以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。また、以下の説明において、液体投与具の操作側(使用者が押圧する側)を「基端側」、針管が突出して液体を投与する側を「先端側」と称す。
<第1実施形態>
図1〜3に示す第1実施形態に係る液体投与具10は、薬剤等の液体を生体内に投与するための医療用のデバイスである。
液体投与具10は、使用者が把持して操作を行うための操作部20(上部ハウジング)と、操作部20に対して移動可能に設けられるカバー部材30と、操作部20およびカバー部材30の内部に回転可能に設けられる構造体40と、カバー部材30を構造体40に対して先端方向へ付勢する第2コイルバネ11(第2の付勢部材)と、操作部20の内部に配置される第1コイルバネ12(第1の付勢部材)とを備えている。液体投与具10は、通常、カバー部材30および針管66にキャップ120が被せられて提供され、キャップ120を取り外して使用される。
操作部20は、使用者が把持して液体の投与操作を行う部位であり、使用者が把持して押圧するための筒状の操作部筒体70と、操作部筒体70の基端側の開口を塞ぐように設けられる操作部基端部材80と、押し子90と、操作部筒体70および操作部基端部材80の間に挟まれて第1コイルバネ12が係合する係合板50と、押し子90によって押圧されて移動するガスケット21とを備えている。
操作部筒体70は、図1〜4に示すように、構造体40の外周面を囲むように配置され、外部から内部を観察可能とするための第1窓部71と、操作部基端部材80を係合させるための2つの操作部係合孔72が形成されている。また、操作部筒体70の内周面には、軸方向へ延びる2つの操作部第1溝73と、2つの操作部第2溝74と、2つの位置決め用凹部75とが形成されている。
第1窓部71は、外周面から内周面まで貫通する貫通孔で形成される。または、第1窓部は、透明な材料により形成されてもよい。第1窓部71からは、操作部筒体70の内部に配置される構造体40やカバー部材30を観察可能となっている。第1窓部71から観察される部材によって、投与の進行状況を把握することが可能となっている。
2つの操作部係合孔72は、操作部20の中心軸を挟んで対向する位置に設けられ、外周面から内周面まで貫通する貫通孔で形成される。なお、操作部係合孔72は、操作部基端部材80を係合可能であれば、貫通孔でなくてもよい。
2つの操作部第1溝73は、操作部20の中心軸を挟んで対向する位置に設けられ、後述するカバー部材30の外周面に形成されるガイド用リブ33(図8を参照)を、軸方向へ移動可能に収容する。2つの操作部第2溝74は、中心軸を挟んで対向する位置に設けられ、後述するカバー部材30の外周面に形成される離脱防止用凸部34(図8を参照)を、軸方向へ移動可能に収容する。操作部第2溝74は、カバー部材30の抜けを防止するための抜け防止用リブ74Aが溝の途中に形成されている。
操作部基端部材80は、図1〜3および5に示すように、操作部筒体70と係合する2つの操作部係合爪81と、回転筒基端部100と係合して音を発する2つの音発生用爪82(音発生部)と、押し子90を連結するための押し子連結孔83とを備えている。
2つの操作部係合爪81は、操作部20の中心軸を挟んで対向する位置に設けられ、操作部筒体70の操作部係合孔72と係合可能である。操作部係合爪81が操作部係合孔72に係合することで、操作部筒体70、操作部基端部材80、これらに挟まれる押し子90および係合板50が、一体的に移動する構成となる。
押し子連結孔83は、操作部基端部材80の中央部に形成され、押し子90の基端側の部位が挿入可能となっている。
係合板50は、図1〜3および6に示すように、操作部筒体70および操作部基端部材80の間に挟まれて配置される円板状の部材である。係合板50には、押し子90を挿入する押し子挿入孔51と、音発生用爪82が貫通する2つの音発生用挿通孔52と、操作部係合爪81が貫通する2つの係合爪挿通孔53と、2つの位置決め用凸部57とが形成されている。係合爪挿通孔53の基端側の内縁には、基端側へ向かって突出して第1コイルバネ12が係合するバネ係合部54が形成されている。
2つの音発生用挿通孔52は、係合板50の中心軸を挟んで対向する位置に設けられる。2つの係合爪挿通孔53は、係合板50の中心軸を挟んで対向する位置に設けられる。
バネ係合部54は、周方向の所定の角度範囲で形成されており、基端方向への突出高さが周方向に傾斜するバネ移動傾斜面55が形成される。バネ移動傾斜面55は、フック状に形成される第1コイルバネ12のバネ基端部12A(図14を参照)が傾斜にそって移動可能に係合する(引っ掛かる)部位である。バネ移動傾斜面55の頂部には、操作前の初期状態において第1コイルバネ12のバネ基端部12Aが引っ掛かる平坦なバネ係合面56が形成されている。
2つの位置決め用凸部57は、係合板50の中心軸を挟んで対向する位置に設けられ、操作部筒体70の位置決め用凹部75に嵌合して、係合板50が操作用筒体70に対して正確な位置で連結することを可能とする。
押し子90は、図2,3および7に示すように、係合板50および操作部基端部材80の間に挟まれて配置される。押し子90は、係合板50および操作部基端部材80に挟まれる平板状の押し子平板部91と、押し子平板部91の中心部から先端方向へ延在する押し子本体部92とを備えている。
押し子平板部91には、中心部から基端方向へ延在する押し子連結用凸部93が形成されている。押し子連結用凸部93は、操作部基端部材80の押し子連結孔83に挿入されて、押し子90を操作部基端部材80に対して連結する。
押し子本体部92は、シリンジ60に収容される液体を吐出させるために、シリンジ60に設けられるガスケット21を押圧する部位である。押し子本体部92には、所定の条件が満たされるまで押し子90のシリンジ筒体61に対する移動を制限する2つの押し子ロック用突起部94と、所定の条件が満たされるまで構造体40の操作部20に対する回転を制限する2つの移動量規制部95と、押し子90の中心軸に沿う方向に並ぶ複数の抵抗用突起部96(第1の接触部)と、構造体40が操作部20に対して先端側に移動するのを防止する2つの移動防止用爪部97とを備えている。
2つの押し子ロック用突起部94は、押し子90の中心軸を挟んで対向する位置に設けられ、後述する回転筒基端部100の押し子ロック用傾斜部102(図3,9を参照)と接触可能な部位である。押し子ロック用突起部94は、先端側に押し子ロック用傾斜部102が配置されることで、押し子ロック用傾斜部102の基端方向への移動を制限して、シリンジ60内でガスケット21が移動してシリンジ60内に収容される液体が吐出されることを制限する。押し子ロック用突起部94の先端側から押し子ロック用傾斜部102が回転して移動すると、押し子ロック用傾斜部102の基端方向への移動が可能となり、シリンジ60内でガスケット21が移動してシリンジ60内に収容される液体が吐出可能となる(図15参照)。すなわち、押し子ロック用突起部94および押し子ロック用傾斜部102は、所定の条件が満たされるまで押し子90の移動を規制して、シリンジ60からの液体の吐出を規制する押し子規制部P(操作部規制部)として機能する。
2つの移動量規制部95は、押し子90の中心軸を挟んで対向する位置に設けられ、基端から先端へ向かって所定の長さで形成される。2つの移動量規制部95には、後述する回転筒基端部100が回転することで、後述する回転筒基端部100の当接部107(図3,9を参照)が押し付けられる摺動面98(第2の接触部)が形成されている。摺動面98は、当接部107が押し付けられた状態で、当接部107を摺動可能に保持する。移動量規制部95の基端側には、摺動面98上を摺動して基端方向へ移動した当接部107の回転規制を解除するように、当接部107の回転を許容して受け入れる収容部99が形成されている。したがって、移動量規制部95は、構造体40および操作部20の相対的な回転を、液体の投与が完了して、操作部20の構造体40に対する移動量が投与完了移動量に達し、当接部107が収容部99に受け入れられるまで規制する。なお、移動量とは、構造の位置の相対的な変化量を意味し、具体的には、例えばカバー部材30と構造体40の相対的な位置の変化量や、操作部20と構造体40の相対的な位置の変化量を意味する。そして、この移動量(変化量)は、相対的な移動距離のみにより表されるものに限定されず、相対的な移動距離および相対的な回転角度の少なく一方を含んでいる。
複数の抵抗用突起部96は、押し子90の中心軸を挟んで対向する各々の位置に複数並んで設けられ、側方へ突出しており、押し子ロック用突起部94と移動量規制部95との間をつないでいる。抵抗用突起部96は、中心軸を挟む各々の位置において、押し子90の中心軸に沿う方向に4つ並んで対称的に配置されており、基端側の抵抗用突起部96ほど突出高さが低く設定されている。なお、抵抗用突起部96の数は、特に限定されない。
2つの移動防止用爪部97は、押し子90の中心軸を挟んで対向する位置に設けられ、基端方向へ向かって傾斜しつつ側方へ延在している。移動防止用爪部97は、シリンジ60内に収容され、後述する回転筒基端部100の抵抗用爪部105の先端面106(図3,9を参照)と接触可能である。
カバー部材30は、図1〜3および8に示すように、筒状のカバー筒部31と、カバー筒部31の先端側の開口を塞ぐように形成される平面状のカバー先端部32とを備えている。カバー部材30は、第2コイルバネ11の付勢力によって構造体40に対して先端方向へ付勢され、針管66を保護位置および針管66を露出させる露出位置の間で移動可能である。
カバー筒部31には、外部から内部のシリンジ60を観察可能とするための2つの第2窓部35が形成される。2つの第2窓部35は、カバー筒部31の中心軸を挟んで対向する位置に設けられ、カバー筒部31の外周面から内周面まで貫通する貫通孔で形成される。なお、第2窓部35は、貫通孔ではなく、透明な材料により形成されてもよい。
カバー筒部31の外周面には、軸方向へ延在する2つのガイド用リブ33と、2つの離脱防止用凸部34とが形成されている。2つのガイド用リブ33は、カバー部材30の中心軸を挟んで対向する位置に径方向外側へ突出して設けられ、操作部20の操作部第1溝73(図4を参照)に収容される。これにより、カバー部材30は、操作部20に対して相対的に回転することなく、相対的に軸方向へのみ移動可能である。また、ガイド用リブ33が操作部第1溝73に係合することで、カバー部材30の操作部20に対するがたつきを抑制できる。
2つの離脱防止用凸部34は、カバー部材30の中心軸を挟んで対向する位置に径方向外側へ突出して設けられ、操作部20の操作部第2溝74に収容される。離脱防止用凸部34は、操作部20およびカバー部材30が軸方向に沿って相対的に離れた際に、離脱防止用凸部34が操作部第2溝74の抜け防止用リブ74A(図4を参照)に引っ掛かり、カバー部材30が操作部20から完全に離脱することを防止する。
カバー筒部31の内周面には、2つの安全用凸部36(第1の係合部)と、2つの誘導用凸部37が形成されている。2つの安全用凸部36は、カバー部材30の中心軸を挟んで対向する位置に径方向内側へ突出して設けられ、後述する構造体40の安全用溝113(図10を参照)に収容される。各々の安全用凸部36は、カバー筒部31に形成されるスリット361に挟まれており、したがって、径方向外側へ撓むように移動可能である。
2つの誘導用凸部37は、カバー部材30の中心軸を挟んで対向する位置に径方向内側へ突出して設けられ、後述する構造体40のカム溝112(図10を参照)に収容される。各々の誘導用凸部37は、カバー筒部31に形成されるスリット371に挟まれており、したがって、径方向外側へ撓むように移動可能である。
カバー部材30のカバー先端部32には、カバー部材30の中心軸上に、針管66を先端方向へ通過させる開口部38が形成されている。
構造体40は、図2,3に示すように、操作部20およびカバー部材30の内部に、操作部20およびカバー部材30に対して相対的に移動可能に設けられる。構造体40は、シリンジ60と、基端側に設けられる回転筒基端部100(中間ハウジング)と、回転筒基端部100の先端側に連結される回転筒先端部110(下部ハウジング)とを備えている。回転筒基端部100および回転筒先端部110は、操作部20およびカバー部材30に対して、中心軸を中心として回転可能となっている。
シリンジ60は、図2に示すように、内部に液体を収容可能な筒状のシリンジ筒体61を備えている。シリンジ筒体61の先端には、針管66が取り付けられている。
シリンジ筒体61は、基端側のフランジ62に基端開口部63が形成され、先端側に液体が通過する吐出口64が形成されている。針管66は、内部の流路がシリンジ60の吐出口64と連通するようにシリンジ筒体61の先端に固定されており、先端に鋭利な針先が形成されている。ガスケット21は、押し子本体部92の先端部が接触しており、シリンジ筒体61の内壁面65に密着して液密性を維持しつつ、シリンジ筒体61の軸方向に沿って摺動可能に配置される。ガスケット21が押し子本体部92によって押圧されてシリンジ筒体61の内部を先端方向へ移動することで、シリンジ筒体61とガスケット21によって規定される空間内の液体を、吐出口64を介して針管66から吐出させることができる。押し子本体部92およびガスケット21の間は、接触するのみで連結させているが、摩擦力が作用することで、ガスケット21は押し子90に対してほとんど回転しない。なお、ガスケット21が押し子90に対してより非回転的となるように、ガスケット21と押し子90を強固に連結させてもよい。連結させる方法として、例えば、接着したり、または、押し子90の先端部に凸部を設け、ガスケット21に凸部が嵌合する凹部を設けて嵌合させることで連結させてもよい。
回転筒基端部100は、図2,3および9に示すように、音発生用爪82(図4を参照)が係合する2つの音発生用孔101と、押し子ロック用突起部94と接する2つの押し子ロック用傾斜部102と、回転筒先端部110と係合する2つの回転筒係合爪103と、抵抗用突起部96と接触する抵抗用爪部105と、フック状に形成される第1コイルバネ12のバネ先端部が係合する(引っ掛かる)バネ係合部108とを備えている。
2つの音発生用孔101は、構造体40の中心軸を挟んで対向する位置に形成され、操作部基端部材80に形成される音発生用爪82が係合されることで、音を発する。2つの押し子ロック用傾斜部102は、構造体40の中心軸を挟んで対向する位置に形成され、液体投与具10が提供される初期状態において、図3に示すように、押し子90に形成される押し子ロック用突起部94の先端側に位置し、押し子90の先端方向への移動を制限して、液体の投与を制限する。この状態から、回転筒基端部100が押し子90に対して回転すると、押し子ロック用傾斜部102が押し子ロック用突起部94の先端方向の位置から外れ、押し子90の先端方向への移動の制限が解除され、液体の投与が可能となる。すなわち、押し子ロック用傾斜部102および押し子ロック用突起部94は、押し子90の移動を、所定の条件が満たされるまで制限する押し子規制部Pとして機能する。
2つの回転筒係合爪103は、構造体40の中心軸を挟んで対向する位置に形成され、回転筒先端部110に形成される回転筒係合孔111(図10を参照)に係合する。回転筒係合爪103が回転筒係合孔111に係合することで、回転筒基端部100および回転筒先端部110は、一体的に移動する構成となる。
回転筒基端部100の外周面の基端部には、径方向外側へ突出するフランジ状の外周凸部104が形成されている。
2つの抵抗用爪部105は、構造体40の中心軸を挟んで対向する位置に形成され、径方向内側へ突出している。2つの抵抗用爪部105は、操作部20が回転筒基端部100に対して先端方向へ移動する際に、複数の抵抗用突起部96と順次接触して抵抗力を与える。抵抗用爪部105の先端側に形成される先端面106には、操作部20が回転筒基端部100に対して基端方向へ移動する際に、操作部20に設けられる移動防止用爪部97が接触可能である(図2を参照)。
また、抵抗用爪部105には、回転筒基端部100が操作部20に対して回転する際に、摺動面98と接触して回転を規制する面である当接部107が形成される。
回転筒先端部110は、図2,3,10および11に示すように、外周面に、回転筒基端部100の回転筒係合爪103(図9を参照)が係合する2つの回転筒係合孔111と、2つのカム溝112と、2つの安全用溝113とが形成されている。
2つの回転筒係合孔111は、構造体40の中心軸を挟んで対向する位置に形成され、回転筒基端部100に形成される回転筒係合爪103が係合する。
2つのカム溝112は、構造体40の中心軸を挟んで対向する位置に形成され、カバー部材30の誘導用凸部37(図8を参照)を収容し、誘導用凸部37を溝に沿って相対的に移動させる。すなわち、カム溝112および誘導用凸部37は、構造体40とカバー部材30の相対的な動作を規定するカム機構からなる動作誘導部Mとして機能する。
カム溝112は、回転筒先端部110の軸方向に沿って延在し、直線状に形成される初期直線溝112Aと、回転筒先端部110の軸方向に対して傾斜するように形成される傾斜溝112Bと、回転筒先端部110の軸方向に沿って延在し、直線状に形成される直線溝112Cとを備えている。
初期直線溝112Aは、外周面の先端部から基端方向へ延在して形成されている。初期直線溝112Aの先端部には、デバイスの組み立ての際に、誘導用凸部37を初期直線溝112Aへ離脱不能に受け入れる段差部114が形成されている。段差部114は、先端側が内側へ傾斜して形成されており、この傾斜面114Aに沿って誘導用凸部37を滑らしつつ初期直線溝112Aへ導くことができる。また、段差部114は、基端側に、回転筒先端部110の軸方向に対して略90度で切り立つ壁面114Bが形成されており、一旦、傾斜面114Aを通って段差部114を基端側へ超えた誘導用凸部37が、再び段差部114の壁面114Bを超えて離脱することを抑制する。
傾斜溝112Bは、初期直線溝112Aの基端部と連通して形成されており、初期直線溝112Aの基端部から基端方向へ傾斜して延在している。傾斜溝112Bは、1周よりも短く形成されている。
傾斜溝112Bの直線溝112Cと連通する部位の直前には、中断用保持部112Dが設けられ、中断用保持部112Dの先端側の縁部には、回転筒先端部110の軸方向と直交する角度で形成される中断用縁部112Eが形成される。中断用保持部112Dは、投与を中断する際に、カバー部材30の誘導用凸部37が保持される部位である。なお、中断用縁部112Eは、回転筒先端部110の軸方向と直交する角度で形成されなくてもよく、初期直線溝112Aから直線溝112Cへ向かって先端方向へ傾斜するように、すなわち傾斜溝112Bの傾斜角度とは逆方向に傾斜するように形成されてもよい。
直線溝112Cは、傾斜溝112Bの基端部と連通して形成されており、傾斜溝112Bの基端部から、先端方向へ延在している。
なお、カム溝112が、カバー部材30に形成され、誘導用凸部37が、構造体40に形成されてもよい。
2つの安全用溝113は、構造体40の中心軸を挟んで対向する位置に形成され、カバー部材30の安全用凸部36を収容する。安全用溝113は、カム溝112および誘導用凸部37によって相対的に移動する構造体40およびカバー部材30の位置関係に応じて、カバー部材30の構造体40に対する相対的な軸方向の移動を規制する。したがって、安全用溝113および安全用凸部36は、カバー部材30が構造体40に対して基端方向へ移動し、すなわち、針管66を生体に穿刺して液体の投与を完了し、カバー部材30の構造体40に対する先端方向への移動量が所定の露出規制作動量に達した後には、カバー部材30が構造体40に対して再び基端方向へ移動して針管66が突出することを抑制する露出規制部E(図12(B)を参照)を構成する。
安全用溝113は、回転筒先端部110の軸方向へ延在して直線状に形成される第1安全用溝113Aと、第1安全用溝113Aと並んで平行に延在する第2安全用溝113Bと、第1安全用溝113Aと第2安全用溝113Bの基端部を連通させる基端側連通溝113Cとを備えている。
第2安全用溝113Bには、安全用凸部36の先端方向への移動を許容するが、基端方向への移動を抑制する安全用段差部115(第2の係合部)が形成されている。安全用段差部115は、基端側の安全用傾斜面115Aが第2安全用溝113Bの内側から傾斜して形成されており、この安全用傾斜面115Aに沿って安全用凸部36を滑らしつつ先端側へ導くことができる。また、安全用段差部115は、先端側に、回転筒先端部110の軸方向に対して略90度で切り立つ安全用壁面115Bが形成されており、一旦安全用傾斜面115Aを通って安全用段差部115を先端方向へ超えた安全用凸部36が、安全用段差部115と係合し、再び安全用段差部115を基端方向へ超えることを抑制する。
構造体40およびカバー部材30は、動作誘導部Mにおいて誘導用凸部37が初期直線溝112Aに位置する際に、安全用段差部115および安全用凸部36が、回転軸と平行な同一軸上に並ばない第1の状態となる。この第1の状態において、安全用凸部36は、第1安全用溝113Aに位置し、構造体40およびカバー部材30が軸方向へ相対的に移動しても、安全用段差部115および安全用凸部36が係合することはない。そして、構造体40およびカバー部材30は、誘導用凸部37が中断用保持部112Dに位置する際に、摺動面98に当接部107が接触することで操作部20および構造体40の相対的な回転が規制された第2の状態となる。また、構造体40およびカバー部材30は、誘導用凸部37が直線溝112Cに位置する際に、安全用段差部115および安全用凸部36が、回転軸と平行な同一軸上に並ぶ第3の状態となる。この第3の状態において、安全用凸部36は、第2安全用溝113Bに位置し、構造体40およびカバー部材30が軸方向へ相対的に所定の距離(露出規制作動量)を移動することで、安全用段差部115および安全用凸部36が係合可能である。一旦安全用段差部115の先端側へ安全用凸部36が移動すると、安全用壁面115Bに安全用凸部36の基端が接触して、安全用凸部36が再び安全用段差部115を基端方向へ超えることが抑制される。
なお、安全用溝113が、カバー部材30に形成され、安全用凸部36が、構造体40に形成されてもよい。
また、回転筒先端部110は、基端方向へ延在する回転筒延長部116と、シリンジ筒体61を相対的に回転可能に支持する支持部118と、先端部にて径方向外側へ突出する回転筒先端突起部119とを備えている。回転筒延長部116の基端部には、シリンジ筒体61の中心軸回りの一方向側への回転を規制するようにフランジ62の側面に接する回転規制部117が形成される。回転規制部117は、組み立て時にフランジ62に接触することで、シリンジ筒体61を適正な回転方向の位置で配置させる役割を果たす。なお、回転規制部117は、シリンジ筒体61の中心軸回りの逆方向側への回転は規制せずに許容する。
支持部118は、シリンジ筒体61の先端方向に向かう先端面68に摺動可能に接するように、基端方向へ突出している。支持部118は、吐出口64を囲むように、複数に分割されて環状に形成される。なお、支持部118は、複数に分割されなくてもよい。複数に分割されている場合、先端面68と支持部118の接触面積が小さくなるので、シリンジ筒体61をより摺動可能にしやすいのでより好ましい。支持部118は、突出する頂点で先端面68と接触し、接触面積が小さいため、シリンジ筒体61を回転方向へ摺動可能に支持することができる。支持部118の突出する頂点の形状は接触面積が小さくなる形状であればよい。支持部118の突出する頂点の形状は、球面状であれば、シリンジ筒体61がより摺動可能になるのでより好ましい。支持部118が少なくとも3点に分割されており、基端部から先端部を見たときに支持部118の形状が円状で、かつ突出する頂点も球面状であるときが、シリンジ筒体61がより摺動可能になるのでより好ましい。なお、支持部118が接する面は、シリンジ筒体61の先端方向に向かう面であれば、先端面68でなくてもよい。
支持部118または先端面68の少なくとも一方に、表面処理を施してもよい。支持部118または先端面68に表面処理を施すことで接触部位を滑りやすくし、構造体40のみを回転させやすくすることができる。表面処理は、例えばシリコンコーティング等である。
ガスケット21とシリンジ筒体61の内側との摩擦力が、支持部118と先端面68の摩擦力より大きいとき、シリンジ筒体61はガスケット21とシリンジ筒体61の内側の摩擦力により固定され、支持部118との摺動性が向上する。
回転筒先端突起部119は、キャップ120に設けられる後述の固定用フック124(図24を参照)が連結される部位であり、周方向の一部に形成される。投与前の初期状態においては、固定用フック124が設けられる位置には回転筒先端突起部119が存在せず、したがって、固定用フック124が回転筒先端突起部119に連結されておらず、キャップ120をカバー部材30から取り外すことが可能である。投与完了後には、初期状態と異なり、カバー部材30に対して回転筒先端部110が回転しているため、固定用フック124が連結可能な位置に回転筒先端突起部119に存在し、固定用フック124が回転筒先端突起部119に引っ掛かるように連結可能となる。
第2コイルバネ11は、図2,3に示すように、カバー部材30の内部に配置されており、先端部がカバー先端部32の基端面に接し、基端部が構造体40に接している。この第2コイルバネ11は、軸方向に収縮された状態で配置され、これによって、カバー部材30を構造体40に対して先端方向へ付勢している。
第1コイルバネ12は、図2に示すように、操作部20の内部に配置され、操作部20をシリンジ60に対して先端方向へ移動させる力を発生させる。第1コイルバネ12は、外力が作用しない自然状態においてコイルが収縮した状態であり、これを強制的に引き伸ばした状態で、フック状のバネ先端部が構造体40のバネ係合部108に連結され、フック状のバネ基端部12A(図14を参照)が、係合板50の係合爪挿通孔53を貫通して、係合部50のバネ係合部54に引っ掛かるように連結されている。したがって、第1コイルバネ12は、操作部20を構造体40に対して先端方向へ移動させる力を発生させ、シリンジ60から針管66を介して液体を吐出させる際の補助機構として機能する。
キャップ120は、図2,24に示すように、液体を投与する操作が行われていない未使用様態において、カバー部材30を外側から覆うように装着さている。キャップは、有底筒状をなす部材であり、板状の底部121と、底部121から立ち上がる筒状のキャップ筒部122と、底部121から基端方向へ延びる2つの固定用フック124とを備えている。底部121には、針管66を覆う針管用キャップ123が固定されている。
カバー部材30、係合板50、シリンジ60、操作部筒体70、操作部基端部材80、押し子90、回転筒基端部100、回転筒先端部110およびキャップ120の構成材料は、特に限定されず、例えば、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂が挙げられる。
ガスケット21および針管用キャップ123の構成材料は、弾性材料であることが好ましいが、特に限定されず、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等が挙げられる。
針管66の構成材料は、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金のような金属材用が挙げられる。
第2コイルバネ11および第1コイルバネ12の構成材料は、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、銅等のような金属材料が挙げられる。
次に、第1実施形態に係る液体投与具10の使用方法を説明する。
始めに、図1〜3に示すように、未使用の初期状態の液体投与具10を準備し、カバー部材30および針管66を覆うキャップ120を取り外して初期状態とする。キャップ120を取り外す際には、構造体40が操作部20から脱落する方向へ力が作用するが、抵抗用爪部105の先端面106に、操作部20に設けられる移動防止用爪部97が接触することで、構造体40の操作部20からの脱落を防止できる。
この初期状態において、シリンジ筒体61の内部に液体が収容され、操作部20が構造体40に対して基端方向に位置し、第1コイルバネ12が引き延ばされた状態となっている。第1コイルバネ12のバネ基端部12Aは、係合部50の平坦なバネ係合面56に引っ掛かるように連結されている。さらに、カバー部材30は、構造体40に対して第2コイルバネ11によって先端方向へ付勢されている。
初期状態においては、回転筒先端部110に形成される回転規制部117が、フランジ62の側面に接触し、シリンジ筒体61の中心軸回りの一方向側への回転を規制するとともに、逆方向側への回転を許容している。
動作誘導部Mにおいては、図12(A)に示すように、カバー部材30の誘導用凸部37が、回転筒先端部110の初期直線溝112Aに位置しており、初期直線溝112Aに沿って軸方向へ移動可能となっている。また、図12(B)に示すように、露出規制部Eにおいては、カバー部材30の安全用凸部36が、構造体40の第1安全用溝113Aに位置しており、第1安全用溝113Aに沿って軸方向へ移動可能となっている。このため、カバー部材30は、構造体40に対して基端方向へ移動することが可能な状態となっている。そして、カバー部材30および構造体40は、安全用凸部36および安全用段差部115が、回転軸と平行な同一軸上に並ばない第1の状態となっている。
また、押し子規制部Pにおいては、図3に示すように、回転筒基端部100に形成される押し子ロック用傾斜部102が、押し子90に形成される押し子ロック用突起部94の先端側に位置し、押し子90の先端方向への移動が制限されて、予期しない液体の投与が制限されている。また、抵抗用爪部105は、抵抗用突起部96と接触していない。
また、回転筒基端部100の当接部107は、移動量規制部95の摺動面98に接触せずに、離れて位置している。
次に、操作部20を把持して、カバー部材30のカバー先端部32を生体へ当接させる。カバー部材30のカバー先端部32を生体へ押し付けると、カバー部材30が、構造体40に対して基端方向へ移動可能な状態となっているため、第2コイルバネ11を収縮させつつ、カバー部材30が、図13〜15に示すように、構造体40に対して基端方向へ移動する。これにより、針管66がカバー部材30から先端方向へ突出して、生体に穿刺した状態となる。なお、図15に示すように、押し子ロック用傾斜部102が押し子ロック用突起部94に接触して押し子90のシリンジ筒体61に対する移動が制限されているため、液体は投与されない。
カバー部材30が、構造体40に対して基端方向へ移動すると、図13(A)に示すように、動作誘導部Mにおいては、カバー部材30の誘導用凸部37が、構造体40の初期直線溝112Aの基端部、すなわち傾斜溝112Bの先端側に位置する。また、図13(B)に示すように、露出規制部Eにおいては、カバー部材30の安全用凸部36が、構造体40の第1安全用溝113Aの基端部に位置しており、基端側連通溝113Cへ移動可能となっている。
次に、さらに操作部20を押圧すると、図16(A),図17に示すように、傾斜溝112Bに到達した誘導用凸部37が傾斜溝112Bを押圧することになり、誘導用凸部37が傾斜溝112Bを移動し、操作部20およびカバー部材30に対して構造体40が回転する。構造体40が回転して当接部107が摺動面98と接触すると、これ以上の回転が抑制され、誘導用凸部37が直線溝112Cまで到達せずに、中断用保持部112Dで停止した第2の状態となる。操作部20およびカバー部材30に対して構造体40が回転する際には、抵抗用爪部105が抵抗用突起部96と接触していないため、抵抗用爪部105および抵抗用突起部96の接触によって回転が阻害されず、良好な動作が可能である。
そして、図16(B)に示すように、露出規制部Eにおいては、構造体40が回転することで安全用凸部36が基端側連通溝113Cを通り、第2安全用溝113Bへ到達する直前で停止する。このとき、シリンジ筒体61が、構造体40に設けられる支持部118によって相対的に回転可能に支持されているため、構造体40が回転しても、シリンジ筒体61は構造体40とともに回転することはなく、押し子90に非回転的に連結されたガスケット21とシリンジ筒体61の間の摩擦力によって、操作部20に対して非回転的に保持される。このため、シリンジ筒体61に接続される針管66も回転せず、穿刺時の安全性を確保できる。
そして、構造体40が操作部20に対して回転することで、押し子規制部Pでは、図17に示すように、押し子ロック用傾斜部102が押し子ロック用突起部94の先端方向の位置から外れ、押し子90の先端方向への移動の制限が解除され、液体の投与が可能となる。
また、構造体40が操作部20に対して回転することで、フック状のバネ基端部12Aがバネ係合面56からバネ移動傾斜面55へ移動してバネ移動傾斜面55を滑り、操作部20の中心軸を中心として周方向へ回転するように移動する。これにより、構造体40が回転することにより生じ得る第1コイルバネ12の捩れの発生を抑え、液体投与具10に不要な力が作用することを抑制して、液体投与具10の操作性が損なわれないようにすることができる。
次に、さらに操作部20を押圧すると、当接部107が摺動面98と接触しているために、カバー部材30の誘導用凸部37が、カム溝112内をこれ以上基端方向へ移動できないため、カバー部材30は、これ以上構造体40に対して基端方向へ移動できない。このため、操作部20が、構造体40およびカバー部材30に対して先端方向へ移動し、図18に示すように、ガスケット21がシリンジ筒体61の内部を移動して、針管66を介して液体が生体内へ投与される。このとき、図16(A)に示すように、動作誘導部Mにおいては、カバー部材30が構造体40に対して移動しないため、誘導用凸部37が移動せず、傾斜溝112Bの中断用保持部112Dに位置している。そして、図16(B)に示すように、露出規制部Eにおいても、安全用凸部36が移動せず、基端側連通溝113Cの第2安全用溝113Bへ到達する直前に位置している。
また、液体の投与が進むとともに、当接部107が摺動面98上を摺動しつつ移動し、図18に示すように、抵抗用爪部105が、軸方向に並ぶ各々の抵抗用突起部96を接触しつつ乗り越え、2つの抵抗用突起部96の間の抵抗用突起部96が設けられない領域では、抵抗用突起部96と接触せずに移動する。抵抗用爪部105が各々の抵抗用突起部96を乗り越える際には、抵抗用爪部105および抵抗用突起部96が変形して抵抗力が生じる。
抵抗用爪部105および抵抗用突起部96は、中心軸を挟んで対称的に配置されているため、中心軸と直交する方向へ発生する反力が互いに打ち消しあい、移動方向と平行な力のみが残り、液体投与具10に不要な力が作用せず、良好な動作が可能である。
操作部20が構造体40に対して先端方向へ移動する際には、第1コイルバネ12が、操作部20を構造体40に対して先端方向へ移動させる力を発生させ、シリンジ60から針管66を介して液体を吐出させる際の吐出機構およびその吐出を補助する補助機構として機能する。
ガスケット21をシリンジ筒体61内で先端方向へ移動させようと作用する力は、第1コイルバネ12の付勢力(収縮力)F1と、第2コイルバネ11の付勢力(拡張力)F2と、使用者が付与する押圧力F4との和となる。なお、弾性部材(本実施形態では、第1コイルバネ12および第2コイルバネ11)から作用する付勢力の総和Fは、F1およびF2の和である。そして、これに対抗する力は、シリンジ筒体61内の液体を針管66から吐出させるための針管吐出抵抗F0と、操作部20と構造体40との間の動摩擦力F3との和となる。動摩擦力F3は、シリンジ筒体61の内壁面とガスケット21との間の動摩擦力F3aと、抵抗用爪部105が抵抗用突起部96と接する際の接触抵抗F3bと、上記の部位以外で生じる操作部20と構造体40との間の動摩擦力F3cとの総和となる。なお、接触抵抗F3bは、抵抗用爪部105が抵抗用突起部96と接触する場合のみ発生する。そして、使用者が操作部20を押圧して投与を行う際には、下式(1)および(2)が成り立つ。
F+F4=F1+F2+F4>F0+F3 ・・・式(1)
F3=F3a+F3b+F3c ・・・式(2)
次に、液体の投与の途中で操作部20の押圧を緩めると、第1コイルバネ12の付勢力F1によって、カバー部材30が構造体40に対して先端方向へ力を受けて、図19(A)に示すように、誘導用凸部37が中断用保持部112Dの中断用縁部112Eに接触する。したがって、カバー部材30は、中断用保持部112D内の軸方向への誘導用凸部37の移動量のみ移動し、針管66を覆わない。このため、カバー部材30が構造体40に対して先端方向へ移動した際にカバー部材30が構造体40に対して再び基端方向へ移動して針管66が突出することを抑制する露出規制部Eが作動せず、液体投与具10を生体から離したとしても、再び投与を開始することが可能である。そして、操作部20の押圧を投与の途中で間違って緩めても、カバー部材30はほとんど移動しないため、カバー部材30の移動により針管66が生体から抜けて投与が困難となることも抑制でき、操作性が向上する。また、操作部20の押圧を緩めて誘導用凸部37が中断用保持部112Dの中断用縁部112Eに接触すると、第2コイルバネ11の付勢力F2が誘導用凸部37および中断用保持部112Dの係合部位によって受け止められることになり、第2コイルバネ11が拡張不能となる。このため、カバー部材30の移動が制限されて、第2コイルバネ11の付勢力F2がガスケット21の移動に作用しなくなり、操作部20を押す力が少なくてよく、押圧力が弱い使用者でも負担なく操作できる。なお、中断用縁部112Eは、回転筒先端部110の軸方向と直交する角度で形成され、または傾斜溝112Bの傾斜角度とは逆方向に傾斜するように形成されているため、誘導用凸部37が傾斜溝112Bの傾斜によって初期直線溝112Aへ戻ることを抑制でき、投与を中断した状態をそのまま良好に維持することができる。そして、図19(B)に示すように、露出規制部Eにおいても、安全用凸部36がほとんど移動せず、基端側連通溝113Cの第2安全用溝113Bへ到達する直前に位置している。
使用者が操作部20の先端方向への押圧を停止した後には、第2コイルバネ11の付勢力F2および使用者の押圧力F4がガスケット21の移動に作用しなくなり、抵抗用爪部105が抵抗用突起部96と接触する場合および接触しない場合のいずれにおいても、液体の投与が継続される。したがって、下式(3)を満たす必要がある。
F=F1>F0+F3 ・・・式(3)
そして、使用者が操作部20の先端方向への押圧を停止した際の針管66からの液体の投与速度は、1/180(mL/秒)以上であって1/20(mL/秒)以下であることが好ましい。投与速度が1/20(mL/秒)以下であれば、投与速度が速すぎないため、投与による痛みを低減させて患者への負担を低減できるとともに、必要に応じて押圧力を作用させて、患者に合わせた望ましい投与速度に調節可能である。さらに、投与速度が1/180(mL/秒)以上であり、投与速度が遅すぎないため、投与に必要以上の時間がかからず、力の弱い患者や手指に痛みや変形がある患者であっても容易に使用でき、患者の負担を低減できる。また、投与速度が遅すぎる場合には、操作部を手で押す際に大きな力が必要になる場合があるが、投与速度が遅すぎないため、容易に押すことができ、患者の負担を低減できる。一般的に、使用される薬剤は0.1mL以上5mL以下である。したがって、投与開始から投与終了まで、2秒から900秒位の時間がかかるため、患者が速度を調整する時間が存在する。
一旦皮膚から離す際に、液体の吐出が停止する構成とすることも可能である。操作部20を先端方向へ押圧すると、当接部107が摺動面98と接触しているため、図20に示すように、カバー部材30の誘導用凸部37が中断用保持部112Dから移動できない。このため、操作部20が、構造体40およびカバー部材30に対して先端方向へ移動し、ガスケット21がシリンジ筒体61の内部を移動して、針管66を介して液体が生体内へ投与される。
そして、上述した液体の投与の停止および再開を、状況に応じて複数回繰り返すことができる。一方、意図的に、異なる部位などに複数回に分割して投与を行うことができる。
シリンジ筒体61の内部の液体がなくなり、液体の投与が完了すると、図21に示すように、操作部20に設けられる音発生用爪82が、構造体40に設けられる音発生用孔101に係合する。音発生用爪82が音発生用孔101に係合する際には、弾性的に変形した音発生用爪82が元の形状に戻るようにして、音発生用孔101に係合し、音発生用爪82が、音発生用孔101が形成される回転筒基端部100と接触することで、音を発生する。音が発生することで、液体の投与の完了を聴覚的に認識することができる。
操作部20の構造体40に対する移動量が投与完了移動量に達し、液体の投与が完了すると、当接部107上を摺動した摺動面98が収容部99に到達する。摺動面98が収容部99に到達すると、当接部107が摺動面98に接触しなくなり移動量規制部95による規制が解除され、構造体40の操作部20に対する回転が可能となる。これにより、図22(A)に示すように、誘導用凸部37が傾斜溝112Bを移動して直線溝112Cまで到達し、構造体40が操作部20に対して回転して、当接部107を有する抵抗用爪部105が収容部99に収容される。構造体40が操作部20に対して回転する際には、既に抵抗用爪部105が抵抗用突起部96と接触しておらず、回転が阻害されない。収容部99に抵抗用爪部105が収容されると、抵抗用爪部105の先端側に移動量規制部95が位置することになるため、構造体40の操作部20に対する先端方向への抜けを抑制できる。
そして、投与が完了した状態では、露出規制部Eにおいては、図22(B)に示すように、安全用凸部36が第2安全用溝113Bの基端部に位置している。このとき、カバー部材30および構造体40は、安全用凸部36および安全用段差部115が、回転軸と平行な同一軸上に並ぶ第3の状態となる。
この状態から、操作部20を把持してカバー先端部32を皮膚から離すと、図23に示すように、第2コイルバネ11の付勢力によって、カバー部材30が構造体40に対して先端方向へ移動し、針管66がカバー部材30に収容される。これにより、図23(A)に示すように、誘導用凸部37が直線溝112Cを基端方向へ移動する。そして、露出規制部Eにおいては、図23(B)に示すように、安全用凸部36が、第2安全用溝113Bを先端方向へ移動して、安全用段差部115の安全用傾斜面115Aを滑りつつ変形して乗り越えて、安全用段差部115の先端側に到達する。このときの移動量が、カバー部材30が露出位置から保護位置へ移行する際の露出規制作動量に相当する。そして、安全用凸部36が一旦安全用段差部115を乗り越えると、安全用壁面115Bによって安全用凸部36の第2安全用溝113Bにおける基端方向への移動が抑制されるため、カバー部材30の構造体40に対する基端方向への移動が不能となり、露出規制部Eが作動した状態となる。露出規制部Eが作動した状態となると、針管66のカバー部材30からの再突出が不能となり、針管66による誤穿刺を抑止して安全性を向上できる。
この後、図24に示すように、カバー部材30にキャップ120を取り付ける。このとき、初期状態と異なり、カバー部材30に対して回転筒先端部110が回転しているため、キャップ120の固定用フック124が、回転筒先端部110の回転筒先端突起部119に引っ掛かり、キャップ120が取り外し不能に取り付けられて安全性が確保される。
以上のように、第1実施形態に係る液体投与具10は、液体を生体内へ投与するための液体投与具10であって、把持して操作を行うための操作部20と、内部に液体を収容可能なシリンジ60(収容体)および当該シリンジ60の内部と連通可能な針管66を備え、操作部20に対して相対的に移動可能である構造体40と、操作部20を構造体40に対して先端方向へ付勢する第1コイルバネ12(第1の付勢部材)と、を有し、シリンジ60内の液体を針管66から吐出させるための針管吐出抵抗をF0、第1コイルバネ12の付勢力F1を含む弾性部材により作用する付勢力をF、操作部20と構造体40との間の動摩擦力をF3としたとき、F>F0+F3を満たし、かつ、針管66からの液体の投与速度が1/180(mL/秒)以上であって1/20(mL/秒)以下である。このように、液体投与具10は、F1+F2>F0+F3を満たすことで、使用者が押圧しない場合にも投与が継続されるとともに、使用者が操作部20を押圧することで、投与速度を望ましい値に任意に調節することができる。そして、投与速度が1/20(mL/秒)以下であり、投与速度が速すぎないため、投与による痛みを低減させて患者への負担を低減できるとともに、必要に応じて押圧力を作用させて、患者に合わせた望ましい投与速度に調節可能である。さらに、投与速度が1/180(mL/秒)以上であり、投与速度が遅すぎないため、投与に必要以上の時間がかからず、力の弱い患者や手指に痛みや変形がある患者であっても容易に使用でき、患者の負担を低減できる。また、投与速度が遅すぎる場合には、操作部20を手で押す際に大きな力が必要になる場合があるが、投与速度が遅すぎないため、容易に押すことができ、患者の負担を低減できる。
また、第1実施形態に係る液体投与具10は、針管66を覆う保護位置および前記針管を露出させる露出位置の間を移動可能なカバー部材30と、カバー部材30を先端方向に付勢する第2コイルバネ11(第2の付勢部材)とをさらに有し、第2コイルバネ11の付勢力をF2としたとき、F1+F2>F0+F3を満たすため、カバー部材30によって針管66を覆って安全性を確保することが可能な構成としつつ、使用者が押圧しない場合にも投与が継続されるとともに、使用者が操作部20を押圧することで、投与速度を望ましい値に任意に調節することができる。
また、第1実施形態に係る液体投与具10は、構造体40が操作部20およびカバー部材30に対して相対的に回転可能であるため、上述の移動量規制部95、投与後の針管66の露出を規制する露出規制部E、条件が満たされるまで押し子90が押し込まれないようにする押し子規制部Pなどの複数の機能を、異なる回転位置で作動するように配置することができ、各々の機能が干渉しない。構造体が操作部およびカバー部材に対して回転しない構造である場合、直線運動上で全ての機能が発揮されることになるため、条件に応じて機能が作動しないように部材が接触しつつも乗り越えるようにする等の工夫がなされるが、この場合、操作部を押圧する際の抵抗が増加して操作性が低下するとともに、各機能の精度が低下する虞がある。これに対し、本実施形態のように、構造体40が操作部20およびカバー部材30に対して相対的に回転可能であることで、干渉させずに複数の機能を設けることが可能となり、操作部20を押圧する際の抵抗を低減させて操作性を向上させることができるとともに、各機能の精度を向上させることができる。
また、本実施形態に係る液体投与具10は、初期状態でカバー部材30が針管66を覆う保護位置に存在することで、薬液を注入前の針管66を挿入する恐怖心を低減でき、かつ、針管66を途中で抜いてしまうことで針管66がカバー部材30に覆われて再露出が規制されてしまい、高価な薬剤を二度と打つことができなくなる精神的苦痛をも低減可能である。
また、液体投与具10は、溝と凸部の関係を用いる回転運動により、円滑に動作可能であり、弱い力で操作でき、投与が容易である。なお、直線運動の場合、上述したように、乗り越える必要がある段差等が想定されて、少ない力で同じ効果を得ることは困難である。
また、第1実施形態に係る液体投与具10は、構造体40が操作部20に対して相対的に回転可能であるとともに、操作部20の構造体40に対する先端方向への移動を規制し、構造体40の操作部20に対する相対的な回転によって規制を解除可能な押し子規制部P(操作部規制部)を有するため、条件が整うまで液体が針管66から吐出されず、安全性が向上する。
また、第1実施形態に係る液体投与具10は、第2コイルバネ11(第2の付勢部材)の付勢力により露出位置から保護位置に移動するカバー部材30の構造体40に対する移動量が所定の露出規制作動量に達する際に、カバー部材30の露出位置への移動を規制する露出規制部Eと、操作部20の構造体40に対する先端方向への移動量が所定の投与完了移動量に達するまで、第2コイルバネ11の付勢力により、カバー部材30が構造体40に対する移動量が露出規制作動量に達しないようにカバー部材30の移動量を規制する移動量規制部95と、を有している。このため、液体投与具10は、針管66を露出可能に覆うカバー部材30が設けられて安全性を確保しつつ、移動量規制部95によりカバー部材30の移動量が規制されることで、投与時のカバー部材30の移動による操作の阻害が抑制されて操作性が向上する。さらに、移動量規制部95が設けられることで、操作部20の構造体40に対する先端方向への移動量が投与完了移動量に達するまでは、カバー部材30が構造体40に対して先端方向に移動可能な移動量が、露出規制作動量に達しない。このため、投与が完了して操作部20の移動量が露出規制作動量に達するまではカバー部材30の露出位置への移動の規制が行われず、途中で投与操作を中断しても投与を再開可能である。また、操作部20の構造体40に対する先端方向への移動量が所定の投与完了移動量に達すると、移動量規制部95が解除されて、カバー部材30の構造体40に対して先端方向に移動可能な移動量が露出規制作動量に達し、カバー部材30によって針管66を覆って、安全性を確保できる。
また、操作部20および構造体40は、操作部20が構造体40に対して先端方向へ移動する際に接触位置を変えつつ互いに押し付け力を作用させて抵抗用突起部96(第1の接触部)および抵抗用爪部105(第2の接触部)を有するため、第1コイルバネ12の付勢力F1に対抗する接触抵抗F4を任意に設定することが可能であるため、設計の自由度が向上し、例えば投与速度や投与の中断などの望ましい条件を満たすように設計することが容易となる。
<第2実施形態>
第2実施形態に係る液体投与具150は、カバー部材30の移動量を規制する移動量規制部95が設けられず、かつ接触抵抗F3bを与える抵抗用突起部96が設けられない点でのみ、第1実施形態に係る液体投与具10と異なる。なお、第1実施形態に係る液体投与具10と同一の機能を有する部位には同一の符号を付し、重複を避けるため、説明を省略する。
第2実施形態に係る液体投与具の押し子160は、図25に示すように、移動量規制部95が設けられず、かつ抵抗用突起部96が設けられていない。移動量規制部95が設けられないことで、第2実施形態に係る液体投与具150は、投与を行う際に、第1の状態から第2の状態を経由せずに第3の状態となって、液体の投与が行われることになる。
さらに、第2実施形態に係る液体投与具160は、抵抗用突起部96が設けられていないため、投与の際に、抵抗用突起部96と抵抗用爪部105との接触による接触抵抗F3bが作用しない。
詳述すると、第1実施形態と同様に、操作部20を押圧して、皮膚に接したカバー部材30が構造体40に対して基端方向へ移動する際に、図26(A)に示すように、動作誘導部Mにおいては、カバー部材30の誘導用凸部37が、構造体40の初期直線溝112Aの基端部へ移動した後、傾斜溝112Bの傾斜に沿って移動し、直線溝112Cの基端部に位置することになる。誘導用凸部37が初期直線溝112Aから傾斜溝112Bを通って直線溝112Cの基端部へ移動すると、構造体40が操作部20およびカバー部材30に対して回転する。これにより、図26(B)に示すように、露出規制部Eにおいては、安全用凸部36が第1安全用溝113Aから基端側連通溝113Cを通り、第2安全用溝113Bの基端部に到達する。このとき、カバー部材30および構造体40は、安全用凸部36および安全用段差部115が、回転軸と平行な同一軸上に並ぶ第3の状態となる。
次に、さらに操作部20を押圧すると、カバー部材30の誘導用凸部37が、カム溝112内をこれ以上基端方向へ移動できないため、カバー部材30は、これ以上構造体40に対して基端方向へ移動できない。そして、操作部20が、内部構造体40およびカバー部材30に対して先端方向へ移動し、ガスケット21がシリンジ筒体61の内部を移動して、針管66を介して液体が生体内へ投与される。このとき、動作誘導部Mにおいては、カバー部材30が構造体40に対して移動しないため、誘導用凸部37が移動せず、直線溝112Cの基端部に位置している。そして、露出規制部Eにおいても、安全用凸部36が移動せず、第2安全用溝113Bの基端部に位置している。
液体の投与の際に、ガスケット21をシリンジ筒体61内で先端方向へ移動させようと作用する力は、第1コイルバネ12の付勢力F1と、第2コイルバネ11の付勢力F2と、使用者が付与する押圧力F4との和となる。弾性部材である第1コイルバネ12および第2コイルバネ11から作用する付勢力の総和Fは、F1+F2となる。なお、第1実施形態と異なり、第2実施形態では、第2の状態とならずにカバー部材30の移動が制限されないため、第2コイルバネ11の付勢力F2はゼロとならない。そして、これに対抗する力は、シリンジ筒体61内の液体を針管66から吐出させるための針管吐出抵抗F0と、操作部20と構造体40との間の動摩擦力F3との和となる。動摩擦力F3は、シリンジ筒体61の内壁面とガスケット21との間の動摩擦力F3aと、上記の部位以外で生じる操作部20と構造体40との間の動摩擦力F3cとの和となる。したがって、使用者が操作部20を押圧して投与を行う際には、下式(4)および式(5)が成り立つ。
F+F4=F1+F2+F4>F0+F3 ・・・式(4)
F3=F3a+F3c ・・・式(5)
そして、使用者が操作部20の先端方向への押圧を停止した後においても、液体の投与が継続される。そのためには、上述の式(5)および下式(6)を満たす必要がある。
F=F1+F2>F0+F3 ・・・式(6)
使用者が操作部20の先端方向への押圧を停止した際の針管66からの液体の投与速度は、1/180(mL/秒)以上であって1/20(mL/秒)以下である。
そして、投与の開始から終了までの間、必要に応じて押圧力F4を調整して、任意の投与速度に調節しつつ投与を行うことができる。
液体の投与が完了した後、操作部20を把持してカバー先端部32を皮膚から離すと、図27に示すように、第2コイルバネ11の付勢力F2によって、カバー部材30が構造体40に対して先端方向へ移動し、針管66がカバー部材30に収容される。動作誘導部Mにおいては、図27(A)に示すように、誘導用凸部37が、直線溝112Cの先端部へ移動する。また、図27(B)に示すように、露出規制部Eにおいては、安全用凸部36が、第2安全用溝113Bを先端方向へ移動して、安全用段差部115の先端側に到達する。安全用凸部36が一旦安全用段差部115を乗り越えると、カバー部材30の構造体40に対する基端方向への移動が不能となり、針管66のカバー部材30からの再突出が不能となり、安全性が確保される。
以上のように、第2実施形態に係る液体投与具150は、F1+F2>F0+F3を満たすことで、使用者が押圧しない場合にも投与が継続されるとともに、使用者が操作部20を押圧することで、投与速度を望ましい値に任意に調節することができる。そして、投与速度が1/20(mL/秒)以下であり、投与速度が速すぎないため、投与による痛みを低減させて患者への負担を低減できるとともに、必要に応じて押圧力を作用させて、患者に合わせた望ましい投与速度に調節可能である。さらに、投与速度が1/180(mL/秒)以上であり、投与速度が遅すぎないため、投与に必要以上の時間がかからず、力の弱い患者や手指に痛みや変形がある患者であっても容易に使用でき、患者の負担を低減できる。また、投与速度が遅すぎる場合には、操作部20を手で押す際に大きな力が必要になる場合があるが、投与速度が遅すぎないため、容易に押すことができ、患者の負担を低減できる。
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、図28に示す第1実施形態の変形例のように、抵抗用爪部105と接する押し子170の部位が、突起状ではなく平坦な接触面171であってもよい。平坦な接触面171は、例えば表面粗さを部位によって異ならせたり、部位に応じて異なる材料をコーティングしたり、抵抗用爪部105からの距離が変化するようにテーパ状に形成したり、抵抗用爪部105と接触する面積が変化するように表面の幅を軸方向に沿って変化させたりすることで、抵抗用突起部96に対する接触抵抗F3bを部位に応じて任意に変更することができる。接触面171は、投与の際に、間欠的ではなく抵抗用突起部96と連続的に接触する。
そして、第1コイルバネ12の付勢力F1は、投与が進んで第1コイルバネ12が収縮するほど小さくなるが、これに合わせて、接触面171の基端側ほど抵抗用突起部96との接触抵抗F3bが連続的に小さくなるように設定することで、上述の式(1)、(3)、(4)または(6)を、液体の投与開始から終了にわたって常に成り立たせることがでる。さらに、接触抵抗F3bと第1コイルバネ12による付勢力F1との差が、操作部20が構造体40に対して先端方向へ移動する際に一定で保たれるようにすれば、一定の押圧力によって一定の投与速度で液体を投与することが可能となり、投与の正確性および安全性を向上させることができる。また、摺動部98および当接部107の接触により、接触抵抗F3bを発生させてもよい。
また、図29〜31に示すさらに他の変形例のように、回転筒基端部100の基端面に突出する2つの回転用接触部109が形成され、係合板50の先端面に、回転用接触部109と接触可能な2つの傾斜部58が形成されてもよい。2つの回転用接触部109は、回転筒基端部100の中心軸を挟んで対向する位置に設けられ、基端方向へ突出している。2つの傾斜部58は、係合板50の中心軸を挟んで対向する位置に設けられ、周方向に沿って傾斜するように形成されている。
上述のような回転用接触部109および傾斜部58を備える液体投与具により投与を行うと、投与が完了に近づき、移動量規制部95による規制が構造体40の操作部20に対する回転の規制が解除される直前において、図31(A)に示すように、回転筒基端部100の回転用接触部109が、基端方向へ移動して係合板50の傾斜部58と接触する。回転用接触部109が傾斜部58と接触すると、図31(B)に示すように、回転用接触部109が傾斜部58の傾斜に沿って滑って周方向へ移動するため、回転筒基端部100を有する構造体40が、係合板50を有する操作部20に対して回転する。このため、投与時の使用者による押圧が不十分となり、構造体40を回転させるための動作誘導部Mによる回転力が不十分となっても、回転用接触部109および傾斜部58が設けられることで、投与完了時に誘導用凸部37を直線溝112Cへ確実に移動させることができる。誘導用凸部37が直線溝112Cへ移動できないまま投与が完了すると、第1コイルバネ12の収縮力により押し子90が完全に引き下げられてしまい、この後に操作部20を押圧しても、構造体40を操作部20に対してさらに回転させることができなくなる。このような状態となると、誘導用凸部37を直線溝112Cへ移動させることができず、カバー部材30が露出位置から保護位置へ移動することができなくなる。しかしながら、上述のように回転用接触部109および傾斜部58を設けることで、構造体40を操作部20に対して確実に回転させて、誘導用凸部37を直線溝112Cへ移動させて、カバー部材30を露出位置から保護位置へ確実に移動させて針管66を覆うことができ、安全性が向上する。
また、傾斜部58は操作部20に設けられ、回転用接触部109は構造体40に設けられているため、操作部20と構造体40との間で作用する第1コイルバネ12の付勢力(収縮力)F1が、回転用接触部109を傾斜面58に押し付けて構造体40を回転させる動作に直接的に作用する。このとき、構造体40とカバー部材30の間で作用する第2コイルバネ11の付勢力(拡張力)F2は、回転用接触部109および傾斜面58の相対的な移動に対して直接的には作用しないため、仮に、使用者による押圧が弱まって誘導用凸部37が中断用縁部112Eに接触し、第2コイルバネ11が拡張不能となっても、第1コイルバネ12の付勢力F1を利用して構造体40を回転させることができ、押圧力が弱い使用者でも負担なく操作できる。
なお、傾斜面は、操作部20の他の部位に設けられてもよく、傾斜面と接触する接触部は、構造体40の他の部位に設けられてもよい。また、傾斜面が構造体に設けられ、接触部が操作部20に設けられてもよい。
また、接触抵抗F3bを付与する部位は、押し子90および回転筒基端部100の間でなくてもよく、例えば、シリンジ筒体61の内壁面と、ガスケット21との間であってもよい。
また、上述した実施形態では、針管66は、予めシリンジ筒体61に連通しているが、シリンジ筒体に連通されずに配置され、使用の際にシリンジ筒体に突き刺さって連通される両頭針であってもよい。
また、上述した実施形態では、構造体40が、回転筒基端部100および回転筒先端部110を備えているが、構造体が一部材で形成されてもよい。また、構造体およびシリンジ筒体が、一体で形成されてもよい。
また、上述した実施形態では、カバー部材30および第2コイルバネ11(第2の付勢部材)が設けられているが、カバー部材30および第2コイルバネ11が設けられなくてもよい。この場合、弾性部材による付勢力の総和Fは、第1コイルバネ12の付勢力F1と一致する。