JP2010105861A - 炭化珪素質多孔体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属珪化物を1〜35質量%、アルミナ(Al2O3)を0.5〜10質量%それぞれ含有し、気孔率が38〜80%である炭化珪素質多孔体。
【選択図】なし
Description
本発明の炭化珪素質多孔体の一実施形態は、金属珪化物を1〜35質量%、アルミナ(Al2O3)を0.5〜10質量%それぞれ含有し、気孔率が38〜80%のものである。以下、その詳細について説明する。
金属珪化物(以下、「金属シリサイド」ともいう)とは、金属とシリコン(Si)の反応生成物である。本発明の炭化珪素質多孔体には、この金属シリサイドが所定の割合で含有されているために熱伝導率が高く、優れた耐熱衝撃性を示す。また、後述する製造方法に従って本発明の炭化珪素質多孔体を製造すると、珪素と炭素の反応によって炭化珪素が形成される過程で、金属がその反応に作用し、反応により生成する炭化珪素の粒径や形状等に影響を与えると推測される。このため、連通性の高い気孔構造を有する炭化珪素質多孔体を形成することができるものと考えられる。
後述する製造方法に従って本発明の炭化珪素質多孔体を製造すると、焼成過程でアルミニウム(Al)原料中のAlが酸化し、炭化珪素質多孔体中にアルミナ(Al2O3)が形成される。Al原料として添加されたAlは、ニッケル(Ni)等の金属と珪素(シリコン(Si))との共有点を低下させて、SiC化反応を低温から起こさせる作用が有り、これにより炭化珪素質多孔体中のSiCの粒成長が促進されて、粒径の大きいSiCを骨材とする均質な組織が得られ、高強度な炭化珪素質多孔体となる。
本発明の炭化珪素質多孔体は、炭化珪素をその主成分とするものである。炭化珪素にはα−SiC、β−SiCという多形が存在するが、本発明の炭化珪素質多孔体は、含有される炭化珪素が全てβ−SiCであるか、α−SiCとβ−SiCの両方を含有するものであることが好ましい。α−SiCとβ−SiCの両方を含有するものである場合には、α−SiCとβ−SiCの合計に対する、β−SiCの含有割合は、下限が、好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上であり、上限が、好ましくは100質量%未満、更に好ましくは80質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。β−SiCの含有割合が上記数値範囲内であると、強度を十分なものとすることができる。なお、β−SiCの含有割合が5質量%未満であると、強度が不十分となる傾向にある。
後述する製造方法に従って製造される炭化珪素質多孔体は、珪素と炭素の反応によって炭化珪素が形成される過程で、金属がその反応に作用し、反応により生成する炭化珪素の粒径や形状等に影響を与えると推測される。このため、結果として形成される気孔は、開気孔となり易い。また気孔率は調合組成(特に、珪素の割合)に影響を受け易い。本発明の炭化珪素質多孔体の気孔率は広い範囲で制御可能であり、具体的には、下限が、38%以上、好ましくは40%以上、更に好ましくは45%以上であり、上限が、80%以下、好ましくは75%以下、更に好ましくは70%以下である。気孔率が38%未満であるとガス透過係数が小さくなり、ガスを透過させる場合において生ずる圧力損失が大きくなる。一方、気孔率が80%超であると強度が低下する。なお、本明細書にいう「気孔率」とは、アルキメデス法(JIS R 1634準拠)によって測定した値をいう。
本発明の炭化珪素質多孔体は、金属シリサイドが所定の割合で含有されているために熱伝導率が高く、優れた耐熱衝撃性を示すものである。具体的には、本発明の炭化珪素質多孔体の熱伝導率は、下限が、好ましくは3W/mK以上、更に好ましくは5W/mK以上、特に好ましくは8W/mK以上であり、上限が、50W/mK以下であることが好ましい。熱伝導率が3W/mK未満であると、耐熱衝撃性が低下する傾向にある。一方、熱伝導率が50W/mK超であると、特に問題はないが、実質的には製造が困難である。
次に、本発明の炭化珪素質多孔体の製造方法について説明する。本発明の炭化珪素質多孔体の製造方法の一実施形態は、金属、珪素、炭素及びアルミニウム(Al)原料を含む原料混合物を所定形状に成形し、脱脂、及び焼成して、金属珪化物を1〜35質量%、Al2O3を0.5〜10質量%それぞれ含有し、気孔率が38〜80%である炭化珪素質多孔体を得るものである。以下、その詳細について説明する。
金属は、珪素(シリコン(Si))と反応して金属シリサイドを生成し得る成分である。また、原料混合物に金属を含有させることによって、珪素と炭素の反応によって炭化珪素が形成される過程で、金属がその反応に作用し、反応により生成する炭化珪素の粒径や形状等に影響を与えると推測される。このため、結果として形成される気孔は開気孔となり易い。また、気孔率は調合組成(特に、珪素の割合)に影響を受ける。このため、本発明の炭化珪素質多孔体の製造方法によれば、広い範囲で気孔率を制御可能である。
珪素(シリコン(Si))は、前述の金属と反応して金属シリサイドを生成し得る成分であるとともに、後述の炭素(C)原料と反応して炭化珪素を生成し得る成分である。シリコン(Si)は、通常、粉末状(粒子状)のものを用いる。粉末状のシリコン(シリコン粉末)を用いる場合、金属との反応性の観点から、シリコン粉末の粒径は、下限が、好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上であり、上限が、好ましくは100μm以下、更に好ましくは80μm以下である。
炭素(C)原料は、前述のシリコン(Si)と反応して炭化珪素を生成し得る成分である。炭素(C)原料は、通常、粉末状(粒子状)のものを用いる。粉末状の炭素(炭素粉末)を用いる場合、シリコン(Si)との反応性の観点から、炭素粉末の粒径は、下限が、好ましくは5nm以上、更に好ましくは10nm以上であり、上限が、好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下である。このような微粒の炭素粉末としては、カーボンブラックが好適に使用できる。また、シリコン(Si)との反応性の観点から黒鉛(グラファイト)のような結晶質ではなく、非晶質の炭素を用いることが好ましい。
アルミニウム(Al)には、ニッケル(Ni)等の金属と珪素(シリコン(Si))との共有点を低下させて、SiC化反応を低温から起こさせる作用が有り、これにより炭化珪素質多孔体中のSiCの粒成長が促進されて、粒径の大きいSiCを骨材とする均質な組織が得られ、高強度な炭化珪素質多孔体となる。アルミニウム(Al)原料としては、金属アルミニウムの他、アルミニウムを含む合金も使用することができる。なお、アルミニウム(Al)原料の平均粒子径は、下限が、好ましくは1μm以上、更に好ましくは3μm以上であり、上限が、好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下である。
原料混合物には、更にα−SiC原料が含まれることが好ましい。α−SiC原料としては、粒子状のα−SiCを好適に用いることができる。粒子状のα−SiCの平均粒子径は、下限が、好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、上限が、好ましくは100μm以下、更に好ましくは80μm以下である。粒子状のα−SiCの平均粒子径が5μm未満であると、熱伝導率等の熱特性が低下する傾向にある。一方、粒子状のα−SiCの平均粒子径が100μm超であると、特に問題はないが、成形し難い場合がある。なお、本明細書にいう「平均粒子径」は、JIS R 1629に準拠したレーザー回折散乱法によって粒度分布測定した値であり、体積基準の平均粒子径である。
原料混合物に配合する成分としては、上述した金属、珪素、炭素原料、アルミニウム原料及びα−SiC原料以外にも、例えば、有機又は無機バインダー、造孔剤、界面活性剤(或いは分散剤)、及び水等を挙げることができる。有機又は無機バインダーの具体例としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。
次に、本発明のハニカム構造体について説明する。図1は、本発明のハニカム構造体の一実施形態を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態のハニカム構造体11は、多孔質の隔壁16で区画形成された複数のセル15を有するものである。セル15は、気体、液体等の各種流体の流路となる部分である。なお、図1中、符号10はハニカム構造体1の外壁を示す。本実施形態のハニカム構造体11は、前述の炭化珪素質多孔体によって構成されたものである。このため、本実施形態のハニカム構造体11は、高気孔率でありながらも高強度であり、熱伝導率が高く耐熱衝撃性に優れたものである。また、比較的低温で焼結させることで製造可能なものである。
ニッケル(Ni)粉末(♯350)13.4質量%、シリコン(Si)粉末(粒径:78μm)64.0質量%、カーボンブラック22.8質量%を含有する混合物の100質量部に対して、2.5質量部のアルミニウム(Al)粉末、1質量部の界面活性剤、9質量部の有機バインダーを加え、更に適量の水を加えて原料混合物を得た。得られた原料混合物を、一軸加圧成形にて25×50×10mmの寸法形状に成形した後、室温及び120℃の温度条件下で乾燥して乾燥成形体を得た。得られた乾燥成形体を、大気雰囲気下、350℃で5時間仮焼し、その後、Ar不活性雰囲気下、1450℃で焼成して板状の炭化珪素質多孔体(実施例1)を得た。表2に示すように、得られた炭化珪素質多孔体に含まれる金属シリサイドの結晶相は化学式「NiSi2」で表されるものであり、その含有割合は26質量%であった。また、β−SiCの粒径は15μmであり、α−SiCとβ−SiCの合計を100質量%とした場合におけるβ−SiCの含有割合は100質量%であった。更に、Al2O3の粒径は5μmであり、Al2O3の含有割合は4質量%であった。更にまた、気孔率は60%、熱伝導率は11W/mKであった。
表1に示す配合とすること以外は、前述の実施例1の場合と同様にして板状の炭化珪素質多孔体(実施例2〜17、比較例1〜6)を得た。得られたそれぞれの炭化珪素質多孔体に含まれる金属シリサイドの結晶相の種類とその含有割合、SiCの含有割合、β−SiCの粒径とその含有割合、Al2O3の粒径とその含有割合を表2に示す。また、得られたそれぞれの炭化珪素質多孔体の気孔率及び熱伝導率を表2に示す。
表1に示すバッチNo.1の配合の混合物に適量の水を加えて混合・混練し、可塑性の坏土を作製した。作製した坏土を押出成形した後に乾燥して、隔壁の厚さが310μm、セル密度が約46.5セル/cm2(300セル/平方インチ)、流路(セル)に直交する断面の形状が、一辺の長さが35mmの正四角形、全長が152mmのハニカム成形体を得た。大気雰囲気下、350℃で5時間仮焼した後、Ar不活性雰囲気下、約1450℃で焼成して、多孔質のハニカム構造体(実施例18)を得た。表3に示すように、得られたハニカム構造体に含まれる金属シリサイドの結晶相は化学式「NiSi2」で表されるものであり、その含有割合は25質量%であった。また、β−SiCの粒径は15μmであり、α−SiCとβ−SiCの合計を100質量%とした場合におけるβ−SiCの含有割合は100質量%であった。更に、Al2O3の粒径は5μmであり、Al2O3の含有割合は4質量%であった。更にまた、気孔率は58%、熱伝導率は12W/mKであった。
表1に示すバッチNo.1の配合の混合物に代えて、バッチNo.6の配合の混合物を用いること以外は、前述の実施例18の場合と同様にして多孔質のハニカム構造体(実施例19)を得た。得られたハニカム構造体に含まれる金属シリサイドの結晶相の種類とその含有割合、SiCの含有割合、β−SiCの粒径とその含有割合、Al2O3の粒径とその含有割合を表3に示す。また、得られたハニカム構造体の気孔率及び熱伝導率を表3に示す。
表1に示すバッチNo.1の配合の混合物に適量の水を加えて混合・混練し、可塑性の坏土を作製した。作製した坏土を押出成形した後に乾燥して、隔壁の厚さが310μm、セル密度が約46.5セル/cm2(300セル/平方インチ)、流路(セル)に直交する断面の形状が、一辺の長さが35mmの正四角形、全長が152mmのハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体のセルの両端部を、隣接するセルどうしが反対側の端部で封じられるように、前述の坏土と同様の材料で目封止した。乾燥後、大気雰囲気下、350℃で5時間仮焼し、次いでAr不活性雰囲気下、約1450℃で焼成して、多孔質のハニカム構造体(ハニカムセグメント)を得た。得られたハニカムセグメントの外壁面に接合材(セラミックス系セメント)を塗布して厚さ約1mmの接合材層を形成し、形成した接合材層上に別のハニカムセグメントを載置する工程を繰り返し、16個(4×4)のハニカムセグメントからなる積層体を作製した。適宜加圧して全体を接合させた後、140℃、2時間乾燥して接合体を得た。得られた接合体の外周を円筒状に切削加工した後、外周面(切削加工面)にコーティング材(セラミックス系セメント(接合材に準ずる))を塗布し、700℃で2時間乾燥して硬化させ、ハニカム構造体(DPF)(実施例20)を得た。
表1に示すバッチNo.1の配合の混合物に代えて、バッチNo.6の配合の混合物を用いること以外は、前述の実施例20の場合と同様にしてDPF(実施例21)を得た。得られたDPFに含まれる金属シリサイドの結晶相の種類とその含有割合、SiCの含有割合、β−SiCの粒径とその含有割合、Al2O3の粒径とその含有割合を表4に示す。また、得られたDPFの気孔率及び熱伝導率を表4に示す。
Claims (15)
- 金属珪化物を1〜35質量%、アルミナ(Al2O3)を0.5〜10質量%それぞれ含有し、気孔率が38〜80%である炭化珪素質多孔体。
- 前記アルミナを、粒子径が10μm以下の粒子状の形態で含有する請求項1に記載の炭化珪素質多孔体。
- 主成分として含有されている炭化珪素が、全てβ−SiCである請求項1又は2に記載の炭化珪素質多孔体。
- α−SiCとβ−SiCを含有し、前記α−SiCと前記β−SiCの合計に対する前記β−SiCの含有割合が、5質量%以上100質量%未満である請求項1又は2に記載の炭化珪素質多孔体。
- 前記β−SiCの少なくとも一部の形状が、その粒子径が10μm以上の粒子状である請求項4に記載の炭化珪素質多孔体。
- 前記金属珪化物が、ニッケルシリサイドである請求項1〜5のいずれか一項に記載の炭化珪素質多孔体。
- 熱伝導率が、3〜50W/mKである請求項1〜6のいずれか一項に記載の炭化珪素質多孔体。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の炭化珪素質多孔体からなる、隔壁で区画された複数のセルを有するハニカム形状のハニカム構造体。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の炭化珪素質多孔体からなる、隔壁で区画された複数のセルを有するハニカム形状のセグメントを、複数個組み合わせて接合一体化するとともに、所定の前記セルの開口部を前記セグメントの一方の端面で目封止し、残余の前記セルの開口部を前記セグメントの他方の端面で目封止してなるハニカム構造体。
- ディーゼル排ガス浄化用のフィルターとして用いられる請求項8又は9に記載のハニカム構造体。
- 金属、珪素、炭素原料及びアルミニウム(Al)原料を含む原料混合物を所定形状に成形し、脱脂、及び焼成して、金属珪化物を1〜35質量%、アルミナ(Al2O3)を0.5〜10質量%それぞれ含有し、気孔率が38〜80%である炭化珪素質多孔体を得る炭化珪素質多孔体の製造方法。
- 前記原料混合物が、更にα−SiC原料を含む請求項11に記載の炭化珪素質多孔体の製造方法。
- 1250〜1800℃で焼成する請求項11又は12に記載の炭化珪素質多孔体の製造方法。
- 前記アルミニウム(Al)原料が、金属Al又はAl含有合金であり、前記炭素原料が、カーボンブラックである請求項11〜13のいずれか一項に記載の炭化珪素質多孔体の製造方法。
- 前記原料混合物を、隔壁で区画された複数のセルを有するハニカム形状に成形する請求項11〜14のいずれか一項に記載の炭化珪素質多孔体の製造方法。
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