最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明の実施の形態に係る光通信モジュールは、受信した光信号の強度に応じた電流を出力し、かつ増倍率の変更が可能な受光素子と、前記受光素子の出力電流に基づく電気信号から比較基準を作成する基準作成部と、前記電気信号のカットオフ周波数が前記受光素子の増倍率に略反比例する領域における前記電気信号の周波数成分を前記比較基準より多く含む比較対象を作成する対象作成部と、前記比較基準の大きさと前記比較対象の大きさとを相対比較する演算部と、前記演算部による比較結果に基づいて、前記受光素子の増倍率を調整する調整部とを備える。
このように、受光素子の増倍率のフィードバック制御を行なう構成により、通常動作時に温度変動が生じても、増倍率を安定させ、ビットエラーレートの増大等の通信品質の劣化を防ぐことができる。そして、PINフォトダイオード等のモニタ用受光素子が不要となり、モニタ用受光素子を用いるための周辺回路および構造が不要となるため、一定レベルの通信品質を維持しながら、低コストで容易な製造が可能となる。また、このような構成を光通信モジュールとして集積化することにより、実現容易性を高めることができる。したがって、電流増幅作用を有する受光素子を備える構成において、低コストで当該受光素子の増倍率を良好に調整することができる。
(2)好ましくは、前記比較基準は、前記電気信号の周波数成分が前記受光素子の増倍率の変化に対して略一定となる領域における前記電気信号の周波数成分、前記電気信号の直流成分、または、前記電気信号のすべての周波数成分、である。
このような構成により、上記3つの成分のうちのいずれかを比較基準として、比較結果として適切な値を算出することができる。
(3)好ましくは、前記調整部は、前記比較結果が所定値になるように前記増倍率を調整し、前記所定値は、前記受光素子の増倍率の目標値に基づいて設定される。
このような構成により、比較結果と所定値との比較による簡易な演算処理で、受光素子の増倍率が目標値になるような逆バイアス電圧の調整を行なうことができる。すなわち、増倍率を、受光素子の温度変化によらず一定値に制御することができる。
(4)好ましくは、前記光通信モジュールは、さらに、前記調整部による前記増倍率の調整を制限する制限部を備える。
このような構成により、たとえば光通信モジュールへの入力光が微小であり、取得部の測定精度に関し一定水準を確保することができない場合でも、逆バイアス電圧が誤った値に設定されることを防ぐことができる。
(5)本発明の実施の形態に係る光通信装置は、他の光通信装置と光信号を送受信するための光通信装置であって、受信した光信号の強度に応じた電流を出力し、かつ増倍率の変更が可能な受光素子と、前記受光素子の出力電流に基づく電気信号から比較基準を作成する基準作成部と、前記電気信号のカットオフ周波数が前記受光素子の増倍率に略反比例する領域における前記電気信号の周波数成分を前記比較基準より多く含む比較対象を作成する対象作成部と、前記比較基準の大きさと前記比較対象の大きさとを相対比較する演算部と、前記演算部による比較結果に基づいて、前記受光素子の増倍率を調整する調整部とを備える。
このように、受光素子の増倍率のフィードバック制御を行なう構成により、通常動作時に温度変動が生じても、増倍率を安定させ、ビットエラーレートの増大等の通信品質の劣化を防ぐことができる。そして、PINフォトダイオード等のモニタ用受光素子が不要となり、モニタ用受光素子を用いるための周辺回路および構造が不要となるため、一定レベルの通信品質を維持しながら、低コストで容易な製造が可能となる。また、このような構成を光通信モジュールとして集積化することにより、実現容易性を高めることができる。したがって、電流増幅作用を有する受光素子を備える構成において、低コストで当該受光素子の増倍率を良好に調整することができる。
(6)本発明の実施の形態に係る光通信方法は、受信した光信号の強度に応じた電流を出力し、かつ増倍率の変更が可能な受光素子を備える光通信モジュールにおける光通信方法であって、前記受光素子の出力電流に基づく電気信号から比較基準を作成するステップと、前記電気信号のカットオフ周波数が前記受光素子の増倍率に略反比例する領域における前記電気信号の周波数成分を前記比較基準より多く含む比較対象を作成するステップと、前記比較基準の大きさと前記比較対象の大きさとを相対比較するステップと、比較した結果に基づいて、前記受光素子の増倍率を調整するステップとを含む。
このように、受光素子の増倍率のフィードバック制御を行なうことにより、通常動作時に温度変動が生じても、増倍率を安定させ、ビットエラーレートの増大等の通信品質の劣化を防ぐことができる。そして、PINフォトダイオード等のモニタ用受光素子が不要となり、モニタ用受光素子を用いるための周辺回路および構造が不要となるため、一定レベルの通信品質を維持しながら、低コストで容易な製造が可能となる。また、このような構成を光通信モジュールとして集積化することにより、実現容易性を高めることができる。したがって、電流増幅作用を有する受光素子を備える構成において、低コストで当該受光素子の増倍率を良好に調整することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムの構成を示す図である。
図1を参照して、PONシステム301は、たとえば10G−EPONであり、ONU202A,202B,202Cと、上位ネットワークに接続された局側装置201と、スプリッタSPとを備える。ONU202A,202B,202Cと局側装置201とは、スプリッタSPおよび光ファイバOPTFを介して接続され、互いに光信号を送受信する。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムにおけるONUの構成を示す図である。
図2を参照して、ONU202は、光通信モジュール101と、PON受信処理部92と、バッファメモリ93と、UN送信処理部94と、UNI(User Network Interface)ポート95と、UN受信処理部96と、バッファメモリ97と、PON送信処理部98と、制御部99とを備える。
光通信モジュール101は、ONU202に対して脱着可能である。光通信モジュール101は、局側装置201から送信される下り光信号を受信し、電気信号に変換して出力する。
PON受信処理部92は、光通信モジュール101から受けた電気信号からフレームを再構成するとともに、フレームの種別に応じて制御部99またはUN送信処理部94にフレームを振り分ける。具体的には、PON受信処理部92は、データフレームをバッファメモリ93経由でUN送信処理部94へ出力し、制御フレームを制御部99へ出力する。
制御部99は、各種制御情報を含む制御フレームを生成し、UN送信処理部94へ出力する。
UN送信処理部94は、PON受信処理部92から受けたデータフレームおよび制御部99から受けた制御フレームをUNIポート95経由で図示しないパーソナルコンピュータ等のユーザ端末へ送信する。
UN受信処理部96は、UNIポート95経由でユーザ端末から受信したデータフレームをバッファメモリ97経由でPON送信処理部98へ出力し、UNIポート95経由でユーザ端末から受信した制御フレームを制御部99へ出力する。
制御部99は、MPCPおよびOAM等、局側装置201およびONU202間のPON回線の制御および管理に関する宅側処理を行なう。すなわち、PON回線に接続されている局側装置201とMPCPメッセージおよびOAMメッセージをやりとりすることによって、アクセス制御等の各種制御を行なう。制御部99は、各種制御情報を含む制御フレームを生成し、PON送信処理部98へ出力する。また、制御部99は、ONU202における各ユニットの各種設定処理を行なう。
PON送信処理部98は、UN受信処理部96から受けたデータフレームおよび制御部99から受けた制御フレームを光通信モジュール101へ出力する。
光通信モジュール101は、PON送信処理部98から受けた電気信号であるデータフレームおよび制御フレームを光信号に変換し、局側装置201へ送信する。
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るONUにおける光通信モジュールの構成を示す図である。
図3を参照して、光通信モジュール101は、バースト送信部151と、受信部152とを含む。バースト送信部151は、プリアンプ86と、出力バッファ回路(変調電流供給回路)87と、バイアス電流供給回路88と、発光回路89とを含む。発光回路89は、発光素子LDと、インダクタL1,L2とを含む。受信部152は、受光素子PDと、TIA(トランスインピーダンスアンプ)81と、LIA(制限アンプ)82と、バイアス制御部83と、出力バッファ85とを含む。
バースト送信部151において、プリアンプ86は、UN受信処理部96からのデータフレームおよび制御部99からの制御フレームである送信データを受けて、当該送信データを増幅して出力する。たとえば、プリアンプ86は、当該送信データを、信号線INP,INNから差動信号として受ける。
出力バッファ回路87は、プリアンプ86から受けた送信データに基づいて、発光回路89に変調電流を供給する。この変調電流は、局側装置201へ送信すべきデータの論理値に応じた大きさの電流である。
発光回路89は、上り光信号を局側装置201へ送信する。発光回路89において、発光素子LDは、固定電圧たとえば電源電圧Vccの供給される電源ノードにインダクタL1を介して接続され、また、バイアス電流供給回路88にインダクタL2を介して接続されている。発光素子LDは、バイアス電流供給回路88から供給されたバイアス電流、および出力バッファ回路87から供給された変調電流に基づいて発光し、かつ発光強度を変更する。
受信部152において、受光素子PDは、たとえばアバランシェフォトダイオードである。受光素子PDは、局側装置201から受信した光信号を電気信号たとえば電流に変換して出力する。
TIA81は、受光素子PDから受けた電流を電圧に変換し、変換した電圧すなわち電気信号をLIA82へ出力する。
LIA82は、TIA81から受けた電圧のレベルを2値化し、受信データとして出力する。
出力バッファ85は、LIA82から受けた受信データを増幅してPON受信処理部92へ出力する。たとえば、出力バッファ85は、当該受信データを、差動信号として信号線OUTP,OUTNから出力する。
バイアス制御部83は、固定電圧たとえば電源電圧Vccの供給される電源ノードに接続され、受光素子PDにバイアス電圧を供給する。バイアス制御部83は、バイアス電圧の調整機能を有する。
また、たとえば、発光素子LDは、アセンブリされた発光モジュール(以下、TOSA:Transmitter Optical Sub−Assemblyとも称する。)に内蔵されている。また、受光素子PDおよびTIA81、ならびにバイアス制御部83の一部は、アセンブリされた受光モジュール(以下、ROSA:Receiver Optical Sub−Assemblyとも称する。)に内蔵されている。
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る光通信モジュールにおけるバイアス制御部の構成を示す図である。
図4を参照して、バイアス制御部83は、DC/DCコンバータ(基準作成部)11と、CPU(演算部および調整部)12と、抵抗14,15と、対象作成部52とを含む。対象作成部52は、振幅検知回路43と、BPF(Band Pass Filter)44とを含む。抵抗14,15の抵抗値は、それぞれRa,Rbである。なお、抵抗14,15は、DC/DCコンバータ11に含まれていてもよい。また、光通信モジュール101における受信部152は、さらに、キャパシタ45,46を含む。
受光素子PDは、DC/DCコンバータ11に接続されたカソードと、TIA81の入力端に接続されたアノードとを有する。抵抗14は、CPU12の出力端およびDC/DCコンバータ11の入力端に接続された第1端と、接地ノードに接続された第2端とを有する。抵抗15は、DC/DCコンバータ11の出力端およびCPU12の入力端に接続された第1端と、接地ノードに接続された第2端とを有する。DC/DCコンバータ11、TIA81およびLIA82に電源電圧Vccが供給されている。
また、キャパシタ45は、TIA81の差動出力の一方に接続された第1端と、LIA82の差動入力の一方に接続された第2端とを有する。キャパシタ46は、TIA81の差動出力の他方に接続された第1端と、LIA82の差動入力の他方に接続された第2端とを有する。
受光素子PDは、局側装置201から光ファイバOPTF経由で受信した光信号Pinの強度に応じた電流IapdをTIA81へ出力する。また、受光素子PDは、逆バイアス電圧Vapdによる増倍率Mの変更が可能である。
キャパシタ45,46は、TIA81およびLIA82間のAC結合用に設けられている。キャパシタ45,46により、TIA81からLIA82への信号の直流成分が遮断される。たとえば、キャパシタ45,46の容量値は0.1マイクロファラッドである。
BPF44は、キャパシタ45,46の第2端に接続され、TIA81からキャパシタ45,46経由で受けた電気信号の周波数成分のうち、所定の周波数帯域外の成分を減衰させる。
振幅検知回路43は、BPF44を通過した電気信号の振幅を検知し、検知した振幅の大きさを示す電圧Vf2をCPU12へ出力する。
ここで、TIA81およびLIA82間の信号ラインから振幅検知回路43までの経路の長さは、当該経路がスタブとして機能する可能性があることから、できるだけ短くすることが好ましい。
CPU12は、内蔵するA/Dコンバータによって電圧Vf2のデジタル値を取得する。このように、CPU12の内蔵部品を利用することにより、光通信モジュール101における部品点数を削減することができる。
DC/DCコンバータ11は、受光素子PDの出力電流Iapdに対応する電流Irssiを出力する。この電流Irssiは、電流Iapdよりも周波数帯域の低い電流である。
電流Irssiは、抵抗15によって電圧Vrssiに変換され、CPU12に供給される。CPU12は、内蔵するA/Dコンバータによって電圧Vrssiのデジタル値を取得する。このように、CPU12の内蔵部品を利用することにより、光通信モジュール101における部品点数を削減することができる。
CPU12は、電圧Vrssiおよび電圧Vf2に基づいて受光素子PDへの逆バイアス電圧Vapdを調整する。
DC/DCコンバータ11は、CPU12による逆バイアス電圧Vapdの調整に従って、受光素子PDに逆バイアス電圧Vapdを供給する。
より詳細には、CPU12は、電圧Vrssiおよび電圧Vf2に基づいて電流Ictrlを生成して出力する。電流Ictrlは、抵抗14によって電圧Vctrlに変換され、DC/DCコンバータ11に供給される。
DC/DCコンバータ11は、CPU12から受けた電圧Vctrlに基づいて、受光素子PDに逆バイアス電圧Vapdを供給する。
具体的には、逆バイアス電圧Vapdは、DC/DCコンバータ11の回路構成で定まる係数K1,K2、および電圧Vctrlを用いて、以下の式(B1)で表される。
Vapd=K1×Vctrl+K2 ・・・(B1)
また、抵抗14の抵抗値をRaとすると、電圧Vctrlは、CPU12の出力電流Ictrlを用いて、以下の式(B2)で表される。
Vctrl=Ictrl×Ra ・・・(B2)
式(B1)および式(B2)より、受光素子PDへの逆バイアス電圧Vapdは、CPU12の出力電流Ictrlによって変更されることが分かる。
たとえば、CPU12は、内蔵するD/Aコンバータによって制御デジタル値から電流Ictrlへの変換を行なう。このように、CPU12の内蔵部品を利用することにより、光通信モジュール101における部品点数を削減することができる。
また、受光素子PDの増倍率をMとし、受光素子PDの受光感度をRS[A/W]とし、受光素子PDの受光強度をPin[W]とすると、受光素子PDの出力電流Iapd[A]は、以下の式(C1)で表される。
Iapd=M×RS×Pin ・・・(C1)
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る光通信モジュールにおける受光素子の電流増倍特性の一例を示す図である。図5において、横軸は逆バイアス電圧Vapdであり、縦軸は出力電流Iapdである。
図5を参照して、受光素子PDへの逆バイアス電圧Vapdを大きくするほど、出力電流Iapdは大きくなる。すなわち、増倍率Mは大きくなる。
より詳細には、受光素子PDの増倍率Mは、逆バイアス電圧Vapdが小さいとき、逆バイアス電圧Vapdをある一定の範囲で変化させてもアバランシェ増倍が発生せず、一定となる。このときの増倍率Mを1とする。
そして、逆バイアス電圧Vapdが、上記範囲に含まれるV1から上昇してV2になると、逆バイアス電圧VapdがV1のときと比べて出力電流Iapdは10倍となる。すなわち、逆バイアス電圧VapdがV2のとき、増倍率Mは10である。
また、受光素子PDの増倍率Mは強い温度特性を有し、図5に示すように、受光素子PDの温度が上昇すると出力電流Iapdが小さくなり、受光素子PDの温度が下降すると出力電流Iapdが大きくなる。すなわち、受光素子PDの温度が上昇すると、逆バイアス電圧Vapdに対する増倍率Mが小さくなり、受光素子PDの温度が下降すると、逆バイアス電圧Vapdに対する増倍率Mが大きくなる。
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る光通信モジュールにおける受光素子への逆バイアス電圧および通信品質の関係の一例を示す図である。図6において、横軸は逆バイアス電圧Vapdであり、縦軸はビットエラーレートである。
図6を参照して、増倍率Mが10となるような逆バイアス電圧Vapdを設定した状態から、逆バイアス電圧Vapdを大きくして増倍率Mを大きくすると、受光素子PDの周波数帯域が低下し、また、ノイズが増大することにより、S/N(Signal to Noise Ratio)比が劣化し、ビットエラーレートが上昇する。
一方、増倍率Mが10となるような逆バイアス電圧Vapdを設定した状態から、逆バイアス電圧Vapdを小さくして増倍率Mを小さくすると、受光素子PDの受光感度が小さくなり、より強度の小さい光信号を受信することが困難となるため、S/N(Signal to Noise Ratio)比が劣化し、ビットエラーレートが上昇する。
このように、増倍率Mには最適値が存在し、たとえば、10前後が最適値である。また、図5で説明したように増倍率Mは温度特性を有することから、受光素子PDの温度に応じて増倍率Mを調整し、最適値を維持する必要がある。
図7は、本発明の第1の実施の形態に係る光通信モジュールにおける受光素子の増倍率とカットオフ周波数との関係の一例を示す図である。
図7において、横軸は受光素子PDの増倍率Mであり、ログスケールである。縦軸はカットオフ周波数、すなわち受光素子PDによって光信号Pinから変換される電気信号のゲインが低周波と比べて所定値たとえば3dB低下する周波数である。G1は、光信号Pinの強度を一定値とした状態における受光素子PDの増倍率に対するカットオフ周波数の測定結果をプロットしたグラフである。G2は、受光素子PDのGB積すなわち増倍率およびカットオフ周波数の積が一定値となる特性を示すグラフである。グラフG2は、一定値として10×4GHz=40GHzのGB積を示している。
図7を参照して、本願発明者は、種々の実験を行なうことにより、光通信モジュール101が受信する光信号Pinのビットエラーレートが良好な値となる増倍率Mの条件下において、GB積が略一定となることを発見した。具体的には、本願発明者は、ビットエラーレートが良好な値となるおおよそ8〜13の増倍率Mの区間において、GB積がおおよそ40GHzで略一定となることを発見した。
この現象を利用して、光通信モジュール101では、増倍率Mが8〜13の間である状態において、受光素子PDの出力電流に基づく電気信号である受光信号のカットオフ周波数を監視し、カットオフ周波数が小さくなった場合には増倍率Mが大きくなったと判断して増倍率Mを減少させ、カットオフ周波数が大きくなった場合には増倍率Mが小さくなったと判断して増倍率Mを増加させる。
具体的には、DC/DCコンバータ11は、比較基準として、受光素子PDの出力電流に基づく電気信号である受光信号の直流成分を作成する、すなわち受光信号から電圧Vrssiを作成する。
対象作成部52は、受光信号のカットオフ周波数が受光素子PDの増倍率Mに略反比例する領域における受光信号の周波数成分を上記比較基準より多く含む比較対象を作成する。すなわち、当該比較対象は、受光信号のカットオフ周波数が受光素子PDの増倍率Mに略反比例する周波数領域を主とするものであり、他の周波数領域の成分を含んでいてもよい。
たとえば、BPF44の通過周波数帯域を、図7において増倍率Mの最適値である10に対応するカットオフ周波数である4GHzに設定する。この場合、振幅検知回路43の出力電圧Vf2は、受光信号における4GHzの周波数成分の大きさを示す。そして、光信号Pinの強度に対する振幅検知回路43の出力電圧Vf2の比が小さくなった場合には逆バイアス電圧Vapdを小さくして増倍率Mを減少させ、光信号Pinの強度に対する出力電圧Vf2の比が大きくなった場合には逆バイアス電圧Vapdを大きくして増倍率Mを増加させる。光通信モジュール101では、たとえば、増倍率Mに依存しない電圧Vrssiを光信号Pinの強度の指標値として監視する。
なお、BPF44の通過周波数帯域は、4GHzから多少前後した値に設定してもよい。また、BPFの通過周波数帯域は、一般に、中心周波数からある程度の幅を持った領域となるが、BPF44では、通過周波数帯域が狭いほど好ましい。
光通信モジュール101におけるバイアス制御部83は、電圧Vrssiおよび電圧Vf2を監視し、監視結果に基づいて、増倍率Mが目標値となるようにCPU12の出力電流Ictrlを調整する。
より詳細には、CPU12は、対象作成部52によって作成された比較対象に対する、DC/DCコンバータ11によって作成された比較基準すなわち受光信号の直流成分の割合を算出する。そして、CPU12は、算出した割合に基づいて、受光素子PDの増倍率Mを調整する。
具体的には、たとえば、CPU12は、電圧Vf2に対する電圧Vrssiの割合を算出し、当該割合が所定値になるように逆バイアス電圧Vapdを調整する。上記所定値は、たとえば、受光素子PDの増倍率Mの目標値に基づいて設定される。
図8は、本発明の第1の実施の形態に係るバイアス制御部におけるDC/DCコンバータの構成を示す図である。
図8を参照して、DC/DCコンバータ11は、差動アンプ21と、コンパレータ22と、PWM制御回路23と、NチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)24と、インダクタ25と、ショットキーダイオード26と、カレントミラー回路27と、抵抗14,28〜30と、キャパシタ31〜33と、フィルタ回路35とを含む。フィルタ回路35は、抵抗15と、キャパシタ34とを含む。
差動アンプ21は、抵抗14の第1端およびCPU12の出力端に接続された非反転入力端子と、反転入力端子と、抵抗28の第1端に接続された出力端子とを有する。キャパシタ31は、抵抗28の第2端に接続された第1端と、接地ノードに接続された第2端とを有する。コンパレータ22は、差動アンプ21の出力端子およびPWM制御回路23の入力端に接続された反転入力端子と、PWM制御回路23の出力端に接続された非反転入力端子と、出力端子とを有する。NチャネルMOSFET24は、コンパレータ22の出力端子に接続されたゲートと、インダクタ25の第1端に接続されたドレインと、接地ノードに接続されたソースとを有する。インダクタ25の第2端が、電源電圧Vccの供給される電源ノードに接続されている。ショットキーダイオード26は、NチャネルMOSFET24のドレインに接続されたアノードと、キャパシタ32の第1端、抵抗29の第1端、キャパシタ33の第1端およびカレントミラー回路27の入力端に接続されたカソードとを有する。抵抗29の第2端、キャパシタ33の第2端および抵抗30の第1端が、差動アンプ21の反転入力端子に接続されている。カレントミラー回路27のミラー電流出力側が抵抗15の第1端、キャパシタ34の第1端およびCPU12の入力端に接続されている。カレントミラー回路27の参照電流出力側が受光素子PDに接続されている。キャパシタ32,34および抵抗14,15,30の第2端が接地ノードに接続されている。
たとえば、インダクタ25のインダクタンスは4.7マイクロヘンリーであり、抵抗29の抵抗値は1メガオームであり、抵抗30の抵抗値は20キロオームであり、抵抗15の抵抗値は2キロオームであり、キャパシタ32〜34の容量値は0.1マイクロファラッドである。
また、ショットキーダイオード26のカソードおよびカレントミラー回路27の入力端の接続ノードの電圧は、受光素子PDへの逆バイアス電圧Vapdに相当する。
キャパシタ33により、逆バイアス電圧Vapdの位相補償がなされ、発振が抑制される。
差動アンプ21は、CPU12の出力電流Ictrlが変換された電圧Vctrlを非反転入力端子において受けるとともに、受光素子PDへの逆バイアス電圧Vapdに基づくフィードバック電圧FBを反転入力端子において受ける。そして、差動アンプ21は、電圧Vctrlおよびフィードバック電圧FBの差に応じた電圧を出力する。このフィードバック電圧FBは、抵抗29および抵抗30の抵抗比により、Vapd/50となる。
抵抗28およびキャパシタ31の直列回路により、差動アンプ21の出力電圧の位相補償がなされ、発振が抑制される。
コンパレータ22は、反転入力端子において受けた差動アンプ21の出力電圧と反転入力端子において受けたPWM制御回路23からのランプ波とを比較し、比較結果に応じて論理ハイレベルまたは論理ローレベルの信号をNチャネルMOSFET24のゲートへ出力する。
PWM制御回路23は、ランプ波をコンパレータ22の非反転入力端子へ出力する。PWM制御回路23は、差動アンプ21の出力電圧に応じてランプ波を調整することにより、コンパレータ22の出力電圧の周波数を調整する。
具体的には、フィードバック電圧FBが電圧Vctrlよりも小さい場合、すなわち逆バイアス電圧Vapdが小さい場合、差動アンプ21は、正電圧を出力する。そして、PWM制御回路23は、この正電圧を受けて、コンパレータ22の出力信号の周波数が大きくなるようにランプ波を調整する。これにより、NチャネルMOSFET24のドレイン電圧が上昇し、逆バイアス電圧Vapdが上昇する。
一方、フィードバック電圧FBが電圧Vctrlよりも大きい場合、すなわち逆バイアス電圧Vapdが大きい場合、差動アンプ21は、負電圧を出力する。そして、PWM制御回路23は、この負電圧を受けて、コンパレータ22の出力信号の周波数が小さくなるようにランプ波を調整する。これにより、NチャネルMOSFET24のドレイン電圧が下降し、逆バイアス電圧Vapdが下降する。
したがって、電圧Vctrlを調整することにより、逆バイアス電圧Vapdを調整することができる。逆バイアス電圧Vapdは、カレントミラー回路27を介して受光素子PDに供給される。
カレントミラー回路27は、受光素子PDと電気的に接続され、受光素子PDの出力電流Iapdを参照電流とし、当該参照電流に対応するミラー電流I2を出力する。
具体的には、カレントミラー回路27は、参照電流I3に対応する電流であって、ミラー比に応じた大きさの電流であるミラー電流I2を出力する。参照電流I3は、受光素子PDの出力電流Iapdに相当する、たとえば10ギガビット/秒の電流信号である。
カレントミラー回路27への入力電流をI1とすると、以下の式が成り立つ。
I1=I2+I3 ・・・(D1)
フィルタ回路35は、カレントミラー回路27から出力されるミラー電流I2の周波数成分のうち、所定の周波数以上の成分を減衰させ、電流IrssiとしてCPU12へ出力する。
具体的には、キャパシタ34および抵抗15により、ミラー電流I2が平均化され、また、平均化されたミラー電流I2が電圧Vrssiに変換されてCPU12へ出力される。キャパシタ34および抵抗15の時定数は、たとえば2[キロ]×0.1[マイクロ]=0.2ミリ秒である。
ここで、CPU12が、電圧Vrssiを受けるA/Dコンバータの出力値を参照する速度はたとえば100Hzである。すなわち、CPU12における電圧Vrssiのサンプリング周期は10ミリ秒である。
すなわち、フィルタ回路35の時定数は、光信号のビットレートの逆数よりも大きく、かつCPU12におけるミラー電流I2すなわち電圧Vrssiのサンプリング周期よりも小さい。
このように、光通信モジュール101では、電流Irssiを生成するフィルタ回路の時定数を、光信号の周期よりも短く、CPU12のサンプリング周期より長く設定する。これにより、出力電流Iapdを平均化して測定を容易かつ適切にしながら、CPU12による電圧Vrssiの測定を光信号の強度変動に追随させることができる。
次に、本発明の第1の実施の形態に係る光通信モジュールにおける受光素子の増倍率の調整処理について図面を用いて説明する。
PONシステム301における各装置およびその構成部品は、コンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートおよびシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを図示しないメモリから読み出して実行する。これら複数の装置およびその構成部品のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置およびその構成部品のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態で流通する。
図9は、本発明の第1の実施の形態に係る光通信モジュールにおける受光素子のバイアス電圧調整方法の手順の一部を示すフローチャートである。図9は、受光素子PDのバイアス電圧調整における、フィードバック制御の目標値の設定方法の一例を示している。
図9を参照して、まず、受光素子PDへの光の強度を一定値とした状態、たとえば光通信モジュール101への光信号の平均強度を一定値とした状態において、CPU12は、受光素子PDの増倍率Mが目標値となるように、出力電流Ictrlを調整し、逆バイアス電圧Vapdを設定する(ステップS1)。
次に、設定した逆バイアス電圧Vapdを受光素子PDに供給している状態において、CPU12は、電圧Vrssiおよび電圧Vf2を測定する(ステップS2)。
次に、CPU12は、電圧Vf2に対する電圧Vrssiの割合の目標値を算出する。具体的には、CPU12は、Vrssi/Vf2を算出する(ステップS3)。
次に、CPU12は、算出した値を、光通信モジュール101の実動作におけるVrssi/Vf2の目標値Aとして設定し、記憶する(ステップS4)。
なお、CPU12は、受光素子PDの増倍率Mが目標値となる状態における電圧Vrssiを測定する構成に限らず、たとえば受光素子PDの増倍率Mが1となる状態における電圧Vrssiを測定し、上記のようにして測定した電圧Vf2に対する、電圧Vrssiに増倍率Mの目標値を乗じた値の割合を目標値Aとする構成であってもよい。ここで、受光素子PDの増倍率が1となる状態は、前述のように、逆バイアス電圧Vapdが小さく、逆バイアス電圧Vapdをある一定の範囲で変化させても受光素子PDにおいてアバランシェ増倍が発生しない状態である。ただし、受光素子PDの増倍率Mが目標値となる状態における電圧Vrssiを用いる構成は、電圧Vf2の測定条件と同じになる点から、後述する逆バイアス電圧Vapdの調整において好ましい。
また、光通信モジュール101を製造する際、目標値Aを、光通信モジュール101ごとに設定してもよいし、複数の光通信モジュール101について目標値Aを算出し、これらの平均値等を代表値として各光通信モジュール101に設定してもよい。
また、増倍率Mの目標値は、10等に固定する方法に限らず、光通信モジュール101ごとに、当該光通信モジュール101が受信する光信号Pinのビットエラーレートが最小になる増倍率Mを目標値としてもよい。
図10は、本発明の第1の実施の形態に係る光通信モジュールにおける受光素子のバイアス電圧調整方法の手順の一部を示すフローチャートである。図10は、実動作において受光素子PDの増倍率Mを目標値に収束させるための、受光素子PDへのバイアス電圧調整方法を示している。
図10を参照して、まず、CPU12は、光通信モジュール101の実動作、たとえば局側装置201から送信される下り光信号を光通信モジュール101が受信している状態において、電圧Vrssiおよび電圧Vf2を測定する。この測定の間隔は、CPU12におけるサンプリング周期に相当する(ステップS11)。
次に、CPU12は、電圧Vf2に対する電圧Vrssiの割合Vrssi/Vf2を算出し、記憶している目標値Aとの比較を行なう(ステップS12)。
CPU12は、Vrssi/Vf2が目標値Aより大きい場合(ステップS12でYES)、受光素子PDの増倍率Mが目標値より大きくなっていると判断し、逆バイアス電圧Vapdが小さくなるように電流Ictrlを調整する。たとえば、CPU12は、電流Ictrlを小さくすることにより、図8に示すNチャネルMOSFET24のスイッチング周波数を小さくして逆バイアス電圧Vapdを小さくする(ステップS13)。
一方、CPU12は、Vrssi/Vf2が目標値Aより小さい場合(ステップS12でNOかつステップS14でYES)、受光素子PDの増倍率Mが目標値より小さくなっていると判断し、逆バイアス電圧Vapdが大きくなるように電流Ictrlを調整する。たとえば、CPU12は、電流Ictrlを大きくすることにより、図8に示すNチャネルMOSFET24のスイッチング周波数を大きくして逆バイアス電圧Vapdを大きくする(ステップS15)。
また、CPU12は、Vrssi/Vf2が目標値Aと等しい場合(ステップS12でNOかつステップS14でNO)、受光素子PDの増倍率Mが目標値になっていると判断し、電流Ictrlを現状の値に維持する。
このように、CPU12は、受光素子PDの増倍率Mが目標値に近づくように、各電圧の測定、測定値を用いた演算および電流Ictrlの調整を繰り返す。
なお、CPU12は、電流Ictrlの制御幅を変えてもよい。具体的には、たとえば、CPU12は、Vrssi/Vf2と目標値Aとの差が大きい場合に電流Ictrlの変更幅を大きくし、Vrssi/Vf2と目標値Aとの差が小さい場合に電流Ictrlの変更幅を小さくする。
また、光通信モジュール101では、上記比較対象に対する上記比較基準の割合であるVrssi/Vf2が算出されるとしたが、これに限定するものではない。たとえば、CPU12が、上記比較基準に対する上記比較対象の割合であるVf2/Vrssiを算出する構成であってもよい。CPU12は、上記比較基準の大きさと上記比較対象の大きさとの相対比較を行い、比較結果に基づいて受光素子PDの増倍率Mを調整する構成であればよい。すなわち、上記比較結果は、割合に限らず、たとえば、比であってもよいし、比率であってもよい。
図11は、本発明の第1の実施の形態に係る光通信モジュールにおける受光素子の増倍率調整方法の手順を示すフローチャートである。
図11を参照して、まず、CPU12は、たとえば局側装置201から送信される下り光信号を光通信モジュール101が受信している状態において、電圧Vrssiを測定することにより、受光素子PDの出力電流Iapdに基づく電気信号である受光信号の直流成分を比較基準として検出する(ステップS21)。
次に、対象作成部52は、電圧Vf2を測定することにより、受光素子PDのGB積が略一定となる周波数成分、すなわち受光信号のカットオフ周波数が増倍率Mに略反比例する領域における受光信号の周波数成分を比較基準より多く含む比較対象を作成する(ステップS22)。
次に、CPU12は、比較対象の大きさと比較基準の大きさとの相対比較を行う、たとえば、上記比較対象に対する上記比較基準の割合であるVrssi/Vf2を算出する(ステップS23)。
次に、CPU12は、比較結果が所定値たとえば目標値Aになるように受光素子PDの増倍率Mを調整する。この所定値は、たとえば増倍率Mの目標値に基づいて設定される(ステップS24)。
図12は、本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムにおける光通信モジュールが受信する下り光信号を示す図である。図12において、横軸は時間であり、縦軸は光信号Pinのレベルである。
図12を参照して、光通信モジュール101の受信する光信号Pinは、たとえば局側装置201において強度変調された連続信号であり、理想的には、図12に示すように一定レベルの2値のデジタル波形を有する。
光信号Pinの論理値が「0」および「1」のときの信号レベルをそれぞれP0およびP1とすると、光信号Pinの振幅は(P1−P0)であり、一定値である。
また、光信号Pinの強度すなわちRSSI(Received Signal Strength Indication)であるPaveは、以下の式で表される。
Pave=(P0+P1)/2
図13は、図12に示す下り光信号に対してFFT(Fast Fourie Transform)演算を行なった結果を示す図である。図13において、横軸は周波数であり、縦軸は光信号Pinのレベルである。
図13を参照して、光信号Pinは、たとえば、PRBS(Pseudo Random Bit Stream)に従う10.3125Gbpsのデータパターンを有し、10.3125GHzのn倍(nは自然数)の周波数においてレベルがゼロとなる。
図14は、本発明の第1の実施の形態に係る光通信モジュールにおける受光信号の伝達特性を示す図である。図14において、横軸は周波数であり、縦軸はゲインである。G1〜G5は、伝達特性を示すグラフであり、グラフG5からグラフG1への順番に増倍率Mが大きい状態となる。G10は、受光素子PDのGB積すなわち増倍率およびカットオフ周波数の積が一定値となる特性を示すグラフである。
図14を参照して、グラフG1〜G4において、増倍率Mが小さい場合はゲインが小さくなる一方で高周波領域まである程度の大きさのゲインが維持され、逆に、増倍率Mが大きい場合はゲインが大きくなる一方で高周波領域においてゲインの低下が大きくなる。
また、グラフG1〜G5において、直流〜低周波領域のゲインは、キャパシタ45,46の影響によって低下しており、この範囲より高周波側において、周波数の大小に依存せずゲインが略一定となる低周波の範囲F1が存在する。
また、グラフG1〜G4において、範囲F1より高周波側に、受光素子PDのGB積が一定値となるラインXと重なる周波数f2が存在する。一方、グラフG5では、増倍率が小さいために受光素子PDのGB積が一定値とならない。
本発明の第1の実施の形態に係る光通信モジュールでは、図14において、受光信号のカットオフ周波数を示す値、具体的には、周波数f2における受光信号の大きさを示す電圧Vf2に対する範囲F1における周波数f1の受光信号の大きさを示す電圧Vrssiの割合に基づいて、受光素子PDの増倍率Mを良好に調整する。
以上のように、光通信モジュール101では、Vrssi/Vf2が一定値となるように逆バイアス電圧Vapdすなわち増倍率Mのフィードバック制御が行なわれる。
しかしながら、CPU12におけるA/Dコンバータの線形性およびオフセット特性を鑑みると、光通信モジュール101への入力光量によっては正しくフィードバック制御ができなくなる恐れがある。
たとえば、光通信モジュール101への入力光が微小である場合、CPU12における上記A/Dコンバータの出力値が微小となり、電圧Vrssiおよび電圧Vf2の測定精度に関し一定水準を確保することが困難となる。
また、光通信モジュール101の動作中に、光ファイバOPTFと光通信モジュール101とを接続する光コネクタが抜かれたとき、あるいは、光通信モジュール101の動作中に光コネクタを着脱したときのように、光通信モジュール101への入力光量について過渡状態であるときも、電圧Vrssiおよび電圧Vf2の測定精度に関し一定水準を確保することが困難となる。
そして、このような要因で測定精度が劣化すると、意図しないフィードバック制御が行なわれて増倍率Mを大幅に上昇させてしまう、すなわち逆バイアス電圧Vapdを大幅に上昇させてしまうことにより、受光素子PDが破損してしまう恐れがある。
そこで、光通信モジュール101では、たとえば、さらに、CPU12による増倍率Mの調整を制限するフィードバック制限部を備える。
たとえば、光通信モジュール101では、増倍率Mが所定値を超えないように制限するフィードバック制限部36を、CPU12あるいは基板上に設ける。たとえば、フィードバック制限部36は、受光素子PDに供給される逆バイアス電圧Vapdを、たとえば受光素子PDに関する設計上の許容範囲に制限する。
より詳細には、たとえば、フィードバック制限部36は、電圧Vrssiが所定の閾値以下である場合、逆バイアス電圧Vapdを所定値に固定する。この所定値としては、たとえば、受光素子PDにとって典型的なバイアス電圧値が設定される。
具体的には、CPU12からDC/DCコンバータ11におけるエラーアンプすなわち
差動アンプ21への電圧Vctrl、すなわち電流Ictrlに上限を設けるソフトウェア的な制限方法が考えられる。たとえば、CPU12は、電圧Vrssiが所定の閾値以下である場合、電流Ictrlを所定値に固定する。この所定値は、たとえば、受光素子PDにとって典型的な大きさの逆バイアス電圧Vapdが得られる値である。
あるいは、DC/DCコンバータ11に逆バイアス電圧Vapdの制限回路を設けるハードウェア的な制限方法が考えられる。
図15は、本発明の第1の実施の形態に係る光通信モジュールにおけるフィードバック制限部の一例を示す図である。
図15を参照して、DC/DCコンバータ11は、図8に示す構成と比べて、さらに、フィードバック制限部36を含む。
フィードバック制限部36は、CPU12および抵抗14の接続ノードと差動アンプ21の非反転入力端子との間に接続されている。フィードバック制限部36は、電圧Vctrlの大きさが所定値を超える場合、電圧Vctrlを当該所定値に制限して差動アンプ21へ出力する。たとえば、この所定値は、受光素子PDに関する設計上の許容範囲に含まれる大きさの逆バイアス電圧Vapd、が得られる値である。
また、上記のような要因で測定精度が劣化すると、意図しないフィードバック制御が行なわれて増倍率Mを下降させてしまう、すなわち逆バイアス電圧Vapdを下降させてしまうことにより、受光素子PDのGB積が一定となる範囲から外れてしまう場合がある。
そこで、光通信モジュール101では、増倍率Mが所定値を下回らないように制限するフィードバック制限部37を、CPU12あるいは基板上に設ける。たとえば、フィードバック制限部37は、受光素子PDに供給される逆バイアス電圧Vapdを、たとえば受光素子PDのGB積が一定となる範囲に制限する。
より詳細には、たとえば、フィードバック制限部37は、電圧Vf2が所定の閾値以上である場合、逆バイアス電圧Vapdを所定値に固定する。この所定値としては、たとえば、受光素子PDのGB積が一定となる範囲の増倍率Mの下限に対応するバイアス電圧値が設定される。
具体的には、CPU12からDC/DCコンバータ11におけるエラーアンプすなわち
差動アンプ21への電圧Vctrl、すなわち電流Ictrlに下限を設けるソフトウェア的な制限方法が考えられる。たとえば、CPU12は、電圧Vf2が所定の閾値以上である場合、電流Ictrlを所定値に固定する。この所定値は、たとえば、受光素子PDのGB積が一定となる範囲の増倍率Mの下限に対応する大きさの逆バイアス電圧Vapdが得られる値である。
あるいは、DC/DCコンバータ11に逆バイアス電圧Vapdの制限回路を設けるハードウェア的な制限方法が考えられる。
すなわち、DC/DCコンバータ11は、図8に示す構成と比べて、さらに、フィードバック制限部37を含む。
図示はしないが、図15に示すフィードバック制限部36と同様に、フィードバック制限部37は、CPU12および抵抗14の接続ノードと差動アンプ21の非反転入力端子との間に接続されている。フィードバック制限部37は、電圧Vctrlの大きさが所定値を下回る場合、電圧Vctrlを当該所定値に制限して差動アンプ21へ出力する。たとえば、この所定値は、受光素子PDのGB積が一定となる範囲の増倍率Mの下限に対応する大きさの逆バイアス電圧Vapd、が得られる値である。
ところで、特許文献1に記載の構成では、APDの他にPINフォトダイオードが必要となり、また、信号光を透過させる基板を設ける必要があるため、製造コストが高くなってしまう。
これに対して、本発明の第1の実施の形態に係る光通信モジュールでは、DC/DCコンバータ11は、受光信号から比較基準を作成する。対象作成部52は、受光素子PDの出力電流に基づく電気信号である受光信号のカットオフ周波数が受光素子PDの増倍率Mに略反比例する領域における受光信号の周波数成分を上記比較基準より多く含む比較対象を作成する。CPU12は、上記比較基準の大きさと上記比較対象の大きさとを相対比較する。そして、CPU12は、比較結果に基づいて、受光素子PDの増倍率Mを調整する。
このように、受光素子PDの増倍率Mのフィードバック制御を行なう構成により、通常動作時に温度変動が生じても、増倍率Mを安定させ、ビットエラーレートの増大等の通信品質の劣化を防ぐことができる。そして、PINフォトダイオード等のモニタ用受光素子が不要となり、モニタ用受光素子を用いるための周辺回路および構造が不要となるため、一定レベルの通信品質を維持しながら、低コストで容易な製造が可能となる。また、このような構成を光通信モジュールとして集積化することにより、実現容易性を高めることができる。
したがって、本発明の第1の実施の形態に係る光通信モジュールでは、電流増幅作用を有する受光素子を備える構成において、低コストで当該受光素子の増倍率を良好に調整することができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る光通信モジュールでは、DC/DCコンバータ11は、比較基準として、受光信号の直流成分を作成する。
このような構成により、受光信号の直流成分を比較基準として、比較結果として適切な値を算出することができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る光通信モジュールでは、CPU12は、当該比較結果が所定値になるように増倍率Mを調整する。当該所定値は、受光素子PDの増倍率Mの目標値に基づいて設定される。
このような構成により、比較結果と所定値との比較による簡易な演算処理で、受光素子PDの増倍率Mが目標値になるような逆バイアス電圧Vapdの調整を行なうことができる。すなわち、増倍率Mを、受光素子PDの温度変化によらず一定値に制御することができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る光通信モジュールでは、フィードバック制限部36,37は、CPU12による増倍率Mの調整を制限する。
このような構成により、たとえば光通信モジュール101への入力光が微小であり、電圧Vrssiおよび電圧Vf2の測定精度に関し一定水準を確保することができない場合でも、逆バイアス電圧Vapdが誤った値に設定されることを防ぐことができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る光通信モジュールにおける光通信方法では、まず、受光素子PDの出力電流に基づく電気信号である受光信号から比較基準を作成する。次に、受光信号のカットオフ周波数が受光素子PDの増倍率Mに略反比例する領域における受光信号の周波数成分を上記比較基準より多く含む比較対象を作成する。次に、上記比較基準の大きさと上記比較対象の大きさとを相対比較する。次に、比較した結果に基づいて、受光素子PDの増倍率Mを調整する。
このように、受光素子PDの増倍率Mのフィードバック制御を行なうことにより、通常動作時に温度変動が生じても、増倍率Mを安定させ、ビットエラーレートの増大等の通信品質の劣化を防ぐことができる。そして、PINフォトダイオード等のモニタ用受光素子が不要となり、モニタ用受光素子を用いるための周辺回路および構造が不要となるため、一定レベルの通信品質を維持しながら、低コストで容易な製造が可能となる。また、このような構成を光通信モジュールとして集積化することにより、実現容易性を高めることができる。
したがって、本発明の第1の実施の形態に係る光通信方法では、電流増幅作用を有する受光素子を備える構成において、低コストで当該受光素子の増倍率を良好に調整することができる。
次に、本発明の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<第2の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係る光通信モジュールと比べて光信号の強度の指標を変更した光通信モジュールに関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る光通信モジュールと同様である。
図16は、本発明の第2の実施の形態に係る光通信モジュールにおけるバイアス制御部の構成を示す図である。
図16を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る光通信モジュール102における受信部152は、本発明の第1の実施の形態に係る光通信モジュール101と比べて、さらに、基準作成部51を含む。基準作成部51は、振幅検知回路41と、BPF42とを含む。
光通信モジュール102は、光通信モジュール101と比べて、バイアス制御部83の代わりにバイアス制御部73を備える。バイアス制御部73は、バイアス制御部83と比べて、電圧Vrssiを生成せず、電圧Vrssiを生成するための、抵抗15、ならびにDC/DCコンバータ11におけるカレントミラー回路27およびフィルタ回路35等を含まない。
基準作成部51は、受光信号の周波数成分が受光素子PDの増倍率Mの変化に対して略一定となる領域における受光信号の周波数成分を比較基準として作成する。
より詳細には、基準作成部51において、BPF42は、キャパシタ45,46の第2端に接続され、TIA81からキャパシタ45,46経由で受けた電気信号の周波数成分のうち、所定の周波数帯域外の成分を減衰させる。
振幅検知回路41は、BPF42を通過した電気信号の振幅を検知し、検知した振幅の大きさを示す電圧Vf1をCPU12へ出力する。
ここで、TIA81およびLIA82間の信号ラインから振幅検知回路43までの経路の長さは、当該経路がスタブとして機能する可能性があることから、できるだけ短くすることが好ましい。
CPU12は、内蔵するA/Dコンバータによって電圧Vf1のデジタル値を取得する。このように、CPU12の内蔵部品を利用することにより、光通信モジュール102における部品点数を削減することができる。
光通信モジュール102では、電圧Vrssiの代わりに、電圧Vf1を光信号Pinの強度の指標値として監視する。
具体的には、BPF42の通過周波数帯域を、受光素子PDの出力電流に基づく電気信号である受光信号が増倍率Mの変化に対して略一定となる低周波たとえば100MHzに設定し、受光信号における100MHzの周波数成分の大きさを示す振幅検知回路41の出力電圧Vf1を、光信号Pinの強度の指標値とする。
なお、BPF42の通過周波数帯域は、BPF42から受光信号が増倍率Mの変化に対して略一定となる周波数から多少前後した値を設定してもよい。
また、BPF42の通過周波数帯域は、CPU12への出力信号の振幅が増倍率Mの変化に対して略一定となればよく、たとえばBPF42の代わりにLPFを用いてもよい。
CPU12は、電圧Vf2に対する電圧Vf1の割合が所定値になるように逆バイアス電圧Vapdを調整する。上記所定値は、受光素子PDの増倍率Mの目標値に基づいて設定される。
図17は、本発明の第2の実施の形態に係る光通信モジュールにおける受光素子のバイアス電圧調整方法の手順の一部を示すフローチャートである。図17は、受光素子PDのバイアス電圧調整における、フィードバック制御の目標値の設定方法の一例を示している。
図17を参照して、まず、受光素子PDへの光の強度を一定値とした状態、たとえば光通信モジュール102への光信号の平均強度を一定値とした状態において、CPU12は、受光素子PDの増倍率Mが目標値となるように、出力電流Ictrlを調整し、逆バイアス電圧Vapdを設定する(ステップS31)。
次に、設定した逆バイアス電圧Vapdを受光素子PDに供給している状態において、CPU12は、電圧Vf1および電圧Vf2を測定する(ステップS32)。
次に、CPU12は、電圧Vf2に対する電圧Vf1の割合の目標値を算出する。具体的には、CPU12は、Vf1/Vf2を算出する(ステップS33)。
次に、CPU12は、算出した値を、光通信モジュール102の実動作におけるVf1/Vf2の目標値Bとして設定し、記憶する(ステップS34)。
なお、CPU12は、受光素子PDの増倍率Mが目標値となる状態における電圧Vf1を測定する構成に限らず、たとえば受光素子PDの増倍率Mが1となる状態における電圧Vf1を測定し、上記のようにして測定した電圧Vf2に対する、電圧Vf1に増倍率Mの目標値を乗じた値の割合を目標値Bとする構成であってもよい。ただし、受光素子PDの増倍率Mが目標値となる状態における電圧Vf1を用いる構成は、電圧Vf2の測定条件と同じになる点から、後述する逆バイアス電圧Vapdの調整において好ましい。
また、光通信モジュール102を製造する際、目標値Bを、光通信モジュール102ごとに設定してもよいし、複数の光通信モジュール102について目標値Bを算出し、これらの平均値等を代表値として各光通信モジュール102に設定してもよい。
また、増倍率Mの目標値は、10等に固定する方法に限らず、光通信モジュール102ごとに、当該光通信モジュール102が受信する光信号Pinのビットエラーレートが最小になる増倍率Mを目標値としてもよい。
図18は、本発明の第2の実施の形態に係る光通信モジュールにおける受光素子のバイアス電圧調整方法の手順の一部を示すフローチャートである。図18は、実動作において受光素子PDの増倍率Mを目標値に収束させるための、受光素子PDへのバイアス電圧調整方法を示している。
図18を参照して、まず、CPU12は、光通信モジュール102の実動作、たとえば局側装置201から送信される下り光信号を光通信モジュール102が受信している状態において、電圧Vf1および電圧Vf2を測定する。この測定の間隔は、CPU12におけるサンプリング周期に相当する(ステップS41)。
次に、CPU12は、電圧Vf2に対する電圧Vf1の割合Vf1/Vf2を算出し、記憶している目標値Bとの比較を行なう(ステップS42)。
CPU12は、Vf1/Vf2が目標値Bより大きい場合(ステップS42でYES)、受光素子PDの増倍率Mが目標値より大きくなっていると判断し、逆バイアス電圧Vapdが小さくなるように電流Ictrlを調整する。たとえば、CPU12は、電流Ictrlを小さくすることにより、図8に示すNチャネルMOSFET24のスイッチング周波数を小さくして逆バイアス電圧Vapdを小さくする(ステップS43)。
一方、CPU12は、Vf1/Vf2が目標値Bより小さい場合(ステップS42でNOかつステップS44でYES)、受光素子PDの増倍率Mが目標値より小さくなっていると判断し、逆バイアス電圧Vapdが大きくなるように電流Ictrlを調整する。たとえば、CPU12は、電流Ictrlを大きくすることにより、図8に示すNチャネルMOSFET24のスイッチング周波数を大きくして逆バイアス電圧Vapdを大きくする(ステップS45)。
また、CPU12は、Vf1/Vf2が目標値Bと等しい場合(ステップS42でNOかつステップS44でNO)、受光素子PDの増倍率Mが目標値になっていると判断し、電流Ictrlを現状の値に維持する。
このように、CPU12は、受光素子PDの増倍率Mが目標値に近づくように、各電圧の測定、測定値を用いた演算および電流Ictrlの調整を繰り返す。
なお、CPU12は、電流Ictrlの制御幅を変えてもよい。具体的には、たとえば、CPU12は、Vf1/Vf2と目標値Bとの差が大きい場合に電流Ictrlの変更幅を大きくし、Vf1/Vf2と目標値Bとの差が小さい場合に電流Ictrlの変更幅を小さくする。
また、受光信号における一部の周波数成分が比較基準として作成される構成に限らず、受光信号のすべての周波数成分が比較基準として作成される構成であってもよい。
図19は、本発明の第2の実施の形態に係る光通信モジュールの変形例におけるバイアス制御部の構成を示す図である。
図19を参照して、光通信モジュール102の変形例における受信部152は、図16に示す構成と比べて、基準作成部51および対象作成部52の代わりにFFT処理部(基準作成部および対象作成部)53を含む。
FFT処理部53は、TIA81からキャパシタ45,46経由で受けた電気信号に対してFFT演算を行なうことにより、当該電気信号の周波数スペクトラムを取得し、当該周波数スペクトラムからたとえば当該電気信号の4GHzにおける周波数成分の大きさを測定し、測定結果を示す電圧Vf2をCPU12へ出力する。また、FFT処理部53は、上記周波数スペクトラムからたとえば上記電気信号の100MHzにおける周波数成分の大きさを測定し、測定結果を示す電圧Vf1をCPU12へ出力する。
なお、FFT処理部53がTIA81からの電気信号の100MHzにおける周波数成分を光信号Pinの強度の指標値として監視する構成に限らず、上記周波数スペクトラムから当該電気信号のすべての周波数成分の大きさを測定して上記指標値としてもよいし、パーセバルの定理に従い、TIA81からの電気信号のレベルを時間領域で積分処理する等により、時間領域において当該電気信号のすべての周波数成分の大きさを測定して上記指標値としてもよい。
また、この変形例は、本発明の第1の実施の形態に係る光通信モジュールに適用することも可能である。この場合、FFT処理部53が電圧Vf1を出力する代わりに、電圧Vrssiが用いられる。
以上のように、本発明の第2の実施の形態に係る光通信モジュールでは、基準作成部51は、受光信号の周波数成分が受光素子PDの増倍率Mの変化に対して略一定となる領域における受光信号の周波数成分を比較基準として作成する。あるいは、FFT処理部53は、受光信号のすべての周波数成分を比較基準として作成する。
このような構成により、上記2つの成分のうちのいずれかを比較基準として、比較結果として適切な値を算出することができる。
その他の構成および動作は第1の実施の形態に係る光通信モジュールと同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
なお、上記各実施の形態における図4および図16において、BPF42およびBPF44の少なくともいずれか一方が、キャパシタ45,46の第1端に接続され、TIA81からキャパシタ45,46を経由せずに受けた電気信号の周波数成分のうち、所定の周波数帯域外の成分を減衰させる構成であってもよい。また、第2の実施の形態における図19において、FFT処理部53が、キャパシタ45,46の第1端に接続され、TIA81からキャパシタ45,46を経由せずに受けた電気信号に対してFFT演算を行なう構成であってもよい。
また、LIA82は、入力信号の電圧レベルが低い場合には電圧レベルを制限することなく出力することから、光通信モジュール101または102においてTIA81の出力電圧レベルが低い場合、BPF42およびBPF44の少なくともいずれか一方が、LIA82の出力端に接続され、LIA82から受けた電気信号の周波数成分のうち、所定の周波数帯域外の成分を減衰させる構成であってもよい。
また、BPF42およびBPF44の少なくともいずれか一方が、TIA81またはLIA82からの差動信号のいずれか一方の信号のみを受ける構成であってもよい。
また、BPF42およびBPF44の少なくともいずれか一方が、通過周波数帯域を設定変更可能な構成であってもよい。これにより、GB積の異なる受光素子を用いる場合でも、BPFの交換が不要となる。
また、上記各実施の形態では、光通信モジュール101を備えるONU202を例示したが、本発明は、光通信装置に広く適用可能である。また、本発明は、連続的な信号を受信する光通信装置に用いると好適である。特に、製造の際は同じ仕様に従って多数製造され、実使用の際は設置場所の環境に応じて個々に受光素子の増倍率が異なることとなる、PONシステムにおける宅側装置に用いるとより効果的である。
また、本発明は、バースト信号を受信する通信装置に用いることも可能である。この場合、たとえば、CPU12は、バースト信号の受信期間において電圧Vf2等による増倍率Mのフィードバック制御を有効とし、当該受信期間以外において当該フィードバック制御を無効とする。
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
受信した光信号の強度に応じた電流を出力し、かつ増倍率の変更が可能な受光素子と、
前記受光素子の出力電流に基づく電気信号から比較基準を作成する基準作成部と、
前記電気信号のカットオフ周波数が前記受光素子の増倍率に略反比例する領域における前記電気信号の周波数成分を前記比較基準より多く含む比較対象を作成する対象作成部と、
前記比較基準の大きさと前記比較対象の大きさとを相対比較する演算部と、
前記演算部による比較結果に基づいて、前記受光素子の増倍率を調整する調整部とを備え、
前記受光素子はアバランシェフォトダイオードであり、
PONシステムにおいて用いられる、光通信モジュール。
[付記2]
他の光通信装置と光信号を送受信するための光通信装置であって、
受信した光信号の強度に応じた電流を出力し、かつ増倍率の変更が可能な受光素子と、
前記受光素子の出力電流に基づく電気信号から比較基準を作成する基準作成部と、
前記電気信号のカットオフ周波数が前記受光素子の増倍率に略反比例する領域における前記電気信号の周波数成分を前記比較基準より多く含む比較対象を作成する対象作成部と、
前記比較基準の大きさと前記比較対象の大きさとを相対比較する演算部と、
前記演算部による比較結果に基づいて、前記受光素子の増倍率を調整する調整部とを備え、
前記受光素子はアバランシェフォトダイオードであり、
PONシステムにおいて用いられる、光通信装置。
[付記3]
受信した光信号の強度に応じた電流を出力し、かつ増倍率の変更が可能な受光素子を備える光通信モジュールにおける光通信方法であって、
前記受光素子の出力電流に基づく電気信号から比較基準を作成するステップと、
前記電気信号のカットオフ周波数が前記受光素子の増倍率に略反比例する領域における前記電気信号の周波数成分を前記比較基準より多く含む比較対象を作成するステップと、
前記比較基準の大きさと前記比較対象の大きさとを相対比較するステップと、
比較した結果に基づいて、前記受光素子の増倍率を調整するステップとを含み、
前記受光素子はアバランシェフォトダイオードであり、
PONシステムにおいて用いられる、光通信方法。