図1は、本発明の一実施形態に係る水質分析計の構成例を示した概略図である。本実施形態に係る水質分析計は、試料水に含まれる全有機体炭素濃度(TOC濃度)を測定可能な全有機体炭素計であり、その構成の一部のみを図1に示している。
この水質分析計では、試料水に含まれる全炭素を燃焼させてCO2に酸化させ、その濃度を測定することにより、TC濃度(全炭素濃度)を測定することができる。また、試料水に酸溶液を添加することにより、試料水に含まれる無機体炭素の量に応じたCO2を発生させ、その濃度を測定することにより、IC濃度(無機体炭素濃度)を測定することができる。そして、TC濃度とIC濃度とに基づいて、TOC濃度を測定することができる。このとき、TOC濃度は、TOC濃度=TC濃度−IC濃度の関係式を用いて算出することができる。
本実施形態に係る水質分析計には、例えば流路切替部1、シリンジ2、燃焼部3、測定部4、制御部5、操作部6、表示部7、記憶部8及びプリンタ9などが備えられている。流路切替部1は、例えば複数のポート11〜15を備えたマルチポートバルブからなる。ポート11は共通ポートであり、当該ポート11に対して他のポート12〜15のいずれかを選択的に連通させることができる。流路切替部1の各ポート11〜15間の連通状態は、例えばモータM1の駆動により自動で切り替えることができる。なお、流路切替部1のポートの数は、任意に設定可能である。
シリンジ2には、例えば筒体21及びプランジャ22が備えられている。プランジャ22は筒体21内に挿入されており、筒体21の内面とプランジャ22とにより囲まれたシリンジ2の内部空間に、試料水を採水することができる。このとき、筒体21内に挿入されているプランジャ22を変位させることにより、シリンジ2への吸引動作及びシリンジ2からの吐出動作が行われる。プランジャ22は、例えばモータM2の駆動により自動で行うことができる。
この例では、共通ポートであるポート11が、シリンジ2に接続されている。ポート12は、配管121を介して試料水供給部(図示せず)に接続されている。したがって、ポート11及びポート12を連通させた状態でプランジャ22を変位させ、シリンジ2への吸引動作を行うことにより、シリンジ2内(筒体21内)に試料水を採水することができる。このとき、プランジャ22の変位量を制御することにより、シリンジ2への試料水の採水量を調整することができる。
ポート13は、配管131を介して燃焼部3に接続されている。上記のようにしてシリンジ2内に試料水を採水した後、ポート11及びポート13を連通させ、プランジャ22を変位させてシリンジ2からの吐出動作を行うことにより、燃焼部3に試料水を注入することができる。このとき、プランジャ22の変位量を制御することにより、燃焼部3への試料水の注入量を調整することができる。
ポート14は、配管141を介して洗浄液供給部(図示せず)に接続されている。したがって、ポート11及びポート14を連通させた状態でプランジャ22を変位させ、シリンジ2への吸引動作を行うことにより、シリンジ2内に洗浄液を導入することができる。例えば水質分析計を用いた分析の開始時又は終了時などには、シリンジ2内に洗浄液を導入することにより、シリンジ2内を洗浄液で洗浄することができる。
ポート15は、配管151を介してドレンに接続されている。シリンジ2内の残った試料水又は洗浄液は、配管151を介してドレンに排出される。すなわち、ポート11及びポート15を連通させた状態でプランジャ22を変位させ、シリンジ2からの吐出動作を行うことにより、配管151を介してシリンジ2内の試料水又は洗浄液をドレンに排出することができる。
燃焼部3には、例えば燃焼管31及び加熱炉32が備えられている。加熱炉32は、例えば電気炉により構成されており、燃焼管31を設定された温度に加熱することができる。シリンジ2から燃焼部3に注入された試料水は、燃焼管31内で加熱され、試料水に含まれる成分が燃焼することにより酸化される。燃焼部3で酸化された成分は、測定部4へと送られ、その成分の濃度が測定部4において測定される。
測定部4は、例えばCO2を検出可能な赤外線ガス検出器により構成することができる。この場合、試料水をシリンジ2から燃焼部3に注入し、当該試料水に含まれる全炭素を燃焼させることにより生じたCO2を測定部4で検出することにより、TC濃度を測定することができる。ただし、測定部4は、赤外線ガス検出器に限らず、他の各種検出器により構成することができる。
シリンジ2から配管131を介して燃焼部3側へと導かれる試料水は、その一部を分岐管132から排水することができるようになっている。これにより、シリンジ2内に採水された試料水を燃焼部3側へと導きながら、その試料水を部分的に燃焼部3に注入し、残りの試料水を分岐管132から排水することができる。
制御部5は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む構成であり、モータM1,M2及び加熱炉32などの水質分析計の各部の動作を制御するとともに、測定部4からの検出信号に基づく処理などを行う。操作部6は、ユーザが入力操作を行うためのものであり、例えばキーボード及びマウスにより構成される。表示部7は、例えば液晶表示器により構成され、測定結果などを表示画面に表示する。記憶部8は、例えばハードディスク及びRAM(Random Access Memory)により構成され、測定に必要なデータや測定結果などの各種データが記憶される。プリンタ9は、測定結果などを印刷する。
図2A及び図2Bは、シリンジ2の周辺の構成例を示した概略図である。本実施形態では、シリンジ2内に光を照射する照射部23と、シリンジ2からの光を受光する受光部24とが、シリンジ2の周辺に設けられている。シリンジ2の筒体21は、光を透過可能な透明又は半透明の材料により形成されている。
照射部23は、例えばレーザ光を測定光としてシリンジ2内に照射する。受光部24は、シリンジ2を挟んで照射部23とは反対側に位置しており、照射部23に対して光の照射方向に対向するように設けられている。照射部23からの光は、例えばシリンジ2の中央部又は上部を通過して受光部24に入射する。
沈降性が高い懸濁物質10を含む試料水がシリンジ2内に採水された場合、図2Aのように、懸濁物質10が試料水中で分散している状態では、照射部23からの光の一部が懸濁物質10に吸収されるため、受光部24での受光量が比較的少なくなる。一方、図2Bのように、懸濁物質10が試料水中で沈降している状態では、照射部23からの光が懸濁物質10に遮られにくいため、受光部24での受光量が比較的多くなる。
一方、標準試料をはじめとする通常の試料水がシリンジ2内に採水された場合には、試料水中に懸濁物質10が含まれないため、上記のような受光部24での受光量の変動は生じない。また、懸濁物質10を含む試料水であったとしても、その懸濁物質10の沈降性が低ければ、同様に、上記のような受光部24での受光量の変動は生じにくい。
したがって、受光部24での受光量に基づいて試料水の沈降性を検知することができる。具体的には、シリンジ2内に試料水を採水した状態で、所定時間を空けてシリンジ2内からの光を受光部24で受光することにより、当該所定時間内における受光部24での受光量の変化量に基づいて試料水の沈降性を検知することができる。すなわち、図2A及び図2Bの例のように沈降性が高い試料水の場合には、上記所定時間内における受光部24での受光量の増加量(変化量)が大きくなる。
ただし、例えば照射部23からの光がシリンジ2の下部を通過して受光部24に入射するような構成の場合には、図2Bのように懸濁物質10が試料水中で沈降している状態の方が、図2Aのように懸濁物質10が分散している状態よりも受光部24の受光量が少なくなる。このような場合、沈降性が高い試料水では、上記所定時間内における受光部24での受光量の減少量(変化量)が大きくなる。
また、所定時間を空けてシリンジ2内からの光を受光部24で受光するような構成に限らず、シリンジ2内からの光を連続的に受光部24で受光することにより、連続的に変化する受光量の変化量に基づいて試料水の沈降性を検知するような構成であってもよい。受光部24での受光量の変化量ではなく、受光部24での受光量自体に基づいて試料水の沈降性又は懸濁性を検知するような構成とすることも可能である。さらに、シリンジ2内を透過した光を受光部24で受光するような構成に限らず、例えばシリンジ2内からの散乱光を受光部24で受光するような構成であってもよい。
シリンジ2は、筒体21の全体が光を透過可能な構成に限られるものではない。すなわち、シリンジ2は、照射部23からの光をシリンジ2内に照射することができ、シリンジ2内からの光を受光部24で受光することができれば、その全体ではなく、一部のみが光を透過可能な構成であってもよい。
図3は、制御部5の構成例を示したブロック図である。制御部5は、CPUがプログラムを実行することにより、測定実行処理部51、状態判定処理部52、モード選択処理部53、検知処理部54及び測定結果出力処理部55などとして機能する。
測定実行処理部51は、測定に際して、モータM1,M2などの動作を制御することにより、シリンジ2に対する試料水又は洗浄液の吸引動作や吐出動作を実行する。測定実行処理部51には、例えば洗浄処理部511、採水処理部512及び注水処理部513が含まれる。
洗浄処理部511は、洗浄液又は試料水を用いてシリンジ2内を洗浄する処理を行う。洗浄液を用いてシリンジ2内の洗浄を行う際には、モータM1の駆動によりポート11及びポート14を連通させた状態で、モータM2の駆動によりプランジャ22を変位させ、シリンジ2内に洗浄液を導入する。そして、モータM1の駆動によりポート11及びポート15を連通させた後、モータM2の駆動によりプランジャ22を変位させ、シリンジ2内の洗浄液をドレンに排出する。
一方、試料水を用いてシリンジ2内の洗浄(共洗い)を行う際には、モータM1の駆動によりポート11及びポート12を連通させた状態で、モータM2の駆動によりプランジャ22を変位させ、シリンジ2内に試料水を導入する。そして、モータM1の駆動によりポート11及びポート15を連通させた後、モータM2の駆動によりプランジャ22を変位させ、シリンジ2内の試料水をドレンに排出する。
採水処理部512は、シリンジ2を動作させることにより、燃焼部3に注入するための試料水をシリンジ2内に採水させる処理を行う。すなわち、モータM1の駆動によりポート11及びポート12を連通させた状態で、モータM2の駆動によりプランジャ22を変位させ、シリンジ2内に試料水を採水する。このときのモータM2の駆動量は、設定されている試料水の採水量に応じて制御される。
注水処理部513は、採水処理部512による試料水の採水後に、シリンジ2を動作させることにより、燃焼部3に試料水を注入させる処理を行う。すなわち、モータM1の駆動によりポート11及びポート13を連通させた後、モータM2の駆動によりプランジャ22を変位させ、燃焼部3に試料水を注入する。このときのモータM2の駆動量は、設定されている試料水の注入量に応じて制御される。
状態判定処理部52は、測定部4での測定が可能な状態(レディー状態)であるか否かを判定する。この例では、測定部4における検出器の検出信号に基づいて、レディー状態であるか否かが判定される。例えば、検出信号のベース値が閾値よりも高い場合や、ノイズが検出される場合には、レディー状態でないと判定することができる。測定実行処理部51は、状態判定処理部52による判定結果に基づいて、シリンジ2による吸引動作や吐出動作を実行することができる。
レディー状態であると判定されるまでに要する時間は、測定部4における検出器の検出信号が安定するまでの時間に応じて変動する。そのため、レディー状態となるまでに比較的長い時間がかかる場合もある。また、例えば所定時間が経過してもレディー状態と判定されない場合には、故障が発生していると判断され、水質分析計の動作が停止される場合もある。
ただし、測定部4における検出信号に限らず、例えば燃焼部3(加熱炉32)の温度や、その他の加熱部又は冷却部の温度などが所定範囲内でなければ、レディー状態でないと判定するような構成などであってもよい。このように、レディー状態であるか否かの判定は、水質分析計に備えられた各部の状態や周囲の状態など、状況に応じて変動する各種パラメータを基準に行うことができる。
モード選択処理部53は、測定モードを自動的に選択する処理を行う。本実施形態では、沈降性が高い懸濁物質10を含む試料水(懸濁試料)を測定する第1測定モード、又は、標準試料をはじめとする通常の試料水を測定する第2測定モードのいずれかを選択して実行することができる。本実施形態において、第1測定モード及び第2測定モードは、複数回の測定を連続して行うことができる測定モードであり、後述するように、それぞれ異なる処理で測定が行われる。
検知処理部54は、シリンジ2内の試料水の沈降性を検知する。具体的には、所定時間を空けて照射部23からの光がシリンジ2内を通過して受光部24で受光され、当該所定時間内における受光部24での受光量の変化量を所定の閾値と比較することにより、その比較結果に基づいて試料水の沈降性を検知する。図2A及び図2Bに例示されるような構成では、上記所定時間内における受光部24での受光量の増加量が所定の閾値以上である場合に、沈降性が高い試料水と検知することができる。
このように、本実施形態では、照射部23からシリンジ2内に光を照射し、当該シリンジ2からの光を受光部24で受光するという簡単な構成により、試料水の沈降性を検知することができる。したがって、既存の装置に大きな変更を加えることなく、安価な構成で試料水の沈降性を検知することができる。特に、所定時間内における受光部24での受光量の変化量を所定の閾値と比較するという簡単な処理により、その比較結果に基づいて試料水の沈降性を良好に検知することができる。すなわち、懸濁物質10が沈降する前後における受光量の時間的変化に基づいて、試料水の沈降性を的確に検知することができる。
モード選択処理部53は、検知処理部54により検知された試料水の沈降性に応じて、第1測定モード又は第2測定モードを自動的に選択する。本実施形態では、第1測定モード中に検知処理部54による処理が行われ、沈降性が高い試料水と検知された場合には、第2測定モードに自動的に切り替えられるようになっている。
このように、本実施形態では、検知処理部54により検知された試料水の沈降性に応じて異なる処理で測定が行われるため、ユーザ自身が試料水の性状を判断する必要がない。したがって、試料水の性状の判断にばらつきが生じにくく、試料水の性状に応じて最適な処理で容易に測定を行うことができる。特に、本実施形態では、検知処理部54により検知された試料水の沈降性に応じて、最適な測定モードに切り替えて複数回の測定を連続して行うことができる。
測定結果出力処理部55は、測定部4における検出器の検出信号に基づいて測定結果を出力する。測定結果は、例えば表示部7の表示画面に表示させたり、プリンタ9で印刷させたりすることにより出力可能である。本実施形態では、第1測定モード又は第2測定モードなどの測定モードが選択され、測定実行処理部51により連続して複数回の測定が行われた場合に、それらの複数回の測定結果を個別又は一覧で出力することができるようになっている。なお、測定結果を記憶部8に一旦記憶させ、その測定結果を読み出して個別又は一覧で出力することも可能である。
図4A及び図4Bは、第1測定モードで測定を行う際の処理の流れを示したフローチャートである。図4Aは、1回目の測定時における処理の流れを示しており、図4Bは、2回目以降の測定時における処理の流れを示している。
第1測定モード(懸濁試料測定モード)が選択された場合には、まず、状態判定処理部52によりレディー状態であるか否かの判定(レディーチェック)が行われる(ステップS101:状態判定ステップ)。そして、レディー状態であると判定された後に、洗浄処理部511により試料水を用いてシリンジ2内が洗浄される(ステップS102:洗浄ステップ)。本実施形態では、洗浄処理部511による処理が繰り返し行われることにより、シリンジ2内が複数回(例えば2回)洗浄されるようになっている。
その後、採水処理部512がシリンジ2を動作させることにより試料水が採水される(ステップS103:採水ステップ)。これにより、沈降性が高い懸濁物質10を含む試料水がシリンジ2内に採水される。そして、注水処理部513がシリンジ2を動作させることにより、燃焼部3に試料水が注入され(ステップS104:注入ステップ)、試料水に含まれる成分が燃焼部3の燃焼管31内で燃焼する。
燃焼部3内には、設定された注入量だけ試料水が注入され、シリンジ2内に残った試料水はドレンに排出されることにより捨てられる(ステップS105)。燃焼部3において燃焼されることにより酸化した成分は、そのピークが測定部4の検出器により検出される。そして、検出されるピークが終了した後(ステップS106)、1回目の測定が終了する。
第1測定モードにおける2回目以降の測定時においても同様に、まず、状態判定処理部52によりレディー状態であるか否かの判定が行われる(ステップS111:状態判定ステップ)。そして、レディー状態であると判定された後に、洗浄処理部511により試料水を用いてシリンジ2内が洗浄される(ステップS112:洗浄ステップ)。本実施形態では、2回目以降の測定時においては、シリンジ2内が1回だけ洗浄されるようになっている。
その後、採水処理部512がシリンジ2を動作させることにより試料水が採水される(ステップS113:採水ステップ)。これにより、沈降性が高い懸濁物質10を含む試料水がシリンジ2内に採水される。そして、注水処理部513がシリンジ2を動作させることにより、燃焼部3に試料水が注入され(ステップS114:注入ステップ)、試料水に含まれる成分が燃焼部3の燃焼管31内で燃焼する。
1回目の測定時と同様に、燃焼部3内には、設定された注入量だけ試料水が注入され、シリンジ2内に残った試料水はドレンに排出されることにより捨てられる(ステップS115)。燃焼部3において燃焼されることにより酸化した成分は、そのピークが測定部4の検出器により検出される。そして、検出されるピークが終了した後(ステップS116)、測定が終了する。2回目以降の測定は、このような図4Bの処理が繰り返されることにより実行される。
このように、本実施形態では、測定部4での測定が可能な状態と判定された後に(ステップS101,S111)、シリンジ2内に試料水が採水され(ステップS103,S113)、その後にシリンジ2から燃焼部3に試料水が注入されることにより(ステップS104,S114)、測定部4での測定が行われる。したがって、測定部4での測定が可能な状態であるか否かの判定に時間がかかった場合でも、シリンジ2内に試料水を採水した状態のまま長時間待機することがない。
これにより、沈降性が高い懸濁物質10を含む試料水を測定する場合であっても、シリンジ2内で試料水中の懸濁物質10が沈降し、シリンジ2内の試料水の濃度が不均一になるのを防止することができる。そのため、測定部4での測定が可能な状態であるか否かの判定に時間がかかった場合でも、測定結果に影響を与えるのを防止することができる。
特に、本実施形態では、測定部4での測定が可能な状態と判定された後に(ステップS101,S111)、試料水を用いてシリンジ2内が洗浄され(ステップS102,S112)、その後にシリンジ2内に採水した試料水がシリンジ2から燃焼部3に注入されることにより、測定部4での測定が行われる。したがって、測定部4での測定が可能な状態であるか否かの判定に時間がかかった場合でも、シリンジ2内が洗浄された後の状態のまま長時間待機することがない。
図1、図2A及び図2Bに示すようなシリンジ2では、洗浄後にプランジャ22が筒体21内に押し込まれた状態となるため、筒体21の内面が空気に晒されることとなる。このような構成であっても、本実施形態では、測定部4での測定が可能な状態と判定された後に(ステップS101,S111)、試料水を用いてシリンジ2内が洗浄されるため(ステップS102,S112)、洗浄後のシリンジ2内が長時間にわたって空気に晒されることがない。
したがって、洗浄後のシリンジ2内(筒体21内)が汚れるのを防止することができる。また、シリンジ2内の洗浄後に、測定部4での測定が可能な状態ではないと判定されて動作が停止することにより、洗浄に用いた試料水が流路内に残存するといったこともない。
図5A及び図5Bは、第2測定モードで測定を行う際の処理の流れを示したフローチャートである。図5Aは、1回目の測定時における処理の流れを示しており、図5Bは、2回目以降の測定時における処理の流れを示している。
第2測定モード(標準測定モード)が選択された場合には、まず、洗浄処理部511により試料水を用いてシリンジ2内が洗浄される(ステップS201:洗浄ステップ)。本実施形態では、洗浄処理部511による処理が繰り返し行われることにより、シリンジ2内が複数回(例えば2回)洗浄されるようになっている。
その後、採水処理部512がシリンジ2を動作させることにより試料水が採水される(ステップS202:採水ステップ)。そして、シリンジ2内に試料水を採水した状態のまま、状態判定処理部52によりレディー状態であるか否かの判定(レディーチェック)が行われる(ステップS203:状態判定ステップ)。
レディーチェックによりレディー状態であると判定された後、注水処理部513がシリンジ2を動作させることにより、燃焼部3に試料水が注入され(ステップS204:注入ステップ)、試料水に含まれる成分が燃焼部3の燃焼管31内で燃焼する。燃焼部3内には、設定された注入量だけ試料水が注入され、シリンジ2内に残った試料水はドレンに排出されることにより捨てられる(ステップS205)。
燃焼部3において燃焼されることにより酸化した成分は、そのピークが測定部4の検出器により検出される。このとき、本実施形態では、採水処理部512がシリンジ2を動作させることにより、測定中に次の測定のための試料水がシリンジ2内に予め採水される(ステップS206:先行採水ステップ)。
このような先行採水は、第1測定モードでは実行されない動作である。なぜなら、第1測定モードのように沈降性が高い懸濁物質10を含む試料水がシリンジ2内に採水される測定モードにおいて、先行採水が行われた場合には、シリンジ2内に試料水を採水した状態のまま次の測定まで長時間待機することとなる。この場合、シリンジ2内で試料水中の懸濁物質10が沈降し、シリンジ2内の試料水の濃度が不均一になってしまうため、第1測定モードにおいて先行採水を行った場合には測定結果に悪影響を与えることとなる。
本実施形態では、先行採水時にシリンジ2内に採水された試料水に対して、検知処理部54により沈降性を検知する処理が行われる(ステップS207)。そして、検知処理部54により沈降性が高い試料水と検知されなければ(ステップS208でNo)、そのまま第1測定モードが続行され、検出されるピークが終了した後(ステップS209)、1回目の測定が終了する。
一方、検知処理部54により沈降性が高い試料水と検知された場合には(ステップS208でYes)、シリンジ2内の試料水がドレンに排出されることにより捨てられる(ステップS210)。そして、第2測定モードが中止され、図4AのステップS101からの処理が行われることにより、第1測定モードに自動的に切り替えられる。すなわち、先行採水時に検知処理部54により検知されたシリンジ2内の試料水の沈降性に応じて、モード選択処理部53により第1測定モードが自動的に選択されるようになっている。
上述の通り、先行採水時には、シリンジ2内に試料水が採水された状態が所定時間維持される。したがって、本実施形態のように、その時間を利用して試料水の沈降性を検知することにより、試料水の沈降性を検知するための時間を別途設ける必要がなく、試料水の沈降性を効率よく検知することができる。
本実施形態では、第2測定モードにおける測定中に、モード選択処理部53により第1測定モードが選択され、測定実行処理部51による処理が切り替えられた場合に、測定結果出力処理部55が、その旨を複数回の測定結果とともに出力するようになっている。具体的には、複数回の測定結果が一覧で出力(例えば表示又は印刷)される際に、それらの複数回の測定の途中で第2測定モードから第1測定モードに切り替わっている場合には、その旨をユーザが認識できるような態様で測定結果が出力されるようになっている。
この場合、測定結果出力処理部55により出力された複数回の測定結果において、測定の途中で測定モードが切り替えられたことが分かりやすい。したがって、出力された複数回の測定結果に基づいて、分析結果を正しく評価できる。さらに、同様の試料水を分析するにあたり、適当な測定条件を設定できる。
第2測定モードにおける2回目以降の測定時には、まず、状態判定処理部52によりレディー状態であるか否かの判定が行われる(ステップS211:状態判定ステップ)。そして、レディー状態であると判定された後に、注水処理部513がシリンジ2を動作させることにより、燃焼部3に試料水が注入され(ステップS212:注入ステップ)、試料水に含まれる成分が燃焼部3の燃焼管31内で燃焼する。
1回目の測定時と同様に、燃焼部3内には、設定された注入量だけ試料水が注入され、シリンジ2内に残った試料水はドレンに排出されることにより捨てられる(ステップS213)。燃焼部3において燃焼されることにより酸化した成分は、そのピークが測定部4の検出器により検出される。そして、検出されるピークが終了した後(ステップS214)、測定が終了する。
次の測定を行う場合には、ステップS213とステップ214との間に先行採水ステップを行った上で、図5Bの処理が繰り返される。この場合には、先行採水時に、図5AのステップS207,S208,S210と同様の処理が行われるような構成であってもよい。
標準試料をはじめとする通常の試料水(沈降性が高い懸濁物質10を含まない試料水)を測定する場合には、上記のような第2測定モードが選択されることにより、測定部4における測定の直前に、当該測定部4での測定が可能な状態であるか否かを判定することができる。このように、測定部4での測定が可能な状態であることを確認した直後に燃焼部3に試料水を注入し、測定部4での測定を行うことによって、より安定した正確な測定値を得ることができる。
以上の実施形態では、第2測定モード中に、検知処理部54による処理が必ず実行されるような構成について説明した。しかし、このような構成に限らず、例えば第2測定モードから第1測定モードへの自動切替機能をオン状態又はオフ状態に切り替えることができるようになっていてもよい。すなわち、自動切替機能がオン状態に設定されている場合にのみ、第2測定モード中に検知処理部54による処理が実行されるような構成であってもよい。
第2測定モード中に検知処理部54による処理が実行されるような構成に限らず、例えば第1測定モード中に検知処理部54による処理が行われ、沈降性が低い試料水と検知された場合に、第2測定モードに自動的に切り替えられるような構成であってもよい。また、検知処理部54による処理が第1測定モード及び第2測定モードとは別に実行され、検知された試料水の沈降性に応じて、第1測定モード又は第2測定モードが実行されるような構成であってもよい。このように、検知処理部54による処理は、先行採水時に限らず、先行採水時とは別に設けた期間中に実行されるような構成であってもよい。
第1測定モード及び第2測定モードは、上記のような処理に限られるものではなく、例えばシリンジ2内の洗浄の回数など、各工程の具体的態様は任意に設定することができる。また、モード選択処理部53は、上記のような第1測定モード又は第2測定モードに限らず、他の複数の測定モードのいずれかを自動的に選択するような構成であってもよい。さらに、検知処理部54により検知された試料水の沈降性に応じて、測定モードが切り替えられるような構成に限らず、特定の処理が実行されたり、特定の処理の実行が無効化されたりするような構成であってもよい。
水質分析計には、例えばシリンジ2内にガスを供給するためのガス供給部(図示せず)が設けられていてもよい。当該ガス供給部は、シリンジ2の筒体21の下部からシリンジ2内にガスを供給するものであることが好ましい。例えば、検知処理部54により沈降性が高い試料水と検知された場合に、測定モードが切り替えられるのではなく、上記ガス供給部からシリンジ2内にガスを供給することにより、シリンジ2内の試料水を攪拌するための処理が実行されるような構成などであってもよい。
以上の実施形態では、水質分析計の一例として全有機体炭素計について説明した。しかし、本発明は、全有機体炭素計に限らず、シリンジ及び燃焼部を備えた他の水質分析計にも適用可能である。