JP6252942B2 - 地下構造物の補強構造体、地下構造物の補強方法 - Google Patents
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例えば、地震によって貯水槽が破損し漏水してしまっては、消火用水を確保できなくなってしまう。
また、貯水槽が道路下に埋設されている場合、道路を走行する車両の荷重を受けることになるため、老朽化が進行した貯水槽では車両の荷重に耐えられず、破損して最悪の場合には道路が陥没して、大事故を引き起こすおそれがある。
特許文献1に記載された地下構造物の補強方法では、柱構造体を貯水槽の中空部に配置して、この柱構造体によって貯水層に掛かる上からの荷重を支えようとするものである。
また、貯水槽には天板に掛かる上からの荷重だけではなく、土圧等による側方からも大きな荷重が掛かるが、上記地下構造物の補強方法では側方からの力に対する補強は不十分であるという問題もある。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、地下構造物を全方向からの荷重に対抗できるように十分に補強することができ、地下構造物に高い耐震性を付与することができる地下構造物の補強構造体、地下構造物の補強方法の提供を、その目的とする。
前記底部に設置される下側骨部と、前記下側骨部に立設された複数の支柱と、前記支柱の上端に固定され前記下側骨部と互いに対向する上側骨部から成る骨組を備え、前記下側骨部と前記上側骨部は前後方向に長い骨部構成材と左右方向に長い骨部構成材が複数個所において十字形を為すように連結されて成り、前記骨組に設けられ伸縮可能な圧接体支持手段によって支持されて前記中空部の内面に圧接する圧接体とを備えたことを特徴とする地下構造物の補強構造体である。
前記底部に設置される下側骨部と、前記下側骨部に立設された複数の支柱と、前記支柱の上端に固定された上側骨部から成る骨組を備え、前記下側骨部と前記上側骨部は骨部どうしが複数個所において十字形を為すように連結されて成り、
前記骨組に設けられ伸縮可能な圧接体支持手段によって支持されて前記中空部の内面に圧接する圧接体を備えた補強構造体を前記中空部内で組み立てることを特徴とする地下構造物の補強方法である。
貯水槽1はコンクリートからなり、底部1a、前後の側部1b、1c、左右の側部1d、1eと天部1fとに囲まれた中空部1gを有している。天部1fにはマンホール1hが形成され、中空部1gに人が出入りし得るように構成されている。
図2に示すように貯水槽1は地下に埋設されており、マンホール1hが地面Gから露出しており、マンホール1hは蓋3によって閉鎖されている。
また、貯水槽1の内面には底部1aと前後の側部1b、1c、左右の側部1d、1eとが接続する部分の補強部1iと、天部1fと前後の側部1b、1c、左右の側部1d、1eとが接続する部分の補強部1iが形成されている。この補強部1iは中空部1gに露出する部分が傾斜面となっている(図1参照)。
骨組6の詳細な構造を説明する。
符号7は下側骨部を示し、この下側骨部7は前後方向に長い1本の骨部構成材9と左右方向に長い4本の骨部構成材11が4個所において十字形を為すように連結されて成る。骨部構成材11は等間隔に配置されている(図2、図3参照)。
以下の説明において支柱13のうち骨部構成材9の両端部に備えられたものには13aを付し、骨部構成材11の左端部に備えられたものには13bを付し、骨部構成材11の右端部に備えられたものには13cを付し、更に骨部構成材9と骨部構成材11との連結部に備えられたものに13dを付す。また、支柱13a、13b、13c、13d全体を示す場合は13を用いるものとする。
支柱13aと、支柱13aと隣り合う支柱13dには連結材21が渡設されている。
上述のように下側骨部7と上側骨部15は前後方向に長い骨部構成材9、17と左右方向に長い骨部構成材11、19が4個所において十字形を為すように連結されているのみであり、下側骨部7の左右方向に長い骨部構成材11の端部間に横架される部材と、上側骨部15の左右方向に長い骨部構成材19の端部間に横架される部材は備えられていない。従って、長い骨部構成材11、19の端部間に横架する分だけH型鋼の数を減らすことができる。また、下側骨部7の左右方向に長い骨部構成材11の端部間に横架される部材を設けないことで、貯水槽1の底部1aと前後の側部1b、1c、左右の側部1d、1eとが接続する部分の補強部1iに干渉するおそれのある部材を極力少なくしている。これにより、下側骨部7を底部1aの左右方向の幅いっぱいまで備えることが可能となる。
すなわち、支柱13b、13c、13d、骨部構成材11及び骨部構成材19によって4つのフレーム構造F1が形成されている。更に、支柱13d、骨部構成材9、17及び骨部構成材11、19よって3つのフレーム構造F2が形成されている。
図4に圧接装置23の詳細な構造を示す。
符号25は固定ベースを示し、この固定ベース25には雄ねじ27が固定されている。雄ねじ27にはナット29が螺合しており、このナット29の上端部にはシャフト31が設けられ、このシャフト31の上端部には金属球33が固定されている。金属球33には傾動ケース35が傾動自在に嵌められており、傾動ケース35の上端には圧接体としての円板37が固定されている。円板37の上面には合成ゴム製のクッションシート39が貼られている。雄ねじ27、ナット29及び円板37は直列に配置されている。
上記固定ベース25、雄ねじ27、ナット29、シャフト31、金属球33及び傾動ケース35によって円板37の圧接体支持手段が構成されている。
図5に示すパーツP1は支柱13cまたは支柱13b、骨部構成材11の端部、骨部構成材19の端部及び6本の圧接装置23から成る。
図6に示すパーツP2は骨部構成材19の一部分と1本の圧接装置23から成る。
図7に示すパーツP3は骨部構成材9の一部分、骨部構成材11の一部分及び支柱13dの一部分から成る。
図8に示すパーツP4は骨部構成材17の一部分、骨部構成材19の一部分と支柱13dの一部分と1本の圧接装置23から成る。
図9に示すパーツP5は骨部構成材9の一部分、骨部構成材17の一部分と支柱13a、連結材21及び5本の圧接装置23から成る。
図10に示すパーツP6は骨部構成材17の一部分、骨部構成材19の一部分と支柱13d及び1本の圧接装置23から成る。
図11に示すパーツP7は骨部構成材11の一部分、骨部構成材9の一部分及び支柱13dの一部分から成る。
図12に示すパーツP8は骨部構成材9の一部分を成し、また骨部構成材17の一部分を成す。
図13に示すように、マンホール1hからパーツP1〜P8を中空部1gへ搬入して、作業員が中空部1g内において補強構造体5の組立作業を行う。
図14に示すようにパーツP6とパーツP8とを連結する場合は、渡設部材としての渡設板43、45を、パーツP6とパーツP8に渡設して、渡設板43、45に形成された挿通穴47とパーツP6とパーツP8に形成された挿通穴49にボルト51を挿通し、このボルト51にナット53を螺合する。次いで、ボルト51とナット53を相対的に締め付けることで、パーツP6とパーツP8とをボルト連結する。
このように、パーツP1〜P8を渡設板43、45、ボルト51及びナット53によって連結して組立て補強構造体5を構築する。従って、中空部1g内において溶接を行う必要がなく、補強構造体5を簡単かつ安全に構築することができる。
なお、下側骨部7を構成するH型鋼のフランジHfが底部1aに接している(図1参照)。従って、骨組6の構築中、構築後において、骨組6を底部1aに安定した状態に設置することができる。底部1aは貯水槽1の建設時において、コンクリートの打設作業が行いやすい部分であることから、比較的平坦に仕上げられている。従って、H型鋼のフランジHfを直置きしても、下側骨部7を安定して設置することが可能であり、かなりの重量となる骨組6を狭い空間内において安全に組み立てることができる。
これにより円板37に貼られたクッションシート39が貯水槽1の中空部1gの内面(前後の側部1b、1cの内面、左右の側部1d、1eの内面、天部1fの内面のいずれか)に当接する。前述のように傾動ケース35は金属球33に傾動自在に嵌められているので、クッションシート39が中空部1gの内面に当接すると、傾動ケース35が中空部1gの内面の傾斜に従って傾動する。そして、傾動ケース35が円板37と共に傾動して、円板37がクッションシート39を介して中空部1gの内面に圧接する。
上記のようにして圧接装置23を伸ばして、円板37を前後の側部1b、1cの内面、左右の側部1d、1eの内面及び天部1fの内面に圧接させる。なお、円板37を天部1fに圧接させれば、下部骨部7の下面が底部1aの内面に圧接することになる。
なお、圧接装置23は雄ねじ27、ナット29及び円板37は直列に配置されているので、ナット29を回すだけで伸縮して円板37を進行後退させることができる、言わば直動ネジ式となっている。従って、ラジアル方向へ突出するように動作する部材はなく、狭いスペースにおいても作業が行いやすいものとなっている。
例えば、上記実施の形態では地下構造物として貯水槽を示したが、本発明はこれに限定されず、倉庫等であってもよい。
骨組6を組み立てていく際に、下側骨部7、上側骨部15は水平方向へ揺動するのを防止するため、下側骨部7の左右方向へ長い骨部構成材11間、上部骨部15の左右方向へ長い骨部構成材19間に山形鋼などによって構成される振れ止め部材を渡設してもよい。このようにすることで、骨組6の組立作業を行い易くすることができる。
なお、中空部1gとクッションシート39との間に平鋼などの当て板を介装してもよい。これにより、円板37の圧接力がある程度の広い面積に分散され、中空部1gの内面が部分的に破損するのを防止することができる。
また、下側骨部7を水平に備えるため、底部1aの凹凸を吸収するため底部1aにゴム板を敷設して、その上に下側骨部7を設置してもよい。
1d、1e…左右の側部 1f…天部 1g…中空部
1h…マンホール 1i…補強部
3…蓋 5…補強構造体 6…骨組 7…下側骨部
9…骨部構成材 11…骨部構成材 13…支柱
13a…骨部構成材9の両端部に備えられた支柱
13b…骨部構成材11の左端部に備えられた支柱
13c…骨部構成材11の右端部に備えられた支柱
13d…骨部構成材9と骨部構成材11との連結部に備えられた支柱
15…上側骨部 17…骨部構成材 19…骨部構成材
21…連結材 23…圧接装置 25…固定ベース
27…雄ねじ 29…ナット 31…シャフト
33…金属球 35…傾動ケース 37…円板
39…クッションシート 43…渡設板 45…渡設板
47…挿通穴 49…挿通穴 51…ボルト
53…ナット
P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8…補強構造体のパーツ
G…地面 F1、F2…フレーム構造 Hf…H型鋼のフランジ
Claims (9)
- 底部と前後左右の側部と天部とに囲まれた中空部を有し、前記中空部に人が出入りし得るように構成されたコンクリートからなる地下構造物を補強する地下構造物の補強構造体において、
前記底部に設置される下側骨部と、前記下側骨部に立設された複数の支柱と、前記支柱の上端に固定され前記下側骨部と互いに対向する上側骨部から成る骨組を備え、前記下側骨部と前記上側骨部は前後方向に長い骨部構成材と左右方向に長い骨部構成材が複数個所において十字形を為すように連結されて成り、前記骨組に設けられ伸縮可能な圧接体支持手段によって支持されて前記中空部の内面に圧接する圧接体とを備えたことを特徴とする地下構造物の補強構造体。 - 請求項1に記載した地下構造物の補強構造体において、補強構造体の骨組は下側骨部と、支柱と、上側骨部によって形成される複数のフレーム構造を有していることを特徴とする地下構造物の補強構造体。
- 請求項1または2に記載した地下構造物の補強構造体において、下側骨部の左右方向に長い骨部構成材の端部間に横架される部材と、上側骨部の左右方向に長い骨部構成材の端部間に横架される部材は備えられていないことを特徴とする地下構造物の補強構造体。
- 請求項1から3のいずれかに記載した地下構造物の補強構造体において、圧接体支持手段は圧接体を傾動可能に支持することを特徴とする地下構造物の補強構造体。
- 請求項1から4のいずれかに記載した地下構造物の補強構造体において、圧接体支持手段は、雄ねじと、前記雄ねじに螺合されるナットとを有し、前記ナットに圧接体が取り付けられており、前記雄ねじ、ナット及び圧接体が直列に配置されていることを特徴とする地下構造物の補強構造体。
- 請求項1から5のいずれかに記載した地下構造物の補強構造体において、補強構造体の下側構成体、上側構成体及び支柱は連結される各部材間に渡設部材を渡設し、前記渡設部材と前記連結される各部材をボルト連結することによって、前記連結される各部材どうしが連結されていることを特徴とする地下構造物の補強構造体。
- 請求項1から6のいずれかに記載した地下構造物の補強構造体において、補強構造体の骨組の少なくとも下側構成体と上側構成体は分解・組立可能な複数の部材によって構成されていることを特徴とする地下構造物の補強構造体。
- 請求項1から7のいずれかに記載した地下構造物の補強構造体において、骨組はH型鋼によって構成され、下側骨部を構成するH型鋼のフランジが地下構造物の底部に接していることを特徴とする地下構造物の補強構造体。
- 底部と前後左右の側部と天部とに囲まれた中空部を有し、前記中空部に人が出入りし得るように構成されたコンクリートからなる地下構造物の補強方法において、
前記底部に設置される下側骨部と、前記下側骨部に立設された複数の支柱と、前記支柱の上端に固定された上側骨部から成る骨組を備え、前記下側骨部と前記上側骨部は骨部どうしが複数個所において十字形を為すように連結されて成り、
前記骨組に設けられ伸縮可能な圧接体支持手段によって支持されて前記中空部の内面に圧接する圧接体を備えた補強構造体を前記中空部内で組み立てることを特徴とする地下構造物の補強方法。
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