JP6390769B2 - インクジェット記録方法、インクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

本発明は、放射線硬化型インク組成物、ならびにそれを用いたインクジェット記録方法および記録物に関する。
近年、紫外線、電子線その他の放射線によって硬化する放射線硬化型インクの開発が進められている。このような放射線硬化型インクは、プラスチック、ガラス、コート紙等のインクを吸収しないまたはほとんど吸収しない非吸収メディアに対する記録において、速乾性があり、かつ、インクの滲みを防止した記録を実現することができる。このような放射線硬化型インクは、重合性モノマー、重合開始剤、顔料その他の添加剤等から構成されている。
ところで、ポリエチレンテレフタレート樹脂や塩化ビニル樹脂等の柔軟性を有する記録媒体上に画像が記録された記録物は、例えば車体のような曲面を有する物品に貼付されることがある。このような用途では、前記記録物を引き延ばして物品に貼付することが通常であるため、記録媒体上に記録された画像は、引き延ばしてもクラックや剥がれを生じることなく100%以上の伸張度を有し、かつ、その伸張度における耐久性を備えていることが望ましい。
従来の放射線硬化型インクは、100%以上の伸張度を有する柔軟な画像を記録するために、長鎖アルキルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレートのエチレンオキサイド付加物、アクリル化アミン化合物等の重合性モノマーを使用していた(例えば、特許文献1〜4参照)。
特開2006−199924号公報 特開2007−131754号公報 特開2008−7687号公報 特開2009−35650号公報
しかしながら、前述したような100%以上の伸張度を有する柔軟な画像を記録し得る放射線硬化型インクの中でもブラックインクやイエローインク(特にブラックインク)では、記録された画像の表面に凝集斑(光沢ムラ)が発生する場合があった。このような現象は、シアンインクやマゼンタインクでは発生せず、ブラックインクやイエローインクに特有のものである。
また、前述したような特定の重合性モノマーを含有する放射線硬化型インクを用いて記録した画像であっても、記録媒体ごと(例えば、伸張度100%)伸張した状態で保持していると、数時間以内にクラックが発生し、さらには該画像が記録媒体から剥がれてしまう等の問題があった。
本発明に係る幾つかの態様は、前記課題を解決することで、記録した画像において柔軟性に優れると共に、その画像の表面の凝集斑(光沢ムラ)の発生を抑制することができるブラック/イエローの放射線硬化型インク組成物を提供するものである。
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係る放射線硬化型インク組成物の一態様は、
(A)反応成分中に20質量%以上55質量%以下のフェノキシエチルアクリレートと、
(B)反応成分中に20質量%以上50質量%以下の多官能アクリレートと、
(F1)ブラック顔料と、を含有することを特徴とする。
[適用例2]
本発明に係る放射線硬化型インク組成物の一態様は、
(A)反応成分中に20質量%以上55質量%以下のフェノキシエチルアクリレートと、
(B)反応成分中に10質量%以上50質量%以下の多官能アクリレートと、
(F2)イエロー顔料と、を含有することを特徴とする。
適用例1または適用例2の放射線硬化型インク組成物によれば、前述した成分の組合せにより、記録した画像において柔軟性に優れると共に、その画像の表面の凝集斑(光沢ムラ)の発生を抑制することができる。
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記(B)多官能アクリレートは、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートおよびプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートから選択される少なくとも1種であることができる。
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、
さらに、反応成分中に(C)N−ビニルカプロラクタムを含有することができる。
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例において、
さらに、反応成分中に(D)アミノアクリレートを含有することができる。
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか一例において、
さらに、反応成分中に(E)脂環式構造を有する単官能アクリレートを含有することができる。
[適用例7]
適用例6において、
前記(E)脂環式構造を有する単官能アクリレートは、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレートおよびジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートから選択される少なくとも1種であることができる。
[適用例8]
適用例1ないし適用例7のいずれか一例において、
測定温度20℃における粘度は、10mPa・s以上40mPa・s以下であり、かつ、測定温度20℃における表面張力は、20mN/m以上30mN/m以下であることができる。
[適用例9]
本発明に係るインクジェット記録方法の一態様は、
(a)記録媒体上に適用例1ないし適用例8のいずれか一項に記載の放射線硬化型インク組成物を吐出する工程と、
(b)吐出された放射線硬化型インク組成物に対して、活性放射線光源から350nm以上400nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する活性放射線を照射する工程と、を含むことを特徴とする。
[適用例10]
本発明に係る記録物の一態様は、
適用例9に記載のインクジェット記録方法によって記録されたことを特徴とする。
本実施の形態に係るインクジェット記録方法に使用可能なインクジェット記録装置の斜視図。 図1に示した活性放射線照射装置の正面図。 図2のA−A矢視図。
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。なお、本発明において「画像」とは、ドット群から形成される印字パターンを示し、テキスト印字、ベタ印字も含める。
1.放射線硬化型インク組成物
本発明に係る放射線硬化型インク組成物は、以下の二つの態様を有する。
本発明の一実施形態に係る放射線硬化型(ブラック)インク組成物は、(A)反応成分中に20質量%以上55質量%以下のフェノキシエチルアクリレートと、(B)反応成分中に20質量%以上50質量%以下の多官能アクリレートと、(F1)ブラック顔料と、を含有することを特徴とする。
本発明の一実施形態に係る放射線硬化型(イエロー)インク組成物は、(A)反応成分中に20質量%以上55質量%以下のフェノキシエチルアクリレートと、(B)反応成分中に10質量%以上50質量%以下の多官能アクリレートと、(F2)イエロー顔料と、を含有することを特徴とする。
以下、それぞれの実施の形態に用いられる各成分について詳細に説明する。
1.1.反応成分
本発明において「反応成分」とは、ポリマーを形成するために用いられる重合性モノマーのことをいい、これ以外の顔料、分散剤、光重合開始剤、スリップ剤等の添加剤を含まない。以下、本実施の形態に用いられる反応成分について詳細に説明する。
1.1.1.(A)フェノキシエチルアクリレート
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、反応成分中に20質量%以上55質量%以下の(A)フェノキシエチルアクリレートを含有する。本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、所定量の(A)成分を含有することにより、記録媒体上に記録した画像の柔軟性を向上させることができる。
(A)成分は、後述する光重合開始剤を溶解するための溶媒としても機能する。なお、(A)成分は、他のアクリレートモノマーに対する希釈性も良好であり、他のアクリレートモノマーが有する機能を阻害することがない。
(A)成分の含有量は、反応成分の全質量を100質量%とした場合、20質量%以上55質量%以下であり、好ましくは25質量%以上55質量%以下であり、より好ましくは40質量%以上55質量%以下である。反応成分中における(A)成分の含有量が前記範囲内であると、記録媒体上に記録した画像は、柔軟で伸張度が大きなものとなり、かつ、記録媒体ごと伸張した状態で保持していても画像にクラックや剥がれが発生しない。反応成分中における(A)成分の含有量が20質量%未満であると、記録媒体上に記録した画像の伸張度が小さくなるため、画像にクラックや剥がれが発生しやすくなり、該画像の伸張耐久性も著しく低下する。また、後述する光重合開始剤をインク組成物中に完全に溶解できない場合がある。一方、55質量%を超えると、記録媒体上に記録した画像の硬化性が損なわれる場合がある。また、相対的に(B)成分の含有量が減少するので、記録媒体上に記録した画像の表面に凝集斑(光沢ムラ)が発生する場合がある。
1.1.2.(B)多官能アクリレート
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、ブラック顔料を使用する場合には、反応成分中に20質量%以上50質量%以下の(B)多官能アクリレートを含有する。また、イエロー顔料を使用する場合には、10質量%以上50質量%以下の(B)多官能アクリレートを含有する。本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、所定量の(B)成分を含有することにより、記録媒体上に記録した画像の表面の凝集斑(光沢ムラ)の発生を抑制することができる。
記録媒体上に記録した画像の表面の凝集斑(光沢ムラ)が発生するメカニズムは、次のように考えられる。ブラック顔料やイエロー顔料は、シアン顔料やマゼンタ顔料等の他の顔料に比べて活性放射線(特に紫外領域)の一部を吸収してしまう傾向が強い。そうすると、ブラックインクやイエローインクでは、活性放射線を照射しても記録媒体上に吐出した塗膜を完全に硬化させるのに必要なエネルギーが不足するため、塗膜の表面近傍のみが硬化して、その塗膜の内部の硬化が不完全となったり、硬化に時間を要したりする場合がある。この塗膜の内部に存在する未硬化のインク組成物が硬化する前に不規則に流動するなどすることにより、凝集斑(光沢ムラ)が発生するものと考えられる。このような凝集斑(光沢ムラ)が発生する傾向は、特にブラック顔料を使用したブラックインクで顕著である。
(B)多官能アクリレートは、記録媒体上に吐出した塗膜の反応性を高めるための架橋剤としての機能を有するため、ブラックインクやイエローインクの塗膜に対する反応性を高めることができる。これにより、本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物によって記録媒体上に記録した画像の表面の凝集斑(光沢ムラ)の発生を抑制できるものと考えられる。
(B)多官能アクリレートとしては、二官能アクリレート、三官能アクリレート、四官能アクリレート等が挙げられる。
二官能アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリイソプロピレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、ポリ(ブタンジオール)ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート等が挙げられる。
三官能アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
四官能アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
前記例示した二官能アクリレート、三官能アクリレート、四官能アクリレートは、1種単独で用いることもできるし、2種以上併用して用いてもよい。
前記例示した多官能アクリレートの中でも、記録媒体上に記録した画像の柔軟性の観点から二官能アクリレートであることが好ましく、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートがより好ましい。
(B)多官能アクリレートの含有量は、反応成分の全質量を100質量%とした場合、ブラック顔料を使用したブラックインクでは、20質量%以上50質量%以下であり、好ましくは30質量%以上50質量%以下である。前述したように、凝集斑(光沢ムラ)が発生する傾向は、特にブラックインクで顕著である。そのため、ブラックインクでは、(B)成分を少なくとも20質量%以上必要とする。反応成分中における(B)多官能アクリレートの含有量が20質量%未満では、記録媒体上に記録した画像の表面に凝集斑(光沢ムラ)が発生する場合がある。さらに、記録媒体上に記録した画像の耐擦性が悪くなる傾向がある。一方、50質量%を超えると、記録媒体上に記録した画像の柔軟性に優れなくなる傾向があり、記録媒体上に記録した画像にクラックや剥がれが発生しやすくなる。また、放射線硬化組成物の粘度を上昇させてしまうため、インクジェットプリンターのノズルにおいて目詰まり等を生じさせやすくする傾向がある。
一方、(B)多官能アクリレートの含有量は、反応成分の全質量を100質量%とした場合、イエロー顔料を使用したイエローインクでは、10質量%以上50質量%以下であり、好ましくは20質量%以上50質量%以下である。前述したように、凝集斑(光沢ムラ)が発生する傾向は、ブラックインクよりもイエローインクの方が小さいことが確認されている。そのため、(B)成分の含有量は、少なくとも10質量%以上であれば足りる。(B)成分の含有量が前記範囲外の場合は、前述したブラックインクと同様の傾向となる。
1.1.3.(C)N−ビニルカプロラクタム
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、さらに反応成分中に(C)N−ビニルカプロラクタムを含有してもよい。本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、反応成分中に(C)N−ビニルカプロラクタムを含有することにより、記録媒体とその上に記録した画像との密着性を向上させることができる。また、(C)N−ビニルカプロラクタムは、良好な硬化性を有しており、他のアクリレートモノマーに対する希釈性も良好であり、他のアクリレートモノマーが有する機能を阻害することがない。
(C)N−ビニルカプロラクタムの含有量は、反応成分の全質量を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上15質量%以下である。反応成分中における(C)N−ビニルカプロラクタムの含有量が5質量%未満であると、記録媒体とその上に記録した画像との密着性に優れない場合がある。一方、20質量%を超えると、放射線硬化型インク組成物の保存安定性に優れない場合があるため、製品としての使用に適さないことがある。
1.1.4.(D)アミノアクリレート
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、さらに反応成分中に(D)アミノアクリレートを含有してもよい。本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、反応成分中に(D)アミノアクリレートを含有することにより、記録媒体上に吐出された塗膜の共重合反応を促進させることができる。具体的な作用効果の一例は、反応成分中に所定量の(D)アミノアクリレートと、後述する重合開始剤と、を含有することにより、350〜400nmの範囲に極大発光波長を有する活性放射線を照射して硬化させるのに必要なエネルギー量を低減させることができる。これにより、LEDのような低エネルギーの光源を用いて活性放射線を照射した場合であっても速やかに硬化させることが可能となる。なお、本発明において「硬化する」とは、指で記録物に触れたときにべとつきが感じられなくなること、いわゆるタックフリーとなることをいう。
(D)アミノアクリレートの製品としては、例えば、EBECRYL 7100(ダイセル・サイテック株式会社製)、CN371(サートマー社製)等が挙げられる。
(D)アミノアクリレートの含有量は、反応成分の全質量を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上5質量%以下である。反応成分中における(D)アミノアクリレートの含有量が1質量%未満では、共重合反応が円滑に進行せず、記録媒体上に記録した画像の硬化性が不十分となることがある。一方、5質量%を超えても、共重合反応を促進させる効果の向上が見られず、過剰添加となり好ましくない。また、インク組成物の粘度が上昇し、インクジェット記録装置におけるインクの吐出安定性を損なう場合があり、記録媒体上に記録した画像が黄色へと変色する場合がある。
1.1.5.(E)脂環式構造を有する単官能アクリレート
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、さらに反応成分中に(E)脂環式構造を有する単官能アクリレートを含有してもよい。本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、反応成分中に(E)脂環式構造を有する単官能アクリレートを含有することにより、放射線硬化型インク組成物の粘性をインクジェット記録方式に適した低い値(20℃/10mPa・s以上40mPa・s以下)に調節することができる。単官能アクリレートは、総じて粘度が低いからである。さらに嵩高い脂環式構造を有することで、記録媒体上に記録した画像に強靱性を付与することができ、これにより耐擦性を向上させることもできる。
(E)脂環式構造を有する単官能アクリレートとしては、例えば、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリメチロールプロパンフォルマルモノアクリレート、アダマンチルアクリレート、オキセタンアクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサンアクリレート等が挙げられる。これらの単官能アクリレートモノマーは、1種単独で用いることもできるし、2種以上併用して用いてもよい。
(E)脂環式構造を有する単官能アクリレートの含有量は、反応成分の全質量を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上50質量%以下である。反応成分中における(E)脂環式構造を有する単官能アクリレートの含有量が5質量%未満であると、インク組成物の粘度が上昇し、インクジェット記録装置におけるインクの吐出安定性を損なう場合がある。一方、50質量%を超えると、相対的に(A)成分の含有量が減少する場合には記録媒体上に記録された画像の柔軟性に優れなくなる傾向があり、記録媒体上に記録した画像にクラックが発生しやすくなる。また、相対的に(B)成分の含有量が増加する場合には、記録媒体上に記録した画像の表面に凝集斑(光沢ムラ)が発生する場合がある。
1.2.(F1)ブラック顔料/(F2)イエロー顔料
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、前述した反応成分の他に、ブラック顔料およびイエロー顔料から選択される1種を含有する。
本実施の形態で使用可能なブラック顔料としては、カーボンブラック等がある。カーボンブラックとしては、C.I.ピグメントブラック7が挙げられ、具体的には三菱化学株式会社から入手可能なNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等が、コロンビアケミカルカンパニー社から入手可能なRaven5750、同5250、同5000、同3500、同1255、同700等が、また、キャボット社から入手可能なRegal400R、同330R、同660R、MogulL、同700、Monarch800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、同1400等が、さらに、デグッサ社から入手可能なColorBlackFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、ColorBlackS150、同S160、同S170、Printex35、同U、同V、同140U、SpecialBlack6、同5、同4A、同4等が、さらにチバ・ジャパン株式会社から入手可能なMicrolith Black C−K等が挙げられる。
また、本実施の形態に使用可能なイエロー顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、180、185、213等が挙げられる。
本実施の形態で使用可能な顔料の平均粒子径は、好ましくは10nm〜200nmの範囲であり、より好ましくは50nm〜150nmの範囲である。
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物に添加し得る顔料の添加量は、好ましくは反応成分100質量部に対して0.1質量部〜25質量部であり、より好ましくは0.5質量部〜15質量部である。
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、前述した顔料の分散性を高める目的で分散剤を添加してもよい。本実施の形態で使用可能な分散剤としては、Solsperse3000、5000、9000、12000、13240、17000、24000、26000、28000、36000(以上、ルーブリゾール社製)、ディスコールN−503、N−506、N−509、N−512、N−515、N−518、N―520(以上、第一工業製薬株式会社製)等の高分子分散剤が挙げられる。
1.3.光重合開始剤
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、前述した反応成分の他に、さらに光重合開始剤を含有してもよい。光重合開始剤とは、記録媒体の上に吐出された放射線硬化型インク組成物に活性放射線を照射することによって、前述した反応成分の共重合反応を開始させる機能を有する化合物の総称である。
光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等の公知の光重合開始剤が挙げられる。これらの中でも、前述した反応成分との相溶性に優れた2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、広域な吸光特性を有するビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等の分子開裂型や、ジエチルチオキサントン等の水素引き抜き型が好ましい。アシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤が好ましい理由は、光開裂の前後で発色団の構造が大きく変化するため吸収の変化が大きく、フォトブリーチング(光退色)と呼ばれる吸収の減少が見られるからである。また、吸収がUV領域からVL領域まで及ぶにもかかわらず黄変が起こりにくく、内部硬化にも優れているからである。このため、透明な厚膜や隠蔽力の大きい顔料入り塗膜に対して特に好ましい。チオキサントン系の光重合開始剤が好ましい理由は、光開裂後の反応系内に残存する酸素と反応して系内の酸素の濃度を下げる作用があるからである。酸素濃度が下がる分だけ、ラジカル重合阻害の程度が低減できるので、表面硬化性を改善することができる。さらにアシルフォスフィン系の光重合開始剤とチオキサントン系の光重合開始剤とを併用するのが特に好ましい。これらの光重合開始剤は、1種単独で用いることもできるが、2種以上組み合わせて用いることによりそれぞれの特性を最大限に引き出すことが可能となる。
光重合開始剤の含有量は、反応成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上20質量部以下、より好ましくは5質量部以上15質量部以下である。反応100質量部に対して1質量部未満であると、光重合開始剤の機能が発揮されない場合があり、記録媒体の上に記録した画像の硬化性が不十分となることがある。一方、20質量部を超えても、前述した反応成分の共重合反応を開始させる効果の向上が見られず、過剰添加となり好ましくない。
1.4.その他の添加剤
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、必要に応じて、前述した反応成分以外の反応成分、スリップ剤、重合禁止剤等の添加剤を含有してもよい。
なお、本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、有機溶剤を含有せず、無溶剤の放射線硬化型インク組成物であることが好ましい。
前述した反応成分以外の反応成分としては、例えば、以下に示すようなガラス転移点が0℃以下のアクリレートモノマーが好ましい。記録媒体上に記録された画像の柔軟性を損なわないからである。
<長鎖アルキルアクリレート>
長鎖アルキルアクリレートとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、n−デシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、n−トリデシルアクリレート、n−セチルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート等が挙げられる。
<ポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシド付加単官能アクリレート>
ポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシド付加単官能アクリレートとしては、例えば、(ポリ)エチレングリコールモノアクリレート、(ポリ)エチレングリコールアクリレートメチルエステル、(ポリ)エチレングリコールアクリレートエチルエステル、(ポリ)エチレングリコールアクリレートフェニルエステル、(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレートフェニルエステル、(ポリ)プロピレングリコールアクリレートメチルエステル、(ポリ)プロピレングリコールアクリレートエチルエステル、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート等が挙げられる。
<フェノキシエチルアクリレート変性品>
フェノキシエチルアクリレート変性品としては、例えば、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ノニルフェノールEO付加物アクリレート等が挙げられる。
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、スリップ剤を添加してもよい。本実施の形態で使用可能なスリップ剤としては、好ましくはシリコーン系界面活性剤であり、より好ましくはポリエステル変性シリコーンまたはポリエーテル変性シリコーンである。具体的には、ポリエステル変性シリコーンとしては、BYK−347、同348、BYK−UV3500、同3510、同3530(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられ、ポリエーテル変性シリコーンとしては、BYK−3570(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物は、重合禁止剤を添加してもよい。本実施の形態で使用可能な重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール等が挙げられる。
1.5.物性
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物の20℃における粘度は、好ましくは10〜40mPa・sであり、より好ましくは15〜25mPa・sである。放射線硬化型インク組成物の20℃における粘度が前記範囲内にあると、ノズルから放射線硬化型インク組成物が適量吐出され、放射線硬化型インク組成物の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。なお、粘度は、粘弾性試験機MCR−300(Pysica社製)を用いて、20℃の環境下でShear Rateを10〜1000に上げていき、Shear Rate200時の粘度を読み取ることにより測定することができる。
本実施の形態に係る放射線硬化型インク組成物の20℃における表面張力は、好ましくは20mN/m以上30mN/m以下である。放射線硬化型インク組成物の20℃における表面張力が前記範囲内にあると、放射線硬化型インク組成物が撥液処理されたノズルに濡れにくくなる。これにより、ノズルから放射線硬化型インク組成物が適量吐出され、放射線硬化型インク組成物の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。なお、表面張力は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面化学株式会社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
2.インクジェット記録方法
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法は、(a)記録媒体上に前述した放射線硬化型インク組成物を吐出する工程と、(b)吐出された放射線硬化型インク組成物に対して、活性放射線光源から350nm以上400nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する活性放射線を照射する工程と、を含むことを特徴とする。
以下、本実施の形態に係るインクジェット記録方法について各工程ごとに説明する。
2.1.工程(a)
本工程は、記録媒体上に前述した放射線硬化型インク組成物を吐出する工程である。
放射線硬化型インク組成物については、前述したとおりであるから、詳細な説明を省略する。
記録媒体としては、特に限定されないが、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート等のプラスチック類およびこれらの表面が加工処理されているもの、ガラス、コート紙等が挙げられる。
放射線硬化型インク組成物を吐出する手段としては、例えば、以下に説明するインクジェット記録装置を用いることができる。
図1は、本実施の形態に係るインクジェット記録方法に使用可能なインクジェット記録装置の斜視図である。
図1に示したインクジェット記録装置20は、記録媒体Pを副走査方向SSに送るモーター30と、プラテン40と、放射線硬化型インク組成物を微少粒径にしてヘッドノズルから噴射して記録媒体Pに吐出する記録ヘッドとしての印刷ヘッド52と、該印刷ヘッド52を搭載したキャリッジ50と、キャリッジ50を主走査方向MSに移動させるキャリッジモーター60と、印刷ヘッド52によって放射線硬化型インク組成物を吐出した記録媒体P上のインク付着面に活性放射線を照射する一対の活性放射線照射装置90A、90Bとを備えている。
キャリッジ50は、キャリッジモーター60に駆動される牽引ベルト62によって牽引され、ガイドレール64に沿って移動する。
図1に示した印刷ヘッド52は、3色以上のインクを噴射するフルカラー印刷用のシリアル型ヘッドであり、各色ごとに多数のヘッドノズルが備えられている。かかる印刷ヘッド52が搭載されるキャリッジ50には、前記印刷ヘッド52の他に、印刷ヘッド52に供給される黒色インクを収容したブラックインク容器としてのブラックカートリッジ54と、印刷ヘッド52に供給されるカラーインクを収容したカラーインクとしてのカラーインクカートリッジ56とが搭載されている。各カートリッジ54、56に収容されているインクは、前述した放射線硬化型インク組成物である。
キャリッジ50のホームポジション(図1の右側の位置)には、停止時に印刷ヘッド52のノズル面を密閉するためのキャッピング装置80が設けられている。印刷ジョブが終了してキャリッジ50がこのキャッピング装置80の上まで到達すると、図示しない機構によってキャッピング装置80が自動的に上昇して、印刷ヘッド52のノズル面を密閉する。このキャッピングにより、ノズル内のインクの乾燥が防止される。キャリッジ50の位置決め制御は、例えば、このキャッピング装置80の位置にキャリッジ50を正確に位置決めするために行われる。
このようなインクジェット記録装置20を使用することにより、記録媒体上に放射線硬化型インク組成物を吐出することができる。また、インクジェット記録装置20によれば、工程(a)と工程(b)とを別個の装置で行うことなく、工程(a)と工程(b)とを一の装置で連続的に行うことが可能となる。
2.2.工程(b)
本工程は、吐出された放射線硬化型インク組成物に対して、活性放射線光源から350nm以上400nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する活性放射線を照射する工程である。本工程によれば、記録媒体上に吐出された放射線硬化型インク組成物に特定波長の活性放射線を照射することにより、該放射線硬化型インク組成物が硬化されて、記録媒体上に画像を記録することができる。
以下、前述したインクジェット記録装置20を用いて、工程(b)を行う場合について詳細に説明する。
図2は、図1に示した活性放射線照射装置90A(図2の190Aに相当)、90B(図2の190Bに相当)の正面図である。図3は、図2のA−A矢視図である。
図1ないし図3に示すように、活性放射線照射装置190A、190Bは、キャリッジ50の移動方向に沿った両側端にそれぞれ取り付けられている。
図2に示すように、印刷ヘッド52の向かって左側に取り付けられた活性放射線照射装置190Aは、キャリッジ50が右方向(図2の矢印B方向)に移動する右走査時に、記録媒体P上に吐出されたインク層196に対して活性放射線照射を行う。一方、印刷ヘッド52の向かって右側に取り付けられた活性放射線照射装置190Bは、キャリッジ50が左方向(図2の矢印C方向)に移動する左走査時に、記録媒体P上に吐出されたインク層196に対して活性放射線照射を行う。
各活性放射線照射装置190A、190Bは、キャリッジ50に取り付けられて、活性放射線光源192をそれぞれ1個ずつ整列支持した筐体194と、活性放射線光源192の発光および消灯を制御する(図示しない)光源制御回路とを備えている。図2および図3に示すように、活性放射線照射装置190A、190Bには、活性放射線光源192がそれぞれ1個ずつ設けられているが2個以上設けてもよい。活性放射線光源192としては、LEDまたはLDのいずれかを使用することが好ましい。これにより、活性放射線光源として水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、その他のランプ類を使用した場合と比較して、フィルター等の装備のために活性放射線光源が大型化することを回避することができる。また、フィルターによる吸収で出射された活性放射線強度が低下することがなく、放射線硬化型インク組成物を効率良く硬化させることができる。
また、各活性放射線光源192は、出射される波長が同じものでもよいし、異なっていてもよい。活性放射線光源192としてLEDまたはLDを使用する場合、出射される活性放射線の発光ピーク波長は350〜400nm程度の範囲のいずれかとすればよい。
以上に説明した活性放射線照射装置190A、190Bによれば、図2に示すように、印刷ヘッド52からの吐出で記録媒体P上に付着させたインク層196に対して、印刷ヘッド52近傍の記録媒体P上を照射する活性放射線光源192により活性放射線192aが照射され、インク層196の表面および内部を硬化させることができる。
活性放射線の照射量は、記録媒体P上に付着させたインク層196の厚さにより異なるため厳密には特定できず、適宜好ましい条件を選択するものではあるが、前述した放射線硬化型インク組成物を用いているので、300〜1000mJ/cm2以下の照射量で十分に硬化させることができる。
インクジェット記録装置20によれば、放射線硬化型インク組成物の粘度が低く、インク層の膜厚が比較的薄いフルカラー印刷時においても、記録媒体P上に吐出された複数の放射線硬化型インク組成物を滲みや色混じりという不具合を生じることなく、良好に硬化させることができる。
なお、インクジェット記録装置20の構成は、前述した記録ヘッド、キャリッジおよび活性放射線光源等の構成に限定されるものではなく、本実施の形態に係るインクジェット記録方法の趣旨に基づいて種々の形態を採用することができる。
3.記録物
本発明の一実施形態に係る記録物は、前述したインクジェット記録方法によって記録されたものである。記録媒体の上に記録した画像は、前述した放射線硬化型インク組成物を用いて形成されたものであるから、柔軟性に優れると共に、その画像の表面における凝集斑(光沢ムラ)の発生を抑制することができる。
本実施の形態に係る記録物の用途は、特に限定されず、前述した記録媒体上に記録した画像として使用することができる。記録媒体の上に記録した画像は、柔軟性に優れていることから、屈曲または延伸加工性能が要求される物品に貼付する用途に特に適している。
4.実施例
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
4.1.顔料分散液の調製
4.1.1.ブラック顔料分散液の調製 着色剤としてブラック顔料(チバ・ジャパン株式会社製、商品名「Microlith Black C−K」)15質量部、分散剤としてSolsperse36000(LUBRIZOL社製)3質量部に、フェノキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社、商品名「V#192」)を加えて全体を100質量部とし、混合撹拌して混合物とした。この混合物を、サンドミル(安川製作所株式会社製)を用いて、ジルコニアビーズ(直径1.5mm)と共に6時間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズをセパレータで分離することにより、実施例および比較例で使用するブラック顔料分散液を得た。
4.1.2.イエロー顔料分散液の調製
着色剤としてイエロー顔料(チバ・ジャパン株式会社製、商品名「Cromophtal Yellow LA」)12質量部、分散剤としてSolsperse36000(LUBRIZOL社製)2.4質量部に、フェノキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社、商品名「V#192」)を加えて全体を100質量部とし、混合撹拌して混合物とした。この混合物を、サンドミル(安川製作所株式会社製)を用いて、ジルコニアビーズ(直径1.5mm)と共に6時間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズをセパレータで分離することにより、実施例および比較例で使用するイエロー顔料分散液を得た。
4.2.放射線硬化型インク組成物の調製
表1または表2に記載の組成となるように、反応成分、光重合開始剤、スリップ剤、重合禁止剤を混合し完全に溶解させた後、これに前記ブラック顔料分散液またはイエロー顔料分散液をそれぞれの顔料濃度が表1または表2に記載の濃度となるように撹拌しながら滴下した。滴下終了後、常温で1時間混合撹拌し、さらに5μmのメンブランフィルターでろ過して、各放射線硬化型インク組成物を得た。
なお、表中で使用した成分は、下記のとおりである。
・フェノキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「V#192」)
・テトラエチレングリコールジアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「V #335HP」)
・トリプロピレングリコールジアクリレート(新中村化学株式会社製、商品名「APG−200」)
・ジプロピレングリコールジアクリレート(新中村化学株式会社製、商品名「APG−100」)
・N−ビニルカプロラクタム(BASF社製、商品名「N−ビニルカプロラクタム」)
・アミノアクリレート(ダイセル・サイテック株式会社製、商品名「EBECRYL 7100」)
・ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業株式会社製、商品名「FA512AS」)
・イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「IBXA」)
・IRGACURE 819(チバ・ジャパン株式会社製、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、光重合開始剤)
・DAROCUR TPO(チバ・ジャパン株式会社製、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、光重合開始剤)
・DETX(日本化薬株式会社製、光増感剤)
・BYK−UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、スリップ剤)
・p−メトキシフェノール(関東化学株式会社製、重合禁止剤)
・カーボンブラック(チバ・ジャパン株式会社製、ブラック顔料)
・ピグメントイエロー180(チバ・ジャパン株式会社製、イエロー顔料)
・Solsperse36000(LUBRIZOL社製、分散剤)
4.3.記録物の作製
インクジェットプリンターPX−G5000(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記放射線硬化型インク組成物をそれぞれのノズル列に充填した。常温、常圧下でPVCフィルム(3M株式会社製、商品名「IJ180−10」)上に、インクのドット径が中ドットで印刷物の膜厚が10μmとなるようなベタパターン画像を印刷すると共に、キャリッジの横に搭載した紫外線照射装置内のUV−LEDから照射強度が100mW/cm2となるように385nmの波長で第1照射をしてから、照射強度が1000mW/cm2で積算光量が700mJ/cm2となるように395nmの波長で第2照射をしてベタパターン画像を硬化させた。以上のようにして、PVCフィルム状にベタパターン画像が印刷された記録物を作製した。
4.4.評価試験
得られた記録物について、下記の評価試験を行った。なお、下記の評価試験は、全て室温環境下で行った。
4.4.1.凝集斑(光沢ムラ)の評価
得られた記録物について目視により凝集斑(光沢ムラ)の有無の評価を行った。なお、評価基準の分類については、以下のとおりである。
A:記録物の表面に凝集斑が発生せず、その表面に光沢が認められた。
B:記録物の表面にわずかに凝集斑が発生し、その表面に光沢ムラが認められた。
C:記録物の表面にはっきりとした凝集斑が発生し、その表面に光沢ムラが認められた。
なお、凝集斑(光沢ムラ)の評価では、分類Aであることが好ましい。
4.4.2.柔軟性の評価
まず、前記記録物を所定の大きさ(このときの長さをL0とする。)にカットし、引張試験機(A&D株式会社製)にセットした。引張試験機の引張速度を100mm/分と設定し、前記記録物を引張試験機により引っ張り、前記記録物にクラックまたは剥がれ(以下、「クラック等」という。)が発生した時点を目視により確認した。引張開始時からクラック等が発生した時点までの時間から引っ張られた記録物の長さを算出し、これをL1とした。下記式(1)からPVCフィルム上に形成された画像のクラック等発生伸度(%)を算出し、記録物の柔軟性について評価した。
画像のクラック等発生伸度(%)={(L1−L0)/L0}×100 …(1)
なお、評価基準の分類については、以下のとおりである。
AAA:前記伸度が180%以上である。
AA :前記伸度が160%以上180%未満である。
A :前記伸度が140%以上160%未満である。
B :前記伸度が120%以上140%未満である。
C :前記伸度が100%以上120%未満である。
D :前記伸度が100%未満である。
4.4.3.密着性の評価
JIS K5600−5−6(塗料一般試験法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法))に準じて、PVCフィルムと画像との密着性の評価を行った。なお、評価基準の分類については、以下のとおりである。
0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがない。
1:カットの交差点における塗膜の小さな剥がれが認められる。
2:塗膜がカットの縁に沿って、および/または交差点において剥がれている。
3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的または全面的に大剥がれを生じており、および/または目のいろいろな部分が、部分的または全面的に剥がれている。
4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的または全面的に大剥がれを生じており、および/または数か所の目が部分的または全面的に剥がれている。
5:剥がれの程度が分類4を超えている。
4.5.評価結果
以上の評価試験の結果について、表1および表2に併せて記載した。なお、表1には放射線硬化型ブラックインク組成物の結果を、表2には放射線硬化型イエローインク組成物の結果をそれぞれ示した。
Figure 0006390769
Figure 0006390769
表1に記載の実施例1〜4の放射線硬化型ブラックインク組成物および表2に記載の実施例5〜7の放射線硬化型イエローインク組成物によれば、いずれも記録物の表面に凝集斑が発生せず、その表面に光沢が認められた。また、クラック等発生伸度が100%以上であることからいずれの記録物も柔軟性に優れており、かつ、密着性においても良好な結果が得られた。
一方、表1の比較例1の放射性硬化型ブラックインク組成物は、反応成分中の(A)成分の含有量が55質量%を超えており、(B)成分の含有量が20質量%未満である。そのため、記録物の表面にはっきりとした凝集斑が発生し、その表面に光沢ムラが認められた。さらに(C)成分を含有していないことにより、記録媒体とその上に記録された記録物との密着性が不十分な結果となった。
表1の比較例2の放射性硬化型ブラックインク組成物は、反応成分中の(A)成分の含有量が20質量%未満であり、(B)成分の含有量が50質量%を超えている。そのため、クラック等発生伸度が100%未満となり、記録物の柔軟性が不十分な結果となった。
表1の比較例3の放射性硬化型ブラックインク組成物は、反応成分中の(B)成分の含有量が50質量%を超えており、しかも(A)成分を含有していない。そのため、クラック等発生伸度が100%未満となり、記録物の柔軟性が不十分な結果となった。
表2に記載の比較例4の放射線硬化型イエローインク組成物は、反応成分中に(B)成分を含有していないため、記録物の表面にわずかに凝集斑が発生し、その表面に光沢ムラが認められた。その一方で、(A)成分の含有量が55質量%を超えているため、記録物の柔軟性には大変優れていた。
表2に記載の比較例5の放射線硬化型イエローインク組成物は、反応成分中の(B)成分の含有量が10質量%未満であるため、記録物の表面にわずかに凝集斑が発生し、その表面に光沢ムラが認められた。その一方で、(A)成分を53.3質量%含有しているため、記録物の柔軟性には優れていた。
表2に記載の比較例6の放射線硬化型イエローインク組成物は、反応成分中の(B)成分の含有量が50質量%を超えているため、記録物の表面に凝集斑が発生せず、その表面に光沢が認められた。その一方で、(A)成分の含有量が20質量%未満であるため、クラック等発生伸度が100%未満となり、記録物の柔軟性が不十分な結果となった。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
20…インクジェット記録装置、30…モーター、40…プラテン、50…キャリッジ、52…印刷ヘッド(記録ヘッド)、54…ブラックインクカートリッジ、56…カラーインクカートリッジ、60…キャリッジモーター、62…牽引ベルト、64…ガイドレール、80…キャッピング装置、90A(190A)、90B(190B)…活性放射線照射装置、192、193…活性放射線光源、194…筐体、196…インク層、P…記録媒体

Claims (11)

  1. (a)記録媒体上に、(A)反応成分中に20質量%以上55質量%以下のフェノキシエチルアクリレートと、(B)反応成分中に20質量%以上50質量%以下の多官能アクリレートと、反応成分中に(E)脂環式構造を有する単官能アクリレートと、(C)N−ビニルカプロラクタムと、(F1)ブラック顔料と、を含有する、放射線硬化型インク組成物を吐出する工程と、
    (b)吐出された放射線硬化型インク組成物に対して、LEDである活性放射線光源から350nm以上400nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する活性放射線を300mJ/cm以上1000mJ/cm以下で照射し硬化する工程と、を含む、インクジェット記録方法であって、
    前記(B)多官能アクリレートは、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、およびジプロピレングリコールジアクリレートから選択される少なくとも1種である、インクジェット記録方法。
  2. (a)記録媒体上に、(A)反応成分中に20質量%以上55質量%以下のフェノキシエチルアクリレートと、(B)反応成分中に10質量%以上50質量%以下の多官能アクリレートと、反応成分中に(E)脂環式構造を有する単官能アクリレートと、(C)N−ビニルカプロラクタムと、(F2)イエロー顔料と、を含有する、放射線硬化型インク組成物を吐出する工程と、
    (b)吐出された放射線硬化型インク組成物に対して、LEDである活性放射線光源から350nm以上400nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する活性放射線を300mJ/cm以上1000mJ/cm以下で照射し硬化する工程と、を含む、インクジェット記録方法であって、
    前記(B)多官能アクリレートは、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、およびジプロピレングリコールジアクリレートから選択される少なくとも1種である、インクジェット記録方法。
  3. 請求項1または請求項2において、
    前記放射線硬化型インク組成物は、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドと、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドと、を含有する、インクジェット記録方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項において、
    前記放射線硬化型インク組成物は、前記(E)脂環式構造を有する単官能アクリレートを、反応成分中に5質量%以上50質量%以下で含有する、インクジェット記録方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
    前記放射線硬化型インク組成物は、さらに、反応成分中に(D)アミノアクリレートを含有する、インクジェット記録方法。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
    前記(E)脂環式構造を有する単官能アクリレートは、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、アダマンチルアクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサンアクリレートの何れかを含有する、インクジェット記録方法。
  7. 請求項6において、
    前記(E)脂環式構造を有する単官能アクリレートは、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレートおよびジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートから選択される少なくとも1種である、インクジェット記録方法。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれか一項において、
    前記放射線硬化型インク組成物は、測定温度20℃における粘度は、10mPa・s以上40mPa・s以下であり、かつ、測定温度20℃における表面張力は、20mN/m以上30mN/m以下である、インクジェット記録方法。
  9. 請求項1ないし請求項8のいずれか一項において、
    前記前記放射線硬化型インク組成物は、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を、反応成分に対し5〜20質量部で含有する、インクジェット記録方法。
  10. 請求項1ないし請求項9のいずれか一項において、
    前記放射線硬化型インク組成物は、光重合開始剤として、チオキサントン系光重合開始剤を含有する、インクジェット記録方法。
  11. 請求項1〜10の何れか一項に記載のインクジェット記録方法で記録を行う、インクジェット記録装置。
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