JP6257968B2 - 多孔質材料、ハニカム構造体及びハニカムフィルタ - Google Patents

多孔質材料、ハニカム構造体及びハニカムフィルタ Download PDF

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Description

本発明は、多孔質材料、ハニカム構造体及びハニカムフィルタに関する。更に詳しくは、耐熱衝撃性に優れた多孔質材料、ハニカム構造体及びハニカムフィルタに関する。
炭化珪素質の多孔質材料は、高温強度に優れるため、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)用材料等として利用されている(例えば、特許文献1,2を参照)。
特開平6−182228号公報 特開2009−149500号公報
特許文献1に記載の触媒担体は、多孔質炭化珪素焼結体からなるものである。そして、当該多孔質炭化珪素焼結体を作製する際の焼結形態は、炭化珪素粉末の再結晶反応による焼結形態(ネッキング)である。この方法によれば、炭化珪素粒子表面から炭化珪素成分が蒸発し、これが粒子間の接触部(ネック部)に凝縮することでネック部が成長して結合状態が形成される。しかしながら、炭化珪素を蒸発させるには、非常に高い焼成温度が必要であるため、コスト高を招き、且つ、熱膨張率の高い材料を高温焼成しなければならないために、焼成歩留まりが低下するという問題があった。
一方、特許文献2には、金属珪化物を含有し、熱伝導率が高く耐熱衝撃性に優れ、比較的低温で焼結可能な炭化珪素質多孔体が開示されている。しかしながら、近年、市場からの耐熱衝撃性についての要求基準が高くなっており、更に耐熱衝撃性の高い材料が望まれている。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、耐熱衝撃性に優れた多孔質材料、ハニカム構造体及びハニカムフィルタを提供することを主目的とする。
上述の課題を解決するため、本発明は、以下の多孔質材料、ハニカム構造体及びハニカムフィルタを提供する。
[1] 骨材と、前記骨材間に細孔を形成した状態で前記骨材同士を結合する結合材とを含有し、前記骨材が、炭化珪素粒子又は窒化珪素粒子を含み、前記結合材が、TiSiCを主成分とするものであり、気孔率が25〜70%である多孔質材料。
[2] 前記骨材と前記結合材の合計質量に対する、前記結合材の質量の比率が1〜50質量%である[1]に記載の多孔質材料。
] 平均細孔径が10〜40μmである[1]又は[2]に記載の多孔質材料。
] 細孔径10μm未満の細孔が細孔全体の20%以下であり、細孔径40μmを超える細孔が細孔全体の10%以下である[1]〜[]のいずれかに記載の多孔質材料。
] [1]〜[]のいずれかに記載の多孔質材料により構成され、一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する、隔壁を、備えたハニカム構造体。
[6] []に記載のハニカム構造体を備え、前記一方の端面における所定の前記セルの開口部及び前記他方の端面における残余の前記セルの開口部、に配設された目封止部を備えるハニカムフィルタ。
本発明の多孔質材料は、従来の多孔質材料に比べて、耐熱衝撃性に優れるものである。
以下、本発明の実施の形態について、具体的に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
(1)多孔質材料:
本発明の多孔質材料の一実施形態は、骨材と、「「骨材間に細孔を形成した状態」で骨材同士を結合する結合材」とを含有し、結合材が、TiSiCを主成分とするものである。
本実施形態の多孔質材料は、上記のように、骨材を結合する結合材がTiSiCを主成分とするものである。そのため、本実施形態の多孔質材料は、耐熱衝撃性に優れたものである。これは、TiSiCを主成分とする結合材が、塑性変形するという特徴を有しているためである。つまり、本実施形態の多孔質材料は、結合材がTiSiCを主成分とすることにより塑性変形するため、熱衝撃により発生する応力が結合材によって緩和され、高い耐熱衝撃性を有する。本実施形態の多孔質材料は、TiSiCを主成分とする結合材により骨材が結合されているため、熱衝撃に対して、高い強度を有するということもできる。ここで、「主成分」とは、全体に対して90質量%以上含有される成分のことを意味する。
本実施形態の多孔質材料において、骨材は、炭化珪素粒子又は窒化珪素粒子を含むものである。更に、骨材としては、炭化珪素粒子が好ましい。炭化珪素粒子を用いることにより、熱伝導率を高くすることができ、熱膨張係数を低減することができる。尚、骨材は、炭化珪素粒子又は窒化珪素粒子との混合物であってもよい。また、骨材として、TiSiC粒子を含んでもよい。
本実施形態の多孔質材料は、骨材と結合材の合計質量に対して、結合材の質量の比率が5〜50質量%であることが好ましい。更に、骨材と結合材の合計質量に対して、結合材の質量の比率が10〜45質量%であることが更に好ましく、20〜30質量%であることが特に好ましい。含有される骨材と結合材の合計質量に対する結合材の質量の比率が、5質量%未満であると、曲げ強度が低くなり、更に「強度/ヤング率比」が低くなり、耐熱衝撃性が低下することがある。含有される骨材と結合材の合計質量に対する結合材の質量の比率が、50質量%を超えると、気孔率が小さくなることがある。骨材量及び結合材量は、X線回折分析で測定することができる。具体的には、「RIR(Reference Intensity Ratio)法を用いて、X線回折データを解析して各成分を定量する」簡易定量分析により算出する。X線回折データの解析は、例えば、MDI社製の「X線データ解析ソフトJADE7」を用いて行うことが好ましい。X線回折分析に用いるX線回折装置としては、回転対陰極型X線回折装置(理学電機社製、RINT)を挙げることができる。
本実施形態の多孔質材料は、気孔率が25〜70%であ、40〜70%であることが好ましく、40〜60%であることが特に好ましい。気孔率が25%未満であると、圧力損失が大きくなることがある。また、気孔率が70%を超えると、強度が低くなることがある。本明細書において、気孔率は、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)による全細孔容積(単位:cm/g)と水中アルキメデス法による見掛け密度(単位:g/cm)から、算出した値である。気孔率を算出する際には、「気孔率[%]=全細孔容積/{(1/見掛け密度)+全細孔容積}×100」という式を用いる。なお、気孔率は、例えば、多孔質材料を製造する際に用いる造孔材の量や、焼結助剤量、焼成雰囲気などにより調整することができる。また、気孔率は、骨材と、結合材との比率によっても調整することができる。
本実施形態の多孔質材料は、平均細孔径が10〜40μmであることが好ましく、15〜30μmであることが更に好ましく、15〜25μであることが特に好ましい。平均細孔径が10μm未満であると、圧力損失が大きくなることがある。平均細孔径が40μmを超えると、本実施形態の多孔質材料をDPF等として用いたときに、排ガス中の粒子状物質の一部が捕集されずにDPF等を透過することがある。本明細書において、平均細孔径は、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)で測定した値である。
本実施形態の多孔質材料は、細孔径10μm未満の細孔が細孔全体の20%以下であり、細孔径40μmを超える細孔が細孔全体の10%以下であることが好ましい。細孔径10μm未満の細孔が細孔全体の20%を超えると、細孔径10μm未満の細孔は触媒を担持する際に詰まり易いため、圧力損失が増大し易くなることがある。細孔径40μmを超える細孔が細孔全体の10%を超えると、細孔径40μmを超える細孔は粒子状物質が通過し易いため、DPF等のフィルター機能を十分に発揮し難くなることがある。
本実施形態の多孔質材料においては、骨材の平均粒子径が1〜100μmであることが好ましく、5〜100μmであることが更に好ましく、10〜40μmであることが特に好ましい。1μmより小さいと、焼成収縮量が大きくなり、焼成体の気孔率が25%未満となることがある。また焼成体中の10μm未満の細孔が細孔全体の20%超となることがある。100μmより大きいと、焼成体中の40μmを超える細孔が細孔全体の10%以上となることがある。さらに、ハニカム構造体を成形する場合には、口金の目詰まりの原因となり成形不良を起こすことがある。
本実施形態の多孔質材料は、曲げ強度が、10MPa以上であることが好ましく、15MPa以上であることが更に好ましく、20MPa以上であることが特に好ましい。曲げ強度が10MPaより小さいと、耐熱衝撃性が低下することがある。なお、曲げ強度は高いほどよいが、本実施形態の多孔質材料の構成上、気孔率25%の多孔質材料で80MPa程度が上限となる。また、本実施形態の多孔質材料は、「曲げ強度(Pa)/ヤング率(Pa)比」が1.4×10−3以上であることが好ましい。更に、本実施形態の多孔質材料は、「曲げ強度(Pa)/ヤング率(Pa)比」が1.5×10−3以上であることが更に好ましく、2.0×10−3以上であることが特に好ましい。曲げ強度及び「曲げ強度(Pa)/ヤング率(Pa)比」を上記範囲とすることにより、多孔質材料の耐熱衝撃性を向上させることができる。本明細書において、曲げ強度は、JIS R 1601に準拠した「曲げ試験」により測定した値である。また、本明細書において、ヤング率は、上述の「曲げ試験」で得た「応力−歪み曲線」より算出した値である。
本実施形態の多孔質材料は、40〜800℃の線熱膨張係数が、7.0×10−6/K以下であることが好ましい。そして、40〜800℃の線熱膨張係数が、6.5×10−6/K以下であることが更に好ましく、6.0×10−6/K以下であることが特に好ましい。7.0×10−6/Kより大きいと、耐熱衝撃性が低下することがある。尚、線熱膨張係数は小さいほど好ましいが、本発明の構成上、4.7×10−6/Kが下限となる。本明細書において、熱膨張係数は、JIS R 1618に準拠する方法で、測定した値である。具体的には、本発明の多孔質材料を用いてハニカム構造体を作製した場合、まず、ハニカム構造体から縦3セル×横3セル×長さ20mmの試験片を切り出す。そして、40〜800℃のA軸方向(ハニカム構造体の流路に対して平行方向)の熱膨張係数を測定し、線熱膨張係数とする。
本実施形態の多孔質材料は、炭化珪素又は窒化珪素を骨材として含有しているため、熱伝導率が高く、優れた耐熱衝撃性を示すものである。本実施形態の多孔質材料は、熱伝導率が、10W/mK以上であることが好ましく、20W/mK以上であることが更に好ましく、30W/mK以上であることが特に好ましい。熱伝導率が10W/mK未満であると、耐熱衝撃性が低下する傾向にある。一方、熱伝導率が50W/mK超であると、特に問題はないが、実質的には製造が困難である。
(2)ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一実施形態は、「上記本発明の多孔質材料により構成され、一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する」隔壁を、備えたハニカム構造体である。上記セルは、流体の流路となるものである。また、ハニカム構造体は、最外周に位置する外周壁を有する構造であることが好ましい。隔壁の厚さは、30〜1000μmが好ましく、50〜500μmが更に好ましく、50〜350μmが特に好ましい。セル密度は、10〜200セル/cmが好ましく、20〜200セル/cmが更に好ましく、50〜150セル/cmが特に好ましい。
ハニカム構造体の形状としては、特に限定されず、円筒状、底面が多角形(三角形、四角形、五角形、六角形等)の筒状等を挙げることができる。
ハニカム構造体のセルの形状は、特に限定されない。例えば、セルの延びる方向に直交する断面におけるセル形状としては、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)、円形、これ等の組み合わせ等を挙げることができる。
ハニカム構造体の大きさは、用途に合わせて適宜決定することができる。本発明のハニカム構造体は、本発明の多孔質材料によって構成されているため、耐熱衝撃性に優れるものである。そのため、ハニカム構造体の大きさを大きくすることが可能である。そして、ハニカム構造体の大きさとしては、例えば、10〜2.0×10cm程度とすることができる。
本発明のハニカム構造体は、DPFや触媒担体として用いることができる。また、DPFに触媒を担持することも好ましい態様である。本発明のハニカム構造体をDPF等として使用する場合には、以下のような構造であることが好ましい。すなわち、本発明のハニカム構造体は、「一方の端面である第1端面における所定のセルの開口部」及び「他方の端面である第2端面における残余のセルの開口部」、に配設された目封止部を備えるものであることが好ましい。両端面において、目封止部を有するセルと目封止部を有さないセルとが交互に配置され、市松模様が形成されていることが好ましい。
ハニカム構造体としては、複数のハニカム構造体(ハニカムセグメント)の側面同士が接合されて形成された、接合型のハニカム構造体であってもよい。
(3)多孔質材料の製造方法:
本発明の多孔質材料の製造方法の一実施形態について、以下に説明する。
本実施形態の多孔質材料の製造方法は、骨材粉末と、結合材用原料とを含有する多孔質材料用原料を、1350〜1700℃で焼成して多孔質材料を作製する方法である。本実施形態の多孔質材料の製造方法は、比較的低温で焼成できるため、低コストで製造することができる。尚、「多孔質材料用原料を焼成する」というときは、多孔質材料用原料を乾燥した後に焼成する場合や、多孔質材料用原料を乾燥し、脱脂した後に焼成する場合も含むものとする。
本実施形態の多孔質材料の製造方法は、まず、骨材粉末と、結合材用原料とを混合し、必要に応じて、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、多孔質材料用原料を作製する。
結合材用原料は、「焼成により、TiSiCを主成分とする結合材となる」ものである。具体的には、チタニウム源原料、珪素源原料及び炭素源原料を含むものであることが好ましい。チタニウム源原料としては、金属チタン粉末、TiH粉末等を挙げることができる。珪素源原料としては、金属珪素粉末等を挙げることができる。炭素源原料としては、炭素粉末、フェノール樹脂等を挙げることができる。フェノール樹脂は、熱分解により炭素となるものである。また、それぞれが化合して得られる物質、例えば、炭化珪素粉末等を用いることができる。炭化珪素粉末は、炭素源原料であると共に珪素源原料でもある。結合材用原料を上記のような原料とすることにより、比較的安価に本発明の多孔質材料を得ることができる。
骨材粉末は、炭化珪素(SiC)粉末又は窒化珪素(Si)粉末を含むものである。これらの中でも、炭化珪素粉末が好ましい。また、骨材粉末は、炭化珪素(SiC)粉末と窒化珪素(Si)粉末とを両方含んでもよく、また、TiSiC粉末を含んでもよい。
骨材粉末の平均粒子径は、5〜100μmであることが好ましく、10〜80μmであることが更に好ましい。5μmより小さいと、熱伝導率等の熱特性が低下する傾向にある。100μmより大きいと、特に問題はないが、成形し難い場合がある。平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。
多孔質材料用原料は、骨材粉末及び結合材用原料の合計質量に対して、結合材用原料を1〜50質量%含有していることが好ましく、10〜45質量%含有していることが更に好ましく、20〜40質量%含有していることが特に好ましい。結合材用原料の含有量が1質量%未満であると、得られる多孔質材料の曲げ強度が低くなり、更に「強度/ヤング率比」が低くなり、耐熱衝撃性が低下することがある。結合材用原料全体の含有量が50質量%を超えると、得られる多孔質材料の気孔率が小さくなることがある。
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機バインダを挙げることができる。バインダの含有量は、骨材粉末及び結合材用原料の合計の質量を100質量部としたときに、2〜10質量部であることが好ましい。
界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリカルボン酸塩、脂肪族四級アンモニウム塩、脂肪族アミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン(又はソルビトール)脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルベタイン、アミンオキサイド、カチオン性セルロース誘導体、ポリエチレンイミン、ポリカルボン酸塩、ポリアクリル酸塩等を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、骨材粉末及び結合材用原料の合計の質量を100質量部としたときに、2質量部以下であることが好ましい。上記界面活性剤は、分散剤として用いることもできる。
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではない。例えば、グラファイト、小麦粉、澱粉、フェノール樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、発泡樹脂(アクリロニトリル系プラスチックバルーン)、及び吸水性樹脂等を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。造孔材の含有量は、骨材粉末及び結合材用原料の合計の質量を100質量部としたときに、5〜35質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、例えば、多孔質材料用原料をハニカム形状に成形した後に焼成する場合(ハニカム構造体を作製する場合)、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。尚、造孔材が吸水性樹脂の場合、平均粒子径は、吸水後の値である。
水の含有量は、骨材粉末及び結合材用原料の合計の質量を100質量部としたときに、20〜80質量部であることが好ましい。例えば、多孔質材料をハニカム形状に成形した後に焼成する場合(ハニカム構造体を作製する場合)、水の含有量は、ハニカム形状に成形する際の多孔質材料の硬度(坏土硬度)が、成形し易い硬度となるように、適宜調整することが好ましい。
次に、多孔質材料用原料を所望の形状に成形することが好ましい。成形する形状や、成形方法は、特に限定されず、用途に合わせて適宜決定することができる。
次に、多孔質材料用原料(多孔質材料用原料を特定の形状に成形した場合には、成形された成形体)について、乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
次に、多孔質材料用原料(乾燥を行った場合には、乾燥後の多孔質材料用原料)を焼成して、多孔質材料を作製する。焼成(本焼成)の前に、バインダ等を除去するため、仮焼(脱脂)を行うことが好ましい。仮焼は、大気雰囲気において、200〜600℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。焼成温度は1250〜1800℃であることが好ましく、1300〜1750℃であることが更に好ましく、1350〜1700℃であることが特に好ましい。焼成温度が1250℃未満であると、焼結が十分に進行しない場合がある。一方、焼成温度が1800℃超であると、特殊な焼成炉が必要となる場合があるとともに、コストや製造歩留まりの面で不利になる傾向にある。
焼成時の雰囲気は、窒素、アルゴン等の非酸化雰囲気下(酸素分圧は10−4気圧以下)であることが好ましい。特に、アルゴン雰囲気下であることが好ましい。また、焼成は、常圧で行うことが好ましい。また、焼成時間は、1〜20時間とすることが好ましい。なお、仮焼及び焼成は、例えば、電気炉、ガス炉等を用いて行うことができる。
本発明の多孔質材料の製造方法の一実施形態によって、上記本発明の多孔質材料の一実施形態を得ることができる。
(4)ハニカム構造体の製造方法:
本発明のハニカム構造体の一実施形態の製造方法について説明する。
以下に説明する本発明のハニカム構造体の一実施形態の製造方法は、上記本発明の「多孔質材料の製造方法」の一実施形態において、多孔質材料用原料をハニカム形状に成形した後に焼成してハニカム構造の多孔質材料(ハニカム構造体)を得る方法である。従って、発明のハニカム構造体の一実施形態の製造方法は、上記本発明の多孔質材料の製造方法の一態様であるということもできる。
本発明のハニカム構造体の一実施形態の製造方法は、まず、上記本発明の「多孔質材料の製造方法」の一実施形態と同様の方法で、多孔質材料用原料を作製することが好ましい。
そして、得られた多孔質材料用原料を混練して坏土を形成することが好ましい。多孔質材料用原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体(ハニカム形状の多孔質材料用原料)を形成する。押出成形には、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを有する構造である。ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周壁の厚さ等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとするハニカム構造体の構造に合わせて適宜決定することができる。
こうして得られたハニカム成形体について、焼成前に乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
次に、ハニカム成形体のセルの延びる方向における長さが、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
次に、ハニカム成形体を焼成して、ハニカム構造体を作製する。焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼を行うことが好ましい。仮焼の条件としては、大気雰囲気において、200〜600℃で、0.5〜20時間加熱することが好ましい。焼成温度は、1350〜1700℃とする。
焼成時の雰囲気は、窒素、アルゴン等の非酸化雰囲気下(酸素分圧は10−4気圧以下)であることが好ましい。特に、アルゴン雰囲気下であることが好ましい。また、焼成は、常圧で行うことが好ましい。また、焼成時間は、1〜20時間とすることが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、大気中(水蒸気を含んでいてもよい)で950〜1400℃、1〜20時間、酸化処理を行うことが好ましい。なお、仮焼及び焼成は、例えば、電気炉、ガス炉等を用いて行うことができる。
ハニカムフィルタ(目封止部を備えるハニカム構造体)を作製する際には、ハニカム成形体又はハニカム構造体に目封止材料を充填し、焼成して、ハニカムフィルタを得ることが好ましい。更に具体的には、以下のようにすることが好ましい。
ハニカム成形体に目封止材料を充填する際には、まず、乾燥後のハニカム成形体の一方の端面側に目封止材料を充填する。一方の端面側に目封止材料を充填する方法としては、ハニカム成形体の一方の端面にシートを貼り付け、シートにおける、「目封止部を形成しようとするセル」と重なる位置に孔を開けるマスキング工程と、「ハニカム成形体の、シートが貼り付けられた側の端部」を目封止材料が貯留された容器内に圧入して、目封止材料をハニカム成形体のセル内に圧入する圧入工程と、を有する方法を挙げることができる。目封止材料をハニカム成形体のセル内に圧入する際には、目封止材料は、シートに形成された孔を通過し、シートに形成された孔と連通するセルのみに充填される。
目封止材料は、上記多孔質材料用原料の構成要素として挙げた原料を適宜混合して作製することができる。
次に、ハニカム成形体の他方の端面に、上記方法と同様にして目封止材料を充填することが好ましい。このとき、ハニカム成形体の両端面に、セル開口部と目封止材料とにより市松模様が形成されていることが好ましい。また、各セルは、片方の端部のみに目封止材料が充填されていることが好ましい。但し、両端部に目封止部が備えられていないセルや、両端部に目封止部が備えられているセルが、一部に存在してもよい。
次に、ハニカム成形体に充填された目封止材料を乾燥させることが好ましい。そして、上記のように、ハニカム成形体を焼成して、ハニカムフィルタ(目封止部を備えたハニカム構造体)を作製することが好ましい。
また、ハニカム構造体に目封止部を形成する方法としては、上記、ハニカム成形体に目封止材料を充填してハニカムフィルタを作製する方法と、同様の方法を用いることが好ましい。つまり、ハニカム構造体の両端面に目封止材料を充填し、目封止材料が充填されたハニカム構造体を乾燥、焼成して、ハニカムフィルタ(目封止部を備えたハニカム構造体)を作製することが好ましい。
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
炭化珪素(SiC)粉末及び結合材用原料(粉末)を混合して、「混合粉末」を作製した。混合粉末中の炭化珪素(SiC)粉末の割合は、96.0質量%であった。結合材用原料としては、チタン粉末(Ti)が3.7質量%、カーボンブラック粉末(C)が0.3質量%含有されていた。そして、上記「混合粉末」に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材としてデンプン、吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して多孔質材料用原料(成形原料)とした。バインダの含有量は混合粉末を100質量部としたときに、7質量部であった。造孔材の含有量は混合粉末を100質量部としたときに、20質量部であった。水の含有量は混合粉末を100質量部としたときに、70質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は22.0μmであった。また、チタン粉末の平均粒子径は20μmであった。また、カーボンブラック粉末の平均粒子径は1.6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は、20μmであった。尚、平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
次に、成形原料を混練し、土練して円柱状の坏土を作製した。そして、得られた円柱状の坏土を押出成形機を用いてハニカム形状に成形し、ハニカム成形体(ハニカム形状に成形された多孔質材料用原料)を得た。得られたハニカム成形体を誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、ハニカム乾燥体を得た。
次に、ハニカム成形体の一方の端面(第1の端面)における複数のセル開口部の中の一部に、マスクを施した。このとき、マスクを施したセルとマスクを施さないセルとが交互に並ぶようにした。そして、マスクを施した側の端部を、成形原料を含有する目封止スラリーに浸漬して、マスクが施されていないセルの開口部に目封止スラリーを充填した。
次に、ハニカム成形体の一方の端面(第1の端面)に目封止部を形成した方法と同様の方法で、ハニカム成形体の他方の端面(第2の端面)のセル開口部についても、目封止スラリーを充填した。これにより、得られるハニカム構造体の両端面が、セルの開口部と目封止部とにより市松模様が形成される状態になった。その後、目封止スラリーが充填されたハニカム成形体を乾燥し、目封止ハニカム乾燥体を得た。
得られた目封止ハニカム乾燥体を、大気雰囲気にて450℃で3時間かけて脱脂し、その後、Ar不活性雰囲気にて約1550℃で2時間焼成してハニカム焼成体を得た。そして、得られたハニカム焼成体を、1000℃で4時間、酸化処理を行ってハニカム構造の多孔質材料(ハニカム構造体)を得た。
得られたハニカム構造体の、隔壁の厚さは300μmであり、セル密度は46.5(セル/cm)であった。また、ハニカム構造体の底面は一辺35mmの正方形であり、ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さは152mmであった。
ハニカム構造体(多孔質材料)の、TiSiC、炭化珪素及びチタンシリサイド(TiSi)の同定を行った。TiSiC、炭化珪素及びチタンシリサイドの同定は、粉末X線回折による構成相の同定とともに、EPMAによる定性・定量分析及び元素マッピングの結果に基づいて行った。これにより、ハニカム構造体は、TiSiC、炭化珪素及びチタンシリサイドを含むことが確認された。
得られたハニカム構造の多孔質材料(ハニカム構造体)の気孔率は50.2%であり、平均細孔径は21.2μmであった。また、ハニカム構造体の曲げ強度は、23MPa(酸化処理後)であった。尚、本明細書において、「強度」は、「曲げ強度」である。得られた結果を表1に示す。なお、各測定値は、以下に示す方法によって求めた値である。
(気孔率)
気孔率は、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)による全細孔容積[cm/g]とアルキメデス法により測定した見掛密度[g/cm]から算出する。気孔率の算出に際しては、「開気孔率(%)=100×全細孔容積/{(1/見掛密度)+全細孔容積}」の式を用いる。
(平均細孔径)
水銀圧入法(JIS R 1655準拠)により測定する。
(曲げ強度(強度))
ハニカム構造体をセルが貫通する方向を長手方向とした試験片(縦0.3mm×横4mm×長さ40mm)に加工し、JIS R1601に準拠した曲げ試験により曲げ強度を算出する。曲げ強度は、20MPa以上が合格である。
(各成分の質量比率)
多孔質材料(ハニカム構造体)における、各成分(TiSiC、炭化珪素及びチタンシリサイド)の質量比率は以下のようにして求める。X線回折装置を用いて多孔質材料のX線回折パターンを得る。X線回折装置としては、回転対陰極型X線回折装置(理学電機製、RINT)を用いる。X線回折測定の条件は、CuKα線源、50kV、300mA、2θ=10〜60°とする。そして、「RIR(Reference Intensity Ratio)法を用いて、得られたX線回折データを解析して、各成分を定量する」簡易定量分析により、各成分の質量比率を算出する。X線回折データの解析は、MDI社製の「X線データ解析ソフトJADE7」を用いて行った。
Figure 0006257968
(実施例2〜6、比較例1)
各条件を表1に示すものとした以外は実施例1と同様にして多孔質材料(ハニカム構造体)を作製した。なお、実施例4は、造孔材の添加量を16質量部とすることにより、気孔率を表1のように変更した。また、実施例5は、造孔材の添加量を24質量部とすることにより、気孔率を表1のように変更した。実施例1の場合と同様にして、各評価を行った。結果を表1に示す。
表1より、実施例1〜6の多孔質材料は、強度に優れていることが分かる。また、比較例1の多孔質材料は、強度に劣ることが分かる。
本発明の多孔質材料は、触媒担体用材料、DPF用材料等として利用することができる。本発明のハニカム構造体は、触媒担体等として利用することができる。本発明のハニカムフィルタは、DPF等として利用することができる。

Claims (6)

  1. 骨材と、前記骨材間に細孔を形成した状態で前記骨材同士を結合する結合材とを含有し、
    前記骨材が、炭化珪素粒子又は窒化珪素粒子を含み、
    前記結合材が、TiSiCを主成分とするものであり、
    気孔率が25〜70%である多孔質材料。
  2. 前記骨材と前記結合材の合計質量に対する、前記結合材の質量の比率が1〜50質量%である請求項1に記載の多孔質材料。
  3. 平均細孔径が10〜40μmである請求項1又は2に記載の多孔質材料。
  4. 細孔径10μm未満の細孔が細孔全体の20%以下であり、細孔径40μmを超える細孔が細孔全体の10%以下である請求項1〜のいずれかに記載の多孔質材料。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の多孔質材料により構成され、
    一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する、隔壁を、備えたハニカム構造体。
  6. 請求項に記載のハニカム構造体を備え、
    前記一方の端面における所定の前記セルの開口部及び前記他方の端面における残余の前記セルの開口部、に配設された目封止部を備えるハニカムフィルタ。
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