以下、図面を用いながら、開示の送信装置、受信装置、送信方法および受信方法の実施形態について説明する。尚、便宜上別個の実施形態として説明するが、各実施形態を組み合わせることで、組合せの効果を得て、更に、有用性を高めることもできることはいうまでもない。
[問題の所在]
まず、各実施形態を説明する前に、従来技術における問題の所在を説明する。この問題は、発明者が従来技術を仔細に検討した結果として新たに見出したものであり、従来は知られていなかったものであることに注意されたい。
上述したように、現状のLTEシステムにおいてはいくつかのスケジューリング方式が既に規定されているが、MTCデバイスを始めとする現在および今後の携帯電話無線端末の利用形態の多様化を踏まえると、これらは必ずしも十分に効率的ではない可能性がある。以下ではこの点について考察するため、LTEシステムにおいて規定されている通常のスケジューリング方式であるダイナミックスケジューリングと、所定の場合に用いられるスケジューリング方式であるSPS(Semi-Persistent Scheduling)とを順に説明する。なお、以下では無線基地局から無線端末にデータを送信する下りデータ通信を例に説明するが、無線端末から無線基地局にデータを送信する上りデータ通信についても同様に説明できることに注意されたい。
LTEにおける通常のスケジューリング方式であるダイナミックスケジューリングを説明する。ここでは例として、下りデータ通信のダイナミックスケジューリングを説明する。
ダイナミックスケジューリングでは、無線基地局は無線端末に下りデータを送信する場合に、動的にスケジューリングを行う。そして無線基地局はスケジューリング結果に基づいて、下り無線フレームにデータをマッピングして無線端末に送信する。このとき無線基地局はデータに付随する制御情報をデータと同じサブフレーム(1ミリ秒)にマッピングして無線端末に送信する。ダイナミックスケジューリングではサブフレーム上のデータの配置やデータの変調方式・符号化方式等がその都度変わるため、無線基地局はこれらをパラメータとして制御情報に格納して無線端末に通知するのである。
データに付随する制御情報はDCI(Downlink Control Information)と呼ばれている。DCIはいわゆるL1(Layer 1)の制御信号であり、物理下り制御チャネルPDCCH(Physical Downlink Control CHannel)を介して送信される。前述したように、DCIにはサブフレーム上のデータの配置(サブフレームにおいてデータに割当てられた無線リソース)を示す情報であるリソース割当て(resource allocation)や、データの変調方式・符号化方式を示す情報であるMCS(Modulation and Coding Scheme)を含む。なお、LTEシステムにおいては、データ送信の時間軸上の単位は1サブフレームと決まっているため、リソース割当てにおいては、周波数成分のみをリソースブロックと呼ばれる単位で割当てる。
DCIには巡回冗長検査(CRC: Cyclic Redundancy Check)が付加されており、当該CRCは無線端末の識別子であるRNTIでマスク(スクランブル)されている。無線端末は、各サブフレームのPDCCHをモニタし、自分のRNTIを用いてDCIに付加されたCRCのチェックを行う。ここでCRCのチェックに成功すると、無線端末はCRCが付加されたDCIを自分宛てと判断する。一方、CRCのチェックに失敗すると、無線端末はCRCが付加されたDCIを自分以外宛てと判断する。DCIはデータに付随する制御情報であるので、このようなDCIの宛先の判定は、データの宛先の判定にもなっている。無線端末は自分宛てのDCIを検出すると、当該DCIに付随するデータを自分宛てと判断し、当該DCIに含まれるリソース割当てやMCSに基づいて、当該データの復調および復号を行って自分宛てのデータを得る。
以上より、無線端末はDCIに基づいてデータが自分宛であるか否かを判断する。また、無線端末はDCIに基づいて、下りサブフレームからデータの抽出を行うとともに、復調・復号を行うことができる。したがって、ダイナミックスケジューリングにおいては、各データにDCIが付随することが不可欠であると言える。
このようなダイナミックスケジューリングによれば、無線基地局は無線端末に対して必要な時に必要なだけの無線リソースを割り当てることができるため、効率的な無線通信システムが実現できる。しかしながら、ダイナミックスケジューリングにおいては、無線基地局がデータを送信する際には必ず制御信号(DCI)を付随させる必要がある。これにより、以下で示すようにいくつかの問題が生じうる。
データに制御信号が付随することに基づく1つ目の問題としては、データの伝送効率の低下が挙げられる。無線リソースは有限であるところ、制御信号を送るための無線リソースにおいてはデータを送信することができない。したがって、制御信号の数が多くなるほど、データの送信に使用できる無線リソースが減少し、結局、データの伝送効率が低下することになる。ダイナミックスケジューリングにおいては一つ一つのデータそれぞれに制御信号が付随するため、データの伝送効率に関しては十分ではないという側面がある。
データに制御信号が付随することに基づく2つ目の問題としては、DCIをマッピングする無線フレーム上の領域である制御信号領域の欠乏が挙げられる。DCIをマッピングするための領域である制御信号領域は、下り無線フレームを構成する各下りサブフレームの先頭から最大3OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)シンボルと決まっている。仮に制御信号領域をこれ以上に増やすと、旧来の無線端末(Release 8までのみに対応した無線端末等)に対する互換性を保てなくなるため、この最大3OFDMシンボルの制約を変更するのは現実的ではない。しかしながら、この制約のため、送信するデータの数が多い場合等において、制御信号領域が欠乏しうる。ダイナミックスケジューリングにおいては、無線基地局がデータを送信する際には必ずDCIを付随させる必要があるためである。
したがって、LTEシステムのダイナミックスケジューリングによれば、一つ一つのデータそれぞれに制御信号(DCI)が付随する。これにより、データの伝送効率の低下や制御信号領域の欠乏という問題が生じうる。
ところで、データの伝送効率の低下や制御信号領域の欠乏という問題は、データそれぞれに制御信号が付随することに起因する。したがって、これらの問題を回避するためには、制御信号の伝送効率を向上させること、特に、制御信号の数を削減することが有効であるものと考えられる。これに対し、LTEシステムにおいて規定されているもう一つのスケジューリング方式であるSPSによれば、制御信号の数を減らすことができる。
SPSは、ダイナミックスケジューリングのように毎回動的に無線リソースを割当てるものではなく、1個のDCIによって半持続的(semi-persistent)に周期的な無線リソースを割当てるものである。そのため、SPSによれば、無線基地局は無線端末に対し、スケジューリング用の制御情報をその都度付随させることなく、周期的なデータ通信を行うことができる。SPSは、典型的には音声通信に適用されるが、MTCデバイス等によるデータ通信に適用することも可能である。
SPSの動作を説明する。SPSを行うに際して、無線基地局はデータ送信(受信)の周期等を無線端末にあらかじめ通知しておく。この通知は、上位の制御信号であるRRC信号で実現される。その後、無線基地局は無線端末に対するSPSを開始する場合、当該無線端末にSPSを活性化(Activation)するための制御信号を送信する。この制御信号は、上述したDCIにより実現される。この時のDCIにも、ダイナミックスケジューリングの場合と同様に、リソース割当てやMCSを含んでいる。無線基地局は、DCIを送信するサブフレームにおいて、当該DCIで指定したリソース割当てやMCSを用いて、周期的データ送信における1回目のデータをマッピングして送信する。
無線端末は、ダイナミックスケジューリングの場合と同様にしてDCIに付加されたCRCのチェックに成功すると、当該DCIを自分宛てと判断する。そして当該DCIに付随するデータ(周期的データ送信における1回目のデータ)を当該DCIに基づいて受信(復調・復号)する。また、無線端末はDCIに基づいてSPSが活性化したことを認識する。これにより、これ以降の無線端末は、予め無線基地局から通知された周期に基づいて、周期的にデータを受信(復調・復号)する。
無線基地局は、SPSの周期的データ送信における2回目以降のデータについては、DCIを付随させない。しかしながら、無線端末は2回目以降のデータも問題なく受信することが可能である。具体的には、SPSにおいては、アクティベーションを通知するDCIの受信タイミングと、予め通知された周期とに基づいて、データの受信タイミングが定まる。そのため、無線端末は2回目以降のデータの受信タイミングを認識することができる。また、SPSにおいては、周期的データ送信における2回目以降のデータについても、1回目のデータと同じリソース割当てやMCSが適用される。そのため、無線端末は2回目以降のデータの復調及ぶ復号を行うことができる。これらにより、SPSの2回目以降のデータにはDCIは付随しないが、無線端末はこれらを受信することが可能となる。
以上説明したSPSによれば、ダイナミックスケジューリングと比較して、データに制御信号(DCI)が逐一付随しない。そのため、前述したデータの伝送効率の低下や制御信号領域の欠乏といった問題が一応は解決されるようにも思われる。
しかしながら、SPSを用いても、DCIに由来する上記の問題が必ずしも十分に解決されない場合もあると考えられる。具体的には、前述したようにSPSでは予め設定した周期に基づく周期的なデータ送信を行うことしかできない。言い換えると、SPSでは、無線基地局は無線端末に任意のタイミングでデータ送信を行うことはできない。SPSはデータ送信のタイミングの自由度が低いと言うこともできる。
そのため、例えば無線基地局において無線端末向けの下りデータが発生した場合、SPSにおいては、少なくとも周期的送信の次の送信タイミングまで当該データの送信を待たなければならない。そのため、下りデータに送信遅延が生ずることになる。特に下りデータがバースト的に発生した場合、周期的なタイミングでしか送信できないSPSでは送信遅延が累積的に大きくなっていくものと考えられる。
このようなSPSに基づく送信遅延を回避するためには、無線基地局はデータをダイナミックスケジューリングで送信する必要がある。しかしながら、ダイナミックスケジューリングにはデータを送信する度にDCIが必要となる。したがって、このような場合、DCIに由来する上記の問題は十分に解決されないものと考えられる。
また、SPSは各周期におけるデータの初送(新規送信)のみに対応している。言い換えれば、SPSにおいても、データの再送時にはダイナミックスケジューリングを行う必要がある。しかしながら、ダイナミックスケジューリングにはデータを送信する度にDCIが必要となる。したがって、このような場合にも、DCIに由来する上記の問題は十分に解決されないものと考えられる。
以上のように、SPSを用いてもDCIに由来する上記の問題が必ずしも十分に解決されない場合がある。そのため、この問題をより解決できる新たなスケジューリング方式を規定するのが望ましいものと考えられる。
そこで以下のような方式(便宜上「参考方式」と称する)を考える。まず、無線基地局は無線端末に対して予め、データ送信に使用するリソース割当てやMCS等の情報を予め通知しておく。ここで予め通知する情報は、通常のダイナミックスケジューリングにおいてDCIに含まれている任意の情報を含んでいてよい。この通知は、例えばL3制御信号であるRRC信号で実現されるが、L1制御信号である通常のDCIを拡張して実現することとしても良い。
参考方式においては、無線基地局は、前述の通知以降の任意のサブフレームで、データを無線端末に送信することができるものとする。ただし、無線基地局は、データを送信する際にDCIを付随させないものとする。その代わりに、無線基地局はデータを送信する際に、予め通知されたMCSに基づいて当該データを符号化・変調し、予め通知したリソース割当てに基づいて当該データを配置するものとする。このような参考方式により無線端末は、データにDCIが付随せずとも、サブフレームからデータを抽出して復調・復号を行うことが可能となる。
ここで、参考方式においては、複数の無線端末が共有するような無線リソースを割当てるのが望ましい。言い換えると、複数の無線端末が属する無線端末グループに対して無線リソースを割当てるのが望ましい。
参考方式は、所定期間または所定事象(無線基地局による終了通知等)が発生するまでの間、ある無線リソースを連続的に無線端末に予め割当てるものである。参考方式において、仮にある無線リソースを唯1つの無線端末に予め割当ててしまうと、当該無線端末に対するデータ送信が行われないサブフレームにおいては、割当てられた無線リソースが無駄(無線リソースのロスが発生)となってしまう。この場合、1つの無線端末に対するデータ送信が行われる頻度はそれほど大きくない(例えばVoIPによる会話区間でも20サブフレームに1サブフレーム程度と言われている)ことから、無線リソースの利用効率が非常に低いものとなってしまう。これを避けるためには、無線リソースを複数の無線端末が属する無線端末グループに割当てるのが望ましいものと考えられる。
さらに、無線リソースを無線端末グループに割当てる場合、当該無線端末グループに属する複数の無線端末は、類似する性質を有するものであるのが望ましい。例えばデータを受信する頻度や、受信するデータの大きさが類似する無線端末を同じグループとすることが考えられる。また、無線環境の類似する無線端末を同じグループとすることが考えられる。
ここで、前述したMTCデバイスは、参考方式と相性が比較的良いものと考えられる。その理由の一つとしては、MTCデバイスは多くの場合は移動しないものであるため(準静止状態)、無線環境(チャネル特性)が変化しにくく、そのためMCSおよびリソース割当てをダイナミックに変更する必要性があまり無いからである。また、種類が同じMTCデバイスは、データを受信する頻度や受信するデータの大きさが類似するため、グルーピングを行いやすいものと考えられる。さらに、MTCデバイスは数が膨大となることが想定されている上に、受信データは比較的小さい場合も多いと考えられているため、制御信号を削減したいという要求が通常の無線端末以上に強いと考えられるためである。
ただし、参考方式には無線端末側でデータがどの無線端末宛なのか(自分宛てなのか否か)が分からないという問題が残っている。従来のダイナミックスケジューリングではDCIに付加されたCRCに基づいてデータの宛て先を判断していたが、参考方式においてはデータにDCIが付随しないことを想定しているためである。参考方式を実用化するためには、この問題を解決する必要があると考えられる。
なお、以上の説明は例としてMTCデバイスに基づいて行った部分もあるが、上記の問題は必ずしもMTCデバイスに限られるものではない。上記の問題は、例えばMTCデバイスと同様なもしくは類似した形態で利用される通常の携帯電話無線端末についても起こりうるものであると考えられる。
以上をまとめると、MTCデバイス等においては制御信号を削減することでデータの伝送効率の低下や制御信号領域の欠乏を防ぐ必要がある。そのためには従来のLTEシステムにおけるダイナミックスケジューリングやSPSでは十分ではなく、予め割当てた連続的な無線リソースでデータに制御情報を付随させずに送信する参考方式(前述)が考えられる。しかしながら、参考方式によると、受信側が受信したデータの宛先を認識することができない。前述したようにこの問題は、発明者が従来技術を仔細に検討した結果として新たに見出したものであり、従来は知られていなかったものである。以降では、この問題を解決するための本願の各実施形態を説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態は、参照信号を受信側(無線端末側)の識別子に応じて移相させた移相参照信号を用いることで、受信側が移相参照信号に基づいて送信先(宛先)を検出できるようにしたものである。
言い換えれば、第1実施形態は、受信装置にデータを送信する場合、該データを含む第1信号とともに、既知信号に対して前記受信装置の識別情報に基づいて位相変調を施した第2信号を送信する送信部を備える送信装置を具現化するものある。また、受信装置であって第1信号と第2信号とを受信し、該第2信号が既知信号に対して前記受信装置の識別情報に基づいて位相変調を施した信号である場合に、該第1信号が前記受信装置宛てであると決定する受信部を備える受信装置を具現化するものである。
図1は、第1実施形態に係る無線通信システムの処理シーケンスの一例を示す図である。
まず図1の前提を説明する。図1には、一例として、無線基地局10と2台の無線端末20aと20bが登場する。以降の説明では、特に断りがない限り、2台の無線端末20aと20bとをまとめて無線端末20と称する。
2台の無線端末20aと20bは同じ無線端末グループに属しているものとする。ここで、無線端末グループは任意の基準により設定することができるが、何らかの性質が類似する無線端末20を同じ無線端末グループとするのが望ましい。例えば、無線端末種別(所定のMTCデバイス等)が同じ無線端末20をまとめた無線端末グループを設定したり、無線環境(チャネル特性)が類似する無線端末20をまとめた無線端末グループを設定することができる。
図1は無線基地局10から無線端末20aに下りデータを送信する場合の処理シーケンスとなっている。なお、第1実施形態は、一例として、本願発明をLTEシステムに適用したものとなっている。しかしながら、本願発明はLTEシステム以外の任意の無線通信システムに同様に適用できることに留意されたい。
また、本願においてはこれまでは主としてLTEシステムにおけるMTCデバイスに焦点を当てて問題点等を説明してきたが、前述したように、本願発明は必ずしもMTCデバイスに限られるものではない。前記の問題点は、例えばMTCデバイスと同様なもしくは類似した形態で利用される通常の携帯電話無線端末20についても起こりうるものであると考えられる。そのため以降は、MTCデバイスの上位概念に相当する無線端末20に基づいて説明を行う。特に断りのない限り、説明中の無線端末20をMTCデバイスと適宜読み変えても構わない。
図1のS101で無線基地局10は、下りデータの受信に必要な各種パラメータを無線端末20に送信(通知)する。一方、無線端末20は下りデータの受信に必要な各種パラメータを無線基地局10から受信する。S101で送受信される各種パラメータを、便宜上、下りデータ用パラメータと呼ぶことにする。
下りデータ用パラメータの送信は、無線基地局10の配下の複数の無線端末20に対するマルチキャストまたはブロードキャストにより実現することができる。例えば、所定の無線端末20グループに所属する無線端末20に対するマルチキャストで行っても良い。下りデータ用パラメータの送信は、物理下り共有チャネル(PDSCH: Physical Downlink Shared CHannel)で送信される上位(L3)の制御信号であるRRC信号により実現することもできるし、物理下り制御チャネル(PDCCH: Physical Downlink Control CHannel)で送信される下位(L1)の制御信号であるDCIにより実現することもできる。
下りデータ用パラメータは、下りデータの受信に必要な任意のものを含んでいてよく、通常のダイナミックスケジューリングにおいてDCIに含まれている任意の情報を含むことができる。例えば、下りデータ用パラメータには、前述したリソース割当てやMCSを含むことができる。リソース割当ては、LTEシステムにおける周波数割当の単位であるリソースブロックに基づいて行うことができる。また、下りデータ用パラメータは、これら以外の任意のパラメータを含むこととしても良い。
本実施形態においては、無線基地局10は、S101における下りデータ用パラメータの送受信を契機として、後に示す方法で下りデータを無線端末20に送信することができるものとする。ただし、下りデータを送受信可能な期間の開始タイミング(契機)を、S101の下りデータ用パラメータの送受信において又はこれとは別の信号によって、無線基地局10から無線端末20に送信することとしても良い。また、下りデータを送受信可能な期間の終了タイミングを、S101の下りデータ用パラメータの送受信において又はこれとは別の信号によって、無線基地局10から無線端末20に送信することとしても良い。
図1のS102で無線基地局10において無線端末20a向けのデータである下りデータが発生する。下りデータは、他の無線端末20bと無線端末20aとが通話する場合や、無線端末20aがネットワーク上のサーバ等からWebページやメールを受信する場合等に発生する。
図1においては図示していないが、下りデータが発生した場合、無線基地局10は当該下りデータを送信するためのスケジューリングを行い、当該下りデータを送信するタイミング(サブフレーム)を決定する。このタイミングの決定は、他の下りデータの発生具合や、それらの優先度の差を踏まえて行われても良い。これには種々の方式が考えられるが、任意の既存技術を適用すれば事足りるため、ここでは説明を割愛する。
ただし、1点強調すべきは、本実施形態においては、例えばS101における下りデータ用パラメータの送受信以降、無線基地局10は、任意のタイミング(サブフレーム)で、下りデータを無線端末20に送信することができる点である。よって、下りデータのスケジューリングにおいて、前述したSPSのように周期的送信のタイミングに縛られる必要はない。この点は、本実施形態をSPSと比較した場合の優位性の一つとなる。
次に図1のS103で無線基地局10は参照信号を生成する。参照信号は、既知信号の一種であり、基準信号やパイロット信号等と呼ばれることもある。参照信号にはいくつかの種類があるが、チャネル推定(同期検波と呼ばれることもある)または受信データの復調、品質測定等に用いられ、受信側(本実施形態の場合は無線端末20)がデータを受信するために不可欠な信号であるということができる。
LTEシステムにおける下りの参照信号としては、セル固有参照信号(Cell-specific reference signal)、ユーザ固有参照信号(UE(User Equipment)-specific reference signal)、チャネル状態情報参照信号(CSI(Channel State Information) reference signal)等がある。セル固有参照信号は、初期のLTEシステム(Release 8)から用いられているものであり、セル識別子に基づく既知信号であるため、セル固有の信号となっている。セル固有参照信号は汎用的な参照信号であり、チャネル推定または受信データの復調、品質測定等に広く用いられる。
これに対し、ユーザ固有参照信号とチャネル状態情報参照信号はRelease 10で導入された比較的新しい参照信号である。ユーザ固有参照信号は無線端末識別子(ユーザ識別子と言い換えても良い)に基づく既知信号であるため、ユーザ固有の参照信号となっている。ここでの無線端末識別子としては、LTEシステムにおいて無線端末20に一時的に割当てられる論理的な識別子であるRNTI(Radio Network Temporary ID)が用いられる。ユーザ固有参照信号はチャネル推定またはデータ復調用に特化した参照信号であり、データが送信される場合にサブフレーム中の当該データがマッピングされる領域(PDSCH)のみにおいて比較的高密度に配置される。一方、チャネル状態情報参照信号は品質測定用に特化した参照信号であり、比較的長い送信周期で、サブフレームが占める周波数幅に渡って配置されて送信される。Release 10において8アンテナのMIMO(Multiple Input Multiple Output)伝送が導入された際に、汎用的な参照信号であるセル固有参照信号またはその拡張では不十分となった。そのため、新たに用途別の参照信号として、チャネル推定またはデータ復調用のユーザ固有参照信号と品質測定用のチャネル状態情報参照信号とが規定されることとなったものである。
本実施形態においては、以降は特に断りのない限り、「参照信号」とはユーザ固有参照信号を指すものとする。これは、追って述べるように、本実施形態においては参照信号を特定の無線端末識別子(RNTI)に基づいて移相して送信するため、特定の無線端末20のみが受信する参照信号を用いる必要があるためである。一方、セル固有参照信号やチャネル状態情報参照信号は、無線基地局10の配下の全ての無線端末20が受信するものであるため、本実施形態にそぐわないと考えられる。なお、本願発明はユーザ固有参照信号に限定されるものではなく、特定のユーザのみが受信する任意の参照信号に対して適用可能である。特に、本願発明の参照信号は、ユーザ固有参照信号のように無線端末識別子に基づいて生成されることは要件ではなく、ユーザに依存しないものであっても全く構わないことに留意されたい。
S103で無線基地局10は、無線端末識別子(RNTI)に基づく所定の規則を用いて参照信号(ユーザ固有参照信号)を生成する。上述したように、参照信号はいわゆる既知信号である。受信側(無線端末20)も無線端末識別子および所定の規則を予め認識しているため、参照信号を生成することができるからである。参照信号の具体的な生成手順については従来技術に過ぎないため、ここでは割愛する。
次にS104で無線基地局10は、移相参照信号を生成するq。移相参照信号は、端的にいえば、S103で生成された参照信号を、S102で発生した下りデータの宛先である無線端末20aの識別子(RNTI)に基づいて移相した信号である。ここで、移相を位相回転と言い換えても良い。
以下では移相参照信号の生成について詳細に説明する。まず、その準備として、デジタル変調方式(以下では単に変調方式と呼ぶ)について説明する。ここでは変調方式の一例として位相変調方式の一種である4相位相変調(QPSK: Quadrature Phase Shift Keying)を説明する。QPSKの変調度は2(=log24)であり、言い換えれば、QPSKは1シンボルで2ビットの情報を伝達することができる変調方式である。なお、本実施形態における変調方式としては、QPSKに限らず任意の位相変調方式を用いることができ、例えば2相位相変調(BPSK: Binary Phase Shift Keying)や8相位相変調(8PSK: Octuplet Phase Shift Keying)等を用いることができる。
ここで、一般的に、デジタル変調方式はI-Q平面と呼ばれる平面上で考えることが広く行われている。ここで、Iは同相(In-phase)成分、Qは直交(Quadrature)成分を意味している。交流信号は基準信号(基準となる周波数)が定まると、振幅と位相で表現できるため、平面上の点(ベクトル)で表すことができるのである。
図2A〜2Cに主要な位相変調方式をI-Q平面で表現した図を示す。図2AはBPSKを、図2BはQPSKを、図2Cは8PSKをそれぞれ表している。図2A〜2Cのような図は、変調方式のコンスタレーション表示と呼ばれることがある。
以下ではQPSKを表す図2Bについて説明する。前述したようにQPSKの各シンボルは2ビット分の情報であり、4種類の状態を取り得る。これらの4種類の状態が、図2Bに示されるI-Q平面上の4つの信号点で表現されている。QPSKの4つの信号点は、2ビットが取り得る値である00、01、10、11のそれぞれに対応している。
図2Bに示されるQPSKの4つの信号点は、振幅は全て同じであり、位相のみが異なっている。具体的には、00に対応する信号点は位相が225°であり、01に対応する信号点は位相が135°であり、11に対応する信号点は位相が45°であり、10に対応する信号点は位相が315°である。例えばQPSKにより2ビットの情報00を送信する場合、基準信号を135°移相した信号を送信する。
図1の説明に戻る。S104において無線基地局10は2段階の処理により移相参照信号を生成する。まず無線基地局10は、S102で発生した下りデータの宛先である無線端末識別子(RNTI)に対応するビット列を、所定の変調方式の変調度に基づくビット数毎に分割する。これにより、無線端末20の識別子を所定の変調方式のシンボル系列に変換することが可能となる。次に無線基地局10は、S103で生成した参照信号を、先に生成した所定の変調方式のシンボル系列に含まれる各シンボル(当該変調方式におけるI-Q平面上の各信号点に相当)が有する位相に基づいて移相する。これにより、無線基地局10は移相参照信号を生成することができる。
以下ではS104の処理を具体例に基づいて説明する。LTEシステムにおける無線端末識別子であるRNTIは16ビットの値である。ここでは一例として、S102で発生した下りデータの宛先である無線端末20aのRNTIが0001101110011100であるとする。また、所定の変調方式として、前述したQPSKを例に説明する。
この具体例においては、S104で無線基地局10はまず、RNTIをQPSKの変調度に基づくビット数である2ビット毎に分割する。これにより、RNTI=0001101110011100は、8個のビット列である00、01、10、11、10、01、11、00に分割される。ここでは便宜上8個のビット列を分割RNTIと呼ぶことにする(または、より一般的に分割無線端末識別子と称してもよい)。RNTIを8個に分割することにより、RNTIをQPSKの長さ8のシンボル系列に変換することが可能となる。
S104で無線基地局10は次に、S103で生成した参照信号を、先に生成したQPSKのシンボル系列に含まれる各シンボルに対応する位相量で移相させることによって、当該シンボル系列長と同数の移相参照信号を生成する。
図3A〜3Eは参照信号の移相を説明する図である。今、一例として、移相前の参照信号が図3Aで表される信号であるものとする。このとき、QPSKシンボル00に対応する移相参照信号は、図3Bに示す通り、参照信号を225°移相したものとなる。同様に、QPSKシンボル01に対応する移相参照信号は、図3Cに示す通り、参照信号を135°移相したものとなる。QPSKシンボル10に対応する移相参照信号は、図3Dに示す通り、参照信号を315°移相したものとなる。QPSKシンボル11に対応する移相参照信号は、図3Eに示す通り、参照信号を45°移相したものとなる。
前述した具体的に沿って説明する。0番目の移相参照信号は、S103で生成した参照信号を、0番目の分割RNTIである00に相当するQPSKの位相量、すなわち225°だけ移相することによって生成される(図3Bに対応)。1番目の移相参照信号は、S103で生成した参照信号を、1番目の分割RNTIである01に相当するQPSKの位相量、すなわち135°だけ移相することによって生成される(図3Cに対応)。以降も同様にして、無線基地局10は7番目までの合計8個の移相参照信号を生成することができる。なお、本願の説明においては、無線通信分野の慣例に従い、N個の要素(任意)がある場合にそれらを0番目からN−1番目と順序付ける(インデックスを付ける)こととしている点に注意されたい。
以上で説明したようにして、S104で無線基地局10は、S103で生成した参照信号を無線端末識別子(RNTI)に基づいて移相することで移相参照信号を生成することができる。
次にS105で無線基地局10は、S104で生成した移相参照信号を無線端末20に送信する。移相参照信号は、下り無線フレーム中の所定の無線リソースにマッピングされて送信される。例えば、LTEにおけるユーザ固有参照信号は、下り無線フレームを構成する各下りサブフレームにおいて、下りデータを送信する物理チャネルであるPDSCHをマッピングするための無線リソース(後述するリソースエレメント)の一部を用いてマッピングされる。前述したようにユーザ固有参照信号はデータ復調用の参照信号であり、データを精度よく復調するためには参照信号とデータとのチャネル特性が一致または類似するのが望ましい。そのため、データ送信に用いられる無線リソースの一部を用いて送信されるのである。
図4Aおよび4Bに、LTEにおけるユーザ固有参照信号を下りサブフレームへマッピングした例を示す。図4Aは、従来のLTEシステムにおける下りサブフレームにおける配置例である。一方、図4Bは将来のLTEシステムで採用される可能性がある下りサブフレームにおける配置例である。なお、図4Aおよび4Bは、一例としてリソースブロックが1個の場合(リソース割当量が最小の場合に相当)を示しているが、複数個の場合にも容易に拡張することができることは言うまでもない。
図4Aおよび4Bに示されるように、下りサブフレームにおける各リソースブロックは時間軸方向が14等分されるとともに周波数軸方向に12等分されることで、168個に分割される。この168個に分割されたリソースはリソースエレメントと呼ばれる。リソースエレメントは変調の基本単位であり、別の言い方をすれば、1個のリソースエレメントが、変調方式における1個のシンボルに対応する。
図4Aに示されるLTEシステムにおける従来の下りサブフレームでは、先頭の1〜3OFDMシンボル分に制御信号を配置するための領域が設けられることになっている。図4Aでは一例として先頭から3OFDMシンボル分が制御信号用の領域(斜線部分)となっている。下りデータは制御信号用の領域以外の領域(斜線がない部分)に配置することができ、図4Aの例では先頭から4OFDMシンボル目以降に下りデータを配置することができる。
一方、図4Bに示される将来のLTEシステムにおいて採用されうる下りサブフレームでは、制御信号用の領域が設けられていない。これにより、先頭のOFDMシンボルからデータを配置することができ、データ送信効率(スループット)の向上が期待される。図4Bの下りサブフレームは図4Aのそれに比べてデータ用の領域が広いため、1サブフレームでより多くのデータを送信することができるためである。なお、図4Bに示すサブフレームは制御信号を完全に排除するものではなく、例えば拡張制御信号(E-PDCCH)やマルチフレームスケジューリング等の技術により、データに制御信号(DCI)を付随させることが想定されているが、ここでは詳細は割愛する。
図4Aおよび4Bにおいて、ユーザ固有参照信号は、下りデータ信号用の領域に配置される。具体的には、図4Aにおいてユーザ固有参照信号は、0〜23の数字が付されたリソースエレメントに配置される。一方、図4Bにおいてユーザ固有参照信号は、0〜35の数字が付されたリソースエレメントに配置される。ユーザ固有参照信号が配置されるリソースエレメントにはデータは配置されない。ユーザ固有参照信号は、データ用の無線リソースの一部を用いて送信されると言うこともできる。そのため、受信側はユーザ固有参照信号によりチャネル推定を行い、得られたチャネル推定値に基づいてデータの復調を行えるのである。なお、ユーザ固有参照信号は、PDSCHにおける最大8空間レイヤーの空間多重伝送に対応し、各空間レイヤーのチャネル推定を個別に行えるように、8個の直交するユーザ固有参照信号(空間レイヤー0〜7用の参照信号がそれぞれantenna port 7〜14として区別される)をリソースブロック内に多重できるようになっている。具体的には、図4Aの例では、空間レイヤー{0,1,4,6}用の参照信号がそれぞれ異なる直交符号を用いてリソースエレメント{0,2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22}に符号多重され、空間レイヤー{2,3,5,7}用の参照信号がそれぞれ異なる直交符号を用いてリソースエレメント{1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23}に符号多重される。以降では、説明の簡単のために、割り当てられたリソースブロック内で、1空間レイヤーのPDSCH送信を行い、その復調に用いるユーザ固有参照信号をリソースエレメント0〜23において送信する場合について説明する。
図1の説明に戻って、S105の処理を図4Aの例に沿って説明する。例えば、無線基地局10は図4Aにおける0番目のリソースエレメントに、S104で生成した0番目の移相参照信号を配置する。また、図4Aにおける1番目のリソースエレメントに、S104で生成した1番目の移相参照信号を配置する。以降も同様に、無線基地局10は7番目までの移相参照信号を配置することができる。
一方、例えば図4Aの下りサブフレームにおいて、8〜23番目のリソースエレメントに対しては、S102で生成した参照信号(移相していない参照信号)を配置することができる。また、図4Aの8〜15番目と16〜23番目のリソースエレメントそれぞれに対し、0〜7番目と同様に移相参照信号を配置することとしても良い。
図1の説明に戻って、S105で無線基地局10は、S104で生成した移相参照信号に加えて、S102で発生した下りデータに対応するデータ信号を送信する。前述したように、図4Aや4Bに示される下りサブフレーム中のデータ信号領域(斜線がない部分)において、数字が付されたリソースエレメントには移相参照信号(あるいは参照信号)が配置される。これに対し、データ信号領域において数字が付されていないリソースエレメントにおいて、データ信号が配置される。下りサブフレームに配置されるデータ信号は、S102で発生した下りデータに対し、S101で通知されたMCSが示す符号化および変調等を行うことで生成される。また、データ信号は、S101で通知されたリソース割当てが示すリソースブロックに配置される。
したがって、S105においては、移相参照信号と下りデータ信号とは同じサブフレームにおいて、同じリソースブロックで送受信される。下りデータ信号と同じサブフレームおよびリソースブロックで送信される移相参照信号は、当該下りデータ信号の宛先である無線端末20aの識別子に基づいて移相された参照信号となっている。言い換えれば、同じサブフレームおよびリソースブロックで送信される移相参照信号および下りデータ信号は宛先が同じとなる。
ところで、従来のLTEシステムのダイナミックスケジューリングにおいては、下りデータ信号には制御信号(DCI)が付随するが、本実施形態のS105で送信される下りデータ信号には制御信号は付随しない。これにより、先に述べたデータの伝送効率の低下や制御信号領域の欠乏といった問題を回避することができる。
また、前述したように、本実施形態のS105における下りデータの送信は、S101における下りデータ用パラメータの送受信以降の任意のタイミング(サブフレーム)で行うことができる。そのため、本実施形態によれば、従来のLTEシステムにおけるSPSのような予め決められた周期に基づく周期的送信に限定されることなく、例えば連続するサブフレームに跨って下りデータ送信を行うことも可能となる。
これに対し、図1のS105で無線端末20は、複数の移相参照信号および下りデータ信号を受信する。受信した下りデータ信号は一時的にバッファリングしておく。後の復調等に備えるためである。
次にS106で無線端末20は、S105で受信した移相参照信号に基づいてデータの宛先を検出する。
ここで、無線端末20aがS105で受信した移相参照信号は、無線基地局10と無線端末20の間のチャネル特性(無線品質)に基づいて変化するため、無線基地局10がS105で送信した移相参照信号と物理的には同じではない(すなわち振幅や位相が異なる)ことに留意する。これと同様に、無線端末20bが受信するデータ信号も、チャネル特性に基づいて変化するため無線基地局10が送信したデータ信号とは物理的には異なるものとなる。
そこで、一般的なLTEシステムにおいては、無線端末20は参照信号とデータ信号とを受信し、受信した参照信号に基づいてチャネル特性の推定(チャネル推定)を行い、そこで得られたチャネル推定値に基づいてデータ信号の復調を行う。これにより、例えばチャネル特性が悪く、送信されたデータ信号と受信したデータ信号との差が大きい場合であっても、受信したデータ信号を適切に復調することが可能となる。
このように一般的なLTEシステムにおいては、データ信号の復調を参照信号に基づいて行うが、本願実施形態に係る無線通信システムにおいては、データ信号の復調を移相参照信号に基づいて行う。また、前述したように、一般的なLTEシステムにおいては、データ信号の宛先は当該データ信号に付随する制御信号(DCI)に基づいて通知されるが、本願実施形態に係る無線通信システムにおいては、データ信号の宛先は当該データ信号に付随する移相参照信号に基づいて通知される。
以下ではS106の宛先検出処理について順を追って詳細に説明する。
図5に、S106において無線端末20がデータ宛先を検出する処理の詳細な処理フローを示す。
図5のS201で無線端末20は、図1のS105で受信した移相参照信号を移相させる。前述したように、無線基地局10は、参照信号を無線端末識別子(RNTI)に基づいて移相した複数の移相参照信号を無線端末20に送信している。無線端末20は、受信した移相参照信号を無線端末識別子に基づいて、無線基地局10が行ったのと反対の移相を行うことで、元々の参照信号(移相前の参照信号)に対応する受信信号を得るのである。
図5のS201の処理を上述した具体例に沿って説明する。今、無線端末20が第0〜第7の8個の移相参照信号を受信した場合を考える。このとき、無線端末20は、無線基地局10が図1のS103で行ったのと同様に、無線端末識別子である16ビットのRNTIを、QPSKの変調度に基づくビット数である2ビットずつの分割RNTIに分割する。上述したように、この無線端末20のRNTI=0001101110011100は、8個の分割RNTIである00、01、10、11、10、01、11、00に分割される。これにより、RNTIをQPSKの長さ8のシンボル系列に変換することが可能となる。
S201で無線端末20は次に、S105で受信した複数の移相参照信号を、無線基地局10が図1のS103で行ったのと反対方向に移相させ、複数の参照信号を得る。すなわち無線端末20は、複数の移相参照信号を、先に生成したQPSKのシンボル系列(分割RNTIに対応)に含まれる各シンボルに対応する位相量で反対方向に移相させることによって、当該シンボル系列長と同数の参照信号(移相する前の参照信号)を生成する。具体的には、0番目の参照信号は、S105で受信した移相参照信号を、0番目の分割RNTIである00に相当するQPSKの位相量、すなわち225°だけ反対方向に移相(-225°の移相と同じ)することによって生成される。1番目の参照信号は、S105で受信した移相参照信号を、1番目の分割RNTIである01に相当するQPSKの位相量、すなわち135°だけ反対方向に移相(-135°の移相と同じ)することによって生成される。以降も同様に、無線端末20は7番目までの参照信号を生成することができる。
次に図5のS202で無線端末20は、S201で得られた複数の参照信号それぞれに基づいて、チャネル推定を行う。これにより、無線端末20は複数のチャネル推定値を得ることができる。上述した具体例では、無線端末20はS201で得られた8個の参照信号それぞれに基づいて別個にチャネル推定を行い、8個のチャネル推定値を得る。ここで、チャネル推定値とは、チャネルの特性を示す物理量であり、I-Q平面上の点(ベクトル)で表すことができる。または、チャネル推定値は振幅と位相の組で表現することもできる。チャネル推定は任意の従来技術に基づいて行うことができるため、ここでは説明を割愛する。
そして図5のS203で無線端末20は、S202で得られた複数のチャネル推定値の類似度を求める。ここで、類似度とは、複数のチャネル推定値における類似性の度合いを示す物理量であれば任意のものを用いることができる。上述した具体例においては、S202で得られた8個のチャネル推定値の類似度を求めることになる。
類似度の一例としては、複数のチャネル推定値の内積値を用いることができる。S202で得られたN個のチャネル推定値をh
0〜h
N-1で表すとき、これらの内積値IPは式(1)で表される。
(1)
類似度の他の例としては、チャネル推定値の分散を用いることも考えられる。チャネル推定値の分散値Varは式(2)で表される。
(2)
あるいは、類似度の他の例として、複数のチャネル推定値の最大位相差を用いることとしてもよい。ここで、複数のチャネル推定値の最大位相差とは、当該複数のチャネル推定値における位相の範囲の大きさと言い換えることもできる。例えば、複数のチャネル推定値の位相が全て同じ場合、最大位相差は0°となる。また、複数のチャネル推定値の位相が20°〜140°の範囲に収まっている場合、最大位相差は120°となる。なお、複数のチャネル推定値の最大位相差に加え、当該複数のチャネル推定値の振幅の範囲も組み合わせて類似度を求めることとしても良い。
次にS204で無線端末20は、S203で求めた類似度に基づいて、複数のチャネル推定値が類似しているか否かを判定する。これは例えば次のようにして行う。
例えば複数のチャネル推定値の類似度として内積値を用いる場合、当該内積値が所定値より大きい場合に、当該複数のチャネル推定値が類似するものと判定することができる。一方、当該内積値が所定値以下の場合、当該複数のチャネル推定値が類似しないものと判定することができる。また、例えば複数のチャネル推定値の類似度として分散値を用いる場合、当該分散値が所定値より小さい場合に、当該複数のチャネル推定値が類似するものと判定することができる。一方、当該分散値が所定値以上の場合、当該複数のチャネル推定値が類似しないものと判定することができる。
さらに、例えば複数のチャネル推定値の類似度として各チャネル推定値の最大位相差を用いる場合、当該最大位相差が所定値より小さい場合に、当該複数のチャネル推定値が類似するものと判定することができる。一方、当該最大位相差が所定値以上の場合、当該複数のチャネル推定値が類似しないものと判定することができる。最大位相差に基づく類似度を用いる場合、類似と非類似の境界となる所定値としては、変調方式の信号点間の位相差に基づいて定めることとしても良い。例えば、変調方式としてQPSKを用いる場合、QPSKの信号点間の位相差は90°であるため、ここでの所定値を90°とすることができる。
S204で複数のチャネル推定値が類似していると判定した場合(Yes)、無線端末20はS205に進む。この場合、S205で無線端末20(図1の無線端末20aの場合)は、図1のS105で受信した下りデータを自分宛てと判断する。一方、S204で複数のチャネル推定値が類似していないと判定した場合(No)、無線端末20(図1の無線端末20bの場合)はS206に進む。この場合、S206で無線端末20は、図1のS105で受信した下りデータを自分以外宛てと判断する。
図6A〜6Bに基づいて、以上で説明した移相参照信号に基づく宛先検出の概念を説明する。いま、ある無線端末20である第1無線端末20宛の移相参照信号が、第1無線端末20によって受信された場合を考える。この場合、無線基地局10が第1無線端末20の識別子に基づいて移相した移相参照信号が、第1無線端末20による宛先検出処理において、第1無線端末20の識別子に基づいて無線基地局10とは反対に移相される。これにより、無線基地局10が移相した参照信号が、無線端末20により元に戻されることになる。したがって、この場合、宛先検出処理において移相後に得られる複数の参照信号は類似するものとなる。上述した具体例に沿えば、図6Aに示されるように、8個の移相参照信号により得られた参照信号は移相が比較的近く、類似するものとなる。したがって、この場合はS204で類似すると判定され(Yes)、S205で自分宛てと判断される。
一方、ある無線端末20である第1無線端末20宛の移相参照信号が、第1無線端末20とは異なる第2無線端末20によって受信された場合を考える。この場合、無線基地局10が第1無線端末20の識別子に基づいて移相した移相参照信号が、第2無線端末20による宛先検出処理において、第2無線端末20の識別子に基づいて無線基地局10とは反対に移相される。このとき、無線基地局10が移相した参照信号は、無線端末20により元に戻らない(偶然に元に戻る場合を除く)。したがって、この場合、宛先検出処理において移相後に得られる複数の参照信号は類似するものとならない。上述した具体例に沿えば、図6Bに示されるように、8個の移相参照信号により得られた参照信号は移相がばらついており、類似するものとならない。したがって、この場合はS204で類似しないと判定され(No)、S206で自分以外宛てと判断される。
ところで、図6Aに示される複数の参照信号が完全に一致しないのは、当該参照信号の元となっている複数の移相参照信号それぞれの間でチャネル特性が必ずしも同一とはならないためである。例えば図4Aで例示したように、8個の移相参照信号はそれぞれ0番目〜7番目のリソースエレメントに配置される。ここで、0、2、4、6番目のリソースエレメントと1、3、5、7番目のリソースエレメントとでは周波数成分が僅かではあるが異なる。また、0〜1番目、2〜3番目、4〜5番目、6〜7番目のリソースエレメントは時間成分がそれぞれ異なる。特に、0〜3番目と4〜7番目との間にはリソースエレメント5個分の時間差が存在する。これらの周波数成分や時間成分の差により、複数の移相参照信号それぞれの間でチャネル特性が必ずしも同一とはならず、そのため図6Aにおいて複数の移相参照信号が完全に一致しないこととなる。
しかしながら、図6Aに例示される0番目〜7番目のリソースエレメントは、周波数成分の差は僅かであり、時間成分の差も1サブフレームに収まる程度である。このように、移相参照信号を配置する複数のリソースエレメントの周波数成分および時間成分の差が十分に小さい場合には、複数の移相参照信号それぞれのチャネル特性の差も十分に小さいものと考えられる。そのため、複数の移相参照信号に基づいて複数の参照信号を生成したとき、それらの参照信号は類似するものとなる(例えば図6A)可能性が高いと考えられる。
特に、前述した電気メーター等のMTCデバイスにおいては、移動しないまたは移動距離が僅かである(準静止状態)ことが想定される。よって、チャネル特性の時間変動は、高速移動する無線端末20等と比較して極めて小さいと考えられる。したがって、図6Aに例示される0番目〜7番目のリソースエレメントは、時間方向で多少の時間差はあるが、特にMTCデバイス等においてはほとんど問題とならないと考えられる。
したがって、図6Aに例示されるように複数の参照信号は完全に一致はしないが、上述したようないくつかの前提に基づけば、これらは十分に類似する可能性が高いと考えられる。したがって、本実施形態における宛先検出の精度は十分に確保されている(誤検出は十分に少ない)ものと考えられる。
図1に戻って、S106で無線端末20は、図5等に基づいて説明したようにして、宛先判定処理を行う。図1の例では、無線端末20aは自分宛てと判定する。一方、無線端末20bは自分以外宛てと判定する。
S106で自分宛てと判定した場合、S107で無線端末20は、S105で受信後にバッファリングしている下りデータ信号を復調・復号する。これにより、無線端末20は下りデータを得ることができる。なお、このときの復調・復号の方式は、図1のS101で通知されたMCSが示すものを用いる。また、復調においては、S202で得られたチャネル推定値を用いて行う。復調・復号処理は従来技術に過ぎないので、ここでは詳細な説明は割愛する。
一方、S106で自分以外宛てと判定した場合、無線端末20は、S105で受信後にバッファリングしている下りデータ信号の復調・復号を行わない。この場合、S105で受信後にバッファリングしているデータを削除(フラッシュ)することとしてもよい。
以上説明した第1実施形態によれば、参照信号を受信側(無線端末20側)の識別子に応じて移相させた移相参照信号を用いることで、受信側が移相参照信号に基づいて送信先(宛先)を検出できるとこ効果を奏する。これにより、前述した参考方式の問題を解決できる。また、第1実施形態によれば、データ信号に制御信号を付随させる必要が無くなるため、制御信号が削減されることによりデータの伝送効率の低下や制御信号領域の欠乏を防げる。さらに、第1実施形態によれば、前述したSPSのような周期的送信に限定されず、任意のタイミングでデータ送信を行うことが可能となる。
[第2実施形態]
第1実施形態は変調方式としてQPSK等の位相変調を用いることとした。これに対し、第2実施形態は位相変調以外の変調方式を用いるものである。
第2実施形態における処理シーケンス等の基本部分は図1、図4、図5等に基づいて説明された第1実施形態と同一である。また、第2実施形態の処理の大部分は、第1実施形態と比較して同一または軽微な変更に留まる。そのため、以下では第2実施形態について第1実施形態と異なる部分を中心に簡単に説明する。
ここでは位相変調以外の変調方式として、一例として、直交振幅変調である16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)を用いる。第2実施形態においては、位相変調以外の変調方式として、直交振幅変調である64QAMや、振幅変調等を用いることもできる。
図7に16QAMをI-Q平面で表現した図を示す。16QAMの変調度は4(=log216)であり、言い換えれば、16QAMは1シンボルで4ビットの情報を伝達することができる変調方式である。言い換えれば、16QAMの各シンボルは4ビット分の情報であり、16種類の状態を取り得る。これらの16種類の状態が、図7に示されるI-Q平面上の16個の信号点で表現されている。16QAMの16個の信号点は、4ビットが取り得る値である0000、0001、0010、0011、0100、0101、0110、0111、1000、1001、1010、1011、1100、1101、1110、1111のそれぞれに対応している。
図7に示される16QAMの16個の信号点は、位相のみならず振幅も異なっている。したがって、第2実施形態において、図1のS104で参照信号から移相参照信号を生成する場合、無線基地局10は無線端末識別子(RNTI)に基づいて参照信号の位相のみならず振幅も変化させる。一方、図5のS201で移相参照信号から参照信号を生成する場合、無線端末20は無線端末識別子(RNTI)に基づいて参照信号の位相のみならず振幅も、無線基地局10が行ったのとは逆に変化させる。
図7に基づいて具体的に説明する。図7において、各点は等間隔に配置されている。ここで、各信号点の平均電力が1になるようにすると、16QAMシンボルが1111の場合等の振幅は1/√5となり、1011の場合等の振幅は1となり、1010の場合等の振幅は3/√5となる。そこで、例えば、ある分割RNTIが1011の場合、無線基地局10は参照信号を移相させた上で振幅を1倍することで移相参照信号を生成する。この場合には、無線端末20は移相参照信号を1倍することで参照信号を得ることができる。また、ある分割RNTIが10の場合、無線基地局10は参照信号を移相させた上で振幅を3/√5倍することで移相参照信号を生成する。この場合には、無線端末20は移相参照信号を√5/3倍することで参照信号を得ることができる。
第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
[第3実施形態]
第1実施形態は変調方式としてQPSK等の位相変調を用いて参照信号から移相参照信号を生成した。これに対し、第3実施形態は参照信号をI-Q平面上で反転させることで移相参照信号を得るものである。
第3実施形態における処理シーケンス等の基本部分は図1、図4、図5等に基づいて説明された第1実施形態と同一である。また、第3実施形態の処理の大部分は、第1実施形態と比較して同一または軽微な変更に留まる。そのため、以下では第3実施形態について第1実施形態と異なる部分を中心に簡単に説明する。
第3実施形態において、図1のS104で参照信号から移相参照信号を生成する場合、無線基地局10は無線端末識別子(RNTI)に基づいて参照信号をI-Q平面上で反転させる。分割RNTIが2ビットの場合を例に説明すると、分割RNTIが00の場合にはI成分とQ成分の極性をいずれも反転させず、01の場合にはQ成分の極性のみを反転させることで移相参照信号を生成する。また、10の場合にはI成分の極性のみを反転させ、11の場合にはI成分とQ成分の極性をいずれも反転させることで移相参照信号を生成する。一方、図2のS201で移相参照信号から参照信号を生成する場合、無線端末20は無線端末識別子(RNTI)に基づいて、基地局が行ったのと同様にして移相参照信号をI-Q平面上で反転させる。これにより、無線基地局10と宛先の無線端末20とで同様の反転が行われるため、宛先の無線端末20において元の参照信号を得ることができる。
第3実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
[各実施形態の無線通信システムのネットワーク構成]
次に図8に基づいて、各実施形態の無線通信システム1のネットワーク構成を説明する。図8に示すように、無線通信システム1は、無線基地局10と、無線端末20とを有する。無線基地局10は、セルC10を形成している。無線端末20はセルC10に存在している。なお、本願においては無線基地局10を「送信局」、無線端末20を「受信局」と称することがあることに注意されたい。
無線基地局10は、有線接続を介してネットワーク装置3と接続されており、ネットワーク装置3は、有線接続を介してネットワーク2に接続されている。無線基地局10は、ネットワーク装置3およびネットワーク2を介して、他の無線基地局とデータや制御情報を送受信可能に設けられている。
無線基地局10は、無線端末20との無線通信機能とデジタル信号処理及び制御機能とを分離して別装置としてもよい。この場合、無線通信機能を備える装置をRRH(Remote Radio Head)、デジタル信号処理及び制御機能を備える装置をBBU(Base Band Unit)と呼ぶ。RRHはBBUから張り出されて設置され、それらの間は光ファイバなどで有線接続されてもよい。また、無線基地局10は、マクロ無線基地局、ピコ無線基地局等の小型無線基地局(マイクロ無線基地局、フェムト無線基地局等を含む)の他、様々な規模の無線基地局であってよい。また、無線基地局10と無線端末20との無線通信を中継する中継局が使用される場合、当該中継局(無線端末20との送受信及びその制御)も本願の無線基地局10に含まれることとしてもよい。
一方、無線端末20は、無線通信で無線基地局10と通信を行う。
無線端末20は、携帯電話機、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ(Personal Computer)、無線通信機能を有する各種装置や機器(センサー装置等)などの無線端末であってよい。また、無線基地局10と無線端末との無線通信を中継する中継局が使用される場合、当該中継局(無線基地局10との送受信及びその制御)も本稿の無線端末20に含まれることとしてもよい。
ネットワーク装置3は、例えば通信部と制御部とを備え、これら各構成部分が、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。ネットワーク装置3は、例えばゲートウェイにより実現される。ネットワーク装置3のハードウェア構成としては、例えば通信部はインタフェース回路、制御部はプロセッサとメモリとで実現される。
なお、無線基地局、無線端末の各構成要素の分散・統合の具体的態様は、第1実施形態の態様に限定されず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することもできる。例えば、メモリを、無線基地局、無線端末の外部装置としてネットワークやケーブル経由で接続するようにしてもよい。
[各実施形態の無線通信システムにおける各装置の機能構成]
次に、図9〜図10に基づいて、各実施形態の無線通信システムにおける各装置の機能構成を説明する。
図9は、無線基地局10の構成を示す機能ブロック図である。図9に示すように、無線基地局10は、送信部11と、受信部12と、制御部13とを備える。これら各構成部分は、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。なお、送信部11と受信部12とをまとめて通信部14と称する。
送信部11は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で送信する。なお、アンテナは送信と受信で共通でもよい。送信部11は、例えば下りのデータチャネルや制御チャネルを介して、下り信号を送信する。下りのデータチャネルは例えば、物理下り共有チャネルPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)を含む。また、下りの制御チャネルは例えば、物理下り制御チャネルPDCCH(Physical Downlink Control Channel)を含む。送信する信号は例えば、接続状態の無線端末20に制御チャネル上で伝送されるL1/L2制御信号や、接続状態の無線端末20にデータチャネル上で伝送されるユーザデータ信号やRRC(Radio Resource Control)制御信号を含む。また、送信する信号は例えば、チャネル推定や復調のために用いられるリファレンス信号を含む。
送信部11が送信する信号の具体例としては、図1で示されている無線基地局10により送信されている各信号が挙げられる。具体的には、送信部11は、図1における下りデータ用パラメータ、移相参照信号、下りデータを送信しうる。送信部11が送信する信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線基地局10が送信するあらゆる信号を含む。
受信部12は、無線端末20から送信されたデータ信号や制御信号を、アンテナを介して第1無線通信で受信する。受信部12は、例えば上りのデータチャネルや制御チャネルを介して、上り信号を受信する。上りのデータチャネルは例えば、物理上り共有チャネルPUSCH(Physical Uplink Shared Channel)を含む。また、上りの制御チャネルは例えば、物理上り制御チャネルPUCCH(Physical Uplink Control Channel)を含む。受信する信号は例えば、接続状態の無線端末20から制御チャネル上で伝送されるL1/L2制御信号や、接続状態の無線端末20からデータチャネル上で伝送されるユーザデータ信号やRRC(Radio Resource Control)制御信号を含む。また、受信する信号は例えば、チャネル推定や復調のために用いられるリファレンス信号を含む。
受信部12が受信する信号は、上記の各実施形態および変形例で無線基地局10が受信するあらゆる信号を含む。
制御部13は、送信するデータや制御情報を送信部11に出力する。制御部13は、受信されるデータや制御情報を受信部12から入力する。制御部13は、有線接続あるいは無線接続を介して、ネットワーク装置3や他の無線基地局からデータや制御情報を取得する。制御部はこれら以外にも送信部11が送信する各種の送信信号や受信部12が受信する各種の受信信号に関連する種々の制御を行う。
制御部13が制御する処理の具体例としては、図1で示されている無線基地局10により実行される各処理が挙げられる。制御部13が制御する処理は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線基地局10が実行するあらゆる処理を含む。
図10は、無線端末20の構成を示す機能ブロック図である。図10に示すように、無線端末20は、送信部21、受信部22と、制御部23とを備える。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。なお、送信部21と受信部22とをまとめて通信部24と称する。
送信部21は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で送信する。なお、アンテナは送信と受信で共通でもよい。送信部21は、例えば上りのデータチャネルや制御チャネルを介して、上り信号を送信する。上りのデータチャネルは例えば、物理上り共有チャネルPUSCH(Physical Uplink Shared Channel)を含む。また、上りの制御チャネルは例えば、物理上り制御チャネルPUCCH(Physical Uplink Control Channel)を含む。送信する信号は例えば、接続する無線基地局10に制御チャネル上で伝送されるL1/L2制御信号や、接続する無線基地局10にデータチャネル上で伝送されるユーザデータ信号やRRC(Radio Resource Control)制御信号を含む。また、送信する信号は例えば、チャネル推定や復調のために用いられるリファレンス信号を含む。
送信部21が送信する信号は、上記の各実施形態および変形例で無線端末20が送信するあらゆる信号を含む。
受信部22は、無線基地局10から送信されたデータ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で受信する。受信部22は、例えば下りのデータチャネルや制御チャネルを介して、下り信号を受信する。下りのデータチャネルは例えば、物理下り共有チャネルPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)を含む。また、下りの制御チャネルは例えば、物理下り制御チャネルPDCCH(Physical Downlink Control Channel)を含む。受信する信号は例えば、接続する無線基地局10から制御チャネル上で伝送されるL1/L2制御信号や、接続する無線基地局10からデータチャネル上で伝送されるユーザデータ信号やRRC(Radio Resource Control)制御信号を含む。また、受信する信号は例えば、チャネル推定や復調のために用いられるリファレンス信号を含む。
受信部22が受信する信号の具体例としては、図1で示されている無線端末20により受信されている各信号が挙げられる。具体的には、受信部22は、図1における下りデータ用パラメータ、移相参照信号、下りデータを受信しうる。受信部22が受信する信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線端末20が受信するあらゆる信号を含む。
制御部23は、送信するデータや制御情報を送信部21に出力する。制御部23は、受信されるデータや制御情報を受信部22から入力する。制御部23は、有線接続あるいは無線接続を介して、ネットワーク装置3や他の無線基地局からデータや制御情報を取得する。制御部はこれら以外にも送信部21が送信する各種の送信信号や受信部22が受信する各種の受信信号に関連する種々の制御を行う。
制御部23が制御する処理の具体例としては、図1および図5で示されている無線端末20により実行される各処理が挙げられる。制御部23が制御する処理は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線端末20が実行するあらゆる処理を含む。
[各実施形態の無線通信システムにおける各装置のハードウェア構成]
図11〜図12に基づいて、各実施形態および各変形例の無線通信システムにおける各装置のハードウェア構成を説明する。
図11は、無線基地局10のハードウェア構成を示す図である。図11に示すように、無線基地局10は、ハードウェアの構成要素として、例えばアンテナ31を備えるRF(Radio Frequency)回路32と、CPU(Central Processing Unit)33と、DSP(Digital Signal Processor)34と、メモリ35と、ネットワークIF(Interface)36とを有する。CPUは、バスを介して各種信号やデータの入出力が可能なように接続されている。メモリ35は、例えばSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、およびフラッシュメモリの少なくともいずれかを含み、プログラムや制御情報やデータを格納する。
図9に示す無線基地局10の機能構成と図11に示す無線基地局10のハードウェア構成との対応を説明する。送信部11および受信部12(あるいは通信部14)は、例えばRF回路32、あるいはアンテナ31およびRF回路32により実現される。制御部13は、例えばCPU33、DSP34、メモリ35、不図示のデジタル電子回路等により実現される。デジタル電子回路としては例えば、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)、LSI(Large Scale Integration)等が挙げられる。
図12は、無線端末20のハードウェア構成を示す図である。図12に示すように、無線端末20は、ハードウェアの構成要素として、例えばアンテナ41を備えるRF回路42と、CPU43と、メモリ44とを有する。さらに、無線端末20は、CPU43に接続されるLCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置を有してもよい。メモリ44は、例えばSDRAM等のRAM、ROM、およびフラッシュメモリの少なくともいずれかを含み、プログラムや制御情報やデータを格納する。
図10に示す無線端末20の機能構成と図12に示す無線端末20のハードウェア構成との対応を説明する。送信部21および受信部22(あるいは通信部24)は、例えばRF回路42、あるいはアンテナ41およびRF回路42により実現される。制御部23は、例えばCPU43、メモリ44、不図示のデジタル電子回路等により実現される。デジタル電子回路としては例えば、例えばASIC、FPGA、LSI等が挙げられる。