JP6254045B2 - 細胞内の温度を測定するためのレシオ型蛍光性プローブ - Google Patents

細胞内の温度を測定するためのレシオ型蛍光性プローブ Download PDF

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本発明は、新規な蛍光性共重合体および当該共重合体を用いた細胞内温度の簡便な測定方法に関する。
細胞が栄養源を取り込み、代謝によってエネルギーを取り出す過程で生じる多くの化学反応は、温度に大きく依存している。つまり、細胞の数々の機能や反応は、細胞内外の温度によって制御されている、と言える。例えば、温度という物性を利用した研究は、医療研究に多く見られ、がん細胞での異常な熱発生などが報告されている(非特許文献1:Scand. J.Haematol.1986年,第36巻,第353〜357頁)。代謝活性の高いガン細胞と、そうでない正常細胞の識別に、熱発生を用いることが可能である。これを利用して、熱発生をターゲットにした治療法や創薬等の開発も検討されている。
医療研究のみならず、温度制御による細胞の代謝活性制御技術は、発酵などの微生物を利用した食品業界でも重要である。例えば、酒類醸造においては、酵母から発生する熱量とエタノールの産生量に相関があることが研究されている(非特許文献2:Biotech.Bioeng. 1989年,第34巻,第86〜101頁)。
一方で、温度が生物学的な重要な指標になっていることに加え、細胞内の重要な反応の多くは細胞内で行われているにも関わらず、細胞内の温度を測定しようという試みは非常に少ない。それは細胞レベルでの微小領域の温度測定法が確立されていないことが1つの要因であった。しかしながら、近年の研究で、温度の変化に伴って物性が変化する分子の温度センサーとしての使用が検討され始め(非特許文献3:Photochem.Photobiol.1995年,第62巻,第416〜425頁;非特許文献4:J.Phys.D:Appl.Phys.2004年,第37巻,第2938〜2943頁;非特許文献5:Anal.Chem.2006年,第78巻,第5094〜5101頁;非特許文献6:Appl.Phys.Lett.2005年,第87巻,第201102頁;非特許文献7:Biophys.J.1998年,第74巻,第82〜89頁)、特に最小機能単位を1分子とする高機能な分子温度センサーが開発され、細胞への応用が検討され始めた。
分子温度センサーの一例として、感熱性ポリマーであるポリアクリルアミドに環境応答性の蛍光団である2,1,3−ベンゾオキサジアゾリル基を組み込むという原理に基づいた蛍光性温度センサーが既に報告されている(非特許文献8:Anal.Chem.2003年,第75巻,第5926〜5935頁)。この蛍光性温度センサーは、主鎖であるポリアクリルアミドの熱による相転移により、水性溶液中で温度上昇に伴って蛍光強度が増加するという特性を有するため、蛍光強度を測定することにより系中の温度の変化を観測することができる。
また、ポリマーの製造時に架橋剤を添加して得られる、蛍光団が組み込まれたポリアクリルアミドのマイクロゲルの、蛍光性温度センサーとしての使用についても報告されている(非特許文献9:J.Mater.Chem.2005年,第15巻,第2796〜2800頁;非特許文献10:J.Am.Chem.Soc.2009年,第131巻,第2766〜2767頁)。さらに、イオン性官能基をポリマー内部に入れ込むことによって、凝集を防ぎ、かつ測定温度範囲を広くすることが可能となることが報告されている(特許文献1:国際公開第2008/029770号)。
また、感熱性応答部位として用いる主鎖のアクリルアミドの側鎖の構造を変えることにより、水溶液中でセンサーが応答する温度領域を自由に変化できることは既に報告されており(非特許文献11:Anal.Chem.2004年,第76巻,第1793〜1798頁)、測定対象の温度領域に応じて、感熱性応答部位に複数のアクリルアミド分子を使用することも可能であった。
また、より細胞内温度を簡便に測定する技術として、細胞と接触させるだけでセンサーを細胞内に導入することができるカチオン型の蛍光温度センサー(特許文献2:国際公開第2013/094748号)も、報告されている。
Scand. J.Haematol.1986年,第36巻,第353〜357頁 Biotech.Bioeng. 1989年,第34巻,第86〜101頁 Photochem.Photobiol.1995年,第62巻,第416〜425頁 J.Phys.D:Appl.Phys.2004年,第37巻,第2938〜2943頁 Anal.Chem.2006年,第78巻,第5094〜5101頁 Appl.Phys.Lett.2005年,第87巻,第201102頁 Biophys.J.1998年,第74巻,第82〜89頁 Anal.Chem.2003年,第75巻,第5926〜5935頁 J.Mater.Chem.2005年,第15巻,第2796〜2800頁 J.Am.Chem.Soc.2009年,第131巻,第2766〜2767頁 Anal.Chem.2004年,第76巻,第1793〜1798頁
国際公開第2008/029770号 国際公開第2013/094748号
蛍光団が組み込まれた直鎖型または架橋型のポリアクリルアミドを利用する蛍光性温度センサーに関して、既に報告されているポリマーは、細胞と混ぜるだけで導入でき、蛍光強度変化から温度変化を定性的に捉えられる利点はあったが、一方で、精度の高い測定を行うにはポリマーの濃度に影響を受けない蛍光寿命測定を行う必要性があった。しかしながら、蛍光寿命測定は、特殊な装置を必要とし、特に細胞を扱うような生物学研究施設には、あまり普及されていないものであるため、汎用的ではなかった。また、蛍光寿命測定は、定量に時間がかかるため、時間分解能が低く、細胞内の速い現象を捉えるのには適していない。
さらに言えば、蛍光寿命以外にもセンサーの濃度に依らない測定方法として蛍光強度比による測定が知られているが、一般的には異なる構造の蛍光性ユニットを2つ用いなければいけないことや、採用する2つの蛍光波長に大きな重なりがある場合などは感度が低くなるため、高感度の測定が難しいという現状もあった。
また、より汎用的な測定ということを追求すれば、1つの励起波長で2蛍光色素が同時に励起されることが望ましく、例えば、Caイオン測定で用いられるFura−2のような2波長励起1波長蛍光検出型のようなレシオ型測定方法もあるが、同時に多波長励起する顕微鏡や光度計、あるいはプレートリーダーのような機器は高価であり、利用が限られる。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を進めたところ、従来アクリルアミド型の蛍光性温度センサーで用いていた2,1,3−ベンゾオキサジアゾリル基と同じ波長で励起可能で、かつ2,1,3−ベンゾオキサジアゾリル基とは異なる蛍光波長を示す新たな蛍光性ユニットを追加してポリマー鎖に組み入れることで、2つの蛍光色素由来の蛍光強度比をとることにより、精度良く、かつ簡便に細胞内の温度を測定できることを見出した。さらに、本共重合体を用いることで、細胞内の温度分布を可視化し、定量することも可能で、これらの計測は一般的な蛍光顕微鏡でも充分計測可能な簡便な手法であることも明らかにした。本発明はこれら知見に基づくものである。
すなわち、本発明の第一の側面によれば、感熱性ユニット、カチオン性ユニットおよび蛍光性ユニットを含む共重合体を含んでなる温度感受性プローブであって、
相互に異なる最大蛍光波長を有する第一の蛍光性ユニットおよび第二の蛍光性ユニットを含んでなり、
感熱性ユニットが、以下の式(a):
[式中、Rは、水素原子およびC1−3アルキルから選択され;
およびRは、独立に、水素原子およびC1−20アルキルから選択され、ここで当該アルキルは、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、およびアリールから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく、またはRおよびRはそれらが結合する窒素原子と一緒になって、4〜8員含窒素ヘテロ環を形成し、ここで当該ヘテロ環は、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ニトロ、ハロゲン原子、C1−10アルキルカルボニルアミノおよびアリールカルボニルアミノから選択される1以上の置換基により置換されていてもよい]
で表される1種または2種以上のモノマーに由来する1種または2種以上の繰り返し構造であり、
カチオン性ユニットが、以下の式(b):
[式中、Rは、水素原子およびC1−3アルキルから選択され;
Wは、芳香環または−X−C(=O)−(ここで、Qに直接結合するのはXである)であり;
は、O、S、またはN−R11であり;
11は、水素原子、C1−6アルキル、または−Q−Yであり、ここで当該アルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルフィニル、およびC1−6アルキルスルホニルから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
は、独立に、C1−20アルキレン、C3−20アルケニレン、またはC3−20アルキニレンから選択され、ここで前記アルキレンは、1以上の個所において、O、S、−O−P(=O)(−OH)−O−またはフェニレンが独立に挿入されていてもよく;
Yは、独立に、1以上の正電荷を有しうるイオン性官能基であって、−N212223 、−C(=NR41)−NR4243、および下式:
により表される基から選択され;
およびX はカウンターアニオンであり;
21、R22、およびR23は、独立に、C1−10アルキル、およびC7−14アラルキルから選択され、またはR21およびR22は、結合する窒素原子と一緒になって、5〜7員含窒素ヘテロ環を形成してもよく;
24は、C1−10アルキル、またはC7−14アラルキルであり;
41、R42およびR43は、独立に、水素原子およびC1−10アルキルから選択され、またはR41およびR42は、それぞれが結合する窒素原子および炭素原子と一緒になって、2つの窒素原子を含む5〜7員ヘテロ環を形成してもよく、またはR42およびR43は、結合する窒素原子と一緒になって、5〜7員含窒素ヘテロ環を形成してもよい]
で表される1種または2種以上のモノマーに由来する1種または2種以上の繰り返し構造である、温度感受性プローブが提供される。
さらに、本発明の第二の側面によれば、細胞内の温度を測定する方法が提供され、該方法は、(a)本発明の第一の側面による温度感受性プローブを溶媒中で細胞と混合することにより、該温度感受性プローブを細胞内に導入する工程、(b)励起光照射下、第一の蛍光性ユニットおよび第二の蛍光性ユニットのそれぞれに由来する蛍光の強度を測定する工程、および(c)測定された2つの蛍光強度の比を算出する工程を含む。
本発明の温度感受性プローブによれば、高い精度で、簡便かつ短時間に細胞内の温度を測定することが可能となる。さらに、本発明の温度感受性プローブによれば、細胞内の温度分布を可視化し、定量することも可能である。さらに、これらの温度測定には特殊な機器は必要とされず、一般的な蛍光顕微鏡でも充分に計測を行うことができる。また、本発明の温度感受性プローブは、共重合体中のカチオン性基の存在により、特殊な方法を使わずとも細胞内に入り込むため、細胞内の温度を測定する蛍光温度センサーとして好適に使用することができる。よって、本発明は、酵母等の微生物、動物細胞、植物細胞など、多種多様な細胞に応用できる。また、本発明の温度感受性プローブによれば、共重合体の濃度に依存しない、より正確な温度測定を行うことが可能である。
化合物2の150mM塩化カリウム水溶液中での蛍光スペクトルの変化(0.01w/v%、励起波長458nm)を25℃(点線)、40℃(実線)、55℃(太線)の各温度で示した一例である。 化合物1〜4(黒丸:化合物1、黒菱形:化合物2、白三角:化合物3、白丸:化合物4)の150mM塩化カリウム水溶液中での蛍光強度比(580nm/515nm)の感熱応答性試験結果(0.01w/v%、励起波長458nm)の一例である。 化合物1、5、6(黒丸:化合物1、白四角:化合物5、黒四角:化合物6)の150mM塩化カリウム水溶液中での蛍光強度比(580nm/515nm)の感熱応答性試験結果(0.01w/v%、励起波長458nm)の一例である。 化合物1、7、8(黒丸:化合物1、)の150mM塩化カリウム水溶液中での蛍光強度比(580nm/515nm)の感熱応答性試験結果(0.01w/v%、励起波長458nm)の一例である。 pH6および9の150mM塩化カリウム水溶液中における化合物1(いずれも0.01w/v%、励起波長458nm、)の感熱応答性試験(黒三角:pH6、白丸:pH7、白四角:pH9)の一例である。 125、150および175mM塩化カリウム水溶液中における化合物1(いずれも0.01w/v%、励起波長458nm、蛍光強度比(580nm/515nm))の感熱応答性試験の結果(黒三角:175mM KCl中、白四角:150mM KCl中、黒丸:125mM KClを示す)の一例である。 化合物1〜9をそれぞれ5%グルコース溶液中でMOLT−4 (ヒト急性リンパ芽球性白血病T細胞)と混合(25℃、10分)し、顕微鏡で観察(励起光:473nm、蛍光:500nm〜600nm)を行った写真の一例である。 MOLT−4 (ヒト急性リンパ芽球性白血病T細胞)細胞中の化合物1の蛍光強度比(580nm/515nm)の感熱応答性試験の結果の一例である。 MOLT−4 (ヒト急性リンパ芽球性白血病T細胞)細胞中の化合物1の蛍光強度比(580nm/515nm)の感熱応答性試験から算出した温度分解能の結果の一例である。 MOLT−4 (ヒト急性リンパ芽球性白血病T細胞)細胞中の前化合物9の蛍光強度比(560nm/580nm)の感熱応答性試験結果と、そのグラフから算出した温度分解能の結果の一例である。 化合物1をHEK293T(ヒト由来胎児腎細胞)細胞に導入し、共焦点レーザー顕微鏡で観察し(励起波長473nm)、蛍光波長490−530nmの蛍光像(P1)と蛍光波長570−610nmの蛍光像(P2)の比をとることにより得られた蛍光像(P2/P1)の一例である。 図11の細胞の一部の断面図(左図の黒線部分)を、横軸:黒線左端からの距離、縦軸:レシオ像の白黒値(強度)として表した図の一例である。 化合物1をHEK293T(ヒト由来胎児腎細胞)細胞に導入し、共焦点レーザー顕微鏡で観察し(励起波長473nm)、蛍光波長510−520nmの蛍光像(P1)と蛍光波長580−590nmの蛍光像(P2)の比をとることにより得られた蛍光像(P2/P1)の細胞質と核の平均蛍光強度比の違い(9細胞の平均)を温度別に示した一例である。 筋管細胞へと分化誘導したC2C12(マウス筋芽細胞由来、ECACC)を0.45mM CaClを含んだ5%グルコース溶液中で化合物1と混合(終濃度0.03%)し、細胞にダメージを与えることなく、化合物1を導入した。さらに共焦点レーザー顕微鏡で観察し(励起波長473nm)、温度を変化させたときのレシオ像(570−670nm/485−545nm)の変化を示した一例である。
発明の具体的説明
本発明の第一の側面による温度感受性プローブとして用いられる共重合体は、相互に異なる最大蛍光波長を有する第一の蛍光性ユニットおよび第二の蛍光性ユニットを含む。本発明の温度感受性プローブを用いた温度測定では、第一の蛍光性ユニットに由来する蛍光の強度と、第二の蛍光性ユニットに由来する蛍光の強度との比を算出し、これと実際の温度とを対応させることにより、高い精度で、簡便かつ短時間に温度を測定することが可能となる。また、本発明の温度感受性プローブとして用いられる共重合体は、感熱性ユニットおよび蛍光性ユニットに加えて、カチオン性ユニットを含む。これにより、該共重合体を溶媒中で細胞と混合することにより、該共重合体を細胞内に導入することが可能となる。
第一の蛍光性ユニットおよび第二の蛍光性ユニットは、同一波長の励起光の照射によって相互に異なる最大蛍光波長の蛍光を生じるものであることが望ましい。また、第一の蛍光性ユニットの最大蛍光波長と、第二の蛍光性ユニットの最大蛍光波長との差は、2つの波長における蛍光強度を同時に測定する上で、測定器によって十分に識別される程度に離れていればよく、特に制限されないが、好ましくは50nm以上とされる。
本発明の好ましい実施態様によれば、第一の蛍光性ユニットおよび第二の蛍光性ユニットのいずれか一方は、温度の上昇に応じて蛍光強度が上昇するものであり、他方は、温度の上昇に応じて蛍光強度が不変あるいは下降するものであり、望ましくは下降するものとされる。
本発明の特に好ましい実施態様によれば、第一の蛍光性ユニットは、以下の式(c):
[式中、Rは、水素原子およびC1−3アルキルから選択され;
は、O、S、またはN−R12であり;
は、直接結合、O、S、SO、SO、N(−R13)、CON(−R16)、N(−R16)CO、N(−R17)CON(−R18)、SON(−R19)またはN(−R19)SOであり;
は、C1−20アルキレン、C3−20アルケニレン、またはC3−20アルキニレンから選択され、ここで前記アルキレンは、1以上の個所において、O、Sまたはフェニレンが独立に挿入されていてもよく;
Arは、6〜18員芳香族炭素環基、または5〜18員芳香族ヘテロ環基から選択され、ここで当該芳香族炭素環基および芳香族ヘテロ環基は、含まれる環の1以上が芳香族環である縮合環を含んでいてもよく、当該芳香族炭素環基および芳香族ヘテロ環基に環原子として存在する−CH−は−C(O)−に置換されていてもよく、さらに当該芳香族炭素環基および芳香族ヘテロ環基は、ハロゲン原子、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルフィニル、C1−6アルキルスルホニル、ニトロ、シアノ、C1−6アルキルカルボニル、C1−6アルコキシカルボニル、カルボキシ、ホルミル、−NR、および−SONR1415から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく(ここで前記C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルフィニル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6アルキルカルボニルおよびC1−6アルコキシカルボニルに含まれるアルキルは、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、ジ(C1−6アルキル)アミノ、アリール、およびカルボキシから選択される1以上の置換基により置換されていてもよい);
およびRは、独立に、水素原子、C1−10アルキル、アリール、C1−10アルキルカルボニル、アリールカルボニル、C1−10アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルバモイル、N−(C1−10アルキル)カルバモイル、およびN,N−ジ(C1−10アルキル)カルバモイルから選択され、ここで前記C1−10アルキル、C1−10アルキルカルボニル、C1−10アルキルスルホニル、N−(C1−10アルキル)カルバモイル、およびN,N−ジ(C1−10アルキル)カルバモイルに含まれるアルキルは、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、ジ(C1−6アルキル)アミノ、アリール、およびカルボキシから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく、さらに前記アリール、アリールカルボニル、およびアリールスルホニルに含まれるアリールは、ハロゲン原子、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、およびカルボキシから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;または
およびRはそれらが結合する窒素原子と一緒になって、4〜8員含窒素ヘテロ環を形成し、ここで当該ヘテロ環は、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ニトロ、ハロゲン原子、C1−10アルキルカルボニルアミノおよびアリールカルボニルアミノから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
12は、水素原子、C1−6アルキル、または−Q−X−Arであり、ここで当該アルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルフィニル、およびC1−6アルキルスルホニルから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
13は、水素原子、またはC1−6アルキルであり、ここで当該アルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルフィニル、およびC1−6アルキルスルホニルから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
14およびR15は、独立に、水素原子、およびC1−6アルキルから選択され;またはR14およびR15はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、4〜8員含窒素ヘテロ環を形成し;
16、R17、R18およびR19は、独立に、水素原子、およびC1−6アルキルから選択され、ここで当該アルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルフィニル、およびC1−6アルキルスルホニルから選択される1以上の置換基により置換されていてもよい]
で表されるモノマーに由来する繰り返し構造であり、
第二の蛍光性ユニットは、以下の式(d):
[式中、R55は、水素原子およびC1−3アルキルから選択され;
51、R52、R53およびR54は、独立に、水素原子およびC1−6アルキルから選択され;
は、直接結合、フェニレン、−Q4−O−C(=O)−(ここで、ボロンジピロメテン骨格に直接結合するのはQ4である)、−Q4−N(−R61)−C(=O)−(ここで、ボロンジピロメテン骨格に直接結合するのはQ4である)であり;
61は、水素原子およびC1−6アルキルから選択され;
は、C1−20アルキレン、フェニレン、およびナフチレンから選択され、該フェニレンおよびナフチレンは、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、およびカルボキシから選択される1以上の置換基により置換されていてもよい]
で表されるモノマーに由来する繰り返し構造とされる。
本発明に用いられる共重合体に含まれる感熱性ユニットは、温度に応じてその形状が変化する繰り返し構造であり、以下の式(a)で表される1種または2種以上のモノマーに由来する1種または2種以上の繰り返し構造である:
[式中、Rは、水素原子およびC1−3アルキルから選択され;
およびRは、独立に、水素原子およびC1−20アルキルから選択され、ここで当該アルキルは、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、およびアリールから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく、またはRおよびRはそれらが結合する窒素原子と一緒になって、4〜8員含窒素ヘテロ環を形成し、ここで当該ヘテロ環は、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ニトロ、ハロゲン原子、C1−10アルキルカルボニルアミノおよびアリールカルボニルアミノから選択される1以上の置換基により置換されていてもよい]。
本発明に用いられる共重合体に組み込まれるカチオン性ユニットは、1以上の正電荷を有するイオン性官能基を含むモノマーに由来する繰り返し構造であり、以下の式(b)で表される1種または2種以上のモノマーに由来する1種または2種以上の繰り返し構造である:

[式中、Rは、水素原子およびC1−3アルキルから選択され;
Wは、芳香環または−X−C(=O)−(ここで、Qに直接結合するのはXである)であり;
は、O、S、またはN−R11であり;
11は、水素原子、C1−6アルキル、または−Q−Yであり、ここで当該アルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルフィニル、およびC1−6アルキルスルホニルから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
は、独立に、C1−20アルキレン、C3−20アルケニレン、またはC3−20アルキニレンから選択され、ここで前記アルキレンは、1以上の個所において、O、S、−O−P(=O)(−OH)−O−またはフェニレンが独立に挿入されていてもよく;
Yは、独立に、1以上の正電荷を有しうるイオン性官能基であって、−N212223 、−C(=NR41)−NR4243、および下式:
により表される基から選択され;
およびX はカウンターアニオンであり;
21、R22、およびR23は、独立に、C1−10アルキル、およびC7−14アラルキルから選択され、またはR21およびR22は、結合する窒素原子と一緒になって、5〜7員含窒素ヘテロ環を形成してもよく;
24は、C1−10アルキル、またはC7−14アラルキルであり;
41、R42およびR43は、独立に、水素原子およびC1−10アルキルから選択され、またはR41およびR42は、それぞれが結合する窒素原子および炭素原子と一緒になって、2つの窒素原子を含む5〜7員ヘテロ環を形成してもよく、またはR42およびR43は、結合する窒素原子と一緒になって、5〜7員含窒素ヘテロ環を形成してもよい]。
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明に用いられる共重合体は、式(a)で表されるモノマー、式(b)で表されるモノマー、式(c)で表されるモノマー、および式(d)で表されるモノマーのそれぞれに由来する繰り返し構造を含む共重合体とされる。
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、本発明に用いられる共重合体は、式(I)、式(II)、式(III)および式(XIII):
[式中、R、RおよびR、ならびにR、Y、WおよびQ、ならびにR、X、X、QおよびAr、ならびにR55、X、R51、R52、R53およびR54は、既に定義したとおりであり、a、b、cおよびdは、各繰り返し単位の比を表す0より大きい数である]
で表される繰り返し単位を含む共重合体とされる。この共重合体では、aおよびbの和は100であり、bは、好ましくは2〜10とされ、cは、好ましくは0.3〜2とされ、dは、好ましくは0.03〜1とされる。また、この共重合体は、物質そのものとして本発明の一つの側面をなす。
本発明の好ましい実施態様によれば、前記共重合体は2種以上の感熱性ユニットを含むものとされる。感熱性ユニットには様々な種類のものがあり、その種類に応じて、最も高い温度反応性を示す温度域が異なる。この実施態様では、2種以上の感熱性ユニットを組み合わせることにより、所望の温度域において共重合体の温度反応性が高くなるように調整することができる。本発明のより好ましい実施態様によれば、前記共重合体は、前記式(a)で表される2種以上の感熱性ユニットを含むものとされる。また、一つの実施態様では、2種類の感熱性ユニットが用いられる。例えば、動物細胞の一般的な培養温度である35℃付近の測定では、N−n−プロピルアクリルアミド(NNPAM)とN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)との組み合わせを用いることが好ましい。また、酵母等の微生物の発酵をモニターする等の目的で25℃以下の温度領域の測定が必要になる場合には、N―tert-ブチルアクリルアミド(NTBAM)とNNPAMとの組み合わせを用いることが好ましい。
式(I)におけるaは、感熱性ユニット全体の総和を表すものであり、2種以上の感熱性ユニットを用いた場合には、全ての感熱性ユニットの繰り返し単位数の比率の和を意味する。
本発明の好ましい実施態様によれば、上述の共重合体において、Arは、下式:
により表される基から選択される芳香族炭素環基または芳香族ヘテロ環基であり、これらの基は当該環上をハロゲン原子、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルフィニル、C1−6アルキルスルホニル、ニトロ、シアノ、C1−6アルキルカルボニル、C1−6アルコキシカルボニル、カルボキシ、ホルミル、−NR、および−SONR1415から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく(ここで前記C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルフィニル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6アルキルカルボニルおよびC1−6アルコキシカルボニルに含まれるアルキルは、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、ジ(C1−6アルキル)アミノ、アリール、およびカルボキシから選択される1以上の置換基により置換されていてもよい);
10は、O、SまたはSeから選択され;
は、水素原子、C1−10アルキル、およびアリールから選択され、当該アルキルは、
ハロゲン原子、C1−6アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、ジ(C1−6アルキル)アミノ、アリール、およびカルボキシから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく、さらに前記アリールは、ハロゲン原子、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、およびカルボキシから選択される1以上の置換基により置換されていてもよい。
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、Arは、下式:
により表される基から選択される芳香族炭素環基または芳香族ヘテロ環基であり、これらの基は当該環上をハロゲン原子、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルフィニル、C1−6アルキルスルホニル、ニトロ、C1−6アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、シアノ、ホルミル、C1−6アルキルカルボニル、C1−6アルコキシカルボニル、カルボキシおよび−SONR1415から選択される1以上の置換基により置換されていてもよい。
本明細書において「C1−3アルキル」とは、炭素数1〜3の直鎖状、分岐鎖状、または環状のアルキル基を意味し、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、シクロプロピルが含まれる。
本明細書において「C1−6アルキル」とは、炭素数1〜6の直鎖状、分岐鎖状、環状または部分的に環状のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、3−メチルブチル、2−メチルブチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、4−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−メチルペンチル、1−メチルペンチル、3−エチルブチル、および2−エチルブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロプロピルメチルなどが含まれ、例えば、C1−4アルキルおよびC1−3アルキルなども含まれる。
本明細書において「C1−10アルキル」とは、炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状、環状または部分的に環状のアルキル基を意味し、例えば、既に定義したC1−6アルキルおよびC1−3アルキルなどが含まれる。
本明細書において「C1−20アルキル」とは、炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状、環状または部分的に環状のアルキル基を意味し、例えば、既に定義したC1−10アルキル、C1−6アルキルおよびC1−3アルキルなどが含まれる。
本明細書において「C1−6アルコキシ」とは、アルキル部分として既に定義した炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルオキシ基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、s−ブトキシ、i−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシ、3−メチルブトキシ、2−メチルブトキシ、1−メチルブトキシ、1−エチルプロポキシ、n−ヘキシルオキシ、4−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、2−メチルペントキシ、1−メチルペントキシ、3−エチルブトキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロプロピルメチルオキシなどが含まれ、例えば、C1−4アルコキシおよびC1−3アルコキシなども含まれる。
本明細書において「アリール」とは、6〜10員芳香族炭素環基を意味し、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチルなどが含まれる。
本明細書において「C7−14アラルキル」とはアリール基を含む炭素数が7〜14のアリールアルキル基を意味し、例えば、ベンジル、1−フェネチル、2−フェネチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチルなどが含まれる。
本明細書においてハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子などが挙げられる。
本明細書において「C1−20アルキレン」とは、炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状、環状または部分的に環状のアルキレン基を意味し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなど、さらにC1−10アルキレンおよびC1−6アルキレンなどが含まれる。
本明細書において「C3−20アルケニレン」とは、炭素数3〜20の直鎖状、分岐鎖状、環状または部分的に環状のアルケニレン基を意味し、例えば、プロペニレン、ブテニレンなど、さらにC3−10アルケニレンおよびC3−6アルケニレンなどが含まれる。
本明細書において「C3−20アルキニレン」とは、炭素数3〜20の直鎖状、分岐鎖状、環状または部分的に環状のアルキニレン基を意味し、例えば、プロピニレン、ブチニレンなど、さらにC3−10アルキニレンおよびC3−6アルキニレンなどが含まれる。
本明細書において「C1−6アルキルチオ」とは、アルキル部分として既に定義した炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルチオ基を意味し、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、i−プロピルチオ、n−ブチルチオ、s−ブチルチオ、i−ブチルチオ、t−ブチルチオなどが含まれる。
本明細書において「C1−6アルキルスルフィニル」とは、アルキル部分として既に定義した炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルスルフィニル基を意味し、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、n−プロピルスルフィニル、i−プロピルスルフィニル、n−ブチルスルフィニル、s−ブチルスルフィニル、i−ブチルスルフィニル、t−ブチルスルフィニルなどが含まれる。
本明細書において「C1−6アルキルスルホニル」とは、アルキル部分として既に定義した炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルスルホニル基を意味し、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、n−プロピルスルホニル、i−プロピルスルホニル、n−ブチルスルホニル、s−ブチルスルホニル、i−ブチルスルホニル、t−ブチルスルホニルなどが含まれる。
本明細書において「6〜18員芳香族炭素環基」とは、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニル、インダニル、テトラリニルなどが含まれる。
本明細書において「5〜18員芳香族ヘテロ環基」とは、酸素、窒素および硫黄から選択される1以上のヘテロ原子を有する芳香族ヘテロ環であり、例えば、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピリジル、インドリル、キノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾピラニル、ベンゾクロメニルなどが含まれる。
本明細書において「C2−6アルケニルスルホニル」とは、アルケニル部分として既に定義したC2−6アルケニル基を有するアルケニルスルホニル基を意味し、例えばビニルスルホニル、アリルスルホニルなどが含まれる。
本明細書において「C2−6アルケニルカルボニル」とは、アルケニル部分として既に定義したC2−6アルケニル基を有するアルケニルカルボニル基を意味し、例えばアクリロイル、メタクリロイルなどが含まれる。
本明細書において「C2−6アルキニルカルボニル」とは、アルキニル部分として既に定義したC2−6アルキニル基を有するアルキニルカルボニル基を意味し、例えばエチニルカルボニルなどが含まれる。
本明細書において「C1−6アルキルカルボニル」とは、基−CO(C1−6アルキル)を表し、ここで当該C1−6アルキルは既に定義したとおりである。
本明細書において「C1−6アルコキシカルボニル」とは、基−CO(C1−6アルコキシ)を表し、ここで当該C1−6アルコキシは既に定義したとおりである。
本明細書において「C1−6アルキルカルボニルアミノ」とは、基−NHCO(C1−6アルキル)を表し、ここで当該C1−6アルキルは既に定義したとおりである。
本明細書において「C1−6アリールカルボニルアミノ」とは、基−NHCO(アリール)を表し、ここで当該アリールは既に定義したとおりである。
本明細書における「5〜7員含窒素ヘテロ環」には、例えば、ピロール環、ピロリジン環、ピペリジン環、ホモピペリジン環、ピペラジン環、ホモピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環など飽和ヘテロ環が含まれる。
本明細書における「4〜8員含窒素ヘテロ環」には、例えば、ピロール環、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ホモピペリジン環、ピペラジン環、ホモピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環など、および5〜7員含窒素ヘテロ環が含まれる。
本明細書における「2つの窒素原子を含む5〜7員ヘテロ環」には、例えば、イミダゾリジン、テトラヒドロピリミジンなどが含まれる。
本明細書において、アルキレンが1以上の個所においてOが挿入されている場合、当該アルキレン鎖は主鎖中にエーテル結合を含むことになり、当該挿入は安定な構造となるために、−O−O−および−O−CH−O−の構造とならないように行われることは当業者であれば容易に理解するはずである。以上のことはアルキレンへのSの挿入においても当てはまる。
本明細書において、共重合体とは、各ユニットにあたるモノマーを混ぜ、重合反応をしてできた高分子鎖の集合体である。ポリマーとは、モノマーユニットが結合し連なった高分子鎖を示す。
本明細書において「カウンターアニオン」とは、有機化学の技術分野で有機化合物のカウンターアニオンとして通常用いられるアニオンであれば特に制限されず、例えば、ハロゲン化物アニオン(塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン)、有機酸の共役塩基(例えば酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン)、硝酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオンなどが含まれる。本発明において好ましいカウンターアニオンとしては、例えば、塩化物イオン、硝酸イオンなどが挙げられる。
なお、カウンターアニオンが2価以上である場合、それに対応する個数のイオン性官能基とイオン結合を形成することは当業者により容易に理解されるとおりである。
本発明において、R、R、RおよびR55は、好ましくは、水素原子およびメチルから選択される。
式(a)および式(I)における−NRは、特には限定されないが、例えば、Rが水素原子であり、RはC2−10アルキルであってもよい。また、RおよびRはそれらが結合する窒素原子と一緒になって、4〜8員含窒素ヘテロ環を形成する場合、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、ホモピペリジン環、ピペラジン環、ホモピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環などを形成してもよい。
式(b)および式(II)におけるWは、芳香環および−X−C(=O)−(ここで、Qに直接結合するのはXである)のいずれであってもよい。Wにより表される芳香環は、好ましくはC6−18芳香環、より好ましくはベンゼン環とされる。Wは、好ましくは−X−C(=O)−(ここで、Qに直接結合するのはXである)とされる。X1は、好ましくはO、NHまたはN(C1−6アルキル)とされる。
式(b)および式(II)における−Q1−は、好ましくはC2−10アルキレンとされる。
式(c)および式(III)における−X−Q−は、好ましくは、Xは、O、NHまたはN(C1−6アルキル)であり、QはC2−10アルキレンである。
式(c)および式(III)における−Arは、好ましくは、下式(V)〜(XII):
[式中、R31は水素原子、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ、および−SONR1415から選択され;R32はC1−6アルキルであり;X11は、N−R33、OまたはSであり;R33は水素原子またはC1−6アルキルであり;X10、R14およびR15は、既に定義したとおりである]
から選択される基である。
式(V)について好ましいXとしては、例えば、直接結合、CON(−R16)、N(−R16)CO、SON(−R19)またはN(−R19)SOが挙げられる。
式(VI)について好ましいXとしては、例えば、N−R13(ここで、好ましいR13としてはメチルなどのC1−3アルキルが挙げられる)、またはSが挙げられる。
式(VII)について好ましいXとしては、例えば、直接結合、CON(−R16)、N(−R16)CO、SON(−R19)またはN(−R19)SOが挙げられる。
式(VIII)について好ましいXとしては、例えば、直接結合、CON(−R16)、N(−R16)CO、SON(−R19)またはN(−R19)SOが挙げられる。
式(IX)について好ましいXとしては、例えば、直接結合が挙げられる。
式(X)について好ましいXとしては、例えば、直接結合が挙げられる。
式(XI)について好ましいXとしては、例えば、CO、SO、SON(−R19)またはCON(−R16)(ここで前記SON(−R19)およびCON(−R16)は、それぞれ硫黄原子および炭素原子がArに結合する)が挙げられる。
式(XII)について好ましいXとしては、例えば、CO、SO、SON(−R19)またはCON(−R16)(ここで前記SON(−R19)およびCON(−R16)は、それぞれ硫黄原子および炭素原子がArに結合する)が挙げられる。
本発明において、基−X−Arは環境応答性の蛍光団として機能し、例えば、式(V)または(VII)の蛍光団を使用した場合は温度の上昇に伴い蛍光強度が低下する温度センサーが、式(VI)または(VIII)〜(XII)の蛍光団を使用した場合は、温度の上昇に伴い蛍光強度も上昇する温度センサーが得られる。
式(d)および式(XIII)におけるR51、R52、R53およびR54は、好ましくは水素原子およびメチル基から独立に選択される。
式(d)および式(XIII)における好ましいXは、例えば、直接結合、フェニレン、−Q4−O−C(=O)−(ここで、ボロンジピロメテン骨格に直接結合するのはQ4である)、または−Q4−NH−C(=O)−(ここで、ボロンジピロメテン骨格に直接結合するのはQ4である)である。
式(d)および式(XIII)におけるQは、好ましくはフェニレンとされる。
本発明の特に好ましい実施態様によれば、Rは、水素原子、メチルおよびエチルから選択され;Rは、n−プロピル、イソプロピルおよびt−ブチルから選択され、Rは水素原子であり;Rは、水素原子、メチルおよびエチルから選択され;Wは、芳香環または−X−C(=O)−(ここで、Qに直接結合するのはXである)であり;Xは、O、S、またはN−R11であり;R11は、水素原子、C1−6アルキル、または−Q−Yであり;Qは、C1−20アルキレンであり、ここで前記アルキレンは、1以上の個所において、O、S、−O−P(=O)(−OH)−O−またはフェニレンが独立に挿入されていてもよく;Yは、独立に、1以上の正電荷を有しうるイオン性官能基であって、−N212223 、−C(=NR41)−NR4243、および下式:
により表される基から選択され;X およびX はカウンターアニオンであり;R21、R22、およびR23は、独立に、C1−10アルキルであり、またはR21およびR22は、結合する窒素原子と一緒になって、5〜7員含窒素ヘテロ環を形成してもよく;R24は、C1−10アルキルであり;R41、R42およびR43は、独立に、水素原子およびC1−10アルキルから選択され、またはR41およびR42は、それぞれが結合する窒素原子および炭素原子と一緒になって、2つの窒素原子を含む5〜7員ヘテロ環を形成してもよく、またはR42およびR43は、結合する窒素原子と一緒になって、5〜7員含窒素ヘテロ環を形成してもよく;Rは、水素原子およびC1−3アルキルから選択され;Xは、O、またはN−R12であり;Xは、直接結合、O、N(−R13)、CON(−R16)、N(−R16)CO、またはN(−R17)CON(−R18)であり;Qは、C1−20アルキレン、C3−20アルケニレン、またはC3−20アルキニレンから選択され、ここで前記アルキレンは、1以上の個所において、O、Sまたはフェニレンが独立に挿入されていてもよく;Arは、下式:
により表される基から選択される芳香族炭素環基または芳香族ヘテロ環基であり、これらの基は当該環上をハロゲン原子、C1−6アルコキシ、ニトロ、シアノ、−NR、および−SONR1415から選択される1以上の置換基により置換されており、さらに、C1−6アルキルにより置換されていてもよく;X10は、O、SまたはSeから選択され;Rは、水素原子、C1−10アルキル、およびアリールから選択され;RおよびRは、独立に、水素原子、C1−10アルキル、アリール、C1−10アルキルカルボニル、アリールカルボニル、C1−10アルキルスルホニル、アリールスルホニル、およびカルバモイルから選択され;またはRおよびRはそれらが結合する窒素原子と一緒になって、5〜7員含窒素ヘテロ環を形成し、ここで当該ヘテロ環は、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ニトロ、およびハロゲン原子から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;R12は、水素原子、C1−6アルキル、または−Q−X−Arであり、ここで当該アルキルは、ヒドロキシおよびハロゲン原子から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;R13は、水素原子、またはC1−6アルキルであり、ここで当該アルキルは、ヒドロキシおよびハロゲン原子から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;R14およびR15は、独立に、水素原子、およびC1−6アルキルから選択され;またはR14およびR15はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、5〜7員含窒素ヘテロ環を形成し;R16、R17およびR18は、独立に、水素原子、およびC1−6アルキルから選択され、ここで当該アルキルは、ヒドロキシおよびハロゲン原子から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;R51、R52、R53、R54およびR55は、水素原子およびメチル基から独立して選択され;Xは、直接結合、フェニレン、−Q4−O−C(=O)−(ここで、ボロンジピロメテン骨格に直接結合するのはQ4である)、または−Q4−NH−C(=O)−(ここで、ボロンジピロメテン骨格に直接結合するのはQ4である)とされ、Qはフェニレンとされる。
式(I)、式(II)、式(III)および式(XIII)におけるa、b、cおよびdは式中の各繰り返し単位の比を表す0より大きい数であり、特に限定されないが、例えば、a+b=100としたときに、bは、例えば1以上、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上、より好ましくは3以上とされ、例えば15以下、好ましくは10以下とされる。さらに、a+b=100とした場合のbは、例えば1〜15であり、好ましくは2〜10であり、より好ましくは3〜10とされる。cはaとbの総量(つまり100)に対する割合であって、cは0.05〜10であり、具体的には0.1〜5であり、好ましくは0.2〜2であり、より好ましくは0.3〜1.5である。dはaとbの総量(つまり100)に対する割合であって、dは0.01〜5であり、具体的には0.02〜2であり、好ましくは0.02〜1であり、より好ましくは0.03〜1である。cとdの比を表すc/dは、特に限定されないが、好ましくは0.1〜30、より好ましくは1〜20、さらに好ましくは3〜10とされる。上述のように、aは感熱性ユニットの総和であり、例えば、2種類の感熱性ユニットを使う場合の感熱性ユニットの比は、ある数pを用いて、p:a−pとなる。例えば、a+b=100とした場合のbが2.5となるように共重合体を作製し、かつ、2種類の感熱性ユニット(例えば、N−n−プロピルアクリルアミドとN−イソプロピルアクリルアミド)を組み合わせて用いる場合には、aは97.5であり、N−n−プロピルアクリルアミドとN−イソプロピルアクリルアミドの比はp:97.5−pで表される。また、本発明の共重合体の重量平均分子量は、特には限定されないが、例えば1000〜100000、好ましくは5000〜50000である。
本発明のポリマーの分子量と使用する蛍光性ユニットのモノマー使用量に応じて、1つのポリマーの中に2つの蛍光性ユニットが必ずしも導入されない場合がある。本ポリマーを温度感受性プローブとして使用する場合には、一般的な励起強度と検出感度の組み合わせを用いれば、溶液中では0.001%(w/v)以上のある程度高い濃度で使用することになり、また細胞内でも、細胞内に蛍光性ユニット由来の蛍光が充分認められる条件で使用することになるため、細胞内には比較的高い濃度、つまり、溶液中で使用する場合と同程度の0.001%(w/v)以上の共重合体が存在することになる。つまり、2つの蛍光性ユニットが2つのポリマーに分かれてしまっている場合でも、観察視野や測定場に1ポリマー分子しかいないような特殊な環境ではない限り、2つの蛍光性ユニットが含まれる別々の2つポリマーは、ほぼ同一の温度環境に置かれるため、それぞれの蛍光性ユニットは、1つのポリマーに2つの蛍光性ユニットが含まれている場合と同じような蛍光強度を示すことになる。したがって、本発明の共重合体は2つの蛍光性ユニットが同一のポリマー分子に含まれる場合に限定されない。
本発明の共重合体は周囲の温度変化に対して非常に素早く応答し、その構造変化は数ミリ秒程度である。つまり、本発明の温度感受性蛍光プローブは、細胞内の温度変化に敏捷に応答し蛍光強度を変化させるため、顕微鏡などを用いて、細胞内の温度分布を可視化した場合には、その蛍光強度比から細胞内の各微小空間における細胞内の温度を定量することができる。
本発明に係る共重合体は、高分子合成の技術分野における通常の知識に基づいて合成することができ、例えば、ラジカル重合によるランダム共重合体として得ることができる。その場合に使用することができるラジカル開始剤としては、特に限定はされないが、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などのアゾ化合物が挙げられる。
反応開始剤の使用量は、使用するモノマーに対して0.01モル%以上の量であればよく、ラジカル合成が進行する濃度であれば、適量を選択することができる。例えば、0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上の反応開始剤を使用することができる。
重合に使用する反応溶媒は、特に限定されないが、例として、アセトニトリル、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、メタノールなどが挙げられる。ラジカル重合は、特に限定はされないが、例えば0〜100℃、好ましくは50〜70℃の反応温度、および例えば1〜48時間、好ましくは2〜16時間の反応時間で行うことができる。
本発明の共重合体を含む溶液中のpHや塩濃度に影響を受けずに温度測定を行うために、当該共重合体に含まれるカチオン性官能基は、広範囲のpHにおいてイオン性を維持するという方が望ましい。しかしながら、細胞内温度を測定するという用途に限って言えば、細胞内のpHは2〜9、さらに通常の状態、一般的な動物、植物、微生物細胞であればpH4〜8程度である。このpHでカチオン性が保たれている官能基であればよい。このような観点から、Yは−N212223 が好ましい。
本発明における「細胞」とは、一般的な分類である原核細胞と真核細胞の両方を含み、特にその生物の種に依らない。例えば、原核細胞は真正細菌と古細菌に分けられるが、真正細菌はその中でも放線菌門のようなグラム陽性菌とプロテオバクテリア門のようなグラム陰性菌に大きく分けられ、ペプチドグリカン層の厚みなどによって、共重合体が適用できる範囲は制限されない。また、真核細胞には、主に真核生物(原生生物、真菌、植物、動物)に属する細胞が当てはまる。例えば、一般的に分子生物学などの研究で利用され、かつ工業的にも利用される酵母は真菌に属する。また、本発明の温度感受性プローブは、浮遊細胞および接着細胞の両方において好適に用いられる。
本発明の共重合体を細胞に導入する際には、イオン強度の低い溶液(溶媒)に置換することが望ましい。このような溶媒としては、例えば、水(好ましくは純水)およびソルビトール水溶液、グルコース溶液などが挙げられる。細胞の種類に応じて、これらグルコース溶液などに0.45mMの塩化カルシウムを添加した溶液なども挙げられる。
本発明に従って共重合体を細胞に導入するときの共重合体の濃度は、例えば、共重合体の終濃度を0.001〜1%(w/v)、好ましくは0.01〜0.5%(w/v)になるように調整し、菌体と混ぜることができる。これは微生物菌体のようなものに限らず、接着細胞などの場合にもあてはまる。
本発明に用いられる共重合体の感熱応答性による蛍光強度の変化は、通常の蛍光強度測定方法により測定することができる。測定での励起波長および測定する蛍光波長は、特に限定はされないが、例えば、測定試料の励起スペクトルを測定した際の最大励起波長またはその付近の波長を使用することができる。また、測定する蛍光波長も特には限定されないが、例えば、ある温度で測定試料の蛍光スペクトルを測定した際の最大蛍光波長またはその付近の波長を使用することができる。
本発明では、ある独立した2つの蛍光波長における蛍光強度を測定してこれらの比をとり、その蛍光強度比から温度に換算するという方法をとることが望ましい。この手法により、共重合体から発せられる蛍光強度が、微小空間内の共重合体の濃度や励起するレーザー強度に起因する可能性を排除し、温度と実験で得られる蛍光強度比を1対1に対応させることが可能である。これにより同一細胞での温度比較だけでなく、同一条件下に置かれた別の細胞の細胞内温度の比較も可能となる。例えば、酵母集団中における個々の細胞温度の違いを測定することにより、各酵母細胞の生理状態を把握することが可能となる。
蛍光強度比の算出法は、特に限定されるものではなく、異なる波長を含んだ2つの領域の蛍光強度からその比を算出することができる。例えば、一方の領域は第一の蛍光性ユニットから生じる蛍光の最大強度を示す波長を含む20nm程度の波長領域として蛍光強度の積分値をS1とし、他方の領域は第二の蛍光性ユニットから生じる蛍光の最大強度を示す波長を含む20nm程度の波長領域として蛍光強度の積分値をS2とし、S1/S2を蛍光強度比としてよい。さらに、S1およびS2の領域は同じ幅でも異なる幅でもよい。例えば、蛍光強度がノイズを無視できる充分な値を示せば、S1は20nm幅の波長領域を含む一方で、S2は1nm幅の単独波長でもよい。波長の選択基準も特に限定されるものではないが、得られる蛍光強度を考慮すると、温度感受性プローブに含まれるそれぞれの蛍光性ユニットを与えるモノマー(例えば、式(c)または式(d)で示される蛍光モノマー)の常温(約25℃)における水中および水中に近い極性溶媒での励起スペクトルを測定した際の最大蛍光強度を示す波長に基づいて、その周辺の波長から選択することが望ましい。
実験で得られた蛍光強度比から温度を求める際には、自らが作成した検量線を使用することが可能である。具体的に、どの条件で測定した検量線を使用するかは限定されないが、例えば、細胞内を模倣した塩化カリウム溶液中での、共重合体の感熱応答性による蛍光強度の変化をプロットした曲線、共重合体を導入した細胞集団を蛍光光度計に供し、感熱応答性による蛍光強度の変化をプロットした曲線、あるいは共重合体を導入した細胞集団を蛍光顕微鏡に供し、複数の細胞での感熱応答性による蛍光強度の変化の平均値をプロットした曲線などを用いることができる。さらに具体的には、共重合体を導入した細胞集団を用いて、感熱応答性試験を行い、蛍光強度の変化をプロットする際には、細胞は代謝活動を積極的に行わないような状態、例えば、水中や資化することのできない化合物が含まれた緩衝液中に細胞を懸濁した状態で、特定の温度に一定期間保持し、外部温度と細胞内部温度が平衡状態に達したと考えられる状況下で、蛍光強度を測定する方法などが挙げられる。
以上に説明した方法を実施するために、必要な試薬等をまとめてキットとすることができる。従って、本発明の他の側面によれば、上述の方法を用いて温度を測定するためのキットが提供され、該キットは、本発明の温度感受性プローブまたは本発明の共重合体を含んでなる。この温度測定用試薬キットは、微小空間内の温度測定、特に細胞内の温度測定に好適に使用することができる。当該試薬キットは、医学・生物学・生物工学等の研究分野、診断・治療等の医療分野において使用することができる。
本発明の方法および温度測定用キットは、様々な研究開発の分野に応用することができる。例えば、生物工学の分野では、微生物を用いた有用物質の発酵生産において、これまで正確な測定が困難であった細胞内温度を解析パラメータに加えることにより、培養条件の検討の効率化が期待される。
本発明の方法および温度測定用キットは、様々な医療用途に応用することができる。例えば、本発明による温度感受性プローブを患者の組織の一部に対して使用することにより、熱産生量が多いとされているがん細胞と、そうでない正常細胞との識別を行うことも可能である。さらにそれを応用する事でより効果的な温熱治療法の開発などにも使える。あるいは、熱産生量が多い褐色脂肪細胞に本発明による温度感受性プローブを導入し、その細胞に様々な素材を添加することによる温度変化を測定することにより、褐色脂肪細胞を活性化する素材をスクリーニングすることも可能である。
本発明の方法および温度測定用キットは、様々な生理現象の解明にも応用可能である。例えば、生体外の温度を感知し、生体反応を引き起こす受容体であるTRPチャネルが細胞内の温度とどのように関連しているのかを調べることで今までとは異なるアプローチでのTRPチャネルの活性化が考えられる。また細胞内温度分布と細胞内外で起こる生体反応との関わりを調べる事により、局所的な温度分布が生体反応に及ぼす影響を調べる事が可能で、赤外線レーザーなどを用いた局所的な加熱による細胞のコントロールを行う事なども可能である。
本発明による温度測定法および温度感受性プローブの細胞導入法は、in vitroおよびin vivoのいずれにおいても行うことができる。一つの実施態様では、これらの方法はin vitroにおいて行われる。
以下に実施例を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
試薬及びデータ測定
α,α'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)はメタノールを用いた再結晶、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)はn―ヘキサンを用いた再結晶により精製して用いた。その他の試薬は購入したものをさらに精製することなく使用した。
H−NMRはBRUKER AVANCE400スペクトロメーター(400MHz)を使用して測定し、ケミカルシフトはppmで表示した。数平均分子量および重量平均分子量はJASCO GPC system(JASCO PU−2080ポンプ、JASCO RI−2031示差屈折計、JASCO CO−2060カラムオーブン、Shodex GPC KD−806Mカラム)を使用し、ポリスチレン標準試料により得られる較正曲線を用いて算出した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーには、関東化学silica gel 60N(40−50μm)を使用した。吸光度の測定には、JASCO V−550紫外可視光分光光度計を使用した。
実施例1−1:8−(4−アクリルアミドフェニル)−4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン(BODIPY−AA)の合成
アルゴン下、4―アセトアミドベンズアルデヒド(200mg, 1.23mmol)、2,4―ジメチルピロール(253μL, 2.45mmol)をジクロロメタン(70mL、モレキュラーシーブス4Aで脱水)に溶解し、トリフロオロ酢酸を1滴加えて室温で6時間撹拌した。この反応液に2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ―1,4−ベンゾキノン(DDQ)(278.3mg, 1.23mmol)をジクロロメタン(5mL、モレキュラーシーブス4Aで脱水)に懸濁させて加え、容器をジクロロメタン 3mLで洗浄しそれも加えた。室温で30分撹拌した後、反応液を水(100mL×2)、飽和食塩水で洗い、NaSOで乾燥し溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をアルミナクロマトグラフィー(1回目ジクロロメタン→ジクロロメタン:メタノール=100:1→50:1、2回目ジクロロメタン→ジクロロメタン:メタノール=100:1、3回目ジクロロメタン:メタノール=200:1)で精製し、薄茶色結晶として目的物(化合物1a)を得た(31mg,7.5%)。
化合物1aの1H NMR (400MHz,CDCl)は以下の通り。
δ7.61 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.29 (br, 1H), 7.24 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 5.89 (s, 2H), 2.34 (s, 6H), 2.21 (s, 3H), 1.34 (s, 6H)
得られた化合物1a(66mg, 0.20mmol)をメタノール10mLに溶解し、1N塩酸を10mL加え、4時間加熱還流した。室温まで冷却した後、2N NaOH溶液で中和した。ジクロロメタンで抽出(100mL×3)後、有機層を水、飽和食塩水で洗い、NaSOで乾燥させて溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をアルミナクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=20:1)により精製することで、薄茶色結晶として目的物(化合物1b)を得た(46mg, 79%)。
化合物1bの1H NMR (400MHz,CDCl)は以下の通り。
δ7.05−7.03 (m, 2H), 6.75−6.73 (m, 2H), 5.89 (s, 2H), 3.76 (br, 2H), 2.34 (s, 6H), 1.42 (s, 6H)
アルゴン下、化合物1b(20mg, 0.069mmol)をジクロロメタン2 5mLに溶解し、これにトリエチルアミン(200μL)、ボロントリフルオリド - エチルエーテル コンプレックス(200μL)の順に加え室温で2時間撹拌した。反応液を水80mLに注いで反応を停止し、2N NaOH溶液を加えてアルカリ性にした。これをジクロロメタンで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗い、NaSOで乾燥させて溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をアルミナクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン=1:1)により精製することで、赤色結晶として目的物(化合物1c)を得た(22mg, 96%)。
化合物1cの1H NMR (400MHz,CDCl)は以下の通り。
δ7.02−7.00 (m, 2H), 6.79−6.77 (m, 2H), 5.97 ( 2H), 3.83 (br, 2H), 2.55 (s, 6H), 1.50 (s, 6H).
化合物1cの13C NMR (100MHz,CDCl)は以下の通り。
δ155.0, 147.0, 143.2, 142.6, 132.0, 129.0, 124.7, 120.9, 115.4, 14.6, 14.5.
化合物1c(10mg, 0.029mmol)をアセトニトリル2mLに溶解し、トリエチルアミン(4.1μL, 0.029mmol)を加えた後、0℃でアクリル酸クロライド(3.1μL, 0.038mmol)を加えた。室温で2時間撹拌した後、KCOを加えて、塩をろ過した。ろ液を減圧留去して得られた粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン=3:1→ジクロロメタン100%)により精製することで橙色結晶として表題の化合物(BODIPY−AA)を得た(11mg, 97%)。
BODIPY−AAの1H NMR (400MHz,メタノール−d4)の結果は以下の通り。
δ7.88−7.86 (m, 2H), 7.31−7.29 (m, 2H), 6.51−6.37 (m, 2H), 6.07 (s, 2H), 5.81 (dd, 1H, J = 2.4, 9.6 Hz), 2.49 (s, 6H), 1.48 (s, 6H).
BODIPY−AAの13C NMR (100MHz, CDCl)の結果は以下の通り。δ163.5, 155.5, 143.1, 141.1, 138.6, 131.6, 130.9, 128.8, 128.5, 121.2, 120.1, 14.6.
実施例1−2:4,4−ジフルオロ−8−(4−イソブチラミドフェニル)−1,3,5,7−テトラメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン(BODIPY−IA)の合成
実施例1−1で合成した化合物1c(10mg, 0.029mmol)をアセトニトリル 1mLに溶解し、0℃でトリエチルアミン(4.9μL, 0.035mmol)、イソ酪酸無水物(7.4μL, 0.044mmol)の順に加え、室温で3時間撹拌した。さらにトリエチルアミン(4.9μL, 0.035mmol)、イソ酪酸無水物(7.4μL, 0.044mmol)を加え、30分撹拌後40℃で2時間、50℃で3時間撹拌後、室温で一晩撹拌した。この反応液にNaSOを加えてからろ過し、ろ液を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン)にて精製することにより、赤色結晶として目的物を得た(12mg, 95%)。
BODIPY−IAの1H NMR (400MHz,CDCl )の結果は以下の通り。
δ7.69 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.31 (br, 1H), 7.22 (d, 2H, 8.2 Hz), 5.98 (s, 2H), 2.55 (s, 6H), 1.43 (s, 6H), 1.29 (d, 6H, J = 6.8 Hz), 1.25 (br, 1H).
BODIPY−IAの13C NMR (100MHz, CDCl)の結果は以下の通り。
δ175.3, 155.5, 143.1, 141.3, 138.9, 131.6, 130.5, 128.8, 121.2, 119.9, 36.9, 19.6, 14.64, 14.56.
実施例1−3:BODIPY−IAの溶媒によって異なる量子収率の算出
実施例1−2で合成したBODIPY−IAをそれぞれアセトニトリル、メタノール、ヘキサン、酢酸エチルおよび水75v/v%ジオキサン25v/v%に10μMになるように溶かし、積分球ユニットILF835を付設した蛍光光度計FP8500(日本分光)を用いて、絶対蛍光量子収率を算出した。励起波長は470nmを選択した。試料がない状態での入射光面積Sと試料散乱光面積S、蛍光波長のピーク面積Sを算出し、
量子収率=S/(S−S)×100
の式を用いて算出を行った結果を表1に示す。
表1の結果からわかるように、新しく温度プローブに用いるBODIPY−AA蛍光ユニットは、アセトニトリルなどの疎水環境中では量子収率が低くなり、水中では量子収率が高くなる傾向が認められた。このユニットをアクリルアミド高分子に組み込んだ場合、低温(水中)(アクリルアミド鎖がひも状の状態)では、BODIPY−AA周囲が親水環境に置かれ、蛍光量子収率が高く、比較的強い蛍光を発し、高温(アクリルアミド鎖が凝集した状態)では、BODIPY―AA周囲が疎水環境に置かれ、蛍光量子収率が低減し、比較的弱い蛍光を発することになる。ベンゾフラザン骨格の蛍光色素を用いた蛍光温度センサーでは、温度上昇に伴い、蛍光強度が上昇することがわかっている。つまりBODIPYとベンゾフラザン骨格蛍光色素の両方を用いることで、温度変化に伴う蛍光強度比の変化を感度良く検出することができると予測された。
実施例2:N−n−プロピルアクリルアミドの合成
ベンゼンにN−n−プロピルアミンとトリエチルアミン(1.2eq)を加え、氷浴中で、攪拌子を用いてよく攪拌した後に、アクリル酸クロリド(1.2eq)を10分おきに3回に分けて添加し、室温に戻した。反応液を濾過し、0.1Nの塩酸で分液を行い、上層のベンゼン画分を抽出、無水硫酸ナトリウムを添加した後に、減圧乾固し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒としてジクロロメタン−メタノール=50:1を使用)にて1回目の精製を行った。目的化合物を含んだ画分を再度集め、減圧乾固し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒として酢酸エチル−ヘキサン=1:2を使用)にて2回目の精製を行い、表題の化合物を無色透明液体として得た。
実施例3:N−(2−{[7−(N,N−ジメチルアミノスルホニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4−イル]−(メチル)アミノ}エチル)−N−メチルアクリルアミド(DBThD−AA)の合成
合成は、文献A(Chemistry A European Journal 2012年, 第18巻,第9552 − 9563頁)に記載の方法に従って行った。3−クロロ−1,2−フェニレンジアミンをトルエンに溶解し、N−チオニルアニリンを加えた。130℃で3時間加熱環流したのち、減圧乾固し、シリカゲルクロマトグラフィーによる精製をして、4−クロロ−2,1,3−ベンゾチアジアゾールを得た。これを0℃にて濃硫酸に溶解し、0℃で1時間半攪拌した後、150℃に加熱し2時間半攪拌した。反応終了後、反応溶液を氷水に注ぎ、ジクロロメタンを用いて抽出した。有機層をNaSOにより乾燥した後、減圧乾固し、シリカゲルクロマトグラフィーによる精製をして、7−クロロ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール4−スルホニルクロリドを得た。
さらに、得られた物質をジクロロメタンに溶解し、アセトニトリルに溶解したジメチルアミン水溶液を加えた。室温で30分反応させた後に減圧乾固し、シリカゲルクロマトグラフィーによる精製をして、7−クロロ−N、N−ジメチル−2,1,3−ベンゾチアジアゾール4−スルホンアミドを得た。この物質をアセトニトリルに溶解し、この溶液をN,N‘―ジメチルエチレンジアミンに加えた。80℃で1時間反応させた後、減圧乾固し、シリカゲルクロマトグラフィーによる精製をして、N,N−ジメチル−7−[メチル{2−(メチルアミノ)エチル}アミノ]−2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4−スルホンアミドを得た。
得られたN,N−ジメチル−7−[メチル{2−(メチルアミノ)エチル}アミノ]−2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4−スルホンアミドをアセトニトリルに溶解し、トリエチルアミン(1eq)、アクリル酸クロリド(1.3eq)を0℃にて加えた後、1時間0℃にて撹拌した。反応溶液にNaCO(1g)を加えろ過した後、減圧乾固し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒としてジクロロメタン/メタノールを使用)にて精製を行い、表題の化合物DBThD―AAを橙色結晶として得た。
実施例4:N−n−プロピルアクリルアミド/(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム/N−{2−[(7−N,N−ジメチルアミノスルホニル)−2,1,3−ベンゾオキサジアゾール−4−イル](メチル)アミノ}エチル−N−メチルアクリルアミド/BODIPY−AA共重合体の製造
NNPAM(543mg、4.8mmol)、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド(55.1mg、0.2mmol、以下「APTMAクロリド」とも称する)、DBThD−AA(9.59mg、25μmol)、BODIPY−AA(1.97mg、5μmol)、AIBN(8.21mg、50μmol)をDMF(10ml)に溶解し、30分間アルゴンガスを通じることにより溶存酸素を除去した。その後、60℃にて4時間反応させ、室温に冷やした。この溶液を、ジエチルエーテル(300ml)に攪拌しながら注いだ。得られた結晶を濾取し、減圧乾燥させた後、さらにMeOH(1mL)に溶かして再沈殿を行った後、純水に溶かし、直径28.6mmのヴィスキングチューブ(透析用セルロースチューブ)を使用し、透析外液を1000mlとして、充分に透析を行い、精製を行った。精製品を凍結乾燥し、表題の共重合体を淡黄色粉末(254.4mg、42%)として得た。
数平均分子量4537、重量平均分子量9264で、共重合体中の各ユニットの組成比 NNPAM:APTMA:DBThD−AA:BODIPY−AA=94.5:5.5:0.579 : 0.071。なお、共重合体におけるNNPAMユニットとAPTMAユニットの割合はH−NMR測定における積分値より、DBThD−AAユニットの割合はメタノール中の吸光度を4−N,N−(ジメチルアミノ)−7−N,N−ジメチルアミノスルホニル−2,1,3−ベンゾチアジアゾールと比較することにより算出した。BODIPY−AAユニットの割合はメタノール中の吸光度をBODIPY−IAと比較することにより算出した。
実施例5:感温性ユニットを変化させた共重合体の製造
実施例4で用いた感温性ユニットであるNNPAMよりも各々高い温度、低い温度で構造変化を起こすNIPAM、N−tert―ブチルアクリルアミド(NTBAM)を用いて共重合体の合成を行った。合成した化合物のリストを表2に示す。合成は、実施例4と同様の手法で行い、淡黄色粉末を得た。
表2に示すように、目的の共重合体について全て合成することができた。共重合体の組成比の算出法は実施例4に示した通りに行い、共重合体の分子量についても実施例4と同様の方法で算出した。なお、共重合体における感温性ユニットとAPTMAユニットの割合はH−NMR測定における積分値より、DBD−AAユニットおよびBODIPY−AAユニットの割合は、メタノール中の吸光度を4−N,N−(ジメチルアミノ)−7−N,N−ジメチルアミノスルホニル−2,1,3−ベンゾチアジアゾールおよびBODIPY−IAの各々の447nmと498nmのモル吸光係数から算出した。
実施例6: カチオン性ユニットを変化させた共重合体の製造
実施例4で用いたカチオン性ユニットであるAPTMAをより多い比率で用いた共重合体を製造した。また4級アンモニウム塩であるカチオン性ユニットとしてAPTMAの代わりにVBTMAを用いた共重合体を合成した。合成した化合物のリストを表3に示す。合成は、実施例4と同様の手法で行い、淡黄色粉末を得た。
表3に示すように、目的の共重合体について全て合成することができた。共重合体の組成比の算出法は実施例4に示した通りに行い、共重合体の分子量についても実施例4と同様の方法で算出した。なお、共重合体におけるNNPAMユニットとカチオン性ユニットの割合はH−NMR測定における積分値より、DBD−AAユニットおよびBODIPY−AAユニットの割合は、メタノール中の吸光度を4−N,N−(ジメチルアミノ)−7−N,N−ジメチルアミノスルホニル−2,1,3−ベンゾチアジアゾールおよびBODIPY−IAの各々の447nmと498nmのモル吸光係数から算出した。
実施例7:蛍光性ユニット比を変化させた共重合体の製造
実施例4で合成した共重合体の2つの蛍光性ユニット比を変化させた共重合体を合成した。合成した化合物のリストを表4に示す。合成は、実施例4と同様の手法で行い、淡黄色粉末を得た。
表4に示すように、目的の共重合体について全て合成することができた。共重合体の組成比の算出法は実施例4に示した通りに行い、共重合体の分子量についても実施例4と同様の方法で算出した。なお、共重合体におけるNNPAMユニットとAPTMAユニットの割合はH−NMR測定における積分値より、DBD−AAユニットおよびBODIPY−AAユニットの割合は、メタノール中の吸光度を4−N,N−(ジメチルアミノ)−7−N,N−ジメチルアミノスルホニル−2,1,3−ベンゾチアジアゾールおよびBODIPY−IAの各々の447nmと498nmのモル吸光係数から算出した。
実施例8:感熱応答性試験
化合物1〜8の150mM KCl中での感熱応答性試験を以下の手順で行った。JASCO FP−6500分光蛍光光度計を使用し、溶媒として、Millipore社のMilli−Q reagent systemから得た超純水を用いて、和光純薬より購入したKClを150mMの濃度になるように溶かしたものを用いた。当実験における化合物の初期濃度は0.01w/v%とし、励起波長は458nmとした。溶液の温度制御にはJASCO ETC−273T水冷ペルチェ式恒温セルホルダを使用し、付属の熱電対により温度を測定した。溶液温度を1℃あるいは2℃刻みで上昇させ、各温度における450〜850nmの蛍光スペクトルを測定した。
化合物2の温度を変えたときのスペクトル変化の例を図1に示す。この結果より温度上昇に伴い、BODIPY由来の蛍光スペクトルである500〜520nmの蛍光強度は減少し、DBThD由来の蛍光スペクトルである540〜600nmの蛍光強度は上昇することが確認できた。これら2波長領域の比を取ることで、温度変化に伴う共重合体の構造変化を捉えることができる。すなわち、共重合体周囲の温度を蛍光強度比で表せることが確認できた。このスペクトル変化の結果から、580nmと515nmの蛍光強度比(FI580/FI510)を取ることで、温度変化に対する蛍光強度比の変化が大きくなることがわかった。
そこで、図2〜4に各化合物の各温度における580nmと515nmの蛍光強度比(FI580/FI510)を示した。図2に示すように、感温性ユニットはNTBAM,NNPAM,NIPAMの順に応答する温度領域が高くなるが、用いる感温性応答部位の性質によって、応答する温度領域を自由に制御し、蛍光強度比によって温度を定量できることがわかった。また、図3に示すように、カチオン性ユニットとしてVBTMAを用いた共重合体(化合物6)でも、温度に対する蛍光強度比の上昇が認められた。また、APTMAの組成比を変えたもの(化合物5)でも温度に対する蛍光強度比の上昇が認められた。さらに、図4では2つの蛍光性ユニット比を変えた共重合体についても同様に蛍光強度比で温度を定量できることを示している。
実施例9:感熱応答試験における塩化カリウム濃度依存性評価
化合物1の感熱応答性におけるKCl濃度依存性を以下の手順で試験し、調査した。実験手法は実施例8と同様であり、当実験における化合物1の初期濃度は0.005w/v%とし、KCl濃度は125mM、150mM、175mMとなるように溶媒を調製した。
試験結果を図5に示す。一般的に細胞内のカリウム濃度は約140mMと推定されており、特殊な環境変化がない限り、細胞内のカリウム濃度の変化は小さいことがわかっている。125〜175mMの範囲内の塩化カリウム溶液の濃度変化に対する温度応答性の変化はわずかに観測されるものの、細胞内のカリウム濃度変化はこれよりも到底低いレベルにあるために、細胞内の温度を測定する上での影響はほとんどないことが示唆された。
実施例10:pH応答性の評価
化合物1の感熱応答性におけるpH依存性を以下の手順で試験し、調査した。溶媒として150mM KClを用いて、塩酸でpHを6に、水酸化カリウムでpHを9に調整した。実験手法は実施例8と同様である。当実験における化合物1の初期濃度は0.005w/v%とした。
試験結果を図6に示す。一般的な細胞の温度範囲(25℃〜45℃)においては、pH変化による蛍光強度の変化はほとんど観測されなかった。つまり、pH変化によって温度応答性はほぼ影響を受けないことが明らかとなり、より高感度に蛍光強度が温度を反映することがわかった。
実施例11:培養細胞(浮遊細胞)への温度プローブの導入
MOLT−4 (ヒト急性リンパ芽球性白血病(T−細胞))をRPMI1640培地(10%FBS)、100mmディッシュにて培養した(播種1×104cells/ml)。2日後、培養液3mlを遠心(300g、2分)し、培地を取り除き、5%グルコースで洗浄後、再度5%グルコース1mlで懸濁し、化合物1−9をそれぞれ終濃度0.05%となるように添加した。25℃、10分後、遠心(300g、2分)し、上清を取り除き、PBSで洗浄後、PBSに懸濁し、プローブが導入されているかの確認を顕微鏡観察にて行った。共焦点レーザー顕微鏡(FV1000、Olympus)、40倍対物レンズ(UplanSApo,Olympus)を用いて観察し、細胞に473nmのレーザー(Multi Arレーザー)を当て、500nmから600nmまでの蛍光波長に対する蛍光像を観察した。
結果を図7に示す。それぞれの化合物にて、浮遊細胞であるMOLT4においてもプローブの導入が確認できた。また、化合物1に関しては、約50〜100細胞で細胞質内にプローブ由来の蛍光が確認できた(細胞の自家蛍光を除く)細胞の割合を算出したところ、99.2±1.1(%)であった。
実施例12:培養細胞(浮遊細胞)に対しての化合物1の蛍光強度応答
実施例11のようにして、MOLT−4へ化合物1の導入を行い、PBSに懸濁した状態でキュベットに入れ、さらにキュベット内に2mm直径の球状の攪拌子を入れた。キュベットをJASCO FP−6500分光蛍光光度計にセットし、約800rpmの速度で回転させ、細胞が沈むのを防ぎながら、蛍光スペクトルを測定した。励起波長は458nmとした。溶液の温度制御にはJASCO ETC−273T水冷ペルチェ式恒温セルホルダを使用し、付属の熱電対により温度を測定した。溶液温度を2℃刻みで上昇させ、細胞内部の温度と外部の温度を一定にするよう温度上昇後2分静置し、各温度における蛍光強度を測定した。
結果を図8に示す。化合物1によって、細胞内の温度を算出することができた。一般的な哺乳類細胞の生育温度である25〜40℃の幅広い温度領域で細胞内温度を計測できることが確認できた。
実施例13:温度分解能の評価
実施例8の結果のように、温度(T)を横軸に蛍光強度比(R)を縦軸に取った場合を想定する。∂を微小量、δを誤差とした場合、次のような関係が成り立つ。
つまり何℃の温度差を検出できるかを示す温度分解能δTは、
と示される。ここで、∂が微小量を表すことから、
は温度(T)を横軸に蛍光強度比(R)を縦軸に取ったグラフの曲線の接線の傾きを示している。δは誤差を表しているので、δRは蛍光強度比の誤差である。ここでは標準偏差を誤差値として用いた。
つまり、(温度分解能)=(温度(T)を横軸に蛍光強度比(R)を縦軸に取ったグラフの曲線の接線の傾きの逆数)×(蛍光強度比の誤差)として算出することができる。
実施例12の結果である図8について温度分解能を評価した結果、図9のようになった。例えば化合物1に関しては、30〜44℃という一般的な哺乳類細胞の生理的温度で0.2℃程度の温度分解能があり、非常に幅広い温度領域を高い感度で定量できることがわかった。また、2つの蛍光性ユニット比が異なる3つの化合物(化合物1、化合物7および化合物8)の150mMKCl溶液中での温度応答性試験の結果である図4について、温度分解能を解析した結果も図9に示した。それぞれのプローブにおいて、25℃から45℃の幅広い温度領域で、0.1℃程度の高い温度分解能があることが示された。
比較例1:1蛍光性ユニットのみからなる蛍光性温度プローブの細胞内での温度分解能
既知の公報(国際公開第2013/094748号)に記載の化合物9(以下「前化合物9」という)は、細胞内で感度よく応答する温度領域が35℃付近を中心として±5℃の範囲であり、感度良く細胞内温度計測ができることがわかっていた。培養したMOLT−4 を5%グルコースで洗浄後、再度5%グルコース1mlで懸濁し、前化合物9を終濃度0.05%となるように添加した。25℃、10分後、遠心(300g、2分)し、上清を取り除き、PBSで洗浄後、PBSに懸濁して、実施例12のようにして、各温度(25〜40℃、1℃刻み)における蛍光スペクトルを測定した。
蛍光強度565nm(高温時の最大蛍光波長)と580nm(低温時の最大蛍光波長)の比を取った場合の蛍光強度比の変化のグラフと温度分解能について図10に示す。感度が高いと考えられていた前化合物9でも、25〜40℃までの中で最大の感度を示すのは40℃で0.05℃であるが、0.1℃より小さな温度差を検出できるのはこの温度のみである。35℃付近の感度よく測定できる温度範囲においては0.2℃より大きい値の温度分解能を示しており、また30℃から40℃までの平均温度分解能は0.45℃であった。一方、図9の化合物1では、同じ温度領域での平均温度分解能は0.07℃であることから、今回合成した新規のプローブが極めて感度の高い温度計測ができることが明らかとなった。
実施例14:接着細胞への本プローブの応用
ヒト由来胎児腎細胞HEK293TをDMEM培地(5%FBS,1%penicillin−streptomycin)、35mmガラスボトムディッシュにて培養した(播種1×10cells/cm)。1日後、培地を5%グルコースに置換し、化合物1を終濃度0.05%となるように添加し、25℃で10分静置した。その後、プローブを取り除き、PBSで洗浄後、phenolred−freeのDMEM培地に置換し、37℃に保った状態で顕微鏡観察を行った。顕微鏡観察は、共焦点レーザー顕微鏡(FV1000、Olympus)、60倍油浸対物レンズ(UplanSApo N.A.1.40,Olympus)を用いて観察した。細胞に473nmのレーザー(Multi Arレーザー)に照射し、490〜530nmの蛍光画像(P1)と560〜610nmの蛍光画像(P2)を取得した。なおP1、P2はバックグラウンドとして細胞のないある領域の蛍光強度を差し引く画像処理を行った。
結果を図11に示す。P1、P2の結果から明らかであるように、HEK293Tのような接着細胞にも容易にプローブを導入することが出来た。また、P2の各ピクセルの蛍光強度値をP1の蛍光強度値で割った図をP2/P1として示した。その結果、細胞内の温度分布を可視化し、定量できることが明らかとなった。さらに細胞一部分の断面図のレシオ強度(白黒の強度値)を図12に示した。その結果、細胞内においてもレシオ値に明確な差があることが明白であった。これらの結果から、蛍光強度比をとることができる顕微鏡でも細胞内の温度分布が可視化できることが明らかとなり、今までの蛍光性温度センサーでは実現できなかった非常に汎用性の高い技術であることが示された。
実施例15:顕微鏡によるオルガネラ別の温度の評価
実施例14のようにして、HEK293T細胞に化合物1を導入し、DMEM培地に置換し、27℃、32℃、37℃に保った状態でそれぞれの温度で顕微鏡観察を行った。顕微鏡観察は、共焦点レーザー顕微鏡(FV1000、Olympus)、60倍油浸対物レンズ(UplanSApo N.A.1.40,Olympus)を用いて観察した。励起は473nmのレーザー(Multi Arレーザー)で行い、80/20リフレクターを介して、510〜520nmの蛍光画像(P1)と580〜590nmの蛍光画像(P2)を取得した。
得られた細胞の微分干渉像を元に、蛍光像の細胞全体および核を興味領域(ROI)で囲み、それぞれのROI内の平均蛍光強度シグナルをFV10−ASW解析ソフト(Olympus)で算出した。細胞質の平均蛍光強度シグナルは細胞全体のシグナルから核のシグナルを差し引くことによって算出した。さらに、P2のシグナルをP1のシグナルで除することによって、細胞質、核のそれぞれの平均レシオシグナルを算出した。9細胞の平均値を図13に示す。その結果、細胞質と核で、細胞内温度が異なることが示された。実施例14の結果と合わせて、細胞内の温度分布を感度よく定量できることがわかった。
実施例16:プローブの毒性評価
実施例11のようにして、MOLT−4細胞に化合物1を導入し、RPMI培地に懸濁した。また、実施例14のようにして、HEK293T細胞に化合物1を導入し、DMEM培地に置換した。その後、両細胞に対して、非膜透過性の蛍光試薬であるヨウ化プロピジウム(PI)を終濃度0.67μg/mlとなるように培地中に添加し、37℃で30分間処理した後、顕微鏡で観察を行った。化合物1は473nmのレーザーで励起し、PIは559nmのレーザーで励起し、それぞれ490〜550nm、655〜755nmの蛍光波長で観察を行った。なお、観察時のカメラの光増倍管感度やレーザー強度は、95℃、1分間熱処理した細胞を死滅した細胞のコントロールとして用いて調整を行った。
顕微鏡下で化合物1の蛍光が観察された細胞を約100細胞選んで、PIの蛍光が観察された細胞を死滅細胞として数をカウントした。その結果、MOLT−4細胞においては、生存率が97.9±1.7(%)で、HEK293T細胞の生存率は100.0±0.0(%)であり、どちらの細胞においても温度プローブの毒性は非常に低いことがわかった。
実施例17:筋管細胞へのプローブ導入試験と温度応答性の評価
C2C12(マウス筋芽細胞由来、ECACC)を増殖培地(DMEM、10%FBS、100 U/mlpenicillin, 100 μg/mlstreptomycin)で培養後、3x10/cmとなるようにプラスチックボトムディッシュ(ibidi社)に播種、3日後に分化培地(DMEM,2%ウマ血清,100 U/mlpenicillin, 100 μg/mlstreptomycin)に置換し、さらに7日間培養した。
培養した細胞を0.45mM CaClを含んだ5%グルコースで洗浄し、0.45mM CaClを含んだ5%グルコースに溶解した化合物1懸濁液(終濃度0.03%)を、ディッシュ中央のホール部(観察部)に350 μl 添加、室温で10 min処理した。0.45 mM CaClを含んだPBSで2回洗浄後、顕微鏡観察用培地に置換した。観察は、共焦点レーザー顕微鏡(FV1000、Olympus)、20倍対物レンズ(UPLSAPO,NA 0.75、Olympus)を用いて観察し、細胞に473nmのレーザー(Multi Arレーザー)を照射して、485〜545nm(P1)と570〜670nm(P2)の2蛍光波長に対する蛍光像を観察した。また実施例14と同様の方法で、P2/P1のレシオ像も作成した
結果を図14に示す。筋細胞はCaを培地中から抜いてしまうと細胞にダメージがあることがわかり、導入時のグルコース溶液にCaを少量入れることで、細胞にダメージを与えずにプローブを導入できることがわかった。さらに、外部温度を変化させることで、レシオ値が変化することも確認できた。このように分化したような成熟細胞においてもプローブは適用でき、細胞内の温度計測ができることが示された。

Claims (13)

  1. 感熱性ユニット、カチオン性ユニットおよび蛍光性ユニットを含む共重合体を含んでなる温度感受性プローブであって、
    相互に異なる最大蛍光波長を有する第一の蛍光性ユニットおよび第二の蛍光性ユニットを含んでなり、
    感熱性ユニットが、以下の式(a):
    [式中、Rは、水素原子およびC1−3アルキルから選択され;
    およびRは、独立に、水素原子およびC1−20アルキルから選択され、ここで当該アルキルは、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、およびアリールから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく、またはRおよびRはそれらが結合する窒素原子と一緒になって、4〜8員含窒素ヘテロ環を形成し、ここで当該ヘテロ環は、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ニトロ、ハロゲン原子、C1−10アルキルカルボニルアミノおよびアリールカルボニルアミノから選択される1以上の置換基により置換されていてもよい]
    で表される1種または2種以上のモノマーに由来する1種または2種以上の繰り返し構造であり、
    カチオン性ユニットが、以下の式(b):
    [式中、Rは、水素原子およびC1−3アルキルから選択され;
    Wは、芳香環または−X−C(=O)−(ここで、Qに直接結合するのはXである)であり;
    は、O、S、またはN−R11であり;
    11は、水素原子、C1−6アルキル、または−Q−Yであり、ここで当該アルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルフィニル、およびC1−6アルキルスルホニルから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
    は、独立に、C1−20アルキレン、C3−20アルケニレン、またはC3−20アルキニレンから選択され、ここで前記アルキレンは、1以上の個所において、O、S、−O−P(=O)(−OH)−O−またはフェニレンが独立に挿入されていてもよく;
    Yは、独立に、1以上の正電荷を有しうるイオン性官能基であって、−N212223 、−C(=NR41)−NR4243、および下式:
    により表される基から選択され;
    およびX はカウンターアニオンであり;
    21、R22、およびR23は、独立に、C1−10アルキル、およびC7−14アラルキルから選択され、またはR21およびR22は、結合する窒素原子と一緒になって、5〜7員含窒素ヘテロ環を形成してもよく;
    24は、C1−10アルキル、またはC7−14アラルキルであり;
    41、R42およびR43は、独立に、水素原子およびC1−10アルキルから選択され、またはR41およびR42は、それぞれが結合する窒素原子および炭素原子と一緒になって、2つの窒素原子を含む5〜7員ヘテロ環を形成してもよく、またはR42およびR43は、結合する窒素原子と一緒になって、5〜7員含窒素ヘテロ環を形成してもよい]
    で表される1種または2種以上のモノマーに由来する1種または2種以上の繰り返し構造であり、
    第一の蛍光性ユニットが、以下の式(c):
    [式中、R は、水素原子およびC 1−3 アルキルから選択され;
    は、O、S、またはN−R 12 であり;
    は、直接結合、O、S、SO、SO 、N(−R 13 )、CON(−R 16 )、N(−R 16 )CO、N(−R 17 )CON(−R 18 )、SO N(−R 19 )またはN(−R 19 )SO であり;
    は、C 1−20 アルキレン、C 3−20 アルケニレン、またはC 3−20 アルキニレンから選択され、ここで前記アルキレンは、1以上の個所において、O、Sまたはフェニレンが独立に挿入されていてもよく;
    Arは、6〜18員芳香族炭素環基、または5〜18員芳香族ヘテロ環基から選択され、ここで当該芳香族炭素環基および芳香族ヘテロ環基は、含まれる環の1以上が芳香族環である縮合環を含んでいてもよく、当該芳香族炭素環基および芳香族ヘテロ環基に環原子として存在する−CH −は−C(O)−に置換されていてもよく、さらに当該芳香族炭素環基および芳香族ヘテロ環基は、ハロゲン原子、C 1−6 アルキル、C 1−6 アルコキシ、C 1−6 アルキルチオ、C 1−6 アルキルスルフィニル、C 1−6 アルキルスルホニル、ニトロ、シアノ、C 1−6 アルキルカルボニル、C 1−6 アルコキシカルボニル、カルボキシ、ホルミル、−NR 、および−SO NR 14 15 から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく(ここで前記C 1−6 アルキル、C 1−6 アルコキシ、C 1−6 アルキルチオ、C 1−6 アルキルスルフィニル、C 1−6 アルキルスルホニル、C 1−6 アルキルカルボニルおよびC 1−6 アルコキシカルボニルに含まれるアルキルは、ハロゲン原子、C 1−6 アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、C 1−6 アルキルアミノ、ジ(C 1−6 アルキル)アミノ、アリール、およびカルボキシから選択される1以上の置換基により置換されていてもよい);
    およびR は、独立に、水素原子、C 1−10 アルキル、アリール、C 1−10 アルキルカルボニル、アリールカルボニル、C 1−10 アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルバモイル、N−(C 1−10 アルキル)カルバモイル、およびN,N−ジ(C 1−10 アルキル)カルバモイルから選択され、ここで前記C 1−10 アルキル、C 1−10 アルキルカルボニル、C 1−10 アルキルスルホニル、N−(C 1−10 アルキル)カルバモイル、およびN,N−ジ(C 1−10 アルキル)カルバモイルに含まれるアルキルは、ハロゲン原子、C 1−6 アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、C 1−6 アルキルアミノ、ジ(C 1−6 アルキル)アミノ、アリール、およびカルボキシから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく、さらに前記アリール、アリールカルボニル、およびアリールスルホニルに含まれるアリールは、ハロゲン原子、C 1−6 アルキル、C 1−6 アルコキシ、およびカルボキシから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;または
    およびR はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、4〜8員含窒素ヘテロ環を形成し、ここで当該ヘテロ環は、C 1−6 アルキル、C 1−6 アルコキシ、ニトロ、ハロゲン原子、C 1−10 アルキルカルボニルアミノおよびアリールカルボニルアミノから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
    12 は、水素原子、C 1−6 アルキル、または−Q −X −Arであり、ここで当該アルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン原子、C 1−6 アルコキシ、C 1−6 アルキルチオ、C 1−6 アルキルスルフィニル、およびC 1−6 アルキルスルホニルから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
    13 は、水素原子、またはC 1−6 アルキルであり、ここで当該アルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン原子、C 1−6 アルコキシ、C 1−6 アルキルチオ、C 1−6 アルキルスルフィニル、およびC 1−6 アルキルスルホニルから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
    14 およびR 15 は、独立に、水素原子、およびC 1−6 アルキルから選択され;またはR 14 およびR 15 はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、4〜8員含窒素ヘテロ環を形成し;
    16 、R 17 、R 18 およびR 19 は、独立に、水素原子、およびC 1−6 アルキルから選択され、ここで当該アルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン原子、C 1−6 アルコキシ、C 1−6 アルキルチオ、C 1−6 アルキルスルフィニル、およびC 1−6 アルキルスルホニルから選択される1以上の置換基により置換されていてもよい]
    で表されるモノマーに由来する繰り返し構造であり、
    第二の蛍光性ユニットが、以下の式(d):
    [式中、R 55 は、水素原子およびC 1−3 アルキルから選択され;
    51 、R 52 、R 53 およびR 54 は、独立に、水素原子およびC 1−6 アルキルから選択され;
    は、直接結合、フェニレン、−Q 4 −O−C(=O)−(ここで、ボロンジピロメテン骨格に直接結合するのはQ 4 である)、または−Q 4 −N(−R 61 )−C(=O)−(ここで、ボロンジピロメテン骨格に直接結合するのはQ 4 である)であり;
    61 は、水素原子およびC 1−6 アルキルから選択され;
    は、C 1−20 アルキレン、フェニレン、およびナフチレンから選択され、該フェニレンおよびナフチレンはハロゲン原子、C 1−6 アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、およびカルボキシから選択される1以上の置換基により置換されていてもよい]
    で表されるモノマーに由来する繰り返し構造である、温度感受性プローブ。
  2. 第一の蛍光性ユニットおよび第二の蛍光性ユニットが、同一波長の励起光の照射によって相互に異なる最大蛍光波長の蛍光を生じるものである、請求項1に記載の温度感受性プローブ。
  3. 第一の蛍光性ユニットの最大蛍光波長と、第二の蛍光性ユニットの最大蛍光波長との差が、50nm以上である、請求項1に記載の温度感受性プローブ。
  4. 第一の蛍光性ユニットおよび第二の蛍光性ユニットのいずれか一方が、温度の上昇に応じて蛍光強度が上昇するものであり、他方が、温度の上昇に応じて蛍光強度が不変あるいは下降するものであり、望ましくは下降するものである、請求項1に記載の温度感受性プローブ。
  5. 共重合体が、式(I)、式(II)、式(III)および式(XIII):
    [式中、R、RおよびR、ならびにR、Y、WおよびQならびに、X、X、QおよびAr、ならびにR55、X4、R51、R52、R53およびR54は、請求項で定義したとおりであり、a、b、cおよびdは、各繰り返し単位の比を表す0より大きい数である]
    で表される繰り返し単位を含んでなり、aおよびbの和100とする場合、bが2〜10である、請求項1〜のいずれか一項に記載の温度感受性プローブ。
  6. 前記共重合体が、前記式(a)で表される2種以上の感熱性ユニットを含むものである、請求項1〜のいずれか一項に記載の温度感受性プローブ。
  7. が、水素原子およびC 1−3 アルキルから選択され;
    が、O、S、またはN−R 12 であり;
    が、直接結合、O、S、SO、SO 、N(−R 13 )、CON(−R 16 )、N(−R 16 )CO、N(−R 17 )CON(−R 18 )、SO N(−R 19 )またはN(−R 19 )SO であり;
    が、C 1−20 アルキレン、C 3−20 アルケニレン、またはC 3−20 アルキニレンから選択され、ここで前記アルキレンは、1以上の個所において、O、Sまたはフェニレンが独立に挿入されていてもよく;
    Arが、下式:
    により表される基から選択される芳香族炭素環基または芳香族ヘテロ環基であり、これらの基は当該環上をハロゲン原子、C 1−6 アルコキシ、ニトロ、シアノ、−NR 、および−SO NR 14 15 から選択される1以上の置換基により置換されており、さらに、C 1−6 アルキルにより置換されていてもよく;
    10 が、O、SまたはSeから選択され;
    が、水素原子、C 1−10 アルキル、およびアリールから選択され;
    およびR が、独立に、水素原子、C 1−10 アルキル、アリール、C 1−10 アルキルカルボニル、アリールカルボニル、C 1−10 アルキルスルホニル、アリールスルホニル、およびカルバモイルから選択され;
    あるいは、R およびR はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、5〜7員含窒素ヘテロ環を形成し、ここで当該ヘテロ環は、C 1−6 アルキル、C 1−6 アルコキシ、ニトロ、およびハロゲン原子から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
    12 が、水素原子、C 1−6 アルキル、または−Q −X −Arであり、ここで当該アルキルは、ヒドロキシおよびハロゲン原子から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
    13 が、水素原子、またはC 1−6 アルキルであり、ここで当該アルキルは、ヒドロキシおよびハロゲン原子から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
    14 およびR 15 が、独立に、水素原子、およびC 1−6 アルキルから選択され;
    あるいは、R 14 およびR 15 はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、5〜7員含窒素ヘテロ環を形成し;
    16 、R 17 およびR 18 が、独立に、水素原子、およびC 1−6 アルキルから選択され、ここで当該アルキルは、ヒドロキシおよびハロゲン原子から選択される1以上の置換基により置換されていてもよい、請求項1〜6のいずれか一項に記載の温度感受性プローブ
  8. 第一の蛍光性ユニットがDBThD−AAに由来する繰り返し構造であり、第二の蛍光性ユニットがBODIPY−AAに由来する繰り返し構造である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の温度感受性プローブ
  9. 式(I)、式(II)、式(III)および式(XIII):
    [式中、 は、水素原子およびC 1−3 アルキルから選択され;
    およびR は、独立に、水素原子およびC 1−20 アルキルから選択され、ここで当該アルキルは、ヒドロキシ、C 1−6 アルコキシ、およびアリールから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく、またはR およびR はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、4〜8員含窒素ヘテロ環を形成し、ここで当該ヘテロ環は、C 1−6 アルキル、C 1−6 アルコキシ、ニトロ、ハロゲン原子、C 1−10 アルキルカルボニルアミノおよびアリールカルボニルアミノから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく、
    は、水素原子およびC 1−3 アルキルから選択され;
    Wは、芳香環または−X −C(=O)−(ここで、Q に直接結合するのはX である)であり;
    は、O、S、またはN−R 11 であり;
    11 は、水素原子、C 1−6 アルキル、または−Q −Yであり、ここで当該アルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン原子、C 1−6 アルコキシ、C 1−6 アルキルチオ、C 1−6 アルキルスルフィニル、およびC 1−6 アルキルスルホニルから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
    は、独立に、C 1−20 アルキレン、C 3−20 アルケニレン、またはC 3−20 アルキニレンから選択され、ここで前記アルキレンは、1以上の個所において、O、S、−O−P(=O)(−OH)−O−またはフェニレンが独立に挿入されていてもよく;
    Yは、独立に、1以上の正電荷を有しうるイオン性官能基であって、−N 21 22 23 、−C(=NR 41 )−NR 42 43 、および下式:
    により表される基から選択され;
    およびX はカウンターアニオンであり;
    21 、R 22 、およびR 23 は、独立に、C 1−10 アルキル、およびC 7−14 アラルキルから選択され、またはR 21 およびR 22 は、結合する窒素原子と一緒になって、5〜7員含窒素ヘテロ環を形成してもよく;
    24 は、C 1−10 アルキル、またはC 7−14 アラルキルであり;
    41 、R 42 およびR 43 は、独立に、水素原子およびC 1−10 アルキルから選択され、またはR 41 およびR 42 は、それぞれが結合する窒素原子および炭素原子と一緒になって、2つの窒素原子を含む5〜7員ヘテロ環を形成してもよく、またはR 42 およびR 43 は、結合する窒素原子と一緒になって、5〜7員含窒素ヘテロ環を形成してもよく、
    は、水素原子およびC 1−3 アルキルから選択され;
    は、O、S、またはN−R 12 であり;
    は、直接結合、O、S、SO、SO 、N(−R 13 )、CON(−R 16 )、N(−R 16 )CO、N(−R 17 )CON(−R 18 )、SO N(−R 19 )またはN(−R 19 )SO であり;
    は、C 1−20 アルキレン、C 3−20 アルケニレン、またはC 3−20 アルキニレンから選択され、ここで前記アルキレンは、1以上の個所において、O、Sまたはフェニレンが独立に挿入されていてもよく;
    Arは、6〜18員芳香族炭素環基、または5〜18員芳香族ヘテロ環基から選択され、ここで当該芳香族炭素環基および芳香族ヘテロ環基は、含まれる環の1以上が芳香族環である縮合環を含んでいてもよく、当該芳香族炭素環基および芳香族ヘテロ環基に環原子として存在する−CH −は−C(O)−に置換されていてもよく、さらに当該芳香族炭素環基および芳香族ヘテロ環基は、ハロゲン原子、C 1−6 アルキル、C 1−6 アルコキシ、C 1−6 アルキルチオ、C 1−6 アルキルスルフィニル、C 1−6 アルキルスルホニル、ニトロ、シアノ、C 1−6 アルキルカルボニル、C 1−6 アルコキシカルボニル、カルボキシ、ホルミル、−NR 、および−SO NR 14 15 から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく(ここで前記C 1−6 アルキル、C 1−6 アルコキシ、C 1−6 アルキルチオ、C 1−6 アルキルスルフィニル、C 1−6 アルキルスルホニル、C 1−6 アルキルカルボニルおよびC 1−6 アルコキシカルボニルに含まれるアルキルは、ハロゲン原子、C 1−6 アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、C 1−6 アルキルアミノ、ジ(C 1−6 アルキル)アミノ、アリール、およびカルボキシから選択される1以上の置換基により置換されていてもよい);
    およびR は、独立に、水素原子、C 1−10 アルキル、アリール、C 1−10 アルキルカルボニル、アリールカルボニル、C 1−10 アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルバモイル、N−(C 1−10 アルキル)カルバモイル、およびN,N−ジ(C 1−10 アルキル)カルバモイルから選択され、ここで前記C 1−10 アルキル、C 1−10 アルキルカルボニル、C 1−10 アルキルスルホニル、N−(C 1−10 アルキル)カルバモイル、およびN,N−ジ(C 1−10 アルキル)カルバモイルに含まれるアルキルは、ハロゲン原子、C 1−6 アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、C 1−6 アルキルアミノ、ジ(C 1−6 アルキル)アミノ、アリール、およびカルボキシから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく、さらに前記アリール、アリールカルボニル、およびアリールスルホニルに含まれるアリールは、ハロゲン原子、C 1−6 アルキル、C 1−6 アルコキシ、およびカルボキシから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;または
    およびR はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、4〜8員含窒素ヘテロ環を形成し、ここで当該ヘテロ環は、C 1−6 アルキル、C 1−6 アルコキシ、ニトロ、ハロゲン原子、C 1−10 アルキルカルボニルアミノおよびアリールカルボニルアミノから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
    12 は、水素原子、C 1−6 アルキル、または−Q −X −Arであり、ここで当該アルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン原子、C 1−6 アルコキシ、C 1−6 アルキルチオ、C 1−6 アルキルスルフィニル、およびC 1−6 アルキルスルホニルから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
    13 は、水素原子、またはC 1−6 アルキルであり、ここで当該アルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン原子、C 1−6 アルコキシ、C 1−6 アルキルチオ、C 1−6 アルキルスルフィニル、およびC 1−6 アルキルスルホニルから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
    14 およびR 15 は、独立に、水素原子、およびC 1−6 アルキルから選択され;またはR 14 およびR 15 はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、4〜8員含窒素ヘテロ環を形成し;
    16 、R 17 、R 18 およびR 19 は、独立に、水素原子、およびC 1−6 アルキルから選択され、ここで当該アルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン原子、C 1−6 アルコキシ、C 1−6 アルキルチオ、C 1−6 アルキルスルフィニル、およびC 1−6 アルキルスルホニルから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく、
    55 は、水素原子およびC 1−3 アルキルから選択され;
    51 、R 52 、R 53 およびR 54 は、独立に、水素原子およびC 1−6 アルキルから選択され;
    は、直接結合、フェニレン、−Q 4 −O−C(=O)−(ここで、ボロンジピロメテン骨格に直接結合するのはQ 4 である)、または−Q 4 −N(−R 61 )−C(=O)−(ここで、ボロンジピロメテン骨格に直接結合するのはQ 4 である)であり;
    61 は、水素原子およびC 1−6 アルキルから選択され;
    は、C 1−20 アルキレン、フェニレン、およびナフチレンから選択され、該フェニレンおよびナフチレンはハロゲン原子、C 1−6 アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、およびカルボキシから選択される1以上の置換基により置換されていてもよく、
    a、b、cおよびdは、各繰り返し単位の比を表す0より大きい数である]
    で表される繰り返し単位を含んでなる共重合体であって、aおよびbの和100とする場合、bが2〜10である、共重合体。
  10. が、水素原子およびC 1−3 アルキルから選択され;
    が、O、S、またはN−R 12 であり;
    が、直接結合、O、S、SO、SO 、N(−R 13 )、CON(−R 16 )、N(−R 16 )CO、N(−R 17 )CON(−R 18 )、SO N(−R 19 )またはN(−R 19 )SO であり;
    が、C 1−20 アルキレン、C 3−20 アルケニレン、またはC 3−20 アルキニレンから選択され、ここで前記アルキレンは、1以上の個所において、O、Sまたはフェニレンが独立に挿入されていてもよく;
    Arが、下式:
    により表される基から選択される芳香族炭素環基または芳香族ヘテロ環基であり、これらの基は当該環上をハロゲン原子、C 1−6 アルコキシ、ニトロ、シアノ、−NR 、および−SO NR 14 15 から選択される1以上の置換基により置換されており、さらに、C 1−6 アルキルにより置換されていてもよく;
    10 が、O、SまたはSeから選択され;
    が、水素原子、C 1−10 アルキル、およびアリールから選択され;
    およびR が、独立に、水素原子、C 1−10 アルキル、アリール、C 1−10 アルキルカルボニル、アリールカルボニル、C 1−10 アルキルスルホニル、アリールスルホニル、およびカルバモイルから選択され;
    あるいは、R およびR はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、5〜7員含窒素ヘテロ環を形成し、ここで当該ヘテロ環は、C 1−6 アルキル、C 1−6 アルコキシ、ニトロ、およびハロゲン原子から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
    12 が、水素原子、C 1−6 アルキル、または−Q −X −Arであり、ここで当該アルキルは、ヒドロキシおよびハロゲン原子から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
    13 が、水素原子、またはC 1−6 アルキルであり、ここで当該アルキルは、ヒドロキシおよびハロゲン原子から選択される1以上の置換基により置換されていてもよく;
    14 およびR 15 が、独立に、水素原子、およびC 1−6 アルキルから選択され;
    あるいは、R 14 およびR 15 はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、5〜7員含窒素ヘテロ環を形成し;
    16 、R 17 およびR 18 が、独立に、水素原子、およびC 1−6 アルキルから選択され、ここで当該アルキルは、ヒドロキシおよびハロゲン原子から選択される1以上の置換基により置換されていてもよい、請求項9に記載の共重合体
  11. 式(III)で表される繰り返し単位がDBThD−AAに由来する繰り返し構造であり、式(XIII)で表される繰り返し単位がBODIPY−AAに由来する繰り返し構造である、請求項9または10に記載の共重合体
  12. 細胞内の温度を測定する方法であって、
    (a)請求項1〜のいずれか一項に記載の温度感受性プローブを溶媒中で細胞と混合することにより、該温度感受性プローブを細胞内に導入する工程、
    (b)励起光照射下、第一の蛍光性ユニットおよび第二の蛍光性ユニットのそれぞれに由来する蛍光の強度を測定する工程、および
    (c)測定された2つの蛍光強度の比を算出する工程
    を含んでなる、方法。
  13. 細胞内の温度を測定するためのキットであって、請求項1〜のいずれか一項に記載の温度感受性プローブを含んでなる、キット。
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