JP6270300B1 - ブレーキ制御装置、車両、ブレーキ制御方法及びプログラム - Google Patents
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Abstract
Description
以下、第1の実施形態に係る電気車の車両及びブレーキ制御装置について、図1〜図6を参照しながら説明する。
図1は、第1の実施形態に係る電気車の全体構成を示す図である。
図1に示す電気車100は、例えば在来線に利用される鉄道車両である。電気車100は、複数の車両1が連結されてなる。ここで、複数の車両1はいずれも同一の構成であるため、図1には一つの車両1の構成のみを図示している。
本実施形態に係る車両1には、車両筐体の前段及び後段のそれぞれにおいて、ブレーキ制御装置2、ブレーキシリンダ3及び空気供給タンクSRが1つずつ設置される。なお、他の実施形態によっては、車両1は、ブレーキ制御装置2、ブレーキシリンダ3及び空気供給タンクSRのセットを一組のみ搭載する態様であってもよい。
また、電気車100の運転室100aには、運転士が操作するブレーキ設定器5(マスターコントローラ)と、保安ブレーキスイッチ6とが設置されている。
なお、空気供給タンクSRには、予め用意された圧縮空気が封入されている。ブレーキ制御装置2は、この空気供給タンクSRに封入された圧縮空気を、運転士の操作に対応する所望の圧力に調整しながらブレーキシリンダ3に向けて送出する。
運転士は、電気車100に対し所望するブレーキ力を発生させるべくブレーキ設定器5のハンドル操作を行う。ここで「常用ブレーキ」を指定するハンドル操作が行われた場合、ブレーキ設定器5は、上記電気回路の一つを通じて、ブレーキ制御装置2に向けて常用ブレーキ指令を送出する。なお、「常用ブレーキ」は、駅等における電気車100の通常の減速、停止を行う際に用いられる。この「常用ブレーキ」は、ブレーキ設定器5のハンドル位置ごとに対応する複数のブレーキ力を指定可能な多段式とされていてもよい。
「非常用ブレーキ」を指定するハンドル操作が行われた場合、ブレーキ設定器5は、常用ブレーキ指令が伝送される電気回路とは異なる電気回路を通じて、ブレーキ制御装置2に向けて非常用ブレーキ指令を送出する。「非常用ブレーキ」は、緊急時に確実に電気車100を停止させる必要が生じた場合等に用いられる。また、非常用ブレーキ指令は、運転士によるブレーキ設定器5のハンドル操作の他、ATS(Automatic Train Stop)を通じて出力される場合や、非常用ブレーキ指令が伝送される電気回路の断線によって自動的に出力される場合がある。
図2は、第1の実施形態に係るブレーキ制御装置の構成を示す図である。
図2に示すように、ブレーキ制御装置2は、ブレーキ制御器20(BCU;Brake Control Unit)と、供給停止電磁弁21A(AV)と、排気電磁弁21R(RV)と、非常用電磁弁22(EMV)と、応荷重弁23と、切替電磁弁24(SV)と、中継弁25と、AC圧力検知センサ26Aと、BC圧力検出センサ26Bとを備えている。
以下の説明においては、上述の各種弁を接続する空気回路において、空気供給タンクSRに近い側を「上流側」とし、ブレーキシリンダ3に近い側を「下流側」として互いの位置関係を説明する。
ブレーキ制御器20は、ブレーキ設定器5(図1)を通じて、運転士によるブレーキ操作に応じた電気信号であるブレーキ指令(上述した常用ブレーキ指令、非常用ブレーキ指令)を受け付ける。ブレーキ制御器20は、当該ブレーキ指令に応じて、各種弁(後述する供給停止電磁弁21A、排気電磁弁21R及び切替電磁弁24)の制御を行う。
なお、ブレーキ制御器20が行う各種弁の制御の種類として、常用ブレーキ指令に従って行う「常用の弁制御」、非常用ブレーキ指令に従って行う「非常用の弁制御」がある。これらに加え、本実施形態に係るブレーキ制御器20は、非常用ブレーキ指令に従って開動作すべき非常用電磁弁22(後述)の動作に異常があると判断された場合に「異常検知時の弁制御」を行う。ブレーキ制御器20が行うこれら弁制御の詳細については後述する。
供給停止電磁弁21Aは、空気供給タンクSRと中継弁25の指令室ACとを接続する空気回路上において、切替電磁弁24の下流側に配置される。供給停止電磁弁21Aは、開状態となることで、空気供給タンクSRの圧縮空気を中継弁25の指令室ACに送出し、所定の圧力を印加させる。
排気電磁弁21Rは、中継弁25の指令室ACと外気(EX)とを繋ぐ空気回路(配管)上に配置される。排気電磁弁21Rは、開状態となることで、指令室ACに送出された圧縮空気を外気に開放し、当該指令室ACの圧力を大気圧まで減少させる。
なお、供給停止電磁弁21A及び排気電磁弁21Rは、主に、常用ブレーキ指令に応じて開閉制御されるものである。以下の説明においては、供給停止電磁弁21A及び排気電磁弁21Rを総称して「常用電磁弁21」とも表記する。
非常用電磁弁22(EMV)は、ブレーキ設定器5から出力される非常用ブレーキ指令を直接入力し、当該非常用ブレーキ指令に従って直接的に(ブレーキ制御器20を介さずに)開閉動作する。具体的には、非常用電磁弁22は、非常用ブレーキ指令が入力された場合には、当該非常用ブレーキ指令に基づいて直ちに消磁され、開状態となる。
応荷重弁23は、非常用電磁弁22の上流側に接続され、車両1(図1)の荷重に応じた開度となる弁である。例えば、多くの乗客が車両1に乗車している場合、その荷重に従い応荷重弁23がより大きい開度となるため、非常用ブレーキ指令が出力された際には、より強いブレーキ力が働く。これにより、非常用ブレーキ作動時における車両1の制動特性を、乗車率によらず一定にすることができる。
切替電磁弁24の入力ポートの一方(ポートs1)は、非常用電磁弁22及び応荷重弁23を介して空気供給タンクSRに接続され、入力ポートの他方(ポートs2)は、空気供給タンクSRに直接接続される。
運転士の操作において「常用ブレーキ」が指定された場合には、切替電磁弁24は、ポートs2−s3間を接続するように制御される。即ち、常用ブレーキ中においては、非常用電磁弁22及び応荷重弁23は機能せず、専ら、常用電磁弁21(供給停止電磁弁21A、排気電磁弁21R)の開閉動作によってブレーキ制御がなされる。他方、運転士の操作において「非常用ブレーキ」が指定された場合には、切替電磁弁24は、ポートs1−s3間を接続するように制御される。即ち、非常用ブレーキ中においては、非常用電磁弁22及び応荷重弁23を介してブレーキ制御がなされる。
運転士のハンドル操作において「常用ブレーキ」が指定された場合、指令室ACには、切替電磁弁24のポートs2−s3の流路、及び、供給停止電磁弁21Aを介して圧縮空気が入力される。他方、運転士のハンドル操作において「非常用ブレーキ」が指定された場合、指令室ACには、応荷重弁23、非常用電磁弁22、切替電磁弁24のポートs1−s3の流路、及び、供給停止電磁弁21Aを介して圧縮空気が入力される。
また、BC圧力検出センサ26B(AET)は、ブレーキシリンダ3のブレーキ力に対応する圧力を検出可能な圧力センサである。具体的には、BC圧力検出センサ26Bは、中継弁25の出力ポート(ポートt3)とブレーキシリンダ3とを接続する空気回路上に設けられ、ブレーキシリンダ3に印加される空気圧力を検出する。BC圧力検出センサ26Bによって取得された圧力検出値は、電気信号としてブレーキ制御器20に出力される。後述するように、ブレーキ制御器20は、BC圧力検出センサ26Bによって取得された圧力検出値に基づいて、非常用電磁弁22の異常判定を行う。
図3は、第1の実施形態に係るブレーキ制御器の機能を示す図である。
本実施形態に係るブレーキ制御器20は、予め用意されたプログラムに従って動作することで、常用/非常用弁制御部200、非常用ブレーキ指令検知部201、異常判定部202、異常信号検知部203、及び、異常時弁制御部204として機能する。
非常用ブレーキ指令検知部201は、ブレーキ設定器5(図1)からの非常用ブレーキ指令の入力を検知する。なお、非常用ブレーキ指令検知部201によって非常用ブレーキ指令の入力が検知された場合、上述の常用/非常用弁制御部200は、供給停止電磁弁21A、排気電磁弁21R及び切替電磁弁24に対して「非常用の弁制御」を行う。
異常判定部202は、非常用ブレーキ指令検知部201によって非常用ブレーキ指令の入力が検知された場合、非常用電磁弁22が正常に動作しているか否かを判定する。異常判定部202は、BC圧力検出センサ26Bからの圧力検出値を参照することで、非常用電磁弁22の動作に異常がないか否かを判定する。また、異常判定部202は、「非常用電磁弁22の動作に異常がある」と判定した場合、異常信号検知部203に向けて異常信号を出力する。
また、異常判定部202は、「非常用電磁弁22が正常に動作しているか否かの判定」を行うために、更に、圧力検出値取得部202aと、圧力判定部202bと、異常信号出力部202cとしての機能を有している。これらの各種機能については後述する。
異常信号検知部203は、異常判定部202からの異常信号の入力を検知する。
異常時弁制御部204は、異常信号検知部203によって異常信号の入力が検知された場合に、供給停止電磁弁21A、排気電磁弁21R及び切替電磁弁24に対して「異常検知時の弁制御」を行う。
図4、図5は、それぞれ、第1の実施形態に係るブレーキ制御器の処理フローを示す第1、第2の図である。
また、図6は、第1の実施形態に係るブレーキ制御器の処理を説明するための図である。
以下、図4〜図6を参照しながら、ブレーキ制御器20の処理の流れについて詳細に説明する。
ここで非常用ブレーキ指令が入力されていない場合(ステップS00:NO)、運転士のハンドル操作において非常用ブレーキが指定されていないので、ブレーキ制御器20の常用/非常用弁制御部200は、供給停止電磁弁21A、排気電磁弁21R及び切替電磁弁24に対し「常用の弁制御」を行う(ステップS01)。
「常用の弁制御」において、常用/非常用弁制御部200は、ブレーキ設定器5から常用ブレーキ指令の入力を受け付ける(ステップS011)。ここで、常用/非常用弁制御部200は、常用ブレーキ指令に応じた圧力目標値(ブレーキシリンダ3(図2)に印加すべき圧力)を設定する。
次に、常用/非常用弁制御部200は、制御信号により切替電磁弁24のポートs2とポートs3とを接続する(ステップS012)。これにより、空気供給タンクSRと供給停止電磁弁21Aとが空気回路によって直接接続される(図2参照)。
次に、常用/非常用弁制御部200は、AC圧力検出センサ26Aから圧力検出値を取得する(ステップS013)。
次に、常用/非常用弁制御部200は、ステップS013で取得した圧力検出値が、常用ブレーキ指令に応じた圧力目標値となっているか否かを判定する(ステップS014)。
圧力検出値が圧力目標値に到達していない場合(ステップS014:NO)、常用/非常用弁制御部200は、供給停止電磁弁21Aを開制御(及び、排気電磁弁21Rを閉制御)し、中継弁25の指令室AC(図2)に圧力を印加させる(ステップS015)。これにより、ブレーキシリンダ3に高い圧力が印加され、運転士のハンドル操作に応じたブレーキ力が発生する。
その後、常用/非常用弁制御部200は、ステップS013〜S015の処理を繰り返し、圧力検出値が圧力目標値と一致した時点(ステップS014:YES)で「常用の弁制御」を完了する。
「非常用の弁制御」において、常用/非常用弁制御部200は、切替電磁弁24のポートs1とポートs3とを接続する(ステップS021)。これにより、空気供給タンクSRと中継弁25の指令室ACとの間に非常用電磁弁22及び応荷重弁23が接続される(図2参照)。なお、この場合、非常用電磁弁22(図2)には直接非常用ブレーキ指令が入力されているので、当該非常用電磁弁22は、(正常に動作していれば、)ブレーキ制御器20の制御にかかわらず開状態となっている。
続いて、ブレーキ制御器20の異常判定部202は、非常用電磁弁22が正常に動作しているか否かを判定する(ステップS023)。異常判定部202によるステップS023の処理については、図6を参照しながら説明する。
図6に示す例では、時刻tにおいて非常用ブレーキ指令が出力されることで、非常用電磁弁22に対して印加される電圧が“閉指令電圧”(>0V)から“開指令電圧”(=0V)に推移する。非常用電磁弁22が正常に動作する場合、当該電圧レベルの推移により非常用電磁弁22が消磁され、開状態となる。したがって、図6下段のグラフの曲線C1に示すように、時刻tにおいて直ちにブレーキシリンダ3に圧縮空気が送出され、所定の非常用ブレーキ圧力が印加される。
他方、非常用電磁弁22が故障等により正常に動作しない場合、非常用ブレーキ指令に係る電圧レベルの推移によっても非常用電磁弁22は閉状態のままとなる。そうすると、非常用ブレーキ指令が出力された時刻t以降においてブレーキシリンダ3の圧力は上昇しない。
続いて、圧力判定部202b(図3)は、非常用ブレーキ指令を取得したタイミング(時刻t)から一定時間内に、BC圧力検出センサ26Bから取得した圧力検出値が予め規定された判定閾値に到達しているか否かを判定する。
そして、異常信号出力部202c(図3)は、圧力検出値が判定閾値に到達していない場合には、非常用電磁弁22の動作に異常があるものと判断し、異常信号を出力する。
異常信号検知部203が異常信号の入力を検知しなかった場合(ステップS024:NO)、非常用電磁弁22による非常用ブレーキが正常に動作していると考えられるので、常用/非常用弁制御部200は「非常用の弁制御」を完了する。
「異常検知時の弁制御」において、異常時弁制御部204は、圧力目標値を「常用最大圧力」に設定する(ステップS031)。ここで、「常用最大圧力」は、非常用電磁弁22が正常に動作する場合において、非常用ブレーキ時にブレーキシリンダ3に印加される圧力(非常用ブレーキ圧力)に相当する圧力とされる。
次に、異常時弁制御部204は、切替電磁弁24のポートs2とポートs3とを接続する(ステップS032)。これにより、空気供給タンクSRと供給停止電磁弁21Aとが空気回路によって直接接続される(図2参照)。
次に、異常時弁制御部204は、BC圧力検出センサ26Bから圧力検出値を取得する(ステップS033)。
次に、異常時弁制御部204は、ステップS033で取得した圧力検出値が、常用ブレーキ指令に応じた圧力目標値(常用最大圧力)となっているか否かを判定する(ステップS034)。
圧力検出値が圧力目標値(常用最大圧力)に到達していない場合(ステップS034:NO)、異常時弁制御部204は、供給停止電磁弁21Aを開制御(及び、排気電磁弁21Rを閉制御)し、中継弁25の指令室AC(図2)に圧力を印加させる(ステップS035)。中継弁25は、指令室ACに印加された指令圧力に対応して開度を上げ、ブレーキシリンダ3へ印加させる圧力を上昇させる。
その後、異常時弁制御部204は、ステップS033〜S035の処理を繰り返し、圧力検出値が圧力目標値(常用最大圧力)と一致した時点(ステップS034:YES)で「異常検知時の弁制御」を完了する。これにより、ブレーキシリンダ3に常用最大圧力が印加され、非常用ブレーキ相当のブレーキ力が発生する。
以上の通り、第1の実施形態に係るブレーキ制御装置2は、ブレーキ制御器20(非常用ブレーキ指令検知部201)において非常用ブレーキ指令の入力を検知した場合に、非常用電磁弁22が正常に動作しているか否かの判定を行う。そして、ブレーキ制御器20(異常時弁制御部204)は、非常用電磁弁22が正常に動作していないと判断した場合(非常用電磁弁22に係る異常信号の入力を検知した場合)には、常用電磁弁21に対する「異常検知時の弁制御」を行う。
非常用電磁弁22の異常検知時において「異常検知時の弁制御」(図4のステップS03、図5のステップS031〜S035)が行われる結果、切替電磁弁24の流路がポートs2−s3に切り替えられるとともに、供給停止電磁弁21Aの動作に基づいて圧力制御がなされ、中継弁25の指令室ACに圧力が印加される。これにより、図6下段のグラフの曲線C2に示すように、非常用ブレーキ指令が出力されたタイミング(時刻t)から一定時間(1.2sec)経過後に、ブレーキシリンダ3に印加される圧力が上昇し、非常用ブレーキ圧力相当の圧力(常用最大圧力)が印加される。
これにより、非常用電磁弁22が故障して機能しない場合であっても、常用ブレーキ用の機構(常用電磁弁21)がそのバックアップとして機能する。したがって、ブレーキ制御装置2によれば、非常用ブレーキの信頼性を高めることができる。
次に、第2の実施形態に係る電気車の車両及びブレーキ制御装置について、図7〜図11を参照しながら説明する。
図7は、第2の実施形態に係る電気車の全体構成を示す図である。
図7に示すように、電気車100は、複数の車両1(1a、1b、1c)が連結されてなる。各車両1の構成は第1の実施形態と同様であり、各車両1には、それぞれ、2つずつブレーキ制御装置2が設置される。図7には、3台の車両1a、1b、1cと、計6個のブレーキ制御装置2a〜2fのみを図示し、それ以外の構成(ブレーキシリンダ3、保安ブレーキ装置4、空気供給タンクSR等)についての図示は省略している。
図7に示す例では、車両1bに搭載されたブレーキ制御装置2cにて非常用電磁弁22の故障が検知された例を示している。この場合、ブレーキ制御装置2cは、他のブレーキ制御装置2a、2b、2d、2e、2fの全てに異常信号を出力する。
以下、第2の実施形態に係るブレーキ制御装置2について詳細に説明する。なお、第2の実施形態に係るブレーキ制御装置2の構成は、第1の実施形態と同様であるため詳細な説明を省略する。
図8は、第2の実施形態に係るブレーキ制御器の機能を示す図である。
ブレーキ制御器20は、第1の実施形態と同様、常用/非常用弁制御部200、非常用ブレーキ指令検知部201、異常判定部202、異常信号検知部203及び異常時弁制御部204として機能する。このうち、常用/非常用弁制御部200及び非常用ブレーキ指令検知部201の機能については第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
「非常用電磁弁22の動作に異常がある」と判定された場合、第2の実施形態に係る異常判定部202(異常信号出力部202c)は、他のブレーキ制御装置2に向けて異常信号を出力する。
第2の実施形態に係る異常時弁制御部204が行う「異常検知時の弁制御」については後述する。
図9、図10は、それぞれ、第2の実施形態に係るブレーキ制御器の処理フローを示す第1、第2の図である。
また、図11は、第2の実施形態に係るブレーキ制御器の処理を説明するための図である。
以下、図9〜図11を参照しながら、第2の実施形態に係るブレーキ制御器20の処理の流れについて詳細に説明する。
非常用ブレーキ指令が出力された場合(ステップS00:YES)に行われる「非常用の弁制御」(ステップS02)について説明する。
次に、常用/非常用弁制御部200は、供給停止電磁弁21Aに対し開制御を行い、排気電磁弁21Rに対し閉制御を行う(ステップS022)。
続いて、ブレーキ制御器20の異常判定部202は、非常用電磁弁22が正常に動作しているか否かを判定する(ステップS023)。異常判定部202によるステップS023の処理については第1の実施形態と同様である(図6参照)。
非常用電磁弁22の動作に異常があると判定した場合(ステップS023a:YES)、異常判定部202(異常信号出力部202c)は、他の全てのブレーキ制御装置2に向けて異常信号を出力する(ステップS03a、図1参照)。
本実施形態に係るブレーキ制御器20は、ステップS03aにて異常信号を出力した後は、特別な処理を行うことなく弁制御を終了する。即ち、非常用電磁弁22が故障したブレーキ制御装置2においては、非常用ブレーキは作動しないままとなる。
他のブレーキ制御装置2から異常信号の入力を検知しない場合(ステップS024:NO)、他のブレーキ制御装置2の非常用電磁弁22による非常用ブレーキが正常に動作していると考えられるので、常用/非常用弁制御部200は「非常用の弁制御」を完了する。
「異常検知時の弁制御」において、異常時弁制御部204は、圧力目標値を「増幅圧力」に設定する(ステップS031)。ここで、「増幅圧力」は、第1の実施形態における「常用最大圧力」よりも大きい圧力とされる。即ち、異常時弁制御部204は、正常な非常用ブレーキ作動時に印加される非常用ブレーキ圧力よりも大きい値を圧力目標値として設定する。
次に、異常時弁制御部204は、切替電磁弁24のポートs2とポートs3とを接続する(ステップS032)。これにより、空気供給タンクSRと供給停止電磁弁21Aとが空気回路によって直接接続される(図2参照)。
次に、異常時弁制御部204は、BC圧力検出センサ26Bから圧力検出値を取得する(ステップS033)。
次に、異常時弁制御部204は、ステップS033で取得した圧力検出値が、常用ブレーキ指令に応じた圧力目標値(増幅圧力)となっているか否かを判定する(ステップS034)。
圧力検出値が圧力目標値(増幅圧力)に到達していない場合(ステップS034:NO)、異常時弁制御部204は、供給停止電磁弁21Aを開制御(及び、排気電磁弁21Rを閉制御)し、中継弁25の指令室AC(図2)に圧力を印加させる(ステップS035)。中継弁25は、指令室ACに印加された指令圧力に対応して開度を上げ、ブレーキシリンダ3へ印加させる圧力を上昇させる。
その後、異常時弁制御部204は、ステップS033〜S035の処理を繰り返し、圧力検出値が圧力目標値(増幅圧力)と一致した時点(ステップS034:YES)で「異常検知時の弁制御」を完了する。
以上のように、第2の実施形態に係る異常時弁制御部204は、圧力目標値が「常用最大圧力」(≒非常用ブレーキ圧力)よりも高い圧力である「増幅圧力」とされる。これにより、各ブレーキシリンダ3において、非常用ブレーキ時のブレーキ力よりも高いブレーキ力が発生する。
以上の通り、第2の実施形態に係るブレーキ制御装置2は、ブレーキ制御器20(非常用ブレーキ指令検知部201)において非常用ブレーキ指令の入力を検知した場合に、非常用電磁弁22が正常に動作しているか否かの判定を行う。そして、ブレーキ制御器20(異常判定部202)は、非常用電磁弁22が正常に動作していないと判断した場合に、他のブレーキ制御装置2に向けて異常信号を出力する。当該異常信号の入力を検知した他のブレーキ制御装置2は、それぞれにおいて、常用電磁弁21に対する「異常検知時の弁制御」を行う。
また、第2の実施形態に係る異常時弁制御部204は、異常信号検知部203が他のブレーキ制御装置2が備えるブレーキ制御器20から異常信号を受け付けた場合に、「異常検知時の弁制御」において、非常用電磁弁22に基づくブレーキ力(非常用ブレーキ圧力)よりも大きいブレーキ力となるように弁制御を行う。
図11は、非常用ブレーキ適用時において各ブレーキ制御装置2が発生させるブレーキ力を示している。
図11上段は、全てのブレーキ制御装置2において非常用電磁弁22が正常に動作する場合を模式的に示している。この場合、運転士によって非常用ブレーキが指定されると全てのブレーキ制御装置2a〜2fの非常用電磁弁22が開動作し、それぞれで均等にブレーキ力(100)を発生させる。
このようにすることで、故障が検知されたブレーキ制御装置2をあえて動作させないままとしながら、正常に動作する非常用ブレーキ相当のブレーキ力を発生させることができる。したがって、より安全に、非常用ブレーキのバックアップ機能を強化することができる。
上述した第1の実施形態及び第2の実施形態においては、ブレーキ制御装置2は、切替電磁弁24を有し、常用ブレーキ時、非常用ブレーキ時の各々において空気回路が切り替えられる態様とされていた。
しかし、他の実施形態においてはこの態様に限定されず、ブレーキ制御装置2の構成は、技術的思想の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。例えば、ブレーキ制御装置2は、以下に説明する第3の実施形態のように構成されていてもよい。
図12は、第3の実施形態に係るブレーキ制御装置の構成を示す図である。
図12に示すように、第3の実施形態に係るブレーキ制御装置2は、ブレーキ制御器20と、供給停止電磁弁21A(AV)と、排気電磁弁21R(RV)と、非常用電磁弁22(EMV)と、応荷重弁23と、二室中継弁25aと、AC圧力検出センサ26Aと、BC圧力検出センサ26Bとを備えている。
二室中継弁25aは、ポートt2からポートt3へと通じる流路の開度を、ポートt11を通じて指令室AC1に印加される圧力、及び、ポートt12を通じて指令室AC2に印加される圧力のうちの何れか一方に応じて増幅させるパイロット式の弁である。具体的には、二室中継弁25aは高位出力とされ、指令室AC1に印加された圧力、指令室AC2に印加された圧力のうちいずれか高い方の圧力を指令圧力とし、ポートt2からポートt3へと通じる流路の開度を当該指令圧力に応じて増幅させる。
以上、第1〜第3の実施形態に係るブレーキ制御装置2及び電気車100(車両1)について詳細に説明したが、ブレーキ制御装置2の具体的な態様は、上述のものに限定されることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を加えることは可能である。
具体的には、ブレーキ制御器20は、ブレーキシリンダ3に印加される圧力とは異なる圧力を検知可能な圧力検出センサを通じて圧力検出値を取得する態様であってもよい。例えば、ブレーキ制御器20は、中継弁25の指令室AC(図2)に印加される圧力を検出可能なAC圧力検出センサ26Aを通じて、当該指令室ACに印加される圧力の検出値を取得する態様であってもよい。
第1〜第3の実施形態に係る異常判定部202は、ブレーキシリンダ3に印加される圧力の検出値(圧力検出センサ26による圧力検出値)を判定閾値と対比することで、非常用電磁弁22の動作に異常があるか否かを判定した(図6参照)。しかし、他の実施形態に係るブレーキ制御器20は、下記(図13)のような態様で非常用電磁弁22の動作に異常があるか否かを判定してもよい。
図13は、その他の実施形態に係るブレーキ制御器の機能を示す図である。
速度検出値取得部202dは、電気車100に備えられた速度センサを通じて、現時点における車両1(電気車100)の走行速度を取得する。
速度判定部202eは、非常用ブレーキ指令を取得したタイミングから所定の時間内に、速度検出値が所定の判定閾値に到達しているか否かを判定する。
本実施形態に係る異常信号出力部202cは、速度検出値が判定閾値にまで低下していない場合に、異常信号を出力する。
また、ブレーキ制御器20の各種機能が、ネットワークで接続される複数の装置に渡って具備される態様であってもよい。
2 ブレーキ制御装置
20 ブレーキ制御器
200 常用/非常用弁制御部(常用弁制御部)
201 非常用ブレーキ指令検知部
202 異常判定部
202a 圧力検出値取得部
202b 圧力判定部
202c 異常信号出力部
202d 速度検出値取得部
202e 速度判定部
203 異常信号検知部
204 異常時弁制御部
21 常用電磁弁
21A 供給停止電磁弁(常用電磁弁)
21R 排気電磁弁(常用電磁弁)
22 非常用電磁弁
23 応荷重弁
24 切替電磁弁
25 中継弁
25a 二室中継弁
26A AC圧力検出センサ
26B BC圧力検出センサ
3 ブレーキシリンダ
4 保安ブレーキ装置
5 ブレーキ設定器
6 保安ブレーキスイッチ
100 電気車
100a 運転室
SR 空気供給タンク
AC、AC1、AC2 指令室
Claims (8)
- 電気車のブレーキ制御を行うブレーキ制御装置であって、
常用ブレーキ指令に基づいてブレーキ制御を行うブレーキ制御器と、
前記ブレーキ制御器によるブレーキ制御に従って動作する常用電磁弁と、
非常用ブレーキ指令に従って直接動作する非常用電磁弁と、
パイロット式の弁であって、前記常用電磁弁及び前記非常用電磁弁のうちの少なくとも何れか一方を介して入力される空気の圧力を指令圧力とし、当該指令圧力に対応する圧力の空気をブレーキシリンダに送出する中継弁と、
を備え、
前記ブレーキ制御器は、
前記常用電磁弁に対し、前記常用ブレーキ指令に基づく常用の弁制御を行う常用弁制御部と、
前記非常用ブレーキ指令の入力を検知する非常用ブレーキ指令検知部と、
前記非常用ブレーキ指令の入力を検知した場合に、非常用電磁弁に係る所定の異常信号の入力を検知する異常信号検知部と、
前記異常信号の入力を検知した場合に、前記常用電磁弁に対し、非常用電磁弁に係る異常検知時の弁制御を行う異常時弁制御部と、
を有するブレーキ制御装置。 - 前記ブレーキ制御器は、
前記ブレーキシリンダのブレーキ力に対応する圧力を検出可能な圧力センサから圧力検出値を取得する圧力検出値取得部と、
非常用ブレーキ指令を取得したタイミングから所定の時間内に、前記圧力検出値が所定の判定閾値に到達しているか否かを判定する圧力判定部と、
前記圧力検出値が前記判定閾値に到達していない場合に、前記異常信号を出力する異常信号出力部と、
を備える請求項1に記載のブレーキ制御装置。 - 前記ブレーキ制御器は、
前記電気車の走行速度を検出可能な速度センサから速度検出値を取得する速度検出値取得部と、
非常用ブレーキ指令を取得したタイミングから所定の時間内に、前記速度検出値が所定の判定閾値に到達しているか否かを判定する速度判定部と、
前記速度検出値が前記判定閾値まで低下していない場合に、前記異常信号を出力する異常信号出力部と、
を備える請求項1又は請求項2に記載のブレーキ制御装置。 - 前記異常信号検知部は、
他のブレーキ制御装置が備えるブレーキ制御器から前記異常信号を受け付ける
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のブレーキ制御装置。 - 前記異常時弁制御部は、
前記異常信号検知部が他のブレーキ制御装置が備えるブレーキ制御器から前記異常信号を受け付けた場合に、前記非常用電磁弁に基づくブレーキ力よりも大きいブレーキ力となるように弁制御を行う
請求項4に記載のブレーキ制御装置。 - 請求項1から請求項5の何れか一項に記載のブレーキ制御装置
を備える車両。 - 常用ブレーキ指令に基づいてブレーキ制御を行うブレーキ制御器と、前記ブレーキ制御器によるブレーキ制御に従って動作する常用電磁弁と、非常用ブレーキ指令に従って直接動作する非常用電磁弁と、パイロット式の弁であって前記常用電磁弁及び前記非常用電磁弁のうちの少なくとも何れか一方を介して入力される空気の圧力を指令圧力とし、当該指令圧力に対応する圧力の空気をブレーキシリンダに送出する中継弁と、を備えるブレーキ制御装置を用いて、電気車のブレーキ制御を行うブレーキ制御方法であって、
前記常用電磁弁に対し、前記常用ブレーキ指令に基づく常用の弁制御を行うステップと、
前記非常用ブレーキ指令の入力を検知するステップと、
前記非常用ブレーキ指令の入力を検知した場合に、非常用電磁弁に係る所定の異常信号の入力を検知するステップと、
前記異常信号の入力を検知した場合に、前記常用電磁弁に対し、非常用電磁弁に係る異常検知時の弁制御を行うステップと、
を有するブレーキ制御方法。 - 常用ブレーキ指令に基づいてブレーキ制御を行うブレーキ制御器と、前記ブレーキ制御器によるブレーキ制御に従って動作する常用電磁弁と、非常用ブレーキ指令に従って直接動作する非常用電磁弁と、パイロット式の弁であって、前記常用電磁弁及び前記非常用電磁弁のうちの少なくとも何れか一方を介して入力される空気の圧力を指令圧力とし、当該指令圧力に対応する圧力の空気をブレーキシリンダに送出する中継弁と、を備えるブレーキ制御装置を用いて、電気車のブレーキ制御を行うブレーキ制御装置のコンピュータである前記ブレーキ制御器を、
前記常用電磁弁に対し、前記常用ブレーキ指令に基づく常用の弁制御を行う常用弁制御部、
前記非常用ブレーキ指令の入力を検知する非常用ブレーキ指令検知部、
前記非常用ブレーキ指令の入力を検知した場合に、非常用電磁弁に係る所定の異常信号の入力を検知する異常信号検知部、
前記異常信号の入力を検知した場合に、前記常用電磁弁に対し、非常用電磁弁に係る異常検知時の弁制御を行う異常時弁制御部、
として機能させるプログラム。
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