JP6256726B2 - インクジェット記録方法およびインクジェット記録用光硬化型インク組成物 - Google Patents

インクジェット記録方法およびインクジェット記録用光硬化型インク組成物 Download PDF

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Description

本発明は、インクジェット記録用光硬化型インク組成物、ならびにそれを用いたインクジェット記録方法および記録物に関する。
近年、紫外線、電子線その他の放射線によって硬化する光硬化型インクの開発が進められている。このような光硬化型インクは、プラスチック、ガラス、コート紙等のインクを吸収しないまたはほとんど吸収しない非吸収メディアに対する記録において、速乾性があり、かつ、インクの滲みを防止した記録を実現することができる。このような光硬化型インクは、重合性化合物、光重合開始剤、その他の添加剤等から構成されている。
従来の光硬化型インクでは、記録媒体上に記録した画像の紫外線による変退色を防止するために、ベンゾフェノン系化合物やベンゾトリアゾール系化合物等の有機系紫外線吸収剤を添加していた(例えば、特許文献1参照)。
特開2009−91550号公報
しかしながら、有機系紫外線吸収剤は、光硬化型インクの主要成分である重合性化合物に溶解しにくい傾向がある。そのため、光硬化型インク中に添加し得る有機系紫外線吸収剤の量は制限されていた。かかる光硬化型インクを用いて十分な紫外線吸収能を有する画像を記録するためには、該画像の膜厚を少なくとも20μm以上にして膜中における有機系紫外線吸収剤の絶対量を増やさなければならなかった。
以上のように、従来の光硬化型インクにより記録された画像は、20μm未満の膜厚では紫外線吸収能が十分に機能しないことがあった。特にインクジェット記録装置により形成されるインク層の膜厚は10μm程度であるため、従来の光硬化型インクではインクジェット記録装置により十分な紫外線吸収能を有する画像を記録できない場合があった。
本発明に係る幾つかの態様は、前記課題を解決することで、インクジェット記録装置により記録媒体上に記録した画像において、紫外線による変退色を効果的に防止することができるインクジェット記録用光硬化型インク組成物を提供するものである。
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係るインクジェット記録用光硬化型インク組成物の一態様は、
重合性化合物と、光重合開始剤と、無機系紫外線吸収剤と、を少なくとも含有することを特徴とする。
適用例1に記載のインクジェット記録用光硬化型インク組成物によれば、インクジェッ
ト記録装置により記録媒体上に記録した画像において、紫外線による変退色を効果的に防止することができる。
[適用例2]
適用例1のインクジェット記録用光硬化型インク組成物において、
前記無機系紫外線吸収剤が、酸化亜鉛、酸化セリウムおよびルチル型酸化チタンから選択される少なくとも1種を主成分とする粒子であることができる。
[適用例3]
適用例1または適用例2のインクジェット記録用光硬化型インク組成物において、
前記無機系紫外線吸収剤の平均一次粒径が、1nm以上50nm以下であることができる。
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例のインクジェット記録用光硬化型インク組成物において、
前記無機系紫外線吸収剤の含有量が、0.1質量%以上5質量%以下であることができる。
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例のインクジェット記録用光硬化型インク組成物において、
前記光重合開始剤が、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドおよび2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドから選択される少なくとも1種であることができる。
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか一例のインクジェット記録用光硬化型インク組成物において、
前記重合性化合物として、フェノキシエチル(メタ)アクリレートを20質量%以上70質量%以下含有することができる。
[適用例7]
適用例1ないし適用例6のいずれか一例のインクジェット記録用光硬化型インク組成物において、
前記重合性化合物として、脂環式構造を有するジ(メタ)アクリレートを10質量%以上15質量%以下含有することができる。
[適用例8]
適用例1ないし適用例7のいずれか一例のインクジェット記録用光硬化型インク組成物において、
前記重合性化合物として、エポキシ(メタ)アクリレートを5質量%以上10質量%以下含有することができる。
[適用例9]
適用例1ないし適用例8のいずれか一例のインクジェット記録用光硬化型インク組成物において、
測定温度20℃における粘度が8mPa・s以上40mPa・s以下であり、かつ、測定温度20℃における表面張力が20mN/m以上30mN/m以下であることができる。
[適用例10]
本発明に係るインクジェット記録方法の一態様は、
(a)記録媒体上に適用例1ないし適用例9のいずれか一例に記載のインクジェット記録用光硬化型インク組成物を吐出する工程と、
(b)吐出されたインクジェット記録用光硬化型インク組成物に対して、光源から380nm以上430nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する光を照射する工程と、
を含むことを特徴とする。
[適用例11]
本発明に係る記録物は、適用例10に記載のインクジェット記録方法によって記録されたことを特徴とする。
各種光重合開始剤の紫外線吸収スペクトル。 各種無機系紫外線吸収剤の光透過率を示したグラフ。 本実施の形態に係るインクジェット記録方法に使用可能なインクジェット記録装置の斜視図。 図3に示した光照射装置の正面図。 図4のA−A矢視図。
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。なお、本明細書において「画像」とは、ドット群から形成される印字パターンを示し、テキスト印字、ベタ印字も含める。
1.インクジェット記録用光硬化型インク組成物
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録用光硬化型インク組成物(以下、単に「光硬化型インク組成物」ともいう)は、重合性化合物と、光重合開始剤と、無機系紫外線吸収剤と、を少なくとも含有する。以下、本実施の形態に用いられる各成分について詳細に説明する。
1.1.重合性化合物
本実施の形態に係る光硬化型インク組成物は、重合性化合物を含有する。重合性化合物としては、特に制限されないが、以下に例示するような単官能(メタ)アクリレート、二官能(メタ)アクリレート、三官能(メタ)アクリレート、ウレタン系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、アミノ(メタ)アクリレート、N−ビニル化合物等が挙げられる。なお、本明細書中において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを示す。
単官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、例えば(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、(2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、トリメチロールプロパンフォルマルモノ(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記例示した単官能(メタ)アクリレートの中でも、フェノキシエチル(メタ)アクリ
レートを用いることが好ましい。フェノキシエチル(メタ)アクリレートは、良好な硬化性を有すると共に、光重合開始剤の良好な溶剤として機能するからである。また、低粘度であるため、光硬化型インク組成物の粘度をインクジェット記録方式に適した低い値(20℃/8mPa・s以上40mPa・s以下)に調整しやすいといった利点もある。フェノキシエチル(メタ)アクリレートの含有量は、光硬化型インク組成物の全質量に対して、20質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
また、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えばジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造を有する単官能アクリレートを用いてもよい。このような脂環式構造を有する単官能アクリレートは、嵩高い脂環式構造を有することで、記録媒体上に記録した画像に強靱性を付与することができ、これにより該画像の耐擦性を向上させることができるからである。また、低粘度であるため、光硬化型インク組成物の粘度をインクジェット記録方式に適した低い値(20℃/8mPa・s以上40mPa・s以下)に調整しやすいといった利点もある。
これらの単官能(メタ)アクリレートは、1種単独で用いることもできるし、2種以上併用してもよい。
二官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、例えばアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、脂環式構造を有するジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン等が挙げられる。また、脂環式構造を有するジ(メタ)アクリレートとしては、例えばジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの二官能(メタ)アクリレートは、1種単独で用いることもできるし、2種以上併用してもよい。
なお、重合性化合物としてフェノキシエチル(メタ)アクリレートを用いた場合には、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートおよび脂環式構造を有するジ(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を用いることがより好ましい。アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートおよび脂環式構造を有するジ(メタ)アクリレートは、架橋剤として機能して、記録媒体上に記録した画像の膜強度を向上させることができる。特に、脂環式構造を有するジ(メタ)アクリレートは、嵩高い分子構造を有するので、より効果的に画像の膜強度を向上させることができる。かかる場合、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートと脂環式構造を有するジ(メタ)アクリレートとを合計した含有量は、光硬化型インク組成物の全質量に対して、10質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
三官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート等が挙
げられる。これらの三官能アクリレートは、1種単独で用いることもできるし、2種以上併用してもよい。
ウレタン系オリゴマーとしては、例えば、ポリオールと、ポリイソシアネートおよびポリハイドロキシ化合物と、の付加反応により生じるオリゴマーが挙げられる。ウレタン系オリゴマーとは、分子中にウレタン結合とラジカル重合可能な不飽和二重結合とを一以上有するものであって、相対分子質量(分子量と同義である。)の小さい分子から実質的あるいは概念的に得られる単位の少数回、一般的には約2回ないし20回程度の繰り返し構造をもつ中程度の大きさの相対分子質量を有する分子をいう。ウレタン系オリゴマーとしては、市販されているCN963J75、CN964、CN965、CN966J75(いずれもSARTOMER社から入手可能)等を用いることができる。
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば二官能ビスフェノールAをベースとするエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。エポキシ(メタ)アクリレートとしては、市販されているCN104、CN115、CN117、CN120、CN124、CN151(いずれもSARTOMER社から入手可能)等を用いることができる。
エポキシ(メタ)アクリレートの含有量は、光硬化型インク組成物の全質量に対して、5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。エポキシ(メタ)アクリレートの含有量が前記範囲にあると、初期着色(光硬化型インク組成物の製造時に黄色ないし茶色に着色すること)を低減できるので、白色またはクリアの光硬化型インク組成物において特に好ましい態様となる。また、エポキシ(メタ)アクリレートの含有量が前記範囲にあると、記録媒体上に記録した画像のタック性が良好となる傾向がある。
アミノ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、市販されているCN371、CN373、CN384、CN386、CN501、CN549、CN550、CN551(いずれもSARTOMER社から入手可能)、EBECRYL7100(ダイセル・サイテック社より入手可能)等を用いることができる。
アミノ(メタ)アクリレートの含有量は、光硬化型インク組成物の全質量に対して、1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。アミノ(メタ)アクリレートの含有量が前記範囲にあると、硬化反応を円滑に進行させて、記録媒体上に記録した画像の硬化性を向上させることができる。
N−ビニル化合物としては、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、およびそれらの誘導体等が挙げられる。
重合性化合物の含有量は、光硬化型インク組成物の全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、20質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。重合性化合物の含有量が20質量%以上であると、記録媒体上に記録した画像の硬化性が良好となる。一方、重合性化合物の含有量が20質量%未満であると、記録媒体上に記録した画像の硬化性が不十分となる場合がある。
1.2.光重合開始剤
本実施の形態に係る光硬化型インク組成物は、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等の公知の光重合開始剤が挙げられる。これらの中でも、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤やチオキサントン系光重合開始剤が好ましい。
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましい理由は、光を吸収することよって分子内開裂する光開裂型の光重合開始剤であるからである。すなわち、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤には、光開裂の前後で発色団の構造が大きく変化するため吸収の変化が大きく、フォトブリーチング(光退色)と呼ばれる吸収の減少が認められる。また、吸収がUV領域からVL領域まで及ぶにもかかわらず黄変が起こりにくく、内部硬化にも優れている。このため、透明な厚膜や隠蔽力の大きい顔料入り塗膜に対して特に好ましい。
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドがより好ましい。なお、これらの光重合開始剤を組み合わせて用いることも好ましい。これらの光重合開始剤が好ましい理由は、後述するように無機系紫外線吸収剤の紫外線吸収領域が380nm以下であるのに対し、これらの光重合開始剤の吸収波長が380nmより長波長側にも存在するからである。
図1は、各種光重合開始剤の紫外線吸収スペクトルである。図1の横軸は光の波長(nm)であり、縦軸は吸光度である。図1において、実線がビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドであり、一点鎖線が2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドである。図1から、いずれの光重合開始剤も380nmよりも長波長側に吸収波長が存在することが分かる。したがって、本実施の形態に係る光硬化型インク組成物がこれらの光重合開始剤を含有する場合には、発光ピーク波長が380nmよりも長波長側であり、かつ、これらの光重合開始剤が吸収し得る波長の光を照射することにより、硬化反応を円滑に進行させることができる。
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドは、前述した重合性化合物との相溶性に優れている点でさらに好ましい。具体的には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドとしては、DAROCUR TPO(商品名、チバ・ジャパン株式会社製)が挙げられる。
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドは、広域な吸光特性を有する点でさらに好ましい。具体的には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドとしては、IRGACURE 819(商品名、チバ・ジャパン株式会社製)が挙げられる。
チオキサントン系光重合開始剤が好ましい理由は、三重項励起状態から他の光重合開始剤へエネルギーを与えるエネルギー移動型増感剤として作用するからである。また、光開裂後の反応系内に残存する酸素と反応して系内の酸素の濃度を下げる作用があるからである。酸素濃度が下がる分だけ、ラジカル重合阻害の程度が低減できるので、表面硬化性を改善することができる。
さらに、アシルフォスフィン系光重合開始剤とチオキサントン系光重合開始剤とを併用してもよい。アシルフォスフィン系光重合開始剤とチオキサントン系光重合開始剤とを併用することによりそれぞれの特性を最大限に引き出すことが可能となる。
光重合開始剤の含有量は、光硬化型インク組成物の全質量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは5質量%以上15質量%以下である。1質量%未満であると、光重合開始剤の機能が発揮されない場合があり、記録媒体上に記録した画像の硬化性が不十分となることがある。一方、20質量%を超えても、硬化反応を開始させる効果の向上が見られず、過剰添加となり好ましくない。
1.3.無機系紫外線吸収剤
本実施の形態に係る光硬化型インク組成物は、無機系紫外線吸収剤を含有する。無機系紫外線吸収剤の材質としては、例えば、酸化亜鉛、酸化セリウム、ルチル型酸化チタン等を主成分とするものが挙げられる。無機系紫外線吸収剤は、前記例示した材質から選択される少なくとも1種から実質的に構成される粒子であり、製造過程で不可避的に混入する反応液由来の成分や、表面処理剤ないし分散剤等の不純物も含まれる。
前記例示した材質から構成される無機系紫外線吸収剤は、有機系紫外線吸収剤に比べて広範囲の紫外線を吸収することができ、具体的には380nm以下の紫外線を吸収することができる。図2は、各種無機系紫外線吸収剤の光透過率を示したグラフである。図2の横軸は光の波長(nm)であり、縦軸は光透過率(%)である。図2より、前記例示した酸化亜鉛、酸化セリウム、ルチル型酸化チタンのいずれもが380nm以上の光を80%以上透過することが理解されよう。したがって、本実施の形態に係る光硬化型インク組成物に380nmよりも長波長側に発光ピーク波長を有する光を照射することで、硬化反応を開始させることが可能となる。
また、無機系紫外線吸収剤は、有機系紫外線吸収剤よりも紫外線吸収能が高いため、記録媒体上に画像を形成する際、膜厚を数μm程度まで薄くしても効果が得られる点で優れている。
これらの無機系紫外線吸収剤は、一般に粒子表面の活性が高いので、表面処理により活性を制御して使用することが好ましい。表面処理としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素等により粒子の表面を被覆して親水化処理する方法や、シリコーン樹脂および/またはフッ素樹脂等により粒子の表面を被覆して撥水化処理する方法が好ましい。親水化処理の方法は、特に制限されず、例えばアルミン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム等の水可溶性金属塩水溶液に、無機粒子を浸漬し、酸またはアルカリによる中和等の手段により粒子表面に、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素等の金属酸化物を析出および/または被覆する方法が挙げられる。撥水化処理の方法は、特に制限されず、例えばシロキサン化合物および/または界面活性剤により粒子の表面を一次処理した後、フッ素含有シラン化合物により粒子の表面を二次処理する方法が挙げられる。なお、表面処理された粒子は、市販品として入手することもできる。
また、媒体中での無機粒子の分散性を高める目的で、分散剤をさらに添加してもよい。分散剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤が挙げられる。分散剤の添加方法は、特に制限されず、通常、分散剤を溶解した媒体中に無機粒子を添加および/または分散させればよい。なお、無機粒子が媒体中に分散された無機粒子分散液を市販品として入手することもできる。
無機系紫外線吸収剤の平均一次粒径は、好ましくは1nm以上50nm以下、より好ましくは5nm以上30nm以下である。平均一次粒径が前記範囲にあると、光硬化型インク組成物およびこれを用いて記録された画像の透明性が良好となる点で好ましい。平均一次粒径が50nmを超えると、無機系紫外線吸収剤が光を散乱するようになり、光硬化型インク組成物およびこれを用いて記録された画像の透明性が損なわれる場合がある。なお、無機系紫外線吸収剤の平均一次粒径は、動的光散乱法に基づく粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。動的光散乱法に基づく粒子径分布測定装置としては、例えば「ELSZ−2」、「DLS−8000」(以上、大塚電子株式会社製)、「LB−550」(株式会社堀場製作所製)等が挙げられる。
無機系紫外線吸収剤の含有量(固形分濃度)は、光硬化型インク組成物の全質量に対し
て、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下、より好ましくは3質量%以上5質量%以下である。無機系紫外線吸収剤の含有量が前記範囲であると、インクジェット記録装置により記録媒体上に記録した画像において、紫外線による変退色を効果的に防止することができる。無機系紫外線吸収剤の含有量が0.1質量%未満であると、紫外線による変退色を防止する効果が不十分となる傾向がある。一方、無機系紫外線吸収剤の含有量が前記範囲を超えると、光硬化型インク組成物中に溶質が完全に溶解せずに白濁する傾向があり、製品上好ましくない。
1.4.その他の添加剤
本実施の形態に係る光硬化型インク組成物は、必要に応じて、顔料、分散剤、スリップ剤、光増感剤、重合禁止剤等の添加剤を含有してもよい。
なお、本実施の形態に係る光硬化型インク組成物は、有機溶剤を含有せず、無溶剤の光硬化型インク組成物であることが好ましい。
本実施の形態に係る光硬化型インク組成物は、そのままでもいわゆるクリアインクとして機能することができるが、さらに顔料を含有してもよい。本実施の形態において使用可能な顔料としては、特に制限されないが、無機顔料や有機顔料が挙げられる。無機顔料としては、酸化チタンおよび酸化鉄に加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。一方、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キノフラロン顔料等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等を使用することができる。
本実施の形態で使用可能な顔料の具体例のうち、カーボンブラックとしては、C.I.ピグメントブラック7が挙げられ、例えば、三菱化学株式会社から入手可能なNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等が、コロンビアケミカルカンパニー社から入手可能なRaven5750、同5250、同5000、同3500、同1255、同700等が、また、キャボット社から入手可能なRegal400R、同330R、同660R、MogulL、同700、Monarch800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、同1400等が、さらに、デグッサ社から入手可能なColorBlackFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、ColorBlackS150、同S160、同S170、Printex35、同U、同V、同140U、SpecialBlack6、同5、同4A、同4等が挙げられる。
また、本実施の形態に係る光硬化型インク組成物をイエローインクとする場合に使用可能な顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、180、185、213等が挙げられる。
また、本実施の形態に係る光硬化型インク組成物をマゼンタインクとする場合に使用可能な顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、209、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
また、本実施の形態に係る光硬化型インク組成物をシアンインクとする場合に使用可能な顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、
16、22、60等が挙げられる。
また、本実施の形態に係る光硬化型インク組成物をグリーンインクとする場合に使用可能な顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、8、36等が挙げられる。
また、本実施の形態に係る光硬化型インク組成物をオレンジインクとする場合に使用可能な顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ51、66等が挙げられる。
また、本実施の形態に係る光硬化型インク組成物をホワイトインクとする場合に使用可能な顔料としては、例えば、塩基性炭酸鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム等が挙げられる。
本実施の形態で使用可能な顔料の平均粒子径は、好ましくは10nm以上200nm以下の範囲であり、より好ましくは50nm以上150nm以下の範囲である。
本実施の形態に係る光硬化型インク組成物に添加し得る顔料の添加量は、光硬化型インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上25質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下である。
本実施の形態に係る光硬化型インク組成物は、前述した顔料の分散性を高める目的で分散剤を添加してもよい。本実施の形態で使用可能な分散剤としては、Solsperse3000、5000、9000、12000、13240、17000、24000、26000、28000、36000(以上、ルーブリゾール社製)、ディスコールN−503、N−506、N−509、N−512、N−515、N−518、N―520(以上、第一工業製薬株式会社製)等の高分子分散剤が挙げられる。
本実施の形態に係る光硬化型インク組成物は、スリップ剤を添加してもよい。本実施の形態で使用可能なスリップ剤としては、好ましくはシリコーン系界面活性剤であり、より好ましくはポリエステル変性シリコーンまたはポリエーテル変性シリコーンである。具体的には、ポリエステル変性シリコーンとしては、BYK−347、同348、BYK−UV3500、同3510、同3530(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられ、ポリエーテル変性シリコーンとしては、BYK−3570(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
本実施の形態に係る光硬化型インク組成物に添加し得るスリップ剤の添加量は、光硬化型インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01質量%以上2質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上1質量%以下である。
本実施の形態に係る光硬化型インク組成物は、光増感剤を添加してもよい。本実施の形態で使用可能な光増感剤としては、アミン化合物(脂肪族アミン、芳香族基を含むアミン、ピペリジン、エポキシ樹脂とアミンの反応生成物、トリエタノールアミントリアクリレートなど)、尿素化合物(アリルチオ尿素、o−トリルチオ尿素など)、イオウ化合物(ナトリウムジエチルジチオホスフェート、芳香族スルフィン酸の可溶性塩など)、ニトリル系化合物(N,N−ジエチル−p−アミノベンゾニトリルなど)、リン化合物(トリ−n−ブチルフォスフィン、ナトリウムジエチルジチオフォスファイドなど)、窒素化合物(ミヒラーケトン、N−ニトリソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物、テトラヒドロ−1,3−オキサジン化合物、ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドとジアミンの縮合物など)、塩素化合物(四塩化炭素、ヘキサクロロエタンなど)等が挙げられる。
本実施の形態に係る光硬化型インク組成物は、重合禁止剤を添加してもよい。本実施の形態で使用可能な重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール等が挙げられる。
1.5.物性
本実施の形態に係る光硬化型インク組成物の20℃における粘度は、好ましくは8〜40mPa・sであり、より好ましくは10〜25mPa・sである。光硬化型インク組成物の20℃における粘度が前記範囲にあると、ノズルから光硬化型インク組成物が適量吐出され、光硬化型インク組成物の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。なお、粘度の測定は、粘弾性試験機MCR−300(Pysica社製)を用いて、20℃の環境下で、Shear Rateを10〜1000に上げていき、Shear Rate200時の粘度を読み取ることにより測定することができる。
本実施の形態に係る光硬化型インク組成物の20℃における表面張力は、好ましくは20mN/m以上30mN/m以下である。光硬化型インク組成物の20℃における表面張力が前記範囲にあると、光硬化型インク組成物が撥液処理されたノズルに濡れにくくなる。これにより、ノズルから光硬化型インク組成物が適量吐出され、光硬化型インク組成物の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
2.インクジェット記録方法
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法は、(a)記録媒体上に前述したインクジェット記録用光硬化型インク組成物を吐出する工程と、(b)吐出されたインクジェット記録用光硬化型インク組成物に対して、光源から380nm以上430nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する光を照射する工程と、を含むことを特徴とする。
以下、本実施の形態に係るインクジェット記録方法について各工程ごとに説明する。
2.1.工程(a)
本工程は、記録媒体上に前述した光硬化型インク組成物を吐出する工程である。
光硬化型インク組成物については、前述したとおりであるから、詳細な説明を省略する。
記録媒体としては、特に限定されないが、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート等のプラスチック類およびこれらの表面が加工処理されているもの、ガラス、コート紙等が挙げられる。
光硬化型インク組成物を吐出する手段としては、例えば、以下に説明するインクジェット記録装置を用いることができる。
図3は、本実施の形態に係るインクジェット記録方法に使用可能なインクジェット記録装置の斜視図である。
図3に示したインクジェット記録装置20は、記録媒体Pを副走査方向SSに送るモーター30と、プラテン40と、光硬化型インク組成物を微少粒径にしてヘッドノズルから噴射して記録媒体Pに吐出する記録ヘッドとしての印刷ヘッド52と、該印刷ヘッド52
を搭載したキャリッジ50と、キャリッジ50を主走査方向MSに移動させるキャリッジモーター60と、印刷ヘッド52によって光硬化型インク組成物を吐出した記録媒体P上のインク付着面に光を照射する一対の光照射装置90A、90Bとを備えている。
キャリッジ50は、キャリッジモーター60に駆動される牽引ベルト62によって牽引され、ガイドレール64に沿って移動する。
図3に示した印刷ヘッド52は、3色以上のインクを噴射するフルカラー印刷用のシリアル型ヘッドであり、各色ごとに多数のヘッドノズルが備えられている。かかる印刷ヘッド52が搭載されるキャリッジ50には、前記印刷ヘッド52の他に、印刷ヘッド52に供給される黒色インクを収容したブラックインク容器としてのブラックカートリッジ54と、印刷ヘッド52に供給されるカラーインクを収容したカラーインクとしてのカラーインクカートリッジ56とが搭載されている。各カートリッジ54、56に収容されているインクは、前述した光硬化型インク組成物である。
キャリッジ50のホームポジション(図3の右側の位置)には、停止時に印刷ヘッド52のノズル面を密閉するためのキャッピング装置80が設けられている。印刷ジョブが終了してキャリッジ50がこのキャッピング装置80の上まで到達すると、図示しない機構によってキャッピング装置80が自動的に上昇して、印刷ヘッド52のノズル面を密閉する。このキャッピングにより、ノズル内のインクの乾燥が防止される。キャリッジ50の位置決め制御は、例えば、このキャッピング装置80の位置にキャリッジ50を正確に位置決めするために行われる。
このようなインクジェット記録装置20を使用することにより、記録媒体上に光硬化型インク組成物を吐出することができる。また、インクジェット記録装置20によれば、工程(a)と工程(b)とを別個の装置で行うことなく、工程(a)と工程(b)とを一の装置で連続的に行うことが可能となる。
2.2.工程(b)
本工程は、吐出された光硬化型インク組成物に対して、光源から380nm以上430nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する光を照射する工程である。本工程によれば、記録媒体上に吐出された光硬化型インク組成物に特定波長の光を照射することにより、該光硬化型インク組成物が硬化されて、記録媒体上に画像を記録することができる。
以下、前述したインクジェット記録装置20を用いて、工程(b)を行う場合について詳細に説明する。
図4は、図3に示した光照射装置90A(図4の190Aに相当)、90B(図4の190Bに相当)の正面図である。図5は、図4のA−A矢視図である。
図3ないし図5に示すように、光照射装置190A、190Bは、キャリッジ50の移動方向に沿った両側端にそれぞれ取り付けられている。
図4に示すように、印刷ヘッド52の向かって左側に取り付けられた光照射装置190Aは、キャリッジ50が右方向(図4の矢印B方向)に移動する右走査時に、記録媒体P上に吐出されたインク層196に対して光照射を行う。一方、印刷ヘッド52の向かって右側に取り付けられた光照射装置190Bは、キャリッジ50が左方向(図4の矢印C方向)に移動する左走査時に、記録媒体P上に吐出されたインク層196に対して光照射を行う。
各光照射装置190A、190Bは、キャリッジ50に取り付けられて、光源192をそれぞれ1個ずつ整列支持した筐体194と、光源192の発光および消灯を制御する(図示しない)光源制御回路とを備えている。図4および図5に示すように、光照射装置190A、190Bには、光源192がそれぞれ1個ずつ設けられているが2個以上設けてもよい。光源192としては、LEDまたはLDのいずれかを使用することが好ましい。これにより、光源として水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、その他のランプ類を使用した場合と比較して、フィルター等の装備のために光源が大型化することを回避することができる。また、フィルターによる吸収で出射された光強度が低下することがなく、光硬化型インク組成物を効率良く硬化させることができる。
また、各光源192は、出射される波長が同じものでもよいし、異なっていてもよい。光源192としてLEDまたはLDを使用する場合、出射される光の発光ピーク波長は380〜430nm程度の範囲のいずれかとすればよい。下限値を380nmに設定した理由は、前述したように無機系紫外線吸収剤の紫外線吸収領域が380nm以下であるため、380nm以下の発光ピーク波長を有する光を照射しても硬化反応が円滑に進行しない場合があるからである。
以上に説明した光照射装置190A、190Bによれば、図4に示すように、印刷ヘッド52からの吐出で記録媒体P上に付着させたインク層196に対して、印刷ヘッド52近傍の記録媒体P上を照射する光源192により光192aが照射され、インク層196の表面および内部を硬化させることができる。
光の照度は、記録媒体P上に付着させたインク層196の厚さにより異なるため厳密には特定できず、適宜好ましい条件を選択するものではあるが、前述した光硬化型インク組成物を用いているので、10〜2000mW/cm程度の照度で十分に硬化させることができる。
インクジェット記録装置20によれば、光硬化型インク組成物の粘度が低く、インク層の膜厚が比較的薄いフルカラー印刷時においても、記録媒体P上に吐出された複数の光硬化型インク組成物を滲みや色混じりという不具合を生じることなく、良好に硬化させることができる。
なお、インクジェット記録装置20の構成は、前述した記録ヘッド、キャリッジおよび光源等の構成に限定されるものではなく、本実施の形態に係るインクジェット記録方法の趣旨に基づいて種々の形態を採用することができる。
3.記録物
本発明の一実施形態に係る記録物は、前述したインクジェット記録方法によって記録されたものである。記録媒体上に記録した画像は、インクジェット記録方法によって記録されたものであるから5〜20μm程度の膜厚となるにもかかわらず、紫外線による変退色を効果的に防止することができる。
また、太陽光や人工光に含まれる紫外線によって劣化しやすい材料を記録媒体として用いる場合には、該記録媒体上に前述した光硬化型インク組成物の画像を記録することで、該記録媒体の劣化を防ぎ、記録媒体の寿命を延ばすことができる。
透明プラスチックフィルムを記録媒体として用いる場合には、該記録媒体上に前述した光硬化型インク組成物の画像を記録することで、紫外線遮断機能を有するフィルムを作製することができる。
無機系紫外線吸収剤として酸化亜鉛粒子を用いる場合には、記録媒体上に前述した光硬化型インク組成物の画像を記録することで、紫外線吸収効果に加えて、防菌・防黴・防臭効果をさらに記録物に付与することができる。
4.実施例
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
4.1.光硬化型インク組成物の調製
表1に記載の組成となるように、重合性化合物、光重合開始剤、スリップ剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤を混合し完全に溶解させた後、常温で1時間混合撹拌し、さらに5μmのメンブランフィルターでろ過して、実施例1〜5および比較例1〜2の光硬化型クリアインク組成物を得た。
なお、表中で使用した成分は、下記のとおりである。
・フェノキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社、商品名「V#192」)・ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(ダイセル・サイテック株式会社製、商品名「EBECRYL IRR214K」)
・エポキシアクリレート(SARTOMER社、商品名「CN120」)
・IRGACURE 819(チバ・ジャパン株式会社製、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、光重合開始剤)
・DAROCUR TPO(チバ・ジャパン株式会社製、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、光重合開始剤)
・BYK−UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、スリップ剤)
・ハイドロキノンモノメチルエーテル(関東化学株式会社製、商品名「p−メトキシフェノール」、重合禁止剤)
・ZnO−310Si(4)G(住友大阪セメント株式会社製、無機系紫外線吸収剤)
・TINUVIN 479(チバ・ジャパン株式会社製、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、有機系紫外線吸収剤)
上記「ZnO−310Si(4)G」は、シリコーン4wt%で表面処理された酸化亜鉛粒子である。「ZnO−310Si(4)G」の一部を採取し、動的光散乱法を測定原理とする粒子径分布測定装置(大塚電子株式会社製、形式「DLS−8000」)で測定したところ、平均一次粒径が20nmであった。
4.2.記録物の作製
インクジェットプリンターPX−G5000(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記光硬化型インク組成物をそれぞれのノズル列に充填した。常温、常圧下でPVCフィルム(リンテック株式会社製、商品名「PVC80M」)上に、インクのドット径が中ドットで印刷物の膜厚が10μmとなるようなベタパターン画像を印刷すると共に、キャリッジの横に搭載した紫外線照射装置内のUV−LEDから照射強度がそれぞれ60mW/cmの365nm、395nmの2波長の紫外線を照射した。なお、積算照射エネルギーがタックフリーとなるエネルギー量の約1.5倍となるように設定することにより、ベタパターン画像を完全に硬化させた。以上のようにして、PVCフィルム上にベタパターン画像が印刷された記録物を作製した。
4.3.評価試験
得られた記録物について、下記の評価試験を行った。なお、下記の評価試験は、全て室温環境下で行った。
4.3.1.耐光性の評価
前記「4.2.記録物の作製」で得られた記録物を、Xeフェードメーター(スガ試験機株式会社製、商品名「XL75」)にて、光照度50W/mの環境下に2週間放置した。その放置前後のLの値を、グレタグマクベス社製の測色計「Spectrolino」を用いて測定し、その値の変化(ΔE)を求めた。なお、評価基準の分類については、以下の通りである。この評価試験では、「AA」評価または「A」評価である場合に良好であると判断した。
「AA」:ΔEが0以上3.0未満であった。
「A」 :ΔEが3.0以上6.0未満であった。
「B」 :ΔEが6.0以上9.0未満であった。
「C」 :ΔEが9.0以上12.0未満であった。
「D」 :ΔEが12.0以上であった。
4.3.2.相溶性の評価
前記「4.1.光硬化型インク組成物の調製」において、5μmのメンブランフィルターで濾過したときに濾紙上に溶質の溶け残りがあるかどうかを目視により確認することにより相溶性の評価を行った。なお、評価基準の分類については、以下の通りである。この評価試験では、「A」評価である場合に良好であると判断した。
「A」 :溶け残りが全く認められなかった。
「B」 :溶け残りがわずかに認められた。
「C」 :溶け残りが完全に認められた。
4.4.評価結果
以上の評価試験の結果について、表1に併せて記載した。
Figure 0006256726
実施例1〜5の光硬化型クリアインク組成物によれば、いずれのインクを用いても変退色が低減された画像をPVCフィルム上に記録することができた。また、実施例1〜5の結果から、無機系紫外線吸収剤の含有量が増加するにつれて、画像の変退色がより低減できる傾向が認められた。但し、実施例5の光硬化型クリアインク組成物は、無機系紫外線
吸収剤の含有量が多すぎたため、インク中に何らかの溶質の溶け残りがわずかに認められた。すなわち、実施例5の光硬化型クリアインク組成物は、製品上好ましくない状態であった。実施例4および実施例5の結果から、無機系紫外線吸収剤の含有量(固形分濃度)は、5質量%以下であることが好ましいことが判った。
比較例1の光硬化型クリアインク組成物によれば、紫外線吸収剤を全く含有していないので、耐光性試験の評価がD評価となった。
比較例2の光硬化型クリアインク組成物によれば、無機系紫外線吸収剤を含有せずに有機系紫外線吸収剤のみを含有しているため、耐光性試験の評価がB評価となった。以上の結果より、無機系紫外線吸収剤は、有機系紫外線吸収剤よりも紫外線吸収能に優れていることが判った。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
20…インクジェット記録装置、30…モーター、40…プラテン、50…キャリッジ、52…印刷ヘッド(記録ヘッド)、54…ブラックインクカートリッジ、56…カラーインクカートリッジ、60…キャリッジモーター、62…牽引ベルト、64…ガイドレール、80…キャッピング装置、90A(190A)、90B(190B)…光照射装置、192…光源、192a…光、194…筐体、196…インク層、P…記録媒体

Claims (12)

  1. (a)記録媒体上に、重合性化合物と、光重合開始剤と、平均一次粒径が1nm以上50nm以下の無機系紫外線吸収剤とを少なくとも含有し、前記無機系紫外線吸収剤の含有量が0.1質量%以上5質量%以下であるインクジェット記録用光硬化型インク組成物を吐出する工程と、
    (b)吐出されたインクジェット記録用光硬化型インク組成物に対して、光源から380nm以上430nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する光を照射する工程と、
    を含み、
    前記重合性化合物の含有量が、該インク組成物の全質量に対して、20質量%以上である、インクジェット記録方法。
  2. 請求項1において、
    前記無機系紫外線吸収剤が、酸化亜鉛、酸化セリウムおよびルチル型酸化チタンから選択される少なくとも1種を主成分とする粒子である、インクジェット記録方法。
  3. 請求項1または請求項2において、
    前記光重合開始剤が、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドおよび2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドから選択される少なくとも1種である、インクジェット記録方法。
  4. 請求項1ないし請求項のいずれか一項において、
    前記重合性化合物として、フェノキシエチル(メタ)アクリレートを20質量%以上70質量%以下含有する、インクジェット記録方法。
  5. 請求項1ないし請求項のいずれか一項において、
    前記重合性化合物として、脂環式構造を有するジ(メタ)アクリレートを10質量%以上15質量%以下含有する、インクジェット記録方法。
  6. 請求項1ないし請求項のいずれか一項において、
    前記重合性化合物として、エポキシ(メタ)アクリレートを5質量%以上10質量%以下含有する、インクジェット記録方法。
  7. 請求項1ないし請求項のいずれか一項において、
    測定温度20℃における粘度が8mPa・s以上40mPa・s以下であり、かつ、測定温度20℃における表面張力が20mN/m以上30mN/m以下である、インクジェット記録方法。
  8. 請求項1ないし請求項のいずれか一項において、
    前記インクジェット記録用光硬化型インク組成物がクリアインクである、インクジェット記録方法。
  9. 請求項1ないし請求項のいずれか一項において、
    前記重合性化合物の含有量が、該インク組成物の全質量に対して、95質量%以下である、インクジェット記録方法。
  10. 請求項1ないし請求項のいずれか一項において、
    前記インクジェット記録用光硬化型インク組成物が水を含有しない、インクジェット記録方法。
  11. 請求項1ないし請求項10のいずれか一項において、
    前記無機系紫外線吸収剤は380nm以上の光を80%以上透過する、インクジェット記録方法。
  12. 重合性化合物と、光重合開始剤と、平均一次粒径が1nm以上50nm以下の無機系紫外線吸収剤とを含有し、前記無機系紫外線吸収剤の含有量が0.1質量%以上5質量%以下であり、
    前記重合性化合物の含有量が、インク組成物の全質量に対して、20質量%以上である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物。
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