JP6248395B2 - Iii族窒化物複合基板およびその製造方法、積層iii族窒化物複合基板、ならびにiii族窒化物半導体デバイスおよびその製造方法 - Google Patents

Iii族窒化物複合基板およびその製造方法、積層iii族窒化物複合基板、ならびにiii族窒化物半導体デバイスおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、III族窒化物複合基板およびその製造方法、積層III族窒化物複合基板、ならびにIII族窒化物半導体デバイスおよびその製造方法に関する。
GaNなどのIII族窒化物は、優れた半導体特性を有していることから、半導体デバイスに好適に用いられている。また、GaNなどのIII族窒化物は、半導体デバイスの種類別、たとえば、発光デバイス、電子デバイスにおいて、Si、GaAs、SiCなどとは異なる良好な材料特性を有するため、種々のデバイスに用いることができる。
たとえば、特開2009−126722号公報(特許文献1)は、半導体デバイス用基板として、直径が25mm以上160mm以上で厚さが100μm以上1000μm以下の自立III族窒化物基板、具体的な実施例として直径が100mmで厚さが400μmの自立GaN基板を開示する。
また、特開2008−010766号公報(特許文献2)は、半導体デバイスを製造するための基板として、GaNと化学組成の異なる異種基板と、異種基板に貼り合わされている0.1μm以上100μm以下の厚さのGaN薄膜と、を含むGaN薄膜貼り合わせ基板、具体的な実施例としてサファイア基板と厚さが0.1μmまたは100μmのGaN薄膜とが貼り合わされている直径が50.8mmのGaN薄膜貼り合わせ基板を開示する。
また、特開2010−182936号公報(特許文献3)は、半導体デバイス用基板として、支持基板と、窒化物半導体層と、支持基板と窒化物半導体層との間に設けられた接合層とを備える複合基板、具体的な実施例としてサファイア基板とGaN層とが両者間に圧着により形成される接合層で接合されたGaN層の厚さが5μm〜220μmで直径が50.8mmの複合基板を開示する。
特開2009−126722号公報 特開2008−010766号公報 特開2010−182936号公報
特開2009−126722号公報(特許公報1)に開示される自立III族窒化物基板は、製造コストが高いため非常に高価であり、また、割れやすいため口径の拡大化、厚さの低減化が困難という問題があった。さらに、半導体デバイス形成の際に自立III族窒化物基板の厚さを低減する必要があり、自立III族窒化物基板の裏面(デバイス機能を発現させるIII族窒化物層を形成する主面と反対側の主面をいう。以下同じ。)の研削などの加工工程により製造コストが増加するという問題があった。
特開2008−010766号公報(特許公報2)に開示されるGaN薄膜の厚さが0.1μmであるGaN薄膜貼り合わせ基板は、GaN薄膜の形成のためにイオン注入を行なっているが、イオン注入により、GaN薄膜の結晶の品質が低下するという問題があった。また、形成する半導体デバイスの特性を高くする観点からGaN薄膜の厚さを10μm以上にすることが好ましいが、GaN薄膜の厚さを大きくすると、イオン注入されるイオンの主面からの深さのバラツキが大きくなり、得られるGaN薄膜複合基板のGaN薄膜の厚さのバラツキが大きくなるという問題があった。
また、特開2008−010766号公報(特許文献2)に開示されるGaN薄膜複合基板および特開2010−182936号公報(特許文献3)に開示される複合基板は、いずれも支持基板上にIII族窒化物の膜または層が接合された複合基板であるため、特開2009−126722号公報(特許文献1)に開示された自立III族窒化物基板に比べて、III族窒化物半導体デバイスを製造するために基板上にIII族窒化物層を成長させる際に基板の主面上における温度のバラツキが大きくなり易いため、基板の直径を大きくすると製造される半導体デバイスの歩留を高くすることが困難という問題があった。
本発明は、上記の問題を解決して、半導体デバイスの製造の際のコストを低減し、高い歩留でIII族窒化物半導体デバイスの製造が可能な、コストが低く大口径でIII族窒化物膜が厚く、III族窒化物層の成長の際に主面上における温度の分布(すなわち、バラツキ、以下同じ。)が小さいIII族窒化物複合基板およびその製造方法、積層III族窒化物複合基板、ならびにIII族窒化物半導体デバイスおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、ある局面に従えば、支持基板と、厚さが10μm以上250μm以下のIII族窒化物膜と、が貼り合わされた直径が75mm以上のIII族窒化物複合基板であって、支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値mSが0.3nm以上20nm以下であり、支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSが0.005以上0.4以下であるIII族窒化物複合基板であり、III族窒化物膜側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値m III-N が0.15nm以上3nm以下であり、III族窒化物膜側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値m III-N に対する標準偏差s III-N の比s III-N /m III-N が0.008以上0.5以下である。
本発明のかかる局面に従うIII族窒化物複合基板において、直径Dに対する支持基板側の主面の反りWの比W/Dを−7×10-4以上8×10-4以下とすることができる。また、支持基板の熱膨張係数αSに対するIII族窒化物膜の熱膨張係数αIII-Nの比αIII-N/αSを0.75以上1.25以下とし、支持基板の厚さtSに対するIII族窒化物膜の厚さtIII-Nの比tIII-N/tSを0.02以上1以下とすることができる。また、支持基板の熱伝導率λSを3W・m-1・K-1以上280W・m-1・K-1以下とすることができる。また、支持基板のヤング率ESを150GPa以上500GPa以下とすることができる。また、直径を100mm以上とすることができる。さらに、直径を125mm以上300mm以下とすることができる。
本発明は、別の局面に従えば、上記局面に従うIII族窒化物複合基板と、III族窒化物複合基板のIII族窒化物膜側の主面上に配置されている少なくとも1層のIII族窒化物層と、を含む積層III族窒化物複合基板である。
本発明は、さらに別の局面に従えば、上記局面に従うIII族窒化物複合基板中のIII族窒化物膜と、III族窒化物膜上に配置されている少なくとも1層のIII族窒化物層と、を含むIII族窒化物半導体デバイスである。
本発明は、さらに別の局面に従えば、上記局面に従うIII族窒化物複合基板の製造方法であって、支持基板と、III族窒化物膜ドナー基板と、を貼り合わせることにより、直径が75mm以上の接合基板を形成する工程と、接合基板のIII族窒化物膜ドナー基板の貼り合わせ主面から内部に所定の距離に位置する面でIII族窒化物膜ドナー基板を切断することにより、III族窒化物複合基板を形成する工程と、上記工程のいずれかひとつの工程の前、途中または後に、III族窒化物複合基板の支持基板側の主面を研磨することにより支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さを調整する工程と、を含むIII族窒化物複合基板の製造方法である。
本発明は、さらに別の局面に従えば、上記局面に従うIII族窒化物複合基板の製造方法であって、支持基板と、III族窒化物膜ドナー基板と、を貼り合わせることにより、直径が75mm以上の接合基板を形成する工程と、接合基板のIII族窒化物膜ドナー基板の貼り合わせ主面と反対側の主面から研削、研磨およびエッチングの少なくともいずれかを行なうことにより、III族窒化物複合基板を形成する工程と、上記工程のいずれかひとつの工程の前、途中または後に、III族窒化物複合基板の支持基板側の主面を研磨することにより支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さを調整する工程と、を含むIII族窒化物複合基板の製造方法である。
本発明は、さらに別の局面に従えば、上記局面に従うIII族窒化物複合基板を準備する工程と、III族窒化物複合基板のIII族窒化物膜側の主面上に、少なくとも1層のIII族窒化物層を成長させる工程と、を含むIII族窒化物半導体デバイスの製造方法である。
本発明のかかる局面に従うIII族窒化物半導体デバイスの製造方法は、III族窒化物層を成長させる工程の後に、III族窒化物複合基板から支持基板を除去する工程をさらに含むことができる。さらに、III族窒化物層を成長させる工程の後、支持基板を除去する工程の前に、III族窒化物層上にデバイス支持基板を貼り合わせる工程をさらに含むことができる。
本発明によれば、半導体デバイスの製造の際のコストを低減し、高い歩留でIII族窒化物半導体デバイスの製造が可能な、コストが低く大口径でIII族窒化物膜が厚く、III族窒化物層の成長の際に主面上における温度の分布が小さいIII族窒化物複合基板およびその製造方法、積層III族窒化物複合基板、ならびにIII族窒化物半導体デバイスおよびその製造方法を提供することができる。
本発明にかかるIII族窒化物複合基板のある例を示す概略断面図である。 III族窒化物複合基板における物性値の測定点を示す概略平面図である。 本発明にかかる積層III族窒化物複合基板のある例を示す概略断面図である。 本発明にかかるIII族窒化物半導体デバイスのある例を示す概略断面図である。 本発明にかかるIII族窒化物半導体デバイスの別の例を示す概略断面図である。 本発明にかかるIII族窒化物半導体デバイスのさらに別の例を示す概略断面図である。 本発明にかかるIII族窒化物複合基板の製造方法のある例を示す概略断面図である。 本発明にかかるIII族窒化物複合基板の製造方法の別の例を示す概略断面図である。 本発明にかかるIII族窒化物複合基板の製造方法のさらに別の例を示す概略断面図である。 本発明にかかるIII族窒化物半導体デバイスの製造方法のある例を示す概略断面図である。 イオン注入法を用いるIII族窒化物複合基板の製造方法のある例を示す概略断面図である。
[実施形態1:III族窒化物複合基板]
図1を参照して、本発明の一実施形態であるIII族窒化物複合基板1は、支持基板11と、厚さが10μm以上250μm以下のIII族窒化物膜13と、が貼り合わされた直径が75mm以上のIII族窒化物複合基板1であって、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSが0.3nm以上20nm以下であり、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSが0.005以上0.4以下である。
本実施形態のIII族窒化物複合基板1は、III族窒化物半導体デバイスを製造するためのIII族窒化物層の成長の際に主面上における温度の分布(すなわちバラツキ)が小さいため、結晶品質の高いIII族窒化物層を成長させることができ、このため高い歩留で高品質のIII族窒化物半導体デバイスを製造することができる。以下に、より詳しく説明する。
図1および図3を参照して、本実施形態のIII族窒化物複合基板1は、支持基板11上にIII族窒化物膜13が貼り合わされた構造を有しており、III族窒化物半導体デバイスを製造する際に、昇温装置を備えるサセプタ(図示せず)の主面にIII族窒化物複合基板1の裏面側に相当する支持基板11側の主面11nが対向するように配置して、III族窒化物複合基板1の表(おもて)面側に相当するIII族窒化物膜13側の主面13m上に少なくとも1層のIII族窒化物層20を成長させる。
本実施形態のIII族窒化物複合基板1は、その直径が75mm以上であり、その支持基板11上に貼り合わされたIII族窒化物膜13の厚さが10μm以上250μm以下であり、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSが0.3nm以上20nm以下で、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSが0.005以上0.4以下であることから、昇温されたサセプタの主面から大口径のIII族窒化物複合基板1の裏面側である二乗平均平方根粗さの平均および分布が小さな支持基板11側の主面11nの全体に均一に熱が伝わるため、大口径のIII族窒化物複合基板1の全体が均一に加熱される。これにより、大口径のIII族窒化物複合基板1の表面側であるIII族窒化物膜13側の主面13m上における温度の分布が小さく均一になることから、大口径のIII族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13側の主面13m上に結晶品質が高く均一な大口径のIII族窒化物層20を成長させることができるため、特性の高いIII族窒化物半導体デバイスを歩留よく製造できる。
なお、図1を参照して、III族窒化物複合基板1において、支持基板11とIII族窒化物膜13とを貼り合わせる形態は、特に制限はないが、貼り合わせによる接合強度を高めるために、接合膜12を介在させることが好ましい。
(III族窒化物膜の厚さ)
図1および図2を参照して、本実施形態のIII族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13の厚さは、10μm以上250μm以下である。ここで、III族窒化物膜13の厚さとは、図2に示すIII族窒化物膜13の主面13m上の13点の測定点において測定した厚さから算出した平均値を意味する。図2に示すIII族窒化物膜13の主面上の13点の測定点Pは、III族窒化物膜の直径の大小にかかわらず、1つの中心点PCと、その中心点PCから互いに直角な4方向上でかつ外縁から5mm内側にある4つの外側点POと、1つの中心点PCと4つの外側点POとの中間に位置する4つの点および4つの外側点の互いの中間に位置する4つの点をあわせた8つの中間点PMとで構成される。
III族窒化物膜13の厚さは、結晶品質の高いIII族窒化物層を成長させる観点から、10μm以上が必要であり、30μm以上が好ましく、80μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましく、III族窒化物複合基板1の材料コストを抑制する観点から、250μm以下が必要であり、200μm以下が好ましく、180μm以下がより好ましく、130μm以下がさらに好ましい。
(III族窒化物複合基板の直径)
図1を参照して、本実施形態のIII族窒化物複合基板1の直径は、75μm以上である。III族窒化物複合基板1の直径は、1枚の複合基板から半導体デバイスのチップの取れ数を多くする観点から、75mm以上が必要であり、100mm以上が好ましく、125mm以上がより好ましく、150mm以上がさらに好ましい。また、III族窒化物複合基板1の直径は、複合基板の反りを低減し半導体デバイスの歩留を高くする観点から、300mm以下が好ましく、200mm以下がより好ましい。
(支持基板側の二乗平均平方根粗さ)
図1および図2を参照して、本実施形態のIII族窒化物複合基板1は、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSが0.3nm以上20nm以下であり、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSが0.005以上0.4以下である。
III族窒化物複合基板1の裏面側である支持基板11側の主面11nについて、III族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13側の主面13m上に結晶品質が高く均一なIII族窒化物層を成長させる観点から、その二乗平均平方根粗さの平均値mSは、20nm以下が必要であり、10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、その二乗平均平方根粗さの平均値mSに対するその二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSは、0.4以下が必要であり、0.3以下が好ましく、0.2以下がより好ましい。
また、III族窒化物複合基板1の裏面側である支持基板11側の主面11nについて、かかる主面11nの表面処理コストを抑制する観点から、その二乗平均平方根粗さの平均値mSは、0.3nm以上が必要であり、0.5nm以上が好ましく、1nm以上がより好ましく、その二乗平均平方根粗さの平均値mSに対するその二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSは、0.005以上が必要であり、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましい。
ここで、図2を参照して、III族窒化物複合基板1の支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSおよび標準偏差sSは、それぞれ、支持基板11の主面11n上の13点の測定点Pにおいて測定した二乗平均平方根粗さから算出した平均値および標準偏差である。図2に示す支持基板11の主面11n上の13点の測定点Pは、支持基板11の直径の大小にかかわらず、1つの中心点PCと、その中心点PCから互いに直角な4方向上でかつ外縁から5mm内側にある4つの外側点POと、1つの中心点PCと4つの外側点POとの中間に位置する4つの点および4つの外側点POの互いの中間に位置する4つの点をあわせた8つの中間点PMとで構成される。ここでいう標準偏差とは、不偏分散の正の平方根を意味する。
また、図2に示す支持基板11の主面11n上の13点の測定点Pにおいて測定した二乗平均平方根粗さとは、その測定点Pを中心とする85μm×85μm角の大きさの測定領域内の各点から標準平面を算出し、基準平面からの各点までの距離の二乗の平均の正の平方根の値をいい、AFM(原子間力顕微鏡)、光干渉式粗さ計、レーザ顕微鏡、触針式粗さ計などにより測定される。
なお、III族窒化物複合基板1の支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSおよび標準偏差sSは、後述するように、支持基板11の主面11nを研磨する際の研磨剤、定盤、および研磨パッドの物性、定盤、および研磨パッドの形状、ならびに研磨条件によって調整することができる。
(III族窒化物膜側の二乗平均平方根粗さ)
図1および図2を参照して、本実施形態のIII族窒化物複合基板1は、III族窒化物膜13側の主面13mの二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nが0.15nm以上3nm以下が好ましく、III族窒化物膜13側の主面13mの二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nに対する標準偏差sIII-Nの比sIII-N/mIII-Nが0.008以上0.5以下が好ましい。
III族窒化物複合基板1の表面側であるIII族窒化物膜13側の主面13mについて、その上に結晶品質が高く均一なIII族窒化物層を成長させる観点から、その二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nは、3nm以下が好ましく、2nm以下がより好ましく、1.6nm以下がさらに好ましく、その二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nに対するその二乗平均平方根粗さの標準偏差sIII-Nの比sIII-N/mIII-Nは、0.5以下が好ましく、0.4以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。
また、III族窒化物複合基板1の表面側であるIII族窒化物膜13側の主面13mについて、かかる主面13mの表面処理コストを抑制する観点から、その二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nは、0.15nm以上が好ましく、0.4nm以上がより好ましく、0.8nm以上がさらに好ましく、その二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nに対するその二乗平均平方根粗さの標準偏差sIII-Nの比sIII-N/mIII-Nは、0.008以上が好ましく、0.02以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましい。
ここで、図2を参照して、III族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13側の主面13mの二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nおよび標準偏差sIII-Nは、それぞれ、III族窒化物膜13の主面13m上の13点の測定点Pにおいて測定した二乗平均平方根粗さから算出した平均値および標準偏差である。図2に示すIII族窒化物膜13の主面13m上の13点の測定点Pは、III族窒化物膜13の直径の大小にかかわらず、1つの中心点PCと、その中心点PCから互いに直角な4方向上でかつ外縁から5mm内側にある4つの外側点POと、1つの中心点PCと4つの外側点POとの中間に位置する4つの点および4つの外側点POの互いの中間に位置する4つの点をあわせた8つの中間点PMとで構成される。ここでいう標準偏差とは、不偏分散の正の平方根を意味する。
また、図2に示すIII族窒化物膜13の主面13m上の13点の測定点Pにおいて測定した二乗平均平方根粗さとは、その測定点Pを中心とする85μm×85μm角の大きさの測定領域内の各点から標準平面を算出し、基準平面からの各点までの距離の二乗の平均の正の平方根の値をいい、AFM(原子間力顕微鏡)、光干渉式粗さ計、レーザ顕微鏡、触針式粗さ計などにより測定される。
なお、III族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13側の主面13mの二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nおよび標準偏差sIII-Nは、後述するように、III族窒化物膜13の主面13mを研磨する際の研磨剤、定盤、および研磨パッドの物性、定盤、および研磨パッドの形状、ならびに研磨条件によって調整することができる。
(直径に対する支持基板側の主面の反りの比)
図1を参照して、本実施形態のIII族窒化物複合基板1については、直径Dに対する支持基板11側の主面11nの反りWの比W/Dは、−7×10-4以上8×10-4以下が好ましく、−4×10-4以上5×10-4以下がより好ましく、−2.5×10-4以上3×10-4以下がさらに好ましく、−1×10-4以上1.5×10-4以下が特に好ましい。ここで、反りWおよび比W/Dの符号は、支持基板11側の主面11nが凹に反っているものを+(正)符号とし、支持基板11側の主面が凸に反っているものを−(負)符号とする。III族窒化物複合基板1の直径Dに対する支持基板11側の主面11nの反りWの比W/Dが、好ましくは−7×10-4以上8×10-4以下、より好ましくは−4×10-4以上5×10-4以下、さらに好ましくは−2.5×10-4以上3×10-4以下、特に好ましくは−1×10-4以上1.5×10-4以下と小さいと、III族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13側の主面13m上にIII族窒化物層を成長させる際に、昇温されたサセプタの主面から大口径のIII族窒化物複合基板1の支持基板11側の主面11nの全体に均一に熱が伝わるため、III族窒化物複合基板1の全体が均一に加熱される。これにより、III族窒化物複合基板1の表面側であるIII族窒化物膜13側の主面13m上における温度は分布が小さく均一になることから、III族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13側の主面13m上に結晶品質が高く均一な大口径のIII族窒化物層を成長させることができるため、特性の高いIII族窒化物半導体デバイスを歩留よく製造できる。
(支持基板の熱膨張係数に対するIII族窒化物膜の熱膨張係数の比)
図1を参照して、本実施形態のIII族窒化物複合基板1は、III族窒化物複合基板1およびそのIII族窒化物膜13上に成長させるIII族窒化物層の反りおよび割れを抑制してIII族窒化物半導体デバイスの歩留を高める観点から、支持基板11の熱膨張係数αSに対するIII族窒化物膜13の熱膨張係数αIII-Nの比αIII-N/αSが0.75以上1.25以下が好ましく、0.85以上1.15以下がより好ましく、0.95以上1.05以下がさらに好ましい。ここで、支持基板11の熱膨張係数αSおよびIII族窒化物膜13の熱膨張係数αIII-Nは、熱機械分析装置により測定することができる。
(支持基板の厚さに対するIII族窒化物膜の厚さの比)
図1を参照して、本実施形態のIII族窒化物複合基板1は、III族窒化物複合基板1およびそのIII族窒化物膜13上に成長させるIII族窒化物層の反りおよび割れを抑制してIII族窒化物半導体デバイスの歩留を高める観点から、支持基板11の厚さtSに対するIII族窒化物膜13の厚さtIII-Nの比tIII-N/tSが0.02以上1以下が好ましく、0.1以上0.6以下がより好ましく、0.2以上0.4以下がさらに好ましい。ここで、支持基板11の厚さtSおよびIII族窒化物膜13の厚さtIII-Nは、光学顕微鏡および/またはSEMによる膜の断面の観察、デジタルインジケーターなどにより測定することができる
したがって、III族窒化物複合基板1およびそのIII族窒化物膜13上に成長させるIII族窒化物層の反りおよび割れを抑制してIII族窒化物半導体デバイスの歩留を高める観点から、支持基板11の熱膨張係数αSに対するIII族窒化物膜13の熱膨張係数αIII-Nの比αIII-N/αSが0.75以上1.25以下かつ支持基板11の厚さtSに対するIII族窒化物膜の厚さtIII-Nの比tIII-N/tSが0.02以上1以下が好ましく、比αIII-N/αSが0.85以上1.15以下かつ比tIII-N/tSが0.1以上0.6以下がより好ましく、比αIII-N/αSが0.95以上1.05以下かつ比tIII-N/tSが0.2以上0.4以下がさらに好ましい。
(支持基板)
本実施形態のIII族窒化物複合基板1に含まれる支持基板11は、III族窒化物膜13を支持できるものであれば特に制限はないが、高価なIII族窒化物の使用量を低減してコストを低減する観点から、III族窒化物と化学組成が異なる異組成基板であることが好ましい。
本実施形態のIII族窒化物複合基板1は、上記のように、支持基板11の熱膨張係数αSに対するIII族窒化物膜13の熱膨張係数αIII-Nの比αIII-N/αSが0.75以上1.25以下であることが好ましい。
本実施形態のIII族窒化物複合基板1は、支持基板11の熱伝導率λSが3W・m-1・K-1以上280W・m-1・K-1以下が好ましく、5W・m-1・K-1以上210W・m-1・K-1以下がより好ましく、10W・m-1・K-1以上120W・m-1・K-1以下がさらに好ましい。ここで、支持基板11の熱伝導率λSは、レーザフラッシュ法により測定することができる。熱伝導率λSが好ましくは3W・m-1・K-1以上、より好ましくは5W・m-1・K-1以上、さらに好ましくは10W・m-1・K-1以上である支持基板11を有するIII族窒化物複合基板1は、III族窒化物層を成長させる際にサセプタの主面からの熱を効率よくIII族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13の主面13mに伝えることができる。熱伝導率λSが好ましくは280W・m-1・K-1以下、より好ましくは210W・m-1・K-1以下、さらに好ましくは120W・m-1・K-1以下、特に好ましくは50W・m-1・K-1以下である支持基板11を有するIII族窒化物複合基板1は、III族窒化物層を成長させる際にサセプタの主面からの熱をIII族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13の主面の全体に均一に伝えることができる。熱伝導率λSが280W・m-1・K-1以下の支持基板11は、熱伝導率λSが約300W・m-1・K-1のSiC基板を支持基板として用いる場合よりも、III族窒化物層を成長させる際にサセプタの主面からの熱をIII族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13の主面の全体に均一に伝えることができる。
本実施形態のIII族窒化物複合基板1は、支持基板11のヤング率ESが150GPa以上500GPa以下が好ましく、200GPa以上350GPa以下がより好ましい。ここで、支持基板11のヤング率ESは、共振法により測定することができる。ヤング率ESが好ましくは150GPa以上、より好ましくは200GPa以上の支持基板11を有するIII族窒化物複合基板1は、その上にIII族窒化物層を成長させてIII族窒化物半導体デバイスを形成する際に、III族窒化物複合基板1および/またはIII族窒化物層に反りが発生するのを抑制することができる。ヤング率ESが好ましくは500GaPa以下、より好ましくは350GPa以下の支持基板11を有するIII族窒化物複合基板1は、その上にIII族窒化物層を成長させてIII族窒化物半導体デバイスを形成する際に、III族窒化物複合基板1および/またはIII族窒化物層に割れおよび/またはクラックが発生するのを抑制することができる。
支持基板11は、特に制限はないが、上記の観点から、支持基板11の熱膨張係数αSに対するIII族窒化物膜13の熱膨張係数αIII-Nの比αIII-N/αSが0.75以上1.25以下、支持基板11の熱伝導率λSが3W・m-1・K-1以上280W・m-1・K-1以下、および支持基板11のヤング率ESが150GPa以上500GPa以下の少なくともいずれかを満たすものが好ましく、たとえば、ムライト(3Al23・2SiO2〜2Al23・SiO2)、ムライト−YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、スピネル(MgAl24)、Al23−SiO2系複合酸化物の焼結体、およびこれらに酸化物、炭酸塩などを添加した焼結体により形成される基板、モリブデン(Mo)基板、タングステン(W)基板などが好ましい。ここで、酸化物、炭酸塩に含まれる元素は、Ca、Mg、Sr、Ba、Al、Sc、Y、Ce、Pr、Si、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znなどが好適に挙げられる。
支持基板11は、単結晶、多結晶、および非結晶のいずれを含んでいてもよいが、デバイス形成時に研削やエッチングでの除去が容易であり、反りや割れを抑制できる強度を維持できる観点から、多結晶を含むことが好ましい。
(接合膜)
図1を参照して、本実施形態のIII族窒化物複合基板1に含まれ得る接合膜12は、支持基板11とIII族窒化物膜13とを接合できるものであれば特に制限はないが、支持基板11とIII族窒化物膜13との接合性が高い観点から、SiO2膜、Si34膜、TiO2膜、Ga23膜などが好ましい。
(III族窒化物膜)
図1を参照して、本実施形態のIII族窒化物膜13は、III族窒化物で形成される膜であり、GaN膜、AlN膜などのInxAlyGa1-x-yN膜(0≦x、0≦y、x+y≦1)などが挙げられる。
III族窒化物膜13の厚さは、上記のように、高特性のIII族窒化物半導体デバイスを形成する観点から、10μm以上が必要であり、30μm以上が好ましく、80μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。また、III族窒化物膜13の厚さは、上記のように、高価なIII族窒化物の使用量を低減する観点から、250μm以下であり、200μm以下が好ましく、180μm以下がより好ましく、130μm以下がさらに好ましい。
III族窒化物膜13の結晶構造は、良好な特性の半導体デバイスが得られる観点から、ウルツ鉱型構造が好ましい。III族窒化物膜13の主面が最も近似する上記の所定の面方位は、所望の半導体デバイスに適したものであれば制限はなく、{0001}、{10−10}、{11−20}、{21−30}、{20−21}、{10−11}、{11−22}、{22−43}、およびこれらのそれぞれの面方位から15°以下でオフした(15°以下の角度でずらした)面方位でもよい。また、これらのそれぞれの面方位の面の裏面の面方位およびかかる裏面の面方位から15°以下でオフした面方位でもよい。すなわち、III族窒化物膜13は、極性面、非極性面、および半極性面のいずれであってもよい。また、III族窒化物膜13の主面は、大口径化が容易な観点から{0001}面およびその裏面が好ましく、得られる発光デバイスのブルーシフトを抑制する観点から{10−10}面、{20−21}面およびそれらの裏面が好ましい。
III族窒化物膜13の主面13mにおける不純物金属原子は、III族窒化物膜13上に成長させるIII族窒化物層の結晶品質を高め、形成する半導体デバイスの特性を高くする観点から、1×1013原子/cm2以下が好ましく、3×1012原子/cm2以下がより好ましく、1×1012原子/cm2以下がさらに好ましく、1×1011原子/cm2以下が特に好ましい。
支持基板11として、ムライト(3Al23・2SiO2〜2Al23・SiO2)、ムライト−YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、スピネル(MgAl24)、Al23−SiO2系複合酸化物の焼結体などの基板を含むIII族窒化物複合基板1は、支持基板11からの金属原子の溶出を抑制した洗浄、たとえば、界面活性剤および/または純水を用いたスクラブ洗浄、二流体洗浄もしくはメガソニック洗浄(500kHz〜5MHzのメガソニック帯域の周波数の超音波を用いた洗浄)、ならびに低濃度の酸および/またはアルカリを用いた枚葉洗浄などの片面(この片面はIII族窒化物膜13の主面13mである)の洗浄などにより、III族窒化物膜13の主面13mにおける不純物金属原子の濃度を低減することが好ましい。また、支持基板側に保護膜を形成して金属原子の溶出を抑制することもできる。
また、III族窒化物膜13の主面13mにおける不純物金属原子以外の不純物は、III族窒化物膜13上に成長させるIII族窒化物層の結晶品質を高め、形成する半導体デバイスの特性を高くする観点から、Cl原子が2×1014原子/cm2以下が好ましく、Si原子が9×1013原子/cm2以下が好ましい。III族窒化物膜13の転位密度は、特に制限はないが、半導体デバイスのリーク電流を低減する観点から、1×108cm-2以下が好ましく、1×107cm-2以下がより好ましい。III族窒化物膜13のキャリア濃度は、特に制限はないが、半導体デバイスの抵抗を低減する観点から、1×1017cm-3以上が好ましく、1×1018cm-3以上がより好ましい。
[実施形態2:積層III族窒化物複合基板]
図3を参照して、本発明の別の実施形態である積層III族窒化物複合基板2は、実施形態1のIII族窒化物複合基板1と、III族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13側の主面13m上に配置されている少なくとも1層のIII族窒化物層20と、を含む。
本実施形態の積層III族窒化物複合基板2は、支持基板11側の主面11n二乗平均平方根粗さの平均値mSおよび標準偏差sSが小さいIII族窒化物複合基板1とその上に成長することにより配置されている結晶品質の高いIII族窒化物層20とを含むため、高特性の半導体デバイスを歩留よく作製することができる。
本実施形態の積層III族窒化物複合基板2において、III族窒化物膜13側の主面13m上に配置されているIII族窒化物層20は、作製する半導体デバイスの種類に応じて異なる。図4を参照して、半導体デバイスとして発光デバイスを作製する場合は、III族窒化物層20は、たとえば、n−GaN層21、n−In0.05Ga0.95N層22、多重量子井戸構造を有する活性層23、p−Al0.09Ga0.91N層24、およびp−GaN層25で構成することができる。図5を参照して、半導体デバイスとして電子デバイスの1例であるHEMT(高電子移動度トランジスタ)を作製する場合は、III族窒化物層20は、たとえば、GaN層26、Al0.2Ga0.8N層27で構成することができる。図6を参照して、半導体デバイスとして電子デバイスの別の例であるSBD(ショットキーバリアダイオード)を作製する場合は、III族窒化物層20は、たとえば、n+−GaN層28(キャリア濃度がたとえば2×1018cm-3)、n-−GaN層29(キャリア濃度がたとえば5×1015cm-3)で構成することができる。
[実施形態3:III族窒化物半導体デバイス]
図4〜6を参照して、本発明のさらに別の実施形態であるIII族窒化物半導体デバイス4は、実施形態1のIII族窒化物複合基板中のIII族窒化物膜13と、III族窒化物膜13上に配置されている少なくとも1層のIII族窒化物層20と、を含む。
本実施形態のIII族窒化物半導体デバイス4は、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSおよび標準偏差sSが小さいIII族窒化物複合基板1とその上に成長することにより配置されている結晶品質の高いIII族窒化物層20とを含むため、高い特性を有する。
III族窒化物半導体デバイス4のIII族窒化物層20は、III族窒化物半導体デバイス4の種類に応じて異なる。図4を参照して、III族窒化物半導体デバイス4が発光デバイスの場合は、III族窒化物層20は、たとえば、n−GaN層21、n−In0.05Ga0.95N層22、多重量子井戸構造を有する活性層23、p−Al0.09Ga0.91N層24、およびp−GaN層25で構成することができる。図5を参照して、III族窒化物半導体デバイス4が電子デバイスの1例であるHEMTの場合は、III族窒化物層20は、たとえば、GaN層26、Al0.2Ga0.8N層27で構成することができる。図6を参照して、III族窒化物半導体デバイス4が電子デバイスの別の例であるSBDの場合は、III族窒化物層20は、たとえば、n+−GaN層28(キャリア濃度がたとえば2×1018cm-3)、n-−GaN層29(キャリア濃度がたとえば5×1015cm-3)で構成することができる。電子デバイスのさらに別の例として、PND(PNダイオード)、トランジスタなどが挙げられる。なお、上記の半導体デバイスは、縦型であっても、横型であってもよい
図4を参照して、III族窒化物半導体デバイス4は、III族窒化物層20を支持するための支持基板11およびデバイス支持基板40の少なくともひとつをさらに含むことが好ましい。ここで、デバイス支持基板40の形状は、平板形状に限らず、III族窒化物膜13およびIII族窒化物層20を支持してIII族窒化物半導体デバイス4を形成することができるものである限り、任意の形状をとることができる。
[実施形態4:III族窒化物複合基板の製造方法]
(実施形態4−1:III族窒化物複合基板のある製造方法)
図7および図8を参照して、本発明のさらに別の実施形態であるIII族窒化物複合基板の製造方法は、実施形態1のIII族窒化物複合基板1の製造方法であって、支持基板11と、III族窒化物膜ドナー基板13Dと、を貼り合わせることにより、直径が75mm以上の接合基板1L,1LSを形成する工程(図7(A)〜(C)、図8(A)〜(C))と、接合基板1L,1LSのIII族窒化物膜ドナー基板13Dの貼り合わせ主面から内部に所定の距離に位置する面でIII族窒化物膜ドナー基板13Dを切断することにより、III族窒化物複合基板1を形成する工程(図7(D)、図8(D))と、上記工程のいずれかひとつの工程の前、途中または後に、III族窒化物複合基板1の支持基板11側の主面11nを研磨することにより支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さを調整する工程と、を含む。
本実施形態のIII族窒化物複合基板1の製造方法によれば、高い歩留でIII族窒化物半導体デバイスの製造が可能な、コストが低く大口径でIII族窒化物膜が厚く、III族窒化物層の成長の際に主面上における温度の分布が小さいIII族窒化物複合基板1を効率よく製造することができる。
ここで、III族窒化物複合基板1を形成する工程において、III族窒化物膜ドナー基板13Dを切断する際のIII族窒化物膜ドナー基板13Dの貼り合わせ主面から内部に所定の距離に位置する面における所定の距離は、製造の目的とするIII族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13の厚さに応じて決められる。
また、III族窒化物複合基板1を形成する工程において、III族窒化物膜ドナー基板13Dを切断してIII族窒化物膜13を形成した後に、III族窒化物膜13の貼り合わせ主面と反対側の主面13mから、研削、研磨およびエッチングの少なくともいずれかを行なうことにより、III族窒化物膜13の厚さを低減することができる。特に、III族窒化物膜ドナー基板13Dの切断により形成されるIII族窒化物膜13の厚さの分布(すなわちバラツキ)を低減する観点から、切断により得られたIII族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13の主面を研磨することが好ましい。研磨方法は、II族窒化物膜13の厚さの分布を低減する観点から、CMP(化学機械的研磨)、化学的研磨などによる精密研磨が好ましい。
上記の観点から、III族窒化物膜ドナー基板13Dを切断する際のIII族窒化物膜ドナー基板13Dの貼り合わせ主面から内部に所定の距離に位置する面における所定の距離は、製造の目的とするIII族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13の厚さに研磨代(けんましろ)の厚さを加えた距離とすることが好ましい。
本実施形態のIII族窒化物複合基板1の製造方法において、接合基板1L,1LSのIII族窒化物膜ドナー基板13Dの貼り合わせ主面から内部に所定の距離に位置する面でIII族窒化物膜ドナー基板13Dを切断してIII族窒化物膜13を形成し、好ましくはIII族窒化物膜13の貼り合わせ主面と反対側の主面から、研削、研磨およびエッチングの少なくともいずれかを行なうことにより、その厚さを減少させて調整して、10μm以上250μm以下の所望の厚さのIII族窒化物膜13を含むIII族窒化物複合基板1が得られる。
なお、本実施形態のIII族窒化物複合基板1の製造方法においては、III族窒化物複合基板を形成する工程においてIII族窒化物膜ドナー基板13Dを切断する際の作業性および効率を向上させる観点から、用いられるIII族窒化物膜ドナー基板13Dの厚さは、500μmより大きいことが好ましく、1mm以上がより好ましく、2mm以上がさらに好ましい。
(接合基板の形成工程)
図7(A)〜(C)および図8(A)〜(C)を参照して、接合基板1L,1LSを形成する工程は、支持基板11の主面11m上に接合膜12aを形成するサブ工程(図7(A)、図8(A))と、III族窒化物膜ドナー基板13Dの主面13n上に接合膜12bを形成するサブ工程(図7(B)、図8(B))と、支持基板11の主面11m上に形成された接合膜12aの主面12amとIII族窒化物膜ドナー基板13Dの主面13n上に形成された接合膜12bの主面12bnとを貼り合わせるサブ工程(図7(C)、図8(C))と、を含む。
図7(A)および図8(A)を参照して、支持基板11の主面11m上に接合膜12aを形成するサブ工程において、接合膜12aは、後述する接合膜12bと一体化して接合膜12を形成するものであり、接合膜12と同様の材料で形成される。また、接合膜12aを形成する方法は、その接合膜12aの形成に適している限り特に制限はないが、品質のよい接合膜12aを効率的に形成する観点から、スパッタ法、CVD(化学気相堆積)法、PLD(パルスレーザ堆積)法、MBE(分子線成長)法、電子線蒸着法などが好ましい。接合膜の品質を高くするとともに成膜速度を高めるから、特にCVDが好ましい。ここで、CVDのうち、低温で成膜できかつ成膜速度が高い観点からP−CVD(プラズマ−化学気相堆積)法、PE−CVD(プラズマ援用−化学気相堆積)法などがさらに好ましく、膜質を高めかつ大量製造が容易な観点からLP−CVD(減圧−化学気相堆積)法などがさらに好ましく、成膜速度がさらに高く生産性に優れる観点からAP−CVD(常圧−化学気相堆積)法などがさらに好ましい。
さらに、接合強度を向上させるために、接合膜12a,12bの形成後、接合させる前にアニールすることができる。かかるアニールにより、接合膜12a,12bから脱ガスさせて、接合膜12a,12bを緻密化させることができる。
さらに、接合膜12aは、支持基板11とIII族窒化物膜ドナー基板13Dとの接合強度を高める観点から、その主面12amを鏡面(たとえば、RMSが0.3nm以下の鏡面)に研磨することが好ましい。接合膜12aの主面12amを研磨する方法は、特に制限はなく、たとえばCMP(化学機械的研磨)などが用いられる。接合強度を高める観点から、接合膜の清浄度を向上させるためにCMP後に砥粒を含まない液での無砥粒ポリシングを実施することができる。砥粒の除去効果を高めるため、KOH、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)などのアルカリ、HCl、HNO3、H2SO4などの酸による無砥粒ポリシングを実施することができる。また、接合強度を高める観点から、接合膜の清浄度を向上させるために、スポンジ、ブラシなどを用いたスクラブ洗浄を実施することができる。また、二流体洗浄、メガソニック洗浄、超音波洗浄なども、好適に実施することができる。
図7(B)および図8(B)を参照して、III族窒化物膜ドナー基板13Dの主面13n上に接合膜12bを形成するサブ工程において、III族窒化物膜ドナー基板13Dは、その後のサブ工程においてIII族窒化物膜13を提供するドナー基板である。かかるIII族窒化物膜ドナー基板13Dを準備する方法は、特に制限はないが、結晶品質のよいIII族窒化物膜ドナー基板13Dを得る観点から、HVPE(ハイドライド気相成長)法、MOVPE(有機金属気相成長)法、MBE(分子線成長)法、昇華法などの気相法、フラックス法、高窒素圧溶液法、アモノサーマル法などの液相法などが好適である。こうして準備されるIII族窒化物膜ドナー基板13Dは、特に制限はないが、結晶品質のよいIII族窒化物膜13を提供する観点から、提供すべきIII族窒化物膜13と同程度の結晶品質を有していることが好ましい。
接合膜12bを形成する材料および方法ならびにその主面の研磨は、上記の接合膜12aを形成する材料および方法ならびにその主面の研磨とそれぞれ同様である。
図7(C)および図8(C)を参照して、支持基板11の主面11m上に形成された接合膜12aの主面12amとIII族窒化物膜ドナー基板13Dの主面13n上に形成された接合膜12bの主面12bnとを貼り合わせるサブ工程において、その貼り合わせ方法は、特に制限はなく、貼り合わせ面を洗浄しそのまま貼り合わせた後600℃〜1200℃程度に昇温して接合する直接接合法、貼り合わせ面を洗浄しプラズマやイオンなどで活性化処理した後に室温(たとえば25℃)〜400℃程度の低温雰囲気下で接合する表面活性化接合法、貼り合わせ面を薬液と純水で洗浄処理した後、0.1MPa〜10MPa程度の圧力を掛けて接合する高圧接合法、貼り合わせ面を薬液と純水で洗浄処理した後、10-6Pa〜10-3Pa程度の高真空雰囲気下で接合する超高真空接合法、などが好適である。上記のいずれの接合法においてもそれらの接合後に600℃〜1200℃程度に昇温することによりさらに接合強度を高めることができる。特に、表面活性化接合法、高圧接合法、および超高真空接合法においては、それらの接合後に600℃〜1200℃程度に昇温することによる接合強度を高める効果が大きい。
上記の貼り合わせにより、接合膜12aと接合膜12bとが接合により一体化して接合膜12が形成され、支持基板11とIII族窒化物膜ドナー基板13Dとが接合膜12を介在させて接合されて、接合基板1L,1LSが形成される。
上記のように、接合膜12a,12bの貼り合わせ面である主面12am,12bnを貼り合わせ前に活性化することにより接合強度を高めることができる。貼り合わせ面である主面12am,12bnの活性化は、特に制限はないが、活性化効果が高い観点から、プラズマ処理、イオン処理、薬液による化学処理、洗浄処理、CMP処理などにより行なうことが好ましい。
(III族窒化物複合基板の形成工程)
図7(D)および図8(D)を参照して、III族窒化物複合基板1を形成する工程において、接合基板1L,1LSのIII族窒化物膜ドナー基板13Dの貼り合わせ面である主面13nから内部に所定の距離に位置する面でIII族窒化物膜ドナー基板13Dを切断することにより、支持基板11に接合膜12を介在させて接合したIII族窒化物膜13と、残りのIII族窒化物膜ドナー基板13Drと、に分離して、支持基板11とIII族窒化物膜13とが接合膜12を介在させて貼り合わされたIII族窒化物複合基板1が形成される。
III族窒化物膜ドナー基板13Dを切断する方法は、特に制限はなく、ワイヤーソー、ブレードソー、レーザ加工、放電加工、ウォータージェットなどの方法が挙げられる。
III族窒化物膜ドナー基板13Dをワイヤーソーで切断する場合、大口径のIII族窒化物膜ドナー基板13Dを平坦に切断するためには固定砥粒ワイヤーを用いることが好ましく、切断代(せつだんしろ)を低減するためには細線ワイヤーを用いることが好ましい。切断代を低減するためには遊離砥粒方式が好ましい。また、III族窒化物膜ドナー基板13Dをワイヤーソーで切断する際には、切断抵抗によるワイヤーの曲がりを低減して厚さの精度および平坦性を高めるために、ワイヤーの張力を増加し、線速を増加させることが好ましい。そのためには、高剛性のワイヤーソー装置が好ましい。
また、切断抵抗を低減して厚さの精度および平坦性を高めるために、ワイヤーを揺動させ、それに同期してIII族窒化物膜ドナー基板13Dを振動させることが好ましい。具体的には、III族窒化物膜ドナー基板13Dの切断の進行方向に対して垂直またはそれに近い角度にワイヤーソーが位置しているときはIII族窒化物膜ドナー基板13Dが切断の進行方向に動き、III族窒化物膜ドナー基板13Dの切断の進行方向に対して垂直から遠い角度にワイヤーソーが位置しているときはIII族窒化物膜ドナー基板13Dが切断の進行方向と反対方向に動くことにより、切断抵抗を低減することができる。
なお、GaNなどのIII族窒化物は、サファイアおよびSiCなどに比べて脆くて割れ易いため、サファイアおよびSiCと同様の切断方法では良好に切断することができない。III族窒化物の切断においてはその切断抵抗をさらに低減することが必要である。切断抵抗を低減して厚さの精度および平坦性を高めるためには、スライス用加工液の粘度η(単位:Pa・s)、加工液の流量Q(単位:m3/s)、ワイヤー線速度V(単位:m/s)、最大切断長さL(単位:m)、切断速度P(単位:m/s)、および同時切断数nを用いて、R=(η×Q×V)/(L×P×n)で表される抵抗係数R(単位:N)が、適切な範囲にあること、具体的には4000N以上5000N以下であることが好ましい。
切断により得られたIII族窒化物複合基板1は、そのIII族窒化物膜13および支持基板11の主面を研磨することにより、所望の厚さおよびその均一性を得ることができる。具体的には、研磨時の研磨装置へのIII族窒化物複合基板1の貼付には、吸着固定、バックパッドによる固定を行うことができる。また、保持プレートへIII族窒化物複合基板1を貼り付けた後に研磨装置に貼り付けることもできる。真空チャック、エアバッグ加圧、重りなどの機械的加圧により、傾きを抑制し、反りを矯正して貼り付けることができる。III族窒化物複合基板1を吸着固定することもできる。III族窒化物複合基板1を研磨装置に均一に貼り付けることで、研磨後の厚さ分布を低減することができる。また、研磨定盤、パッドの形状に対応して貼り付け形状を制御することにより、研磨後の厚さの分布を低減することができる。
上記のように、本実施形態のIII族窒化物複合基板の製造方法においては、III族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13の厚さ分布を低減するとともにIII族窒化物膜13の切断によるダメージ層を除去して結晶品質を高く維持し、主面を平滑化する観点から、切断により得られたIII族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13の主面を研磨することが好ましい。
このため、本実施形態のIII族窒化物複合基板の製造方法において、接合基板1L,1LSのIII族窒化物膜ドナー基板13Dを切断する面であるIII族窒化物膜ドナー基板13Dの貼り合わせ主面から内部に所定の距離に位置する面における所定の距離とは、製造の目的とするIII族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13の厚さに研磨代(けんましろ)の厚さを加えた距離とすることが好ましい。ここで、研磨代は、特に制限はないが、厚さ分布を低減しかつダメージ層を除去する観点から、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましい。また、研磨代は、III族窒化物膜ドナー基板13Dの材料ロスを低減する観点から、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、60μm以下がさらに好ましい。
また、図7(D)および(B)ならびに図8(D)および(B)を参照して、残りのIII族窒化物膜ドナー基板13Drは、その主面を研磨することにより、繰り返し用いることができる。
(支持体付III族窒化物膜ドナー基板の利用)
図8(B)〜(D)を参照して、III族窒化物膜ドナー基板13DにIII族窒化物膜ドナー基板支持体15が貼り合わされた支持体付III族窒化物膜ドナー基板5Dを用いて、上記と同様にして、III族窒化物複合基板1を製造することができる。支持体付III族窒化物膜ドナー基板5Dは、III族窒化物膜ドナー基板支持体15によりIII族窒化物膜ドナー基板13Dが支持されているため、III族窒化物膜ドナー基板13Dが自立できない程度に薄くなっても、繰り返し用いることができる。
支持体付III族窒化物膜ドナー基板5Dにおいて、III族窒化物膜ドナー基板支持体15とIII族窒化物膜ドナー基板13Dとの貼り合わせ形態は、特に制限はないが、貼り合わせによる接合強度を高めるために接合膜14を介在させることが好ましい。また、III族窒化物膜ドナー基板支持体15は、特に制限はないが、支持強度が高くまた割れおよび反りの発生を防止する観点から、支持基板11と同様の物性の材料で形成されていることが好ましい。接合膜14は、特に制限はないが、III族窒化物膜ドナー基板支持体15とIII族窒化物膜ドナー基板13Dとの接合性が高い観点から、SiO2膜、Si34膜、TiO2膜、Ga23膜などが好ましい。
(III族窒化物複合基板の支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さの調整工程)
本実施形態のIII族窒化物複合基板1の製造方法は、上記工程のいずれかひとつの工程の前、途中または後に、III族窒化物複合基板1の支持基板11側の主面11nを研磨することにより支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さを調整する工程を含む。かかるIII族窒化物複合基板1の支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さを調整する工程により、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSを0.3nm以上20nm以下とし、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSを0.005以上0.4以下とすることができる。
ここで、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSは、研磨剤の粘度、砥粒サイズと、定盤や研磨パッドの材質および表面形状、ならびに研磨条件により制御することができる。二乗平均平方根粗さの平均値mSを小さくするためには、研磨剤は水性よりも油性が好ましく、研磨剤の粘度は高い方が好ましく、砥粒径は小さい方が好ましく、定盤および研磨パッドは軟質である方が好ましい。定盤および研磨パッドの表面形状は、スラッジ除去のための溝を形成した形状が好ましい。ここで、スラッジ除去のための溝とは、研磨界面のスラッジおよび/または凝集砥粒を排除して除去するために形成される、比較的幅が広くピッチの広い溝をいう。研磨条件としては、低圧力、低周速が好ましい。
また、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSの制御のためには、研磨液の粘度η(単位:mPa・s)、流量Q(単位:m3/s)、定盤の面積S(単位:m2)、研磨圧力P(単位:kPa)、周速V(単位:m/s)を用いて、FE=η×Q×V/S×Pの式で定義される作用係数FE(単位:m2/s)を所定範囲、具体的には、4×10-17以上1×10-16以下とすることが好ましい。また、定盤および研磨パッドの表面形状としては、研磨剤の均一化のための溝を形成した形状が好ましい。ここで、研磨剤の均一化のための溝とは、研磨剤を基板の中央部で均一に保持するために形成される、比較的幅が狭くピッチの狭い溝をいう。
(III族窒化物複合基板のIII族窒化物膜側の主面の二乗平均平方根粗さの調整工程)
本実施形態のIII族窒化物複合基板1の製造方法は、III族窒化物複合基板を形成する工程の後、III族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13側の主面13mを研磨することによりIII族窒化物膜13側の主面13mの二乗平均平方根粗さを調整する工程を含むことが好ましい。かかるIII族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13側の主面13mの二乗平均平方根粗さを調整する工程により、III族窒化物膜13側の主面13mの二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nを0.15nm以上3nm以下とし、III族窒化物膜13側の主面13mの二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sIII-Nの比sIII-N/mIII-Nを0.008以上0.5以下とすることができる。
ここで、III族窒化物膜13側の主面13mの二乗平均平方根粗さの平均値mSは、研磨剤の粘度、砥粒サイズと、定盤や研磨パッドの材質および表面形状、ならびに研磨条件により制御することができる。二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nを小さくするためには、研磨剤の粘度は高い方が好ましく、砥粒径は小さい方が好ましく、定盤および研磨パッドは軟質である方が好ましい。定盤および研磨パッドの表面形状は、スラッジ除去のための溝を形成した形状が好ましい。研磨条件としては、低圧力、低周速が好ましい。
また、III族窒化物膜13側の主面13mの二乗平均平方根粗さの二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sIII-Nの比sIII-N/mIII-Nは、研磨液の粘度η(単位:mPa・s)、流量Q(単位:m3/s)、定盤の面積S(単位:m2)、研磨圧力P(単位:kPa)、周速V(単位:m/s)を用いて、FE=η×Q×V/S×Pの式で定義される作用係数FE(単位:m2/s)を所定範囲、具体的には、4×10-14以上1×10-13以下とすることが好ましい。また、定盤および研磨パッドの表面形状としては、研磨剤の均一化のための溝を形成した形状が好ましい。
(実施形態4−2:III族窒化物複合基板の別の製造方法)
図9を参照して、本発明のさらに別の実施形態であるIII族窒化物複合基板の製造方法は、実施形態1のIII族窒化物複合基板1の製造方法であって、支持基板11と、III族窒化物膜ドナー基板13Dと、を貼り合わせることにより、直径が75mm以上の接合基板1Lを形成する工程(図9(A)〜(C))と、接合基板1LのIII族窒化物膜ドナー基板13Dの貼り合わせ主面と反対側の主面から研削、研磨およびエッチングの少なくともいずれかを行なうことにより、III族窒化物複合基板1を形成する工程(図9(D))と、上記工程のいずれかひとつの工程の前、途中または後に、III族窒化物複合基板の支持基板側の主面を研磨することにより支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さを調整する工程と、を含む。
本実施形態のIII族窒化物複合基板1の製造方法によれば、高い歩留でIII族窒化物半導体デバイスの製造が可能な、コストが低く大口径でIII族窒化物膜が厚く、III族窒化物層の成長の際に主面上における温度の分布が小さいIII族窒化物複合基板1を効率よく製造することができる。
を含む。
本実施形態のIII族窒化物複合基板1の製造方法において、III族窒化物膜ドナー基板13Dの貼り合わせ主面と反対側の主面13nから研削、研磨およびエッチングの少なくともいずれかを行なうことにより、その厚さを減少させて調整して、10μm以上250μm以下の所望の厚さのIII族窒化物膜13を含むIII族窒化物複合基板1が得られる。
なお、本実施形態のIII族窒化物複合基板1の製造方法においては、III族窒化物複合基板を形成する工程においてIII族窒化物膜ドナー基板の貼り合わせ主面と反対側の主面から研削、研磨およびエッチングの少なくともいずれかを行なうため、III族窒化物膜ドナー基板13Dの材料ロスを低減する観点から、用いられるIII族窒化物膜ドナー基板13Dの厚さは、500μm以下が好ましく、400μm以下がより好ましい。
(接合基板の形成工程)
図9(A)〜(C)を参照して、接合基板1Lを形成する工程は、実施形態4のIII族窒化物複合基板の製造方法と同様に、支持基板11の主面11m上に接合膜12aを形成するサブ工程(図9(A))と、III族窒化物膜ドナー基板13Dの主面13n上に接合膜12bを形成するサブ工程(図9(B))と、支持基板11の主面11m上に形成された接合膜12aの主面12amとIII族窒化物膜ドナー基板13Dの主面13n上に形成された接合膜12bの主面12bnとを貼り合わせるサブ工程(図9(C)と、を含む。
ここで、図9(A)に示す支持基板11の主面11m上に接合膜12aを形成するサブ工程は図7(A)に示す支持基板11の主面11m上に接合膜12aを形成するサブ工程と同様である。図9(B)に示すIII族窒化物膜ドナー基板13Dの主面13n上に接合膜12bを形成するサブ工程は図7(B)に示すIII族窒化物膜ドナー基板13Dの主面13n上に接合膜12bを形成するサブ工程と同様である。図9(C)に示す支持基板11の主面11m上に形成された接合膜12aの主面12amとIII族窒化物膜ドナー基板13Dの主面13n上に形成された接合膜12bの主面12bnとを貼り合わせるサブ工程は図7(C)に示す支持基板11の主面11m上に形成された接合膜12aの主面12amとIII族窒化物膜ドナー基板13Dの主面13n上に形成された接合膜20bの主面12bnとを貼り合わせるサブ工程と同様である。このため、それらの説明は繰り返さない。
(III族窒化物複合基板の形成工程)
図9(D)を参照して、III族窒化物複合基板1を形成する工程において、接合基板1LのIII族窒化物膜ドナー基板13Dの貼り合わせ主面と反対側の主面13mから研削、研磨およびエッチングの少なくともいずれかを行なうことにより、III族窒化物膜ドナー基板13Dからその厚さが減少したIII族窒化物膜13が形成されて、支持基板11とIII族窒化物膜13とが接合膜12を介在させて貼り合わされたIII族窒化物複合基板1が形成される。
III族窒化物膜ドナー基板13Dを研削する方法は、特に制限はなく、砥石および砥粒のいずれかを用いた研削などが挙げられる。III族窒化物膜ドナー基板13Dを研磨する方法は、特に制限はなく、機械的研磨などの粗研磨、CMP、化学的研磨などの精密研磨などが挙げられる。III族窒化物膜ドナー基板13Dをエッチングする方法は、特に制限はなく、薬液を用いたウェットエッチング、RIE(反応性イオンエッチング)などのドライエッチングなどが挙げられる。
また、形成されるIII族窒化物膜13の厚さの分布を低減する観点から、研削およびエッチングの少なくともいずれかにより得られたIII族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13の主面13mを研磨することが好ましい。研削、研磨およびエッチングの少なくともいずれかによる厚さの減少量は、厚さの分布を低減しかつダメージ層を除去する観点から、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましい。また、研削、研磨およびエッチングの少なくともいずれかによる厚さの減少量は、III族窒化物膜ドナー基板13Dの材料ロスを低減する観点から、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、60μm以下がさらに好ましい。
(III族窒化物複合基板の支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さの調整工程)
本実施形態のIII族窒化物複合基板1の製造方法は、上記工程のいずれかひとつの工程の前、途中または後に、III族窒化物複合基板1の支持基板11側の主面11nを研磨することにより支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さを調整する工程を含む。かかるIII族窒化物複合基板1の支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さを調整する工程により、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSを0.3nm以上20nm以下とし、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSを0.005以上0.4以下とすることができる。
ここで、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSおよび主面11nの二乗平均平方根粗さの二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSの制御については、実施形態4−1のIII族窒化物複合基板1の製造方法と同様である。
(III族窒化物複合基板のIII族窒化物側の主面の二乗平均平方根粗さの調整工程)
本実施形態のIII族窒化物複合基板1の製造方法は、III族窒化物複合基板を形成する工程の後、III族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13側の主面13mを研磨することによりIII族窒化物膜13側の主面13mの二乗平均平方根粗さを調整する工程を含むことが好ましい。かかるIII族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13側の主面13mの二乗平均平方根粗さを調整する工程により、III族窒化物膜13側の主面13mの二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nを0.15nm以上3nm以下とし、III族窒化物膜13側の主面13mの二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sIII-Nの比sIII-N/mIII-Nを0.008以上0.5以下とすることができる。
ここで、III族窒化物膜13側の主面13mの二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nおよび主面13mの二乗平均平方根粗さの二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sIII-Nの比sIII-N/mIII-Nの制御については、実施形態4−1のIII族窒化物複合基板1の製造方法と同様である。
[実施形態5:III族窒化物半導体デバイスの製造方法]
図10を参照して、本発明のさらに別の実施形態であるIII族窒化物半導体デバイスの製造方法は、実施形態1のIII族窒化物複合基板1を準備する工程と、III族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13側の主面13m上に、少なくとも1層のIII族窒化物層20を成長させる工程(図10(A))と、を含む。本実施形態のIII族窒化物半導体デバイスの製造方法は、III族窒化物層の成長の際に主面13m上における温度の分布が小さいIII族窒化物複合基板1の主面13m上にIII族窒化物層を成長させるため、高い歩留で高特性のIII族窒化物半導体デバイスを製造できる。
本実施形態のIII族窒化物半導体デバイスの製造方法において、III族窒化物層20を成長させる工程(図10(A))の後に、III族窒化物複合基板1から支持基板11を除去する工程(図10(C))をさらに含むことができる。かかる工程により、多様な形態のIII族窒化物半導体デバイスを製造できる。
さらに、本実施形態のIII族窒化物半導体デバイスの製造方法において、III族窒化物層を成長させる工程(図10(A))の後、支持基板を除去する工程(図10(C))の前に、III族窒化物層20上にデバイス支持基板40を貼り合わせる工程(図10(B))をさらに含むことができる。かかる工程により、高い歩留でデバイス支持基板40により支持された機械的強度が強く高特性のIII族窒化物半導体デバイスを製造できる。
本実施形態のIII族窒化物半導体デバイスの製造方法は、具体的には、以下の工程により、行なうことができる。
(III族窒化物層の成長工程)
図10(A)を参照して、III族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13側の主面13m上に、少なくとも1層のIII族窒化物層20を成長させる工程において、III族窒化物層20を成長させる方法は、結晶品質の高いIII族窒化物層20をエピタキシャル成長させる観点から、MOVPE法、MBE法、HVPE法、昇華法などの気相法、フラックス法などの液相法などが好適であり、特にMOVPE法が好適である。
III族窒化物層20の構成は、III族窒化物半導体デバイス4の種類に応じて異なる。III族窒化物半導体デバイス4が発光デバイスの場合は、III族窒化物層20は、たとえば、III族窒化物膜13上に、n−GaN層21、n−In0.05Ga0.95N層22、多重量子井戸構造を有する活性層23、p−Al0.09Ga0.91N層24、およびp−GaN層25を順に成長させることにより構成することができる。
上記のようにして、III族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13側の主面13m上に、少なくとも1層のIII族窒化物層20を成長させることにより、積層III族窒化物複合基板2が得られる。
(デバイス支持基板の貼り合わせ工程)
図10(B)を参照して、III族窒化物層20上にデバイス支持基板40を貼り合わせる工程は、積層III族窒化物複合基板2のIII族窒化物層20上に、第1電極30およびパッド電極33を形成するとともに、デバイス支持基板40上にパッド電極43および接合金属膜44を形成し、パッド電極33に接合金属膜44を貼り合わせることにより行なう。かかる工程により、積層基板3が得られる。デバイス支持基板40には、Si基板、CuW基板、Mo基板などが用いられる。
(支持基板の除去工程)
図10(C)を参照して、III族窒化物複合基板1から支持基板11を除去する工程は、積層基板3から、III族窒化物複合基板1の支持基板を11を除去することにより行なう。III族窒化物複合基板1において支持基板11とIII族窒化物膜13との間に接合膜12が介在している場合には、接合膜12をも除去することができる。支持基板11および接合膜12の除去方法は、特に制限はなく、研削、エッチングなどが好適に用いられる。たとえば、硬度、強度、および耐摩耗性が低く削られ易い材料で形成される支持基板11は、製造コストを低減する観点から、研削および研磨の少なくともいずれかにより除去することができる。また、酸、アルカリなどの薬液に溶解する材料で形成される支持基板11は、製造コストを低減する観点から薬液でエッチングして除去することができる。なお、支持基板11の除去が容易な観点から、支持基板11は、サファイア、SiC、III族窒化物(たとえばGaN)などの単結晶材料で形成されている支持基板に比べて、セラミックスなどの多結晶材料で形成されている支持基板の方が好ましい。
なお、III族窒化物自立基板を用いたIII族窒化物半導体デバイスの製造においては、デバイスの厚みを低減させるために、III族窒化物自立基板の裏面(III族窒化物層が形成されている主面と反対側の主面をいう。以下、同じ。)からの研削加工などが行われる。これに対して、III族窒化物複合基板を用いたIII族窒化物半導体デバイスの製造においては、デバイスの厚みを低減させるために、支持基板をエッチングや研削で除去することが容易なことから、III族窒化物半導体デバイスの製造コストを低減することができる。
(電極の形成工程)
図10(D)を参照して、積層基板3から支持基板11および接合膜12が除去されることにより露出したIII族窒化物膜13上に第2電極50を形成し、デバイス支持基板40上にデバイス支持基板電極45を形成する。
(実施例A)
1.III族窒化物複合基板の作製
図7(A)を参照して、支持基板11として直径75mmで厚さ300μmのAl23−SiO2複合酸化物基板(基板全体に対してAl23が85質量%でSiO2が15質量%である)を準備した。支持基板11は、その熱伝導率が10W・m-1・K-1であり、そのヤング率が250GPaであった。支持基板11の両側の主面11m,11nを、研磨剤としてダイヤモンドスラリーを用いて、銅系定盤により粗研磨、スズ定盤により中間研磨、格子溝を形成した不織布研磨パッドにより仕上げ研磨を行なった。仕上げ研磨においては、作用係数FEが4×10-172/s以上1×10-162/s以下の条件で研磨した。
次に、支持基板11の仕上げ研磨後の主面11m上に、厚さ800nmのSiO2膜をPE−CVD(プラズマ援用−化学気相堆積)法により成長させ、窒素雰囲気中で800℃で1時間のアニールを行った後に、平均粒径40nmのコロイダルシリカ砥粒を含みpHが10のスラリーを用いたCMP(化学機械的研磨)により、主面12amが二乗平均平方根粗さで0.3nm以下に鏡面化された厚さ400nmの接合膜12aを形成した。次いで、CMPで用いたコロイダルシリカ砥粒を除去するために、KOH水溶液による無砥粒ポリシング洗浄、純水によるポリシング洗浄、および純水によるメガソニック洗浄(500kHz〜5MHzのメガソニック帯域の周波数の超音波を用いた洗浄)を行なった。
また、図7(B)を参照して、III族窒化物膜ドナー基板13Dとして直径75mmで厚さ8mmのGaN結晶体を準備し、III族窒化物膜ドナー基板13Dの貼り合わせ面を機械研磨およびCMPによりRMSを2nm以下に平坦化した後、その上に厚さ800nmのSiO2膜をPE−CVD法により成長させ、窒素雰囲気中で800℃で1時間のアニールを行った後に、平均粒径が40nmのコロイダルシルカ砥粒を含みpHが10のスラリーを用いたCMPにより、主面12bnが二乗平均平方根粗さで0.3nm以下に鏡面化された厚さ500nmの接合膜12bを形成した。次いで、CMPで用いたコロイダルシリカ砥粒を除去するために、KOH水溶液による無砥粒ポリシング洗浄、純水によるポリシング洗浄、および純水によるメガソニック洗浄(500kHz〜5MHzのメガソニック帯域の周波数の超音波を用いた洗浄)を行なった。ここで、III族窒化物膜ドナー基板13Dは、下地基板としてGaAs基板を用いて、HVPE法により成長させたものであった。III族窒化物膜ドナー基板13Dは、その導電型がn型で、その転位密度が1×108cm-2で、そのキャリア濃度が1×1017であった。
次に、図7(C)を参照して、接合膜12aの主面12amと接合膜12bの主面12bnとを貼り合わせることにより、支持基板11とIII族窒化物膜13とを接合膜12を介在させて貼り合わせた接合基板1Lを得た。貼り合わせ後に、接合基板1Lを窒素ガス雰囲気中で800℃まで昇温することによりアニールして接合強度を高めた。
次に、図7(D)を参照して、接合基板1LのIII族窒化物膜ドナー基板13Dを接合膜12との貼り合わせ面から内部に150μmの距離の深さに位置する面でワイヤーソーにより切断することにより、支持基板11とIII族窒化物膜13であるGaN膜とが接合膜12を介在させて貼り合わされたIII族窒化物複合基板1を得た。ワイヤーは、ダイヤモンド砥粒を電着した線径180μmの固定砥粒ワイヤーを用いた。切断抵抗を低減して厚さの精度および平坦性を高めるために、切断方式としてはワイヤーを揺動させ、それに同期してIII族窒化物膜ドナー基板13Dを振動させる方式とした。ワイヤーソー切断の抵抗係数は、4200Nとした。切断後に、III族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13を機械研磨およびCMPを行なった。III族窒化物膜13の厚さの均一化のため、CMPでの複合基板の装置への取り付けには、予備的に真空チャック吸着で基板形状を矯正した後に、装置に吸着固定する方式とした。
次に、得られたIII族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13側の主面13mを、研磨剤としてダイヤモンドスラリーを用いて、銅系定盤により粗研磨、スズ定盤により中間研磨を実施した。さらに、研磨剤としてコロイダルシリカ砥粒を含むpHが11のスラリーを用いて不織布研磨パッドにより仕上げ研磨を行なった。仕上げ研磨においては、作用係数FEが6×10-142/sの条件で研磨した。仕上げ研磨後のIII族窒化物膜13の厚さは110μmであった。
上記仕上げ研磨後のIII族窒化物複合基板1について、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mS、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSを表1にまとめた。
ここで、二乗平均平方根粗さの平均値mSおよび二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSは、図2に示す支持基板11側の主面11n上において、1つの中心点PCと、その中心点PCから互いに直角な4方向上でかつ外縁から5mm内側にある4つの外側点POと、1つの中心点PCと4つの外側点POとの中間に位置する4つの点および4つの外側点の互いの中間に位置する4つの点をあわせた8つの中間点PMとで構成される13点の測定点Pにおける支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さから算出した。
2.III族窒化物半導体デバイスの作製
図10(A)を参照して、III族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13側の主面13m上に、MOVPE法により、III族窒化物層20として、III族窒化物膜13上に、厚さ5μmのn−GaN層21、厚さ50nmのn−In0.05Ga0.95N層22、厚さ3nmのIn0.14Ga0.86N井戸層と厚さ15nmのGaN障壁層とで構成される3周期の多重量子井戸構造を有する活性層23、厚さ20nmのp−Al0.09Ga0.91N層24、および厚さ150nmのp−GaN層25を順にエピタキシャル成長させることにより、積層III族窒化物複合基板2を得た。その後、RTA(高速熱処理装置)によりアニールして活性化させた。
図10(B)を参照して、積層III族窒化物複合基板2のIII族窒化物層20の最上層であるp−GaN層25上に、EB(電子線)蒸着法により、厚さ4nmのNi層および厚さ200nmのAu層を順次形成し、アニールにより合金化することにより第1電極30を形成した。第1電極30上に、EB蒸着法により、厚さ200nmのTi層、厚さ100nmのPt層、および厚さ1000nmのAu層を順次形成することによりパッド電極33を形成した。
また、デバイス支持基板40としてCuW基板を準備し、デバイス支持基板40上に、EB蒸着法により、厚さ200nmのTi層、厚さ100nmのPt層、および厚さ1000nmのAu層を順次形成することによりパッド電極43を形成した。パッド電極43上に、接合金属膜44としてAuSnはんだ膜を形成した。
次に、パッド電極33に接合金属膜44を貼り合わせることにより、積層基板3を得た。
図10(C)を参照して、積層基板3から、III族窒化物複合基板1の支持基板11および接合膜12を、フッ化水素酸を用いて、エッチングにより除去した。
図10(D)を参照して、積層基板3から支持基板11および接合膜12が除去された露出したIII族窒化物膜13上に、EB蒸着法により、厚さ20nmのTi層、厚さ200nmのAl層、および厚さ300nmのAu層を順次形成し、アニールすることにより、第2電極50を形成した。また、デバイス支持基板40上に、EB蒸着法により、厚さ20nmのTi層、および厚さ300nmのAu層を順次形成し、アニールすることにより、デバイス支持基板電極45を形成した。こうして、III族窒化物半導体デバイス4が得られた。
得られたIII族窒化物半導体デバイス4について、光出力を、積分球を用いて、注入電流4Aの条件で測定した。発光素子の光出力は、以下のように測定した。すなわち、積分球内に載置された発光素子に所定の電流を注入し、その発光素子から集光された光を受けるディテクタによって光出力を測定した。そして、光出力が2W以上の基準に適合したものを良品、適合しなかったものを不良品とし、良品を表品と不良品との合計で除したものの百分率を歩留率とした。III族窒化物半導体デバイスの歩留率を表1にまとめた。
Figure 0006248395
表1を参照して、支持基板と、厚さ110μm(この値は10μm以上250μm以下)のIII族窒化物膜と、を有する直径75mm(この値は75mm以上)のIII族窒化物複合基板であって、支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値mSが0.3nm以上20nm以下であり、前記支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSが0.005以上0.4以下であるIII族窒化物複合基板を用いて作製されたIII族窒化物半導体デバイスの歩留が高かった。
(実施例B)
図7および図10を参照して、支持基板11としてムライト−YSZ基板(基板全体に対してムライトが70質量%でYSZが30質量%であり、ムライトに対してAl23が60モル%でSiO2が40モル%であり、YSZに対してZrO2が90モル%でY23が10モル%である)を用いたこと、直径をそれぞれ75mm〜150mmの間で変動させ、支持基板11側の主面11nの仕上げ研磨においては作用係数FEが6.2×10-172/sの条件で研磨したこと、仕上げ研磨後のIII族窒化物膜13の厚さをそれぞれ10μm〜250μmの間で変動させた1III族窒化物複合基板1を作製したこと、以外は、実施例Aと同様にして、III族窒化物複合基板1およびIII族窒化物半導体デバイス4を作製した。支持基板11は、熱伝導率が30W・m-1・K-1で、ヤング率が150GPaであった。
実施例Aと同様にして、III族窒化物複合基板1について、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mS、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSを算出して、表2にまとめた。また、実施例Aと同様にして、III族窒化物半導体デバイス4の歩留率を算出して、表2にまとめた。
Figure 0006248395
表2を参照して、厚さ10μm〜250μmのIII族窒化物膜を有する直径75mm〜150mmのIII族窒化物複合基板であって、支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値mSが6nm(この値は0.3nm以上20nm以下)であり、支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSが0.23(この値は0.005以上0.4以下)であるIII族窒化物複合基板を用いて作製されたIII族窒化物半導体デバイスの歩留が高かった。
(実施例C)
半導体デバイス用基板として、III族窒化物自立基板(以下、FS基板ともいう)、イオン注入法により作製されたIII族窒化物複合基板(以下、BP基板ともいう)、および本発明の実施形態4により作製されたIII族窒化物複合基板(以下、BS基板ともいう)を準備した。
FS基板は、所定の直径を有するGaN結晶体をワイヤーソーで切断し研磨することにより表3に示す直径および厚さの基板とした。
BP基板は、図11(B)に示すように、III族窒化物膜ドナー基板13Dである所定の直径を有するGaN結晶体にその主面13nから内部に所定の深さの位置に水素イオンを注入することによりイオン注入領域13iを形成した後、図11(C)に示すように、支持基板11とIII族窒化物膜ドナー基板13Dのイオン注入領域13i側とを接合膜12を介在させて貼り合わせた後、図11(D)に示すように、700℃でアニールすることにより、III族窒化物膜ドナー基板13Dをそのイオン注入領域13iで分離することにより、表3に示す直径およびIII族窒化物膜の厚さの基板とした。ここで、支持基板11としては、Al23−SiO2複合酸化物基板(基板全体に対してAl23が85質量%でSiO2が15質量%である)を用いた。
BS基板は、支持基板としてAl23−SiO2複合酸化物基板(基板全体に対してAl23が85質量%でSiO2が15質量%である)を用いたこと以外は、実施例Bと同様にして、表3に示す直径およびIII族窒化物膜の厚さの基板とした。
上記のFS基板、BP基板、およびBS基板を用いたこと、支持基板11側の主面11nの仕上げ研磨においては作用係数FEが4.0×10-172/sの条件で研磨したこと以外は、実施例Bと同様にして、III族窒化物複合基板1およびIII族窒化物半導体デバイス4を作製した。
実施例Aと同様にして、III族窒化物複合基板1であるBP基板およびBS基板について、反りW、比W/D、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mS、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSを算出して、表3にまとめた。また、FS基板について、反りW、比W/D、その裏面側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値mS、裏面側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSを算出して、表3にまとめた。さらに、実施例Aと同様にして、III族窒化物半導体デバイス4の歩留率を算出して、表3にまとめた。
Figure 0006248395
表3を参照して、直径50mm〜125mmで厚さ250μm〜500μmのFS基板を用いて作製したIII族窒化物半導体デバイスは、直径が大きく厚さが小さいものは反りが大きくまた割れが発生しやすく、いずれも歩留率が60%に満たなかった。
また、直径が75mm〜125mmでIII族窒化物膜の厚さが0.5μmのBP基板を用いて作製したIII族窒化物半導体デバイスは、III族窒化物膜の厚さが小さいため、良好なデバイス特性が発現せず、歩留率が低下した。
これらに対して、BS基板を用いて作製したIII族窒化物半導体デバイスは、歩留率が69%以上と高かった。BS基板は、BP基板に比べてIII族窒化物膜が厚く十分に電流が広がること、BP基板とは異なりイオン注入によるIII族窒化物膜の結晶品質の低下がないことにより、良好な特性が得られた。
(実施例D)
図7および図10を参照して、支持基板11としてAl23−SiO2複合酸化物基板(基板全体に対してAl23が82質量%でSiO2が18質量%である)基板を用いたこと、直径をそれぞれ75mm〜150mmの間で変動させ、接合膜12であるSiO2膜をAP−CVD(常圧−化学気相堆積)法により成長させ、支持基板11側の主面11nの仕上げ研磨においては作用係数FEが8.5×10-172/sの条件で研磨したこと、仕上げ研磨後のIII族窒化物膜13の厚さをそれぞれ110μm〜130μmの間で変動させた1III族窒化物複合基板1を作製したこと、以外は、実施例Aと同様にして、III族窒化物複合基板1およびIII族窒化物半導体デバイス4を作製した。支持基板11は、熱伝導率が5W・m-1・K-1で、ヤング率が230GPaであった。
実施例Aと同様にして、III族窒化物複合基板1について、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mS、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mS、支持基板11側の主面11nの反りW、および直径Dに対する支持基板11側の主面11nの反りWの比W/Dを算出して、表4にまとめた。また、実施例Aと同様にして、III族窒化物半導体デバイス4の歩留率を算出して、表4にまとめた。
Figure 0006248395
表4を参照して、厚さ110μm〜130μm(この値は10μm以上250μm以下)のIII族窒化物膜を有する直径75mm〜150mm(この値は75mm以上)のIII族窒化物複合基板であって、支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値mSが3nm(この値は0.3nm以上20nm以下)であり、支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSが0.1(この値は0.005以上0.4以下)であり、直径Dに対する支持基板11側の主面11nの反りWの比W/Dが−7×10-4以上8×10-4以下であるIII族窒化物複合基板を用いて作製されたIII族窒化物半導体デバイスの歩留が高かった。
(実施例E)
図7および図10を参照して、支持基板11としてムライト基板(ムライト基板全体に対してAl23が60モル%でSiO2が40モル%である)を用いたこと、III族窒化物膜ドナー基板13DとしてO(酸素)原子およびSi(ケイ素)原子がドーピングされ転位集中領域がなく転位密度が5×106cm-2で均一でありキャリア濃度が2×1018cm-3の導電性が高いGaN基板を用いたこと、支持基板11側の主面11nの仕上げ研磨においては作用係数FEが8.3×10-172/sの条件で研磨したこと、III族窒化物膜ドナー基板13Dの切断を放電ワイヤー加工で実施したこと、III族窒化物膜13側の主面13mの仕上げ研磨の際に粒径が20nm〜400nmのコロイダルシリカを含むスラリーを用いて作用係数FEを4×10-14以上1×10-13以下としたこと、以外は、実施例Aと同様にして、III族窒化物複合基板1およびIII族窒化物半導体デバイス4を作製した。支持基板11は、熱伝導率が3W・m-1・K-1で、ヤング率が200GPaであった。
実施例Aと同様にして、仕上げ研磨後のIII族窒化物複合基板1について、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mS、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSを算出して、表5にまとめた。
また、仕上げ研磨後のIII族窒化物複合基板1について、III族窒化物膜13側の主面13mの二乗平均平方根粗さの平均値mIII-N、III族窒化物膜13側の主面13mの二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sIII-Nの比sIII-N/mIII-Nを表5にまとめた。ここで、二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nおよび二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sIII-Nの比sIII-N/mIII-Nは、図2に示すIII族窒化物膜13側の主面13m上において、1つの中心点PCと、その中心点PCから互いに直角な4方向上でかつ外縁から5mm内側にある4つの外側点POと、1つの中心点PCと4つの外側点POとの中間に位置する4つの点および4つの外側点の互いの中間に位置する4つの点をあわせた8つの中間点PMとで構成される13点の測定点PにおけるIII族窒化物膜13側の主面13mの二乗平均平方根粗さから算出した。
さらに、実施例Aと同様にして、III族窒化物半導体デバイス4の歩留率を算出して、表5にまとめた。
Figure 0006248395
表5を参照して、厚さ110μm(この値は10μm以上250μm以下)のIII族窒化物膜を有する直径75mm(この値は75mm以上)のIII族窒化物複合基板であって、支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値mSが2nm(この値は0.3nm以上20nm以下)であり、支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSが0.12(この値は0.005以上0.4以下)であり、III族窒化物膜側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nが0.15nm以上3nm以下であり、III族窒化物膜側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値mIII-Nに対する標準偏差sIII-Nの比sIII-N/mIII-Nが0.008以上0.5以下であるIII族窒化物複合基板を用いて作製されたIII族窒化物半導体デバイスの歩留が高かった。
(実施例F)
1.III族窒化物複合基板の作製
図7を参照して、支持基板11として、Al23−SiO2複合酸化物基板、ムライト基板(基板全体に対してAl23が60モル%でSiO2が40モル%である)、ムライト−YSZ基板(基板全体に対してムライトが70質量%でYSZが30質量%であり、ムライトに対してAl23が60モル%でSiO2が40モル%であり、YSZに対してZrO2が90モル%でY23が10モル%である)を用いたこと、III族窒化物膜ドナー基板13DとしてFe(鉄)原子をドーピングした電気抵抗率(比抵抗ともいう。)が2×105Ωcmの半絶縁性のGaN基板を用いたこと、III族窒化物膜ドナー基板の切断を遊離砥粒を用いたワイヤーソーで実施したこと、支持基板11側の主面11nの仕上げ研磨においては作用係数FEが8.7×10-172/sの条件で研磨したこと、直径をそれぞれ75mm〜150mmの間で変動させたIII族窒化物複合基板を作製したこと以外は、実施例Aと同様にして、III族窒化物複合基板1を作製した。
2.III族窒化物半導体デバイスの作製
図5を参照して、本実施例においては、III族窒化物半導体デバイス4として、HEMTを作製した。III族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13の主面13m上に、MOVPE法により、III族窒化物層20として、厚さ1.5μmのGaN層26、厚さ30nmのAl0.2Ga0.8N層27を順にエピタキシャル成長させることにより、積層III族窒化物複合基板2を得た。
次に、Al0.2Ga0.8N層27上にフォトリソグラフィ、EB蒸着、およびリフトオフによって、ソース電極60およびドレイン電極70を形成した。これらの電極の形成は、厚さ20nmのTi層、厚さ100nmのAl層、厚さ20nmのTi層、および厚さ300nmのAu層を順次形成し、リフトオフした後、600℃で1分間アニールすることにより合金化することにより行なった。
次に、ソース電極60およびドレイン電極70の形成と同様の工程により、ゲート電極80を形成した。ゲート電極80の形成は、厚さ50nmNi層および厚さ500nmのAu層を順次形成することにより行なった。ゲート長は2μmとした。
こうして得られたIII族窒化物半導体デバイス4であるHEMTは、III族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13上に、少なくとも1層の1層のIII族窒化物層20としてGaN層26およびAl0.2Ga0.8N層27が形成され、Al0.2Ga0.8N層27上にソース電極60、ドレイン電極70、およびゲート電極80が、お互いに分離され、かつ、ゲート電極80がソース電極60とドレイン電極70との間に位置するように、配置されていた。
実施例Aと同様にして、III族窒化物複合基板1について、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mS、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSを算出して、表6にまとめた。さらに、支持基板11の熱膨張係数αSおよびIII族窒化物膜13の熱膨張係数αIII-Nを熱機械分析装置により測定し、支持基板の熱膨張係数αSに対するIII族窒化物膜の熱膨張係数αIII-Nの比αIII-N/αSを算出して、結果を表6にまとめた。さらに、支持基板11の厚さtSおよびIII族窒化物膜13の厚さtIII-Nを、デジタルインジケーターにより測定し、支持基板11の厚さtSに対するIII族窒化物膜13の厚さtIII-Nの比tIII-N/tSを算出して、結果を表6にまとめた。
また、以下のようにして、III族窒化物半導体デバイス4の歩留率を算出した。すなわち、III族窒化物半導体デバイス4であるHEMTに5Vのゲート電圧を与えたときに、そのHEMTからリークしたゲート電流密度が1×10-6A/cm2以下の基準に適合したものを良品、適合しなかったものを不良品とし、良品を良品と不良品の合計で除したものの百分率を歩留率とした。
Figure 0006248395
表6を参照して、III族窒化物複合基板であれば、支持基板11としてAl23−SiO2複合酸化物基板、ムライト基板、およびムライト−YSZ基板のいずれかを有するIII族窒化物複合基板1を用いても、そのIII族窒化物膜の厚さが110μm(この値は10μm〜250μm)とし、直径が75mm〜150mmであり、支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値mSが1.5nm(この値は0.3nm以上20nm以下)であり、支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSが0.1(この値は0.005以上0.4以下)であるIII族窒化物複合基板1を用いて作製されたIII族窒化物半導体デバイスの歩留が高かった。また、支持基板11の熱膨張係数αSに対するIII族窒化物膜13の熱膨張係数αIII-Nの比αIII-N/αSが0.75以上1.25以下である場合、支持基板11の厚さtSに対するIII族窒化物膜の厚さtIII-Nの比tIII-N/tSが0.02以上1以下である場合に、作製されたIII族窒化物半導体デバイスの歩留が高かった。
(実施例G)
図7を参照して、支持基板11としてAl23−SiO2複合酸化物基板(基板全体に対してAl23が88質量%でSiO2が12質量%である)基板を用いたこと、研削および作用係数FEが5.9×10-172/sの仕上げ研磨により支持基板11の厚さを250μmとしたこと、直径をそれぞれ75mm〜150mmの間で変動させた1III族窒化物複合基板1を作製したこと、得られたIII族窒化物複合基板1をさらに洗浄したこと以外は、実施例Aと同様にして、III族窒化物複合基板1を作製した。ここで、支持基板11は、熱伝導率が15W・m-1・K-1で、ヤング率が270GPaであった。また、洗浄方法は、界面活性剤と純水とを用いたスクラブ洗浄、塩酸またはTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)と純水とを用いた二流体洗浄、ならびに塩酸またはTMAHと純水とを用いたメガソニック洗浄を組み合わせることにより実施した。
2.III族窒化物半導体デバイスの作製
図6を参照して、本実施例においては、III族窒化物半導体デバイス4として、SBDを作製した。図1に示すIII族窒化物複合基板1のIII族窒化物膜13の主面13m上に、MOVPE法により、III族窒化物層20として、厚さ2μmのn+−GaN層(キャリア濃度が2×1018cm-3)、厚さ7μmのn-−GaN層(キャリア濃度が5×1015cm-3)を順にエピタキシャル成長させることにより、積層III族窒化物複合基板を得た。
次に、n-−GaN層29上にEB(電子線)蒸着法により、厚さ4nmのNi層および厚さ200nmのAu層を順次形成し、アニールにより合金化することによりショットキー電極である第1電極30を形成した。電極径は200μmとした。第1電極30上に、EB蒸着法により、厚さ200nmのTi層、厚さ100nmのPt層、および厚さ1000nmのAu層を順次形成することによりパッド電極(図示せず)を形成した。
積層III族窒化物複合基板から支持基板および接合膜を研削により除去した。研削には平均粒径が40μm〜50μmのダイヤモンド砥粒を用いたビトリファイド砥石を用いた。
図6を参照して、積層III族窒化物基板から支持基板および接合膜が除去された露出したIII族窒化物膜13の主面13n上に、EB蒸着法により、厚さ20nmのTi層、厚さ200nmのAl層、および厚さ300nmのAu層を順次形成し、アニールすることにより、オーミック電極である第2電極50を形成した。こうして、SBDとしてのIII族窒化物半導体デバイス4が得られた。
実施例Aと同様にして、III族窒化物複合基板1について、支持基板11側の主面11nの二乗平均平方根粗さの平均値mSを算出して、表7にまとめた。さらに、III族窒化物複合基板1について、III族窒化物膜13側の主面13mにおける不純物金属原子の濃度を、TXRF(全反射蛍光X分析)法により測定して、表7にまとめた。ここで、TXRF法による測定は、W(タングステン)線源を用いて、0.05°の入射角で行なった。
また、以下のようにして、III族窒化物半導体デバイス4の歩留率を算出した。すなわち、III族窒化物半導体デバイス4であるSBDについて逆方向の電流―電圧特性を測定し、そのSBDの耐圧が300V以上の基準に適合したものを良品、適合しなかったものを不良品とし、良品を表品と不良品との合計で除したものの百分率を歩留率とした。III族窒化物半導体デバイスの歩留率を表7にまとめた。
Figure 0006248395
表7を参照して、厚さ110μmのIII族窒化物膜を有する直径75mm(この値は75mm以上)のIII族窒化物複合基板であって、III族窒化物膜側の主面における不純物金属原子の濃度が3×1012原子/cm2以下であるIII族窒化物複合基板を用いて作製されたIII族窒化物半導体デバイスの歩留が高かった。
(実施例H)
図9および図10を参照して、支持基板11として熱伝導率が2W・m-1・K-1〜300W・m-1・K-1の間にある直径75mmの基板を用いたこと、直径75mmのIII族窒化物膜ドナー基板13Dの貼り合わせ主面と反対側の主面13mから研削および研磨を行なってIII族窒化物膜13の厚さを110μmとしたこと、支持基板11側の主面11nの仕上げ研磨においては作用係数FEが9.0×10-172/sの条件で研磨したこと、以外は、実施例Aと同様にして、III族窒化物複合基板1およびIII族窒化物半導体デバイス4を作製した。ここで、III族窒化物膜ドナー基板13Dの研削には、平均砥粒が25μm〜35μmのダイヤモンド砥粒を含むビトリファイド砥粒を用いた。また、支持基板11の熱伝導率は、酸化物原料の配合比率、および焼成条件を調整することにより行った。
実施例Aと同様にして、III族窒化物半導体デバイス4の歩留率を算出して、表8にまとめた。
Figure 0006248395
表8を参照して、厚さ110μm(この値は10μm以上250μm以下)のIII族窒化物膜を有する直径75mm(この値は75mm以上)のIII族窒化物複合基板であって、熱伝導率が3W・m-1・K-1以上280W・m-1・K-1以下である支持基板を有するIII族窒化物複合基板を用いて作製されたIII族窒化物半導体デバイスの歩留が高かった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 III族窒化物複合基板、1L,1LS 接合基板、2 積層III族窒化物複合基板、3 積層基板、4 III族窒化物半導体デバイス、5D,5Dr 支持体付III族窒化物膜ドナー基板、11 支持基板、11m,11n,12am,12bn,13m,13n 主面、12,14 接合膜、13 III族窒化物膜、13D,13Dr III族窒化物膜ドナー基板、13i イオン注入領域、15 III族窒化物膜ドナー基板支持体、20 III族窒化物層、21 n−GaN層、22 n−In0.05Ga0.95N層、23 活性層、24 p−Al0.09Ga0.91N層、25 p−GaN層、26 GaN層、27 Al0.2Ga0.8N層、28 n+−GaN層、29 n-−GaN層、30 第1電極、33,43 パッド電極、40 デバイス支持基板、44 接合金属膜、45 デバイス支持基板電極、50 第2電極、60 ソース電極、70 ドレイン電極、80 ゲート電極。

Claims (14)

  1. 支持基板と、厚さが10μm以上250μm以下のIII族窒化物膜と、が貼り合わされた直径が75mm以上のIII族窒化物複合基板であって、
    前記支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値mSが0.3nm以上20nm以下であり、前記支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値mSに対する二乗平均平方根粗さの標準偏差sSの比sS/mSが0.005以上0.4以下であり、
    前記III族窒化物膜側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値m III-N が0.15nm以上3nm以下であり、前記III族窒化物膜側の主面の二乗平均平方根粗さの平均値m III-N に対する標準偏差s III-N の比s III-N /m III-N が0.008以上0.5以下であるIII族窒化物複合基板。
  2. 直径Dに対する前記支持基板側の主面の反りWの比W/Dが−7×10-4以上8×10-4以下である請求項1に記載のIII族窒化物複合基板。
  3. 前記支持基板の熱膨張係数αSに対する前記III族窒化物膜の熱膨張係数αIII-Nの比αIII-N/αSが0.75以上1.25以下であり、前記支持基板の厚さtSに対する前記III族窒化物膜の厚さtIII-Nの比tIII-N/tSが0.02以上1以下である請求項1または請求項2に記載のIII族窒化物複合基板。
  4. 前記支持基板の熱伝導率λSが3W・m-1・K-1以上280W・m-1・K-1以下である請求項1〜のいずれか1項に記載のIII族窒化物複合基板。
  5. 前記支持基板のヤング率ESが150GPa以上500GPa以下である請求項1〜のいずれか1項に記載のIII族窒化物複合基板。
  6. 直径が100mm以上である請求項1〜のいずれか1項に記載のIII族窒化物複合基板。
  7. 直径が125mm以上300mm以下である請求項1〜のいずれか1項に記載のIII族窒化物複合基板。
  8. 請求項1に記載のIII族窒化物複合基板と、前記III族窒化物複合基板の前記III族窒化物膜側の主面上に配置されている少なくとも1層のIII族窒化物層と、を含む積層III族窒化物複合基板。
  9. 請求項1に記載のIII族窒化物複合基板中の前記III族窒化物膜と、前記III族窒化物膜上に配置されている少なくとも1層のIII族窒化物層と、を含むIII族窒化物半導体デバイス。
  10. 請求項1に記載のIII族窒化物複合基板の製造方法であって、
    支持基板と、III族窒化物膜ドナー基板と、を貼り合わせることにより、直径が75mm以上の接合基板を形成する工程と、
    前記接合基板の前記III族窒化物膜ドナー基板の貼り合わせ主面から内部に所定の距離に位置する面で前記III族窒化物膜ドナー基板を切断することにより、前記III族窒化物複合基板を形成する工程と、
    前記工程のいずれかひとつの工程の前、途中または後に、前記III族窒化物複合基板の支持基板側の主面を研磨することにより、前記支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さを調整する工程と、を含むIII族窒化物複合基板の製造方法。
  11. 請求項1に記載のIII族窒化物複合基板の製造方法であって、
    支持基板と、III族窒化物膜ドナー基板と、を貼り合わせることにより、直径が75mm以上の接合基板を形成する工程と、
    前記接合基板の前記III族窒化物膜ドナー基板の貼り合わせ主面と反対側の主面から研削、研磨およびエッチングの少なくともいずれかを行なうことにより、前記III族窒化物複合基板を形成する工程と、
    前記工程のいずれかひとつの工程の前、途中または後に、前記III族窒化物複合基板の支持基板側の主面を研磨することにより前記支持基板側の主面の二乗平均平方根粗さを調整する工程と、を含むIII族窒化物複合基板の製造方法。
  12. 請求項1に記載のIII族窒化物複合基板を準備する工程と、
    前記III族窒化物複合基板の前記III族窒化物膜側の主面上に、少なくとも1層のIII族窒化物層を成長させる工程と、を含むIII族窒化物半導体デバイスの製造方法。
  13. 前記III族窒化物層を成長させる工程の後に、前記III族窒化物複合基板から前記支持基板を除去する工程をさらに含む請求項12に記載のIII族窒化物半導体デバイスの製造方法。
  14. 前記III族窒化物層を成長させる工程の後、前記支持基板を除去する工程の前に、前記III族窒化物層上にデバイス支持基板を貼り合わせる工程をさらに含む請求項13に記載のIII族窒化物半導体デバイスの製造方法。
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