JP6267138B2 - シートベルト装置 - Google Patents

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Description

本発明は、乗員を車両の座席に拘束するシートベルト装置に関するものである。
現在のほぼすべての車両には、乗員を座席に拘束するシートベルト装置が設置されている。一般に広く普及している三点式のシートベルト装置は、ウェビング上に設けられたタングを座席横のバックルに挿入することで、乗員の肩から腰にかけての領域と、腰の両脇にかけての領域を拘束する構成となっている。
従来、シートベルト装置のウェビングについて様々なものが開発されている。例えば特許文献1は、ウェビング幅方向に沿って織り込む緯糸と、ウェビング長手方向に沿って織り込む経糸を有するウェビングを開示している。この緯糸は、破断強度の異なる第1糸と第2糸から構成された複合糸となっている。そのため、特許文献1によれば、ウェビングに引張り力が作用した場合に第1糸が切断されて第2糸が解けるため、ウェビングが幅広に拡張し、乗員に対する負荷を軽減できるとしている。
特許文献2は、横糸と、横糸に繰り返し挿通した縦糸から構成されたウェビングを開示している。特許文献2によれば、ウェビングに所定荷重を超える荷重がかかった場合、縦糸が横糸を破断することで縦糸が伸張するため、衝撃荷重を吸収することができるとしている。
特許文献3は、引張り強度の高い縦糸と、強度の異なる複数の弾性糸によって構成され横糸とで編まれたウェビングを開示している。特許文献3によれば、ウェビングの横糸に強度の異なる複数の弾性糸を使用したことにより、衝撃荷重を段階的に吸収し、円滑に緩衝することができるとしている。
特許文献1〜3は、いずれも複数の強度の異なる糸から紡織されたウェビングによって、衝撃荷重を段階的に吸収させるものである。
特開2013−212802号公報 特開2009−126199号公報 特開平6−299435号公報
ここで、ウェビングに引張り荷重を加えたときの伸びやすさを「伸度」と定義する。ウェビングの「伸度」は、以下のようにJIS D4604:1995 7.4(1)(1.3)によって行う試験方法によって算出する。
標準状態で性能試験を行う。具体的には、ウェビングの全幅の試料を、温度20±2℃、相対湿度65±2%で、24時間放置した後、ただちに以下の伸び試験を行う。
伸び試験は、試料を引張試験機にクランプ間距離が220±20mmとなるように取り付け、試料が緊張するように200Nの初荷重を加える。その距離内に標点距離200mmの目盛り線を引き、引張を開始する。引張強度毎分約100mmで荷重を与え、荷重が11.1kNに達したとき、標点距離を測定する。伸度は、E=(L−200)/200×100という数式によって算出する。
ここで、Eは伸度(%)を示し、Lは11.1kN荷重時の標点距離(mm)を示している。すなわち、荷重が同じなら、伸度が「高い」方が「低い」ものよりも伸びる。
しかしながら、ウェビングの伸度が低ければ、車両衝突時にウェビングの拘束に伴う車両の小柄な乗員の胸部への負担が大きくなる。一方、ウェビングの伸度が高ければ、車両の大柄な乗員の車両衝突時の移動量を車室内の限られた範囲に制限できず、乗員が周辺の車両構造物に接触する虞がある。
このような問題を軽減するために、乗員の体格/体重に応じてウェビングから乗員に加わる負荷(荷重)を変動させる適応型ロードリミッタ(LLA:Load Limiter Adaptive)を使用すると、シートベルト装置の構造が複雑となり、製造コストが増加してしまう。
本発明は、このような課題に鑑み、乗員の安全性を向上させるとともに、構造が単純で安価なシートベルト装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明にかかるシートベルト装置の代表的な構成は、乗員を車両の座席に拘束するウェビングであって、一端がリトラクタに巻き取られ、他端が座席の車幅方向の一方側に固定されるウェビングと、ウェビングに摺動可能に設置され、座席の車幅方向の他方側に設置されたバックルに着脱可能なタングとを備え、ウェビングは、第1ベルト部分と、第1ベルト部分の伸度よりも高い伸度を有する第2ベルト部分とを含み、第1ベルト部分はウェビングの一端側に設けられ、第2ベルト部分はウェビングの他端側に設けられることを特徴とする。
本発明の特徴は、伸度に差のある2種類のベルト部分をウェビングが含むことである。車両衝突時に乗員からの体重を受けたウェビングの伸び量は、伸度の低い第1ベルト部分では少なく、伸度の高い第2ベルト部分では多い。タングをバックルに装着したときにウェビングのうちリトラクタから巻き出されている長さ(本願ではこれを「ウェビング使用長」と称する)は、乗員の体格に応じて異なるため、第1ベルト部分・第2ベルト部分それぞれがウェビング使用長に占める割合もまた、乗員の体格に応じて異なることとなる。したがって本発明によれば、車両衝突時に伸びるウェビング使用長における第1ベルト部分・第2ベルト部分の割合を、乗員の体格に応じた値に調節可能である。この割合は、乗員の体格そのもの、すなわちウェビング使用長によって変動する。また、第1ベルト部分および第2ベルト部分を長尺なウェビングのどの範囲に予め設定しておくかによっても、変動のしかたが異なる。
例えばウェビングのうち、いわゆる肩ベルトや腰ベルトに用いられる部分は、それらを予め第1ベルト部分または第2ベルト部分のいずれにするかによってウェビングの伸び量は変動するものの、乗員の体格が多少異なっても常にウェビング使用長に含まれる。そのためこれらの部分は、乗員の体格差が生じても、ウェビングの伸び量の変動の要因にはならない。一方、リトラクタ付近で巻き出されている部分は、乗員の体格に応じてウェビング使用長に含まれるか否かが決定される。そのため、かかる部分は乗員の体格差が生じると、ウェビングの伸び量の変動の要因となる。よって、かかる部分を予め第1ベルト部分または第2ベルト部分のいずれにするかによって、乗員の体格差が生じたときにウェビングの伸び量がどのように変動するか、という変動のしかたも異なることとなる。
ウェビング使用長における伸度の低い第1ベルト部分の割合が大きいほど、ウェビングの伸び量は、仮にウェビング全体を第2ベルト部分と同様の高伸度の素材で生成した場合に比較すると小さくなり、乗員の移動量は減少する。これにより、過大な移動によって乗員が車内構造物に接触することが防止される。一方、ウェビング使用長における伸度の高い第2ベルト部分の割合が大きいほど、ウェビングが乗員から吸収するエネルギー吸収量が大きくなり、乗員の受けるダメージを低減可能である。
車両衝突時に、乗員が大柄な、例えば男性である場合は、乗員の移動量を制限して車内構造物への乗員の接触を防ぎ、乗員が小柄な、例えば女性である場合は、ウェビングによる乗員からのエネルギー吸収量を大きくすることが望ましい。そこで本発明は、第1ベルト部分がウェビングの一端側に設けられ、第2ベルト部分がウェビングの他端側に設けられるという構成を有する。本発明の上記の構成によれば、乗員が大柄であるほど、一端側の第1ベルト部分がリトラクタからより多く引き出され、ウェビング使用長が長くなり、ウェビング使用長における第1ベルトの割合が大きくなる。この場合、ウェビングの伸び量は、ウェビング全体を第2ベルト部分と同様の高伸度の素材で生成した場合に比較すると小さくなり、乗員の移動量は減少する。一方、乗員が小柄であるほど、逆に、ウェビング使用長における第2ベルト部分の割合が大きくなり、ウェビングによるエネルギー吸収量が大きくなる。
第1ベルト部分および第2ベルト部分は、互いが結合されている境界領域を有し、上記境界領域では、第1ベルト部分および第2ベルト部分が縫製によって結合されているとよい。
上記構成によれば、第1ベルト部分と第2ベルト部分が境界領域において互いに重ね合わされていない場合には、境界領域で段差が存在しない。したがって、境界領域の段差によって乗員に不快感を与えることがなく、外観を損なうこともない。
上記境界領域では、第1ベルト部分および第2ベルト部分を重ね合わせて縫製されていてもよい。
上記構成によれば、境界領域にて第1ベルト部分および第2ベルト部分が重ね合わされて縫製されているため、第1ベルト部分と第2ベルト部分の結合力が高くなり、境界領域でウェビングが切断されにくくなる。したがって、乗員の安全性を向上させることができる。
上記ウェビングはさらに、第1ベルト部分から第2ベルト部分に向かって徐々に伸度が変化する境界領域を含むこととしてもよい。
上記構成によれば、1枚のウェビング元布から第1ベルト部分および第2ベルト部分を連続して製造する際に、第1ベルト部分から第2ベルト部分にかけて、伸度を連続的に変化させて製造できる。そのため、伸度調整のために製造設備を停止させる必要がなく製造工程を単純化することができる。
上記境界領域の中央に位置する境界点は、少なくとも乗員の腰部よりもウェビングの一端寄りに位置するとよい。かかる構成によれば、伸度の高い第2ベルト部分が少なくともウェビングの他端から乗員の腰部までを拘束することとなり、特に女性など小柄な乗員の場合に、第2ベルト部分が乗員の腰部を拘束していれば、エネルギー吸収量は十分に担保できるからである。なお、小柄な乗員の場合に最も望ましいのは、第2ベルト部分を乗員の腰部だけでなく肩部、さらにリトラクタまで到達させて、すなわちウェビング使用長をすべて第2ベルト部分として、ウェビングによるエネルギー吸収量を最大限にすることである。
上記境界領域の中央に位置する境界点は、大柄な米国成人男性相当のダミーを乗員としてウェビングが拘束するとき、このダミーの肩付近に位置するとよい。
上記の構成によれば、大柄な乗員の場合、伸度の低い第1ベルト部分がリトラクタから巻き出され、すなわちウェビング使用長に含まれることとなり、少なくともウェビングの一端からこのダミーの肩付近まで到達していることで、衝突時の乗員の過大な移動が抑制される。乗員が大柄であるほど、ウェビング使用長における第1ベルト部分の割合は大きくなり、ウェビングの不要な伸びが抑制され、車両衝突時の乗員の移動量が制限される。そのため、乗員の過大な移動によって車内構造物に乗員が接触することが防止される。
上記境界点は、小柄な米国成人女性相当のダミーを乗員としてウェビングが拘束するとき、座席の後端よりもウェビングの一端寄りに位置するとよい。
上記の構成によれば、大柄な乗員の場合には乗員の移動量の制限という既に述べた作用効果が得られる一方で、さらに小柄な乗員の場合にも、小柄な乗員の場合に特有の全く異なる作用効果が得られる。すなわち上記の構成によれば、小柄な乗員の場合には、肩ベルトおよび腰ベルトを完全にすべて伸度の高い第2ベルト部分とすることができるため、ウェビングの伸度を十分に利用してエネルギー吸収量を保つことができる。したがって大柄な乗員の場合に比べて、ウェビングの締め付けに伴う乗員の胸部へのダメージを著しく低減させることができ、乗員の安全性を向上させることができる。このように本発明によれば、乗員の体格に応じた適切な作用効果を得ることが可能である。
また、上記構成によれば、乗員の体格に応じてウェビング使用長が決定されるため、ウェビング使用長における第1ベルト部分・第2ベルト部分の割合を調節し、ウェビングの伸び量を変更可能である。そのため、乗員の体格/体重によってフォースリミッタの作動を変動させる機構(LLA)や付加機構が不要となる。したがって、構造が単純で安価なシートベルト装置を提供することができる。
上記課題を解決するために、本発明にかかるシートベルト装置の他の代表的な構成は、乗員を車両の座席に拘束するウェビングであって、一端がリトラクタに巻き取られ、他端が座席の車幅方向の一方側に固定されるウェビングと、ウェビングに摺動可能に設置され、座席の車幅方向の他方側に設置されたバックルに着脱可能なタングとを備え、ウェビングは、一端から他端まで連続して徐々に伸度が変化することを特徴とする。
上記の構成によっても、乗員の体格に応じてウェビング使用長を決定し、ウェビングの伸び量を変更可能である。
本発明によれば、乗員の安全性を向上させるとともに、構造が単純で安価なシートベルト装置を提供することができる。
本発明の第1実施形態にかかるシートベルト装置を展開した状態を例示する図である。 図1のウェビングのうち、第1ベルト部分と第2ベルト部分の境界点付近を拡大した図である。 図2に例示したウェビングの変形例を例示する図である。 小柄な米国成人女性相当のダミーに図1のシートベルト装置を装着させた状態を例示する図である。 大柄な米国成人男性相当のダミーに図1のシートベルト装置を装着させた状態を例示する図である。 図4の小柄な米国成人女性相当のダミーが車両衝突によって移動する様子を例示する図である。 図5の大柄な米国成人男性相当のダミーが車両衝突によって移動する様子を例示する図である。 図6の実施形態の変形例を例示する図である。 図8の変形例に大柄な米国成人男性相当のダミーを用いた様子を例示した図である。 図8および図9に例示した第1ベルト部分および第2ベルト部分の特性を示す表である。 本発明の第2実施形態にかかるシートベルト装置を展開した状態を例示する図である。 本発明の第3実施形態にかかるシートベルト装置を展開した状態を例示する図である。 本発明によるシートベルト装置の製造方法におけるウェビングの伸度調整工程の実施形態を模式的に例示する図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(シートベルト装置の第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態にかかるシートベルト装置100を展開した状態を例示する図である。この図1では、便宜上、一部の構成要素を図示省略し、通常は立体配置されているシートベルト装置100を水平に展開した状態を示している。
図1に例示するように、シートベルト装置100は、乗員を車両の座席に拘束するウェビング102を備えている。ウェビング102は、例えば図4(b)に例示するように、一端103がリトラクタ104に巻き取られ、車室側面に設けられたスルーアンカ110を通過して他端105が座席107の車幅方向の一方側(本実施形態では車幅方向外側)に配置されるラップアンカ106に固定されている。
また、シートベルト装置100は、図1に例示するように、ウェビング102に摺動可能に設置されるタング108をさらに備えている。タング108は、座席の車幅方向の他方側(本実施形態では車幅方向内側)に設置されるバックル112(図1では不図示)に着脱可能となっている。タングストッパー114は、タング108の落下移動を阻止するものである。
図1に例示するように、ウェビング102は、第1ベルト部分200と第2ベルト部分202から構成されている。第1ベルト部分200は、リトラクタ104に巻き取られるウェビング102の一端103から、境界点204まで連続している。図1中、ウェビング102は、境界点204によって第1ベルト部分200と第2ベルト部分202とに区分される。
第2ベルト部分202は、境界点204から、ラップアンカ106に固定されるウェビング102の他端105まで連続している。第1ベルト部分200の伸度は、第2ベルト部分202の伸度より低くしている。本実施形態では、第1ベルト部分200の伸度を5%とし、第2ベルト部分202の伸度を15%とする。ただしこれらの値に限られるものではない。
本実施形態では、第2ベルト部分202は、境界点204からラップアンカ106に固定されるウェビング102の他端105まで連続している。ただし必ずしもその必要はなく、第2ベルト部分202はバックル装着時のタング108まで少なくとも連続していればよい。要点は、第1ベルト部分200が、第2ベルト部分202よりも一端103側に設けられ、第2ベルト部分202が、第1ベルト部分200よりも他端105側に設けられていることである。
図2は、図1のウェビング102のうち、第1ベルト部分200と第2ベルト部分202の境界点204付近を拡大した図である。図2(a)は、ウェビング102を側方から見た図であり、図2(b)は、ウェビング102を上方から見た図である。このウェビング102の第1ベルト部分200および第2ベルト部分202は互いに重なっていず、縫製(縫製糸230)によって結合されている。
このように、第1ベルト部分200と第2ベルト部分202は、境界点204を中央とする境界領域205にわたって縫製によって結合されている。1ベルト部分200および第2ベルト部分202は互いに重なっていないため、図2(a)に例示するように、境界点204には段差が存在しない。したがって乗員に不快感を与えることがなく、外観を損なうこともない。
図3は、図2に例示したウェビング102の変形例を例示する図である。本実施形態において、ウェビング102の代わりに図3に例示するウェビング302を用いても、以下の点を除き、ウェビング102と同様の作用効果を奏する。なお、図2に例示したウェビング102の実施形態と機能および構成が共通している要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
図3に例示するように、ウェビング302は、第1ベルト部分200および第2ベルト部分202から構成され、第1ベルト部分200および第2ベルト部分202は互いに重ね合わされて縫製されている。このように2種類のベルトが重ね合わされている場合には、その重ね合わされている領域を境界領域(境界領域305)と呼び、境界領域305の長手方向の中央を境界点304と呼ぶ。
この場合、図3(a)に例示するように境界領域305には段差が生じるものの、第1ベルト部分200と第2ベルト部分202の結合力が高くなり、境界領域305でウェビング302が切断されにくくなる。したがって、乗員の安全性を向上させることができる。
なお図2または図3に示した第1ベルト部分200および第2ベルト部分202を結合する縫製以外の方法として、重ね合わされた部分を熱溶着してもよいし、接着剤で接合してもよい。熱溶着する場合は、ウェビングの経糸を例えばポリエチレンテレフタレート(PolyEthylene Terephthalate; PET)製とし、熱を加えながら両ベルト部分を圧着すればよい。また工業用ステープラで両ベルト部分を結合することも考えられる。さらに、結合力の弱さやウェビングの厚みが増してしまう点が改善できれば、マジックテープ(登録商標)、ボタンまたはフックなどの部材によって両ベルト部分200、202を結合することも考えられる。
図4は、小柄な米国成人女性相当のダミー150に図1のシートベルト装置100を装着させた状態を例示する図である。図4(a)は車両前部座席に小柄な米国成人女性相当のダミー150を着座させ車両前方から見た図であり、図4(b)は図4(a)を車両側方から見た図である。図4(c)は車両後部座席に小柄な米国成人女性相当のダミー150を着座させ車両側方から見た図である。
本実施形態では、「小柄な米国成人女性」「大柄な米国成人男性」は、それぞれ、下記のダミー規格(1)および(3)を想定している。ただし乗員の体格はこれらに限定されるものではなく、本発明の本質はあくまで、車両衝突時に、乗員が相対的に大柄である場合は、乗員の移動量を制限して車内構造物への乗員の接触を防ぎ、乗員が相対的に小柄である場合は、ウェビングによる乗員からのエネルギー吸収量を大きくするということである。
(1)Hybrid III AF05:小柄な米国成人女性相当(American female 05%、小さい方から5%目)。身長約152cm(5フィート)、体重約50kg(110ポンド)。
(2)Hybrid III AM50:平均的な米国成人男性相当(American male 50%、小さい方から50%目)。身長約175cm(5フィート9インチ)、体重約78kg(172ポンド)。
(3)Hybrid III AM95:大柄な米国成人男性相当(American male 95%、小さい方から95%目)。身長約188cm(6フィート2インチ)、体重約100kg(223ポンド)。
図5は、大柄な米国成人男性相当のダミー160に図1のシートベルト装置100を装着させた状態を例示する図である。図5(a)は車両前部座席に大柄な米国成人男性相当のダミー160を着座させ車両前方から見た図であり、図5(b)は図5(a)を車両側方から見た図である。図5(c)は車両後部座席に大柄な米国成人男性相当のダミー160を着座させ車両側方から見た図である。なお、図4と共通する構成要素には、同一の符号を使用して説明を省略する。
本実施形態では、小柄な米国成人女性相当のダミー150として、各国で自動車の安全規格として定められた前面衝突用ダミーAF05を使用している。大柄な米国成人男性相当のダミー160として、各国で自動車の安全規格として定められた前面衝突用ダミーAM95を使用している。
図4および図5に例示するように、第1ベルト部分200は、タング108がバックル112に装着されたときにリトラクタ104から巻き出される。第2ベルト部分202は、第1ベルト部分200との境界点204から少なくともバックル112に装着されたときのタング108を経て連続する。
ここで、図4と図5を対比すると、同じシートベルト装置100であっても、乗員の体格によって、タング108をバックル112に装着したときにウェビング102のうちリトラクタ104から巻き出されている長さ(これをウェビング102の「ウェビング使用長」と称する)が異なっている。すなわち、小柄な米国成人女性相当のダミー150を用いる場合よりも、大柄な米国成人男性相当のダミー160を用いたほうが、ウェビング102のウェビング使用長が多くなる。
そのため、以下のような事象が生じる。すなわち、図4(b)(c)に例示するように小柄な米国成人女性相当のダミー150にシートベルト装置100を装着させたとき、境界点204は、小柄な米国成人女性相当のダミー150よりもウェビング102の一端103寄りに位置する。第2ベルト部分202は、少なくとも、小柄な米国成人女性相当のダミー150よりもウェビング102の他端105に近い位置まで連続する。
なお、図4(b)と図4(c)を対比すると、リトラクタ104の配置と境界点204の位置が異なっていて、スルーアンカ110の有無で相違するだけである。すなわち、本発明が車両前部座席であっても車両後部座席であっても同様に適用可能であることを示している。この点は図5(b)と図5(c)を対比した場合も同様である。
図4(b)(c)の2つの実施形態に例示するように、第2ベルト部分202は、ウェビング102の他端105から乗員の腰部までを拘束している。すなわち、第1ベルト部分200と第2ベルト部分202との境界点204は、バックル112に装着されたタング108すなわち乗員の腰部よりもウェビング102の一端103寄りに位置している。かかる構成によれば、特に小柄な米国成人女性相当のダミー150のような小柄な乗員の場合に、伸度の高い第2ベルト部分202が少なくとも乗員の腰部を拘束しているため、エネルギー吸収量は十分に担保できる。
図5(b)(c)をそれぞれ図4(b)(c)と比較すると、乗員を模したダミー160が異なるだけであり、使用するシートベルト装置100は同一のものである。図5(b)(c)の2つの実施形態に例示するように、大柄な米国成人男性相当のダミー160を乗員としてウェビング102が拘束するとき、境界点204は、このダミー160の肩付近に位置する。すなわち第1ベルト部分200は、ウェビング102の一端103からこのダミー160の肩付近まで設けられている。
図5(b)(c)のような大柄な乗員の場合、伸度の低い第1ベルト部分200が、図4(b)(c)の場合よりもリトラクタ104から余分に巻き出され、すなわちウェビング使用長に含まれることとなる。この余分に巻き出された第1ベルト部分200が少なくともウェビング102の一端103からこのダミー160の肩付近まで到達していることで、衝突時の乗員の過大な移動が抑制される。乗員が大柄であるほど、ウェビング使用長における第1ベルト部分200の割合は大きくなり、ウェビング102の不要な伸びが抑制され、車両衝突時の乗員の移動量が制限される。そのため、乗員の過大な移動によって車内構造物に乗員が接触することが防止される。
一方、とりわけ図4(b)の実施形態では、境界点204は、小柄な米国成人女性相当のダミー150(ダミーAF05)を乗員としてウェビング102が拘束するとき、座席107の後端109よりもウェビング102の一端103寄りに位置する。かかる構成によれば、大柄な乗員の場合には乗員の移動量の制限という図5(b)を参照して述べた作用効果が得られる一方で、さらに小柄な乗員の場合にも、小柄な乗員の場合に特有の全く異なる作用効果が得られる。すなわち図4(b)に例示するように、小柄な乗員の場合には、肩ベルトおよび腰ベルトを完全にすべて伸度の高い第2ベルト部分202とすることができる。そのため、ウェビング102の伸度を十分に利用してエネルギー吸収量を保つことができる。したがって図5(b)の大柄な乗員の場合に比べて、ウェビング102の締め付けに伴う乗員の胸部へのダメージを著しく低減させることができ、乗員の安全性を向上させることができる。このように本実施形態によれば、乗員の体格に応じた適切な作用効果を得ることが可能である。
なお図示しないものの、仮に、図4(b)(c)の小柄な乗員の場合に境界点204が乗員の肩まで到達し、低伸度の第1ベルト部分200が乗員の肩まで到達していても、そこから他端105までを第2ベルト部分202とすることで、肩ベルトおよび腰ベルトを実質的にすべて高伸度の第2ベルト部分202とすることができる。かかる場合も、図4(b)(c)と同様に、ウェビング102の伸度を十分に利用してエネルギー吸収量を保つことができる。
図6は、図4(b)の小柄な米国成人女性相当のダミー150が車両衝突によって移動する様子を例示する図である。図6(a)は車両衝突前の状態を例示する図4(b)と同一の図であり、図6(b)は車両衝突後を例示している。
図7は、図5(b)の大柄な米国成人男性相当のダミー160が車両衝突によって移動する様子を例示する図である。図7(a)は車両衝突前の状態を例示する図5(b)と同一の図であり、図7(b)は車両衝突後を例示している。
本実施形態のシートベルト装置100によれば、図4および図5に例示するように、タング108をバックル112に装着したとき、第1ベルト部分200と第2ベルト部分202との境界点204は、リトラクタ104からタング108までの間に位置する。ただし三点式シートベルト装置におけるウェビング使用長は、既に述べたように、大柄な乗員であるほど多くなり、境界点204は、よりタング108に接近する。
そして、図6(a)と図7(a)とを比較すると、図7(a)のように大柄な乗員であるほど、ウェビング使用長における、伸度が低い第1ベルト部分200の割合が大きくなる。このようにウェビング使用長における第1ベルト部分200の割合が大きくなるほど、ウェビングの伸び量は、仮にウェビング102全体を第2ベルト部分202と同様の高伸度の素材で生成した場合に比較すると小さくなり、図7(b)に例示する車両衝突時における乗員の移動量は制限される。
このように、大柄な米国成人男性相当のダミー160のような大柄な乗員であれば、車両衝突時の移動量が制限され、過大な移動によって車内構造物に接触することが防止される。一方、図6(a)の小柄な米国成人女性相当のダミー150のような小柄な乗員であれば、図7(a)の大柄な乗員の場合に比べてウェビング使用長が短くなり、ウェビング使用長における伸度の高い第2ベルト部分202の割合が大きくなる。このようにウェビング使用長における第2ベルト部分202の割合が大きくなるほど、ウェビングの伸び量は、仮にウェビング102全体を第1ベルト部分200と同様の低伸度の素材で生成した場合に比較すると大きくなる。これにより図6(b)に例示する車両衝突時に、ウェビング102が乗員から吸収するエネルギー吸収量が大きくなり、ウェビング102の締め付けに伴う胸部へのダメージを低減させることができる。したがって、乗員の安全性を向上させることができる。
図6および図7に示す実施形態によれば、乗員の体格そのものによって、乗員の体格に応じたウェビング使用長が決定され、すなわちウェビング使用長における第1ベルト部分・第2ベルト部分の割合が調節され、ウェビングの伸び量を変更可能である。そのため、乗員の体格/体重によってフォースリミッタの作動を変動させる機構(LLA)や付加機構が不要となる。したがって、構造が単純で安価なシートベルト装置を提供することができる。
図6(a)の小柄な米国成人女性相当のダミー150のような小柄な乗員の場合、同図に示すように、ウェビング102のうち、ダミー150の肩から腰にわたるダミー150に接触する部分を伸度の高い第2ベルト部分202としている。このようにウェビング使用長における第2ベルト部分202の割合を大きくすると、ウェビング102の締め付けに伴う胸部へのダメージをより低減させることができる。
図7(a)の大柄な米国成人男性相当のダミー160のような大柄な乗員の場合、図6(a)と比較して余分に第1ベルト部分200が巻き出され、ダミー160の肩にまで伸度の低い第1ベルト部分200が達している。このようにウェビング使用長における第1ベルト部分200の割合が大きくなるため、車両衝突時の移動量が制限され、過大な移動によって車内構造物に接触することをより確実に防止することができる。
図8は、図6の実施形態の変形例を例示する図である。この変形例では、図8(a)に例示するように、第2ベルト部分202を、小柄な米国成人女性相当のダミー150の腰部だけでなく肩部、さらにリトラクタ104まで到達させている。すなわちウェビング使用長のすべてが高伸度の第2ベルト部分202で占められていて、第1ベルト部分200と第2ベルト部分202との境界点204は、リトラクタ104に巻き取られている。したがって伸び量は最大となり、衝突時には、図8(b)に例示するように、図6(b)に比較してダミー150はより前方に移動し、ウェビング602が乗員から吸収するエネルギー吸収量は最大となる。かかる構成が、小柄な乗員の場合には最も望ましい。
図9は、図8の変形例に大柄な米国成人男性相当のダミー160を用いた様子を例示した図である。ここで、図8および図9に例示した変形例を用いて、実際の数値をもって、本発明の効果を検証する。仮に、図8に例示したように小柄な乗員を模したダミー150のウェビング使用長が1200mmであり、それがすべて伸度15%の第2ベルト部分であるとする。一方、図9に例示したように大柄な乗員を模したダミー160のウェビング使用長が1600mmであり、ウェビング使用長に加わった400mmのウェビングがすべて伸度5%の第1ベルト部分200であるとする。
図10は図8および図9に例示した第1ベルト部分200および第2ベルト部分202の特性を示す表である。図8(a)の小柄なダミー150の場合、ウェビングの伸び量はすべて第2ベルト部分202の長さ1200mmの15%(図10参照)であるから180mmとなり、図8(b)に示す衝突時のウェビング使用長は、全長1380mmとなる。一方、図9(a)の大柄なダミー160の場合、ウェビングの伸び量は、上記の第2ベルト部分202の伸び量180mmに第1ベルト部分200の長さ400mmの5%(図10参照)の伸び量20mmを加えて200mmとなり、ウェビング使用長は全長1800mmとなる。つまり、図9の大柄な乗員の場合、ウェビング使用長は図9(a)の全長1600mmから図9(b)の1800mmに伸びたため、伸度は12.5%となる。したがってウェビング全体が仮に一様な15%の伸度の素材でできているウェビングを用いた場合より低伸度となり、大柄な乗員の車両衝突時の移動量が抑制されていることが分かる。
この図9(b)に示した大柄な乗員の場合に得られる移動量の抑制という効果は、上記のように、一様な15%の伸度の素材でできているウェビングを用いた場合と比較したものであり、図8(b)に示す小柄な乗員の場合と比較したものではない。図8(b)の小柄な乗員の場合、上述のようにウェビングの伸び量は180mmであるから、伸び量が200mmとなる図9(b)の大柄な乗員の場合のほうが、むしろ乗員の移動量は大きくなる。図9(b)において図8(b)よりも増加したのは、ウェビング使用長における第1ベルト部分200の割合である。
(シートベルト装置の第2実施形態)
図11は、本発明の第2実施形態にかかるシートベルト装置400を展開した状態を例示する図である。図11に例示するように、シートベルト装置400は、乗員を車両の座席に拘束するウェビング402を備えている。
なお、本実施形態にかかるシートベルト装置400は、ウェビング402以外は、第1実施形態に例示したシートベルト装置100と機能および構成が共通している要素であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
図11のウェビング402には、図示の便宜上、ハッチングを施してあり、このハッチング密度の高い部分ほど伸度が高いことを示している。すなわち、図11に例示するように、ウェビング402には、図1の第1の実施形態で示した境界領域205のような、伸度差のあるベルト同士を縫製等で結合したことによる境界は無く、第1ベルト部分410から第2ベルト部分412に向かって徐々に伸度が変化する(高くなる)境界領域414が設けられている。そこでこの場合、境界領域414の長手方向における中央を、境界点424と定義する。かかるシートベルト装置400によっても、乗員の体格に応じてウェビング使用長を決定し、ウェビングの伸び量を変更可能である。
(シートベルト装置の第3実施形態)
図12は、本発明の第3実施形態にかかるシートベルト装置700を展開した状態を例示する図である。図12に例示するように、シートベルト装置700は、乗員を車両の座席に拘束するウェビング702を備えている。
図12のウェビング702には、図示の便宜上、濃淡のハッチングを施してあり、このハッチング密度の高い部分ほど伸度が高いことを示している。本実施形態におけるシートベルト装置700のウェビング702は、第1および第2の実施形態と異なり、第1ベルト部分200・第2ベルト部分202といった明確に伸度の異なる部分に分けられていない。すなわちウェビング702は、一端453から他端455まで連続して徐々に伸度が変化している。かかるシートベルト装置700によっても、乗員の体格に応じてウェビング使用長を決定し、ウェビングの伸び量を変更可能である。
(シートベルト装置製造方法)
次に、シートベルト装置製造方法について説明する。ただし、本発明にかかるシートベルト装置の製造方法の特徴はウェビングの製造工程、とりわけウェビングの伸度調整工程にあり、ウェビング以外の要素は通常のシートベルト装置と同様の製造工程で製造可能であるため、ここではウェビングの伸度調整工程のみ説明する。
このウェビングの伸度調整工程は、第1実施形態および第2実施形態に例示したウェビング102,302,402,602,702のいずれにも適用可能である。
図13は、本発明によるシートベルト装置の製造方法におけるウェビングの伸度調整工程の実施形態を模式的に例示する図である。図13に示すように、本実施形態では、ウェビングの伸度調整工程を、ウェビングを染色する染色工程として行う。染色工程では、染色液に浸けたウェビング元布750をローラー752a、752b、754a、754bで挟んで絞り、200℃近い炉756の中を通過させ、熱処理にて染料をウェビングに固着させる。本実施形態では、この染色と同時にウェビング元布750の伸度調整を行う。
以下、炉756の入口に位置するローラー752a、752bをまとめて入口ローラー対752と呼び、炉756の出口に位置するローラー754a、754bをまとめて出口ローラー754と呼ぶ。入口ローラー対752および出口ローラー対754は、いずれもウェビング元布750を把持し、自ら回転してウェビング元布750を搬送する。本実施形態では図示の便宜上、入口ローラー対752および出口ローラー対754の2つのローラー対しか示していないが、これら以外にも自ら回転してウェビング元布750を搬送するローラー対を設けてもよい。また図示しないが、自身は回転しないものの搬送されるウェビング元布750によって回転し、ウェビング元布750を案内するガイドローラー対を炉750内に設けてもよい。
伸度調整は、ウェビング元布750を搬送する入口ローラー対752と出口ローラー対754との回転速度を調節し、これらローラー対752・754間を搬送されるウェビング元布750に所定の張力を付与することで行う。高温の炉756の中をウェビング元布750が通過するとき、ウェビング元布750は熱によって収縮しようとする。例えばウェビング元布750をポリエステル原糸で紡織した場合には、150℃下の収縮が約10%である。
ウェビング元布750が炉756内で収縮するため、入口ローラー対752より出口ローラー対754の回転速度を遅くする必要がある。例えば、入口ローラー対752がウェビング元布750を単位時間あたり10m、炉756内に取り込むものとする。炉756内ではウェビング元布750は収縮し、当初10mあったウェビング元布750は、例えば8mに収縮する。このとき、出口ローラー対754の回転速度を単位時間あたり8m以上(例えば9m)とすると、ウェビング元布750は炉756内で弛むことなく炉756外へ送り出される。しかも、この炉756外へ送り出された9m分のウェビング元布750は、もともと10mあったものが収縮したものであるため、1m分の伸び代(しろ)を有する。
このように、ウェビング元布750に伸び代(伸度)を与えるには、入口ローラー対752より出口ローラー対754の回転速度を遅くする必要があるが、上記の例の場合、出口ローラー対754を単位時間あたり8m未満の回転速度とすると、ウェビング元布750は弛むため、使用に適さない。
つまり上記の例の場合、出口ローラー対754の回転速度は単位時間あたり8m〜10mの範囲内とする必要がある。この範囲内で出口ローラー対754の回転速度を速くして単位時間あたり10mに近付け、炉756内でウェビング元布750に付与する張力を大きくするほど、伸び代が減少し、低伸度のウェビングが形成される。一方、出口ローラー対754の回転速度を遅くして単位時間あたり8mに近付け、炉756内でウェビング元布750に付与する張力を小さくするほど、伸び代が増大し、高伸度のウェビングが形成される。言い換えれば、入口ローラー対752と出口ローラー対754との回転速度差が小さくなるほど低伸度のウェビングが形成され、この回転速度差が大きくなるほど高伸度のウェビングが形成される。
上述した本実施形態における伸度調整工程は、相対的に低伸度の第1ベルト部分200を形成する第1ベルト部分形成工程と、相対的に高伸度の第2ベルト部分202を形成する第2ベルト部分形成工程とを含む。第2ベルト部分形成工程では、出口ローラー対754の回転速度を第1ベルト部分形成工程のそれよりも遅くし、図10にも示すように、入口ローラー対752との回転速度差を大きくする。これによりウェビング元布750に付与される張力は、第1ベルト部分形成工程で付与される張力よりも小さくなり、第1ベルト部分200よりも伸度の高い第2ベルト部分202が形成される。
本実施形態によれば、ウェビング元布750に加わる張力を変化させることによって伸度を調整するため、同様の素材のウェビング元布750から、伸度の異なる第1ベルト部分200および第2ベルト部分202の両方を製造可能である。
第1ベルト部分形成工程と第2ベルト部分形成工程とは、連続して行ってもよい。「連続して」とは、連続していればどちらの工程を先に行ってもよい意である。かかる方法によれば、1枚のウェビング元布750に加わる張力を変化させることによって伸度を調整するため、1枚のウェビング元布750から、伸度の異なる第1ベルト部分200および第2ベルト部分202を途切れることなく続けて製造することができる。したがって、元布750を交換するという仕切り直し(段取り替え)によって第1ベルト部分200および第2ベルト部分202を別々に製造するという手間がかからない。
また、第1ベルト部分形成工程と第2ベルト部分形成工程とを連続して行えば、第1ベルト部分200および第2ベルト部分202を別々に製造する場合に必要となる、図3で説明した縫製工程も不要となる。よって、製造工程を単純化することができる。
上記の連続して行う第1ベルト部分形成工程から第2ベルト部分形成工程まで、張力を徐々に変化させてもよい。すなわち、一方から他方の工程に移行する際に、入口ローラー対752と出口ローラー対754との回転速度差を、ある時点を境に一挙に変更するのではなく、徐々に変化させてもよい。
かかる方法によれば、図11に示した、第1ベルト部分410から第2ベルト部分412まで徐々に伸度が変化する境界領域414を有するウェビング402を製造可能である。入口ローラー対752と出口ローラー対754との回転速度差を徐々に変化させればよいため、伸度を一挙に変更する場合と異なり、製造設備を停止させる必要がなく製造工程を単純化することができる。この場合縫製工程が不要なのは言うまでもない。
本実施形態における伸度調整工程は、第1ベルト部分形成工程と第2ベルト部分形成工程という明確な伸度の差がある2つのベルト部分を形成する工程に分けなくてもよい。例えば、ウェビング元布750の一端から他端まで連続して、入口ローラー対752と出口ローラー対754との回転速度差を徐々に変化させ、ウェビング元布750の全長にわたって徐々に張力を変化させてもよい。かかる方法によれば、図12に示した、一端453から他端455まで連続して徐々に伸度が変化するウェビング702を製造可能である。
本実施形態では、図13の伸度調整工程を、染色工程と同時に行うものとして紹介した。しかしこれに限られるものではなく、伸度調整工程は、例えば染色工程後にウェビング元布750に油剤を付着させる工程で行ってもよい。図13に例示したのと同様の装置によって、染料に代えて油剤をウェビング元布750に付着させることが可能であり、同様に熱処理を伴うからである。ウェビングの伸度を熱処理時に調整することが可能である点で、本実施形態によれば、熱処理とは別の製造工程を新たに追加する必要がない。したがって、製造工程を単純化することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、乗員を車両の座席に拘束するシートベルト装置に利用することができる。
100,400,700…シートベルト装置、104…リトラクタ、106…ラップアンカ、108…タング、110…スルーアンカ、112…バックル、114…タングストッパー、150…小柄な米国成人女性相当のダミー、160…大柄な米国成人男性相当のダミー、200,410…第1ベルト部分、202,412…第2ベルト部分、102,302,402,602,702…ウェビング、204,304,424…境界点、205,305,414…境界領域、230…縫製糸、750…ウェビング元布、752…入口ローラー対、754…出口ローラー対、756…炉

Claims (5)

  1. 乗員を車両の座席に拘束するウェビングであって、一端がリトラクタに巻き取られ、他端が前記座席の車幅方向の一方側に固定されるウェビングと、
    前記ウェビングに摺動可能に設置され、前記座席の車幅方向の他方側に設置されたバックルに着脱可能なタングとを備え、
    前記ウェビングは、
    第1ベルト部分と、第1ベルト部分の伸度よりも高い伸度を有する第2ベルト部分とを含み、
    第1ベルト部分は前記ウェビングの一端側に設けられ、第2ベルト部分は前記ウェビングの他端側に設けられ
    第1ベルト部分および第2ベルト部分は、互いが結合されている境界領域を有し、
    前記境界領域の中央に位置する境界点は、大柄な米国成人男性相当のダミーを前記乗員として前記ウェビングが拘束するとき、該ダミーの肩付近に位置し、
    前記境界点は、小柄な米国成人女性相当のダミーを前記乗員として前記ウェビングが拘束するとき、前記座席の後端よりも前記ウェビングの一端寄りに位置し、該ウェビングのうち肩ベルトおよび腰ベルトに用いられる部分は前記第2ベルト部分となることを特徴とするシートベルト装置。
  2. 前記境界領域では、前記第1ベルト部分および第2ベルト部分が縫製によって結合されていることを特徴とする請求項1に記載のシートベルト装置。
  3. 前記境界領域では、前記第1ベルト部分および第2ベルト部分を重ね合わせて縫製されていることを特徴とする請求項2に記載のシートベルト装置。
  4. 前記ウェビングはさらに、前記第1ベルト部分から第2ベルト部分に向かって徐々に伸度が変化する境界領域を含むことを特徴とする請求項1に記載のシートベルト装置。
  5. 前記境界領域の中央に位置する境界点は、少なくとも前記乗員の腰部よりも前記ウェビングの一端寄りに位置することを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載のシートベルト装置。
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