JP6254811B2 - 含窒素複素環カルベン配位子を有する有機金属化合物、これを含む触媒およびアミン化合物の製造方法 - Google Patents

含窒素複素環カルベン配位子を有する有機金属化合物、これを含む触媒およびアミン化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、新規な有機金属化合物に関する。また、本発明は、前記有機金属化合物を含む、実用性に優れた触媒に関する。さらに本発明は、イミンの水素化、還元的アミノ化反応における前記触媒の利用に関する。
イミンの水素化によるアミン化合物の製法は、アミン化合物の製造法のための標準的な製造方法の一つである。光学活性なアミンの製造方法として、不斉水素化反応のほかに光学活性イミンのジアステレオ選択的な水素化または還元反応による製法が知られている。従来より知られている水素化または還元反応によるジアステレオ選択的な製造方法として、1)不均一系触媒として、ラネーNi、Pd/活性炭などの固体触媒を用いた水素化反応による方法、2)NaBHやLiBHEtなどのホウ素系反応剤をヒドリド還元剤として用いる方法、3)均一系触媒として金属錯体触媒を用いる方法、などが知られている。
1)の方法はJ. Org. Chem. 1986, 51, 3635-3642. (非特許文献1)やLiebigs. Ann. Chem. 1990, 8, 795-805. (非特許文献2)やOrganic Process Research & Development 2010, 14, 890-894. (非特許文献3)などに記載されている。
しかしながら、固体触媒を用いた水素化反応による製造方法は、炭素−炭素多重結合部位、シアノ基、ニトロ基などの官能基をもつ基質には適用した場合、それらの官能基を損なう問題点を有している。
2)の方法としては、Synlett. 1994, 2, 142-144. (非特許文献4)やAccount of Chemical Research. 2007, 40, 1377-1384. (非特許文献5)に記載されているNaBHを用いる方法や、J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 11276-11282. (非特許文献6)に記載されているLiBHEtを用いる方法などが知られている。しかしながら、NaBHは発火性があり、同化合物を用いる方法はスケールアップ時に問題がある。LiBHEtを用いる方法は、ヒドリド源が分子内に1つのみであるため過剰量用いる必要があるなどの問題点がある。
また、3)の方法として、Tetrahedron. Asymmetry, 1993, 215-222(非特許文献7)にはジホスフィン配位子を有するロジウム錯体存在下、光学活性フェネチルアミンを有するイミンの水素化反応により、光学活性アミンを得る製造方法が記載されているが、高圧条件下(50気圧以上)での反応であり、基質/触媒モル比も50と安全性や反応操作性、経済性の面から工業的実施においては問題がある。Tetrahedron. Lett, 2011, 789-791(非特許文献8)にはアキラルなβ-アミノアルコールを配位子にもつルテニウム錯体を用いた光学活性スルフィニルイミンの水素移動型反応による製造方法があるが、基質/触媒モル比が10で、基質であるスルフィニルイミンは高価であり、経済性の面から問題がある。Angew. Chem.Int, 2007, 4523-4526(非特許文献9)には光学活性リン酸ジエステルを配位子にもつイリジウム錯体を用いた光学活性イミンの水素化反応による製造方法が知られているが、高圧条件下(50気圧以上)での反応であり、基質/触媒モル比も100と問題があり、これら方法では光学活性アミンの効率的な製造方法にはなり得ない。
また、イミンを経由せずにケトンから直接アミンを得る方法として、アンモニア、または、第一級若しくは第二級アミン化合物とカルボニル化合物との反応によるアミン化合物の製法は、還元的アミノ化反応として知られ、アミン化合物製造のための標準的方法の一つである。従来より知られている還元的アミノ化反応によるアミン化合物の製造方法として、1)不均一系触媒として、ラネーNi、ラネーCo、Pt/活性炭、Pd/活性炭などの固体触媒を用いた水素化反応による方法、2)NaBHCNやNaBH(OAc)などのホウ素系反応剤をヒドリド還元剤として用いる方法、3)均一系触媒として金属錯体触媒を用いる方法、などが知られている。
1)の方法はJ. Am. Chem. Soc. 1941, 63, 749-751. (非特許文献10)やJ. Org. Chem. 1962, 27, 2205. (非特許文献11)などに記載されている。
しかしながら、固体触媒を用いた水素化反応による製造方法は、前述した問題点がある。
2)の方法としては、a)J. Am. Chem. Soc. 1971, 93, 2897-2904. (非特許文献12)に記載されているNaBHCNを用いる方法、b)J. Org. Chem. 1996, 61, 3849-3862. (非特許文献13)に記載されているNaBH(OAc)を用いる方法、c)J. Org. Chem. 1995, 60, 5995-5996. (非特許文献14)に記載されているピリジンボランを用いる方法、d)JP2004256511.に記載されている2−ピコリンボランを用いる方法、e)Tetrahedron Letters 2008, 49, 5152-5155. (非特許文献15)に記載されている5−エチル−2−メチルピリジンボランを用いる方法などが知られているが、これらの方法は、反応剤の毒性、溶解性、安定性、および、反応剤の除去などの問題から工業的実施が困難である場合がある。
また、3)の方法として、特許第4059978号(特許文献1)には水素化触媒存在下、カルボニル化合物、アンモニア、および水素を反応させることにより第一級アミンを得る製造方法、Chem. Comm., 2000, 1867-1868.(非特許文献16)にはホスフィン配位子を有するロジウム錯体を用いた水素化反応による方法、Org. Lett. 2002, 4, 2055-2058.(非特許文献17)には[Rh(cod)Cl]錯体とTPPTS配位子の組み合わせによる水素化反応による方法、J. Org. Chem. 2002, 67, 8685-8687.(非特許文献18)には[Cp*RhCl]を錯体触媒に用い、ギ酸アンモニウムをアミン源、および水素源とする方法、特表2004−537588(特許文献2)には還元剤として水素供与体、およびRu、Rh、Irからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する遷移金属錯体触媒の存在下で、カルボニル化合物とアミン化合物との還元的ヒドリド移動アミノ化による方法が知られているが、いずれの方法も、触媒のコストなどの経済的な問題で、工業的実施の際に問題がある。
アミン源として光学活性なアミンを用いたジアステレオ選択的な還元的アミノ化反応により、光学活性アミンを取得する方法も知られている。Adv. Synth. Catal. 2010, 352, 753-819.(非特許文献19)には、光学活性α―メチルベンジルアミンをアミン源として用い、Ti(O−i−Pr)やYb(OAc)などのルイス酸共存下、Raney Ni、Pd/C、またはPt/Cなどの固体触媒を用いる方法が知られている。また、同文献には光学活性なtert−ブチルスルフィンイミドをアミン源として用い、Ti(O−i−Pr)存在下、反応温度−78℃にてDIBALまたはL−Selectrideを用いる方法が知られているが基質/触媒モル比が低い、極低温反応を要するなどの問題がある。
特開2010−235604(特許文献3)、および特開2012−062270(特許文献4)に示された方法は、水素源としてギ酸やギ酸アンモニウムを用いる還元的アミノ化反応が記載されているものの、光学活性アミンの製造方法については、実施されていない。
特許第4059978号公報 特表2004−537588号公報 特開2010−235604号公報 特開2012−062270号公報
Eleveld, M. et al., J. Org. Chem. 1986, 51, 3635-3642. Bringmann, G. et al., Liebigs. Ann. Chem. 1990, 8, 795-805. Muslehiddinoglu. J. et al., Organic Process Research & Development 2010, 14, 890-894. Moss, N. et al., Synlett. 1994, 2, 142-144. Federsel, H. et al., Account of Chemical Research. 2007, 40, 1377-1384. Kochi, T. et al., J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 11276-11282. Lensink, C. et al., Tetrahedron. Asymmetry, 1993, 215-222. Guijarro, D. et al., Tetrahedron. Lett, 2011, 789-791 Reez, M. et al., Angew. Chem.Int, 2007, 4523-4526 Emerson, W. et al., J. Am. Chem. Soc. 1941, 63, 749-751.
Johnson, H. et al., J. Org. Chem. 1962, 27, 2205. Borch, R. et al., J. Am. Chem. Soc. 1971, 93, 2897-2904. Abdel-Magid, A. et al., J. Org. Chem. 1996, 61, 3849-3862. Bomann, M. et al., J. Org. Chem. 1995, 60, 5995-5996. Burkhardt, E. et al., Tetrahedron Letters 2008, 49, 5152-5155. Paetzold, J. et al., Chem. Comm., 2000, 1867-1868. Gross, T. et al., Org. Lett. 2002, 4, 2055-2058. Kitamura, M. et al., J. Org. Chem. 2002, 67, 8685-8687. Thomas C. Nugent. et al., Adv. Synth. Catal. 2010, 352, 753-819.
本発明の目的は、新規な有機金属化合物、還元的アミノ化反応またはイミンもしくはイミニウムイオンの水素化反応によりアミン化合物を製造するための、一般性が高く、高活性で官能基選択性に優れた当該有機金属化合物を含む新規触媒、および当該触媒を用いたアミン化合物の新規製造方法を提供することにある。また、さらなる本発明の目的は、安価な光学活性アミンをアミン源として用い、安価な還元剤、低触媒量で実施可能であり、高ジアステレオ選択的な還元的アミノ化反応が可能な新規触媒を用いた、アミン化合物の新規製造方法を提供することにある。
本発明者らは、カルボニル化合物とアミン化合物との還元的アミノ化反応によるアミン化合物の製造方法に関する研究を行う中で、特許文献4に記載の製造方法では、アミン源として光学活性アミンを用いた還元的アミノ化反応を実施する場合、反応が高ジアステレオ選択的に進行し、かつ高効率に光学活性アミン類の取得が可能かどうか不明であるという新たな課題に直面した。また、水素化反応では非特許文献5、非特許文献6に記載の方法では水素化に高い圧力を必要とし、非特許文献7では高価なアミンを必要とする。かかる課題を解決するために鋭意研究を続ける中で、特定のカルベニウム構造の含窒素配位子を有するルテニウム、ロジウムおよびイリジウム錯体により、効率的な還元的アミノ化反応、水素化反応が可能となり、同錯体が不斉点を有する場合には高ジアステレオ選択的に反応が進行し、高い光学純度の光学活性アミンが得られることを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下に関する。
[1] 下記一般式(1)
式中、
Arは、1または2以上の水素原子が置換基Wで置換されていてもよい芳香族化合物またはシクロペンタジエニル基であり、
置換基Wは、C1〜20の飽和もしくは不飽和炭化水素基、環員数6〜20のアリール基、環員数3〜20のヘテロシクリル基、C1〜20のアルコキシ基、−C(=O)−R、−C(=O)−OR、ヒドロキシル基、−NR、−C(=O)−NR、ニトロ基、シアノ基、−PR、C1〜20のスルフェニル基、スルホ基、メルカプト基、−SiR、ハロゲン基または−S(=O)−Rであり、
Qは、ヒドリド基またはアニオン性基であり、
Mは、ルテニウム、ロジウムまたはイリジウムであり、
は、電子求引性基であり、
、R、R、RおよびR6は、互いに独立して、水素原子、C1〜20のアルキル基、C2〜20のアルケニル基、C2〜20のアルキニル基、環員数3〜20のシクロアルキル基、環員数3〜20のシクロアルケニル基、環員数3〜20のシクロアルキニル基、環員数6〜20のアリール基、環員数3〜20のヘテロシクリル基、C1〜20のアルコキシ基、−C(=O)−OR、C1〜20のフルオロアルキル基、−C(=O)−R、−S(=O)−R、ヒドロキシル基、−NR、−C(=O)−NR、C1〜20のスルフェニル基または−SiRであって、これらの基の1もしくは2以上の水素原子は前記置換基Wによって置換されていてもよく、
、RおよびRは、互いに独立して、水素原子、C1〜20のアルキル基、C2〜20のアルケニル基、C2〜20のアルキニル基、環員数3〜20のシクロアルキル基、環員数3〜20のシクロアルケニル基、環員数3〜20のシクロアルキニル基、環員数6〜20のアリール基、環員数3〜20のヘテロシクリル基、環員数6〜20のアラルキル基、環員数6〜20のヘテロアラルキル基、環員数6〜20のアルキルアリール基、または環員数6〜20のアルキルヘテロアリール基であり、
、R、R、RおよびRからなる群から選択される2以上の基は、一緒になって1または2以上の環を形成してもよく、
nは、0〜3のいずれかの整数であり、
Aは、1または2以上の水素原子が置換基Wで置換されていてもよい、少なくとも2つの窒素原子を含む飽和または不飽和の含窒素複素環カルベンである、
で表される含窒素複素環カルベン配位子を有する有機金属化合物。
[2] RとRが結合した炭素原子および/またはRとRが結合した炭素原子は、不斉炭素原子である[1]に記載の有機金属化合物。
[3] Rが、1または2以上の水素原子が置換基Wで置換されていてもよい、−S(=O)−R、環員数6〜20のアリール基、環員数6〜20のヘテロアリール基、−C(=O)−OR、−C(=O)−R、−C(=O)−NR、−C(=S)−NR、またはC1〜20のスルフェニル基もしくはパーフルオロアルキル基である、[1]または[2]に記載の有機金属化合物。
[4] Rが、1または2以上の水素原子が置換基Wで置換されていてもよい−C(=O)−Rである、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の有機金属化合物。
[5] n=1である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の有機金属化合物。
[6] Arが、1または2以上の水素原子が置換基Wで置換されていてもよいシクロペンタジエニル基であり、
Mが、イリジウムまたはロジウムである、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の有機金属化合物。
[7] Aにおけるカルベン構造を有する複素環が、2つの窒素原子に加え、環員原子としてさらに1以上のヘテロ原子を含み、
該複素環の環員数が4〜6である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の有機金属化合物。
[8] Aが5員環である、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の有機金属化合物。
[9] RとRおよび/またはRが、一緒になって1または2以上の環を形成している、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の有機金属化合物。
[10] 一般式(1−a)
一般式(1−b)、
または一般式(1−c)
式中、
〜R、Ar、Q、MおよびWについては、式(1)における意味と同一の意味を有し、
jは0〜4の整数であり、
kは0〜2の整数であり、
lは0〜4の整数である、
で表される、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の有機金属化合物。
[11] 光学活性体である、[1]〜[10]のいずれか一項に記載の有機金属化合物。
[12] イミン、イミニウムカチオンおよびエナミンからなる群から選択される1種または2種以上の還元反応または水素化反応に用いる触媒であって、
[1]〜[11]のいずれか一項に記載の有機金属化合物を少なくとも1つ含む、前記触媒。
[13] [1]〜[11]のいずれか一項に記載の有機金属化合物または請求項12に記載の触媒および水素源の存在下、イミン、イミニウムカチオンおよびエナミンからなる群から選択される1種または2種以上を、還元または水素化してアミン化合物を製造する、アミン化合物の製造方法。
[14] イミン、イミニウムカチオンおよび/またはエナミンが光学活性化合物である、[13]に記載のアミン化合物の製造方法。
[15] 水素源が、水素である、[13]または[14]に記載のアミン化合物の製造方法。
[16] 還元または水素化が、酸性条件下で行われる、[13]〜[15]のいずれか一項に記載のアミン化合物の製造方法。
本発明により、新規な有機金属化合物、還元的アミノ化反応またはイミンもしくはイミニウムイオンの水素化反応によりアミン化合物を製造するための、一般性が高く、高活性で官能基選択性に優れた当該有機金属化合物を含む新規触媒、および当該触媒を用いたアミン化合物の新規製造方法を提供することができる。また、特に、有機金属化合物が不斉点を有する場合には、本発明により、安価な光学活性アミンをアミン源として用い、安価な還元剤、低触媒量で実施可能であり、高ジアステレオ選択的な還元的アミノ化反応が可能な新規触媒を用いた、アミン化合物の新規製造方法を提供することができる。
また、本発明の触媒は、従来の金属錯体触媒では困難であった酸性条件での水素化反応において極めて有用である。従来の有機金属錯体触媒は中性から塩基性条件下で高い触媒活性を示すものが多く、酸性条件下での高い触媒活性を示すものは数少ないのが現状である。これは、従来の有機金属錯体触媒が、酸性条件下において、プロトネーションなどにより配位子が脱離して分解しやすいことに起因するものと考えられる。本発明の触媒によれば、置換基Rが電子求引性基であることにより、酸性条件下での配位子の脱離による錯体の分解を抑えることができ、その結果、高い触媒活性やジアステレオ選択性が実現するものと考えられる。
図1は、本発明の有機金属錯体の例を示す構造式である。 図2は、本発明のアミンの製造方法の例を示す反応式である。 図3は、本発明のアミンの製造方法の例を示す反応式である。 図4は、本発明のアミンの製造方法の例を示す反応式である。 図5は、本発明のアミンの製造方法の例を示す反応式である。
以下、本発明を、好適な実施態様に基づいて詳細に説明する。
<有機金属化合物>
まず、本発明の有機金属化合物について説明する。
本発明の有機金属化合物は、一般式(1)
で表される有機金属化合物である。
Arは、1または2以上の水素原子が置換基Wで置換されていてもよい、シクロペンタジエニル基または芳香族化合物である。Arの具体例としては、これに限定するものではないが、例えば無置換のベンゼン、トルエン、o−、m−およびp−キシレン、o−、m−およびp−シメン、1,2,3−、1,2,4−および1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,3,4,5−テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、ならびにヘキサメチルベンゼン等のアルキル基を有するベンゼン、ベンジル、ビニル、アリルなどの、不飽和炭化水素基を有するベンゼン、ヒドロキシル基、アルコキシ基、エステル基、アミノ基、ハロゲン基等のヘテロ原子を有するベンゼンなどが挙げられる。ベンゼン環の置換基の数は1〜6の任意の数であり、置換位置は任意の位置を選ぶことができる。錯体合成の容易さという点で、Arは、好ましくはp−シメン、1,3,5−トリメチルベンゼンまたはヘキサメチルベンゼンである。
さらに、シクロペンタジエニル基の例としては、これに限定するものではないが、例えばシクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、イソプロピルシクロペンタジエニル基、フェニルシクロペンタジエニル基、ベンジルシクロペンタジエニル基、1,2−ジメチルシクロペンタジエニル基、1,3−ジメチルシクロペンタジエニル基、1,2,3−トリメチルシクロペンタジエニル基、1,2,4−トリメチルシクロペンタジエニル基、1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエニル基、1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル基(Cp*)などが挙げられる。錯体合成の容易さという点で、Arは、好ましくは1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル基(Cp*)である。
置換基Wは、C1〜20の飽和もしくは不飽和炭化水素基、環員数6〜20のアリール基、環員数3〜20のヘテロシクリル基、C1〜20のアルコキシ基、−C(=O)−R、−C(=O)−OR、ヒドロキシル基、−NR、−C(=O)−NR、ニトロ基、シアノ基、−PR、C1〜20のスルフェニル基、スルホ基、メルカプト基、−SiR、ハロゲン基または−S(=O)−Rである。
また、R、RおよびRは、互いに独立して、水素原子、C1〜20のアルキル基、C2〜20のアルケニル基、C2〜20のアルキニル基、環員数3〜20のシクロアルキル基、環員数3〜20のシクロアルケニル基、環員数3〜20のシクロアルキニル基、環員数6〜20のアリール基、環員数3〜20のヘテロシクリル基、環員数6〜20のアラルキル基、環員数6〜20のヘテロアラルキル基、環員数6〜20のアルキルアリール基または環員数6〜20のアルキルヘテロアリール基である。
なお、本明細書において、「炭化水素基」とは、炭素骨格およびそれに結合する水素原子からなる基を意味し、「炭化水素基」は、飽和もしくは不飽和の鎖状もしくは環状の炭化水素基を含む。例えば、飽和または不飽和の鎖状炭化水素基としては、直鎖または分枝鎖アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が、飽和または不飽和の環状炭化水素としては、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基およびこれらの環状炭化水素基の1または2以上の水素原子が飽和または不飽和の鎖状炭化水素基により置換されたもの、例えば、アラルキル基、アリールアルキル基等が、それぞれ挙げられる。
また、本明細書において、「アルキル基」、「アルケニル基」および「アルキニル基」は、これらの直鎖もしくは分枝鎖のものを含む。
また、本明細書において、「ヘテロシクリル基」は、飽和または不飽和の環状炭化水素の1または2以上の環員原子が炭素原子に代わって窒素原子、酸素原子および硫黄原子などのヘテロ原子により置換されたものをいい、例えば、ヘテロアリール基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基およびヘテロシクロアルキニル基を含む。
Wの具体例としては、これに限定するものではないが、例えばフェニル基、ナフチル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロへキシル基、シクロヘキシレン基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、フェニル基、トルイル基、ナフチル基、ピリジル基、フラニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、アセチル基、プロパノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、ベンゾイル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ヒドロキシル基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、i−プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、フッ素基、臭素基、塩素基、ヨウ素基、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、トリフルオロメチル基、ジフェニルホスフィノ基、ジシクロへキシルホスフィノ基、シクロプロピルホスフィノ基、シクロブチルホスフィノ基、シクロペンチルホスフィノ基、シクロへキシルホスフィノ基などが挙げられる。錯体合成の容易さという点で、Wは、好ましくは飽和または不飽和炭化水素基、より好ましくは、直鎖または分枝鎖アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、さらに好ましくはメチル基、i−プロピル基である。
一般式(1)のMは、ルテニウム、ロジウム、およびイリジウムのいずれかである。触媒活性の高さという点で、Mは、好ましくはロジウムまたはイリジウムである。
一般式(1)のQは、ヒドリド基またはアニオン性基である。Qの具体例としては、これに限定するものではないが、例えば、ヒドリド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、架橋したオキソ基、フッ素基、塩素基、臭素基、ヨウ素基、テトラフルオロボラート基、テトラヒドロボラート基、テトラキスペンタフルオロフェニルボラート基、テトラキス[3’,5’−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボラート基、ヘキサフルオロホスフェート基、ヘキサフルオロアンチモネート基、ヘキサクロロアンチモネート基、ヘキサフルオロアーセネート基、パークロレート基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基、(2’,6’−ジヒドロキシベンゾイル)オキシ基、(2’,5’−ジヒドロキシベンゾイル)オキシ基、(3’−アミノベンゾイル)オキシ基、(2’,6’−ジメトキシベンゾイル)オキシ基、(2’,4’,6’−トリイソプロピルベンゾイル)オキシ基、1−ナフタレンカルボン酸基、2−ナフタレンカルボン酸基、トリフルオロアセトキシ基、トリフルオロメタンスルホンイミド基、ニトロメチル基、ニトロエチル基、トルエンスルホナート基、メタンスルホナート基、エタンスルホナート基、n−プロパンスルホナート基、イソプロパンスルホナート基、n−ブタンスルホナート基、フルオロスルホナート基、フルオロメタンスルホナート基、ジフルオロメタンスルホナート基、トリフルオロメタンスルホナート基、ペンタフルオロエタンスルホナート基、ホスフェート基、(S)−(+)‐2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチルホスフェート基、(R)−(−)−2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチルホスフェート基などが挙げられる。錯体合成の容易さという点で、Qは、好ましくは塩素基、臭素基、ヨウ素基、トリフルオロメタンスルホナート基である。
また、Mにはアニオン性基であるQ以外に、配位性の中性分子が配位していてもよい。Mに配位する中性分子の具体例としては、水やメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテルなどのエーテル類、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、クロロホルム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ピリジン、トリアルキルホスフィンとしてトリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、またはトリシクロへキシル、トリアリールホスフィンとしてトリフェニルホスフィンなどが挙げられる。このような中性分子は配位するとカチオン性錯体を形成し、これによりアニオン性基はカウンターアニオンとして存在することとなる。
は、電子求引性基である。本明細書において、電子求引性基とは、電子効果で電子求引的な性質を有する置換基であり、置換基の電子求引性や電子供与性の尺度であるハメットの置換基定数σp値を用いれば、正のσp値を示す置換基である。Rとしては、例えば、−S(=O)−R、環員数6〜20のアリール基、環員数6〜20のヘテロアリール基、−C(=O)−OR、−C(=O)−R、−C(=O)−NR、−C(=S)−NR、C1〜20のスルフェニル基またはパーフルオロアルキル基が挙げられ、これらの基の1または2以上の水素原子は置換基Wで置換されていてもよい。
特に反応性やジアステレオ選択性の観点から、Rは、−S(=O)−R、−C(=O)−Rまたは−C(=O)−NRであることが好ましく、−C(=O)−Rであることがより好ましく、これらの基の1もしくは2以上の水素原子は置換基Wによって置換されていてもよい。置換基Rが電子求引性基であることにより、酸性条件下での配位子の脱離による錯体の分解が抑えられると考えられる。その結果、高い触媒活性やジアステレオ選択性が実現するものと考えられる。
の具体例としては、これに限定するものではないが、例えば、メタンスルホニル基(Ms)、エタンスルホニル基(Es)、n−プロピルスルホニル基、i−プロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、i−ブチルスルホニル基、n−ペンチルスルホニル基、シクロペンチルスルホニル基、1−オクタンスルホニル基、1−ヘキサデカンスルホニル基、o−トルエンスルホニル基、m−トルエンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基(Ts)、ベンゼンスルホニル基、2,6−ジメチルベンゼンスルホニル基、3,5−ジメチルベンゼンスルホニル基、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル基、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニル基、4−シアノベンゼンスルホニル基、2−ニトロベンゼンスルホニル基、3−ニトロベンゼンスルホニル基、4−ニトロベンゼンスルホニル基、2,4−ジニトロベンゼンスルホニル基、2−(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホニル基、4−(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホニル基、4−クロロベンゼンスルホニル基、2、4−ジクロロベンゼンスルホニル基、4−フルオロベンゼンスルホニル基、3,4,5−トリフルオロベンゼンスルホニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゼンスルホニル基、4−メトキシベンゼンスルホニル基、(+)−10−カンファースルホニル基、(−)−10−カンファースルホニル基、ピリジン−3−スルホニル基、トリクロロメタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、2,2,2−トリフルオロエタンスルホニル基、4−ヒドロキシベンゼンスルホニル基、4−ビフェニルベンゼンスルホニル基、ベンジルスルホニル基(−SOBn)、フェニル基、4−ニトロフェニル基、4−シアノフェニル基、4−フルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、3、4,5−トリフルオロフェニル基、4−(トリフルオロメチル)フェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、−CF、−CFCF、−CO−CH、−CO−CHCH、−CO−CH(CH、−CO−C(CH、−CO−Ph、−COCH、−COCHCH、−COCH(CH、−COC(CH、−COPh、−CO−CF、−CO−CFCF、−CO−CCl、−CO−CHCF、−CO−CHCCl、−CO−CHCCl、−COCHCF、−COCF、−COCFCF、−COCHCCl、−COCClCCl、−COCHCF、−C(=O)NHCH、−C(=O)NHCHCH、−C(=O)NHCH(CH、−C(=O)NHC(CH、−C(=O)NHCF、−C(=O)NHPh、−C(=O)NH−(4−F−C)、−C(=O)NH−(4−CN−C)、−C(=O)NH−(4−NO−C)、−C(=O)NH−(4−CF−C)、−C(=O)NH−(3,5−(CF−C)、−C(=O)NH−(3,5−F−C)、−C(=O)NH−(3,4,5−F−C )、−C(=O)NHCH、−C(=O)NHCHなどが挙げられる。
特に好ましくは、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、ベンジルスルホニル基、アセチル基、−C(=O)NHPhである。
、R、R、RおよびRは、互いに独立して、水素原子、C1〜20のアルキル基、C2〜20のアルケニル基、C2〜20のアルキニル基、環員数3〜20のシクロアルキル基、環員数3〜20のシクロアルケニル基、環員数3〜20のシクロアルキニル基、環員数6〜20のアリール基、環員数3〜20のヘテロシクリル基、C1〜20のアルコキシ基、−C(=O)−OR、C1〜20のフルオロアルキル基、−C(=O)−R、−S(=O)−R、ヒドロキシル基、−NR、−C(=O)−NR、C1〜20のスルフェニル基または−SiRであり、これらの基の1もしくは2以上の水素原子は前記置換基Wによって置換されていてもよい。
、R、R、RおよびRの具体例としては、これに限定するものではないが、例えば水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、tert−ブチル基、イソブチル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ピリジル基、ビニル基、エチニル基、エステル結合を有する基、アセチル基、ベンゾイル基、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基などが挙げられる。触媒活性や反応収率の高さという点で、好ましくは水素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、イソブチル基、ベンジル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−(ジメチルアミノ)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、インデニル基などが挙げられる。
また、上述した各置換基のうち、R、R、R、RおよびRからなる群から選択される2以上の基は、一緒になって1または2以上の環を形成してもよい。
このようにして形成される環としては、特に限定されないが、例えば、シクロアルカン環、シクロアルケン環、シクロアルキン環、芳香族環、ヘテロ環、ラクタム環、環状ケトン、環状エステル、カルバミン酸エステル環、尿素環、チオ尿素環等が挙げられる。また、これらの基の1または2以上の水素原子は置換基Wで置換されていてもよい。これらの環の環員数としては、特に限定されないが、例えば3〜20、好ましくは、3〜12、より好ましくは4〜8とすることができる。
このような環の具体例としては、特に限定されないが、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロペンタノン環、シクロヘキサノン環、シクロヘプタノン環、シクロオクタノン環、シクロフェニル環、ピラン環、フラン環、ピロール環、イミダゾリン環、イミダゾール環、イミダゾリジン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、β-ラクタム、γ-ラクタム、δ-ラクタム、2−オキサゾリジノン環、2−イミダノリジノン環、テトラハイドロ−2−ピリミジノン環、2−イミダゾリジチオン環、テトラハイドロ−2−ピリミジンチオン環等が挙げられる。
特に、RとRおよび/またはRが、すなわち、RとR、RとRまたはRとRとRが、一緒になって環を形成していることが好ましい。これにより、有機金属化合物を含む触媒の触媒活性をより高いものとすることができる。
また、このような場合、形成される環は、好ましくは、ラクタム環、ヘテロ環、カルバミン酸エステル環、尿素環、チオ尿素環であり、より好ましくは、γ-ラクタム、2−オキサゾリジノン環、2−イミダノリジノン環、テトラハイドロ−2−ピリミジノン環、2−イミダゾリジチオン環、テトラハイドロ−2−ピリミジンチオン環である。これにより、ジアステレオ選択的な還元において高活性、高選択性が発現する。
とRが結合した炭素原子および/またはRとRが結合した炭素原子は、不斉炭素原子であってもよく、エナンチオ選択性および/またはジアステレオ選択性の高さ、配位子原料の入手の容易さという観点から、好ましくは不斉炭素原子である。
nは、0〜3のいずれかの整数であり、好ましくは0または1の整数であり、より好ましくは1である。
Aは、1または2以上の水素原子が置換基Wで置換されていてもよい、少なくとも2つの窒素原子を含む飽和または不飽和の含窒素複素環カルベンである。
Aを構成する複素環は、少なくともカルベン構造を有する複素環を含んで構成される。カルベン構造を有する複素環は、環員として2つの窒素原子と1以上の炭素原子を含み、2つの窒素原子が1つの炭素原子を挟み、当該炭素原子がカルベン構造を形成するように構成される。これにより、Aは、カルベン配位子としてMに配位することができる。
Aは、単環式基であってもよいし、多環式基であってもよい。
Aが単環式基である場合、Aは、上述したカルベン構造を有する複素環のみを環構造として有する複素単環式基である。
一方で、Aが多環式基である場合、Aは、上述したカルベン構造を有する複素環に加え、さらに1または2以上の環を含む。この場合、それぞれの環は、スピロ結合または縮合により互いに結合するか、他の環を架橋することにより形成されることができる。好ましくは、それぞれの環は、縮合により互いに結合している。
カルベン構造を有する複素環は、飽和または不飽和であることができる。
また、カルベン構造を有する複素環は、2つの窒素原子と1以上の炭素原子を含んで構成されるが、環員原子としてさらに1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。このようなヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が挙げられる。
カルベン構造を有する複素環としては、これに限定されないが、例えば、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾリン環、オキサゾール環、オキサゾリジン環、チアゾリン環、チアゾール環、チアゾリジン環等のカルベン化した環が挙げられる。特に、Aが、カルベン構造を有する複素環として、イミダゾール環、イミダゾリン環またはイミダゾリジン環を含んで構成される単環または多環式カルベンであることが、反応性、および、触媒活性の観点から好ましい。
また、A中のカルベン構造を有する複素環以外の環は、それぞれ、飽和または不飽和、例えば芳香族性、であることができる。
また、A中のカルベン構造を有する複素環以外の環は、それぞれ、炭化水素環であってもよいし、複素環であってもよい。複素環である場合、当該環は、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から選択される1または2以上のヘテロ原子を含む。
また、Aを構成する各環の環員数は、これに限定するものではないが、例えば、4〜8、好ましくは4〜6である。特に、カルベン構造を有する複素環の環員数は、好ましくは4〜6、より好ましくは5である。
Aの具体例としては、例えば、イミダゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環などの単環式複素芳香族環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環などの単環式複素非芳香族環、ベンゾイミダゾール環、プリン環、プテリジン環などの多環式複素芳香族環などのカルベン化した環が挙げられる。
上述した中でも、反応性、および、触媒活性の観点から、イミダゾール環、イミダゾリン環のカルベン化した環が好ましく、イミダゾール環のカルベン化した環がより好ましい。
なお、上記一般式(1)中、同一の記号が複数回現れる場合には、このような各記号は出現毎に独立して各記号中の定義が選択される。すなわち、一般式(1)中に現れる複数の同一の記号は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、本明細書中に記載される他の化合物の一般式においても同様である。
上述した一般式(1)で表される有機金属化合物は、光学活性体であることが好ましい。光学活性な一般式(1)で表される有機金属化合物を用いることにより、安価な光学活性アミンを用いて、少ない触媒量、例えば、S/C=500以上で、高収率、高ジアステレオ選択的に反応を進行させることができる。
一般式(1)で表される有機金属化合物が不斉炭素を有する場合、同化合物は、ラセミ体として、または光学活性体として得られる。光学活性アミンを製造する場合には、光学活性体の一般式(1)で表される化合物を触媒として使用することが、高効率で製造できるという点で好ましい。
上述した式(1)で表される有機金属化合物の中でも、触媒活性の高さやジアステレオ選択性の高さという点で、一般式(1−a)
一般式(1−b)、
または一般式(1−c)
で表される化合物が好ましい。なお、式中の各記号のうち、式(1)に記載されたもの、すなわち、R〜R、Ar、Q、MおよびWについては、式(1)における意味と同一の意味を有する。また、式中、jは0〜4の整数であり、kは0〜2の整数であり、lは0〜4の整数である。
また、上述した式(1−a)、式(1−b)および式(1−c)において、Rは、好ましくは、−S(=O)−R、環員数6〜20のアリール基、環員数6〜20のヘテロアリール基、−C(=O)−OR、−C(=O)−R、−C(=O)−NR、−C(=S)−NR、またはC1〜20のスルフェニル基、パーフルオロアルキル基であり、Rは、より好ましくは、−S(=O)−R、−C(=O)−OR、−C(=O)−R、−C(=O)−NR、−C(=S)−NRであり、特に好ましくは、−C(=O)−Rである。
およびRは、好ましくは互いに異なっており、RおよびRが結合する炭素原子は不斉炭素原子である。
およびRは、好ましくは一方が水素原子であり、他方が置換基Wで置換されていてもよい、C1〜10のアルキル基、C3〜20のシクロアルキル基、C6〜20のアリール基、フルオロアルキル基である。
特に好ましくはRとR、RとRまたはRとRとRが、一緒になって環を形成している。この場合、形成される環は、好ましくは、ラクタム環、特に好ましくは、γ−ラクタム環である。
Wは、Aに対応する部分に対し複数個導入されていてもよく、置換数jは0〜4の整数であり、kは0〜2の整数であり、
lは0〜4の整数である。好ましくは、j、kは、0であり、lは2である。
Aに対応する部分に対し導入されるWの具体例としては、例えばメチル基、エチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ピリジル基、ビニル基、エチニル基、エステル結合を有する基、アセチル基、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、トリメチルシリル基などが挙げられるが、これに限定するものではない。触媒活性の高さという点で、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基である。
特に、一般式(1−c)においては、Wは、立体的な効果の観点から、比較的嵩高い基、例えば、イソプロピル基、tert−ブチル基、フェニル基であることが好ましく、合成の容易さの観点から、フェニル基であることがより好ましい。
また、一般式(1−c)におけるカルベン構造を有する環は、不斉炭素を有することができる。
また、カルベン構造を有する環が不斉炭素を有する場合、環中のカルベン構造を形成しない2個の炭素原子のうち少なくとも一方が不斉炭素であり、同不斉炭素において少なくとも1つのWが置換している。不斉炭素において2つの水素原子が2つのWにより置換されている場合、前記2つのWは互いに異なる。
上述したような本発明の有機金属化合物は、還元的アミノ化反応またはイミンもしくはイミニウムイオンの水素化反応によりアミン化合物を製造するための触媒の構成成分として用いることができる。特に、有機金属化合物が不斉点を有する場合には、同化合物を含む触媒は、高ジアステレオ選択的な還元的アミノ化反応が可能なものとなる。
一般式(1)で表される有機金属化合物は、例えば、一般式(2)
(pは2以上の整数を表す)で表される有機金属化合物と一般式(3)
で表される含窒素配位子と酸化銀とを混合して調製することができる。なお、上記一般式(2)、(3)中における各記号は、一般式(1)における対応する記号と同一の意味を有する。
より具体的には、例えば、不活性ガス雰囲気下、ハロゲン系溶媒に一般式(2)で表される有機金属化合物と一般式(3)で表される含窒素配位子、酸化銀および塩基を混合し、室温にて攪拌し、得られた溶液を水洗した後、溶媒を留去して減圧乾燥することで一般式(1)で表される有機金属錯体を得ることができる。
<触媒>
次に、本発明の触媒について説明する。
本発明の触媒は、イミン、イミニウムカチオンおよびエナミンからなる群から選択される1種または2種以上の還元反応または水素化反応に用いる触媒であって、一般式(1)で表される有機金属化合物を少なくとも1つ含む、触媒である。
上記触媒は、一般式(1)で表される有機金属化合物以外の成分を含む物であってもよいが、好ましくは、一般式(1)で表される有機金属化合物からなる。すなわち、一般式(1)で表される有機金属化合物そのものが触媒であることが好ましい。
なお、本明細書において、「イミン」は炭素−窒素二重結合を持つ化合物を意味し、イミニウムカチオンは、プロトンもしくは有機カチオンがイミン窒素上に結合したイミニウムイオンを意味する。
本明細書において、「エナミン」は二重結合の炭素上にアミノ基が存在する化合物を意味する。
α炭素上に水素を有するイミンとエナミンは一般的に互変異性であり、特に断りのない限り、それぞれの語は互変異性体を含み得る。
本発明の触媒は、一般性が高く、高活性で官能基選択性に優れており、効率的に、還元的アミノ化反応またはイミンもしくはイミニウムイオンの水素化反応によりアミン化合物を製造することができる。特に触媒中の有機金属化合物が不斉点を有する場合には、本発明の触媒を用いることにより、高ジアステレオ選択的に還元的アミノ化反応を行うことができ、光学純度の高い光学活性アミンを得ることが可能である。
<アミンの製造方法>
次に、本発明のアミンの製造方法について説明する。
本発明のアミンの製造方法は、上述した本発明の有機金属化合物または上述した本発明の触媒および水素源の存在下、イミン、イミニウムカチオンおよびエナミンからなる群から選択される1種または2種以上を、還元、水素化してアミン化合物を製造する。
(第1実施態様)
まず、本発明のアミンの製造方法の第1実施態様について説明する。
本実施態様のアミンの製造方法においては、あらかじめ調製されたイミン、イミニウムカチオンおよび/またはエナミンと上述した有機金属化合物または触媒とを混合して、水素源の存在下、還元または水素化反応を行い、アミン化合物を得る。すなわち、本実施態様においては、イミン、イミニウムカチオンおよび/またはエナミンの水素化反応を行うことができる。
本方法に用いることのできるイミン、イミニウムカチオンおよび/またはエナミンとしては、特に限定されず、任意のイミン、イミニウムカチオンおよび/またはエナミンを用いることができる。
例えば、イミンは、一般式(4)
で表されるものを用いることができる。
式中、RおよびRは、互いに独立して、水素原子、C1〜20の飽和もしくは不飽和炭化水素基、環員数6〜20のアリール基、環員数3〜20のヘテロシクリル基、環員数6〜20のアルキルアリール基、環員数6〜20のアルキルヘテロアリール基、環員数6〜20のアラルキル基、環員数6〜20のヘテロアラルキル基、カルボキシル基、エステル基またはアシル基であって、これらの基の1もしくは2以上の水素原子は置換基Wによって置換されていてもよい。エステル基としては、−C(=O)−OR、アシル基としては−C(=O)−Rで表される基などが挙げられる。
およびRとしては、具体的には、これに限定するものではないが、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル等のアルキル基、トリフルオロメチル基などのフルオロアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル等のシクロアルキル基、ビニル、アリルなどの不飽和炭化水素、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アントラセニル基、フルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、インデニル基等の芳香族単環または多環式基、チエニル、フリル、ピラニル、キサンテニル、ピリジル、ピロリル、イミダゾリニル、インドリル、カルバゾイル、フェナントロニリル等のヘテロ単環または多環式基、フェロセニル基、カルボン酸、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のエステル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基等が挙げられる。
は、水素原子、ヒドロキシル基、C1〜20の飽和もしくは不飽和炭化水素基、環員数6〜20のアリール基、環員数6〜20のアルキルアリール基、環員数6〜20のアルキルヘテロアリール基、環員数6〜20のアラルキル基、環員数6〜20のヘテロアラルキル基、環員数6〜20のヘテロシクリル基、アルコキシ基、カルボキシル基、スルホニル基、アシル基、エステル基、ホスフィニル基、スルフィニル基またはシリル基であって、これらの基の1もしくは2以上の水素原子は任意の置換基Wによって置換されていてもよい。スルホニル基としては−S(=O)−R、アシル基としては−C(=O)−R、エステル基としては−C(=O)−OR、ホスフィニル基としては−P(=O)R、スルフィニル基としては−S(=O)−R、シリル基としては−SiR等が挙げられる。
としては、具体的には、これに限定するものではないが、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル等のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル等のシクロアルキル基、ビニル、アリルなどの不飽和炭化水素、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アントリル、フェナントリル、インデニル基等の芳香族単環または多環式基、チエニル、フリル、ピラニル、キサンテニル、ピリジル、ピロリル、イミダゾリニル、インドリル、カルバゾイル、フェナントロニリル等のヘテロ単環または多環式基、フェロセニル基等が挙げられる。
置換基Wとしては、例えば、上述した一般式(1)におけるWと同様の置換基が挙げられる。このような置換基Wの好ましいものとしては、具体的には、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル等の炭化水素基、フルオロアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、エステル基等の含酸素基、アミノ基、アミド基、スルホニル基、スルフェニル基、スルホ基、メルカプト基、シリル基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
また、一般式(4)において、R、RおよびRからなる群から選択される2以上の基が、一緒になって1または2以上の環を形成してもよい。該環は、単環または多環であることができる。
とRとが環を形成する場合には、形成される環は、これに限定するものではないが、例えば飽和もしくは不飽和の環状炭化水素もしくは窒素、酸素、硫黄原子等のヘテロ原子を含む複素単環を含む単環または多環であることができる。具体的には、形成される環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロへプタン環などのシクロアルカン、2,3−ジヒドロ‐1H−インデン環、または1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン環などのアリール縮合シクロアルカン、デカヒドロナフタレンなどの多環の脂環式炭化水素等が挙げられる。
また、RとRとによって形成される環の1または2以上の水素原子は、任意の置換基によって置換されていてもよい。このような置換基として好ましい置換基は、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、カルボキシル基、エステル基等の含酸素基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、ヘテロ元素を含む鎖状または環状炭化水素基を有する置換基である。
とRとが環を形成する場合には、形成される環は、これに限定するものではないが、例えば不飽和の複素環であることができる。このような環としては、具体的には、3,4−ジヒドロ−2H−ピロール、および、2,3,4,5−テトラヒドロピリジンなどの脂環式複素環、ならびに、ピリジン、キノリン、および、イソキノリン等の複素芳香環が挙げられる。
また、RとRとによって形成される環の1または2以上の水素原子は、任意の置換基によって置換されていてもよい。好ましい置換基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、カルボキシル基、エステル基等の含酸素基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、ヘテロ元素を含む鎖状または環状炭化水素基を有する置換基である。
また、例えば、イミニウムカチオンは、一般式(5)
で表されるものを用いることができる。
式中、RおよびRは、互いに独立して、一般式(4)におけるRおよびRと同一の意味を表し、RおよびR10は、互いに独立して、一般式(4)におけるRと同一の意味を表す。また、式中、R、R、RおよびR10からなる群から選択される2以上の基が、一緒になって1または2以上の環を形成してもよい。
とRとが環を形成する場合には、形成される環は、これに限定するものではないが、上述した一般式(4)におけるRとRとが形成することのできる環と同様の環であることができる。また、RとRとによって形成される環の1または2以上の水素原子は、置換基によって置換されていてもよい。好ましい置換基は、例えば、上述した一般式(4)におけるRとRとが形成する環における置換基と同様である。
とRおよび/またはRとR10が環を形成する場合には、形成される環は、これに限定するものではないが、例えば、上述した一般式(4)におけるRとRとが形成することのできる環と同様の環であることができる。また、RとRおよび/またはRとR10によって形成される環の1または2以上の水素原子は、任意の置換基、例えば上述した一般式(4)におけるRとRとが形成する環における置換基と同様の置換基によって置換されていてもよい。
とR10が結合して環を形成する場合には、形成される環は、これに限定するものではないが、例えば、飽和または不飽和の複素環であることができる。このような環としては、ピロリジン、ピぺリジン、およびアゼパンなどの脂環式複素環が挙げられる。
また、RとR10とによって形成される環の1または2以上の水素原子は、任意の置換基、例えば上述した一般式(4)におけるRとRとが形成する環における置換基と同様の置換基によって置換されていてもよい。
また、エナミンは、例えば一般式(6)
で表されるものである。また、本明細書において、エナミンは、一般式(6)のエナミンの窒素上へのプロトネーションにより形成されるエナミニウムカチオンを含む。
一般式(6)についてみると、R、RおよびR10は上記で示したものと同一の意味を表す。
11およびR12は、互いに独立して、水素原子、C1〜20の飽和もしくは不飽和炭化水素基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロシクリル基、カルボキシル基、エステル基、アシル基である。エステル基としては、−C(=O)−OR、アシル基としては−C(=O)−Rで表される基などが挙げられる。
11およびR12としては、具体的には、これに限定するものではないが、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル等のアルキル基、トリフルオロメチル基などのフルオロアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル等のシクロアルキル基、ビニル、アリルなどの不飽和炭化水素、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アントラセニル基、フルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、インデニル基等の芳香族単環または多環式基、チエニル、フリル、ピラニル、キサンテニル、ピリジル、ピロリル、イミダゾリニル、インドリル、カルバゾイル、フェナントロニリル等のヘテロ単環または多環式基、フェロセニル基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのエステル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基等が挙げられる。
また、R11およびR12は、1もしくは2以上の水素原子がWによって置換されていてもよい。
また、R、R、R10、R11およびR12からなる群から選択される2以上の基は、一緒になって1または2以上の環を形成してもよい。形成される環は単環でも多環でもよい。
とRとが環を形成する場合および/またはR11とR12が環を形成する場合には、形成される環は、例えば、上述した一般式(4)におけるRとRとが形成する環と同様の環であることができる。また、RとRとによってまたはR11とR12とによって形成される環の1または2以上の水素原子は、置換基、例えば上述した一般式(4)におけるRとRとが形成する環における置換基と同様の置換基によって置換されていてもよい。
とR12とが環を形成する場合には、形成される環は、これに限定するものではないが、例えばもしくは不飽和の環状炭化水素または窒素、酸素、硫黄原子等のヘテロ原子を含む複素単環を含む単環または多環であることができる。具体的には、形成される環としては、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、または、シクロへプテン環などの不飽和の脂環式炭化水素、該置換基を有していてもよい、1,4−ジヒドロナフタレン等のアリール縮合シクロアルケン、1,2,3,6−テトラヒドロピリジンなどの不飽和な複素環などが挙げられる。
また、RとR12とによって形成される環の1または2以上の水素原子は、任意の置換基、例えば上述した一般式(4)におけるRとRとが形成する環における置換基と同様の置換基によって置換されていてもよい。
とR10とが環を形成する場合には、形成される環は、これに限定するものではないが、例えば、上述した一般式(5)におけるRとR10とが形成する環と同様の環であることができる。また、RとR10とによって形成される環の1または2以上の水素原子は、任意の置換基、例えば上述した一般式(4)におけるRとRとが形成する環における置換基と同様の置換基によって置換されていてもよい。
10とR11とが結合して環を形成する場合には、形成される環は、これに限定するものではないが、例えば、不飽和の複素環であることができる。具体的には、形成される環としては、該置換基を有していてもよい1,2,3,4−テトラヒドロピリジンなどの不飽和な複素環が挙げられる。
また、R10とR11とによって形成される環の1または2以上の水素原子は、任意の置換基、例えば上述した一般式(4)におけるRとRとが形成する環における置換基と同様の置換基によって置換されていてもよい。
なお、イミンおよび/またはエナミンは、光学活性体であってもよい。また、イミンおよび/またはエナミンは、光学活性アミンとカルボニル化合物との反応により生成する光学活性体であってもよい。
上述した中でも、側鎖に置換基をもつ環状エナミンを用いた場合、より高いジアステレオ選択性で反応を実施することができる。このような場合、例えば、光学活性なN−(1−フェニルエチル)−3,4−ジヒドロナフタレン−2−アミンなどの光学活性なアミンを得ることができる。
本反応における水素源としては、上記還元または水素化反応において水素をイミン、イミニウムカチオンまたはエナミンに供与することのできる、水素ガスおよび/または有機もしくは無機の水素供与体を用いることができる。水素源は、例えば、熱的作用によって、または触媒作用によって水素を供与する。水素供与体は、上述したように水素を供与できるものであれば特に限定されないが、好適な水素供与体としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、sec−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、シクロペンチルアルコール、n−へキシルアルコール、シクロへキシルアルコール、ベンジルアルコール、ギ酸、HCOOK、HCOONa、HCOOLi、HCOONH等が挙げられ、これらを単独または複数種組み合わせて用いることができる。反応性や経済性という点で、水素供与体は、好ましくはギ酸、またはギ酸塩である。
水素ガスは、例えば、0.1〜50MPaの圧力で反応系中に充填させて用いることができる。
また、水素供与体は、用いられる(反応系中の)イミン、イミニウムカチオンおよびエナミンの合計量に対し、1〜30当量の量で用いることができるが、反応性や経済性の点から、好ましくは1〜10当量の量で用いる。
また、必要に応じて、例えば、水素供与体としてHCOOK、HCOONa、HCOOLi、HCOONH等のギ酸塩を用いる場合は、相間移動触媒を反応系中に添加して反応を実施してもよい。用い得る相間移動触媒としては、特に限定されず、例えば、長鎖アルキルアンモニウムカチオンを有する塩が挙げられる。反応性や経済性の点から、好ましい相間移動触媒は、テトラブチルアンモニウム塩である。相間移動触媒の添加によって、多くの場合、反応速度が向上する効果が認められる。
相間移動触媒は、用いられる(反応系中の)イミン、イミニウムカチオンおよびエナミンの合計量に対して通常0.001〜10モル当量の範囲で用いられるが、反応性や経済性の点から好ましくは0.01〜0.1モル当量用いられるのが望ましい。
使用する触媒の量は、ルテニウム、ロジウム、またはイリジウム触媒に対するイミン、イミニウムカチオンおよびエナミンの合計のモル比をS/C(Sはイミン、イミニウムカチオンおよびエナミンの合計のモル数、Cは触媒のモル数を表す)として表記することができる。その場合、S/Cをどの程度まで高められるかは基質の構造、触媒の種類、濃度、反応温度、水素供与体の種類等によって大きく変動するが、実用上はS/C=100〜20000程度に設定することが望ましい。
また、必要に応じて、酸触媒を反応系中に存在させてもよい。酸触媒は、水素化反応を促進させることができる。また、従来の水素化触媒は、酸の存在下で不安定なものが多く、このような酸触媒と併用することが困難であったが、上述した本発明の有機金属化合物は、酸に対し安定であるため、酸触媒の存在するような酸性条件下であっても好適に使用できる。
このような酸触媒としては、特に限定されず、ブレンステッド酸やルイス酸を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。好適なブレンステッド酸としては、例えばカルボン酸、スルホン酸、フェノール類などの有機酸、またはリン酸、ホウ酸、塩酸、硝酸などの鉱酸が挙げられ、具体的には、これに限定するものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、フェノール、ビナフトール等ブレンステッド酸、あるいはチタニウムテトライソプロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド等のルイス酸が挙げられる。これらは単独または複数組み合わせて用いることができる。上述した中でも、経済性、および、反応性の観点から、酢酸、モノクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、シュウ酸、リン酸、スルホン酸が好ましい。
酸触媒は、イミン、イミニウムカチオンおよびエナミンの合計に対し、例えば、0.01〜10.0当量、好ましくは、0.1〜2.0当量用いることができる。
また、上記水素化または還元反応において、イミン、イミニウムカチオン、エナミン、酸、水素ガスおよび水素供与性化合物の物理的性質や化学的性質を考慮し、適時反応溶媒を用いることができる。プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒、イオン性液体、水および緩衝液を、反応溶媒として、単独で、もしくは複数組み合わせて用いることができる。
反応温度は、基質や生成物の溶解度、反応性、および経済性を考慮して、好ましくは−20℃〜100℃程度であることができるが、さらに好ましくは20℃〜80℃である。反応時間は、基質濃度、温度、圧力等の反応条件によって適宜設定でき、反応が完結する時間、例えば、数分〜100時間程度とすることができる。
生成したアミン化合物を、適宜精製してもよい。精製は、酸−塩基抽出、カラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶等の公知の方法により、または適時それらの組み合わせにより行なうことができる。
上述した本発明の触媒または有機金属錯体および水素源の存在下、あらかじめ調製されたイミン、イミニウムカチオンまたはエナミンを、ジアステレオ選択的に還元(水素化)することによりアミン化合物を製造することが可能である。これにより、光学活性アミン化合物を高効率で選択的に製造することができる。なお、製造されるアミン化合物が光学活性を有しない場合であっても、このような基質から、効率よく同アミン化合物が製造されることは言うまでもない。
(第2実施態様)
次に、本発明のアミンの製造方法の第2実施態様について説明する。なお、前述した実施態様との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施態様のアミンの製造方法は、
カルボニル化合物と第1のアミン化合物とを反応させて、イミン、イミニウムカチオンおよびエナミンからなる群から選択される1種または2種以上を生成させる第1の工程と、
イミン、イミニウムカチオンおよびエナミンからなる群から選択される1種または2種以上と上述した有機金属化合物または触媒とを混合して、水素源の存在下、還元または水素化反応を行い、第2のアミン化合物を得る第2の工程と、を有する。
すなわち、本実施態様のアミンの製造方法は、イミン、イミニウムカチオンおよび/またはエナミンの生成と、目的とするアミンの生成とを別個に行う、還元的アミノ化反応を用いたアミンの製造方法である。
第1の工程においては、カルボニル化合物と第1のアミン化合物とを反応させて、イミン、イミニウムカチオンおよびエナミンからなる群から選択される1種または2種以上を生成させる。
本工程において用いることのできるカルボニル化合物は、特に限定されず、任意のカルボニル化合物を用いることができる。
カルボニル化合物は、例えば一般式(7)
で表されるものである。
一般式(7)についてみると、R7およびR8は互いに同一であっても異なっていてもよく、一般式(4)におけるR、Rと同一の意味を有する。
また、R7およびR8における上述した基の1もしくは2以上の水素原子は、置換基Wによって置換されていてもよい。
置換基Wは、上述した一般式(1)におけるものと同様であるが、置換基Wとしては、具体的には、例えば、一般式(4)において例示したものを用いることができる。
また、R7とR8とが一緒になって環、例えば、上述した一般式(4)におけるR、Rが形成する環を形成してもよい。好ましい形成される環は、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロへプタノン、シクロペンテノン、シクロへキセノン、シクロへプテノンなどの環状ケトンを与える飽和、および不飽和脂環式基などが挙げられる。
また、R7とR8とによって形成される環の1または2以上の水素原子は、任意の置換基、例えば上述した一般式(4)におけるRとRとが形成する環における置換基と同様の置換基によって置換されていてもよい。
また、医薬中間体として有用な光学活性1−アミノインダンを、高収率かつ高選択的に得られるという観点から、環状ケトンとして1−インダノンを用いることが好ましい。
また、第1のアミン化合物は、本実施態様において原料となるアミン化合物である。
本工程において用いることのできる第1のアミン化合物は、特に限定されず、任意のアミン化合物を用いることができる。
第1のアミン化合物は、例えば一般式(8)
で表されるものである。
一般式(8)についてみると、YおよびYは互いに独立して、一般式(5)におけるR、R10と同一の意味を有する。また、YとYにおける上述した基の1または2以上の水素原子は、置換基Wによって置換されていてもよい。置換基Wは、上述した一般式(1)におけるものと同様であるが、具体的には、例えば、一般式(4)において例示したものを用いることができる。
また、YとYとが一緒になって環を形成してもよい。形成される環としては、例えばピロリジン環、ピペリジン環、アゼパン環、ピロール環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロアゼピン環などの環状ケトンを与える飽和および不飽和脂環式基等が挙げられる。
また、YとYとによって形成される環の1または2以上の水素原子は、置換基によって置換されていてもよい。このような置換基としては、例えば上述した置換基Wが挙げられ、より具体的には、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロ元素を含む鎖状または環状炭化水素基を有する置換基などが挙げられる。
なお、上述したアミン化合物は、有機酸、または、無機酸との反応により得られるアンモニウム塩の形態であってもよい。
また、第1のアミン化合物は、アンモニアまたはアンモニウム塩であってもよい。
用い得るアンモニウム塩としては、アンモニアを含む塩であれば特に限定されず、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、フッ化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、リン酸アンモニウム、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられるが、反応性や経済性の点から、好ましくはギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、または塩化アンモニウムである。
また、上述した中でも、第2のアミン化合物として第一級アミンを合成するためには、一般的にはアンモニウム塩が汎用され、第二級アミンを合成するためには、ベンジルアミン、ラセミ体のα―フェニルエチルアミン、光学活性体のα―フェニルエチルアミンが汎用される。
また、パーキンソン病の治療に用いられるラサギリンの合成中間体である1-アミノインダンを高収率かつ、高い光学純度で得られるという観点から、環状ケトンとしてラサギリンに誘導可能な1-インダノンを用いることが好ましい。反応させるアミン化合物としては、原料入手の容易さ、製造コスト、反応収率、および、ジアステレオ選択性の観点から光学活性なα―フェニルエチルアミンを用いることが好ましい。
なお、ジアステレオ選択的な反応を実施するためには、一般式(7)で表されるカルボニル化合物、および/または一般式(8)で表されるアミン化合物中に、キラル炭素を有している必要があり、これらの基質を適時組み合わせることによってジアステレオ選択的にアミン化合物を製造することができる。
本工程において、用いられる第1のアミン化合物は、カルボニル化合物に対し、通常1〜30当量用いることができるが、反応性や経済性の点から好ましくは1〜10当量用いる。
また、アンモニアのような気体を第1のアミン化合物として用いる場合は、気体としてそのまま用いたり、あるいはアンモニア水や溶媒等に溶解させて用いるか、アンモニウム塩として用いることができる。
また、本工程において、第1のアミン化合物とカルボニル化合物との反応を、酸触媒の存在下で行ってもよい。
酸触媒としては上述した第1実施態様における酸触媒を用いることができる。また、酸触媒は、カルボニル化合物に対し、例えば、0.01〜10.0当量、好ましくは、0.1〜2.0当量用いることができる。
なお、イミンやエナミンの生成は、酸性条件が好ましいことから、酸性となる各種緩衝液を用いることも可能である。
また、反応温度、反応時間、反応雰囲気は、カルボニル化合物とアミン化合物との反応について公知の反応条件を適宜選択することができる。
次に、第2の工程においては、第1の工程で得られたイミン、イミニウムカチオンおよびエナミンからなる群から選択される1種または2種以上と上述した有機金属化合物または触媒とを混合して、水素源の存在下、還元または水素化反応を行い、第2のアミン化合物を得る。これにより、目的とするアミン化合物(第2のアミン化合物)を得ることができる。
本工程は、上述した第1実施態様と同様の操作により行うことができる。
(第3実施態様)
次に、本発明のアミンの製造方法の第3実施態様について説明する。なお、前述した実施態様との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施態様のアミンの製造方法は、本発明の有機金属化合物または本発明の触媒および水素源の存在下、イミン、イミニウムカチオンおよびエナミンからなる群から選択される1種または2種以上を、還元または水素化して第2のアミン化合物を製造するものであって、
還元または水素化が行われる系中に、カルボニル化合物と第1のアミン化合物とを存在させ、
前記カルボニル化合物と前記第1のアミン化合物とが、前記系中において反応して前記イミン、イミニウムカチオンおよび/またはエナミンを生成させるものである。
すなわち、本実施態様においては、第1のアミン化合物およびカルボニル化合物の反応によるイミン、イミニウムカチオンおよび/またはエナミンの生成と、当該イミン、イミニウムカチオンおよび/またはエナミンの還元または水素化反応による第2のアミン化合物の生成とが並行して同一の反応系中で起こる。これにより1ポットの反応で、還元的アミノ化反応を行うことが可能となる。
具体的には、本工程においては、カルボニル化合物、第1のアミン化合物、本発明の有機金属化合物または本発明の触媒ならびに任意に反応溶媒および酸触媒を混合した系を調製し、当該系を水素源の存在下において反応を行い、第2のアミン化合物を得る。
本実施態様において用いることのできる第1のアミン化合物およびカルボニル化合物は、特に限定されないが、例えば上述した第2実施態様におけるものと同様とすることができる。
また、第1のアミン化合物は、カルボニル化合物に対し、通常1〜30当量で用いることができるが、反応性や経済性の点から好ましくは1〜10当量で用いる。また、アンモニアのような気体をアミン化合物として用いる場合は、気体としてそのまま用いたり、あるいはアンモニア水や溶媒等に溶解させて用いるか、アンモニウム塩として用いることができる。
水素源としては、第1実施態様で述べた水素ガスまたは水素供与体を用いることができる。
水素供与体は、カルボニル化合物に対し、1〜30当量で用いることができるが、反応性や経済性の点から、好ましくは1〜10当量で用いる。
また、水素供与体としてHCOOK、HCOONa、HCOOLi、HCOONH等のギ酸塩を用いる場合は、必要に応じて相間移動触媒を添加して反応を実施してもよい。用い得る相間移動触媒としては、上述したものを用いることができる。添加する相間移動触媒は、カルボニル化合物に対して通常0.001〜10モル当量の範囲で用いるが、反応性や経済性の点から好ましくは0.01〜0.1モル当量用いるのが望ましい。
一般式(1)で表される有機金属化合物を含む触媒の量は、ルテニウム、ロジウム、またはイリジウム触媒に対するカルボニル化合物のモル比をS/C(Sはカルボニル化合物のモル数、Cは触媒のモル数を表す)として表記した場合、S/Cをどの程度まで高められるかは基質の構造、触媒の種類、濃度、反応温度、水素供与体の種類等によって大きく変動するが、実用上はS/C=100〜20000程度に設定することが望ましい。
また、本実施態様においては、カルボニル化合物、第1、第2のアミン化合物、イミン、イミニウムカチオン、エナミン、酸、水素ガスおよび水素供与性化合物の物理的性質や化学的性質を考慮し、適時反応溶媒を用いることができる。プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒、イオン性液体、水および緩衝液を単独で、もしくは複数組み合わせて用いることができる。
また、本実施態様において、第1のアミン化合物とカルボニル化合物との反応を、酸触媒の存在下で行ってもよい。酸触媒としては、上述した第2実施態様において例示したものを用いることができる。中でも、特にギ酸は水素供与体としても作用するため、カルボニル化合物とアミン化合物との還元的アミノ化反応には好ましいブレンステッド酸である。
また、本実施態様において、予め調整しておいたイミン、イミニウムカチオンおよびエナミンから選択される1種または2種以上をさらに、反応系中に添加してもよい。このような化合物としては、第1実施態様において詳述した各種イミン、イミニウムカチオン、エナミンを用いることができる。
また、反応温度、反応時間、および生成した第2のアミン化合物の精製方法は、第1実施態様と同様とすることができる。
(第4実施態様)
次に、本発明のアミンの製造方法の第4実施態様について説明する。なお、前述した実施態様との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施態様のアミンの製造方法は、上述した一般式(2)で表される有機金属化合物、一般式(3)で表される有機化合物、酸化銀および水素源の存在下で、イミン、イミニウムカチオンおよびエナミンからなる群から選択される1種または2種以上を、還元または水素化してアミン化合物を製造する。
これにより、一般式(2)で表される有機金属化合物と一般式(3)で表される有機化合物とが反応して一般式(1)で表される有機金属化合物を反応系中で生成し、一般式(1)で表される有機金属化合物が還元または水素化反応を触媒することができる。すなわち、本実施態様においては、一般式(1)で表される有機金属化合物の生成と、イミン、イミニウムカチオンおよび/またはエナミンの還元または水素化反応によるアミン化合物の生成とが並行して同一の反応系中で起こる。
なお、系中における一般式(2)で表される有機金属化合物、一般式(3)で表される有機化合物、酸化銀の量は、生成する一般式(1)で表される有機金属化合物の量が所望のものとなるように適宜設定できる。
また、本実施態様における他の条件は、第1の実施態様と同様とすることができる。
以上、本発明を好適な実施態様について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明においては、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成を付加することもできる。
例えば、本発明のアミンの製造方法については、上述した第1〜第4実施態様を、適宜組み合わせることができる。
以下、実施例を示し、さらに詳しくこの発明について説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
下記の各実施例および比較例に記載した反応は、アルゴンガスまたは窒素ガスの不活性ガス雰囲気下で行なった。使用したカルボニル化合物やアミン化合物は、市販試薬をそのまま用いた。配位子錯体および反応物の同定には核磁気共鳴装置(NMR)を用い、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準物質とし、そのシグナルをδ=0(δは化学シフト)とした。アミン化合物への変換率及びアミン化合物の反応収率は、粗生成物を内部標準物質としてクマリンを用いてNMRにて測定し、原料、目的生成物および副生成物を定量した。
アミン化合物への変換率は、100−[(残存原料の積分値)/(クマリンの積分値)]×用いたクマリンのmol数/原料のmol数×100で計算し、アミン化合物の反応収率は、[(目的生成物の積分値)/(クマリンの積分値)]×用いたクマリンのmol数/原料のmol数×100で計算した。単離収率とは、実際に単離した反応生成物の収率のことをいい、(単離した反応生成物のmol数/出発化合物のmol数)×100で計算される。NMR装置はJNM−ECX−400P(日本電子株式会社製)を用い、GC装置はGC−17A(株式会社島津製作所製)、分離カラムとしてアジレント・テクノロジー社製キャピラリーカラムCP−Chirasil Dex CB(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用い、HPLC装置はLC−20AT(株式会社島津製作所製)、分離カラムとしてダイセル社製HPLC用カラムOB−H(長さ25cm、内径0.46cm、粒径3μm)およびOD−H(長さ25cm、内径0.46cm、粒径3μm)を用いた。旋光度測定は、JASCO社製P−2200を用いた。また、反応例において用いた有機金属錯体を図1に示した。
<1.有機金属化合物(触媒)の合成>
以下、一般式(1)で表される有機金属化合物として、以下の有機金属化合物を製造した。なお、製造された有機金属化合物は、後述する反応例においてそのまま触媒として使用されるため、以下、それぞれを触媒1〜8と表す。
製造例1
Cp*IrCl((S)−5−((3−メチル−2,3−ジハイドロ−1H−イミダゾール−1−イル)メチル)ピロリジン−2−オン)錯体の合成(触媒1)
20mLのシュレンクをアルゴンガスで置換し、(S)−1−メチル−3−((5−オキソピロリジン−2−イル)メチル)−1H−イミダゾール−3−イウム-アイオダイド(MW:307.13)184mg(0.60mmol)、脱水塩化メチレン10mLおよび酸化銀(MW:231.74)70mg(0.3mmol)を仕込み、遮光下室温で16時間撹拌した。反応液に[Cp*IrCl (MW:796.67)197mg(0.25mmol)を加え、室温で48時間撹拌し、溶液をろ過した。ろ液にトリエチルアミン(MW:101.19)84μL(0.6mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。溶液をろ過し、少量の水で3回洗浄、有機溶媒を留去、次いで減圧乾燥、ジイソプロイルエーテル(IPE)10mLで懸濁洗浄、真空乾燥し、黄色粉末結晶を98mg(収率36%)得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ/ppm): 1.50 (t, J = 10.5 Hz, 1H), 1.74 (s, 15H), 2.11 (m, 1H), 2.49 (m, 2H), 3.25 (dt, J = 11.0, 5.5 Hz, 1H), 3.37 (t, J = 10.5, 1H), 3.79 (d, J = 12.4, 1H), 3.89 (s, 3H), 6.90 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 6.93 (d, J = 1.8, 1H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ/ppm): 9.3, 10.6, 27.3, 34.3, 37.2, 56.8, 61.3, 89.3, 121.7, 156.8, 178.8.
製造例2
Cp*IrCl((S)−5−((3−メチル−2,3−ジハイドロ−1H−ベンゾイミダゾール−1−イル)メチル)ピロリジン−2−オン)錯体の合成(触媒2)
20mLのシュレンクをアルゴンガスで置換し、(S)−1−メチル−3−((5−オキソピロリジン−2−イル)メチル)−1H−ベンゾイミダゾール−3−イウム−アイオダイド(MW:357.19)141mg(0.40mmol)、脱水塩化メチレン10mLおよび酸化銀(MW:231.74)46mg(0.20mmol)を仕込み、遮光下室温で16時間撹拌した。反応液に[Cp*IrCl (MW:796.67)130mg(0.16mmol)を加え、室温で18時間撹拌し、溶液をろ過した。ろ液にトリエチルアミン(MW:101.19)55μL(0.40mmol)を加え、室温で18時間撹拌した。溶液をろ過し、少量の水で3回洗浄、有機溶媒を留去、次いで減圧乾燥、IPE 10 mLで懸濁洗浄、真空乾燥し、黄色粉末結晶を178mg(収率83%)得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ/ppm): 1.67 (m, 1H), 1.78 (s, 15H), 2.20 (m, 1H), 2.61 (m, 2H), 3.29 (m, 1H), 3.45 (dd, J = 12.8, 10.1 Hz, 1H), 4.07 (s, 3H), 4.30 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 7.32 (m, 1H), 7.39 (m, 1H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ/ppm): 9.2, 27.4, 34.3, 52.6, 53.3, 61.0, 90.1, 109.1, 110.1, 122.8, 123.1, 134.1, 135.1, 170.3, 178.4.
製造例3
Cp*RhCl((S)−5−((3−メチル−2,3−ジハイドロ−1H−イミダゾール−1−イル)メチル)ピロリジン−2−オン)錯体の合成(触媒3)
20mLのシュレンクをアルゴンガスで置換し、(S)−1−メチル−3−((5−オキソピロリジン−2−イル)メチル)−1H−イミダゾール−3−イウム−アイオダイド(MW:307.13)184mg(0.60mmol)、脱水塩化メチレン10mLおよび酸化銀(MW:231.74)70mg(0.3mmol)を仕込み、遮光下室温で15時間撹拌した。反応液に[Cp*RhCl (MW:618.08)155mg(0.25mmol)を加え、室温で4時間撹拌し、溶液をろ過した。ろ液にトリエチルアミン(MW:101.19)84μL(0.6mmol)を加え、室温で5時間撹拌した。溶液をろ過し、少量の水で3回洗浄、有機溶媒を留去、次いで減圧乾燥、IPE10mLで懸濁洗浄、真空乾燥し、黄色粉末結晶を71mg(収率31%)得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ/ppm): 1.54 (m, 1H), 1.70 (s, 15H), 2.08 (m, 1H), 2.41 (m, 2H), 3.17 (m, 1H), 3.46 (dd, J = 12.4, 10.1 Hz, 1H), 3.85 (dd, J = 12.8, 1.8 Hz, 1H), 3.94 (s, 3H), 7.00 (d, J = 1.8 Hz, 2H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ/ppm): 9.7, 27.9, 34.8, 37.9, 56.6, 62.2, 96.7, 96.8, 122.7, 123.0, 150.3, 179.7.
製造例4
Cp*RhCl((S)−5−((3−メチル−2,3−ジハイドロ−1H−ベンゾイミダゾール−1−イル)メチル)ピロリジン−2−オン)錯体の合成(触媒4)
20mLのシュレンクをアルゴンガスで置換し、(S)−1−メチル−3−((5−オキソピロリジン−2−イル)メチル)−1H−ベンゾイミダゾール−3−イウム-アイオダイド(MW:357.19)200mg(0.56mmol)、脱水塩化メチレン10mLおよび酸化銀(MW:231.74)65mg(0.28mmol)を仕込み、遮光下室温で15時間撹拌した。反応液に[Cp*RhCl(MW:618.08)144mg(0.23mmol)を加え、室温で10時間撹拌し、溶液をろ過した。ろ液にトリエチルアミン(MW:101.19)65μL(0.47mmol)を加え、室温で16時間撹拌した。溶液をろ過し、少量の水で3回洗浄、有機溶媒を留去、次いで減圧乾燥、IPE10mLで懸濁洗浄、真空乾燥し、黄色粉末結晶を211mg(収率90%)得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ/ppm): 1.65 (m, 1H), 1.74 (s, 15H), 2.15 (m, 1H), 2.45 (m, 2H), 3.18 (m, 1H), 3.52 (dd, J = 12.8, 10.1 Hz, 1H), 4.14 (s, 3H), 4.33 (dd, J = 12.8, 1.8 Hz, 1H), 7.36 (m, 1H), 7.43 (m, 1H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ/ppm): 9.7, 28.0, 34.7, 35.0, 52.3, 53.4, 62.0, 97.4, 97.5, 109.3, 110.2, 123.2, 123.3, 134.8, 135.6, 179.8.
製造例5
Cp*IrCl(N−((1R,2R)−2−(3−メチル−2,3−ジハイドロ−1H−イミダゾール−1−イル)−1,2−ジフェニルエチル)アセトアミド)錯体の合成(触媒5)
2 mLのシュレンクをアルゴンガスで置換し、1−((1R,2R)−2−アセトアミド−1,2−ジフェニルエチル)−3−メチル−1H−イミダゾール−3−イウム アイオダイド (MW:447.31)142mg(0.32mmol)、脱水塩化メチレン10mLおよび酸化銀(MW:231.74)37mg(0.16 mmol)を仕込み、遮光下室温で16時間撹拌した。反応液に[Cp*IrCl2] (MW:790.70)105mg(0.13mmol)を加え、室温で3時間撹拌し、溶液をろ過した。ろ液にトリエチルアミン(MW:101.19)44μL(0.32mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。溶液をろ過し、少量の水で3回洗浄、有機溶媒を留去、次いで減圧乾燥、ジエチルエーテル(EtO)10mLで懸濁洗浄、真空乾燥し、黄色粉末結晶を77mg(収率42%)得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ/ppm): 1.65 (m, 1H), 1.74 (s, 15H), 2.15 (m, 1H), 2.45 (m, 2H), 3.18 (m, 1H), 3.52 (dd, J = 12.8, 10.1 Hz, 1H), 4.14 (s, 3H), 4.33 (dd, J = 12.8, 1.8 Hz, 1H), 7.36 (m, 1H), 7.43 (m, 1H).
製造例6
Cp*IrCl(4−メチル‐N‐(2−(3−メチル−2,3−ジハイドロ−1H−ベンゾイミダゾール−1−イル)エチル)ベンゼンスルホンアミド)錯体の合成(触媒6)
20mLのシュレンクをアルゴンガスで置換し、1−メチル−3−(2−(4−メチルフェニルスルホンアミド)エチル)−1H−ベンゾイミダゾール−3−イウム アイオダイド(MW:407.27)183mg(0.45mmol)、脱水塩化メチレン10mLおよび酸化銀(MW:231.74)52mg(0.23mmol)を仕込み、遮光下室温で4時間撹拌した。反応液に[Cp*IrCl(MW:790.70)149mg(0.19mmol)を加え、室温で15時間撹拌し、溶液をろ過した。ろ液にトリエチルアミン(MW:101.19)63μL(0.45mmol)を加え、室温で7時間撹拌した。溶液をろ過し、少量の水で3回洗浄、有機溶媒を留去、次いで減圧乾燥、IPE 10mLで懸濁洗浄、真空乾燥し、黄色粉末結晶を134mg(収率56%)得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ/ppm): 1.75 (s, 15H), 2.27 (s, 3H), 2.61 (m, 1H), 3.46 (m, 1H), 3.69 (m, 1H), 3.82 (m, 1H), 3.91 (s, 3H), 6.88 (dd, J = 16.5, 2.3 Hz, 1H), 7.08 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.86 (d, J = 8.2 Hz, 1H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ/ppm): 9.7, 20.9, 37.0, 52.1, 89.4, 121.0, 122.1, 128.0, 128.3, 139.3, 140.0, 154.9.
製造例7
Cp*IrCl((S)-5-(((4R,5R)-3-メチル-4,5-ジフェニルイミダゾリジン-1-イル)メチル)ピロリジン-2-オン)錯体の合成(触媒7)
20mLのシュレンクをアルゴンガスで置換し、(4R,5R)-1-メチル-3-(((S)-5-オキソピロリジン-2-イル)メチル)-4,5-ジフェニル-4,5-ジハイドロ-1H-イミダゾール-3-イウム アイオダイド(MW:461.34)100mg(0.22mmol)、脱水塩化メチレン5mLおよび酸化銀(MW:231.74)25mg(0.11mmol)を仕込み、遮光下室温で18時間撹拌した。反応液に[Cp*IrCl(MW:790.70)72mg(0.09mmol)を加え、室温で24時間撹拌し、溶液をろ過した。ろ液にトリエチルアミン(MW:101.19)25μL(0.18mmol)を加え、室温で7時間撹拌した。溶液をろ過し、少量の水で3回洗浄、有機溶媒を留去、次いで減圧乾燥、IPE 10mLで懸濁洗浄、真空乾燥し、黄色粉末結晶を79mg(収率63%)得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ/ppm): 1.03 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 1.77 (s, 15H), 2.41 (m, 3H), 2.75 (m, 1H), 2.88 (dd, J = 12.8, 1.8 Hz, 1H), 3.12 (s, 3H), 3.26 (m, 1H), 4.62 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 4.91 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.23 (m, 4H), 7.61 (m, 6H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ/ppm): 9.5, 22.9, 27.5, 34.5, 36.7, 46.2, 52.7, 62.2, 68.3, 90.2, 127.3, 128.0, 129.1, 129.3, 129.4, 137.6, 138.2, 179.0, 186.6.
製造例8
Cp*IrCl((S)-5-(((4S,5S)-3-メチル-4,5-ジフェニルイミダゾリジン-1-イル)メチル)ピロリジン-2-オン)錯体の合成(触媒8)
20mLのシュレンクをアルゴンガスで置換し、(4S,5S)-1-メチル-3-(((S)-5-オキソピロリジン-2-イル)メチル)-4,5-ジフェニル-4,5-ジハイドロ-1H-イミダゾール-3-イウム アイオダイド(MW:461.34)225mg(0.49mmol)、脱水塩化メチレン5mLおよび酸化銀(MW:231.74)57mg(0.24mmol)を仕込み、遮光下室温で24時間撹拌した。反応液に[Cp*IrCl(MW:790.70)156mg(0.20mmol)を加え、室温で8時間撹拌し、溶液をろ過した。ろ液にトリエチルアミン(MW:101.19)57μL(0.41mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。溶液をろ過し、少量の水で3回洗浄、有機溶媒を留去、次いで減圧乾燥、IPE 10mLで懸濁洗浄、真空乾燥し、黄色粉末結晶を135mg(収率48%)得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ/ppm): 1.33 (m, 1H), 1.79 (s, 15H), 2.40 (m, 4H), 3.15 (s, 3H), 3.43 (m, 1H), 3.65 (m, 1H), 4.55 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 4.74 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.20 (m, 4H), 7.40 (m, 6H)
次に、製造した触媒1〜8を用いてアミン化合物の製造を行った。なお、各反応は酸触媒が存在する酸性条件下で行った。
<2.水素化反応>
反応例1
(S)−2−メトキシ−N−(1−フェニルエチル)アニリンの合成
耐圧容器に触媒2(MW:592.17)1.02mg(0.002mmol、S/C=500)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これに2−プロパノール2mL、(E)−2−メトキシ‐N‐(1−フェニルエチリデン)アニリン(MW:225.29)225mg(1.0mmol)、酢酸(MW:60.05)57μL(1.0mmol)を加え、水素1.0MPa加圧下、40℃にて17時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 8mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率100%であった。得られた化合物の光学純度を測定したところ、68%eeであった。なお、図中「OMP」は、オルトメトキシフェニル基を示す。
反応例2
(S)−2−メトキシ−N−(1−フェニルエチル)アニリンの合成
耐圧容器に触媒7(MW:696.32)2.79mg(0.004mmol、S/C=500)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これに2−プロパノール2mL、(E)−2−メトキシ‐N‐(1−フェニルエチリデン)アニリン(MW:225.29)451mg(2.0mmol)、酢酸(MW:60.05)114μL(2.0mmol)を加え、水素1.0MPa加圧下、40℃にて24時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 10mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率84%であった。得られた化合物の光学純度を測定したところ、23%eeであった。
反応例3
(S)−2−メトキシ−N−(1−フェニルエチル)アニリンの合成
耐圧容器に触媒8(MW:696.32)2.79mg(0.004mmol、S/C=500)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これに2−プロパノール2mL、(E)−2−メトキシ‐N‐(1−フェニルエチリデン)アニリン(MW:225.29)451mg(2.0mmol)、酢酸(MW:60.05)114μL(2.0mmol)を加え、水素1.0MPa加圧下、40℃にて24時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 10mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率52%であった。得られた化合物の光学純度を測定したところ、25%eeであった。
反応例4
(R)−ビス((R)−1−フェニルエチル)アミンの合成
耐圧容器に触媒1(MW:542.12)2.17mg(0.004mmol、S/C=500)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これに2−プロパノール2mL、(R,E)−1−フェニル−N−(1−フェニルエチリデン)エタンアミン(MW:223.31)447mg(2.0mmol)、酢酸(MW:60.05)114μL(2.0mmol)を加え、水素1.0MPa加圧下、40℃にて17時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 10mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率89%で、得られた化合物のジアステレオマー過剰率は96%deであった。
反応例5
(R)−ビス((R)−1−フェニルエチル)アミンの合成
耐圧容器に触媒2(MW:592.17)2.37mg(0.004mmol、S/C=500)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これに2−プロパノール2mL、(R,E)−1−フェニル‐N‐(1−フェニルエチリデン)エタンアミン(MW:223.31)447mg(2.0mmol)、酢酸(MW:60.05)114μL(2.0mmol)を加え、水素1.0MPa加圧下、40℃にて14時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 8mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ反応収率87%で、得られた化合物のジアステレオマー過剰率は94%deであった。
反応例6
(R)−ビス((R)−1−フェニルエチル)アミンの合成
耐圧容器に触媒3(MW:452.80)1.81mg(0.004mmol、S/C=500)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これに2−プロパノール2mL、(R,E)−1−フェニル−N−(1−フェニルエチリデン)エタンアミン(MW:223.31)447mg(2.0mmol)、酢酸(MW:60.05)114μL(2.0mmol)を加え、水素1.0MPa加圧下、40℃にて15時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 8mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率86%で、得られた化合物のジアステレオマー過剰率は94%deであった。
反応例7
(R)−ビス((R)−1−フェニルエチル)アミンの合成
耐圧容器に触媒4(MW:502.86)2.01mg(0.004mmol、S/C=500)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これに2−プロパノール2mL、(R,E)−1−フェニル‐N‐(1−フェニルエチリデン)エタンアミン(MW:223.31)447mg(2.0mmol)、酢酸(MW:60.05)114μL(2.0mmol)を加え、水素1.0MPa加圧下、40℃にて16時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 8mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率88%で、得られた化合物のジアステレオマー過剰率は96%deであった。
反応例8
(R)−ビス((R)−1−フェニルエチル)アミンの合成
耐圧容器に触媒3(MW:452.80)1.81mg(0.004mmol、S/C=1000)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これに2−プロパノール4mL、(R,E)−1−フェニル−N−(1−フェニルエチリデン)エタンアミン(MW:223.31)893mg(4.0mmol)、酢酸(MW:60.05)229μL(4.0mmol)を加え、水素1.0MPa加圧下、40℃にて24時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 16mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率89%で、得られた化合物のジアステレオマー過剰率は95%deであった。
反応例9
(S)−N−((S)−1−フェニルエチル)−2,3−ジハイドロ−1H−インデン−1−アミンの合成
耐圧容器に触媒4(MW:502.86)2.01mg(0.004mmol、S/C=500)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これに2−プロパノール2mL、(S,E)−N−(2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イリデン)−1−フェニルエタンアミン(MW:235.32)470mg(2.0mmol)、酢酸(MW:60.05)114μL(2.0mmol)を加え、水素1.0MPa加圧下、40℃にて17時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 10mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ反応収率88%であった。得られた化合物を脱フェニルエチル化、アセチル化し得られたアセチルアミド化合物の光学純度を測定したところ光学純度92%eeであった。
<3.水素移動型還元反応>
反応例10
(S)−2−メトキシ−N−(1−フェニルエチル)アニリンの合成
耐圧容器に触媒1(MW:542.12)1.08mg(0.002mmol、S/C=500)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これにクロロホルム、2mL、(E)−2−メトキシ−N−(1−フェニルエチリデン)アニリン(MW:225.29)225mg(1.0mmol)、ぎ酸(MW:46.03)113μL(3.0mmol)を加え、40℃にて21時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 8mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率71%であった。得られた化合物の光学純度を測定したところ、53%eeであった。
反応例11
(S)−2−メトキシ−N−(1−フェニルエチル)アニリンの合成
耐圧容器に触媒2(MW:592.17)1.18mg(0.002mmol、S/C=500)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これにクロロホルム、2mL、(E)−2−メトキシ−N−(1−フェニルエチリデン)アニリン(MW:225.29)225mg(1.0mmol)、ぎ酸(MW:46.03)113μL(3.0mmol)、ギ酸カリウム(MW:84.12)84.1 mgを加え、40℃にて21時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 8mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率74%であった。得られた化合物の光学純度を測定したところ、75%eeであった。
<4.還元的アミノ化反応>
反応例12
1−フェニルエタンアミンの合成
20mLのシュレンクに触媒1(MW:542.12)5.42mg(0.01mmol、S/C=500)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これにメタノール5mL、ギ酸アンモニウム(MW:63.06)986mg(15.0mmol)、酢酸(MW:60.05)286μL(5.0mmol)、アセトフェノン(MW:120.15)582μL(5.0mmol)を加え、60℃、にて5時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 20mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率68%であった。得られた化合物をトリフルオロアセチル化し得られたアセチルアミド化合物の光学純度を測定したところ、28%eeであった。
反応例13
1−フェニルエタンアミンの合成
20mLのシュレンクに触媒2(MW:592.17)3.56mg(0.06mmol、S/C=500)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これにメタノール3mL、ギ酸アンモニウム(MW:63.06)568mg(9.0mmol)、酢酸(MW:60.05)172μL(3.0mmol)、アセトフェノン(MW:120.15)349μL(3.0mmol)を加え、60℃、にて4時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 12mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率62%であった。得られた化合物をトリフルオロアセチル化し得られたアセチルアミド化合物の光学純度を測定したところ、22%eeであった。
反応例14
1−フェニルエタンアミンの合成
20mLのシュレンクに触媒5(MW:682.30)6.82mg(0.01mmol、S/C=500)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これにメタノール5mL、ギ酸アンモニウム(MW:63.06)986mg(15.0mmol)、酢酸(MW:60.05)286μL(5.0mmol)、アセトフェノン(MW:120.15)582μL(5.0mmol)を加え、60℃、にて4時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 20mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率76%であった。得られた化合物をトリフルオロアセチル化し得られたアセチルアミド化合物の光学純度を測定したところ、0%eeであった。
反応例15
ジベンジルアミンの合成
20mLのシュレンクに触媒6(MW:692.31)6.92mg(0.01mmol、S/C=100)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これにメタノール1mL、ベンジルアミン(MW:107.16)120μL(1.1mmol)、ギ酸(MW:46.03)113μL(3.0mmol)、ベンズアルデヒド(MW:106.12)102μL(1.0mmol)を加え、40℃にて16時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 10mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率88%であった。
反応例16
N−ベンジルシクロヘキサンアミンの合成
20mLのシュレンクに触媒1(MW:542.12)3.26mg(0.006mmol、S/C=500)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これに酢酸エチル、3mL、ベンジルアミン(MW:107.15)375μL(3.5mmol)、ギ酸(MW:46.03)340μL(9.0mmol)、シクロヘキサノン(MW:98.14)310μL(3.0mmol)を加え、40℃にて18時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 10mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率96%であった。
反応例17
N−ベンジルシクロヘキサンアミンの合成
20mLのシュレンクに触媒2(MW:592.17)3.25mg(0.06mmol、S/C=500)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これに酢酸エチル3mL、ベンジルアミン(MW:107.15)375μL(9.0)mmol、ギ酸(MW:46.03)340μL(9.0mmol)、シクロヘキサノン(MW:98.14)310μL(3.0mmol)を加え、40℃にて18時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 12mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率98%であった。
反応例18
N−ベンジル−1−フェニルエタンアミンの合成
20mLのシュレンクに触媒2(MW:592.17)3.04mg(0.006mmol、S/C=500)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これに酢酸エチル、3mL、ベンジルアミン(MW:107.15)375μL(3.45mmol)、ギ酸(MW:46.03)340μL(9.0mmol)、アセトフェノン(MW:120.15)349μL(3.0mmol)を加え、40℃にて17時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 12mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率56%であった。得られた化合物の光学純度を測定したところ、16%eeであった。
反応例19
N−ベンジル−2−ナフチルエタンアミンの合成
20mLのシュレンクに触媒2(MW:592.17)3.04mg(0.006mmol、S/C=500)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これに酢酸エチル、3mL、ベンジルアミン(MW:107.15)375μL(3.45mmol)、ギ酸(MW:46.03)340μL(9.0mmol)、2’−アセトナフトン(MW:170.21)511mg(3.0mmol)を加え、40℃にて17時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 12mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率62%であった。得られた化合物の光学純度を測定したところ、17%eeであった。
反応例20
N−ベンジル−1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン−2−アミンの合成
20mLのシュレンクに触媒2(MW:592.17)3.04mg(0.006mmol、S/C=500)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これに酢酸エチル、3mL、ベンジルアミン(MW:107.15)375μL(3.45mmol)、ギ酸(MW:46.03)340μL(9.0mmol)、3,4−ジハイドロナフタレン−2−オン(MW:170.21)399μL(3.0mmol)を加え、40℃にて18時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 12mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率87%であった。得られた化合物の光学純度を測定したところ、10%eeであった。
反応例21
(S)−1−(2−メトキシフェニル)−N−((R)−1−フェニルエチル)プロパン−2−アミンの合成
20mLのシュレンクに触媒2(MW:592.17)2.96mg(0.005mmol、S/C=200)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これにメタノール1mL、(R)−1−フェニルエタンアミン(MW:121.18)140μL(1.1mmol)、ギ酸(MW:46.03)113μL(3.0mmol)、1−(2−メトキシフェニル)プロパン−2−オン(MW:164.20)153μL(1.0mmol)を加え、40℃にて21時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 10mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ反応収率85%であった。得られた化合物を脱フェニルエチル化、続いてアセチル化し得られたアセチルアミド化合物の光学純度を測定したところ77%eeであった。
反応例22
N−((R)−1−フェニルエチル)−1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン−2−アミンの合成
20mLのシュレンクに触媒2(MW:592.17)3.04mg(0.006mmol、S/C=500)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これに酢酸エチル、3mL、(R)−1−フェニルエタンアミン(MW:121.18)435μL(3.45mmol)、ギ酸(MW:46.03)340μL(9.0mmol)、3,4−ジハイドロナフタレン−2−オン(MW:170.21)399μL(3.0mmol)を加え、40℃にて18時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 12mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率81%で、得られた化合物のジアステレオマー過剰率は47%deであった。
反応例23
(R)−1−フェニル−N−((R)−1−(ピリジン−2−イル)エチル)エタンアミンの合成
20mLのシュレンクに触媒2(MW:592.17)5.92mg(0.01mmol、S/C=100)を仕込み、減圧乾燥した後にアルゴンガスに置換した。これにメタノール1mL、(R)−1−フェニルエタンアミン(MW:121.18)140μL(1.1mmol)、ギ酸(MW:46.03)113μL(3.0mmol)、1−(ピリジン−2−イル)エタノン(MW:121.14)121mg(1.0mmol)を加え、40℃にて19時間加熱撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、1M KOH 10mLを加え、ジクロロメタン50mLで抽出した、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、50mLメスフラスコにメスアップした。溶液をホールピペットで5mL取り、20mLナスフラスコに移し、減圧濃縮し、内部標準物質としてクマリン(MW:146.14)を用いてH−NMRにより定量を行なったところ、反応収率85%で、得られた化合物のジアステレオマー過剰率は87%deであった。

Claims (15)

  1. 下記一般式(1)
    式中、
    Arは、1または2以上の水素原子が置換基Wで置換されていてもよい芳香族化合物またはシクロペンタジエニル基であり、
    置換基Wは、C1〜20の飽和もしくは不飽和炭化水素基、環員数6〜20のアリール基、環員数3〜20のヘテロシクリル基、C1〜20のアルコキシ基、−C(=O)−R、−C(=O)−OR、ヒドロキシル基、−NR、−C(=O)−NR、ニトロ基、シアノ基、−PR、C1〜20のスルフェニル基、スルホ基、メルカプト基、−SiR、ハロゲン基または−S(=O)−Rであり、
    Qは、ヒドリド基またはアニオン性基であり、
    Mは、ルテニウム、ロジウムまたはイリジウムであり、
    は、1または2以上の水素原子が置換基Wで置換されていてもよい、−S(=O) −R 、環員数6〜20のアリール基、環員数6〜20のヘテロアリール基、−C(=O)−OR 、−C(=O)−R 、−C(=O)−NR 、−C(=S)−NR 、またはC1〜20のスルフェニル基もしくはパーフルオロアルキル基であり、
    、R、R、RおよびR6は、互いに独立して、水素原子、C1〜20のアルキル基、C2〜20のアルケニル基、C2〜20のアルキニル基、環員数3〜20のシクロアルキル基、環員数3〜20のシクロアルケニル基、環員数3〜20のシクロアルキニル基、環員数6〜20のアリール基、環員数3〜20のヘテロシクリル基、C1〜20のアルコキシ基、−C(=O)−OR、C1〜20のフルオロアルキル基、−C(=O)−R、−S(=O)−R、ヒドロキシル基、−NR、−C(=O)−NR、C1〜20のスルフェニル基または−SiRであって、これらの基の1もしくは2以上の水素原子は前記置換基Wによって置換されていてもよく、
    、RおよびRは、互いに独立して、水素原子、C1〜20のアルキル基、C2〜20のアルケニル基、C2〜20のアルキニル基、環員数3〜20のシクロアルキル基、環員数3〜20のシクロアルケニル基、環員数3〜20のシクロアルキニル基、環員数6〜20のアリール基、環員数3〜20のヘテロシクリル基、環員数6〜20のアラルキル基、環員数6〜20のヘテロアラルキル基、環員数6〜20のアルキルアリール基、または環員数6〜20のアルキルヘテロアリール基であり、
    、R、R、RおよびRからなる群から選択される2以上の基は、一緒になって1または2以上の環を形成してもよく、
    nは、0〜3のいずれかの整数であり、
    Aは、1または2以上の水素原子が置換基Wで置換されていてもよい、少なくとも2つの窒素原子を含む飽和または不飽和の含窒素複素環カルベンである、
    で表される含窒素複素環カルベン配位子を有する有機金属化合物。
  2. とRが結合した炭素原子および/またはRとRが結合した炭素原子は、不斉炭素原子である請求項1に記載の有機金属化合物。
  3. が、1または2以上の水素原子が置換基Wで置換されていてもよい−C(=O)−Rである、請求項1または2に記載の有機金属化合物。
  4. n=1である、請求項1〜のいずれか一項に記載の有機金属化合物。
  5. Arが、1または2以上の水素原子が置換基Wで置換されていてもよいシクロペンタジエニル基であり、
    Mが、イリジウムまたはロジウムである、請求項1〜のいずれか一項に記載の有機金属化合物。
  6. Aにおけるカルベン構造を有する複素環が、2つの窒素原子に加え、環員原子としてさらに1以上のヘテロ原子を含み、
    該複素環の環員数が4〜6である、請求項1〜のいずれか一項に記載の有機金属化合物。
  7. Aにおけるカルベン構造を有する複素環の環員数が、5である、請求項1〜のいずれか一項に記載の有機金属化合物。
  8. とRおよび/またはRが、一緒になって1または2以上の環を形成している、請求項1〜のいずれか一項に記載の有機金属化合物。
  9. 一般式(1−a)
    一般式(1−b)、
    または一般式(1−c)
    式中、
    〜R、Ar、Q、MおよびWについては、式(1)における意味と同一の意味を有し、
    jは0〜4の整数であり、
    kは0〜2の整数であり、
    lは0〜4の整数である、
    で表される、請求項1〜のいずれか一項に記載の有機金属化合物。
  10. 光学活性体である、請求項1〜のいずれか一項に記載の有機金属化合物。
  11. イミン、イミニウムカチオンおよびエナミンからなる群から選択される1種または2種以上の還元反応または水素化反応に用いる触媒であって、
    請求項1〜10のいずれか一項に記載の有機金属化合物を少なくとも1つ含む、前記触媒。
  12. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の有機金属化合物または請求項11に記載の触媒および水素源の存在下、イミン、イミニウムカチオンおよびエナミンからなる群から選択される1種または2種以上を、還元または水素化してアミン化合物を製造する、アミン化合物の製造方法。
  13. イミン、イミニウムカチオンおよび/またはエナミンが光学活性化合物である、請求項12に記載のアミン化合物の製造方法。
  14. 水素源が、水素である、請求項12または13に記載のアミン化合物の製造方法。
  15. 還元または水素化が、酸性条件下で行われる、請求項1214のいずれか一項に記載のアミン化合物の製造方法。
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