる点は、時刻t1から時刻t2までの期間中に、DC/DCコンバータ5の出力電圧を段階的に増加させ、バリア点火プラグ1に印加される電圧を段階的に増加させることである。時刻t2にて、バリア点火プラグ1に印加される電圧が放電開始電圧に達したところで、バリア点火プラグ1に放電が発生し、点火が行なわれる。このとき、バリア点火プラグ1に印加される電圧の変化量は、DC/DCコンバータ5の出力電圧増加による振幅増加と共振による電圧振幅成長が重畳された値となる。したがって、ECU7は、DC/DCコンバータ5の出力電圧を段階的に変化させる際の変化量によって、スイッチング素子駆動信号を出力した時刻t1から放電が開始する時刻t2までの時間差t31を制御することができる。
時刻t2において、分圧コンデンサ回路21にてバリア点火プラグ1の放電開始を検出した際に、その際の信号G1の出力をL状態で固定し、DC/DCコンバータ5の出力電圧を所定値で一定とする。時刻t2にて、バリア点火プラグ1に印加される電圧とバリア点火プラグ1の放電開始電圧は等しいため、DC/DCコンバータ5の出力電圧はバリア点火プラグ1の放電開始に必要な最低限の値に固定することとなる。したがって、インバータ4と、トランス3と、共振回路2と、バリア点火プラグ1に過剰な電圧が印加されることはなくなるため、各部の印加電圧に依存する損失を抑制することができる。
時刻t4において、実施の形態2と同様にして、インバータ4は停止する。ここで、制御回路6は、DC/DCコンバータ5の出力電圧を時刻t1の値に戻すように、G2の立ち上がりを出力する。このときDC/DCコンバータ5の出力電圧は、時刻t1の値に戻さなくてもよい。
以上の動作を点火周期毎に繰り返す。
このように、実施の形態3では、バリア点火装置はバリア点火プラグ1と、バリア点火プラグ1の電極間に放電を発生させるために交流電圧を5kV〜40kVまで昇圧する共振回路2と、交流電圧を昇圧して共振回路に供給するトランス3と、交流電圧を供給するインバータ4と、バッテリ電圧を昇圧してインバータ4へ出力するDC/DCコンバータ5と、制御回路6と、ECU7と、バッテリ9と、バリア点火プラグ1に印加される電圧を検出するための分圧コンデンサ回路21によって構成されており、インバータ4の動作開始とともに、制御回路6が、DC/DCコンバータ5の出力電圧を段階的に増加させる際の電圧変化量を増減することにより、ECU7がスイッチング素子駆動信号を出力した時刻t1から放電が開始する時刻t2までの時間差t31を制御することができる。また、実施の形態3では、インバータ4の動作開始とともに、DC/DCコンバータ5の出力電圧を段階的に増加させることにより、インバータ4と、トランス3と、共振回路2と、バリア点火プラグ1に対して、過剰な電圧が印加されることを防ぎ、印加電圧に依存する損失を抑制することができる。
さらに、本実施の形態3では、実施の形態1の図1において説明した圧力センサ8を分圧コンデンサ回路21の代わりに用いることで、分圧コンデンサ回路21を用いた時と類似の効果を得ることができる。具体的には、分圧コンデンサ回路21にて放電開始を検出した時刻t2に行った動作シーケンスを、圧力センサ8にて燃焼による圧力上昇を検出した時刻に行えばよい。また圧力センサ8を用いる場合には、実施の形態1と同様に、燃焼による圧力上昇を検出すると同時にインバータ4を停止することによって、バリア点火プラグ1に余分な電力が投入されることを防ぎ、点火に寄与しない電力損失の発生を防ぐことができる。
実施の形態3では、DC/DCコンバータ5の出力電圧を制御することにより、電力損失を低減する手法について説明した。これによりバッテリ9の電力消費が減るため、発電のために要していた燃料消費量を低減し、燃費向上に寄与する効果がある。実施の形態4では、タイミング制御ではなく、共振電圧の共振成長時間自体を短くすることにより、燃費の悪化を抑制する手法について記述する。
実施の形態4
次に、この発明の実施の形態4について説明する。
図7は、実施の形態4によるバリア放電点火装置の回路構成を示す図である。図5の実施の形態3との違いは、図1において説明した実施の形態1の圧力センサ8が追加されている点である。
信号S2は、ECU7が制御回路6に点火タイミングを伝達する点火信号の一例であり、立ち上がりが点火タイミング指令を示し、信号S2の立ち下がりがインバータ回路停止指令を示している。すなわち、点火信号は、指令信号として理解できる。
次に動作について説明する。図8は、本発明の実施の形態4におけるバリア放電点火装置の動作シーケンスを説明するタイミング図である。
信号G0は、常にH状態で出力され、インバータ4は交流電圧を常時出力しており、バリア点火プラグ1には放電が発生しない程度の電圧が常に印加されている。インバータ4のスイッチング素子をオンオフする駆動周波数は、共振回路2の共振周波数とする。
このとき制御回路6では、バリア点火プラグ1に印加される電圧がバリア点火プラグ1の放電開始電圧を上回ることがないように、信号G1によってDC/DCコンバータ5の出力電圧目標値を設定することによって、DC/DCコンバータ5の出力をフィードバック制御する。
放電開始電圧の推定方法には、例えば前の点火周期において分圧コンデンサ回路21にて検出した値から換算する方法、または圧力と放電開始電圧の関係を予め測定して設定することにより放電開始電圧を推定する方法等がある。後者の具体的な方法は、バリア点火プラグ1の放電開始電圧と圧力の関係の情報を予め測定し、テーブルとしてECU7の内部に備えておいて、内燃機関の点火周期に応じて適当なタイミングで検出された圧力の値から、ECU7の内部に保管したテーブルに基づいて放電開始電圧を推定するものである。この方法では、内燃機関の点火周期に応じて圧力を検出したが、電源回路の駆動周波数に応じた適当なタイミングで圧力を検出してもよい。
時刻t5にて、ECU7は信号S2を立ち上げる。信号S2の立ち上がりを受けて、制御回路6は、バリア点火プラグ1に印加される電圧が放電開始電圧に達するように、DC/DCコンバータ5の出力電圧を大きくする制御を行う。このとき共振回路2では予め共振による電圧増幅が行われていたため、共振電圧の共振成長時間が短縮されており、ECU7からの信号S2の立ち上がりから内燃機関内の燃焼開始までに要する遅延時間は、予め電圧増幅を行っていない場合に比べて短くなる。したがって、点火周期毎の共振成長時間の変動によって生じるタイミングのずれを小さくできるため、燃焼による圧力上昇のタイミングのずれによる内燃機関の燃費悪化を抑制することができる。
時刻t2にて、分圧コンデンサ回路21が放電を検出した際に、制御回路6は、バリア点火プラグ1に印加される電圧が時刻t2の値で一定となるように制御を実施する。これにより、バリア点火プラグ1に印加される電圧と放電開始電圧は等しくなるため、インバータ4と、トランス3と、共振回路2と、バリア点火プラグ1に過剰な電圧が印加されることはなくなり、各部の印加電圧に依存する損失を抑制することができる。このとき、バリア点火プラグ1に印加される電圧は、必ずしも時刻t2の電圧値である必要はなく、時刻t2の電圧値以上であればよい。
時刻t3にて、圧力センサ8が燃料の燃焼による圧力上昇を検出した後に、制御回路6は、点火タイミング以外において、バリア点火プラグ1に印加される電圧が放電開始電圧を下回るように制御を実施する。
以上のような動作が、内燃機関の点火周期毎に繰り返される。
このように、実施の形態4では、バリア点火装置は、バリア点火プラグ1と、バリア点火プラグ1の電極間に放電を発生させるために交流電圧を5kV〜40kVまで昇圧する共振回路2と、交流電圧を昇圧して共振回路に供給するトランス3と、交流電圧を供給するインバータ4と、バッテリ電圧を昇圧してインバータ4へ出力するDC/DCコンバータ5と、制御回路6と、ECU7と、内燃機関内の圧力を検出する圧力センサ8と、バッテリ9と、バリア点火プラグ1に印加される電圧を検出するための分圧コンデンサ回路21によって構成されており、共振回路2にて予め共振による電圧増幅を行うことで共振電圧の共振成長時間を短縮し、点火タイミング指令から放電開始までに要する遅延時間を短くすることによって、共振成長時間の変動による内燃機関の燃費の悪化を抑制することができる。
なお、バリア点火プラグ1に印加される電圧は、インバータ4のスイッチング素子駆動周波数を共振回路2の共振周波数から遠ざけることにより小さくなり、共振周波数に近づけることにより大きくなるため、バリア点火プラグ1に印加される電圧の制御はインバータ4のスイッチング素子駆動周波数を変えることにより実施してもよい。また、インバータ4のスイッチング素子駆動周波数とDC/DCコンバータ5の出力電圧の両方を変えることにより実施してもよい。
また、本実施の形態4における時刻t3にインバータ4を停止し、次の点火周期の時刻t5に対して共振成長に要する時間だけ前にインバータ4を動作させることにより、点火に寄与しない時間にバリア放電点火装置を動作させることによって生じる損失を低減することができる。
なお、実施の形態4では、共振電圧の共振成長時間自体を短くすることにより、燃費の悪化を抑制する手法について説明した。これは、実施の形態1から3までのタイミング制御において、本実施の形態4の手法を用いることにより、共振成長時間と放電開始から燃焼までに要する時間の和である時間差t11が小さくなり、点火周期毎の時間差t11の違いによる誤差も小さくなるため、より正確にタイミング制御を行うことができ、燃費の悪化を抑制することに寄与する。
なお、本発明では、実施の形態1から4までをどのように組み合わせて用いてもよい。また、本発明は、内燃機関用点火装置として、バリア放電点火装置を取り上げて説明したが、バリア放電を用いた点火装置に限らず、共振回路を含む点火装置であれば、内燃機関用点火装置のどれに適用しても良いことはいうまでもない。
1 バリア点火プラグ、2 共振回路、3 トランス、4 インバータ、
5 DC/DCコンバータ、6 制御回路、7 ECU、8 圧力センサ、
9 バッテリ、10 共振用コイル、21 分圧コンデンサ回路、
22 第1の分圧コンデンサ、23 第2の分圧コンデンサ、
100 電源回路、200 制御手段

Claims (9)

  1. 内燃機関の点火プラグに放電電圧を印加する共振回路と、前記共振回路に交流電圧を供給する電源回路と、前記内燃機関の燃焼における圧力上昇のタイミングを検出する圧力センサと、最大トルクが得られるタイミングを算出するエンジンコントロールユニットと、前記圧力センサにより検出された前記圧力上昇のタイミングおよび前記エンジンコントロールユニットにより算出された前記最大トルクが得られるタイミングに基づいて前記電源回路から前記共振回路への交流電圧の供給のタイミングを制御する制御回路とを備えたことを特徴とする内燃機関用点火装置。
  2. 前記点火プラグは電極が誘電体で覆われたバリア点火プラグであって、前記電源回路は前記共振回路に交流電圧を供給するインバータと、バッテリ電圧を昇圧して前記インバータに所定の放電開始電圧以上の電圧を供給するDC/DCコンバータとを備え、前記制御回路は前記エンジンコントロールユニットからの指令信号を受けて前記インバータの動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火装置。
  3. 前記共振回路に交流電圧を昇圧して供給するトランスを前記電源回路に備えた請求項2に記載の内燃機関用点火装置。
  4. 前記内燃機関における燃焼による圧力上昇を検出する圧力センサを備え、前記エンジンコントロールユニットは前記圧力センサの情報に基づいて前記インバータの動作タイミングを指示する指令信号を出力することを特徴とする請求項2または3に記載の内燃機関用点火装置。
  5. 前記エンジンコントロールユニットは、前記内燃機関の回転数と燃焼の火炎伝播時間の関係から最大トルクが得られる圧力上昇のタイミングを算出し、前記燃焼による圧力上昇のタイミングと前記内燃機関にて最大トルクを得られるタイミングが近づくように、前記指令信号を出力することを特徴とする請求項2または3に記載の内燃機関用点火装置。
  6. 前記制御回路は、制御信号によって前記DC/DCコンバータの出力電圧を変更することにより前記バリア点火プラグにて放電開始するタイミングを制御することを特徴とする請求項2または3に記載の内燃機関用点火装置。
  7. 前記制御回路は、点火タイミング以外において前記バリア点火プラグに印加される電圧が放電開始電圧を下回るように制御しつつ、点火タイミングにおいて前記DC/DCコンバータの出力電圧を制御して放電を開始することにより、共振電圧の共振成長時間を短縮することを特徴とする請求項に記載の内燃機関用点火装置。
  8. 前記制御回路は、前記インバータのスイッチング素子駆動周波数を制御することにより前記バリア点火プラグにて放電開始するタイミングを制御することを特徴とする請求項2からのいずれか一項に記載の内燃機関用点火装置。
  9. 前記制御回路は、点火タイミング以外において前記バリア点火プラグに印加される電圧が放電開始電圧を下回るように制御しつつ、点火タイミングにおいて前記インバータのスイッチング素子駆動周波数を前記共振回路の共振周波数に近づけることにより、共振電圧の共振成長時間を短縮するようにしたことを特徴とする請求項2からのいずれか一項に記載の内燃機関用点火装置。
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