JP6255549B2 - 空芯型サイクロトロン - Google Patents

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Description

本発明は、荷電粒子を加速するサイクロトロンに関し、より詳しくは空芯コイルを用いた空芯型サイクロトロンに関する。
陽子を250〜300MeV(メガ電子ボルト)まで加速可能なサイクロトロンとして、下記特許文献1に記載されたものが知られている。このサイクロトロンでは、光速に近づいた荷電粒子の質量が相対論効果によりローレンツファクターに比例して増加することに対応しつつ、荷電粒子の周回周期を一定にするため、強度を加速平面の半径方向で増加させた(外側へ向かい正の勾配を持たせた)磁場である等時性磁場が作成される。サイクロトロンの最大加速エネルギーは、最大周回軌道半径とその周回軌道上の平均磁場の積の二乗に比例する。
又、このサイクロトロンでは、外側ほど強い等時性磁場において、そのまま加速すると加速平面の垂直方向に加速粒子が発散し、装置に加速粒子が衝突して加速を継続できないことへの対応として、加速平面の円周方向(粒子の回転方向)に磁場強度を変化させ、加速粒子に垂直方向の集束力を得させるための複数の強磁性体磁極片(ポールチップ)が設けられる。各ポールチップは、より強い集束力を得るべく加速粒子との入射角度(スパイラル角)を持たせるため、螺旋状に湾曲された扇状とされており、加速平面の円周方向に互いに等間隔に配置され、ボールチップの有る部分(ヒル)の磁場を強め、無い部分(バレー)の磁場を弱めて、加速粒子を垂直方向(及び水平方向)に集束させる。このような回転方向(方位角方向)に強弱のある磁場を作成するサイクロトロンは、AVF(Azimuthally Varying Field)サイクロトロンと呼ばれる。
このようなサイクロトロンでは、等時性磁場を作成するのに常電導の鉄芯コイルが用いられており、周回軌道上の平均磁場を最大2T(テスラ)程度までしか強くすることができない上に、周回軌道半径を数メートル以上に大きくして鉄心サイズを巨大化することは非現実的であることから、高エネルギー化は困難である。又、ボールチップとして強磁性体が用いられているため、集束可能な荷電粒子のエネルギーに限界がある。従って、このようなサイクロトロンでは、陽子を250〜300MeVに加速させるに留まり、近年がんの放射線照射治療において顕著な有用性が認められつつある重粒子線(炭素6価プラスイオン126+等の放射線)について、がん治療に利用可能となる400MeV/核子程度のエネルギーを有する(光速の7割程度の速度へ加速された)状態まで十分に加速することができない。
現在、我が国におけるがん(悪性腫瘍)全体の5年生存率は50%(パーセント)を上回るようになったが、依然日本人の死因のトップの難病であることに変わりはない。「がんの統計’07」(財団法人がん研究振興財団)によれば、男性で約2人に1人、女性で約3人に1人が一生のうちにがんと診断され、更に男性で約4人に1人、女性で約6人に1人ががんで死亡する。高齢化社会の進展と共に、がんの患者数は現在も増加傾向にあり、2015年には500万人を超える(2003年からの約10年間でほぼ倍増する)ものと予想されている。
又、外来や入院で治療を受けたがん患者が仮に治療不要であったとした場合に支払不要となる金額(医療費)や、がんで死亡した人が仮に平均寿命まで生きたとした場合に労働等で得られたはずの金額(滅失利益)は、年間で医療費が3兆円余り、滅失利益が約7兆円となるという試算も存在する。従って、がんによる社会の損失は年間約10兆円(日本の国内総生産の約2%)に上るといえる。一方、検診技術や治療技術の向上により治癒可能ながんが増えており、社会的コスト(Social Cost)削減という観点からもがん対策が重要であることは言うまでもない。
がん治療には大きく分けて外科、内科、放射線療法があるが、中でも放射線を患部に照射する放射線療法は比較的にコストが低く、欧米を始め本邦でもがん治療の大きなパートを占めつつある。外部治療放射線としては、主に電子線リニアックを用いた高エネルギーX線が利用されているが、近年では、陽子線や、炭素線を始めとする重粒子線が、より有効な治療を行えるものとして注目されている。
陽子線と炭素線の特性を比較すると、陽子線のがん細胞致死効果は従来のX線と同等であるが、線量分布がX線よりシャープになり患部に集中して照射できるため優れている。一方、炭素線の線量分布は、陽子線より更にシャープであり、正常組織や重要臓器を避けながら精密な線量分布での治療が可能となるし、細胞致死効果が陽子線の約3倍となっており、より放射線抵抗性の高いがんへの適用が可能となる。又、がん細胞は急速に成長し、ある程度成長したがん組織の中心部分は血流減少により酸素不足となるところ、このような低酸素状態の細胞に対するX線や陽子線の効果は不十分であるが、重粒子線は効果が認められている。
よって、重粒子線照射療法は、手術や切除が困難な部位(肝、肺門部、頭蓋底、眼球、AVM等)の治療に有効であり、極めて侵襲性の低い治療法となっていて、これまでの実績によれば、約6割の固形がんに治療効果が期待できる。又、線量分布の集中や良好な細胞致死効果により、従前に比べ照射回数を減らして患者の身体的負担や費用負担を軽減し、更に侵襲性の低さにより、入院期間や通院期間を減らして、患者の生活の質(Quality Of Life,QOL)を向上することができる。
このようにがん治療に有用な重粒子線を放出可能な装置として、シンクロトロンが採用されている。しかし、シンクロトロンは、重粒子を十分に加速させるために極めて巨大な規模となり(例えば、入射器等を含めると数百個以上にも及ぶコイルが並び、制御すべき電磁石は100台以上となり、主リングは直径20m(メートル)程度の規模となる)、設置コストが莫大となるし、運転コストも、多数のコイルの冷却や、制御の複雑さ、オペレータの多人数化、多大な電力消費等により甚大になることが予想される。
このような規模では、いかにがん治療に有用といえども普及に弾みがつかないため、重粒子の加速器の小型化やランニングコストの低減等が望まれるところであり、この観点から、コイルの数が数個程度と少ない特許文献1のようなサイクロトロンの規模を拡張して重粒子加速器を構成することが考えられる。しかし、鉄芯と常電導コイルによる磁場の形成は、鉄の磁気飽和により約2Tが限度であり(引出半径での周回方向の平均磁場)、これを前提に400MeV/核子までの重粒子線を加速可能なサイクロトロンを設計すると、等時性磁場形成のために少なくとも直径13m程度のポールフェイス(磁極表面,リターンヨークを含む)を有する磁石(約5万トン)が必要となってしまい、実際に製作したとしても、磁場を安定させるのに時間がかかり、更に発熱量が多大であって巨大な冷却装置が必要となってしまう。
そして、装置の小型化と高エネルギー化を両立するためには、加速粒子の軌道に沿った一周の平均磁場における半径方向の分布の勾配が大きくなるような等時性磁場分布を形成する必要があるが、従来の常電導電磁石では、当該勾配の拡大についても限界がある。以上によれば、規模を拡大したサイクロトロンでは、シンクロトロン程ではないにせよ、結局極めて複雑で規模の大きなものとなってしまうし、以下に規模を拡大しようとも加速粒子の高エネルギー化に限度がある状態となっている。
又、重粒子線は、直進性の高さや高い線エネルギー付与、深度線量分布の特異性から、がん治療以外の様々な産業分野でもその利用が期待されている。例えば、高分子のナノワイヤーを始めとするナノ構造体等を形成する新材料創製分野や、そのナノ構造体を導入すること等による光学機器、高性能分離膜、マイクロナノマシン、高効率熱交換器、新エネルギー創製、高度半導体、高機能膜生成等の各分野における利用が期待される。又、容量の巨大なイオン交換膜の形成や、光導波路、光学スイッチ、高性能グレーティング、反射防止膜、ナノフィルター、微細な機械部品、超撥水膜、微細フィンを備えた高性能熱交換器の形成等の各分野における利用が期待される。更に、構造制御された医薬品放散システム、高性能燃料電池、高精度イオン注入、表裏で性能の異なる一体型ハイブリット膜の創製に係る各分野における利用が期待される。このように多様な分野において重粒子線の利用を促進するためには、シンクロトロンのような極めて大規模で大電流の重粒子線が得られない装置では力不足であり、分野に応じて(重粒子線の質量や価数を適宜調整したうえで)比較的に小規模で、導入のし易い大強度の重粒子線放射装置が望まれている。
そこで、本件出願人らは、粒子回転方向におけるヒルバレー磁場の形成に関し、酸化物超電導導体を湾曲する扇形に沿うように巻いて成る空芯のスパイラルセクターコイルを用いることにより、高エネルギー化と小型化を両立させたサイクロトロンを提案した(下記特許文献2参照)。又、コンピュータモデルにおいて、鉄磁極を用いた超電導サイクロトロンが示されている(下記非特許文献1参照)。
特許第3456139号公報 特開2011−258427号公報
"Computer modeling of magnetic system for C400 superconducting cyclotron", Y.Yongen, et al., Proceedings of EPAC2006, Edinburgh, Scotland, 2006, pp2589-2591.
これらの超電導コイルを用いたサイクロトロンによれば、超電導コイルにより常電導コイルに比べて遥かに強い磁場を小規模で形成可能となるが、フラッターが充分に大きく確保し難く、高磁場と鉛直方向のビーム集束力の高度な両立が充分とはいえない面がある。
そこで、請求項1に記載の発明は、小型であり設置コストや運用コストが低廉でありながら、重粒子につきがん治療等に利用可能なエネルギーを有するまで加速が可能であり、更に柔軟で安定した運用が可能である空芯型サイクロトロンを提供することを目的としたものである。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、超電導導体を空芯で巻いて形成されるセクターコイルを複数有し、一又は複数のヒル磁場を形成するセクターコイルユニットを備えており、前記セクターコイルは、一つのヒル磁場を複数のセクターコイルの組で形成するように配置されることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、上記目的に加えて、より一層良好な磁場を形成し、更に柔軟な運用を可能とする目的を達成するため、上記発明にあって、前記セクターコイルユニットは、前記セクターコイルの組における当該セクターコイルの間にオーバーラップして配置される補助セクターコイルを含んでいることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、上記目的に加えて、更に良好な磁場を形成する目的を達成するため、上記発明にあって、前記セクターコイルの組における当該セクターコイルの少なくとも一部が、互いにオーバーラップするように配置されることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、上記目的に加えて、重粒子を安定して高速に加速可能な高磁場ないし磁場分布の形成をより効率良く形成する目的を達成するため、上記発明にあって、前記セクターコイルユニットは、3個以上のヒル磁場を形成するものであり、当該ヒル磁場のそれぞれが、前記複数のセクターコイルの組で形成され、前記複数のセクターコイルの組は、それぞれ全体として湾曲する扇形に沿う形状であることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、上記目的に加えて、重粒子を安定して高速に加速可能な高磁場ないし磁場分布の形成を更に効率良くメリハリを付けて行う目的を達成するため、上記発明にあって、前記セクターコイルユニットは、加速磁場を中心として互いに鏡面対称に配置されていることを特徴とするものである。
請求項6,7に記載の発明は、上記目的に加えて、更に運用容易で小型で省エネルギーながら強力な磁場を形成する目的を達成するため、上記発明にあって、前記超電導導体を、酸化物超電導導体としたり、その酸化物超電導導体を、ビスマス系酸化物超電導体、又は、RE−123系酸化物超電導体(REBaCu7−δ、REはイットリウムを含む希土類元素)としたりすることを特徴とするものである。
本発明によれば、一つのヒル磁場を複数のセクターコイルの組で形成している。よって、小型であり設置コストや運用コストが低廉でありながら、重粒子についてのがん治療等に利用可能なエネルギーまでの加速が安定して可能となるようなAVF磁場分布を、柔軟な運用の下で効率的に形成することができる、という効果を奏する。
(a)は本発明の第1形態に係る空芯型サイクロトロンにおけるコイルシステムの平面説明図であり、(b)はその中央縦端面説明図である。 (a)はヒル・バレーの側面模式図であり、(b)はラジアルセクター型における荷電粒子の軌道等を示す平面模式図であり、(c)はヒル・バレーのエッジを横切る荷電粒子の運動状態を示す模式図である。 (a)は積分路を示す側面模式図であり、(b)はスパイラルセクター型のヒル・バレーの平面模式図であり、(c)は(b)における荷電粒子の軌道等を示す一部拡大平面模式図である。 図1のコイルシステムにおけるセクターコイルのスパイラル角及び荷電粒子の鉛直方向の運動におけるベータトロン振動数νと半径方向位置の関係を示すグラフである。 (a)は図1のコイルシステムの平面説明図に磁場分布提示用の経路(一点鎖線)を示したものであり、(b)はその経路におけるZ軸方向の磁場強度を示すグラフである。 (a)は本発明の第2形態に係る空芯型サイクロトロンにおけるコイルシステムの平面説明図であり、(b)はその中央縦端面説明図である。 (a)は図6のコイルシステムにおいて補助セクターコイルの幅を狭くした場合の平面説明図に磁場分布提示用の経路(一点鎖線)を示したものであり、(b)はその経路におけるZ軸方向の磁場強度を示すグラフである。 (a)は本発明の第3形態に係る空芯型サイクロトロンにおけるコイルシステムの平面説明図であり、(b)はその中央縦端面説明図である。 (a)は図8のコイルシステムにおいて補助セクターコイルの幅を狭くした場合の平面説明図に磁場分布提示用の経路(一点鎖線)を示したものであり、(b)はその経路におけるZ軸方向の磁場強度を示すグラフである。 図9(a)のコイルシステムにおいて図9(b)の場合の各種コイルの電流値とは異なる電流値を設定することで形成された磁場強度分布において、同一半径の同心円経路におけるZ軸方向の平均磁場強度を示したものであって、(a)は炭素粒子が半径90cmにおいて核子当たり200MeVに達し得るものであり、(b)は炭素粒子が半径90cmにおいて核子当たり350MeVに達し得るものである。 図9(a)のコイルシステムにより形成された磁場強度分布において、同一半径の同心円経路における方位角方向の磁場強度を示したグラフであって、(a)は周回方向に配列された4組の中心側のセクターコイル(81a)の内、1組のコイル電流値を増加すると共に、中心軸を挟んで対向するもう1組のコイル電流値を同量だけ減少させた場合の経路半径40cmの磁場強度のグラフであり、(b)は周回方向に配列された4組の外径側のセクターコイル(81c)の内、1組のコイル電流値を増加すると共に、中心軸を挟んで対向するもう1組のコイル電流値を同量だけ減少させた場合の経路半径90cmの磁場強度のグラフである。
以下、本発明の実施の形態につき、適宜図面に基づいて例示する。尚、本発明の実施の形態は、下記形態に限定されない。
[第1形態]
≪全体構成≫
図1(a)は本発明の空芯型サイクロトロン(以下「サイクロトロン」という)に係る第1形態のコイルシステム1の平面図であり、図1(b)はコイルシステム1の中央縦端面図である。
サイクロトロンは、図示しないカバーの内部にコイルシステム1を有しており、又荷電粒子を生成してコイルシステム1の中央付近に入射させる図示しないイオン源と、コイルシステム1の外側に配置される図示しないビーム取出し口と、コイルシステム1を所定温度まで冷却する図示しない冷却装置と、前記カバーの内部を真空にする図示しない真空ポンプと、荷電粒子の所定の周回周期(回転周波数)に同期して加速用のインパルス電場を付与する図示しない加速電極と、これらの制御を行う図示しない制御装置と、これらに電力を供給する図示しない電力供給装置(電源)を有する。尚、外部へ漏洩する磁場強度を低減するシールド用磁性体を更に設けても良い。
コイルシステム1は、一対のメインコイルユニット2,2と、その内部に収まる一対のセクターコイルユニット4,4と、センターコイル6,6を含む。各メインコイルユニット2は、互いに鏡面対称に向き合う状態で上下(軸方向)に配置されており、各セクターコイルユニット4も、互いに鏡面対称に向き合う状態で上下に配置されていて、各センターコイル6も、互いに鏡面対称に向き合う状態で上下に配置されている。各メインコイルユニット2ないし各セクターコイルユニット4、各センターコイル6の中心は、同一鉛直線上となるように配置されている。尚、図1(b)に示されるように、鏡面対象の中心面をXY平面とし、上記中心を通る鉛直線をZ軸とし、上記中心を原点とする。又、センターコイル6について、単数のコイルから構成されるセンターコイルユニットとみることができる。
≪メインコイルユニット≫
各メインコイルユニット2は、それぞれ孔あき円盤状(輪状)である、第1スプリットコイル21、及び第2スプリットコイル22を含む。第1スプリットコイル21、及び第2スプリットコイル22は、Z軸上にそれぞれの中心が位置するように、又XY平面と平行に配置されている。第1スプリットコイル21は、第2スプリットコイル22より、XY平面に近い側に配置されている。
第1スプリットコイル21は、超電導導体を線状にして成る超電導線材を、上記Y軸に中心が位置する状態で上記断面を満たしていくように円状に巻き(空芯)、更にこれを中空輪状の図示しないシールドで覆うことで形成されている。第1スプリットコイル21は、前記電源と電気的に接続されている。尚、シールド内ないしこれと接続された前記冷却装置には、図示しない冷却媒体が封入されており、前記冷却装置は、当該冷却媒体を20K(ケルビン)まで冷却してシールド内に送ることが可能となっている。
加えて、超電導線材の幅は1cm(センチメートル)程度であり、厚さは基板や安定化銅を含み200μm(マイクロメートル)であって、超電導線材表面の絶縁被膜を含め占積率は0.7程度とされ、負荷率は0.7程度とされている。
更に、超電導線材の材質としては、金属系(ニオブチタン,ニオブスズ等、4.2Kで超電導状態)や酸化物系(ビスマス系、タリウム系、水銀系あるいはRE−Ba−Cu−O系等、液体窒素温度である77Kで超電導状態を発現でき、20Kで特性の良好な超電導状態となる)の双方を用いることができるが、臨界温度が高く比較的高温で超電導状態となり、又臨界磁界も高いことから酸化物超電導導体を用いることが好ましく、酸化物超電導導体の中でも、作製コストが比較的に高いものの、磁場に強く、耐熱耐食性ニッケル基合金(ハステロイ・登録商標・以下同様)等が線材構成材となるために機械的強度も良好な、主成分がRE−Ba−Cu−Oで表せる酸化物超電導導体を用いることが更に好ましい。
尚、前者のビスマス系酸化物超電導線材の具体例としては、住友電気工業株式会社製Bi2223(BiSrCaCu10−δ)が挙げられる。ビスマス系酸化物超電導線材は、好ましくは当該Bi2223を含むビスマス系2223相酸化物超電導導体(他に(Bi,Pb)SrCaCu10−δ)、あるいはビスマス系2223相酸化物超電導導体((Bi,Pb)SrCaCu8−δ,BiSrCaCu8−δ)を用いる。
一方、後者のRE−Ba−Cu−O系酸化物超電導線材の具体例としては、American Superconductor Corporation(AMSC)社製YBCO(YBaCu7−δ)が挙げられる。本形態では、YBCOを用いている。
ここで、主成分がRE−Ba−Cu−Oで表せる酸化物超電導導体において、REはY(イットリウム),Sm(サマリウム),Gd(ガドリニウム),Ho(ホルミウム)といった希土類元素のうち少なくとも1つ又は2つ以上の任意の組合せであり、Baはバリウム、Cuは銅、Oは酸素である。又、好ましくは、酸化物超電導導体はREがYであるイットリウム系酸化物超電導導体とし、より好ましくはYBaCu7−δを始めとするY−123系酸化物とし、あるいはYBaCu7−δのYの全部又は一部を他の希土類金属に置き換えたもの(RE−123系酸化物超電導体)とする。
又、酸化物超電導導体は、表面に結晶配向性を有する基板(線材構成材)上に形成されている。基板は、好ましくは、Cu(銅),Ni(ニッケル),Ti(チタン),Mo(モリブデン),Nb(ニオブ),Ta(タンタル),W(タングステン),Mn(マンガン),Fe(鉄),Ag(銀)等の金属あるいはこれらの合金から成る金属層を備えており、より好ましくは、ステンレス,インコネル,ハステロイから成る金属層を備えている。
更に、好ましくは、酸化物超電導導体と基板との間に、金属酸化物から成る中間層が配置される。中間層は、パイロクロア構造,希土類−C構造,ペロブスカイト型構造あるいは蛍石型構造を有し、例えば、BaZrO(Zrはジルコニウム),Y,MgO(Mgはマグネシウム),SrTiO(Srはストロンチウム,Tiはチタン),YSZ(イットリア安定ジルコニア)、又はGdZr等のLn−M−O系化合物(Lnは1種以上のランタノイド元素,MはSr・Zr・Ga(ガリウム)の群から選択される1種以上の元素)等である。中間層は、スパッタ法、電子線ビーム蒸着法等で形成されるが、好ましくはIBAD法(Ion Beam Assisted Deposition、イオンビームアシスト法)により成膜される。
一方、第2スプリットコイル22は、寸法や配置を除き、第1スプリットコイル21と同様に形成され、設計されている。
以上のようなコイルシステム1において、次のようにして粒子加速のための等時性磁場が形成される。互いに対称であるメインコイルユニット2,2で挟まれた部分において、粒子加速のための等時性磁場が形成される。コイルユニット1を有するサイクロトロンでは、メインコイルユニット2,2間の中心平面(XY平面)が荷電粒子の加速平面とされる。尚、このサイクロトロンでは、スパイラルセクターコイルユニット4,4間の中心平面と加速平面も一致している。
第1スプリットコイル21、及び第2スプリットコイル22は、それぞれ図示しないスイッチを介して共通の前記電源と電気的に接続されており、当該スイッチをオンにすることで単独の電源により電圧を付加されて励磁され、他の励磁コイルと共に等時性磁場を生成する。尚、XY平面が、等時性磁場の鉛直方向における中央となる。
サイクロトロンの制御装置としてのコンピュータは、等時性磁場の形成に際し、冷却装置を動作させ、冷却媒体を第1スプリットコイル21、及び第2スプリットコイル22が超電導状態となる温度(20K)まで伝導冷却により冷却し、冷却媒体の温度を安定させる。そして、徐々に電圧を付加し、第1スプリットコイル21、及び第2スプリットコイル22に電流を流す。そして、超電導状態により電流が安定すれば、電圧の付加を停止して、荷電粒子を螺旋軌道で加速させる等時性磁場を形成する定常状態に移行させる。
≪セクターコイルユニット≫
各セクターコイルユニット4は、全体として平面視でスパイラル状となっており、複数のセクターコイル41a,41b,41c・・を含んでいる。セクターコイル41a,41b,41c・・は、平面視で中心から外方へ螺旋状に延びる複数(図1(a)では4本)の筋のそれぞれに沿って半径方向で(図1(a)では3個ずつ)並ぶように配置されている。換言すれば、セクターコイルユニット4は、各スパイラル部分が更にセクターコイル41a,41b,41cでセパレートされた状態で形成されている。
セクターコイル41a,41b,41c・・は、それぞれが空芯のコイルであり、第1スプリットコイル21と同様、酸化物超電導線材により形成され、又図示しないシールドにより冷却可能に覆われ、前記電源と通電可能に接続されている。そして、セクターコイル41a,41b,41cの並ぶ各筋は、湾曲により凸となる側が時計回りで正の側となるよう互いに回転対称に配置されており、又互いに円周方向で等間隔となるように配置されている。尚、当該筋につき、凸側を時計回り負の側に配置しても良い。
又、セクターコイル41a,41b,41c・・は、ここではそれぞれ幅5cm,厚み5cmとされている。更に、各スパイラルセクターコイル41は、酸化物超電導線材における、曲げ過ぎると破断のおそれがあり、又超電導特性に支障を来すおそれがあるという機械特性に鑑み、曲げ半径が所定値(ここでは3cm)以上となるように設計されている。具体的には、ブロックと曲げ半径が所定値以上の弧状ブロックと真っ直ぐなブロックの組合せで形成される巻線空間を満たすように酸化物超電導線材が巻かれている。ここで、真っ直ぐなブロックの連続体と弧状のブロックの接続体は、複数の曲率半径の曲線を滑らかに接続した外形を模したものであり、セクターコイル41a,41b,41c・・は、このような外形を有する図示しないジグに、酸化物超電導線材を巻き付けることで形成される。
加えて、セクターコイル41a,41b,41c・・は、鏡面対称位置のスパイラルセクターコイル41a,41b,41c・・との間において生成する磁場の強い部分(ヒル,hill)の境界が、加速粒子の螺旋軌道に対して(所定範囲内に収まる)所定角度を有するスパイラル状となるように形成されている。セクターコイル41a,41b,41cは、円周方向において互いに等間隔に配置されるため、上下のスパイラルセクターコイル41a,41b,41c間で比較的に強い磁場(ヒル)が発生し、セクターコイル41a,41b,41cの無い部分で比較的に弱い磁場(バレー,valley)が発生する。そのバレーからヒルに対する加速粒子の入射角(加速粒子のヒル入射時の速度方向とヒル境界の接線方向の角度)が所定範囲内(ここでは20〜90度)となる磁場を生成するよう、セクターコイル41a,41b,41c・・が形作られている。又、ヒルからバレーに出る際の加速粒子のヒル境界接線との角度も同様に所定範囲内(ここでは20〜90度)となるように、スパイラルセクターコイル41a,41b,41c・・(におけるバレー入射側の形状)が形成されている。
セクターコイル41a,41b,41c・・は、第1スプリットコイル21等と同様、それぞれ電源に接続され、又冷却装置を有しており、コンピュータの指令に基づき、冷却温度の安定、所定通電電流(ここでは320A)の付与、ないし超電導定常状態への移行を行って、等時性磁場における加速粒子集束のための周方向増減磁場を生成する。
≪センターコイル(ユニット)≫
各センターコイル6は、酸化物超電導線材を円環状に巻いた空芯のコイルであり、図示しないシールドにより冷却可能に覆われ、前記電源と通電可能に接続されている。各センターコイル6は、その中心がZ軸上にあり、全体としてXY平面に平行(水平)となるように配置され、又上下方向(Z軸方向)において、メインコイルユニット2の内側且つスパイラルセクターコイルユニット4の外側となるように配置されている。尚、ここでは、各センターコイル6は、平面視において、全てのスパイラルセクターコイル41の中心側の端部を囲むような大きさとされ、そのように配置されている。
そして、各センターコイル6に対しては、各スパイラルセクターコイル41の外側を通過する磁束の領域にある加速平面中心領域の磁場が高くなる方向へ磁場を発生するように、電流が流される。尚、制御装置は、電源を制御することにより、各センターコイル6に流す電流値をそれぞれ変化させることができ、粒子軌道(特に初期軌道)の安定化のための中心バンプの最適化を行うことができる。
≪メインコイルユニットが形成する磁場≫
上述のメインコイルユニット2,2は、その大きさや密度等により、炭素6価プラスイオン126+を一定の回転周波数において400MeV/核子まで加速可能な理想的磁場に対して誤差の少ない(最大約0.1T程度)の磁場を生成可能である。
理想的磁場に関し、一般に、磁場と粒子の軌道半径は次の[数1]で与えられる。ここで、Bρは磁気剛性(magnetic rigidity)[Tm]、pは(相対論的)運動量[MeV/c]であり、Zは電荷数(ここでは6)、Eは運動エネルギー(ここでは400)[MeV/u]、Eは静止エネルギー(931)[MeV/u]、Aは質量数(ここでは12)である。
Figure 0006255549
≪セクターコイルユニットが形成する磁場≫
上述したように形成されたセクターコイルユニット4,4が生成する磁場は、次に説明するように、等時性磁場中の加速粒子に強い集束力をもたらす。
図2(a)に模式的に示すように、磁極のギャップがヒルで狭くバレーで広いものを考えると、図2(b)に示すように、荷電粒子(Ion)の軌道は円軌道(Circle)から歪んだ軌道をとり、粒子はヒルの部分にκという角度をもって入り又出て行く。この場合、図2(a)で示されるように、磁力線がヒルとバレーの境界で歪み、その近傍で磁場の方位角成分が生じている。尚、ここではまずヒルとバレーの境界が放射方向に沿う直線状である図2(b)の場合(ラジアルセクター型)を考える。この場合を基にした、ヒルとバレーの境界が放射方向に沿う螺旋状である場合(スパイラルセクター型)の考察については、後述する。
図2(a)で「ω=q/mB」と「Bρ=const.」の関係を用いて幾何学の問題を解くと、次の[数2]となる。
Figure 0006255549
図2(c)のように、速度vの粒子が角度αでエッジを横切る場合を考えると、z方向の粒子の運動方程式は、次の[数3]となる。ここで、Bは磁場の水平成分のエッジに垂直な方向の値であり、エッジの付近で有限な値をもつ。又、「s=vt」というパラメータを導入すると、z方向の運動量pの変化を与える式は、[数3]より、次の[数4]となる。
Figure 0006255549
Figure 0006255549
エッジを横切るときのz方向の運動量の総変化量Δpは、図3(a)で定義されるパラメータを用いて、次の[数5]で表される。
Figure 0006255549
一方、ストークスの定理より、P1−P2−P3−P4−P1に沿っての閉積分は「▽×B=0」だから、次の[数6]となる。P2−P3に沿っての積分は磁場の値が0であるため、又P3−P4に沿っての積分は磁場と積分経路が直交しているため、どちらも0となる。従って、次の[数7]となり、結局[数8]となる。
Figure 0006255549
Figure 0006255549
Figure 0006255549
[数8]より、αが正のとき(図2(c)の場合)粒子は集束作用を受ける。よって、焦点距離fは次の[数9]となり、斜め入射による集束は次の[数10]で与えられる。ここで、ΔBはヒルとバレーの磁場の強さの差である。
Figure 0006255549
Figure 0006255549
これらの値が求まると、転送行列を用いてベータトロン振動数を求めることができる。z方向の運動の1ユニット分の転送行列は、ヒルの中での自由運動、エッジでの集束、バレーの中での自由運動、エッジでの集束のそれぞれの転送行列の積で与えられ、つまり次に示す[数11]のようにFOFOで与えられることになる。
Figure 0006255549
この行列の積を実行し、次の[数12]の関係を使うと、結局[数13]が得られる。ここで、μはフェイズアドバンス(phase advance)と呼ばれる量である。
Figure 0006255549
Figure 0006255549
従って、z方向のベータトロン振動数は、次の[数14],[数15]となり、−βγとフラッターFの和で与えられることになる。
Figure 0006255549
Figure 0006255549
各セクターコイルユニット4では、上下のセクターコイル41a,41b,41c・・により生成されるヒルとバレーの境界に対する加速粒子の斜め入射角度が大きくなるように、即ち当該境界が加速平面の中心から外側にかけて螺旋を描くようなスパイラル形状となるように、各スパイラルセクターコイル41a,41b,41c・・が形成されている。
図3(b)にスパイラル状の境界をもつヒルとバレー(スパイラルセクター型)ないし円軌道を模式的に示し、図3(c)に円軌道と加速軌道(平衡軌道)の関係を示す。
図3(b)のε、即ちヒル・バレー境界線の接線と、当該接線の接点を通る円軌道に対する当該接点を通る垂線(接点を通る半径)とのなす角は、スパイラル角と呼ばれる。このεと円軌道とのずれ角κに対して、斜め入射角度は、ヒルに入るときにε+κ、出るときにε−κとなる。そして、入るときには集束を受け、出るときに発散を受けて、総合すると強い集束を受ける。これは、集束・発散を交互に繰り返すAG(Alternating Gradient)集束になっていることを示している。κは、ラジアルセクター型の場合と同様[数2]で与えられる。又、エッジのところでの集束・発散の大きさは次の[数16]で与えられ、更に転送行列はFODOで与えられ[数17]のようになる。
Figure 0006255549
Figure 0006255549
よって、スパイラルセクター型のフェイズアドバンスは次の[数18]の通りとなる。
Figure 0006255549
従って、スパイラルセクター型AVFサイクロトロンのz方向のベータトロン振動数は、次の[数19]あるいは[数20]となり、ラジアルセクター型のFによる項のファクターに2tanεの項が付け加わったことになる。コイルユニット1を有するサイクロトロンでは、εが50度であるため、このファクターの値が4といった大きなものとなり、強い集束力を得ることができる。尚、このようなベータトロン振動数の値を適正な大きさとする観点から、半径方向で半分より外側において好ましくはεを20〜40度とする。
Figure 0006255549
Figure 0006255549
そして、このように加速平面における各種半径において90度未満のスパイラル角εの付与される磁場を生成するために、各セクターコイル41a,41b,41cの形状(外形,巻線方向)は、曲げ半径を所定値以上としながらも、同様に各種半径に対し90度未満(60度前後)のスパイラル角εを有する螺旋状に湾曲した扇形とされている。尚、図4に、半径位置とスパイラル角ε及びZ軸方向のベータトロン振動数の関係を示す。
≪加速平面に形成される磁場≫
図5(b)に、図5(a)の一点鎖線の円周上(加速平面内)において生成される鉛直方向の磁場成分Bの分布を示す。尚、当該円周の一部は、一組のセクターコイル41a,41b,41cの中心線の近傍を通る。又、図5(b)の上部における下向きの「{」は、一組のセクターコイル41a,41b,41c内となる領域を示すものである。
図5(b)によれば、一組のセクターコイル41a,41b,41cにより、4〜6T(40000〜60000G(ガウス))程度のヒルが形成できていることが分かる。尚、バレーは、2.5〜3.2T程度となっており、スパイラル角は60度以上となっていて、フラッターは0.09以上となっている。60度以上のスパイラル角や0.09以上のフラッターは、鉛直方向の集束力を確保して重粒子のビーム軌道を安定させるために必要となる。
そして、加速平面においては、外周部に行くに従い強度が約4Tから約7Tにかけて大きくなる等時性磁場が形成されると共に、円周方向における強度の強い部分(ヒル)と弱い部分(バレー)のAVF磁場が生成されている。ヒルとバレーの境目は、その接線と半径方向とのなす角であるスパイラル角εを90度未満として半径方向から傾くようスパイラル状に形成され、又フラッターを十分確保した状態とされている。
従って、コイルユニット1を備えたサイクロトロンでは、加速平面において、重粒子である炭素6価イオンを400MeV/核子程度まで発散せずに加速可能な磁場分布が形成可能となっている。但し、加速平面の中央付近では、センターコイル6,6無しでは磁場強度が比較的に弱くなるため、コイルユニット1を備えたサイクロトロンでは、加速平面の中央部上下に超電導導体製の空芯のセンターコイル6,6を配備して、加速平面中心領域の磁場につき、強度を補うと共に、集束効果のある中心バンプが付与された状態とする。
図4や図5(a)で示されるように、ヒルを形成するセクターコイル41a,41b,41cを分割して形成することで、次に例示するようなメリットが得られる。第1に、等時性磁場の形成において、セクターコイル41a・セクターコイル41b・セクターコイル41cの順にコイル電流値を高めることによって、半径方向の磁場勾配の調整に自由度が加わる。第2に、ビーム軌道中心の調整において、同じ半径上に軸対称に配置されたコイルの電流値を同一の値からそれぞれ増減させてアンバランスさせることにより、周回方向の磁場分布を非対称化して、ビーム軌道のセンタリングや偏心の調整につき自由度を高められる。第3に、空間配置の自由度が得られ、自由度の高い設計によりコイルの強度確保や断線発生の低減化を図りながら、60度以上の充分なスパイラル角を確保することができる。即ち、状況や生成したい磁場(目標磁場)に応じ、セクターコイル41a,41b,41cの電流値や電圧値(更には適宜冷却温度や巻数や材質)等を互いに異なるものに変更することができ、より高い磁場制御性が得られ、より柔軟な運用を実行可能である。
[第2形態]
≪全体構成≫
第2形態のサイクロトロンは、セクターコイルユニットの他は、第1形態と同様に成る。同様に成る部分は適宜同符号を付して説明を省略し、以下同様とする。図6に、第2形態のセクターコイルユニット7,7を示す。尚、図6(a)に記載された軸はX軸及びY軸であり、軸の数値は大きさ(cm)である。
≪セクターコイルユニット≫
各セクターコイルユニット7において、一組のセクターコイル41a,41b,41cに対し、2つの補助セクターコイル71a,71bが追加されている。セクターコイル41a,41b,41cは片側のセクターコイルユニット7において4組あるので、片側で8個、両側の合計では16個の補助セクターコイル71a,71b・・が配置されている。
補助セクターコイル71a,71b・・は、互いに同様な形状(角丸矩形状)となっており、セクターコイル41a等と同様に巻かれ、カバーされ、電源や制御装置と電気的に接続されている。補助セクターコイル71a,71b・・は、上下方向において、センターコイル6,6の何れかと同様の位置に配置されている。各補助セクターコイル71aは、セクターコイル41a,41bの間の外側に配置され、各補助セクターコイル71bは、セクターコイル41b,41cの間の外側に配置されている。尚、セクターコイル41a,41b及びセクターコイル41b,41cは、一組のセクターコイル41a,41b,41cの中心線にほぼ直交する間隙を持つようにそれぞれ分けられており、平面視でそれら間隙の何れかに沿う状態で、補助セクターコイル71a,71b・・が配置されている。
≪加速平面に形成される磁場≫
図7(b)に、図7(a)の一点鎖線の円周上(加速平面内)において生成される鉛直方向の磁場成分Bの分布を示す。尚、当該円周の一部は、一組のセクターコイル41a,41b,41cないし補助セクターコイル71a,71bの中心線の近傍を通る。又、図7(b)の上部における下向きの「{」は、一組のセクターコイル41a,41b,41cないし補助セクターコイル71a,71b内となる領域を示すものである。図7(a)のコイルシステムは、補助セクターコイル71a,71b・・の幅を若干狭くしたことを除き、図6のコイルシステムと同等である。
図7(b)によれば、一組のセクターコイル41a,41b,41cないし補助セクターコイル71a,71bにより、5〜6T程度のヒルが形成できていることが分かる。特に、第1形態(図5(b))において現れていた、セクターコイル41a,41bの間と、セクターコイル41b,41cの間に対応する磁場強度の相対的な落ち込みが、前者において約4Tから約4.7Tに、又後者において約4.4Tから約5.2Tに、それぞれ軽減されている。
よって、セクターコイルユニット7を備えた第2形態のサイクロトロンにおいても、重粒子である炭素6価イオンを400MeV/核子程度まで発散せずに加速可能な磁場分布が形成可能となっており、セクターコイルユニット7を分割して形成した際に生じるヒルの磁場強度の相対的な低下を適切に補うことができる。又、更に補助セクターコイル71a,71bを含め、フレキシブルな配置や制御が可能となる。
[第3形態]
≪全体構成≫
第3形態のサイクロトロンは、セクターコイルユニットの他は、第1形態や第2形態と同様に成る。同様に成る部分は適宜同符号を付して説明を省略し、以下同様とする。図8に、第3形態のセクターコイルユニット8,8・・を示す。
≪セクターコイルユニット≫
各セクターコイルユニット8において、一組のセクターコイル81a,81b,81cは、平面視で互いに一部重なるように配置されている。具体的には、セクターコイル81bは、セクターコイル81a,81cより上下方向で外側に配置され、セクターコイル81a,81cにそれぞれ平面視でオーバーラップするような大きさとなっている。
更に、各セクターコイルユニット8では補助セクターコイル71a,71b・・も設けられている。補助セクターコイル71a,71b・・は、セクターコイル81bの外側に配置される。各補助セクターコイル71aは、平面視でセクターコイル81a,81bの重なり部分を囲むように配置され、各補助セクターコイル71bは、平面視でセクターコイル81b,81cの重なり部分を囲むように配置される。
≪加速平面に形成される磁場≫
図9(b)に、図9(a)の一点鎖線の円周上(加速平面内)において生成される鉛直方向の磁場成分Bの分布を示す。尚、当該円周の一部は、一組のセクターコイル81a,81b,81cないし補助セクターコイル71a,71bの中心線の近傍を通る。又、図9(b)の上部における下向きの「{」は、一組のセクターコイル81a,81b,81cないし補助セクターコイル71a,71b内となる領域を示すものである。図9(a)のコイルシステムは、補助セクターコイル71a,71b・・の幅を若干狭くしたことを除き、図8のコイルシステムと同等である。
図9(b)によれば、一組のセクターコイル81a,81b,81cないし補助セクターコイル71a,71bにより、5〜6T程度のヒルが形成できていることが分かる。特に、第1形態(図5(b))に比較的大きく現れ、又第2形態(図7(b))に比較的小さく現れていた、セクターコイルの間における磁場強度の相対的な落ち込みが、中心側のセクターコイル間で約5.1Tまで補充され、外周側のセクターコイル間で約5.4Tまで補充されている。又、一組のセクターコイル81a,81b,81cないし補助セクターコイル71a,71bの中心線上における磁場強度分布が、外側ほど強い等時性磁場として充分に滑らかなものとなっている。尚、バレーにおける磁場強度は、3.5T程度となっている。
よって、セクターコイルユニット8を備えた第3形態のサイクロトロンにおいても、重粒子である炭素6価イオンを400MeV/核子程度まで発散せずに加速可能な磁場分布が形成可能となっており、セクターコイルユニット8を分割して形成して柔軟で的確な運用を可能としながら、極めて滑らかな等時性磁場及びAVFに係る磁場分布を実現することができる。
≪加速平面に形成される磁場の調整≫
図10に、図9(a)のコイルシステムにおいて、図9(b)の場合に対し各コイルの電流値を異なる値に設定した際に生じる磁場の、同一半径の同心円経路におけるZ軸方向の平均磁場強度を示す。
図10(a)では、メインコイルユニット2(第1スプリットコイル21や第2スプリットコイル22)の電流値を比較的に下げると共に、セクターコイル81aの電流値を比較的に上げる等、セクターコイル81a,81b,81cの電流値の設定を調整することにより、全体的な磁場強度や半径方向の磁場勾配等を調整することができている。即ち、図9(b)に比べ、ヒルの最高磁場強度が若干抑えられると共に、バレーの最低磁場強度が上げられており、更にヒルとバレーの間の勾配がなだらかに調整されている。そして、このように調整されることにより、炭素粒子が半径90cmにおいて核子当たり200MeVに達するよう加速可能な等時性磁場をより容易に形成することができる。
図10(b)では、メインコイルユニット2(第1スプリットコイル21や第2スプリットコイル22)の電流値を比較的に上げると共に、セクターコイル81aの電流値を更に上げる等、セクターコイル81a,81b,81cの電流値の設定を調整することにより、全体的な磁場強度や半径方向の磁場勾配等を更に別の態様に調整することができている。即ち、図9(b)に比べ、ヒルの最高磁場強度が同等以上に上げられていると共に、バレーの最低磁場強度が5T程度に上げられており、更にヒルとバレーの間の勾配がなだらかに調整されている。そして、このように調整されることにより、炭素粒子が半径90cmにおいて核子当たり350MeVに達するよう加速可能な等時性磁場をより容易に形成することができる。
よって、第3形態のサイクロトロンでは、セクターコイルユニット8の電流値の設定を変えることで、生成される磁場の態様を様々なものに調整することができ、その調整は、メインコイルユニット2の電流値の設定のみを変える場合に比して、多様に行うことができる。従って、第3形態のサイクロトロンでは、各コイルにおける電流等を調整することでフレキシブルな運用を行うことができる。
又、図11(a)に、図9(a)のコイルシステムにおいて、図9(b)の場合に対し所定のセクターコイルユニット8の電流値を異なる状態に設定した際に生じる磁場の、半径40cmの同心円経路における方位角方向の平均磁場強度を示す。セクターコイルユニット8の電流値は、図9(b)の場合を基準として、次のように設定する。即ち、上下で1組として4組ある内側のセクターコイル81a,81a・・のうち、対向する(センターコイル6の鉛直な中心軸を基準として180度点対称の位置にある)2組のセクターコイル81a,81aの電流値を変更する。セクターコイル81a,81aの一方の組の電流値を所定量だけ大きくし、もう一方の組の電流値を当該所定量と同じ量だけ小さくする。尚、他の2組のセクターコイル81a,81aの電流値は変更しない。
セクターコイル81a,81a・・は、上記のような電流値の設定により、主に加速平面の内側部分に対して、サイクロトロン中心を含む鉛直面を基準として左右で非対称な磁場強度成分を生成する。そして、他のコイルが生成する磁場強度成分と合わせることで、図11(a)に示すような、ヒルによって最大磁場強度が異なるような非対称である磁場を、加速平面の内側部分において生成することができる。即ち、方位角10度や190度付近では最大磁場強度が7T程度の中度のヒルが形成され、方位角100度付近では最大磁場強度が8T程度の比較的に強いヒルが形成され、方位角280度付近では最大磁場強度が6T程度の比較的に弱いヒルが形成される。このとき、平均磁場強度は、図9(b)の場合とさほど変わらない。比較的に強いヒルは、電流値を大きくした1組(上下一対)のセクターコイル81aによりもたらされ、比較的に弱いヒルは、電流値を小さくした1組のセクターコイル81aによりもたらされる。このような磁場では、特に、粒子を加速し始めた初期段階での加速途中の粒子の軌道中心をサイクロトロン中心にほぼ一致させる(センタリングする)ように調整することが可能になり、加速軌道の安定性を更に高めることが可能となる。
加えて、図11(b)に、図9(a)のコイルシステムにおいて、図9(b)の場合に対し所定のセクターコイルユニット8の電流値を更に異なる状態に設定した際に生じる磁場の、半径90cmの同心円経路における方位角方向の平均磁場強度を示す。セクターコイルユニット8の電流値は、図9(b)の場合を基準として、次のように設定する。即ち、上下で1組として4組ある外側のセクターコイル81c,81c・・のうち、対向する2組のセクターコイル81c,81cの電流値をそれぞれ変更する。セクターコイル81c,81cの一方の組の電流値を所定量だけ大きくし、もう一方の組の電流値を当該所定量と同じ量だけ小さくする。尚、他の2組のセクターコイル81c,81cの電流値は変更しない。
セクターコイル81c,81c・・は、上記のような電流値の設定により、主に加速平面の外側部分に対して、サイクロトロン中心を含む鉛直面を基準として左右で非対称な磁場強度成分を生成する。そして、他のコイルが生成する磁場強度成分と合わせることで、図11(b)に示すような、ヒルによって最大磁場強度が異なるような非対称である磁場を、加速平面の外側部分において生成することができる。即ち、方位角160度や340度付近では最大磁場強度が8T強程度の中度のヒルが形成され、方位角250度付近では最大磁場強度が9.5T程度の比較的に強いヒルが形成され、方位角70度付近では最大磁場強度が8T弱程度の比較的に弱いヒルが形成される。このとき、平均磁場強度は、図9(b)の場合とさほど変わらない。比較的に強いヒルは、電流値を大きくした1組のセクターコイル81cによりもたらされ、比較的に弱いヒルは、電流値を小さくした1組のセクターコイル81cによりもたらされる。このような磁場では、加速平面の外側部分を通過する加速粒子に係る軌道中心のズレを補正する(偏心させる)ことが可能となる。特に、加速粒子を取り出す直前においては、加速途中の粒子と取り出す粒子の軌道の間隔が大きくなるように調整することができ、従って、加速した粒子を取り出す効率を高めることが可能となる。
第3形態のサイクロトロンでは、同種のコイルにおける電流値を互いに異なるように調整することによっても、軌道中心を加速平面中心に一致させたり、取り出し用の軌道を加速途中の軌道から離したりといった、有用な効果が適宜得られるようなフレキシブルな運用を行うことができる。
[各形態の効果]
このように、第1〜第3形態のコイルシステムでは、酸化物超電導導体を巻いて成る空芯のコイルによって、ヒルバレーが存在する非常に強い等時性磁場を形成している。よって、重粒子線がん治療に必要な重粒子の加速につき、各コイルシステムを有するサイクロトロンで行うことができる。そして、各コイルシステム自体の寸法は直径約4m×高さ約2mとなり、周辺装置を含めても数十平方メートル(m)程度の設置面積で済む等、コイルシステムやサイクロトロンを非常にコンパクトに小型化することができる。更に、各コイルシステムやサイクロトロンが小型であり、又コイルシステムを構成する各種コイルが空芯であるため、製作に要する材料(特に比較的高価な超電導線材)の量を低減することができ、冷却のためのシールド等の構造もシンプルなものとすることができ、運転に必要な電力量も低減することができ、運転に係る制御も比較的に簡易なものとすることができて、導入コストや運用コストを低廉なものとすることができ、保守も簡単に行うことができて保守コストも低廉なものとすることができる。
加えて、各種コイルを超電導状態とし、超電導状態による励磁を行うため、これらコイルに付加する電力量の低減に寄与するし、ジュール発熱が生じず冷却媒体の冷却エネルギーも比較的に少なく済み、運転に必要な電力量の低減を図ることができる。又、小型且つ空芯であるため冷却媒体の量が少なく、又ジュール熱を生じないこと等により、停止状態から高磁場状態(粒子加速可能状態)となる時間を短時間とすることができ、効率良く粒子加速を行うことができる。更に、ジュール熱を生じないこと等により、各種コイルに熱変形が生じる事態を防止することができ、磁場分布の変動を防止して、安定した等時性磁場ないしAVF磁場、中心バンプの形成、あるいは粒子加速の安定動作の確保等を行うことができる。
又、センターコイル6につき酸化物超電導導体を巻いて空芯で形成し、超電導状態による励磁を行うため、粒子導入直後ないし加速初期において粒子を十分に集束させるために必要となる中心バンプ磁場について、全体的に高磁場となる中においてもコンパクトな装置により効率良く生成することができ、がん治療等で極めて有用な重粒子さえも導入当初から安定して十分に加速可能となる。
更に、同一のヒル磁場を形成するためのセクターコイルを、加速平面側からみて複数の領域となるよう、複数のコイルで分割して形成したので(セパレートスパイラルセクターコイル)、各コイルの形状等を調整することで柔軟な設計を施すことができるし、各コイルにおける電流等を調整することでフレキシブルな運用を行うことができ、このような柔軟な設計や運用により、各種コストを低減しながら重粒子を充分な速度まで安定して加速可能にすることができる(第1〜第3形態)。又、加速平面側からみてセクターコイルにおける各コイルの間に重なる補正セクターコイルを設けたので(第2,第3形態)、領域の分割により発生する磁場強度の一部低下を補充したり、更に柔軟な設計や運用を実行可能にしたりできる。加えて、セクターコイルにおける各コイルを(互いに加速平面に交わる方向にずらすことで)加速平面側からみて一部重なるように配置したので(第3形態)、領域の分割により発生する磁場強度の一部低下を可及的に発生しないようにすることができる。そして、以上の特性により、重粒子線を加速可能な粒子加速器の普及を促進することができ、重粒子線がん治療を実施可能な病院が増加する等、多大な効果を奏することができる。
[各形態の変更例]
尚、主に上記形態を変更して成る、本発明の他の形態を例示する。コイルの数は様々に変更でき、片側のメインコイルユニットにおいて1個あるいは3個以上として良いし、片側のスパイラルセクターコイルユニットにおいて3個以下あるいは5個以上として良いし、片側のセンターコイルにつき複数としても良い。即ち、各種のコイルユニットにおける各種コイルの数は、単数あるいは複数とすることができ、例えばセンターコイルについて単数又は複数のセンターコイルが含まれるセンターコイルユニットを考えることができる。但し、セクターコイルユニットにあっては、集束の観点から、ヒル領域(バレー領域)を3つ以上とするため、3組以上のセクターコイルが含まれることが必要となる。尚、複数のセンターコイルを含むセンターコイルユニットの例として、平面視で同心円状に配置し、上下方向において径の小さいものほど加速平面から離れるように配置したものを挙げることができる。
各種コイルの寸法や配置につき、磁気勾配形状や磁束密度の高さ等に応じて微調整し、あるいは変更することができる。一方のメインコイルユニットは、他方のメインコイルユニットにおける全てのコイルに対して鏡面対称であるコイルのみから成る必要はなく、他方のメインコイルユニットにはない微調整用のコイルを追加して配備する等、他方のメインコイルユニットに属する複数のコイルに対して鏡面対称であるコイルを含むのであればどのような構成を採用しても良く、セクターコイルユニットやセンターコイルユニットについても同様である。
又、メインコイルユニットにおける各種コイルにつき、帯状の超電導線材をパンケーキ巻きして形成されたパンケーキコイルを用いて構成する。各メインスプリットコイル及び補正スプリットコイルは、中央に孔を有する円盤状(環状)のパンケーキコイルにつき、複数重ねることで積層構造をとるように(積層パンケーキコイルとして)構成される。このようなメインコイルユニットを含むサイクロトロンにあっても、強度の高い等時性磁場につき、小型で低コストで普及容易な装置において形成することができる。しかも、パンケーキコイルあるいはその積層体で形成することにより、励磁時において電磁力が圧縮応力として線材構成材(ハステロイ)に対して印加されるようにすることができ、各コイルの機械的強度を高くして挫屈を回避することができて、耐久性を一層向上し、又高磁場をより安定した状態で生成することができる。尚、パンケーキコイルは、積層せず単独で用い、積層数を様々にし、あるいは層毎の厚みや巻き数や線材の種類・寸法等を様々にすることができ、メインコイルユニットは、ソレノイドコイル、パンケーキコイル、又は積層パンケーキコイルの組合せとして良い。
冷却媒体の温度につき、20K以外として良い。等時性磁場やAVF磁場につき、超電導線材あるいは酸化物超電導線材を用いないコイルや、強磁性体により作成して良い。
一つのヒル領域に対応する一組のセクターコイルにおける分割数を2又は4以上として良い。又、複数組の一部のみセパレートセクターコイルとしても良いし、互いに分割数を異ならせても良い。鏡面対称の関係にある組同士の分割数や形状や配置等を合わせても良いし、異ならせても良い。一組のセクターコイルの全コイルや一部のコイルを共通のシールドや制御装置等に収めても良い。一組のセクターコイルのコイルを互いに重ねる場合や、当該コイルに補助セクターコイルを重ねる場合に、重なり量や重なり部分の形状、あるいは上下方向のズレ量等を様々に変更して良い。
本発明の空芯型サイクロトロンによれば、小型で低コストな構成によって極めて強度の高い等時性磁場及びAVF磁場並びに中心バンプ磁場を提供することができ、本発明の空芯型サイクロトロンは、各種医療機関用の医療用加速器に採用可能であることはもちろん、最大級の規模を有しない研究機関においても容易に導入可能な実験用サイクロトロンを作製するために採用することも可能であるし、バイオテクノロジーや新材料開発等の分野における小型・低コスト且つ高エネルギーのイオン照射装置を構成するために採用することも可能であるし、診断用の粒子加速器の作成のために用いることも可能であり、本発明の重粒子の加速が可能な空芯型サイクロトロンは、様々な用途を有する。
適用可能な分野の例としては、ナノ構造体等を形成する新材料創製や、光学機器、高性能分離膜、マイクロナノマシン、高効率熱交換器、新エネルギー創製、高度半導体、高機能膜生成、容量の巨大なイオン交換膜の形成や、光導波路、光学スイッチ、高性能グレーティング、反射防止膜、ナノフィルター、微細な機械部品、超撥水膜、微細フィンを備えた高性能熱交換器の形成、構造制御された医薬品放散システム、高性能燃料電池、高精度イオン注入、表裏で性能の異なる一体型ハイブリット膜の創製に係る各分野を挙げることができる。
又、特にがん治療用重粒子加速器とした場合には、次に説明するように、本発明の空芯型サイクロトロンによって、がんに対し非常に効果的な重粒子線の照射を効率良く実施することができ、多数のがん患者に対し治療を施してQOLの向上を提供することができ、社会的負担(Social Cost)が顕著に低減される。
即ち、炭素6価イオン線等の重粒子を水平垂直の2門で照射することで、エネルギー吸収量の高い位置をがん患部の位置に集中させることができ、又その集中性につきX線やガンマ線に対して遙かに高水準とし、陽子線と比しても更に急峻な境界をもつものとすることができ、患部以外の部位に対して低負担となり治療の負担が軽減され、患部のみに線量を集中させてがん細胞に対する生物学的効果(細胞致死効果)をX線や陽子線の3倍程度とすることができ、比較的に短い照射時間で効果を上げることができて分割照射回数を少なくしあるいは治療期間や入院期間を短くしあるいはリハビリテーション期間を不要又は極めて短くすることができ、外科的切除や他の放射線治療に比して身体的負担や費用負担等の極めて少ないがん治療を実施することができる。又、その線量の集中性等により、低酸素がん(中期以降の大きな腫瘍)や放射線抵抗性がん(腺がん・骨肉腫等のがん)に対しても有効である場合を生じ、難治がんに対する治療にも利用することができる。そして、低負担で原則手術不要であること等により、高齢者や他病保有者等であっても治療の可能性を見出すことができるし(治療対象者の拡大)、患者のQOL向上を図ることができ、ひいてはSocial Costを低減することができる。本発明の空芯型サイクロトロンによれば、このように顕著な効果を奏する機器の普及を促進することが可能となる。
1・・コイルシステム、2・・メインコイルユニット、4,7,8・・セクターコイルユニット、41a〜41c,81a〜81c・・セクターコイル、71a,71b・・補助セクターコイル。

Claims (7)

  1. 超電導導体を空芯で巻いて形成されるセクターコイルを複数有し、一又は複数のヒル磁場を形成するセクターコイルユニットを備えており、
    前記セクターコイルは、一つのヒル磁場を複数のセクターコイルの組で形成するように配置される
    ことを特徴とする空芯型サイクロトロン。
  2. 前記セクターコイルユニットは、前記セクターコイルの組における当該セクターコイルの間にオーバーラップして配置される補助セクターコイルを含んでいる
    ことを特徴とする請求項1に記載の空芯型サイクロトロン。
  3. 前記セクターコイルの組における当該セクターコイルの少なくとも一部が、互いにオーバーラップするように配置される
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空芯型サイクロトロン。
  4. 前記セクターコイルユニットは、3個以上のヒル磁場を形成するものであり、
    当該ヒル磁場のそれぞれが、前記複数のセクターコイルの組で形成され、
    前記複数のセクターコイルの組は、それぞれ全体として湾曲する扇形に沿う形状である
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の空芯型サイクロトロン。
  5. 前記セクターコイルユニットは、加速磁場を中心として互いに鏡面対称に配置されている
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載の空芯型サイクロトロン。
  6. 前記超電導導体は、酸化物超電導導体である
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の空芯型サイクロトロン。
  7. 前記酸化物超電導導体は、ビスマス系酸化物超電導体、又は、RE−123系酸化物超電導体(REBaCu7−δ、REはイットリウムを含む希土類元素)である
    ことを特徴とする請求項6に記載の空芯型サイクロトロン。
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