JP6251633B2 - 内燃機関 - Google Patents

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Description

本発明は、一部を透明な構造として内部の動きを視認可能とした内燃機関に関する。
従来、特許文献1に示されるように、動弁系やクランクケースを覆うカバーの一部に開口部を設け、この開口部をポリカーボネート製の透明部材で被覆してエンジンの内部の動きを観察する教材用のエンジンとしての内燃機関が開示されている。
従来の構造では、ポリカーボネート製の透明部材を金属製の開口部にボルトで直接取付け、透明部材が覗き窓の役割を果たしている。この構造では、クランク軸や動弁系を観察することができるが、透明部材を開口部にボルトで直接取付けているために、ボルトの締付けによって透明部材が歪んだり、内燃機関の振動がボルトを伝って透明部材に伝達されてしまう等の問題がある。また、ポリカーボネート等の非金属製の材料は、金属材料と比べて許容耐熱温度が低いため、これらの材料を透明部材に用いる場合には、内燃機関の熱の影響を考慮する必要がある。このように、金属製の開口部を非金属製の透明部材で液密に封止することは難しく、内燃機関稼働時の内燃機関の内部の状況を視認するためには改善の余地が残されていた。
特開2004−177619号公報
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内燃機関に用いられる透明部材の歪みを抑制し、該透明部材の許容耐熱温度範囲内で内燃機関に適用することができ、かつシール性が良好で、内燃機関稼働時においても内部の状況を視認することが可能な内燃機関を提供することにある。
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、クランクケースとシリンダブロックとシリンダヘッドとを具備し、前記クランクケースに、前記シリンダブロック、前記シリンダヘッドを順次重ねて一体化させた内燃機関において、前記シリンダブロックは、ピストンを内部で摺動可能に案内するシリンダ部と、該シリンダ部の周方向において前記シリンダ部の外周壁を環状に囲み該外周壁との間でウォータージャケットを形成するシリンダブロック壁部とを備え、該シリンダブロック壁部は、透明な素材で形成され、前記シリンダブロック壁部の前記クランクケース側の端部には第一シール部材が設けられ、前記シリンダブロック壁部の前記シリンダヘッド側の端部には第二シール部材が設けられ、前記シリンダ部および前記シリンダヘッドには、ボルト挿通孔が形成され、前記シリンダブロックは、前記シリンダ部および前記シリンダヘッドの前記ボルト挿通孔に挿通されたボルト部材により前記第一シール部材および前記第二シール部材とともに前記クランクケースと一体にされたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関であって、前記シリンダ部は、前記ボルト挿通孔に挿通されたボルト部材により前記クランクケースと前記シリンダヘッドとに一体に締結され、前記シリンダブロック壁部は、前記クランクケースと前記シリンダヘッドとの間に、前記第一シール部材および前記第二シール部材を介して挟持されたことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の内燃機関であって、前記シリンダブロック壁部は、前記ウォータージャケットを取り囲むウォータージャケット壁部と、該ウォータージャケット壁部の一側に一体に形成されてカムチェーン室を構成するカムチェーン室壁部とを備え、前記第一シール部材は、前記ウォータージャケット壁部および前記カムチェーン室壁部の前記クランクケース側の端面を覆うように一体形状に形成され、前記第二シール部材は、前記ウォータージャケット壁部および前記カムチェーン室壁部の前記シリンダヘッド側の端面を覆うように一体形状に形成されたことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の内燃機関であって、前記シリンダ部の前記クランクケース側の端部は、該端部の外周壁が周方向外方に向って環状に突出した段形状の突出部に形成され、前記ウォータージャケット壁部は、前記第一シール部材と前記クランクケースとの間に前記突出部を介して、前記クランクケースと前記シリンダヘッドとの間に挟持されたことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の内燃機関であって、前記カムチェーン室壁部は、該カムチェーン室壁部の前記クランクケース側の端部が、前記ウォータージャケット壁部の前記クランクケース側の端部よりも前記クランクケース側へ延出して形成されたことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の内燃機関であって、前記内燃機関の側方には車体カバーが配され、該車体カバーは、外部から前記シリンダブロック壁部が視認可能に設けられたことを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、シリンダブロックがシリンダ部と透明な素材製のシリンダブロック壁部とを備え、シリンダヘッドおよびシリンダ部のボルト挿通孔に挿通されたボルト部材により、シリンダブロックがシール部材とともにクランクケースに一体化されているので、シリンダブロック壁部にボルト部材の金属部分が直接作用せず、シリンダブロック壁部の歪を抑制することができ、内燃機関稼働時の内部の状態を容易に視認することが可能となる。
また、シリンダブロック壁部のクランクケース側の端面とシリンダヘッド側の端面にはシール部材が設けられているため、シリンダブロック壁部の歪みを抑制するとともに、シリンダブロック壁部のシール性を良好に保つことができる。
さらに、シリンダブロック壁部では内燃機関の燃焼による熱の影響がウォータージャケットにより軽減されるため、シリンダブロック壁部を透明な素材製として、透明な素材をその許容耐熱温度範囲内で内燃機関に適用することができる。
請求項2に記載の発明によれば、シリンダ部がボルト挿通孔に挿通されたボルト部材によりクランクケースとシリンダヘッドとに一体に締結されたことで、シリンダブロック壁部は、シール部材を介してクランクケースとシリンダヘッドとの間に挟持されるため、シリンダブロック壁部の歪みをさらに抑制することができるとともに、シリンダブロック壁部への内燃機関からの振動の伝達をシール部材で抑制することが可能となる。
請求項3に記載の発明によれば、透明な素材で形成されたシリンダブロック壁部は、ウォータージャケットを取り囲むウォータージャケット壁部と、該ウォータージャケット壁部の一側に一体に形成されてカムチェーン室を構成するカムチェーン室壁部とを備えており、内燃機関稼働時の内燃機関内部のカムチェーンの状況を視認することができる。
また、シール部材がウォータージャケット壁部とカムチェーン室壁部とに亘って一体に形成されているため、個別にシール部材を用いなくともよく、内燃機関の組立性を向上することができる。
請求項4に記載の発明によれば、シリンダ部のクランクケース側端部は、該端部の外周壁が周方向外方に環状に突出した段形状の突出部に形成され、ウォータージャケット壁部は、第一シール部材とクランクケースとの間に突出部を介装しており、クランクケースと第一シール部材とは接触していないため、左右割等の複数に分割されたクランクケースを用いても、クランクケースの組付け時に生じる段差等によるクランクケースからウォータージャケット壁部への歪みの影響を受け難くすることができる。
また、シリンダ部のクランクケースとの当接面が大きくなることから、シリンダ部を安定してクランクケースに支持させることができる。
請求項5に記載の発明によれば、カムチェーン室壁部は、該カムチェーン室壁部のクランクケース側の端部が、ウォータージャケット壁部のクランクケース側の端部よりもクランクケース側へ延出して形成されているため、この延出して形成されたカムチェーン室壁部のクランクケース側の端部をシリンダ部の突出部に突き当てることで、シリンダブロック組立時のシリンダ部に対するシリンダブロック壁部の位置決めを容易に行うことができる。
また、クランクケースからの歪みの影響をシリンダ部の突出部によって受け難くしつつ、カムチェーン室壁部のクランクケース側の端部がクランクケース側に延出して形成されているため、カムチェーン室壁部の視野を大きくし、カムチェーンの状態を視認し易くすることができる。
請求項6に記載の発明によれば、内燃機関の側方に配された車体カバーは、外部からシリンダブロック壁部が視認可能に設けられているため、車両に内燃機関を搭載した状態での内燃機関内部の状況を容易に視認することができる。
本発明に係る内燃機関を搭載した自動二輪車の左側面図である。 図1に示された内燃機関の図1に示された内燃機関Eの縦断面図であり、図2中、クランクケースは左クランクケースカバーを取外した左側面を示している。 図2に示された内燃機関のIII−III線断面展開図である。 図3の内燃機関の右側面図である。シリンダヘッドおよびヘッドカバーは図3のIV−IV線断面を示している。 図2のシリンダブロックの斜視図である。 図5のシリンダブロックのVI矢視の平面図である。 図6のVII−VII線断面図である。
以下、本発明に係る内燃機関の一実施の形態について図1ないし図7に基づいて説明する。
なお、本明細書中および特許請求の範囲内において、前後左右の向きは本実施の形態に係る自動二輪車における直進方向を前方とする通常の基準に従うものとする。
図1は、本発明に係る内燃機関Eを搭載した自動二輪車1の左側面図である。
図1に示されるように、自動二輪車1の車体フレーム2は、車体前部のヘッドパイプ3から後方やや斜め下方に延出した後に屈曲部4aを介して端部が下方へ延出される左右一対のメインフレーム4と、メインフレーム4の屈曲部4aから後方やや斜め上方へと延出するシートレール5と、ヘッドパイプから下方やや斜め後方へ向って延出するダウンフレーム6とを備えている。
ヘッドパイプ3には、ヘッドパイプ3から下方へ伸びるフロントフォーク7が転舵可能に支承されている。フロントフォーク7の下端には前輪8が軸支され、フロントフォーク7の上端には操向ハンドル9が一体に結合されている。
車体フレーム2には、メインフレーム4の下方に、複数の取付けブラケット10に支持された内燃機関Eが配置されている。また、メインフレーム4の屈曲部4aの下部には、後方へ延出するスイングアーム11の前端部がピボット軸12により上下搖動可能に枢支され、スイングアーム11の後端部には、後輪13が軸支されている。内燃機関Eのカウンタ軸64に嵌着される駆動チェーンスプロケット64aと後輪軸13aに嵌着される従動チェーンスプロケット13bとには、無端状の駆動チェーン67が架け渡されている。
内燃機関Eは、水冷式単気筒4ストローク内燃機関であり、クランク軸23を車体幅方向に指向させて自動二輪車1に搭載されている。
内燃機関Eの側方には車体カバー14が配置されており、内燃機関Eの前方にはラジエーター15が配置されている。車体カバー14には、車両側面視においてCの字状に切欠いた切欠き部14aが形成されている。
内燃機関Eの後部上方にはエアクリーナ16が配置され、エアクリーナ16の上部前方には燃料タンク17が配置され、エアクリーナ16の上部後方には乗員用シート18が配置されている。
図2は図1に示された内燃機関Eの縦断面図であり、図2中、クランクケースは左クランクケースカバーを取外した左側面を示している。また、図3は図2に示された内燃機関EのIII−III線断面展開図である。
図2および図3に示されるように、内燃機関Eは、クランクケース20の斜め前上方に、シリンダブロック40、シリンダヘッド50が順次重ねられてボルト部材であるスタッドボルト58により一体に締結され、シリンダヘッド50の上にヘッドカバー72が被せられている。
図3に示されるように、クランクケース20は、左クランクケース20Lと右クランクケース20Rとが合わせられた左右半割形式であり、クランクケース20には、クランク軸23が左右方向に指向してベアリング24を介して回転自在に支承されている。クランクケース20の左右は左クランクケースカバー21と右クランクケースカバー22とに覆われており、左クランクケースカバー21内にはACジェネレータ28が収容され、右クランクケースカバー22内には、多板式摩擦クラッチ68が収容されている。
図2および図3に示されるように、クランクケース20内には、バランサ軸25、変速機60のメイン軸62、カウンタ軸64、シフトドラム69およびシフトフォーク支持軸70が軸方向をクランク軸23と平行となるように設けられている。
図2に示されるように、クランクケース20の上端に形成された円開口(不図示)に、シリンダブロック40に鋳込まれたシリンダスリーブ49の一端部49aが嵌入され、シリンダスリーブ49のシリンダボア49b内にピストン26が往復摺動自在に嵌装されている。
内燃機関Eには、ピストン26の上端面26aとシリンダヘッド50の下部に設けられた燃焼室上壁面51とにより燃焼室52が形成されている。燃焼室52には、シリンダヘッド50に形成された吸気ポート53および排気ポート54が連なり、吸気ポート53および排気ポート54の燃焼室52側の端部には、吸気弁55および排気弁56が開閉自在に設けられているとともに、燃焼室52を臨むように点火栓57が設けられている。
コンロッド27の小端部27aがピストンピン26bによりピストン26に軸支され、コンロッド27の大端部27bがクランクピン23aによりクランク軸23に軸止されることで、ピストン26とクランク軸23は連結され、燃焼室52内の燃焼によってピストン26が摺動し、ピストン26の摺動方向の動きに連動してクランク軸23が回転駆動されるようになっている。
図3に示されるように、クランク軸23は、左軸体23Lと右軸体23Rとをクランクピン23aで連結して構成されている。左軸体23Lの左端部は、ベアリング24よりも左方へ突出し、ACジェネレータ28のアウターロータ28aに連結されている。他方、右軸体23Rの右端部は、ベアリング24よりも右方へ突出し、駆動カムチェーンスプロケット34とプライマリ駆動ギア23bとが嵌合されている。
図2および図3に示されるように、シリンダヘッド50とヘッドカバー72との間には動弁機構31が設けられている。動弁機構31は、前述した吸排気弁55,56と、2本のカム軸32と、該カム軸32の右端部に嵌合された従動カムチェーンスプロケット35とを備えている。
図4は、図3の内燃機関Eの左側面図であり、図4の内、シリンダヘッド50およびヘッドカバー72は図3のIV−IV線断面を示している。
図3および図4に示されるように、カム軸32の従動カムチェーンスプロケット35とクランク軸23の駆動カムチェーンスプロケット34とにカムチェーン36が架け渡され、カムチェーン36の前後にはカムチェーンガイド37とカムチェーンテンショナ38が設けられることでチェーンスプロケット機構33が構成されている。そして、ピストン26の摺動方向の動きにより回転駆動されるクランク軸23の回転動力が、チェーンスプロケット機構33を介してカム軸32に伝達され、カム軸32の回転に連動して吸排気弁55,56がクランク軸23の回転に同期して開閉されるようになっている。
図4に示されるように、右クランクケース20Rおよび右クランクケースカバー22の前部には、ウォーターポンプ29が配されており、ウォーターポンプ29からはラジエーター15(図1参照)へと延びるコネクティングパイプ30が接続されている。
図2および図3に示されるように、クランク軸23の後方には、変速ギア群66が設けられたメイン軸62およびカウンタ軸64を備える変速機60と、図2に示されるように、シフトドラム69やシフトフォーク71等を具備する変速切換え機構61とが配されている。
図3に示されるように、メイン軸62は、ベアリング63を介してクランクケース20に回転自在に支承され、右側のベアリング24より右方へ突出したメイン軸62の右端部にはプライマリ従動ギア62aと一体となった多板式摩擦クラッチ68が嵌着されている。
カウンタ軸64は、ベアリング65を介してクランクケース20に回転自在に支承され、左側のベアリング65より左方へ突出したカウンタ軸64の左端部には駆動チェーンスプロケット64aが嵌着されている。
図5は図2のシリンダブロック40の斜視図であり、図6は図5のシリンダブロック40のVI矢視の平面図であり、図7は図6のVII−VII線断面図である。
図5ないし図7に示されるように、シリンダブロック40は、ピストン26を内部で摺動可能に案内するシリンダ部41と、シリンダ部41の周方向においてシリンダ部41の外周壁41bを環状に囲むシリンダブロック壁部43とを備えている。
シリンダ部41には、シリンダ部41の上面視中央に円筒状のシリンダスリーブ49が、一端部49aをシリンダ部41からクランクケース20側へ突出するように鋳込まれており、シリンダスリーブ49の周方向外方に位置するシリンダ部41の四隅にボルト挿通孔41aが設けられたリブ41cが、突出して形成されている。
図7に示されるように、シリンダ部41のクランクケース20側の端部であるクランクケース側端部41Dは、シリンダ部41の外周壁41bがシリンダ周方向外方に環状に突出して段形状の突出部42に形成されている。
突出部42は、シリンダヘッド50側の端面であるシリンダヘッド側端面42aと、シリンダ部41の外周壁41bの内、所定の間隔を存してシリンダ周方向外方に突出した外周面42bとにより段状に形成されている。突出部42のシリンダヘッド側端面42aは、シリンダ軸線方向Cに直交する面に形成されている。シリンダ部41のクランクケース20との当接面41eは、突出部42により面積が増加し、シリンダ部41が安定してクランクケース20に支持されるようになっている。
シリンダブロック壁部43は、外部からその内部が視認できる透明な素材であるポリカーボネートが材料として用いられている。図5ないし図7に示されるように、シリンダブロック壁部43は、シリンダ部41の外周壁41bを所定の間隔を存して環状に取り囲むウォータージャケット壁部44と、ウォータージャケット壁部44の一側(本実施例では右側)に一体に形成されたカムチェーン室壁部45とを備えている。シリンダ部41の外周壁41bとウォータージャケット壁部44の内周面44cとによりウォータージャケット48が構成されており、図4に示されるように、ウォータージャケット48内の冷却液の状態を外部から視認し、冷却液通路(不図示)内に残された残留エアや冷却水の不足を容易に確認することができるようになっている。
また、カムチェーン室壁部45とウォータージャケット壁部44とによる空間にカムチェーン室39が形成されており、図4に示されるように、カムチェーン室39の内部に配置されたチェーンスプロケット機構33のカムチェーン36およびカムチェーンガイド37の一部が、外部から視認できるようになっている。
シリンダ部41の外周壁41bとウォータージャケット壁部44の内周面44cとによりウォータージャケット48が構成されているので、シリンダ部41からウォータージャケット壁部44への内燃機関Eの燃焼による熱の伝達は、ウォータージャケット48により阻害される。また、カムチェーン室壁部45は、ウォータージャケット壁部44の一側(本実施例では右側)に一体に形成されているので、シリンダ部41からカムチェーン室壁部45への内燃機関Eの燃焼による熱の伝達がさらに阻害されることとなる。
このように、ウォータージャケット壁部44とカムチェーン室壁部45では、ウォータージャケット48により内燃機関Eの燃焼による熱の影響が軽減されるため、このウォータージャケット壁部44とカムチェーン室壁部45とを備えるシリンダブロック壁部43の材料にポリカーボネートを用いることが可能となり、透明な素材であるポリカーボネートをその許容耐熱温度範囲内で内燃機関Eへ適用することができるようになっている。
図7に示されるように、カムチェーン室壁部45は、カムチェーン室壁部45のクランクケース20側の端部であるクランクケース側端部45Dが、シリンダ軸線方向Cにおいて、ウォータージャケット壁部44のクランクケース20側の端部であるクランクケース側端部44Dよりもクランクケース20側へ延出して形成されている。図5および図7に示されるように、この延出して形成されたカムチェーン室壁部45のクランクケース側端部45Dをシリンダ部41の突出部42に突き当てることで、シリンダブロック40組立時のシリンダ部41に対するシリンダブロック壁部43の位置決めを容易に行うことができるようになっている。
図5および図7に示されるように、シリンダブロック壁部43のクランクケース側端部43Dには、シール部材であるゴム製の第一シール部材46が設けられている。第一シール部材46は、ウォータージャケット壁部44およびカムチェーン室壁部45のクランクケース20側の端面であるクランクケース側端面44a,45aと、カムチェーン室壁部45のクランクケース側端部45Dとシリンダ部41の突出部42との突き当て部45cとを覆うように一体形状に形成されている。
シリンダブロック壁部43のシリンダヘッド50側の端部であるシリンダヘッド側端部43Uには、シール部材であるゴム製の第二シール部材47が、ウォータージャケット壁部44およびカムチェーン室壁部45のシリンダヘッド50側の端面であるシリンダヘッド側端面44b,45bを覆うように一体形状に形成されている。
このように、ウォータージャケット壁部44とカムチェーン室壁部45の端面44a,45a,44b,45bを個別のシール部材ではなく、一体化されたシール部材46,47で覆うことで、内燃機関Eの組立性が向上できるようになっている。
図3に示されるように、クランクケース20には、シリンダブロック40のシリンダ部41に形成されたボルト挿通孔41aに対向する位置にねじ穴20aが設けられ、シリンダヘッド50には、シリンダブロック40のシリンダ部41に形成されたボルト挿通孔41aに対向する位置にボルト挿通孔50aが形成されている。
内燃機関へのシリンダブロック40の組付けについて、図3を用いて以下に説明する。
スタッドボルト58の一端部58aを、クランクケース20に設けられたねじ穴20aに螺合させ、スタッドボルトの他端部58b側から、ボルト挿通孔41aにスタッドボルト58を挿通させたシリンダ部41、第一シール部材46、シリンダブロック壁部43、第二シール部材47、ボルト挿通孔50aにスタッドボルト58を挿通させたシリンダヘッド50を順に重ね、シリンダブロック壁部43を構成するカムチェーン室壁部45のクランクケース側端部45Dの突き当て部45c(図5参照)をシリンダ部41の突出部42の一側面(本実施例では右側面)に突き当て、シリンダ部41に対するシリンダブロック壁部43の位置を調整する。次に、シリンダヘッド50からヘッドカバー72側に突出したスタッドボルト58の他端部58bにワッシャ58cを介してナット58dを螺合し、シリンダ部41をクランクケース20とシリンダヘッド50との間で一体に締結させることで、シリンダブロック40は、内燃機関Eへ組付けられる。
前述したシリンダブロック40の組付けにより、ウォータージャケット壁部44は、シリンダ部41の突出部42と第一シール部材46と第二シール部材47とを介してクランクケース20とシリンダヘッド50との間で挟持されるため、ウォータージャケット壁部44はクランクケース20とシリンダヘッド50とには直に接さず、第一シール部材46と第二シール部材47とによって挟まれる状態となり、ウォータージャケット壁部44へ伝達される振動、衝撃、歪み等を第一シール部材46および第二シール部材47にて吸収・抑制することができる。また、カムチェーン室壁部45は、第一シール部材46と第二シール部材47とを介してクランクケース20とシリンダヘッド50との間で挟持され、ウォータージャケット壁部44と同様にカムチェーン室壁部45へ伝達される振動、衝撃、歪み等を第一シール部材46および第二シール部材47にて吸収・抑制することができるようになっている。
前述したように、突出部42は環状に継ぎ目なく形成され、該突出部42をクランクケース20とウォータージャケット壁部44との間に介在させていることから、左右クランクケース20L,20Rの合わせ面に段差が生じていたとしても、その段差に第一シール部材46が接触しないようになっている。また、前述したように、突出部42のシリンダヘッド側端面42aは、シリンダ軸線方向Cに直交する面に形成されており、第一シール部材46は突出部42の全周に亘って均等に接触することとなり、第一シール部材46のシール性を高めるようになっている。
前述したように、シリンダブロック壁部43が透明な素材で形成された内燃機関Eが搭載された自動二輪車1が図1に示されており、該内燃機関Eの側方に配置された車体カバー14には、内燃機関Eの側方において車両側面視でCの字状に切欠いた切欠き部14aが形成され、車両側面視において外部からシリンダブロック壁部43の一部を見ることができるようになっており、自動二輪車1に内燃機関Eを搭載した状態での内燃機関E内部の状況を容易に視認することができるようになっている。
なお、外部からシリンダブロック壁部43を視認可能とは、車両外部からシリンダブロック壁部43の少なくとも一部が見えるという意味であり、本実施例では、前述したように、車両側面視においてシリンダブロック壁部43が見えるようになっている。
以上に述べた、本発明に係る第一の実施の形態においては、以下の効果を奏する。
シリンダ部41と透明な素材製のシリンダブロック壁部43とを備えたシリンダブロック40が、クランクケース20とシリンダヘッド50のボルト挿通孔41aに挿通されたスタッドボルト58により、シール部材46,47を介してクランクケース20とシリンダヘッド50とに挟まれることによって、シリンダブロック40がクランクケース20と一体にされているため、シリンダブロック壁部43の歪みを抑制することができる。
また、シリンダブロック壁部43に、ボルト部材であるスタッドボルト58の金属部分が直接触れることがなく、透明な素材が用いられたシリンダブロック壁部43の強度を維持することができる。
シリンダブロック壁部43のクランクケース側端部43Dとシリンダヘッド側端部43Uにはシール部材46,47が設けられているため、冷却液のような液体に対してもシリンダブロック壁部43のシール性を良好に保つことができ、内燃機関E稼働時の冷却液の状態を容易に視認することが可能となる。
さらに、ウォータージャケット48内部を流れる冷却水により内燃機関Eの燃焼による熱の影響が少ないウォータージャケット壁部44とカムチェーン室壁部45とを備えるシリンダブロック壁部43の材料にポリカーボネートを用いることが可能となり、透明な素材であるポリカーボネートをその許容耐熱温度範囲内で内燃機関Eへ適用することができる。
シリンダブロック壁部43は、第一シール部材46および第二シール部材47を介してクランクケース20とシリンダヘッド50との間に挟持されるため、シリンダブロック壁部43はクランクケース20とシリンダヘッド50とには直に接さず、第一シール部材46と第二シール部材47とによって挟まれる状態となり、シリンダブロック壁部43へ伝達される振動、衝撃、歪み等を第一シール部材46および第二シール部材47にて吸収・抑制することができる。
シリンダブロック壁部43への内燃機関Eからの振動の伝達を第一シール部材46および第二シール部材47で抑制することが可能となり、シリンダブロック壁部43の透明な素材にじん性の低いガラス等の材料を用いることができる。
シリンダブロック壁部43には、該シリンダブロック壁部43と同じ透明な素材で形成されるカムチェーン室壁部45が、シリンダブロック壁部43の右側方に一体に備えられており、内燃機関E稼働時の内燃機関E内部のカムチェーン36の状況を視認することができる。
第一シール部材46および第二シール部材47がシリンダ部41とカムチェーン室壁部45とに亘って一体形状に形成されているため、別個のシール部材を用いる必要がなく、かつ第一シール部材46および第二シール部材47が大きくなるため内燃機関Eの組立性を向上することができる。
シリンダ部41のクランクケース側端部41Dは、周方向外方に環状に突出して段状の突出部42に形成されており、シリンダ部41のクランクケース20との当接面41eが突出部42の分大きくなることから、シリンダ部41を安定してクランクケース20に支持させることができる。
また、ウォータージャケット壁部44は、クランクケース側端部44Dに設けられた第一シール部材46とクランクケース20との間に突出部42をさらに介して挟持されており、左右割に分割されたクランクケース20を用いても、第一シール部材46とクランクケース20とは接触しておらず、クランクケース20の組付け時に生じる段差等によるクランクケース20からウォータージャケット壁部44への歪みの影響を受け難くすることができ、シリンダブロック壁部43の歪みを抑制し、シール性をさらに良好に保つことができる。
カムチェーン室壁部45のクランクケース側端部45Dが、ウォータージャケット壁部44のクランクケース側端部44Dよりもクランクケース20側へ延出して形成されているため、この延出して形成されたカムチェーン室壁部45のクランクケース側端部45Dをシリンダ部41の突出部42に突き当てることで、シリンダブロック40組立時のシリンダ部41に対するシリンダブロック壁部43の位置決めを容易に行うことができ、また、カムチェーン室壁部45の視野を拡大し、内燃機関E内部のカムチェーン36の状況の視認をし易くすることができる。
内燃機関Eの側方に配された車体カバー14が、外部からシリンダブロック壁部43を視認可能に設けられているため、車両に内燃機関Eを搭載した状態での内燃機関E内部の状況を容易に視認することができる。
なお、他の実施の形態として、シリンダブロック壁部43は、シリンダ軸線方向Cにおいて、シリンダ部41と略同等の長さに形成され、第一シール部材46および第二シール部材47を介してクランクケース20とシリンダヘッド50との間に挟持されてもよい。
前述した実施の形態では、透明な素材にポリカーボネートを用いているが、透明な素材は、内部が視認できるのであれば透明体だけでなく半透明体であってもよく、ガラスや他の樹脂材料であるPETを用いてもよい。
以上、本実施の形態について図面を参照して説明したが、実施形態は上記の説明内容に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能である。
E…内燃機関、14…車体カバー、20…クランクケース、26…ピストン、39…カムチェーン室、40…シリンダブロック、41…シリンダ部、41a…ボルト挿通孔、41b…外周壁、41D…クランクケース側端部、42…突出部、43…シリンダブロック壁部、43D…クランクケース側端部、43U…シリンダヘッド側端部44…ウォータージャケット壁部、44a…クランクケース側端面、44b…シリンダヘッド側端面、45…カムチェーン室壁部、45a…クランクケース側端面、45b…シリンダヘッド側端面、46…第一シール部材、47…第二シール部材、48…ウォータージャケット、50…シリンダヘッド、50a…ボルト挿通孔、58…ボルト部材

Claims (6)

  1. クランクケース(20)とシリンダブロック(40)とシリンダヘッド(50)とを具備し、
    前記クランクケース(20)に、前記シリンダブロック(40)、前記シリンダヘッド(50)を順次重ねて一体化させた内燃機関(E)において、
    前記シリンダブロック(40)は、ピストン(26)を内部で摺動可能に案内するシリンダ部(41)と、該シリンダ部(41)の周方向において前記シリンダ部(41)の外周壁(41b)を環状に囲み該外周壁(41b)との間でウォータージャケット(48)を形成するシリンダブロック壁部(43)とを備え、
    該シリンダブロック壁部(43)は、透明な素材で形成され、
    前記シリンダブロック壁部(43)の前記クランクケース側の端部(43D)には第一シール部材(46)が設けられ、
    前記シリンダブロック壁部(43)の前記シリンダヘッド側の端部(43U)には第二シール部材(47)が設けられ、
    前記シリンダ部(41)および前記シリンダヘッド(50)には、ボルト挿通孔(41a,50a)が形成され、
    前記シリンダブロック(40)は、前記シリンダ部(41)および前記シリンダヘッド(50)の前記ボルト挿通孔(41a,50a)に挿通されたボルト部材(58)により第一シール部材(46)および第二シール部材(47)とともに前記クランクケース(20)と一体にされたことを特徴とする内燃機関(E)。
  2. 前記シリンダ部(41)は、前記ボルト挿通孔(41a,50a)に挿通されたボルト部材(58)により前記クランクケース(20)と前記シリンダヘッド(50)とに一体に締結され、
    前記シリンダブロック壁部(43)は、前記クランクケース(20)と前記シリンダヘッド(50)との間に、前記第一シール部材(46)および前記第二シール部材(47)を介して挟持されたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関(E)。
  3. 前記シリンダブロック壁部(43)は、前記ウォータージャケット(48)を取り囲むウォータージャケット壁部(44)と、該ウォータージャケット壁部(44)の一側に一体に形成されてカムチェーン室(39)を構成するカムチェーン室壁部(45)とを備え、
    前記第一シール部材(46)は、前記ウォータージャケット壁部(44)および前記カムチェーン室壁部(45)の前記クランクケース(20)側の端面(44a,45a)を覆うように一体形状に形成され、
    前記第二シール部材(47)は、前記ウォータージャケット壁部(44)および前記カムチェーン室壁部(45)の前記シリンダヘッド(50)側の端面(44b,45b)を覆うように一体形状に形成されたことを特徴とする請求項2に記載の内燃機関(E)。
  4. 前記シリンダ部(41)の前記クランクケース(20)側の端部(41D)は、該端部(41D)の外周壁(41b)がシリンダ周方向外方に向って環状に突出した段状の突出部(42)に形成され、
    前記ウォータージャケット壁部(44)は、前記第一シール部材(46)と前記クランクケース(20)との間に前記突出部(42)を介して、前記クランクケース(20)と前記シリンダヘッド(50)との間に挟持されたことを特徴とする請求項3に記載の内燃機関(E)。
  5. 前記カムチェーン室壁部(45)は、該カムチェーン室壁部(45)の前記クランクケース(20)側の端部(45D)が、前記ウォータージャケット壁部(44)の前記クランクケース(20)側の端部(44D)よりも前記クランクケース(20)側へ延出して形成されたことを特徴とする請求項4に記載の内燃機関(E)。
  6. 前記内燃機関(E)の側方には車体カバー(14)が配され、
    該車体カバー(14)は、外部から前記シリンダブロック壁部(43)が視認可能に設けられたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の内燃機関(E)。
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