JP6247932B2 - 細胞培養装置 - Google Patents

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Description

本発明は、細胞培養装置に関する。特に、多能性幹細胞の培養に適する細胞培養装置に関する。
幹細胞は、血球、粘膜上皮、表皮等特定の機能を有する細胞に分化する能力を細胞分裂後も保持し続けるため、個体組織の発生メカニズムの研究に重用される。また医療分野では、治療対象の組織や器官の幹細胞を培養して患者に移植することが期待される。
受精卵から発生する胚性幹細胞(Emblyonic Stem cell, ES細胞)は、あらゆる細胞に分化しうる多能性を有する。そのような多能性を有する幹細胞を人工的に作製する技術も向上している。多能性幹細胞から分化させた任意の細胞を利用することにより、難病の原因解明や薬物の安全確認を分子レベルで行える可能性が高まっている。
上記の基礎研究、臨床研究の進展や実用化には、所望の細胞に分化誘導させ得る未分化の幹細胞の量産が前提となる。多能性幹細胞の大量培養方法として、浮遊培養法がある。浮遊培養法は、培養液を培養槽内で流動させることにより細胞を浮遊させて三次元培養を行う方法である。浮遊培養法は、高密度で幹細胞を培養することができる。浮遊培養法と静地培養法との培養効率を比較すると、例えば、直径20μmのマウス幹細胞を培養する場合、浮遊培養法では培養される細胞の密度は1×106Cells/cm2である。一方、静地培養法で培養される細胞の密度は6×104Cells/cm2である。
特許文献1は、三次元培養に用いられる細胞培養装置の例である。特許文献1では、培養液を培養槽の底面から注入して培養槽内で培養液を循環させる。該培養槽内に形成される培養液の上昇流により、担体に付着させた細胞は培養液中の一定の位置に留められ、三次元培養される。上記の幹細胞培養装置はせん断力が小さいため細胞が担体から剥離しにくく、幹細胞を高密度で培養させることができる。しかし用いられる担体の沈降速度が速い場合、担体を培養液中に浮遊させるためには、培養液の上昇流速を担体の沈降速度と釣り合う速度に調節しなければならない。すなわち上記の細胞培養装置は、培養液の循環流速を調節する配管系が必要で、設備コストが高い。そのため、簡便かつ低コストで、さらに細胞培養効率が良好な細胞培養装置が望まれる。
特許第4561192号公報
本発明の課題は、細胞を高密度かつ簡便に培養する細胞培養装置を低コストで提供することである。特に、多能性幹細胞の大量培養に適する細胞培養装置を提供することである。
本発明は、細胞を培養する培養槽と、該培養槽に担体及び培養液を供給可能な供給手段とを備え、前記供給手段は、前記細胞の培養中に前記培養液を供給することにより、前記培養槽中に上昇流を形成し、前記担体を前記培養槽内に浮遊させる細胞培養装置である。前記培養槽は、底面に前記培養液を供給することにより、前記培養液に速度勾配を有する上昇流を形成させることが好ましい。培養槽内で担体を浮遊させて形成させる担体層における担体面積と、培養液の上昇流が通過する流路の流路面積との比は、1:2〜1:9であることが好ましい。担体の形状はディスク型が好ましい。
本発明は、前記培養槽に供給される前記培養液には沈降速度が異なる担体を含み、複数の担体層が担体の種類ごとに形成される。上記沈降速度が異なる担体は、表面積、質量、比重、形状のうち一つ以上が異なる。
本発明は、担体と培養液を培養槽に供給する工程と、培養中に前記培養液を供給する工程とを含み、培養槽に供給された培養液中に沈降速度が異なる複数種類の担体を含み、担体を多層に浮遊させて培養するようにした細胞培養方法を包含する。
本発明は一の培養槽内で細胞を付着させる担体表面積を増加させ、培養効率を向上させることができる。
本発明の細胞培養装置の一例を示す概略図である。 本発明の担体層の一例を示す上面概略図である。
[細胞培養装置]
本発明は、細胞を培養する培養槽と、該培養槽に担体及び培養液を供給可能な供給手段とを備え、前記供給手段は、前記細胞の培養中に前記培養液を供給することにより、前記培養槽中に上昇流を形成し、前記担体を前記培養槽内に浮遊させる細胞培養装置である。
培養液中に供給された担体は、培養液の上昇流の流速と担体の沈降速度とが釣り合う領域で浮遊する。担体の沈降速度は、担体の表面積や重量、比重等により定まる。したがって担体のサイズや形状を適宜選択して、所望の沈降速度を得られる表面積と重量、比重、形状を備える担体を用いることにより、培養液中の所望の領域で担体を浮遊させることができる。
本発明は、培養液の上昇流に速度勾配を付加し、かつサイズや形状が異なる複数の種類の担体を混用してもよい。複数の種類の担体を混用する場合、沈降速度が同じ担体ごとに一の担体層を形成させ、用いられる担体の種類数に応じた複数の担体層を形成させる。培養液の上昇流に速度勾配を付加する構成としては、後に説明する所定の形状の培養槽や担体の供給量の調節が挙げられ、好ましくは所定の形状の培養槽を用いることにより行われる。
本発明は、培養槽内の各領域における培養液の上昇流の流速に釣り合う適切な沈降速度を備える担体を選択することで、培養槽内の下層部側から上層部側まで、いずれの領域においても担体層を形成させることができる。各担体層は、培養液の上昇流が通過する流路を含む。これにより培養槽の上層部側まで、培養液の上昇流を到達させることができる。本発明において担体層とは、培養液中の同じ領域内で浮遊する担体群により形成される層である。本発明は、培養槽内で形成される担体層を多層化しうる細胞培養装置である。
[培養槽]
本発明に用いられる培養槽は、培養液に上昇流を形成させる構造を有し、灌流培養、振とう・ゆらし培養等に適した公知の培養漕を用いることができる。そのような培養槽の例として、図1に図示する培養槽が挙げられる。該培養槽は、培養槽の下層部に培養液を注入させると、自然に培養液の上昇流を形成させることができる。なお本発明に用いられる培養槽の内壁には、細胞の付着を抑制する成分を塗布してもよい。
図1は本発明の細胞培養装置の一例を示す概略図である。図1において、1は細胞培養装置、2は培養槽、3は培養槽の底面、4は培養槽の上端部、5は培養槽の側壁、6a〜6dは担体層、7a〜7dは担体、8a〜8dは流路、9は培養液、10は培養液注入部、11は培養液と担体とを培養槽2に供給する原液タンク、12は培養槽2からオーバーフローした培養液を受け入れる排出部、13は排出部12から回収した培養液を貯留させる補助タンクである。補助タンク13に貯留される培養液は、培養槽2に循環可能である。担体7a〜7dはいずれも同じ形状であって、7a、7b、7c、7dの順にサイズが大きい。
培養液9は、原液タンク11から、培養槽2の底面3に近い下層部に注入口を配置させた培養液注入部10を介して注入されることで、自然に底面3側から上端部4側へと上昇する上昇流を形成する。培養槽2に担体7a〜7dと培養液とを培養槽への供給を、培養開始から培養終了まで培養液を培養槽2に供給し続けることで、該上昇流を維持できる。他の上昇流形成方法としては、ポンプによる液の移送が挙げられる。担体7a〜7dは全ての種類の担体を単一の原液タンク11から培養槽2に供給できる。ただし種類ごとに異なる原液タンクに準備し、それぞれの原液タンクから培養槽2に供給させてもよい。
培養液を供給し続けた結果、培養槽2からオーバーフローした培養液は、排出部12に排出された後、補助タンク13に貯留される。補助タンク13に貯留された培養液は、培養槽2へ循環させることができる。これにより培養液を再利用して、コストを低減できる。また循環させる培養液は、原液タンク11に貯留される培養液と混合させて培養槽2に供給してもよい。図1中、矢印は、培養液の流れを示す。上記の培養槽2内では培養液9のせん断力が小さいため、担体7a〜7dに付着させた細胞の、担体7a〜7dからの剥離が抑制される。
培養槽2の側壁5は、底面3側から上端部4側に向かって底面領域の外側に傾斜する。すなわち該培養槽2は、底面3に平行な断面の面積が、上端部4側に向かうにしたがって大きくなる形状である。上記の形状を有する培養槽2内で培養液9の上昇流は、自然に速度勾配が付与される。すなわち培養液9の上昇流の流速は、底面3近傍の下層部側から上端部4近傍の上層部側に向かって徐々に遅くなる。
上記の培養槽を用いることにより、培養液の上昇流への速度勾配の付加を簡便に行うことができる。なお、円筒形のシリンダー型の培養槽を用いる場合も、培養液の上昇流に速度勾配を付与させることができる。その場合、混用される担体の種類ごとの供給量を調節し、担体面積と流路面積との比に勾配を付与する。
培養終了後は、培養液の供給を停止することで培養槽内の上昇流がなくなり、自然に細胞が付着した状態の担体が培養槽底部に沈降する。沈降した担体7a〜7dを不図示の剥離槽に回収し、担体から培養細胞を剥離させて、細胞を回収する。担体7a〜7dは異なる種類のものを全て同時に回収できるが、別々に回収してもよい。
[担体層]
本発明は、速度勾配が付与された培養液中で沈降速度が異なる複数の種類の担体を混用することにより、担体層を多層化させることができる。担体層の層数は、用いられる担体の種類数により決定することができる。一種類の担体により一の担体層を形成させてもよく、複数種類の担体を用いて複数の担体層を形成させてもよい。同一培養液内で沈降速度が同じ担体は一の担体層を形成する。担体の沈降速度は担体のサイズや形状、材料に基づいて定まる表面積および質量によって定まる。
例えば同じ材料で作製された同じ形状でサイズが異なる4種類の担体を所定量培養液に供給する場合、サイズが大きな担体からなる担体層を下層部側、サイズが小さな担体からなる担体層を上層部側として、担体層が4層形成される。なお培養槽の下層部側とは、培養槽内の培養液で満たされている領域のうち、培養槽の底面に対し垂直な方向の長さで、底面側の50%の領域を意味し、上層部側とは上端部側の50%の領域を意味する。
図1で説明すると、培養槽2に供給された担体7a、7b、7c、7dは、上記の記載順にサイズが大きく沈降速度が速い。サイズが最も大きく沈降速度が最も速い担体7aは、培養槽2の最も底部側に担体層6aを形成する。担体7aより小さな担体7b、7c、7dは、培養液の上昇流にのって培養槽の上端部側に押し上げられる。培養液9の上昇流の流速は、培養槽の上端部4側(上昇流の下流側)に向かうにしたがって遅くなる。担体7b、7c、7dは、それぞれの沈降速度と培養液の上昇流の流速とが釣り合う領域まで押し上げられ、該領域に留まって浮遊し、担体層6b、6c、6dを形成する。
本発明においては、担体層が形成されても、せん断力が抑制された状態で浮遊培養を行えるため、担体から細胞が剥離することを防止でき、培養効率を向上させることができる。また、本発明で形成させる担体層は、一層でも複数層でもよい。担体層を複数有する場合、担体層を一層だけ有する細胞培養装置と比較して広い担体表面を確保することができる。そのため該担体表面に細胞を付着させて多量の細胞を培養する観点からは、担体層を多層化させて培養することが好ましい。
担体層の数は、多いほど担体表面に付着させる細胞数を多くすることができる。一方で、培養槽2内での培養液の循環は良好に保たれる必要がある。したがって、担体層の数は、2〜200層が好ましく、5〜150層がより好ましい。特に容積75〜125mLの培養槽を用いる場合は、2〜20層が好ましく、5〜13層がより好ましい。上記の範囲内の担体層数にすることにより、担体の総表面積を増大させ、かつ培養液の良好な循環とを両立することができる。その結果、本発明は多量の細胞を培養液に十分に接触させることができる。
担体層同士の離間間隔は、培養槽の下層部側に形成される担体層間の場合は、0.5〜10mmが好ましく2〜7mmがより好ましい。上層部側に形成される担体層間の場合は、0.5〜10mmが好ましく、2〜7mmがより好ましい。これにより、培養液の循環を良好にすることができる。上記の好ましい離間間隔で複数の担体層を形成するためには、培養液の上昇流の所望の領域の流速と釣り合う沈降速度を備える、所定のサイズおよび形状の担体を適宜選択する。
本発明の複数の担体層のうちの一の担体層の例として、図2に図1の担体層6dの上面概略図を図2に示す。図2の符号は、図1の符号と共通する。本発明において担体面積とは、一の担体層において担体が占める面積、換言すれば一の担体層を構成する担体の片面の面積の和である。図2に例示されるように、担体層に含まれる担体7dは、互いに間隔をあけて浮遊する。担体と担体との隙間が培養液の流路8d(9)となる。流路面積とは、一の担体層片面の担体が存在しない領域の面積である。
多くの細胞を浮遊培養させる観点からは、一の担体層を構成する担体数を多くして広い担体面積を確保することが好ましい。一方で、本発明は培養槽の上層部側でも担体層を形成させるため、該上層部側まで培養液の上昇流を到達させることが求められる。そのため本発明は、各担体層において培養液の上昇流の流路を確保する。
担体面積の確保と培養液の流路の確保との両立の観点から、各担体層における担体面積は流路面積より小さいことが好ましい。具体的には、各担体層における担体面積と流路面積との比が、いずれも1:2〜1:9であることが好ましく、1:3〜1:6であることがより好ましい。上記の面積の比は、担体の供給量の調節により得ることができる。
本発明の細胞培養装置は、せん断力を抑制する観点から、該細胞培養装置に調整層(不図示)を付加してもよい。該調整層で培養液中に含有させる酸素等のガス濃度を調整した後に、培養液を培養槽へ供給することで、培養液中に酸素等を均質に含有させるための撹拌が不要になり、せん断力を抑制することができる。さらに培養液を該調整層と培養槽との間で循環させる場合には、培養液の交換を簡便に行うことができる。
[担体]
本発明は、同一培養液内に供給した場合の沈降速度が異なる複数の種類の担体を混用する。担体の沈降速度は、担体の材料や、サイズ、比重、形状に基づき定まる表面積や質量により異なる。同じ材料と同じ形状とで作製した場合、同じサイズの担体は培養槽内で同一の領域に浮遊し、一の担体層を形成する。サイズが大きな担体と小さな担体とでは、大きな担体の方が沈降速度が速い。したがって、他の条件を同様にして図1に例示される培養槽内にサイズの異なる4種類の担体7a、7b、7c、7dを供給する場合、4つの担体層6a、6b、6c、6dが形成される。すなわち本発明は、沈降速度が異なる担体を混用することにより担体層を多層化させることができる。これにより本発明は、細胞を付着させる担体面積を増大させ培養効率を向上させることができる。なお一の担体層を形成させる場合は、一種類の担体を用いればよい。
本発明に用いられる担体は、そのサイズについて最大外寸が0.1〜5mmが好ましく、1.0〜3mmがより好ましい。その表面積は、0.02〜40.0mm2のものが好ましい。その質量は、0.00005〜0.50mgが好ましい。本発明においては所望の沈降速度を得られるように、上記の好ましい範囲内で最大外寸、表面積、質量のいずれか一つ以上を備える担体を選択する。本発明に用いられる担体は、上記の好ましい最大外寸の範囲内で0.5〜1mm間隔でサイズを異ならせて複数選択される。例えば、最大外寸がそれぞれ5mm、4mm、3mm、2.5mm、2mm、1.5mm、1mm、0.5mm、0.1mmのポリスチレン製担体を用いて、9つの担体層を形成させることができる。
担体のサイズは、対象となる細胞の直径や、培養槽の容積に対応して選択される。例えば直径20μmのマウス幹細胞の培養を行う場合、直径0.5mmのディスク型担体はディスクの表裏あわせて250細胞分の面積を有する。したがって、上記のディスク型担体に5細胞を付着させた場合、細胞の種類によっては細胞を50倍に増殖させることができる。
また、上記の範囲内でかつ培養槽の最小内寸の1/10以下のサイズの担体を選択することが好ましい。これにより培養槽内で担体を適度に分散させ、形成される担体層中に流路を確保することができる。また担体同士の接触を抑制することができる。また担体層の担体面積と流路面積との比を1:2〜1:9に調整する観点からも、担体のサイズは、担体の供給量と併せて考慮される。
担体の沈降速度は、担体の形状により異なる。ディスク型担体は、球状の担体と比較して沈降速度が速い。したがって、ディスク型担体と球状担体とを組み合わせて用いる場合、培養槽の底面側に球状担体の担体層が形成され、培養槽の上端部側にディスク型担体の担体層が形成される。
培養液の上昇流の流速調整を省力化する観点からは、沈降速度が遅い形状の担体に統一して用いることが好ましい。そのような形状として具体的にはディスク型、フィラメント型、球状等が挙げられる。ディスク型担体は、担体同士が接触しにくく、接触した場合も接触面積が少ないため、細胞の剥離を抑制することができる。またディスク型担体は、加工成形が容易であるので製造コスト面からも好ましい。
培養液の上昇流に速度勾配を付与する構造の培養槽を用いる場合、上記に説明した形状やサイズの選択により沈降速度を異ならせた複数の種類の担体を、均等な割合で培養液中に供給することにより、上記の流路面積と担体面積との比を各担体層で同等にすることができる。ただし、複数の種類の担体の供給量比は、本発明の作用効果を得られる限りにおいて、不均等であることも許容される。
培養液の上昇流に速度勾配を付与しない形状の培養槽を用いる場合には、担体の供給量に勾配を付与することで培養液の上昇流に速度勾配を付与することができる。例えばシリンダー型の培養槽を用いる場合は、培養槽の底面側に浮遊させる担体の供給量を多くし、上端部側に浮遊させる担体の供給量を少なくすると、底面側に形成される担体層の流路面積が小さくなり、上端部側に形成される担体層の流路面積が大きくなる。これにより、培養液の上昇流の上流側の流速と比較して下流側の流速を遅くさせることができる。
担体の材料としては、多能性幹細胞、特にマウスES細胞やヒトES細胞の培養に使用する公知の材料を用いることができる。成形加工性の観点からは、ポリスチレン、ニトロセルロース、ナイロン、ポリウレタン等が好ましい。
上記の担体に、幹細胞付着性物質をコートさせることも好ましい。幹細胞付着性物質の例としては、フィブロネクチン、コラーゲン等の細胞結合物質が好ましく、特にE−カドヘリン、マトリゲル、ラミニン等がより好ましく用いられる。本発明において、上記の幹細胞付着性物質は一種を用いてもよく、二種以上を混合させて用いてもよい。該幹細胞付着性物質は、常法にしたがって製造してもよく、市販品を用いてもよい。担体表面に接触した幹細胞は、幹細胞表面に発現する所定の基底膜成分と、担体表面にコートさせた幹細胞付着性物質とが互いの親和性により強固に結合するため、担体表面に十分に接着させることができる。
E−カドヘリンは、未分化のマウスES細胞で発現するタンパク質の一種で、多能性幹細胞の付着性にかかわる物質として知られている。マトリゲルは、マウスEHS肉腫から抽出、生成される基底膜成分である。マトリゲルにはIV型コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、エンタクテン等が含有される。ラミニンは、基底膜を構成する主要タンパク質の一つであり、細胞の接着、遊走、増殖に関与すると考えられている。本発明においては、ヒトES細胞が発現する接着受容体と高い親和性を有するラミニンとして、ヒトラミニンα5β1γ1、ヒトラミニンα3β3γ2が、好ましく用いられる。
幹細胞付着性物質の好ましいコート量は、付着性向上の観点から、担体に対しコートさせ得る最大量であり、具体的なコート量としては、0.6〜1.1μg/cm2が好ましく、0.8〜1.1μg/cm2がより好ましい。
幹細胞付着性物質を担体表面にコートさせる方法は特に限定されない。一例としては、幹細胞付着性物質を蒸留水またはPhosphate Buffered Salin(PBS)で10μg/mLに調製後、ろ過、滅菌した溶液に担体基材を接触させ、室温35℃〜37℃で30〜60分間静置させる方法を挙げることができる。
担体に上記の幹細胞付着性物質を接触させることにより、担体に対し、幹細胞付着性物質を吸着させたり、共有結合させたりすることにより、幹細胞付着性物質を担体に定着させることができる。幹細胞付着性物質を担体基材に接触させる前に、幹細胞付着性物質に予め抗原性分子を結合させておくと共に、担体基材表面に該抗原性分子と特異的に結合する抗体分子を付加させておくことも好ましい。これにより幹細胞付着性物質中の抗原と担体基材表面の抗体とが特異的に結合し、担体表面に幹細胞付着性物質を良好に定着させることができる。
本発明に用いられる担体は、その表面に高低が形成されているものが好ましい。そのような平坦でない表面を備える担体は、同じサイズおよび形状で平坦な担体と比較して沈降速度が遅い。そのため上記の表面粗さを有する担体は、培養液の上昇流の流速が遅い場合でも浮遊させることができる。そのため培養液について、担体を浮遊させるために必要な流速を維持するためのコストを低減することができる。
上記の担体表面に形成される高低は、培養する細胞の直径や柔軟性に対応させて形成される。そのような高低を担体表面に設けることにより、培養液中に懸濁される細胞を担体表面にフィットさせやすくなる。該高低を構成する高部は、細胞を支持する足場として機能する。また細胞剥離抑制作用を奏する。本発明に用いられる担体は表面積を大きくできるため、表面に多量の幹細胞付着性物質を保持させやすい。これにより、良好な幹細胞付着性を有する。
上記の高低は、高部と低部とにより構成される。担体表面積1000000μm2あたりの低部の存在数はおよそ400〜3000000個である。上記の範囲内において、担体表面積1000000μm2あたり1000000〜3000000個が好ましく、1300000〜1700000個がより好ましく、1500000個が更に好ましい。また他の好ましい低部存在数は、担体表面積1000000μm2あたり400〜14000個であり、好ましくは、4000〜7000個である。上記の低部存在数を備える担体は、同時に同等数の高部が存在する。
該担体表面に形成される所定数の高部と低部とにおいて、となりあう高部の頂点と低部の最低点との間隔を高低差とすると、該高低差の平均値は、0.5μmより大きいことが好ましい。またとなりあう高部の互いの頂点間距離は、いずれも被培養細胞の直径の1〜5%程度であることが好ましい。これにより被培養細胞の足場が確保され、担体表面で細胞を支持しやすくなる。例えば、マウス多能性幹細胞の培養に用いられる担体の場合、好ましい頂点間距離は、0.1〜2.7μmであり、より好ましくは、0.5〜2.0μmである。担体表面の平均高低差は、0.5〜2.7μmが好ましく、0.5〜2.0μmが好ましい。
担体表面の低部および高部の存在数すなわち表面粗さの程度は、被培養細胞の種類に対応して適宜決定される。具体的な考慮すべき要素としては、細胞の移動速度や、細胞のサイズ等が挙げられる。
移動速度が速い細胞を培養する場合は、本発明所定の範囲内で比較的高部の存在数が多い担体が好ましく用いられる。移動速度が速い細胞は、収縮時に急速に収縮して球状に近い形状となる。そのため担体との接触面積が減少し剥離しやすくなる。本発明においては上記の所定の範囲内で低部存在数が比較的多い担体、すなわち高部存在数が多い担体を用いることにより、移動速度が速い細胞の低付着性を補完できる。
また、担体の表面粗さの選択においては、細胞のサイズが考慮される。特に幹細胞は付着しやすい性質を有する。したがって、幹細胞培養においてコロニー形成を防止するためには、被培養幹細胞のサイズに対し適切な表面粗さを備える担体を用いることが好ましい。播種密度が過度に高い培養液で頂点間距離が大きな担体を用いると、低部に多数の幹細胞が入り込みコロニーを形成する可能性が高まる。コロニーになった幹細胞は、コロニー中心部から分化が進む傾向がある。本発明は、所定の好ましい頂点間距離や低部存在数の範囲内で被培養幹細胞のサイズに対応する担体を選択することで、未分化細胞培養を効率よく行うことができる。
担体表面に上記の高低を形成する方法としては、担体にガラス板を圧接させる方法や、射出成型法が挙げられる。上記の圧接による製造方法を行う場合、圧接材は、選択される担体の硬度に対応して適宜選択される。好ましい圧接材としては、ガラス、ステンレス、鉄等の金属、セラミックが挙げられる。
[培養液]
本発明においては、従来公知の幹細胞培養液を用いることができる。従来公知の培養液の例としては、Dulbecco's Modified Eagle's Medium(DMEM)、Grasgow Minimum Essential Medium(GMEM)、RPMI640等を挙げることができる。
上記に例示した培養液にL−グルタミン、インスリン、トランスフェリン、エタノールアミン、セレニウム、2−メルカプトエタノール、L―アラニル−L−グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラチン酸、グリシン、L−プロリン、L−セリン等公知の成分を添加することができる。培養液には、ウシ胎児血清(FBS)等添加できるが、無血清培養してもよい。
上記の培養液に、分化抑制剤として白血病抑制因子(LIF)を添加してもよい。ヒト多能性幹細胞を培養する場合は、共培養法を適用しない公知の方法により未分化状態の細胞を培養することが好ましい。これにより、フィーダー細胞によるヒト多能性幹細胞への影響を回避することができる。
[細胞培養方法]
本発明の細胞培養方法は、担体と培養液を培養槽に供給する工程と、培養中に前記培養液を供給する工程を含み、好ましくは沈降速度が異なる複数種類の担体を供給して、多層に浮遊させ、該担体群に細胞を付着させて浮遊培養する。
[担体と培養液を培養槽に供給する工程]
本発明の細胞培養方法においては、上記に説明した培養液を、培養液注入部を介して培養槽底面近傍から供給し、培養液で培養漕内を満たす。供給速度は3〜6 mL/secが好ましく、4〜5 mL/secがより好ましい。培養槽に培養液を供給しつづけることにより培養液の上昇流が形成される。図1に図示する培養装置を用いる場合、上昇流の流速は、底部近傍の下層部では3〜6cm/secであって、上端部に向かうにつれて遅くなり、上端部近傍の上層部では、0.15〜0.4cm/secになる。
同一形状の担体を、サイズを変えて4〜10種類培養液中に入れる。用いられる担体の最大外寸が3mm以上の場合は、サイズ間隔を0.3〜1.0mm間隔で異ならせることが好ましい。また、担体の最大外寸が3mm未満の場合は、サイズ間隔を0.1〜0.3mm間隔で異ならせることが好ましい。上記のサイズ条件に基づいて担体を選択することにより、上記の培養液内での沈降速度が異なる担体を準備することができる。
そのような担体を速度勾配を有する培養液の上昇流に供給すると、各担体は、その沈降速度と同等の流速を備える培養液の領域で担体層を形成する。また上記のサイズ間隔で担体を選択することにより担体層同士の離間間隔を、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは3〜8mmとすることができる。担体の形状は、ディスク型等が好ましい。
培養液量75〜125mLに対する上記の担体の供給量は、100〜5000個が好ましく、500〜4000個がより好ましい。また、同一形状かつ同一サイズの担体の供給量は、100〜1000個が好ましく、200〜800個がより好ましい。これにより本発明は、各担体層における担体面積と流路面積との面積比を所定の範囲内にすることができる。
[培養中に培養液を供給する工程]
図1に図示される細胞培養装置の培養槽においては、培養液を供給することで自然に速度勾配を有する培養液の上昇流が形成される。培養液を培養槽に供給し続けることで該上昇流を維持できる。また他法として、培地の循環により培養槽内に培養液の上昇流を形成することもできる。図1に図示される培養槽を用いる場合は、上記担体の種類ごとの個数の割合を均等にすることで、適切な流路面積と担体面積とを備える担体層を複数形成させることができる。また各種の担体の供給割合を適宜調節しても担体層を複数形成できる。
サイズごとの担体の供給量は、本発明の作用効果を発揮する限り、不均等でもよい。例えば、直径5mmと直径2mmと直径0.5mmとのディスク型担体を用いる場合、直径5mmのディスク型担体の供給量を2〜4個とし、直径2mmのディスク型担体の供給量を50〜150個とし、直径0.5mmのディスク型担体の供給量は1000〜3000個とすることができる。
上記に例示するように、比較的大きなサイズの担体を少量供給し、担体のサイズが小さくなるほど供給量を増加させた結果、各担体層における担体面積と流路面積との比に勾配が付与される場合、底面に平行な断面半径が一定のシリンダー型の培養槽を用いても培養液の上昇流に速度勾配が付与されるため、複数の担体層を形成させることができる。
培養液に、単一細胞に分散させた細胞を播種する。播種される細胞は特に限定されないが、本発明は、特にヒト、マウス、ウシ等種々の哺乳動物由来のES細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、多能性生殖幹細胞(mGS細胞)等に好適である。上記の細胞の本発明の担体に対する播種密度は、5〜100cells/cm2が好ましく、20〜50cells/cm2がより好ましい。
培養漕内で培養液の上昇流を形成させて細胞を培養液に懸濁させ、かつ培養漕の底部に沈降する複数の種類の担体を浮遊させる。各担体は、同一サイズおよび同一形状を備え同等の沈降速度を備える担体ごとには、培養液の上昇流にのって同一領域に浮遊し、複数の担体層を形成する。各担体層中の担体は均質に分散し、それぞれの担体層中で培養液の上昇流の流路を形成する。各担体層における流路面積と担体面積との比は、好ましくは1:2〜1:9、より好ましくは1:3〜1:6になる。また担体層同士の離間間隔は、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは3〜8mmになる。
本発明は、担体層を多層化させることにより一の培養槽内に広い担体面積を確保できる。そのため多量の細胞を効率的に培養できる。また該培養液のせん断力が弱いため、培養細胞が担体から剥離しにくい。すなわち本発明は効率的に細胞培養を行うことができる。本発明の細胞培養方法における培養細胞の上記担体に対する接着効率は、50〜100%である。
本発明においては、細胞を担体表面に分散状態で付着させる。本発明において分散状態とは、担体表面に細胞を単一細胞として個々に付着させた状態を意味し、さらに各細胞が明確なコロニーを形成しない程度に互いの接触領域が少ない状態で付着させることを包含する。したがって本発明により培養される細胞は細胞塊になりにくく未分化状態を維持しやすい。
上記の方法により、コンフルエントになるまで担体上で細胞の培養を続ける。培養条件は、従来公知の浮遊培養条件を適用することができる。例えばマウスES細胞を培養する場合、温度条件35〜37℃、2〜5%CO2の環境下で行うことができる。
本発明を用いて培養された細胞の未分化率は、95〜100%程度であると推察される。細胞を分散状態で培養させる場合、細胞同士の接触領域が少ない。そのため細胞がコロニーを形成しにくい。従って、担体に付着させた全ての細胞に十分に分化抑制剤を作用させることができる。その結果、細胞の未分化状態を維持させることができる。
培養細胞の未分化状態の確認は、後に詳説するES細胞の種類に対応するALP活性や特異的マーカー遺伝子の発現量を測定することにより行うことができる。上記特異的マーカーとしては、OCT-3/4やRex1/Zfp42等の遺伝子産物の発現を利用することができる。ALP活性の検出の一例は、培養したES細胞をPBSで洗浄後、66%アセトン/3%ホルマリンを含むクエン酸溶液で固定し、PBSで洗浄後、naphthol AS-BI phosphate alkaline染色液で15分間処理し、発色反応させることにより行われる。
また、抗原分子を未分化マーカーとして利用してもよい。各種抗原分子の低減、消失によってもES細胞の分化を確認することができるからである。そのような抗原分子の例として、マウスES細胞の場合は、SSEA-1、ヒトES細胞の場合は、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、TRA-1-81、GCTM-2等がある。
未分化マーカーの利用例として以下の方法がある。まず、培養されたES細胞からRNAを調整し、常法に従ってcDNAを合成する。該cDNAを鋳型としてPCRにより、所定の未分化マーカーの遺伝子の断片を増幅させる。得られたPCR産物を染色し検出する。未分化マーカーが有意に検出されることにより、培養されたES細胞が未分化であることを確認できる。
培養液がコンフルエントになった場合、本発明は常法により幹細胞を継代させることができる。継代は少なくとも3〜10継代まで行い得る。
培養した幹細胞を回収する場合、培養液中から幹細胞を分散状態で付着させた担体を回収し、常法により担体から単一細胞を得る。培養液の注入等による培養液の循環を停止させると担体は3〜4時間で自然に培養槽の底部に沈降する。したがって、本発明において担体の回収は、該沈降した担体を培養液から取り出すことにより、極めて簡単に行うことができる。
単一細胞は、常法に従って得ることができる。一例として、タンパク質分解酵素溶液を用いる方法がある。この方法では、まず培養細胞が分散状態で付着する担体を洗浄し、洗浄後の担体に該トリプシン等のタンパク質分解酵素溶液を加え、35〜37℃の温度条件で3〜10分間培養する。続いて該細胞を本発明で用いる上記培養液に懸濁させて、単一細胞を得る。
他の回収方法の例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液を用いる方法がある。この方法においては、上記方法と同様にして担体を洗浄後、EDTA溶液を濃度が0.01〜100mM程度になるように添加し、35〜37℃の温度条件で1〜60分間処理して担体から細胞を剥離させ、上記本発明で用いる培養液に懸濁させて単一細胞を得る。
[実施例]
本発明を実施例により説明する。しかし、本発明は以下の実施例に限定されない。
図1に図示される培養装置を用いて、原液タンクから培養槽に、培養液を注入速度4mL/secで注入した。培養槽の容積は、100mLであった。培養液で培養槽が満たされた後も培養液の注入を継続して培養液の上昇流を形成した。培養液のオーバーフロー分は排出部を介して補助タンクへ導入させた。なお、培養槽と排出部との間はフィルタを設け、担体や細胞の培養槽外へ排出を防止した。
培養槽内に表1に示される担体を供給した。担体はポリスチレン製で、厚み0.01〜0.1mmのディスク型である。いずれもE−カドヘリンをコートさせた。培養槽内にマウスES細胞を2.5×106細胞播種した。培養液の上昇流により8層の担体層が形成された。各担体層を構成する担体の表面に、マウスES細胞を付着させ、37℃、2%CO2条件下で細胞培養を開始した。常法に従って継代操作をしながら培養を続け、78時間後、培養液の注入を終了した。培養液の循環が徐々に遅くなり、担体が自然に沈降した。全ての担体を完全に沈降させた後、該担体を培養槽から取り出し細胞を回収した。細胞の回収は、担体にAccutaseを添加して37℃で約10分間インキュベートした後、培養液に懸濁させて単一細胞とすることにより行った。
[細胞数の測定方法]
実施例で培養した後Accutaseで分散させた細胞を回収し、培養槽内にいれて沈降させた。培養槽底部に沈降させた細胞を異なる視野から3枚写真撮影し、細胞数の平均値を計数した。総細胞数は、係数平均値×培養槽底面積/視野面積で算出した。
1 細胞培養装置
2 培養槽
3 培養槽の底面
4 培養槽の上端部
5 培養槽の側壁
6a、6b、6c、6d 担体層
7a、7b、7c、7d 担体
8a、8b、8c、8d 流路
9 培養液
10 培養液注入部
11 原液タンク
12 排出部
13 補助タンク

Claims (6)

  1. 細胞を培養する培養槽と、
    前記細胞の培養液の原液と、培養液での沈降速度が夫々異なる複数種類の担体と、を備える第1のタンクと、
    前記培養槽からオーバーフローした培養液を回収する部材と、
    前記回収された培養液を貯留する第2のタンクと、
    前記第2のタンクから前記培養槽の下層を成す領域に培養液を供給して培養液の上昇流を前記培養槽内に形成し、前記複数種類の担体を前記培養槽内で多層に浮遊させながら、培養液を前記培養槽と前記第2のタンクとを循環させる供給手段と、
    を備え、
    前記供給手段は、前記培養槽と前記第2のタンクとを循環する培養液に、前記第1のタンクの培養液と担体とを混合させることができるようにした細胞培養装置。
  2. 前記培養槽内の培養液の上昇流に速度勾配が形成される請求項1に記載される細胞培養装置。
  3. 培養槽内で担体を浮遊させて形成させる担体層における、担体面積と、培養液の上昇流が通過する流路の流路面積との比が、1:2〜1:9である請求項1または請求項2に記載される細胞培養装置。
  4. 担体の形状がディスク型である請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載される細胞培養装置。
  5. 前記培養槽に供給される前記培養液には沈降速度が異なる担体を含み、複数の担体層が担体の種類ごとに形成される請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載される細胞培養装置。
  6. 前記培養液に、表面積、質量、比重、形状のうち一つ以上が異なる担体を含む、請求項5に記載の細胞培養装置。
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