JP2010105861A - 炭化珪素質多孔体及びその製造方法 - Google Patents

炭化珪素質多孔体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高気孔率でありながらも高強度であり、熱伝導率が高く耐熱衝撃性に優れ、比較的低温で焼結させることで製造可能な炭化珪素質多孔体を提供する。
【解決手段】金属珪化物を1〜35質量%、アルミナ(Al)を0.5〜10質量%それぞれ含有し、気孔率が38〜80%である炭化珪素質多孔体。
【選択図】なし

Description

本発明は、例えばディーゼル排ガス浄化用のフィルター等として好適な炭化珪素質多孔体及びハニカム構造体、並びに炭化珪素質多孔体の製造方法に関する。
排ガス用の捕集フィルター、例えば、ディーゼルエンジン等からの排ガスに含まれている粒子状物質(パティキュレート)を捕捉して除去するためのディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)として、ハニカム構造体が広く使用されている。
このようなハニカム構造体は、例えば、炭化珪素(SiC)等からなる多孔質の隔壁によって区画、形成された流体の流路となる複数のセルが中心軸方向に互いに並行するように配設された構造を有している。また、隣接したセルの端部は、交互に(市松模様状に)目封じされている。すなわち、一のセルは、一方の端部が開口し、他方の端部が目封じされており、これと隣接する他のセルは、一方の端部が目封じされ、他方の端部が開口している。このような構造とすることにより、一方の端部から所定のセル(流入セル)に流入させた排ガスを、多孔質の隔壁を通過させることによって流入セルに隣接したセル(流出セル)を経由して流出させ、隔壁を通過させる際に排ガス中の粒子状物質(パティキュレート)を隔壁に捕捉させることによって、排ガスの浄化をすることができる。
炭化珪素を構成材料として用いた構造体についての具体的な関連技術として、所定の比表面積と不純物含有量を有する炭化珪素粉末を出発原料とし、これを所望の形状に成形、乾燥後、1600〜2200℃の温度範囲で焼成して得られるハニカム構造の多孔質炭化珪素質触媒担体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平6−182228号公報 特公平8−10621号公報 特許第3699992号公報
前述の特許文献1で開示された、炭化珪素粉末自体の再結晶反応による焼結形態(ネッキング)によると、炭化珪素粒子表面から炭化珪素成分が蒸発し、これが粒子間の接触部(ネック部)に凝縮することでネック部が成長して結合状態が形成される。しかしながら、炭化珪素を蒸発させるには、非常に高い焼成温度が必要であるため、これがコスト高を招き、且つ、熱膨張率の高い材料を高温焼成しなければならないために、焼成歩留まりが低下するという問題があった。
一方、その粒界中にニッケルシリサイド合金を含有させてなる多孔質の炭化珪素焼結体によって形成されたセラミック製ヒーターが開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2に記載された製造方法によれば、得られる炭化珪素焼結体の気孔率は35%程度である。このため、この炭化珪素焼結体は、より高いガス透過性能が要求されるフィルター用途には不十分であるといえる。また、2000℃前後の高温で焼成する必要があるため、コストや製造歩留まりの面でも問題があった。
また、より高気孔率の構造材料を提供すべく、シリコンと炭素源を含むスラリーを含浸させた樹脂等のスポンジ状多孔質構造体を焼成して得られる、気孔率95〜97%の炭化珪素系の多孔質構造材が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、特許文献3で開示された多孔質構造材は、高気孔率であるために優れたガス透過性能を示すものであるが、気孔率が高過ぎるために強度が不十分であるといった問題がある。
また、単純に、シリコンと炭素、あるいはシリコンと炭素と炭化珪素を混ぜ合わせ、アルゴン等の雰囲気にて1450℃程度で反応焼結させることにより得られる炭化珪素質多孔体は、シリコンの存在していた位置に閉気孔が形成されやすく、フィルターとして有用な開気孔は形成されにくいため、フィルター特性(ガス透過性)は低いものであった。
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、高気孔率でありながらも高強度であり、熱伝導率が高く耐熱衝撃性に優れ、比較的低温で焼結させることで製造可能な炭化珪素質多孔体及びハニカム構造体、並びに炭化珪素質構造体の簡便な製造方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、所定の割合で金属珪化物とアルミナを含有させることによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、以下に示す炭化珪素質多孔体、ハニカム構造体、及び炭化珪素質多孔体の製造方法が提供される。
[1]金属珪化物を1〜35質量%、アルミナ(Al)を0.5〜10質量%それぞれ含有し、気孔率が38〜80%である炭化珪素質多孔体。
[2]前記アルミナを、粒子径が10μm以下の粒子状の形態で含有する前記[1]に記載の炭化珪素質多孔体。
[3]主成分として含有されている炭化珪素が、全てβ−SiCである前記[1]又は[2]に記載の炭化珪素質多孔体。
[4]α−SiCとβ−SiCを含有し、前記α−SiCと前記β−SiCの合計に対する前記β−SiCの含有割合が、5質量%以上100質量%未満である前記[1]又は[2]に記載の炭化珪素質多孔体。
[5]前記β−SiCの少なくとも一部の形状が、その粒子径が10μm以上の粒子状である前記[4]に記載の炭化珪素質多孔体。
[6]前記金属珪化物が、ニッケルシリサイドである前記[1]〜[5]のいずれかに記載の炭化珪素質多孔体。
[7]熱伝導率が、3〜50W/mKである前記[1]〜[6]のいずれかに記載の炭化珪素質多孔体。
[8]前記[1]〜[7]のいずれかに記載の炭化珪素質多孔体からなる、隔壁で区画された複数のセルを有するハニカム形状のハニカム構造体。
[9]前記[1]〜[7]のいずれかに記載の炭化珪素質多孔体からなる、隔壁で区画された複数のセルを有するハニカム形状のセグメントを、複数個組み合わせて接合一体化するとともに、所定の前記セルの開口部を前記セグメントの一方の端面で目封止し、残余の前記セルの開口部を前記セグメントの他方の端面で目封止してなるハニカム構造体。
[10]ディーゼル排ガス浄化用のフィルターとして用いられる前記[8]又は[9]に記載のハニカム構造体。
[11]金属、珪素、炭素原料及びアルミニウム(Al)原料を含む原料混合物を所定形状に成形し、脱脂、及び焼成して、金属珪化物を1〜35質量%、アルミナ(Al)を0.5〜10質量%それぞれ含有し、気孔率が38〜80%である炭化珪素質多孔体を得る炭化珪素質多孔体の製造方法。
[12]前記原料混合物が、更にα−SiC原料を含む前記[11]に記載の炭化珪素質多孔体の製造方法。
[13]1250〜1800℃で焼成する前記[11]又は[12]に記載の炭化珪素質多孔体の製造方法。
[14]前記アルミニウム(Al)原料が、金属Al又はAl含有合金であり、前記炭素原料が、カーボンブラックである前記[11]〜[13]のいずれかに記載の炭化珪素質多孔体の製造方法。
[15]前記原料混合物を、隔壁で区画された複数のセルを有するハニカム形状に成形する前記[11]〜[14]のいずれかに記載の炭化珪素質多孔体の製造方法。
本発明の炭化珪素質多孔体は、高気孔率でありながらも高強度であり、熱伝導率が高く耐熱衝撃性に優れ、比較的低温で焼結させることで製造可能であるといった効果を奏するものである。
本発明のハニカム構造体は、高気孔率でありながらも高強度であり、熱伝導率が高く耐熱衝撃性に優れ、比較的低温で焼結させることで製造可能であるといった効果を奏するものである。このため、本発明のハニカム構造体は、ディーゼル排ガス浄化用のフィルター(DPF)等として好適である。
本発明の炭化珪素質多孔体の製造方法によれば、高気孔率でありながらも高強度であり、熱伝導率が高く耐熱衝撃性に優れた炭化珪素質多孔体を、比較的低温で焼結させることで簡便に製造することができる。
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
1.炭化珪素質多孔体:
本発明の炭化珪素質多孔体の一実施形態は、金属珪化物を1〜35質量%、アルミナ(Al)を0.5〜10質量%それぞれ含有し、気孔率が38〜80%のものである。以下、その詳細について説明する。
(金属珪化物)
金属珪化物(以下、「金属シリサイド」ともいう)とは、金属とシリコン(Si)の反応生成物である。本発明の炭化珪素質多孔体には、この金属シリサイドが所定の割合で含有されているために熱伝導率が高く、優れた耐熱衝撃性を示す。また、後述する製造方法に従って本発明の炭化珪素質多孔体を製造すると、珪素と炭素の反応によって炭化珪素が形成される過程で、金属がその反応に作用し、反応により生成する炭化珪素の粒径や形状等に影響を与えると推測される。このため、連通性の高い気孔構造を有する炭化珪素質多孔体を形成することができるものと考えられる。
本発明の炭化珪素質多孔体に含有される金属シリサイドの割合は、炭化珪素質多孔体の全体を100質量%とした場合に、下限は、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、上限は、35質量%以下、好ましくは33質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。金属シリサイドの含有割合が1質量%未満であると、熱伝導率が十分に高くならず、耐熱衝撃性の向上効果が不十分である。また、気孔の連通性が低下する。一方、金属シリサイドの含有割合が35質量%超であると、熱膨張係数が高くなる傾向にあり、耐熱衝撃性が低下する場合がある。
好適な金属シリサイドの具体的な種類としては、例えば、ニッケルシリサイド、ジルコニウムシリサイド、鉄シリサイド、チタンシリサイド、タングステンシリサイド等を挙げることができる。なかでも、ニッケルシリサイド、及びジルコニウムシリサイドが、熱伝導率をより高くすることが可能となるため、また、連通性の高い気孔構造が得られるために更に好ましく、ニッケルシリサイドが特に好ましい。
金属シリサイドは、種々の化学式で表される化合物である。例えば、ニッケルシリサイドについては、NiSi、NiSi、NiSi、NiSi、NiSi等の化学式で表されるものがある。なかでも、耐熱性の観点からはNiSiが好ましい。また、ジルコニウムシリサイドについては、ZrSi、ZrSi、ZrSi、ZrSi、ZrSi、ZrSi、ZrSi、ZrSi等の化学式で表されるものがある。なかでも、耐熱性の観点からはZrSiが好ましい。
(アルミナ)
後述する製造方法に従って本発明の炭化珪素質多孔体を製造すると、焼成過程でアルミニウム(Al)原料中のAlが酸化し、炭化珪素質多孔体中にアルミナ(Al)が形成される。Al原料として添加されたAlは、ニッケル(Ni)等の金属と珪素(シリコン(Si))との共有点を低下させて、SiC化反応を低温から起こさせる作用が有り、これにより炭化珪素質多孔体中のSiCの粒成長が促進されて、粒径の大きいSiCを骨材とする均質な組織が得られ、高強度な炭化珪素質多孔体となる。
本発明の炭化珪素質多孔体に含有されるAlの割合は、炭化珪素質多孔体の全体を100質量%とした場合に、下限は、0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、上限は、10質量%以下、好ましくは8質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。Alの含有割合が0.5質量%未満であると、前記製造方法におけるAl量が十分とは言えず、SiCの粒成長促進効果が不十分である。一方、Alの含有割合が10質量%超であると、炭化珪素質多孔体としての特徴(高熱伝導率、高耐熱衝撃性など)が薄れることがあるため適当ではない。
本発明の炭化珪素質多孔体において、Alは、いかなる形態で含有されていても問題はないが、通常は、SiC粒子の表面等に膜状に存在するのではなく、粒子径が10μm以下の粒子状の形態で含有される。これは、その形態自体が何らかの効果を発現するというものではなく、後述する製造方法に従って製造された本発明の炭化珪素質多孔体に見られる特徴の1つである。ここで、本明細書にいう「Alの粒子径」とは、炭化珪素質多孔体の任意の断面を電子顕微鏡で観察した場合に、任意の倍率(例えば500倍あるいは1000倍)の任意の視野において最大のAlの粒径(最大長:粒子画像の輪郭上の2点における最大の長さ)を測定し、これを複数回(例えば20回)繰り返し、各視野での最大のAl粒径の合計を視野数で割って得られた値をいう。
(炭化珪素)
本発明の炭化珪素質多孔体は、炭化珪素をその主成分とするものである。炭化珪素にはα−SiC、β−SiCという多形が存在するが、本発明の炭化珪素質多孔体は、含有される炭化珪素が全てβ−SiCであるか、α−SiCとβ−SiCの両方を含有するものであることが好ましい。α−SiCとβ−SiCの両方を含有するものである場合には、α−SiCとβ−SiCの合計に対する、β−SiCの含有割合は、下限が、好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上であり、上限が、好ましくは100質量%未満、更に好ましくは80質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。β−SiCの含有割合が上記数値範囲内であると、強度を十分なものとすることができる。なお、β−SiCの含有割合が5質量%未満であると、強度が不十分となる傾向にある。
本発明の炭化珪素質多孔体を構成する炭化珪素には、通常、少なくとも一部のβ−SiCは粒子の状態で含まれている。この粒子状のβ−SiCの粒子径(以下、単に「粒径」ともいう)は、10μm以上であることが好ましく、12μm以上であることが更に好ましく、15μm以上であることが特に好ましい。β−SiCの粒径が10μm以上であると、強度を十分なものとすることができる。なお、β−SiCの粒径の上限値については特に限定されないが、実質的な製造可能性等の観点からは100μm以下である。ここで、本明細書にいう「β−SiCの粒子径」とは、炭化珪素質多孔体の任意の断面を電子顕微鏡で観察した場合に、任意の倍率(例えば500倍)の任意の視野において最大のβ−SiCの粒径(最大長:粒子画像の輪郭上の2点における最大の長さ)を測定し、これを複数回(例えば20回)繰り返し、各視野での最大のβ−SiC粒径の合計を視野数で割って得られた値をいう。
(気孔率)
後述する製造方法に従って製造される炭化珪素質多孔体は、珪素と炭素の反応によって炭化珪素が形成される過程で、金属がその反応に作用し、反応により生成する炭化珪素の粒径や形状等に影響を与えると推測される。このため、結果として形成される気孔は、開気孔となり易い。また気孔率は調合組成(特に、珪素の割合)に影響を受け易い。本発明の炭化珪素質多孔体の気孔率は広い範囲で制御可能であり、具体的には、下限が、38%以上、好ましくは40%以上、更に好ましくは45%以上であり、上限が、80%以下、好ましくは75%以下、更に好ましくは70%以下である。気孔率が38%未満であるとガス透過係数が小さくなり、ガスを透過させる場合において生ずる圧力損失が大きくなる。一方、気孔率が80%超であると強度が低下する。なお、本明細書にいう「気孔率」とは、アルキメデス法(JIS R 1634準拠)によって測定した値をいう。
(熱伝導率)
本発明の炭化珪素質多孔体は、金属シリサイドが所定の割合で含有されているために熱伝導率が高く、優れた耐熱衝撃性を示すものである。具体的には、本発明の炭化珪素質多孔体の熱伝導率は、下限が、好ましくは3W/mK以上、更に好ましくは5W/mK以上、特に好ましくは8W/mK以上であり、上限が、50W/mK以下であることが好ましい。熱伝導率が3W/mK未満であると、耐熱衝撃性が低下する傾向にある。一方、熱伝導率が50W/mK超であると、特に問題はないが、実質的には製造が困難である。
2.炭化珪素質多孔体の製造方法:
次に、本発明の炭化珪素質多孔体の製造方法について説明する。本発明の炭化珪素質多孔体の製造方法の一実施形態は、金属、珪素、炭素及びアルミニウム(Al)原料を含む原料混合物を所定形状に成形し、脱脂、及び焼成して、金属珪化物を1〜35質量%、Alを0.5〜10質量%それぞれ含有し、気孔率が38〜80%である炭化珪素質多孔体を得るものである。以下、その詳細について説明する。
(金属)
金属は、珪素(シリコン(Si))と反応して金属シリサイドを生成し得る成分である。また、原料混合物に金属を含有させることによって、珪素と炭素の反応によって炭化珪素が形成される過程で、金属がその反応に作用し、反応により生成する炭化珪素の粒径や形状等に影響を与えると推測される。このため、結果として形成される気孔は開気孔となり易い。また、気孔率は調合組成(特に、珪素の割合)に影響を受ける。このため、本発明の炭化珪素質多孔体の製造方法によれば、広い範囲で気孔率を制御可能である。
金属の種類は、珪素(シリコン(Si))と反応して金属シリサイドを生成し得るものであれば特に限定されない。好適な金属の具体例としては、ニッケル(Ni)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、タングステン(W)等を挙げることができる。なかでも、ニッケル(Ni)、ジルコニウム(Zr)が好ましく、ニッケル(Ni)が更に好ましい。なお、これらの金属は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、金属単体以外にも、これらの金属を含む金属化合物を使用することもできる。
金属は、通常、粉末状(粒子状)のものを用いる。粉末状の金属(金属粉末)を用いる場合、シリコン(Si)との反応性の観点から、金属粉末の粒径は、下限が、好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上であり、上限が、好ましくは100μm以下、更に好ましくは80μm以下である。
(珪素)
珪素(シリコン(Si))は、前述の金属と反応して金属シリサイドを生成し得る成分であるとともに、後述の炭素(C)原料と反応して炭化珪素を生成し得る成分である。シリコン(Si)は、通常、粉末状(粒子状)のものを用いる。粉末状のシリコン(シリコン粉末)を用いる場合、金属との反応性の観点から、シリコン粉末の粒径は、下限が、好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上であり、上限が、好ましくは100μm以下、更に好ましくは80μm以下である。
(炭素原料)
炭素(C)原料は、前述のシリコン(Si)と反応して炭化珪素を生成し得る成分である。炭素(C)原料は、通常、粉末状(粒子状)のものを用いる。粉末状の炭素(炭素粉末)を用いる場合、シリコン(Si)との反応性の観点から、炭素粉末の粒径は、下限が、好ましくは5nm以上、更に好ましくは10nm以上であり、上限が、好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下である。このような微粒の炭素粉末としては、カーボンブラックが好適に使用できる。また、シリコン(Si)との反応性の観点から黒鉛(グラファイト)のような結晶質ではなく、非晶質の炭素を用いることが好ましい。
(アルミニウム原料)
アルミニウム(Al)には、ニッケル(Ni)等の金属と珪素(シリコン(Si))との共有点を低下させて、SiC化反応を低温から起こさせる作用が有り、これにより炭化珪素質多孔体中のSiCの粒成長が促進されて、粒径の大きいSiCを骨材とする均質な組織が得られ、高強度な炭化珪素質多孔体となる。アルミニウム(Al)原料としては、金属アルミニウムの他、アルミニウムを含む合金も使用することができる。なお、アルミニウム(Al)原料の平均粒子径は、下限が、好ましくは1μm以上、更に好ましくは3μm以上であり、上限が、好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下である。
(α−SiC原料)
原料混合物には、更にα−SiC原料が含まれることが好ましい。α−SiC原料としては、粒子状のα−SiCを好適に用いることができる。粒子状のα−SiCの平均粒子径は、下限が、好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、上限が、好ましくは100μm以下、更に好ましくは80μm以下である。粒子状のα−SiCの平均粒子径が5μm未満であると、熱伝導率等の熱特性が低下する傾向にある。一方、粒子状のα−SiCの平均粒子径が100μm超であると、特に問題はないが、成形し難い場合がある。なお、本明細書にいう「平均粒子径」は、JIS R 1629に準拠したレーザー回折散乱法によって粒度分布測定した値であり、体積基準の平均粒子径である。
(原料混合物)
原料混合物に配合する成分としては、上述した金属、珪素、炭素原料、アルミニウム原料及びα−SiC原料以外にも、例えば、有機又は無機バインダー、造孔剤、界面活性剤(或いは分散剤)、及び水等を挙げることができる。有機又は無機バインダーの具体例としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。
造孔剤の具体例としては、グラファイト、小麦粉、澱粉、フェノール樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、発泡樹脂(アクリロニトリル系プラスチックバルーン)、吸水性樹脂等を挙げることができる。また、界面活性剤(あるいは分散剤)の具体例としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリカルボン酸塩、脂肪族四級アンモニウム塩、脂肪族アミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン(又はソルビトール)脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルベタイン、アミンオキサイド、カチオン性セルロース誘導体、ポリエチレンイミン、ポリカルボン酸塩、ポリアクリル酸塩等を挙げることができる。
原料混合物を混合及び混錬して可塑性の坏土とし、この坏土を所定の形状となるように成形して成形体を得る。成形体の形状は特に限定されず、用途に応じた種々の形状とすることができる。但し、ディーゼル排ガス浄化用のフィルター等として用いる場合には、隔壁で区画された複数のセルを有するハニカム形状とすることが好ましい。坏土をこのようなハニカム形状に成形するには、例えば押出成形等の成形方法を採用することが好ましい。
得られた成形体を、適当な乾燥方法によって乾燥した後、焼成すれば、本発明の実施形態である炭化珪素質多孔体を製造することができる。乾燥方法は特に限定されないが、例えばマイクロ波、熱風等を用いる乾燥方法が好ましい。なお、得られる炭化珪素質多孔体に含まれる炭化珪素には、通常、低温相であるβ−SiCが含有されるため、焼成温度を比較的低くすることができる。具体的には、焼成温度は1250〜1800℃であることが好ましく、1300〜1750℃であることが更に好ましく、1350〜1700℃であることが特に好ましい。焼成温度が1250℃未満であると、焼結が十分に進行しない場合がある。一方、焼成温度が1800℃超であると、特殊な焼成炉が必要となる場合があるとともに、コストや製造歩留まりの面で不利になる傾向にある。なお、焼成雰囲気は不活性雰囲気が好ましく、アルゴン(Ar)雰囲気が更に好ましい。また、真空雰囲気を選択しても良い。
成形体を乾燥した後、焼成する前に、成形体中の有機物(バインダー、分散剤、造孔剤等)を燃焼させて除去するための、仮焼(脱脂、脱バインダー等ともいう)を適宜行うことができる。一般に、有機バインダーの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔剤の燃焼温度200〜800℃程度であるので、仮焼温度は200〜1000℃程度とすればよい。仮焼時間としては特に制限はないが、通常は、1〜10時間程度である。雰囲気は大気雰囲気、窒素雰囲気等適宜選択できる。
3.ハニカム構造体:
次に、本発明のハニカム構造体について説明する。図1は、本発明のハニカム構造体の一実施形態を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態のハニカム構造体11は、多孔質の隔壁16で区画形成された複数のセル15を有するものである。セル15は、気体、液体等の各種流体の流路となる部分である。なお、図1中、符号10はハニカム構造体1の外壁を示す。本実施形態のハニカム構造体11は、前述の炭化珪素質多孔体によって構成されたものである。このため、本実施形態のハニカム構造体11は、高気孔率でありながらも高強度であり、熱伝導率が高く耐熱衝撃性に優れたものである。また、比較的低温で焼結させることで製造可能なものである。
図2は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態を示す斜視図である。また、図3は、図2に示すハニカム構造体の要部拡大図である。図2及び図3に示すハニカム構造体1は、ハニカム形状のセグメント(ハニカムセグメント)2が、接合材組成物で形成された接合材層9によって一体的に接合されたものである。このハニカムセグメント2は、多孔質の隔壁6によって区画形成された複数のセル5が中心軸方向に互いに並行するように配設された構造を有するものであり、それぞれがハニカム構造体1の全体構造の一部を構成するとともに、ハニカム構造体1の中心軸に対して垂直な方向に組み付けられることによって、ハニカム構造体1の全体構造を構成している。
接合材層9によって一体的に接合されたハニカムセグメント2は、接合後、流路(セル5)に直交する断面の全体形状が円形、楕円形、三角形、正方形、その他の所望の形状となるように研削加工され、外周面がコーティング材4によって被覆される。なお、このハニカム構造体1をDPFとして用いる場合には、図4に示すように、ハニカムセグメント2の各セル5を、それぞれ一方の端部において充填材7により交互に目封止する。
所定のセル5(流入セル)においては、図4及び図5における左端部側が開口している一方、右端部側が充填材7によって目封止されており、これと隣接する他のセル5(流出セル)においては、左端部側が充填材7によって目封止されるが、右端部側が開口している。このような目封止により、図3に示すように、ハニカムセグメント2の端面が市松模様状を呈するようになる。
図5においては、ハニカムセグメント2の左側が排ガスの入口となる場合を示し、排ガスは、目封止されることなく開口しているセル5(流入セル)からハニカムセグメント2内に流入する。セル5(流入セル)に流入した排ガスは、多孔質の隔壁6を通過して他のセル5(流出セル)から流出する。そして、隔壁6を通過する際に排ガス中のスートを含む粒子状物質(パティキュレート)が隔壁6に捕捉される。このようにして、排ガスの浄化を行うことができる。このような捕捉によって、ハニカムセグメント2の内部にはスートを含むパティキュレートが経時的に堆積して圧力損失が大きくなるため、スート等を燃焼させる再生処理が定期的に行われる。なお、図3〜図5には、流路(セル5)に直交する断面の全体形状が正方形のハニカムセグメント2を示すが、三角形、六角形等の形状であってもよい。
また、セル5の断面形状も、図4に示すような四角形の他、三角形、六角形、円形、楕円形、その他の形状であってもよい。セル5の断面形状は単一である必要はなく、例えば、八角形と四角形との組み合わせ等も好適な実施態様であり、特に、流入セルを八角形、流出セルを四角形とすることが好ましい。このような組み合わせとすると、流入セルのパティキュレート堆積容量を増加させられる一方、再生時には大量の堆積パティキュレートが燃焼して大量の熱が発生するため、本願発明により得られる、熱伝導率が高く、耐熱衝撃性に優れた炭化珪素質多孔体が一層効果的となるからである。
図3に示すように、接合材層9は、ハニカムセグメント2の外周面に接合材組成物が塗布されることで形成される層であり、隣接するハニカムセグメント2どうしを接合するように機能する。なお、接合材組成物としては、本発明の実施形態である炭化珪素質多孔体を製造するために用いる坏土と同様の組成のものを好適に用いることができる。
接合材組成物は、それぞれのハニカムセグメント2の外周面に塗布してもよいが、隣接するハニカムセグメント2の相互間においては、対応する外周面の一方に対してだけ塗布してもよい。このような対応面の片側だけへの塗布は、接合材組成物の使用量を節約できる点で好ましい。接合材組成物を塗布する方向は、ハニカムセグメント外周面内の長手方向、ハニカムセグメント外周面内の長手方向に垂直な方向、ハニカムセグメント外周面に垂直な方向など、特に限定されるものではないが、ハニカムセグメント外周面内の長手方向に向かって塗布するのが好ましい。接合材層9の厚さは、ハニカムセグメント2の相互間の接合力を勘案して決定され、例えば、0.5〜3.0mmの範囲で適宜選択される。
セル5の目封止に用いる充填材7としては、坏土と同様の材料を用いることができる。充填材7による目封止は、例えば、目封止をしないセル5をマスキングした状態で、ハニカムセグメント2の端面をスラリー状の充填材に浸漬することにより、開口しているセル5に充填することにより行うことができる。充填材7の充填は、ハニカムセグメント2の成形後における焼成前に行っても、焼成後に行ってもよいが、焼成前に行う方が、焼成工程が1回で終了するため好ましい。
以上のようなハニカムセグメント2を作製した後、ハニカムセグメント2の外周面にペースト状の接合材組成物を塗布して接合材層9を形成し、所定の立体形状(ハニカム構造体1の全体構造)となるように複数のハニカムセグメント2を組み付け、この組み付けた状態で圧着した後、加熱乾燥する。このようにして、複数のハニカムセグメント2が一体的に接合された接合体が作製される。その後、この接合体を上述の形状に研削加工し、外周面をコーティング材4によって被覆し、加熱乾燥する。このようにして、図1に示すハニカム構造体1が作製される。コーティング材4の材質としては、接合材層9の材質と同様のものを用いることができる。コーティング材4の厚さは、例えば、0.1〜1.5mmの範囲で適宜選択される。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
[各種原料粉末の平均粒子径]:JIS R 1629に準拠して測定した。
[β−SiC粒子及びAl粒子の粒子径]:立方体形状(5×5×5mm)に切り出した試料を樹脂含浸した後、研磨して形成した研磨面を電子顕微鏡で500倍の倍率で観察して(20視野)、各視野におけるβ−SiC粒子とAl粒子のそれぞれの最大粒子の粒子径(最大粒子径)を測定した。これら最大粒子径の合計を視野数(20)で除して得た値を「β−SiC粒子の粒子径」、「Al粒子の粒子径」とした。
[結晶相の同定及び定量]:粉末X線回折によって結晶相の同定及び定量を行った。なお、定量分析は、SiCについては、粉末X線回折を用い、「SiC系セラミックス新材料−最近の展開−」日本学術振興会高温セラミックス材料第124委員会編、内田老鶴圃(2001)p.347−350に記載の定量分析方法に基づいた。NiSiあるいはZrSiについては、粉末X線回折によって金属シリサイド相がNiSiあるいはZrSiであることを確認した上で、化学分析で得たNi含有量あるいはZr含有量から、NiSiあるいはZrSiに換算した値を算出した。
[気孔率]:5×5×25mm又は0.3×30×30mmの寸法形状に切り出した試料を対象として、アルキメデス法(JIS R 1634準拠)により測定した。
[熱伝導率]:φ10×2mm又は0.3×10×10mmの寸法形状に切り出した試料を対象として、JIS R 1611に準拠して測定した。
(実施例1(バッチNo.1))
ニッケル(Ni)粉末(♯350)13.4質量%、シリコン(Si)粉末(粒径:78μm)64.0質量%、カーボンブラック22.8質量%を含有する混合物の100質量部に対して、2.5質量部のアルミニウム(Al)粉末、1質量部の界面活性剤、9質量部の有機バインダーを加え、更に適量の水を加えて原料混合物を得た。得られた原料混合物を、一軸加圧成形にて25×50×10mmの寸法形状に成形した後、室温及び120℃の温度条件下で乾燥して乾燥成形体を得た。得られた乾燥成形体を、大気雰囲気下、350℃で5時間仮焼し、その後、Ar不活性雰囲気下、1450℃で焼成して板状の炭化珪素質多孔体(実施例1)を得た。表2に示すように、得られた炭化珪素質多孔体に含まれる金属シリサイドの結晶相は化学式「NiSi」で表されるものであり、その含有割合は26質量%であった。また、β−SiCの粒径は15μmであり、α−SiCとβ−SiCの合計を100質量%とした場合におけるβ−SiCの含有割合は100質量%であった。更に、Alの粒径は5μmであり、Alの含有割合は4質量%であった。更にまた、気孔率は60%、熱伝導率は11W/mKであった。
(実施例2〜17、比較例1〜6(バッチNo.2〜23))
表1に示す配合とすること以外は、前述の実施例1の場合と同様にして板状の炭化珪素質多孔体(実施例2〜17、比較例1〜6)を得た。得られたそれぞれの炭化珪素質多孔体に含まれる金属シリサイドの結晶相の種類とその含有割合、SiCの含有割合、β−SiCの粒径とその含有割合、Alの粒径とその含有割合を表2に示す。また、得られたそれぞれの炭化珪素質多孔体の気孔率及び熱伝導率を表2に示す。
Figure 2010105861
Figure 2010105861
(実施例18)
表1に示すバッチNo.1の配合の混合物に適量の水を加えて混合・混練し、可塑性の坏土を作製した。作製した坏土を押出成形した後に乾燥して、隔壁の厚さが310μm、セル密度が約46.5セル/cm(300セル/平方インチ)、流路(セル)に直交する断面の形状が、一辺の長さが35mmの正四角形、全長が152mmのハニカム成形体を得た。大気雰囲気下、350℃で5時間仮焼した後、Ar不活性雰囲気下、約1450℃で焼成して、多孔質のハニカム構造体(実施例18)を得た。表3に示すように、得られたハニカム構造体に含まれる金属シリサイドの結晶相は化学式「NiSi」で表されるものであり、その含有割合は25質量%であった。また、β−SiCの粒径は15μmであり、α−SiCとβ−SiCの合計を100質量%とした場合におけるβ−SiCの含有割合は100質量%であった。更に、Alの粒径は5μmであり、Alの含有割合は4質量%であった。更にまた、気孔率は58%、熱伝導率は12W/mKであった。
(実施例19)
表1に示すバッチNo.1の配合の混合物に代えて、バッチNo.6の配合の混合物を用いること以外は、前述の実施例18の場合と同様にして多孔質のハニカム構造体(実施例19)を得た。得られたハニカム構造体に含まれる金属シリサイドの結晶相の種類とその含有割合、SiCの含有割合、β−SiCの粒径とその含有割合、Alの粒径とその含有割合を表3に示す。また、得られたハニカム構造体の気孔率及び熱伝導率を表3に示す。
Figure 2010105861
(実施例20)
表1に示すバッチNo.1の配合の混合物に適量の水を加えて混合・混練し、可塑性の坏土を作製した。作製した坏土を押出成形した後に乾燥して、隔壁の厚さが310μm、セル密度が約46.5セル/cm(300セル/平方インチ)、流路(セル)に直交する断面の形状が、一辺の長さが35mmの正四角形、全長が152mmのハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体のセルの両端部を、隣接するセルどうしが反対側の端部で封じられるように、前述の坏土と同様の材料で目封止した。乾燥後、大気雰囲気下、350℃で5時間仮焼し、次いでAr不活性雰囲気下、約1450℃で焼成して、多孔質のハニカム構造体(ハニカムセグメント)を得た。得られたハニカムセグメントの外壁面に接合材(セラミックス系セメント)を塗布して厚さ約1mmの接合材層を形成し、形成した接合材層上に別のハニカムセグメントを載置する工程を繰り返し、16個(4×4)のハニカムセグメントからなる積層体を作製した。適宜加圧して全体を接合させた後、140℃、2時間乾燥して接合体を得た。得られた接合体の外周を円筒状に切削加工した後、外周面(切削加工面)にコーティング材(セラミックス系セメント(接合材に準ずる))を塗布し、700℃で2時間乾燥して硬化させ、ハニカム構造体(DPF)(実施例20)を得た。
表4に示すように、得られたDPFに含まれる金属シリサイドの結晶相は化学式「NiSi」で表されるものであり、その含有割合は25質量%であった。また、β−SiCの粒径は15μmであり、α−SiCとβ−SiCの合計を100質量%とした場合におけるβ−SiCの含有割合は100質量%であった。更に、Alの粒径は5μmであり、Alの含有割合は4質量%であった。更にまた、気孔率は58%、熱伝導率は12W/mKであった。
(実施例21)
表1に示すバッチNo.1の配合の混合物に代えて、バッチNo.6の配合の混合物を用いること以外は、前述の実施例20の場合と同様にしてDPF(実施例21)を得た。得られたDPFに含まれる金属シリサイドの結晶相の種類とその含有割合、SiCの含有割合、β−SiCの粒径とその含有割合、Alの粒径とその含有割合を表4に示す。また、得られたDPFの気孔率及び熱伝導率を表4に示す。
Figure 2010105861
表2〜4に示す結果から、ニッケル(Ni)等の金属やアルミニウム(Al)を用いずに製造した比較例1や、ニッケル(Ni)を少量添加して製造した比較例2の炭化珪素質多孔体は、気孔率が高い反面、熱伝導率が低く、このため、例えばDPFの構成材料に用いた場合には、堆積した煤を燃焼する際に発生する熱応力が高くなりすぎて破損する恐れがある。また、アルミニウム(Al)を用いずに製造した比較例3の炭化珪素質多孔体は、気孔率や熱伝導率は比較的高めの値を示すが、β−SiCの粒子径が小さく、SiCの粒成長が不十分である。アルミニウム(Al)を少量添加して製造した比較例4や、大量に添加した比較例5の炭化珪素質多孔体は、気孔率が低い割に、熱伝導率が低いため、例えばDPFの構成材料に用いた場合には、堆積した煤を燃焼する際に発生する熱応力が高くなりすぎて破損する恐れがある。ニッケル(Ni)とアルミニウム(Al)を用いたが、α-SiCを多く使用して製造した比較例6の炭化珪素質多孔体は、気孔率が低く、このため、例えばDPFの構成材料に用いた場合には、排ガス透過時の圧力損失が高くなるなどの問題が生じる。一方、ニッケル(Ni)やジルコニア(Zr)等の金属とアルミニウム(Al)を用いて製造した実施例1〜17の炭化珪素質多孔体、実施例18及び19のハニカム構造体、並びに実施例20及び21のDPFは、高気孔率で、熱伝導率も高いため、優れたフィルター特性を発揮することが期待できるとともに、堆積した煤を燃焼する際に発生する熱応力の低減を見込むことができる。
本発明の炭化珪素質多孔体は、ディーゼル排ガス浄化用フィルター(DPF)をはじめとする各種フィルターを構成する材質として好適である。
本発明のハニカム構造体の一実施形態を示す斜視図である。 本発明のハニカム構造体の他の実施形態を示す斜視図である。 図2に示すハニカム構造体の要部拡大図である。 図2に示すハニカム構造体を構成するハニカムセグメントの斜視図である。 図4のA−A断面図である。
符号の説明
1,11:ハニカム構造体、2:ハニカムセグメント、4:コーティング材、5,15:セル、6,16:隔壁、7:充填材、9:接合材層、10:外壁。

Claims (15)

  1. 金属珪化物を1〜35質量%、アルミナ(Al)を0.5〜10質量%それぞれ含有し、気孔率が38〜80%である炭化珪素質多孔体。
  2. 前記アルミナを、粒子径が10μm以下の粒子状の形態で含有する請求項1に記載の炭化珪素質多孔体。
  3. 主成分として含有されている炭化珪素が、全てβ−SiCである請求項1又は2に記載の炭化珪素質多孔体。
  4. α−SiCとβ−SiCを含有し、前記α−SiCと前記β−SiCの合計に対する前記β−SiCの含有割合が、5質量%以上100質量%未満である請求項1又は2に記載の炭化珪素質多孔体。
  5. 前記β−SiCの少なくとも一部の形状が、その粒子径が10μm以上の粒子状である請求項4に記載の炭化珪素質多孔体。
  6. 前記金属珪化物が、ニッケルシリサイドである請求項1〜5のいずれか一項に記載の炭化珪素質多孔体。
  7. 熱伝導率が、3〜50W/mKである請求項1〜6のいずれか一項に記載の炭化珪素質多孔体。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の炭化珪素質多孔体からなる、隔壁で区画された複数のセルを有するハニカム形状のハニカム構造体。
  9. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の炭化珪素質多孔体からなる、隔壁で区画された複数のセルを有するハニカム形状のセグメントを、複数個組み合わせて接合一体化するとともに、所定の前記セルの開口部を前記セグメントの一方の端面で目封止し、残余の前記セルの開口部を前記セグメントの他方の端面で目封止してなるハニカム構造体。
  10. ディーゼル排ガス浄化用のフィルターとして用いられる請求項8又は9に記載のハニカム構造体。
  11. 金属、珪素、炭素原料及びアルミニウム(Al)原料を含む原料混合物を所定形状に成形し、脱脂、及び焼成して、金属珪化物を1〜35質量%、アルミナ(Al)を0.5〜10質量%それぞれ含有し、気孔率が38〜80%である炭化珪素質多孔体を得る炭化珪素質多孔体の製造方法。
  12. 前記原料混合物が、更にα−SiC原料を含む請求項11に記載の炭化珪素質多孔体の製造方法。
  13. 1250〜1800℃で焼成する請求項11又は12に記載の炭化珪素質多孔体の製造方法。
  14. 前記アルミニウム(Al)原料が、金属Al又はAl含有合金であり、前記炭素原料が、カーボンブラックである請求項11〜13のいずれか一項に記載の炭化珪素質多孔体の製造方法。
  15. 前記原料混合物を、隔壁で区画された複数のセルを有するハニカム形状に成形する請求項11〜14のいずれか一項に記載の炭化珪素質多孔体の製造方法。
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