JP6270210B2 - 筒内圧力センサ診断方法及び車両動作制御装置 - Google Patents
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Description
シリンダ内の圧力検出には、通常、圧力センサが用いられるが、高圧、高温の環境下で用いられるため、その信頼性の確保も重要な課題である。
内燃機関のシリンダ内に配設される筒内圧力センサの故障診断方法であって、
熱力学に基づいて設定された前記シリンダ内の圧力を算出する筒内圧力算出式を用いて前記筒内圧力の計算値を算出し、次いで、前記計算値と前記筒内圧力センサによって検出された筒内圧力との圧力差を求めることを1シリンダサイクル中に所定回数行い、次いで、前記1シリンダサイクル中に得られた圧力差の標準偏差を求めることを所定のシリンダサイクル数実行し、次いで、前記所定のシリンダサイクル数の実行により得られた標準偏差の平均値を算出し、当該平均値が所定の圧力差範囲を逸脱する場合に、前記筒内圧力センサの故障と判定するものであり、
前記筒内圧力算出式は、
筒内圧力の計算値をPcyl_mod、ピストン下死点における筒内圧力をPact、ピストン下死点における1気筒(シリンダ)の体積をVc、任意のクランク角度における1気筒(シリンダ)の体積をVcyl、比熱比をκとして、
Pcyl_mod=Pact×(Vc/Vcyl) κ と表され、
前記ピストン下死点における筒内圧力Pactは、インテークマニホールドにおける吸気圧に補正項を加算せしめた値とされ、前記補正項は、エンジン回転数と前記インテークマニホールドにおける吸気温度の種々の組み合わせに対して予め設定された値が用いられ、
前記比熱比κは、クランク角度とエンジン回転数の種々の組み合わせに対して予め設定された値が用いられるよう構成されてなるものである。
また、上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る車両動作制御装置は、
車両の動作制御処理が実行されるよう構成されてなる電子制御ユニットを有すると共に、内燃機関のシリンダ内に設けられ、筒内圧力を検出する筒内圧力センサの出力信号が前記車両の動作制御処理に供されるよう構成されてなる車両動作制御装置において、
前記電子制御ユニットは、
熱力学に基づいて設定された前記シリンダ内の圧力を算出する筒内圧力算出式を用いて前記筒内圧力の計算値を算出し、次いで、前記計算値と前記筒内圧力センサによって検出された筒内圧力との圧力差を求めることを1シリンダサイクル中に所定回数行い、次いで、前記1シリンダサイクル中に得られた圧力差の標準偏差を求めることを所定のシリンダサイクル数実行し、次いで、前記所定のシリンダサイクル数の実行により得られた標準偏差の平均値を算出し、当該平均値が所定の圧力差範囲を逸脱する場合に、前記筒内圧力センサの故障と判定するよう構成されてなり、
前記筒内圧力算出式は、
筒内圧力の計算値をPcyl_mod、ピストン下死点における筒内圧力をPact、ピストン下死点における1気筒(シリンダ)の体積をVc、任意のクランク角度における1気筒(シリンダ)の体積をVcyl、比熱比をκとして、
Pcyl_mod=Pact×(Vc/Vcyl) κ と表され、
前記ピストン下死点における筒内圧力Pactは、インテークマニホールドにおける吸気圧に補正項を加算せしめた値とされ、前記補正項は、エンジン回転数と前記インテークマニホールドにおける吸気温度の種々の組み合わせに対して予め設定された値が用いられ、
前記比熱比κは、クランク角度とエンジン回転数の種々の組み合わせに対して予め設定された値が用いられるものである。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における筒内圧力センサ診断処理が適用される車両動作制御装置の構成例について、図1を参照しつつ説明する。
この図1は、特に、排ガス再循環装置102を備えたディーゼルエンジン1の動作制御に関する主要な構成部分についての構成例を示したものである。
さらに、吸気管2には、先に述べた連通路5と可変ターボ8の間の適宜な位置において、吸入空気の冷却を行うインタークーラ11が設けられている。
そして、このインタークーラ11と連通路5との間には、吸入空気の量を調整するためのインテークスロットルバルブ12が設けられている。
すなわち、エンジン1がn個のシリンダを有する構成とした場合、筒内圧力を検出するための筒内圧力センサ15−1〜15−nが、各シリンダ(図示せず)の内部に取り付けられており、その検出信号は、後述する電子制御ユニット101に入力されるようになっている。
かかる電子制御ユニット101は、例えば、公知・周知の構成を有してなるマイクロコンピュータ(図示せず)を中心に、RAMやROM等の記憶素子(図示せず)を備えると共に、入力インターフェイス回路(図示せず)や出力インターフェイス回路(図示せず)を主たる構成要素として構成されたものとなっている。
さらに、アクセル開度センサ19、エンジン冷却水温センサ20、インマニ圧力センサ21、バルブ開度センサ22、スロットル開度センサ23、フラップセンサ24、変速段検出センサ25、及び、クラッチストロークセンサ26の各出力信号が電子制御ユニット101に入力され、前述と同様にエンジン動作制御処理や後述する本発明の実施の形態における筒内圧力センサ故障診断処理等に供されるようになっている。
電子制御ユニット101による処理が開始されると、最初に、この後の一連の診断処理を開始するための所定の診断開始条件が満たされているか否かが判定される(図2のステップS102参照)。
”アクセル開度”は、アクセル開度センサ19によって検出されて電子制御ユニット101に入力されるアクセル(図示せず)の開度である。
”燃料噴射の状態”は、電子制御ユニット101によって従来同様実行される燃料噴射制御によってエンジン1に対して行われる燃料噴射が、如何なる状態にあるかを意味し、例えば、具体的には、吸入行程、圧縮行程、膨張行程、燃料行程等で表されるものである。これらの情報は、電子制御ユニット101において実行される燃料噴射制御処理などにおいて把握されるものであり、その情報を流用するのが好適である。
”インマニ温度”は、吸気温センサ18によって検出されるインテークマニホールド4bにおける吸気温度である。
”インマニ圧”は、インマニ圧力センサ21によって検出されるインテークマニホールド4bにおける吸気圧である。
”EGRバルブ開度”は、バルブ開度センサ22によって検出されるEGRバルブ6の開度である。
”エキゾーストフラップ使用状態”は、エキゾーストフラップ(図示せず)が開かれているか、閉じられているかを表すもので、フラップセンサ24によって検出されるエキゾーストフラップ(図示せず)の開閉に対応した開閉信号である。なお、エキゾーストフラップは、車両によっては備えられていないものもあるため、必須の要素ではない。
”ギア設定”は、図示されない変速装置において設定されるギア段の設定であり、ギア段の設定を検出する変速段検出センサ25によって検出されるものである。
”クラッチストローク”は、図示されないクラッチの踏み込み量(クラッチストローk)であり、クラッチストロークを検出するクラッチストロークセンサ26によって検出されるものとなっている。
ステップS102において、診断開始条件が満たされていると判定された場合(YESの場合)には、次述するステップS104の処理へ進む一方、診断開始条件が満たされていないと判定された場合(NOの場合)には、これ以後の処理を実行するに適した状態ではないとして、一連の処理は終了されて、図示されないメインルーチンへ一旦戻ることとなる。
本発明の実施の形態における、この一連の筒内圧力センサ診断処理は、全ての筒内圧力センサ15−1〜15−nについて、換言すれば、全てのシリンダ(図示せず)について行われることとなっている。さらに、各筒内圧力センサ15−1〜15−nについては、後述するステップS106の圧力モデル演算及びステップS108の圧力差算出を、診断精度の信頼性向上等の観点から、1シリンダサイクルにおいて所定のサンプリング回数実行すると共に、所定のシリンダサイクル数Ks繰り返し実行することとしている。
先のサイクル変数Ncは、後述するようにステップS106及びステップS108のシリンダサイクル数を判定するために用いられるものである。
この圧力モデル演算は、筒内圧力の計算値、換言すれば推定値を算出する処理で、次述するように、筒内(シリンダ内)の圧力モデルに基づく筒内圧力の推定値を算出する筒内圧力算出式により筒内圧力の計算値を算出するものである。
”Vcyl”は、任意のクランク角度における1気筒(シリンダ)の体積であり、かかる値は、エンジン1の具体的な仕様に基づいて設定された体積算出式により、ステップS106の実行時のクランク角度に対するシリンダ(図示せず)の体積の計算値が算出され用いられるようになっている。
”κ”は、比熱比である。
インマニ補正項は、エンジン回転数とインマニ温度とに対応した補正値(以下、説明の便宜上「インマニ補正値」と称する)が定められるものとなっている。
なお、インマニ温度は、吸気温センサ18によって検出されるインテークマニホールド4a近傍の吸気温度である。
さらに、本発明の実施の形態においては、エンジン回転数とインマニ温度を入力パラメータとして対応するインマニ補正値が読み出し可能にマップ化され(以下、このマップを説明の便宜上「インマニ補正マップ」と称する)、予め電子制御ユニット101の適宜な記憶領域に記憶されたものとなっている。
本発明の実施の形態においては、かかる点に着目し、比熱比κは、クランク角とエンジン回転数とに対して予め定められた値が読み出し可能に構成されたマップ(以下、説明の便宜上「比熱比マップ」と称する)を用いて、演算時のクランク角とエンジン回転数との組み合わせに対して定められる比熱比が式1の演算に用いられるようになっている。
すなわち、ステップS106で算出された筒内圧力の計算値Pcyl_modと、筒内圧力センサ15−1〜15−nの内、対象となるシリンダ(図示せず)の筒内圧力センサにより検出された筒内圧Pcylとの圧力差ΔPが下記する式2により算出され、算出された圧力差ΔPは、電子制御ユニット101の適宜な記憶領域に、暫定的に記憶されることとなる。
すなわち、本発明の実施の形態においては、先のステップS106の演算と、このステップS108の演算を、1シリンダサイクルにおいて、適宜な間隔で複数回行い、複数の圧力差ΔPを得るようにしている。
ここで、実測値である筒内圧Pcylを電子制御ユニット101に読み込む(サンプリング)するタイミングは、先に述べたように比熱比κが、比較的上死点近傍で大きく変化することを考慮して、上死点を含むその近傍では、比較的短い間隔に設定して、比較的多くサンプリング値を得るようにし、それ以外の領域では、比熱比κの変動が少ないことを考慮して、サンプリングのタイミングを比較的疎に設定すると好適である。
算出された標準偏差は、電子制御ユニット101の適宜な記憶領域に暫定的に記憶されることとなる
すなわち、筒内圧力センサ15−1〜15−nの中で、この時点で圧力差ΔPの取得対象である筒内圧力センサについて、Ksシリンダサイクルに亘って圧力差ΔPの取得がなされたか否かが判定され、サイクル変数Ncが所定サイクル数Ksを超えたと判定された場合(YESの場合)には、所要数の標準偏差が得られたとして、次述するステップS118の処理へ進むこととなる。
なお、本発明の実施の形態においては、先に述べたように、1つの筒内圧力センサにについて、1シリンダサイクル中に予め定められた所定回数のサンプリングが行われて圧力差ΔPについて標準偏差が算出される処理がNcシリンダサイクル繰り返されるため、1つの筒内圧力センサの圧力差ΔPについて、Nc個の標準偏差が得られるようになっている。
なお、ここで、所定圧力差範囲は、筒内圧力センサ15−1〜15−nの具体的な仕様等を考慮して、試験結果やシミュレーション結果を基に設定するのが好適である。
本発明の実施の形態においては、先に説明したように、ある筒内圧力センサの圧力差の平均値が所定圧力差範囲を超えた場合に、直ぐさま故障であるとして、警報音の発生や警告表示等の警報動作を行うのではなく、所定圧力差範囲を超えることが予め定めた回数(基準回数)を超えた場合に最終的に故障であると判定することとしている(図2のステップS126参照)。
そのため、ある筒内圧力センサの圧力差の平均値が所定圧力差範囲を超えたと判定された場合(図2のステップS120参照)には、まず、故障カウンタの計数値を所定数増加せしめることとしている。
なお、故障カウンタは、電子制御ユニット101において良く知られたこの種のソフトウェア処理の実行によって実現されるもので、筒内圧力センサ15−1〜15−nの各々に対して1つずつ設けられるものとなっている。
ステップS128においては、全シリンダについて診断が終了したか否か、すなわち、全シリンダにおける筒内圧力センサ15−1〜15−nについて、上述した処理が行われたか否かが判定され、未だ全シリンダについての診断が終了されていないと判定された場合(NOの場合)には、先のステップS104へ戻り、上述した一連の処理が、次のシリンダの筒内圧力センサについて実行されることとなる。
なお、図示されないメインルーチンへ戻った後は、メインルーチンで定められた所要のタイミングで、図2に示されたサブルーチンが繰り返し実行されるようになっている。
15−1〜15−n…筒内圧力センサ
18…吸気温センサ
27…エンジン回転センサ
28…クランク角センサ
101…電子制御ユニット
Claims (4)
- 内燃機関のシリンダ内に配設される筒内圧力センサの故障診断方法であって、
熱力学に基づいて設定された前記シリンダ内の圧力を算出する筒内圧力算出式を用いて前記筒内圧力の計算値を算出し、次いで、前記計算値と前記筒内圧力センサによって検出された筒内圧力との圧力差を求めることを1シリンダサイクル中に所定回数行い、次いで、前記1シリンダサイクル中に得られた圧力差の標準偏差を求めることを所定のシリンダサイクル数実行し、次いで、前記所定のシリンダサイクル数の実行により得られた標準偏差の平均値を算出し、当該平均値が所定の圧力差範囲を逸脱する場合に、前記筒内圧力センサの故障と判定するものであり、
前記筒内圧力算出式は、
筒内圧力の計算値をPcyl_mod、ピストン下死点における筒内圧力をPact、ピストン下死点における1気筒(シリンダ)の体積をVc、任意のクランク角度における1気筒(シリンダ)の体積をVcyl、比熱比をκとして、
Pcyl_mod=Pact×(Vc/Vcyl) κ と表され、
前記ピストン下死点における筒内圧力Pactは、インテークマニホールドにおける吸気圧に補正項を加算せしめた値とされ、前記補正項は、エンジン回転数と前記インテークマニホールドにおける吸気温度の種々の組み合わせに対して予め設定された値が用いられ、
前記比熱比κは、クランク角度とエンジン回転数の種々の組み合わせに対して予め設定された値が用いられることを特徴とする筒内圧力センサ故障診断方法。 - 前記1シリンダサイクル中においては、シリンダ上死点近傍における筒内圧力センサによる筒内圧力のサンプリング間隔を、前記シリンダ上死点近傍を除く領域におけるサンプリング間隔に比してより小とすることを特徴とする請求項1記載の筒内圧力センサ故障診断方法。
- 車両の動作制御処理が実行されるよう構成されてなる電子制御ユニットを有すると共に、内燃機関のシリンダ内に設けられ、筒内圧力を検出する筒内圧力センサの出力信号が前記車両の動作制御処理に供されるよう構成されてなる車両動作制御装置において、
前記電子制御ユニットは、
熱力学に基づいて設定された前記シリンダ内の圧力を算出する筒内圧力算出式を用いて前記筒内圧力の計算値を算出し、次いで、前記計算値と前記筒内圧力センサによって検出された筒内圧力との圧力差を求めることを1シリンダサイクル中に所定回数行い、次いで、前記1シリンダサイクル中に得られた圧力差の標準偏差を求めることを所定のシリンダサイクル数実行し、次いで、前記所定のシリンダサイクル数の実行により得られた標準偏差の平均値を算出し、当該平均値が所定の圧力差範囲を逸脱する場合に、前記筒内圧力センサの故障と判定するよう構成されてなり、
前記筒内圧力算出式は、
筒内圧力の計算値をPcyl_mod、ピストン下死点における筒内圧力をPact、ピストン下死点における1気筒(シリンダ)の体積をVc、任意のクランク角度における1気筒(シリンダ)の体積をVcyl、比熱比をκとして、
Pcyl_mod=Pact×(Vc/Vcyl) κ と表され、
前記ピストン下死点における筒内圧力Pactは、インテークマニホールドにおける吸気圧に補正項を加算せしめた値とされ、前記補正項は、エンジン回転数と前記インテークマニホールドにおける吸気温度の種々の組み合わせに対して予め設定された値が用いられ、
前記比熱比κは、クランク角度とエンジン回転数の種々の組み合わせに対して予め設定された値が用いられることを特徴とする車両動作制御装置。 - 前記電子制御ユニットは、前記1シリンダサイクル中において、シリンダ上死点近傍における筒内圧力センサによる筒内圧力のサンプリング間隔を、前記シリンダ上死点近傍を除く領域におけるサンプリング間隔に比してより小としてサンプリングを実行するよう構成されてなることを特徴とする請求項3記載の車両動作制御装置。
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