以下に、本発明に係るシート供給装置の実施例について、添付図面を参照して詳細に説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各種変更が可能であることは言うまでもない。
本発明の実施例1に係るシート供給装置としての給紙ユニットの構成について図1乃至図8を参照して説明する。
本実施例は印刷に供するシート1を図示しない印刷部へ供給する給紙ユニット10に関し、図6および図7に示すように、給紙台20、サッカ装置30、シート搬送部40、スイング装置50等により構成される。給紙台20の上に印刷に供するシート1が積載され、その上方にサッカ装置30が設置されている。サッカ装置30は、給紙台20上のシート1を一枚ずつ吸い上げて、シート搬送部40へ送り出す機構を有する。つまり、給紙台20およびサッカ装置30によって、シート搬送部40へシート1を供給するシート供給部を構成する。サッカ装置30によって送り出されたシート1を載せて図示しない印刷部の近傍へ搬送するシート搬送部40は、その一端が給紙台20上に積載されたシート1の最上部における下流側(図6および図7においては左方側)に近接して設置されている。なお、シート搬送部40の他端近傍には、シート搬送部40上のシート1を図示しない印刷部の渡胴へ受け渡すためのスイング装置50が設置されている。
図1および図2に示すように、シート搬送部40は、フレーム60、支持板61、搬送ベルト70、ベルト回動軸71、テンションローラ72、吸引器80a、80bおよび吸引室81a、81b等により構成される。シート1を吸着して搬送する搬送ベルト70は、シート搬送方向においてフレーム60および支持板61を囲うようにシート搬送部40の略中央に設置され、図示しない機械フレームに回転自在に支持された三つのベルト回動軸71およびテンションローラ72に支持されて循環動作(走行)する。なお、搬送ベルト70の幅方向における中央部には、シート搬送方向に連続する多数のシート吸着孔73が設けられている。なお、図1および図2においては、図を明瞭にするため一部のシート吸着孔73のみを図示している。
フレーム60は図示しない機械フレームに固定され、図4に示すように、フレーム60の上部(図4における上方側)には支持板61が設置され、フレーム60の下部(図4における下方側)には吸引室81a、81bを構成する吸引室カバー82a、82bと共に後述する遮断カバー90が設置されている。なお、循環動作における搬送側の搬送ベルト70の下部(図4における下方側)における支持板61には、シート搬送方向に連続する多数の吸引孔62が設けられている。
図3に示すように、搬送ベルト70の走行方向(シート搬送方向)に延設される吸引室81a、81bの下部(図3における下方側)には吸引器80a、80bが設置され、吸引器80a、80bが作動することにより吸引室81a、81b内は負圧となる。吸引器80a、80bによって、支持板61の吸引孔62および搬送ベルト70のシート吸着孔73を介して搬送ベルト70上のシート1に吸引力が作用し、シート1は搬送ベルト70に吸着される(図4参照)。
本実施例に係る給紙ユニット10においては、吸引手段として、シート搬送方向上流側に吸引室81aを設け、シート搬送方向下流側に吸引室81bを設け、それぞれに一つの吸引器80a、80bが設置されている。なお、上流側および下流側の吸引室81a、81bは、連続供給のとき先行して搬送されているシート1が位置決めされた時に先行して搬送されているシート1は吸引されずに後続するシート1が吸引されるように、つまり、先行して搬送されているシート1に対応する吸引範囲の全範囲に後続するシート1が介在し、後続するシート1により吸引部である支持板61の吸引孔62が覆われるように配設されている。もちろん、本発明における吸引室および吸引器の数はこれに限定されない。
下流側の吸引室81bには吸引切替手段としての遮断カバー90が取付けられる。遮断カバー90は、図5に示すように、仕切り板91と、支持板61の吸引孔62(図1および図2参照)と同配列の吸引孔92を有し仕切り板91から略直角に延びる遮断板93と、遮断板93から仕切り板91と隣り合うように同方向へ延びて対向して成る側板94と、長穴の取付け孔95を有し対向する側板94から外側へ延びる取付け板96とから成る。遮断カバー90は、図4に示すように、フレーム60の間に収まるように、取付け孔95に取付けボルト100を通して吸引室カバー82bと共にフレーム60に固定される。
また、取付け孔95を長穴で形成しているので、取付けボルト100を緩めることにより遮断カバー90をシート搬送方向(図4における紙面前後方向)にスライドさせることができる。本実施例においては、遮断カバー90をスライドさせることにより、図1において太破線および図2において二点鎖線で示す位置(以下、間欠供給位置という)、または図1において二点鎖線および図2において太破線で示す位置(以下、連続供給位置という)に、遮断カバー90を位置させて取付けることができる。
遮断カバー90を吸引室81bにおける間欠供給位置(図1において太破線で示す位置)に取付けると、図1に示すように、遮断カバー90における吸引孔92の開口されていない部分がシート1の吸引部である支持板61の吸引孔62を塞ぎ、下流側の吸引器80bによる吸引力が遮られる。また、図3において実線で示すように、遮断カバー90の仕切り板91は、下端部97が吸引室81bの吸引室カバー82bと対接しているので、吸引室81bは二分される。つまり、吸引室81bの下流部81cは、吸引器80bが取付けられた吸引室81bの上流部81dと区画され、吸引器80bによる下流部81cへの吸引力は仕切り板91によって遮られる。この遮断カバー90が間欠供給位置にある状態は、遮断カバー90によって吸引手段によるシートの吸引を遮断する遮断状態、すなわち、吸引手段によるシートの吸引がされない状態(非吸引状態)である。
なお、遮断カバー90を間欠供給位置(図1において実線で示す位置)に取付けることによって、吸引器80bによる下流部81cへの吸引力が遮られ、シート1が搬送ベルト70に吸着しなくなる吸引切替範囲は、図8に示すように、連続供給されて位置決めされたシート1(図8において実線および二点鎖線で示すシート1)が搬送ベルト70および差板74と対接する範囲Aと、間欠供給されて位置決めされたシート1(図8において実線で示すシート1)が搬送ベルト70および差板74と対接する範囲Bとの差の範囲Cである。
つまり、遮断カバー90による吸引切替範囲Cは、間欠供給時において先行して搬送されているシート1が見当調整位置に位置決めされたときの後続するシート1の搬送方向下流側端部よりも搬送ベルト70の走行方向下流側の範囲Cであり、間欠供給位置における遮断カバー90は、当該吸引切替範囲Cにおいて、間欠供給時における見当調整位置に位置決めされたシート1と搬送ベルト70との対接範囲における吸引器80bによるシート1の吸引がされないようにする。
なお、間欠供給時において先行して搬送されているシート1が見当調整位置に位置決めされたときの後続するシート1およびそれよりも搬送方向上流側で搬送ベルト70に対接しているシート1は、上流側および下流側の吸引器80a、80bによって吸引された状態にある。
本実施例においては、吸引室81bの下流部81cと上流部81dとは、遮断カバー90の仕切り板91によって完全に隔離されるように区画されているわけではなく、仕切り板91と吸引室カバー82bとの間に隙間が存在した状態で区画されている。本発明における吸引切替手段としては、シート1の搬送に問題が生じない程度、つまり、間欠供給時において先行して搬送されているシート1が見当調整位置に位置決めされたシート1が搬送ベルト70に吸着されないように吸引を抑制できるものであれば良い。
一方、遮断カバー90を吸引室81bにおける連続供給位置(図2における太破線で示す位置)に取付けると、図2に示すように、遮断カバー90の吸引孔92と支持板61の吸引孔62とが一致し、吸引器80bによる吸引力が遮られない。また、図3において二点鎖線で示すように、遮断カバー90の仕切り板91における下端部97が吸引室81bの吸引室カバー82bから離れているので、吸引室81bは二分されない。つまり、吸引室81bの下流部81cと上流部81dとは連通しており、吸引器80bによる下流部81cへの吸引力は仕切り板91によって遮られない。
つまり、連続供給時においては、遮断カバー90をスライドさせて遮断カバー90の取付け位置を切り替え、連続供給位置に取付けることにより、シート1と搬送ベルト70との対接範囲、すなわち前述した吸引切替範囲Cでの吸引器80bによるシート1の吸引がされるようにする。この遮断カバー90が連続供給位置にある状態は、遮断カバー90による吸引手段によるシートの吸引を遮断しない非遮断状態、すなわち、吸引手段によるシートの吸引がされる状態(吸引状態)である。
次いで、本実施例に係る給紙ユニット10の動作について、図1乃至図7を参照して説明する。なお、給紙ユニット10のサッカ装置30は、供給形式の異なる連続供給と間欠供給とを選択してシート1を供給可能である。
ここで、連続供給とは、シート1を吸い上げてシート搬送部40へ送るサッカ装置30の反復動作において連続的にシート1を供給する形式であり、間欠供給とは、シート1を吸い上げてシート搬送部40へ送るサッカ装置30の反復動作において間欠的にシート1を供給する形式である。
まず、給紙ユニット10における供給形式が連続供給である場合には、連続供給位置(図2における太破線で示す位置)に遮断カバー90をスライドさせる。支持板61の吸引孔62と遮断カバー90の吸引孔92との位置が一致し、遮断カバー90が位置する箇所における吸引器80bによる吸引力は遮断カバー90によって遮られない。また、図3において二点鎖線で示すように、仕切り板91の下端部97と吸引室81bの吸引室カバー82bとが離れて隙間が生じるので、吸引器80bによる下流部81cへの吸引力は仕切り板91によって遮られない。
図6に示すように、吸引器80bによって搬送ベルト70に吸着されるシート1は、搬送ベルト70上において先行して搬送されているシート1の搬送方向上流側(図6における右方側)と搬送ベルト70との間に後続するシート1の搬送方向下流側(図6における左方側)が入り込むようにして重なった鱗状で搬送される。そして、搬送方向下流側の端部に到達した搬送方向最下流(図6における左端)のシート1は、シート搬送部40におけるシート搬送面よりもシート搬送方向下流側に設けられた前当て41などの見当装置と対接されることによって見当調整位置に位置決めされ、スイング装置50によって図示しない印刷部の渡胴へ受け渡される。
このとき、搬送方向最下流のシート1は吸引器80bの吸引力が作用しない状態にあり、前当て41などの見当装置によるシート1の位置決めが容易にされるようになっている。これは、搬送方向下流側から二枚目以降のシート1が、搬送方向最下流のシート1の下部(搬送方向最下流のシート1と搬送ベルト70との間)にあることにより、搬送方向最下流のシート1に掛かる吸引器80bの吸引力が解除されることによる。また、遮断カバー90を吸引室81bの連続供給位置(図2における太破線で示す位置)に取付けたことにより、搬送方向下流側から二枚目以降のシート1に掛かる吸引器80bの吸引力が解除されず、シート1は搬送方向下流側の端部に到達するまで搬送ベルト70に吸着され、正しく搬送をすることができる。
よって、遮断カバー90を吸引室81bに取付けている場合にも、遮断カバー90の取付け位置を連続供給位置(図2における太破線で示す位置)とすることにより、従来と同様のシート1の連続供給を行うことができる。
次に、給紙ユニット10における供給形式が間欠供給である場合には、間欠供給位置(図1における太破線で示す位置)に遮断カバー90をスライドさせる。支持板61の吸引孔62と遮断カバー90の吸引孔92との位置がずれ、支持板61の吸引孔62は遮断カバー90によって塞がられる。つまり、遮断カバー90が位置する箇所における吸引器80bによる吸引力は遮断カバー90によって遮られる。よって、遮断カバー90が位置する箇所において、シート1は吸引器80bの吸引力により搬送ベルト70に吸着されない。
また、図3において実線で示すように、仕切り板91の下端部97と吸引室81bの吸引室カバー82bとは対接し、吸引室81bにおけるシート搬送方向下流側の一部である下流部81cは吸引器80bから区画されるので、吸引器80bの下流部81cへの吸引力が仕切り板91によって遮られる。よって、吸引室81bにおける間欠供給位置(図1における実線で示す位置)に遮断カバー90を取付けることで仕切り板91が位置するよりもシート搬送方向下流側の下流部81cにおいては、シート1は吸引器80bの吸引力により搬送ベルト70に吸着されない。
図7に示すように、吸引器80bによって搬送ベルト70に吸着されるシート1は、搬送ベルト70上において搬送方向上流側(図7における左方側)のシート1が搬送方向下流側(図7における右方側)のシート1の下に入り込むようにして重なった鱗状で搬送される。そして、搬送方向下流側の端部に到達した搬送方向最下流(図7における左端)のシート1は、シート搬送部40に設けられた前当て41などの見当装置によって位置決めされ、スイング装置50によって図示しない印刷部の渡胴へ受け渡される。
このとき、搬送方向最下流のシート1は吸引器80bの吸引力が作用しない状態にあり、前当て41などの見当装置によるシート1の位置決めが容易にされるようになっている。これは、搬送方向下流側から二枚目以降のシート1が搬送方向最下流のシート1の下部(搬送方向最下流のシート1と搬送ベルト70との間)にあること、および遮断カバー90を間欠供給位置(図1における太破線で示す位置)に取付けたことにより、搬送方向最下流のシート1に掛かる吸引器80bの吸引力が解除されることによる。
搬送方向最下流のシート1は、吸引器80bの吸引力が作用したままの状態で搬送ベルト70の循環動作により搬送方向下流側へ押されることはなく、座屈するようにして撓むこともない。よって、シート1の位置決め不良およびスイング装置50の受け渡し不良の虞がなく、間欠供給に応じた正しい搬送が可能となる。
このようにして本実施例では、シート供給装置である給紙ユニット10が給紙台20およびサッカ装置30から成るシート供給部と、シート搬送部40と、前当て41や図示しない横針装置でなる見当装置とを備え、シート1の連続供給または間欠供給という供給形式に応じて遮断カバー90を連続供給位置または間欠供給位置にスライドさせて取付け位置を切り替えることにより、シート1の供給形式によらず搬送ベルト70における吸引器80bによる吸引力の作用範囲を適切なものとすることができる。
本発明に係るシート供給装置のシート搬送部においては、遮断カバー90の構造は本実施例に限定されず、例えば、エアシリンダなどのアクチュエータを用いた自動スライド式としても良く、仕切り板91を無くして吸引室81bのシート搬送方向下流側の端部までを覆う遮断板で構成しても良い。
もちろん、吸引切替手段としては、本実施例のような遮断カバー90に限定されず、例えば、吸引室81bをシート搬送方向下流側で更に区切った最下流吸引室を設け、バキュームポンプ等の吸引器へ繋がる開閉式バルブを吸引切替手段としても良い。
本実施例においては、吸引手段は、搬送ベルト70におけるシート1と対接する範囲でシート1と対接する側と反対側に開口部を有する吸引室81a、81bと、開口部から空気を吸引してシート1を搬送ベルト70に吸着させるべく吸引室81a、81bの内部を負圧とする吸引器80a、80bとから成り、吸引切替手段は、吸引室81a、81bにおける開口部の一部を塞ぐ遮断板93と吸引室81a、81bの一部を吸引器80a、80bが設置される側から区画する仕切り板91とを有し、連続供給位置と間欠供給位置とを移動自在に支持されたシャッター部材の遮断カバー90である。
次に、本発明の実施例2に係るシート供給装置としての給紙ユニットの構成について、図9乃至図14を参照して説明する。
本実施例における給紙ユニットは、前述の実施例1における給紙ユニット10と、シート搬送部40の構成を除いて同一の構成、より詳細には、シート搬送部40を構成する吸引器80a、80bおよび吸引室81a、81bの構成および数量ならびに遮断カバー90を備えていないことを除いて同一の構成から成る。なお、実施例1と同一の構成には同一符号を付することにより、重複説明を適宜省略する。
図9および図10に示すように、本実施例におけるシート搬送部140は、シート搬送方向上流側(図9および図10における右方側)から順に第一吸引室181a、第二吸引室181b、第三吸引室181c、第四吸引室181dが設けられると共に、当該第一〜第四吸引室181a〜181dには、第一吸引器180a、第二吸引器180b、第三吸引器180c、第四吸引器180dがそれぞれ設置されている。
つまり、シート搬送部140は、フレーム60、支持板61、搬送ベルト70、ベルト回動軸71、テンションローラ72、第一〜第四吸引器180a〜180d、第一〜第四吸引室181a〜181d等により構成されている。
図12に示すように、フレーム60の下部(図12における下方側)には第一〜第四吸引室181a〜181dをそれぞれ構成する第一吸引室カバー182a、第二吸引室カバー182b、第三吸引室カバー182c、第四吸引室カバー182dが設置され、取付けボルト100によってフレーム60に固定されている。
第一〜第四吸引室カバー182a〜182dには、それぞれ第一吸引孔183a、第二吸引孔183b、第三吸引孔183c、第四吸引孔183dが形成され、当該第一〜第四吸引孔183a〜183dには、第一〜第四吸引器180a〜180dが設置されている。
第一〜第四吸引器180a〜180dを作動させることによって第一〜第四吸引室181a〜181dの内部は負圧となり、支持板61の吸引孔62および搬送ベルト70のシート吸着孔73を介して搬送ベルト70上のシート1に吸引力が作用し、シート1は搬送ベルト70に吸着される(図12参照)。
図9に示すように、シート搬送方向下流側(図9における左側)の第三、第四吸引室181c、181dには、その一部がシート幅方向の一方側(図9における下方側)に広がる拡張部184c、184dが形成されている。拡張部184c、184dは、図12に示すように、第三、第四吸引室カバー182c、182dの一部が、シート幅方向の一方側(図12における右方側)に広がるように断面コ字状に形成されて成る。
また、第三、第四吸引室カバー182c、182dの拡張部184c、184dには、負圧逃がし穴185c、185dが形成されると共に、当該負圧逃がし穴185c、185dを開閉するための蓋部材190c、190dが着脱可能に設けられている。
蓋部材190c、190dは、エアシリンダ191c、191dとそれぞれ連結され、エアシリンダ191c、191dは、コ字状の固定部材192を介してフレーム60に固定されている(図11参照)。エアシリンダ191c、191dを伸縮動作させることによって、第三、第四吸引室カバー182c、182dに対する蓋部材190c、190dの着脱、すなわち、負圧逃がし穴185c、185dの開閉を行うことができる(図12参照)。
エアシリンダ191c、191dを伸動作させることによって蓋部材190c、190dを第三、第四吸引室カバー182c、182dに近接させると、負圧逃がし穴185c、185dは閉状態となる(図12における実線を参照)。この状態は、吸引器180c、180dの作動によって吸引室181c、181dの内部を負圧とし、搬送ベルト70上のシート1に吸引力が作用する吸引状態、すなわち、吸引手段によるシート1の吸引がされる状態である。
一方、エアシリンダ191c、191dを縮動作させることによって蓋部材190cを第三、第四吸引室カバー182c、182dから離反させると、負圧逃がし穴185c、185dは開状態となる(図12における二点鎖線を参照)。この状態は、第三、第四吸引室181c、181dが開放された開放状態、すなわち、第三、第四吸引室181c、181dにおける吸引が解除された解除状態であり、吸引器180c、180dの作動によって吸引室181c、181dの内部を負圧とせず、搬送ベルト70上のシート1に吸引力が作用しない非吸引状態、すなわち、吸引手段によるシートの吸引がされない状態である。
第一〜第四吸引室181a〜181dは、連続供給のとき先行して搬送されているシート1が位置決めされた時に先行して搬送されているシート1は吸引されずに後続するシート1が吸引されるように、つまり、先行して搬送されているシート1に対応する吸引範囲の全範囲に後続するシート1が介在し、後続するシート1により吸引部である支持板61の吸引孔62が覆われるように配設されている。
また、シート搬送方向最下流側に位置する第四吸引室181dの内部を負圧にすることで、シート1が搬送ベルト70に吸着される吸引範囲は、図13に示すように、連続供給(図13において実線および二点鎖線で示すシート1の供給形式)されて位置決めされたシート1が搬送ベルト70および差板74と対接する範囲Aと、間欠供給(図13において実線で示すシート1の供給形式)されて位置決めされたシート1が搬送ベルト70および差板74と対接する範囲Bとの差の範囲Cである。
つまり、第四吸引室181dの吸引範囲Cは、間欠供給時において先行して搬送されているシート1が見当調整位置に位置決めされたときの後続するシート1の搬送方向下流側端部よりも搬送ベルト70の走行方向下流側の範囲Cである。よって、間欠供給時においては、第四吸引室181dの内部を負圧状態ではなくすことにより、当該吸引範囲Cにおいて、間欠供給時における見当調整位置に位置決めされたシート1と搬送ベルト70との対接範囲における第四吸引器180dによるシート1の吸引がされないようにする。つまり、範囲Cは、本実施例における第四吸引室181dの吸引範囲であり、本実施例における吸引切替範囲である。
なお、間欠供給時において先行して搬送されているシート1が見当調整位置に位置決めされたときの後続するシート1およびそれよりも搬送方向上流側で搬送ベルト70に対接しているシート1は、第一〜第三吸引器180a〜180cによって吸引された状態にある。
もちろん、上述した範囲A、B、Cは、厳密に決められる範囲ではなく、本発明の課題であるシートを正しく搬送することができるものであれば良い。よって、例えば、連続供給の際に先端部で位置決めされたシート1が第四吸引室181dの吸引範囲Cに存在する、または、間欠供給の際に先端部で位置決めされたシート1が第三吸引室181cの吸引範囲に存在することにより、先端部で位置決めされたシート1に多少の吸引力が作用したとしても、撓み等を生じさせずにシート1を正しく搬送することができる程度であれば良い。
本実施例における給紙ユニットは、第一〜第四吸引器180a〜180dおよび第三、第四吸引室181c、181dのエアシリンダ191c、191dの動作を制御するための制御装置110を備えると共に、作業者がシート1の条件を入力するシート条件入力手段111およびシート1の位相を検知する位相検知装置112を備えている(図14参照)。制御装置110には、シート条件入力手段111および位相検知装置112による検出結果が入力信号として入力され、制御装置110からは、第一〜第四吸引器180a〜180dおよび第三、第四吸引室181c、181dのエアシリンダ191c、191dの動作を制御するための制御信号が出力される。
このような制御系統を備えることにより、シート1の条件または位相によって第一〜第四吸引器180a〜180dおよび第三、第四吸引室181c、181dのエアシリンダ191c、191dの動作を制御することができるので、第一〜第四吸引室181a〜181dにおいてシート1に作用する吸引力等を個々に制御することができる。シート1の条件によって、搬送ベルト70上のシート1に最適な吸引力を作用させることができる。
ここで、シート1の条件は、シート1の厚さ、サイズ、種類、重さ等であり、シート条件入力手段111は、シート1の厚さを入力する図示しない厚さ入力手段と、シート1のサイズを入力する図示しないサイズ入力手段と、シートの種類を入力する図示しない種類入力手段とを備える。もちろん、本発明におけるシート条件入力手段は、本実施例におけるシート条件入力手段111に限定されず、シート1の厚さ、サイズ、種類、重さ等のいずれか一つの条件を入力するだけのものでも良く、作業者によらずに自動でシート1の条件を検出するものでも良い。
また、シート1の位相は、印刷に供されるシート1の残数および搬送位置であり、位相検知装置112は、印刷に供するシート1の残数および搬送位置等を検出するものである。本実施例においては、シート搬送部140で搬送されるシート1が最後のシート1であるか否かを検出すると共に、当該シート1の搬送位置を検出するものとする。
位相検知装置112によって、シート搬送部140において最後のシート1が搬送されていることが検知された場合には、制御装置110は、最後のシート1の搬送位置に基づいて、第一〜第四吸引器180a〜180dの順にその吸引動作を停止させる。このように、第一〜第四吸引器180a〜180dの吸引動作を停止することにより、消費電力の無駄を省くことができる。もちろん、シート搬送方向上流側の第一、第二吸引器180a、180bの吸引動作を停止せずに、作動させ続けても良い。
また、位相検知装置112によって、シート搬送部140において最後のシート1が見当調整位置に位置決めされたことが検知された場合には、制御装置110は、第一〜第四吸引器180a〜180dの吸引動作を停止させると共に、第三、第四吸引室181c、181dのエアシリンダ191c、191dを縮動作させる。つまり、蓋部材190c、190dを第三、第四吸引カバー182c、182dから離反させ、第三、第四吸引室181c、181dにおける吸引孔185c、185dを開状態とする。
このように、吸引孔185c、185dを開状態とすることにより、第三、第四吸引器180c、180dの吸引動作が停止された際の惰性によって第三、第四吸引室181c、181dの負圧状態が僅かに持続される場合においても、第三、第四吸引室181c、181dは開放されて負圧状態ではなくなり、搬送ベルト70上のシート1に吸引力が確実に作用しないようにすることができる。
次いで、本実施例に係る給紙ユニットの動作について、図9乃至図16を参照して説明する。
まず、給紙ユニットにおける供給形式が連続供給である場合には、実施例1において連続供給位置(図2における太破線で示す位置)に遮断カバー90をスライドさせる代わりに、本実施例においては、第一〜第四吸引器180a〜180dを作動させる(図9および図10参照)。これにより、実施例1と同様の作用効果を得ることができ、連続供給に応じた正しい搬送を行うことができる。
また、作業者が給紙ユニットにて搬送するシート1の厚さ、サイズ、種類、重さ等の条件をシート条件入力手段111より入力することにより、制御装置110は第一〜第四吸引器180a〜180dの吸引動作を個々に制御し(図14参照)、搬送ベルト70上の当該シート1に最適な吸引力を作用させることができる。
例えば、図15に示すように、薄いシート1(薄シート)である場合には、シート1は軽いので、第一〜第三吸引器180a〜180cを弱い吸引力が作用するように弱動作させると共に、第四吸引器180dを更に弱い吸引力が作用するように微弱動作させ、標準的な厚さのシート1(標準シート)である場合には、シート1は標準的な重さであるので、第一〜第三吸引器180a〜180cを中程度の吸引力が作用するように中動作させると共に、第四吸引器180dを弱い吸引力が作用するように弱動作させ、厚いシート1(厚シート)である場合には、シート1は重いので、第一〜第三吸引器180a〜180cを強い吸引力が作用するように強動作させると共に、第四吸引器180dを中程度の吸引力が作用するように中動作させる。
このように、シート1の厚さによって第一〜第四吸引器180a〜180dによる吸引力を制御することにより、シート1の厚さおよび重さに応じた適切な吸引力によってシート1を搬送することができる。
また、第一〜第三吸引器180a〜180cに対して第四吸引器180dを弱い吸引力が作用するように動作させることにより、薄くて軽いシート1を搬送する場合には、先端部で位置決めされたシート1に多少の吸引力が作用したとしても、撓み等を生じさせずにシート1を正しく搬送することができ、厚くて重いシート1を搬送する場合には、シート1が見当調整位置に位置決めされた際の跳ね返り等を抑えることができる。
なお、第四吸引器180dの吸引力を弱く設定したとしても、搬送ベルト70上を搬送されるシート1は、見当調整位置に位置する直前であり、搬送ベルト70との摩擦および後続するシート1との摩擦によって、十分に見当調整位置まで正しく搬送することができる。
また、位相検知装置112によって最後のシート1が搬送されていることが検知されると、制御装置110は、最後のシート1の搬送位置に基づいて、第一〜第四吸引器180a〜180dの吸引動作を順次停止させる。そして、位相検知装置112によって最後のシート1が見当調整位置に位置決めされたことが検知されると、制御装置110は、第三、第四吸引室181c、181dのエアシリンダ191c、191dを縮動作させ、第三、第四吸引室181c、181dにおける吸引孔185c、185dを開状態とする。
シート搬送部140がこのように制御されることにより、第三、第四吸引器180c、180dの吸引動作が停止された際の惰性によって第三、第四吸引室181c、181dの負圧状態が僅かに持続される場合においても、第三、第四吸引室181c、181dは開放されて負圧状態ではなくなり、搬送ベルト70上のシート1に吸引力が確実に作用しないようにすることができる。
以上の動作によって、本実施例に係る給紙ユニットにおいて、連続供給時のシート1の搬送が正しくなされる。
次に、給紙ユニットにおける供給形式が間欠供給である場合には、実施例1において間欠供給位置(図1における太破線で示す位置)に遮断カバー90をスライドさせる代わりに、本実施例においては、第四吸引器180dを停止して第一〜第三吸引器180a〜180cを作動させる。これにより、実施例1と同様の作用効果を得ることができ、間欠供給に応じた正しい搬送を行うことができる。
また、作業者が給紙ユニットにて搬送するシート1の厚さ、サイズ、種類、重さ等の条件を、シート条件入力手段111より入力することにより、制御装置110が第一〜第四吸引器180a〜180dの吸引動作を個々に制御し(図14参照)、搬送ベルト70上の当該シート1に最適な吸引力を作用させることができる。
例えば、図16に示すように、薄いシート1(薄シート)である場合には、シート1は軽いので、第一、第二吸引器180a、180bを弱い吸引力が作用するように弱動作させ、第三吸引器180dを更に弱い吸引力が作用するように微弱動作させると共に、第四吸引器180dを停止し、標準的な厚さのシート1(標準シート)である場合には、シート1は標準的な重さであるので、第一、第二吸引器180a、180bを中程度の吸引力が作用するように中動作させ、第三吸引器180dを弱い吸引力が作用するように弱動作させると共に、第四吸引器180dを停止し、厚いシート1(厚シート)である場合には、シート1は重いので、第一、第二吸引器180a、180bを強い吸引力が作用するように強動作させ、第三吸引器180dを中程度の吸引力が作用するように中動作させると共に、第四吸引器180dを停止する。
このように、第四吸引器180dを停止し、第四吸引室181dの内部を負圧状態ではなくすことにより、吸引範囲Cにおいて、間欠供給時における見当調整位置に位置決めされたシート1と搬送ベルト70との対接範囲における第四吸引器180dによるシート1の吸引がされないようにすることができ、間欠供給に応じた正しい搬送を行うことができる。
また、シート1の厚さによって、第一〜第三吸引器180a〜180cによる吸引力を制御することにより、シート1の厚さおよび重さに応じた適切な吸引力によってシート1を搬送することができる。
また、第一、第二吸引器180a、180bに対し、第三吸引器180cを弱い吸引力が作用するように動作させることにより、シート1が見当調整位置に位置決めされた際の跳ね返り等を抑えることができる。なお、第三吸引器180cの吸引力を弱く設定したとしても、搬送ベルト70上を搬送されるシート1は、見当調整位置に位置する直前であり、搬送ベルト70との摩擦および後続するシート1との摩擦によって、十分に見当調整位置まで正しく搬送することができる。
本実施例においては、給紙ユニットにおける供給形式が間欠供給である場合に、第四吸引器180dを停止することとしたが、本発明における制御装置による制御はこれに限定されない。例えば、第四吸引器180dを作動させる一方で、第四吸引室181dのエアシリンダ191dを縮動作させ、第四吸引室181dにおける吸引孔185dを開状態、すなわち、第四吸引室181dを開放することにより、第四吸引室181dの内部を負圧状態とせずに、搬送ベルト70上のシート1に吸引力が作用しないようにしても良い。もちろん、第四吸引器180dを停止させると共に、第四吸引室181dのエアシリンダ191dを縮動作させ、第四吸引室181dにおける吸引孔185dを開状態、すなわち、第四吸引室181dを開放することにより、第四吸引室181dの内部を負圧状態とせずに、搬送ベルト70上のシート1に吸引力が作用しないようにしても良い。
また、位相検知装置112によって、最後のシート1が搬送されていることが検知されると、制御装置110は、最後のシート1の搬送位置に基づいて、第一〜第三吸引器180a〜180cの吸引動作を順次停止させる。そして、位相検知装置112によって、最後のシート1が見当調整位置に位置決めされたことが検知されると、制御装置110は、第三吸引室181cのエアシリンダ191cを縮動作させ、第三吸引室181cにおける吸引孔185cを開状態とする。
シート搬送部140がこのように制御されることにより、第三吸引器180cの吸引動作が停止された際の惰性によって、第三吸引室181cの負圧状態が僅かに持続される場合においても、第三吸引室181cは開放されて負圧状態ではなくなり、搬送ベルト70上のシート1に吸引力が確実に作用しないようにすることができる。
以上の動作によって、本実施例に係る給紙ユニットにおいて、間欠供給時のシート1の搬送が正しくなされる。
本実施例においては、吸引手段は、搬送ベルト70におけるシート1と対接する範囲でシート1と対接する側と反対側に開口部を有する第一〜第四吸引室181a〜181dと、開口部から空気を吸引してシート1を搬送ベルト70に吸着させるべく第一〜第四吸引室181a〜181dの内部を負圧とする第一〜第四吸引器180a〜180dとから成り、吸引切替手段は、シート搬送方向最下流側に位置する第四吸引室181dの吸引動作を制御する制御装置110である。
本実施例における制御装置110は、シート1の厚さによって第一〜第四吸引器180a〜180dの吸引動作を個々に制御するものとしたが、本発明の制御装置はこれに限定されない。例えば、シート1の大きさによって吸引力を変化させても良く、光沢シートや普通紙などのシート1の種類、シート1の空気透過率などによって吸引力を変化させても良い。
また、本発明における吸引切替手段は、本実施例のように制御装置110によって第一〜第四吸引器180a〜180dを制御するものに限定されず、例えば、第一〜第四吸引器180a〜180dと第一〜第四吸引室181a〜181dとの間に開閉式バルブを設け、シート条件入力部に基づいて、当該開閉式バルブを制御するようにしても良い。
また、本実施例における制御装置110を、実施例1に係る給紙ユニット10に採用しても良い。つまり、実施例1において、上流側および下流側の吸引室81a、81bの負圧状態、すなわち、上流側および下流側の吸引器80a、80bの吸引動作を個々に制御することにより、本実施例と同様の作用および効果を得るようにすることができる。