JP6245697B2 - 高濃度油含有廃水の生物処理方法 - Google Patents

高濃度油含有廃水の生物処理方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6245697B2
JP6245697B2 JP2013273149A JP2013273149A JP6245697B2 JP 6245697 B2 JP6245697 B2 JP 6245697B2 JP 2013273149 A JP2013273149 A JP 2013273149A JP 2013273149 A JP2013273149 A JP 2013273149A JP 6245697 B2 JP6245697 B2 JP 6245697B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
tank
oil
treatment
wastewater
concentration
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013273149A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015127034A (ja
Inventor
友子 東
友子 東
万理 高石
万理 高石
康平 市川
康平 市川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Eco Tech Corp
Original Assignee
Nippon Steel and Sumikin Eco Tech Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel and Sumikin Eco Tech Corp filed Critical Nippon Steel and Sumikin Eco Tech Corp
Priority to JP2013273149A priority Critical patent/JP6245697B2/ja
Publication of JP2015127034A publication Critical patent/JP2015127034A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6245697B2 publication Critical patent/JP6245697B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02WCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO WASTEWATER TREATMENT OR WASTE MANAGEMENT
    • Y02W10/00Technologies for wastewater treatment
    • Y02W10/10Biological treatment of water, waste water, or sewage

Description

本発明は、高濃度の油含有廃水の生物処理方法に関し、更に詳しくは、生活廃水、下水、工場廃水、事業所廃水をはじめとした様々な有機性廃水の中でも、特に食品工場廃水やや屠畜・食鳥処理場廃水や厨房廃水のような、油分が、油分/BOD=1/5〜1/1の高い比率で含まれている高濃度の油含有廃水の生物処理を簡便に行うことができる実用価値の高い油含有廃水の生物処理方法に関する。
従来より広く行われている有機性廃水の処理(浄化)方法として、廃水中のBODで示される有機物を、好気性微生物を含んだ活性汚泥を利用して生物学的に分解除去処理する活性汚泥法がある。活性汚泥法は、浄化能力が高く、処理経費が比較的少なくて済む等の利点がある。そして、油分が多く含まれる廃水を処理すると、活性汚泥槽での処理が不十分になることや、スカムの異常発生等、活性汚泥槽における維持管理に問題を生じることが知られている。
ここで、食品工場や屠殺場や屠畜場等からの廃水に含有される油分は、主に動植物性油脂(トリグリセリド)であるが、これらの廃水に限らず、トリグリセリド由来の脂肪酸が多く含まれる種々の廃水もある。そして、この油分もBODで示される有機物の一つであるが、上記したように、油分が多く含まれる廃水を活性汚泥槽で浄化処理すると種々の問題が生じる。このため、このような油分が多く含まれる廃水を活性汚泥槽で浄化処理する場合は、通常、活性汚泥槽の前段にオイルトラップや加圧浮上装置を設けて油を除き、高濃度の油分が活性汚泥槽に流入することを防ぐ手段がとられている。
廃水中の油分は、n−Hex(ノルマルヘキサン)抽出物として測定されており、その測定値を油分として表示している。先にも述べたように、廃水のBODを測定した場合、油分もBOD濃度の測定値の一部に含まれるため、このn−Hex抽出物濃度値(油分)の高い廃水の場合は、当然にBOD値が高くなる。先述したように、油分が多く含まれる廃水を活性汚泥槽で浄化処理すると種々の問題が生じるので、現状では、このような場合には、予め油を取り除いた後に生物処理をすることが行われている。活性汚泥槽で浄化処理する前に油の除去処理を行う目安として、上記したn−Hex抽出物濃度値がBOD値の1/5以上である油分を多く含む廃水を「高濃度油含有廃水」と呼び、このような廃水を処理する場合は、上記したように、活性汚泥槽の前段にオイルトラップや加圧浮上装置を設けるといった方法で、油分を取り除くことが行われている。なお、本発明では、以下、特に明記した場合を除き、「廃水の油分」とは、廃水中のn−Hex(ノルマルヘキサン)抽出物として測定された分析値を意味する。
そして、オイルトラップや加圧浮上装置等で回収された油スラッジは、通常、後段の活性汚泥処理によって生じる余剰汚泥とともに廃棄処分されている。しかし、生物処理を経た余剰汚泥は、標準的な処理の場合でも、生物処理することでその発生量が流入BODの30%程度に低減されるのに対し、オイルトラップや加圧浮上装置で物理的に分離して回収された油スラッジは、特別の処理をすることなく、脱水・廃棄処分されるので、発生量が多く、その処分費が廃水処理費に占める割合は決して低くない。例えば、廃水処理全体にかかる費用のおよそ半分が油スラッジの処分費というケースもある。また、回収した油スラッジが悪臭源となり、周囲の環境を悪化させる要因になる場合もある。
上記に挙げたような課題に対し、近年では、油含有廃水を直接生物処理する方法が検討されてきている。例えば、油脂分解酵素や酵母を、原水や曝気槽などに投入することにより分解効率を促進する方法が提案されている(特許文献1、2参照)。ここで、油が生分解される場合、まず、リパーゼ等の酵素によって油(トリグリセリド)のエステル結合を加水分解し、脂肪酸とグリセリンに分解し、分解した水和性の高い脂肪酸を細胞内に取り込み、β酸化経路を経て有機酸、最終的には、二酸化炭素と水になると予想される。このため、上記した従来技術のように、リパーゼを効率的に放出する微生物や、もしくはリパーゼ製剤を廃水中に添加することで、油の分解速度を上げられるのではないかと考えるのは自然である。
従来、高濃度油含有廃水の浄化処理の際に一般的に行われている、予め油を取り除いた後に行われている生物処理には、好気性微生物を含む活性汚泥により有機性廃水を処理する活性汚泥法が使用されている。活性汚泥法は、浄化能力が高く、比較的に処理経費が少なくて済む等の利点があるが、その一方で、低い処理効率と、大量に出される余剰汚泥の処理が問題となっていた。これに対し、有機性廃水を、まず第1処理槽で、非凝集性細菌を主体とする生物群(主に分散性細菌)により生物処理することで、廃水中の有機物を酸化分解すると同時に非凝集性細菌に変換させ、その後、第2処理槽で、増殖した非凝集性細菌を固着性原生動物に捕食させることによって、生物処理効率を向上させて高負荷状態での運転と、余剰汚泥の低減を可能とした、いわゆる2相活性汚泥法が提案されており(特許文献3参照)、実用化されている。さらに、この2相活性汚泥法の考え方を利用し、より効率のよい安定した有機性廃水の生物処理を可能とし、その実用性を高めるための種々の提案がされている。
例えば、第1処理槽内の水質を経時的に測定し、細菌処理を悪化させる水質の変化を検知した時点で、少なくとも被処理水の第1処理槽への導入を一時停止して、種汚泥等の添加と曝気を行った後、運転を再開することで、処理の悪化を未然に防止することを可能にする有機性廃水の処理方法が提案されている(特許文献4参照)。この文献では、第1処理槽で行う細菌処理の悪化を検知する指標の一つとして、第1処理槽内のpHを挙げており、そのpHが6以下となった場合に第1処理槽の回復操作が必要となるとしている。
また、例えば、より余剰汚泥発生量を低減させる目的で、余剰汚泥の一部を好気条件で処理して返送する工程を付加した構成において、その際に、第1の生物処理工程と第2の生物処理工程における処理をいずれもpH6〜8の条件下となるように制御して行い、さらに、余剰汚泥を可溶化処理(殺菌・溶菌)する際には好気条件での処理をpH5〜6の条件下となるように制御して行うことが提案されている(特許文献5参照)。これらのことは、2相活性汚泥法の第1処理槽における、非凝集性細菌を主体とする生物群(主に分散性細菌)の処理は、微生物の活動環境を考慮してpH6〜8の中性域の条件下で行われていることを示している。
上記したように、従来の技術では、油の生分解経路の律速はトリグリセリドのエステル結合切断の段階であると考えられており、高濃度油含有廃水を直接生物処理することは不可能なことであると考えられていた。また、上記した2相活性汚泥法で、高負荷状態で生物処理することが可能になったとはいえ、このような2相活性汚泥法によっても、高濃度油含有廃水を直接生物処理することができないとする点においては当業者の認識は同様であった。
特開平5−245479号公報 特開2003−227号公報 特公昭56−48235号公報 特許第3035569号公報 特許第5170069号公報
上記した従来技術に対し、発明者らは鋭意研究の結果、少なくとも、開放系の廃水処理システムにおける油の生分解経路の律速はトリグリセリドのエステル結合切断の段階ではなく、このために、上記した従来の、油の分解速度を上げるのに効果的であると考えられていた廃水へのリパーゼの添加は、廃水中の油分の処理を効率化させる効果はないことを確認した。また、検討の過程で、驚くべきことに、微生物において、油を資化する能力は決して特異的なものではなく、多くの微生物が、油を資化する能力を有していることについての知見も得た。本発明者らは、これらの新たな知見に基づき、高濃度油含有廃水を直接生物処理することについての可能性を認識し、さらなる検討を行った。
したがって、本発明の目的は、上記した新たな知見に基づき、従来の油スラッジの発生を伴う、活性汚泥槽の前段にオイルトラップや加圧浮上装置を設ける必要のない方法で、さらに、特に、廃水や曝気槽などに油脂分解酵素や酵母を投入する必要もなく、直接生物処理することで、油分が多く含まれる廃水の浄化を効率的に行うことを可能にする新たな高濃度油含有廃水の生物処理方法を提供することにある。また、本発明の目的は、浄化処理や二次処理が簡便になるにもかかわらず、処理水が、上記した従来の浄化処理方法と同等に、或いはそれ以上に浄化処理されたものとなる経済的な高濃度油含有廃水の生物処理方法を提供することにある。さらに、本発明の目的は、従来、直接生物処理することがされていなかった、n−ヘキサン抽出物濃度(油分)が、油分/BOD=1/5〜1/1(廃水のBODがn−Hex抽出物濃度の1倍〜5倍)である高濃度油含有廃水のいずれにおいても、上記した簡便な方法で、安定して良好な処理が可能な技術を提供することにある。特に、油分/BOD=1/3〜1/1(廃水のBODがn−Hex抽出物濃度の1倍〜3倍)であるような超高濃度の油含有廃水においても、上記した簡便な方法で、安定して良好な処理を可能にできる技術を提供することにある。
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、BOD濃度に対してn−ヘキサン抽出物濃度(油分)が、油分/BOD=1/5〜1/1(廃水のBODがn−Hex抽出物濃度の1倍〜5倍)である油含有廃水を処理する際に、該油含有廃水を第1処理槽に導入し、非凝集性細菌を主体とする生物群により生物処理を行った後、この非凝集性細菌を含む処理水をさらに、活性汚泥槽、或いは、固定床もしくは流動担体を有する接触酸化槽である第2処理槽で生物処理を行うように構成し、さらに、上記第1処理槽における生物処理を、pHを4.0以上5.9以下で行うことを特徴とする高濃度油含有廃水の生物処理方法を提供する。
上記した本発明の高濃度油含有廃水の生物処理方法の好ましい形態は、前記pHが、4.5以上5.9以下であること;前記第1処理槽に導入する油含有廃水が、BOD濃度に対してn−ヘキサン抽出物濃度(油分)が、油分/BOD=1/3〜1/1(廃水のBODがn−Hex抽出物濃度の1倍〜3倍)の超高濃度の油含有廃水であること;前記第1処理槽で処理した前記非凝集性細菌を含む処理水のpHを調整することなく、前記第2処理槽での生物処理を行うこと;が挙げられる。
本発明によれば、従来の油スラッジの発生を伴う、活性汚泥槽の前段にオイルトラップや加圧浮上装置を設ける必要のない方法で、さらに、特に、廃水や曝気槽などに油脂分解酵素や酵母を投入する必要もなく、これらの従来の方法で達成することができなかった、効率的に油含有廃水を直接生物処理することを可能にできる新たな高濃度油含有廃水の生物処理方法の提供が可能になる。本発明によれば、従来、直接生物処理することがされていなかった、n−ヘキサン抽出物濃度(油分)が、油分/BOD=1/5〜1/1(廃水のBODがn−Hex抽出物濃度の1倍〜5倍)である高濃度油含有廃水のいずれにおいても、上記した簡便な方法で、安定して良好な処理が可能になる。特に、油分/BOD=1/3〜1/1(廃水のBODがn−Hex抽出物濃度の1倍〜3倍)であるような超高濃度の油含有廃水においても、上記した簡便な方法で、安定して良好な処理が可能になる、実用価値の極めて高い技術が提供される。
本発明の高濃度油含有廃水の生物処理方法の模式的なフロー図である。 本発明の実施例1の系と比較例1の系とでそれぞれ継続処理した場合の、経過日数と、その際に採水した細菌槽処理水と最終処理水のn−Hex抽出物濃度の変化の状態を示す図である。 本発明の実施例1の系で継続処理した場合の、経過日数と、処理中にそれぞれ採水した最終処理水のBOD濃度の変化の状態と、第2処理槽である接触酸化槽内のpHの変化を示す図である。 本発明の実施例2の系と比較例2の系で継続処理した場合の、経過日数と、処理中にそれぞれ採水した細菌槽内のn−Hex抽出物濃度の変化を示す図である。 本発明の実施例2の系と、比較例1の系と、該比較例1の系よりも低負荷条件で処理した比較例3の系でそれぞれ継続処理した場合の、経過日数と、処理中にそれぞれ採水した細菌槽内のn−Hex抽出物濃度の変化の状態を示す図である。
以下、本発明に関する好ましい実施形態を説明するが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施することもできる。本発明者らは、下記の新たな知見に基づき鋭意検討の結果、本発明に至ったものである。すなわち、油の生分解経路の律速はトリグリセリドのエステル結合切断の段階ではないこと、さらに、微生物において油を資化する能力は決して特異的なものでなく、多くの微生物が油を資化する能力を有しているとの新たな知見から、本発明者らは、そもそも、従来は困難であると考えられていた高濃度油含有廃水を直接生物処理することは不可能なことではないと考えるに至り、かかる観点から、さらなる検討を行った結果、本発明を達成した。具体的には、下記の検討過程を経て、本発明に至った。
本発明者らは、まず、廃水中に高濃度に含まれる油分を迅速に処理するには、活性汚泥槽内の微生物量の確保(維持)が極めて重要な要素となることを見出した。より具体的には、処理対象の高濃度油含有廃水のBOD濃度と、このBOD濃度の一部を占めているn−Hex抽出物濃度(油分)の比率に着目し、この比率に応じて生物処理条件を設定することで、活性汚泥槽の前段にオイルトラップや加圧浮上装置を設けたり、酵素等の添加をすることなく、高濃度油含有廃水を直接生物処理して良好な処理水を得ることが可能になり、廃水中の油分が効率的に処理されることを見出した。
さらに、本発明者らは、高濃度油含有廃水について直接生物処理する場合には、活性汚泥槽の前段に、第1処理槽として、前記した2相活性汚泥法で用いられているような非凝集性細菌を主体とする生物群(主に分散菌)が生息する細菌槽を設け、予め油分を含む有機物を細菌によって生物分解することが極めて有効であることを見出した。さらに、この細菌槽である第1処理槽で高濃度油含有廃水を処理した場合、細菌の増殖が進み、細菌槽中の廃水のn−Hex抽出物濃度(油分)を激減でき連続処理できることが分かった。より具体的には、第1処理槽である細菌槽における処理条件として、そのHRT(水理学的滞留時間)を、例えば、少なくとも3時間、より好ましくは少なくとも5〜6時間程度とすれば、上記した顕著な効果が得られることが分かった。
そして、高濃度油含有廃水の性状や細菌の量(SS)にもよるが、通常の高濃度油含有廃水であれば10時間程度で、他の処理条件に影響されることなく本発明の顕著な効果が十分に得られることを確認した。さらに、例えば、油分/BOD比率が1/1、つまりBOD源が全て油分であるような油分が極めて高い超高濃度油含有廃水であっても、そのHRTを12時間程度と長くすることで本発明の顕著な効果が得られることを確認した。さらに、本発明者らは、このような、廃水中のBOD源がほぼ油分(すなわち、油分/BOD=1/1)であるような廃水を処理する場合には、油分以外のBOD源を外部から廃水に添加し、且つ、処理対象となる廃水中の油分が、少なくとも廃水のBOD濃度の1/2以下(すなわち、廃水のBOD濃度が油分の2倍以上)となるように調整して処理することで、細菌槽のHRTを5〜6時間とすることができることについても確認した。
しかしながら、上記した事実は、廃水中の油分が極めて高く、油分以外のBOD源が極めて少ない超高濃度油含有廃水の場合には、時間をかけて処理するか、処理効率を高める目的で油分以外のBOD源を添加することが必要となることを意味しており、安定した処理条件で処理を行うためには、高濃度油含有廃水の性状によって運転条件を変化させる必要があった。本発明者らは、かかる知見に基づき、高濃度油含有廃水について直接生物処理する場合に、安定した条件でより簡便な処理を可能とするためには、さらなる検討が必要であることを認識した。
上記した認識の下、本発明者らは、細菌槽における処理条件について鋭意検討した結果、高濃度油含有廃水をそのまま細菌槽で生物処理する場合に、単にpHを4.0以上5.9以下、より好ましくは、pHが、4.5以上5.9以下に調整して行うという簡単な条件を追加することで、細菌槽で処理した後に得られる細菌槽処理水のn−Hex抽出物濃度(油分)を、格段に低減でき、しかも、廃水のBOD濃度の1/3以上(すなわち、廃水のBOD濃度が油分の3倍以下)であるような超高濃度の油含有廃水に対しても、細菌槽のHRTを長時間とすることなく同様の効果が得られることを見出した。さらに、このような構成としたことで、得られた細菌槽処理水を、第2処理槽である活性汚泥槽、或いは、固定床もしくは流動担体を有する接触酸化槽で処理した後に得られる最終処理水は、pH調整をしない場合と比較して、n−Hex抽出物濃度(油分)とBOD濃度が明らかに低減されることが分かり、本発明に至った。また、
下記に、本発明の効果をより具体的に述べる。先述したように、従来の廃水処理では、BODに対し、油分(n−Hex抽出物濃度)がBODの1/5以上(油分/BOD=1/5以上)の高濃度油含有廃水を生物処理する場合に、活性汚泥槽の前段にオイルトラップや加圧浮上装置を設けることで、活性汚泥槽中への油分が流入するのを防止する必要があった。これに対し、本発明の方法によれば、このような高濃度油含有廃水に対し、オイルトラップ等を設けることなく直接生物処理ができるようになる。このことは、多大な負荷がかかっていた油スラッジを二次処理する必要が無くなることを意味しており、実用上の極めて顕著な効果が得られる。上記したことから、本発明の方法によって顕著な効果が得られるのは、BODに対してn−Hex抽出物濃度(油分)が、油分/BOD=1/5〜1/1である高濃度油含有廃水に適用した場合である。さらに、本発明は、上記に加えて、細菌槽での処理をpH調整することで、第1処理槽の細菌槽の処理を、pH調整をしないで行った場合の課題であった、例えば、細菌槽に導入する油含有廃水が、BOD濃度に対してn−ヘキサン抽出物濃度(油分)が、油分/BOD=1/3〜1/1(廃水のBODがn−Hex抽出物濃度の1倍〜3倍)であるような超高濃度油含有廃水を処理する場合に、HRTを長くしなければならなかったことに対し、廃水の油分とBOD濃度との調整をすることなくHRTを短くでき、良好な処理ができるという顕著な効果が得られる点で特に有用である。
本発明の生物処理方法で使用する第1処理槽は、非凝集性細菌を主体とする生物群により生物処理を行うものであり、より具体的には、原生動物の実質的不存在下、細菌で好気的に処理を行う細菌槽(分散菌槽)である。先に述べたように、本発明では、この細菌槽に高濃度油含有廃水を直接導入して細菌処理する。この細菌槽では、細菌が、廃水中の有機物を生物分解して増殖することで、油分を含む有機物が短時間で効率よく分解され、油分が低下し、その結果、第1処理槽での処理に引き続いて行う、次の第2処理槽である活性汚泥槽や、或いは固定床もしくは流動担体を有する接触酸化槽において、良好な生物処理が可能になる。細菌槽を構成する細菌としては、該槽中に良好な状態で浮遊する非凝集性細菌(分散性細菌或いは分散菌とも呼ぶ)を用いることが好ましい。本発明で用いる第1処理槽として好適に用いることのできる非凝集性細菌が選択的に生息する細菌槽は、特公昭56−48235号公報に記載の方法で容易に得ることができる。本発明の高濃度油含有廃水の生物処理方法は、処理対象の廃水が、BOD濃度に対してn−ヘキサン抽出物濃度(油分)が、油分/BOD=1/5〜1/1(廃水のBODがn−Hex抽出物濃度の1倍〜5倍)である高濃度油含有廃水である場合に、上記第1処理槽内の廃水のpHを4.0以上5.9以下、より好ましくは、pHを4.5以上5.9以下の範囲に維持するようにしたことを特徴とする。以下、これらの点について詳述する。
上記したように、本発明では、第2処理槽である通常の活性汚泥槽や固定床もしくは流動担体を有する接触酸化槽での処理に先だち、高濃度油含有廃水に対して、原生動物の実質的不存在下、非凝集性細菌(分散菌)を主体とする生物群で構成された第1処理槽(細菌槽)によって好気的な処理を行うことを要する。このように構成することで、細菌槽を使用しない通常の活性汚泥槽での有機物の生物処理では、種々の細菌や原生動物等が混在した状態の活性汚泥で処理を行っているため、廃水中の有機物が細菌によって分解されるとともに、増殖した細菌が原生動物に捕食されるという微生物活動が起っている。この技術は、先に挙げた特公昭56−48235号公報に記載の発明を利用したものであるが、最初に細菌槽を設け、分散菌によって、その餌となる有機物を分解し、分散菌を増殖させ、増殖した細菌を次の活性汚泥槽中の原生動物で捕食する構成(2相活性汚泥法)とすることで、従来の活性汚泥槽では達成できなかった高負荷運転を可能としている。
しかしながら、本発明が対象としているBOD濃度に対してn−Hex抽出物濃度(油分)が、油分/BOD=1/5〜1/1である高濃度油含有廃水に対しては、この2相活性汚泥法を適用する試みはなされていない。その理由は、先に述べたように、油が生分解される場合、まずリパーゼ等の酵素によって油(トリグリセリド)のエステル結合を加水分解し、脂肪酸とグリセリンに分解し、分解した水和性の高い脂肪酸を細胞内に取り込み、β酸化経路を経て有機酸、最終的には、二酸化炭素と水になると考えられているが、高濃度の油含有廃水を直接生物処理するには、リパーゼを効率的に産生する特有の微生物やリパーゼ製剤を廃水中に添加することが必要となると考えられていたことによる。
これに対し、本発明は、上記した当業者の常識に反し、微生物において油を資化する能力は決して特異的なものではなく、多くの微生物が油を資化する能力を有しているとする新たな知見を得、このような観点から鋭意研究し、2相構成の生物処理を適用できることを見出し、さらに、その際に、第1処理槽の細菌槽における生物処理を、pHを4.0以上5.9以下にして行うという簡易な方法によって、前記した本発明の顕著な効果を達成したものである。
すなわち、本発明の生物処理方法は、高濃度油含有廃水の浄化処理を、第2処理槽である活性汚泥槽や、或いは、固定床もしくは流動担体を有する接触酸化槽の前段に、第1処理槽として細菌槽を設けた2相構成の生物処理で、直接処理を行うことを一つの特徴としており、その際に、第1処理槽の細菌槽における生物処理を、pHを4.0以上5.9以下にして行うことをさらなる特徴とし、その結果、本発明の生物処理方法によれば、従来の技術では不可能であると考えられていた高濃度油含有廃水を、良好な状態で直接生物処理することが可能となる。具体的には、このような簡便な方法によって、油分が極めて高い、例えば、油分/BOD=1/3〜1/1であるような超高濃度の油含有廃水に対しても、廃水のBOD濃度を調整することなく、そのままの状態で、HRT(水理学的滞留時間)を長時間にすることなく、安定して良好に直接生物処理することが可能になる。さらに、本発明の生物処理方法は、上記したように、超高濃度の油含有廃水においても上記した効果が得られることに加えて、従来の高濃度油含有廃水の処理技術のように、活性汚泥槽の前段にオイルトラップや加圧浮上装置を設けることなく、直接生物処理を行うため、従来の処理で必要とされた油スラッジの2次処理の問題を生じることがないという、実用上の極めて大きな効果が得られる。
上記したように、本発明の顕著な効果は、油分/BODの値が1/5〜1/1(廃水のBODがn−Hex抽出物濃度の1倍〜5倍)である高濃度の油含有廃水に対しても、さらに、油分/BODの値が1/3〜1/1(廃水のBODの全てがn−Hex抽出物である場合から廃水のBODがn−Hex抽出物濃度の3倍である場合)の超高濃度の油含有廃水に対しても、安定して得られる。
本発明において、第1処理槽である非凝集性細菌を主体とする生物群が生息する細菌槽内で行う生物処理は、原生動物の実質的不存在下で廃水を上記細菌によって好気的に処理することを意味する。ここで、「原生動物の実質的不存在下」とは、原生動物の増殖が抑制され、その結果、細菌処理過程中に殆ど原生動物の新たな出現が見られない状態を意味する。細菌槽で使用する細菌は、好気性のものであれば任意であり、例えば、アルカリゲネス属菌、シュウドモナス属菌、バチルス属菌、アエロバクター属菌、フラボバクテリウム属菌等を挙げることができる。これらの中でも、バチルス属菌を使用することが好ましい。これらの細菌は、通常、廃水中に生存しており、廃水中の有機物を栄養源として増殖する。このため、高濃度油含有廃水であるものの、有機性廃水を被処理水とするものであるため、本発明においては、特に外部から添加する必要はない。しかしながら、特に実際の廃水処理の場合において、高濃度油含有廃水の浄化処理を円滑に行なうためには、必要に応じて適当な種菌を浄化処理の開始時に外部から添加してもよい。その際に使用する種菌としては、例えば、「バイオコアBP」、「OF−10」、「サーブワン」(以上、商品名、日鉄住金環境社製)等の微生物製剤を好適に利用できる。
本発明の高濃度油含有廃水の生物処理方法は、少なくとも、第1処理槽(細菌槽)で、非凝集性細菌(分散性細菌)による生物処理を行い、更に、該細菌槽で処理することで得られた分散菌を含む処理水を、さらに生物処理するように構成されており、かつ、細菌槽における生物処理を、pHを4.0以上pH5.9以下にして行うことを特徴とする。本発明を特徴づける細菌槽における生物処理は、微生物の生命活動を利用していることから、中性で行うことが通常であるとされており、先に挙げた特許文献3でも、通常の生物処理をpH6〜8で行い、余剰汚泥の分解(可溶化)処理を、pHを5〜6に下げた条件で行っている。これに対し本発明では、細菌槽における生物処理をpH4.0以上5.9以下の酸性側に調整して処理を行うことを特徴とする。本発明者らの詳細な検討によれば、これまで、このような低いpHでは細菌槽での生物処理はできないと考えられていたのに対し、驚くべきことに、高濃度油含有廃水を処理した場合に、そのpHを単に下げるだけで、超高濃度であっても油分を処理することができ、さらに、その最終処理水の溶解性BODを低減できるという画期的な事実を見出した。その理由は定かでないが、本発明者らは、細菌槽を構成する非凝集性細菌(分散菌)を主体とする生物群の中の、pHが4.0以上5.9以下の条件下で活発に増殖する耐酸性の菌が、その油分を選択的に栄養源とし、その結果、細菌槽処理水において油分の低減が実現され、さらに、この細菌槽からの細菌槽処理水を第2処理槽で生物処理することで、その溶解性BODが低減できたものと考えている。本発明者らの検討によれば、理由は定かではないが、第1処理槽でpH4.0以上5.9以下の酸性側に調整して処理しているにもかかわらず、pH調整することなく、第2処理槽内でpHの上昇が起こり、第2処理槽内のpHが7.0近傍の中性域での処理が行われているという事実を確認した。通常の活性汚泥槽においても同様の傾向がみられるが、特に、第2処理槽に、生物処理固定床もしくは流動担体を有する接触酸化槽を用いた場合にその傾向が高かった。
後述するが、本発明の顕著な効果は、高濃度油含有廃水を処理する際における細菌槽の廃水のpHを、少なくとも6未満(5.9以下)で、4.0以上の範囲にすることのみで容易に得られる。より好ましくは、pHを4.5以上とする。具体的な細菌槽内の廃水のpH調整の方法としては、処理の安定化のために細菌槽に通常備えられているpHメーターを利用し、処理する際の廃水に、通常、pH調整に使用されている酸やアルカリの水溶液を、細菌槽内にポンプを使用して添加するように構成すればよく、極めて簡便な方法で容易に達成することができる。
その他の条件等は、通常の、有機性廃水を細菌槽に導入し、非凝集性細菌を主体とする生物群により生物処理を行った後、この非凝集性細菌を含む処理水をさらに生物処理するように構成した2相で行う有機性廃水の生物処理方法と同様に行えばよい。本発明において重要なことは、細菌槽を利用する高濃度油含有廃水の生物処理方法において、細菌槽内で行う生物処理をpH4.0以上5.9以下にして行うことであり、このように構成することで、BODが全て油分であるような超高濃度の油含有廃水であったとしても、油分の低減を確実に行われるようになる。したがって、細菌槽で処理した処理水をさらに生物処理する方法は特に限定されず、例えば、非凝集性細菌を捕食する原生動物が生育する、通常の活性汚泥槽や接触酸化槽を使用処理であればよい。
本発明者らの検討によれば、後述する実施例に示したように、本発明で規定する要件を満たせば、その容積負荷にかかわらず、細菌槽で、高濃度油含有廃水を効果的に処理することができ、超高濃度の油含有廃水であったとしても、長期間をかけたり、廃水の油分を調整することなく、その油分を画期的に低減することができる。例えば、細菌槽内の高濃度油含有廃水のpHを調整して本発明で規定するように低下させれば、細菌槽から出される処理廃水のBODを300mg/L以下、さらには、200mg/L程度に安定して低減できるようになることが確認された。このため、その後にさらに行う生物処理が容易になされ、効率のよい、最終処理水の水質の悪化のない良好な処理が安定して行えるようになる。
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例は本発明の単なる例示であって、本発明の限定を意図するものではない。
<細菌槽と接触酸化槽からなる構成で処理した場合の処理性についての検討>
まず、油分を多量に含む超高濃度の油分含有の模擬廃水を作製し、この模擬廃水を用いて、下記のようにして、細菌槽での処理、さらに、細菌槽で処理して得られた細菌槽処理水をそのまま接触酸化槽に導入してさらに処理して最終処理水を得た。そして、上記細菌槽処理水中の油分および上記最終処理水のノルマルヘキサン抽出物量(以下、n−Hex量或いは油分とも呼ぶ)をそれぞれ測定し、上記した処理によって超高濃度の油分がどのように減量するかを評価した。
(試験装置・試験条件)
具体的には、細菌槽の後段に、流動担体を添加した接触酸化槽を設けた図1に示したフローの生物処理装置を用意し、そこに、後述する性状の超高濃度の油分を含有する模擬廃水を連続的に通水して試験した。細菌槽の容積は、BOD容積負荷が10kg/m3/dayとなるように設計し、接触酸化槽の容積は、フローにおける生物処理槽全体でのBOD容積負荷が1kg/m3/dayとなるようにそれぞれ設計した。接触酸化槽中の担体にはスポンジ製の流動担体を用いた。処理操作としては、模擬廃水をまず細菌槽に流入させ、この細菌槽から、細菌によって処理された廃水と増殖した細菌とが混合した細菌槽処理水を得た。得られた細菌槽処理水を固液分離することなく、連続的に接触酸化槽に流入させて、流動担体に固着した微生物による生物処理を行った。そして、接触酸化槽からオーバーフローする接触酸化槽処理水を、固液分離することなく、これを最終処理水とした。
試験に用いた模擬廃水は、BOD1500mg/L、CODcr4500mg/L、ノルマルヘキサン抽出物量(以下、n−Hex量とも呼ぶ)750mg/Lの、超高濃度の油含有廃水である。模擬廃水は、油分成分として界面活性剤で安定的に乳化させた大豆油を使用し、油以外のBOD成分としてポリペプトンやグルコース、栄養塩からなる培地を使用した。
処理に使用した細菌槽には、廃水のpHを調整するためのpH計と、該pH計と連動してpH調整用の薬剤が細菌槽内に混入できるようにするためのポンプを設置した。上記の試験では、ポンプを2台設置し、pH計で測定した細菌槽中の廃水のpHに対応して、それぞれのポンプを用いて硫酸と水酸化ナトリウム溶液を適宜に添加するように構成し、細菌槽中の廃水のpHを随時、特定の範囲内になるように調整できる構成とした。第2槽である接触酸化槽では、pH調整を行わなかった。
(実施例1)
図1に示すフローで、上記した処理条件に加えて、細菌槽中の廃水のpHを4.5に調整して連続通水試験を行った。細菌槽には、予め培養しておいた細菌混合液を入れたものを使用した。具体的には、試験開始前に1日間、廃水に活性汚泥を添加したものを曝気し、細菌を増殖させた培養液を入れたものを細菌槽とした。接触酸化槽には、約1cm四方のウレタン製スポンジ担体を、容積として20%添加し、更に、下水処理場の返送汚泥をSSとして1000mg/L程度となるよう植種したものを用いた。試験は、連続して65日間行い、4日目、14日目、32日目、65日目に、細菌槽からと、最終の処理水をそれぞれ採水して、得られたサンプルについて水質を分析した。細菌槽処理水および最終処理水から採水したサンプルのn−Hex量についての分析結果をグラフ化して図2に示した。また、上記した経過日数においてそれぞれ採取した生物処理装置から排出される最終処理水のBODと、その時点における接触酸化槽内のpHについての結果をグラフ化して、図3に示した。図2のグラフにおいて、実施例1の系で処理した場合のデータは、黒丸で示した。
(比較例1)
図1に示すフローで、細菌槽中の廃水のpHを7.5に調整して連続通水試験を行った以外は実施例1と同様の試験を行い、同様のタイミングでそれぞれ採水し、採水したサンプルについて同様の分析を行った。そして、実施例1の場合と同様に、細菌槽処理水および最終処理水から採水したサンプルのn−Hex量についての分析結果をグラフ化して図2に示した。また、上記した経過日数において採取した生物処理装置から排出される最終処理水のBODと、その時点における接触酸化槽内のpHについての結果をグラフ化して図3に示した。図2のグラフにおいて、比較例1の系で処理した場合のデータは、ひし形で示した。
(実施例1と比較例1の評価結果)
図2に示した通り、実施例1の細菌槽内の廃水のpHを4.5に調整して処理した系においては、細菌槽処理水および最終処理水において、処理試験の開始から試験終了までの各段階で、細菌槽処理水のn−Hex量の平均値は100mg/L程度で安定しており、処理前後の細菌槽中のn−Hex量の変化から算出した細菌槽中におけるn−Hex抽出分(油分)の除去率(以下、単に「油分の除去率」と呼ぶ)は80%以下であった。最終処理水中のn−Hex量も、一定して30mg/L以下の低い値であり、フロー全体での油分の除去率は95%以上と、実施例1の系は、超高濃度の油分に対しての高い処理性能を有することが分かった。また、図3に示したように、実施例1の系での処理は、細菌槽のpHを4.5とし、この細菌槽で処理して得た細菌槽処理水をそのまま接触酸化槽に導入して、接触酸化槽ではpH調整を行わなかったにも関わらず、接触酸化槽のpHは6.5前後で安定していたことが確認された。さらに、図3に示したように、実施例1の系で処理した場合、その最終処理水のBODも悪化傾向は見られず300mg/L程度であり、フロー全体のBOD除去率は80%近く、良好な処理性能を示すことが確認された。
これに対し、比較例1の細菌槽の廃水のpHを7.5に調整して処理した系においては、図2に示した通り、細菌槽処理水のn−Hex量の平均値は400mg/L程度であり、細菌槽における油分の除去率は50%以下と、実施例1の系で処理した場合よりも明らかに劣った。また、図2に示した通り、最終処理水のn−Hex量の平均値はおよそ300mg/Lであり、接触酸化槽における油分の除去率は30%程度であった。比較例1の系では、フロー全体でのn−Hex量の除去率は60%程度であり、実施例1の系で処理した場合と比較して、効率的な処理がなされたとは言えない処理性能であった。
以上の結果から、超高濃度の油含有廃水を効率的に生物処理し、良好な処理水を安定して得るには、細菌槽のpHを酸性側に調整するという簡便な手段で、細菌槽における油分処理性能を向上させることができることが分かった。さらに、これに続いて、行う生物処理としては、接触酸化槽を使用して処理することの有用性が確認できた。
<細菌槽内のpHと、油分の処理性との関係の検討>
先の実施例1および比較例1の試験で、細菌槽内の廃水のpHの値によって最終処理水における油分の処理効率が異なる現象が生じることが確認されたことから、この点について更に詳細な検討を行った。具体的には、細菌槽のみで構成した生物処理装置を用意し、この装置を用いて先の油分の高い模擬廃水を連続的に通水して検討試験を行った。使用した細菌槽の容積は、BOD容積負荷が10kg/m3/dayとなるように設計した。そして、廃水をこの細菌槽に流入し、細菌槽内で細菌によって処理された廃水と、槽内で油分を含むBODを栄養にして増殖したと考えられる細菌とが混合した細菌槽処理水を得た。
試験に用いた模擬廃水は、先に使用したと同様の超高濃度の油含有模擬廃水であり、その性状は、BOD1500mg/L、CODcr4500mg/L、n−Hex量750mg/Lのものである。模擬廃水は、油分成分として界面活性剤で安定的に乳化させた大豆油を使用し、油以外のBOD成分としてポリペプトンやグルコース、栄養塩からなる培地を使用した。
上記した細菌槽のみで構成した生物処理装置は、実施例1で使用したと同様に、細菌槽に、pH計と、細菌槽内の廃水のpHを随時調整する目的で、pH計と連動するポンプを2台設置し、それぞれのポンプで、硫酸と水酸化ナトリウム溶液が適宜に添加されるように構成した。
(実施例2)
上記した条件に加え、細菌槽のpHを5.5に調整して、連続通水試験を行った。細菌槽には、予め培養しておいた細菌混合液を入れたものを使用した。より具体的には、試験開始前に1日間、廃水に活性汚泥を添加したものを曝気し、細菌を増殖させた培養液を入れて細菌槽とした。処理試験は、連続して65日間行い、4日目、14日目、32日目、65日目に、各タイミングにおける細菌槽からの排水の一部を採水して、採水した細菌槽処理水の水質をそれぞれ分析した。図4に、各タイミングでサンプリングした細菌槽処理水のn−Hex量についての結果を示した。実施例2の系で処理した場合のデータは、図4のグラフ中に四角で示した。
(比較例2)
上記した条件で、細菌槽のpHを6.5に調整して連続通水試験を行った以外は実施例2と同様にして試験を行い、同様のタイミングでそれぞれ細菌槽処理水を採水した。そして、実施例2の場合と同様に、各タイミングにおける細菌槽処理水のn−Hex量についての結果をグラフ化して図4に示した。比較例2の系で処理した場合のデータは、図4のグラフ中に×印で示した。
(実施例1、2と比較例1、2の評価結果)
図4に示した通り、細菌槽内の廃水のpHを5.5に調整して処理した実施例2の系においては、処理試験の開始から試験終了まで、細菌槽処理水のn−Hex量の分析値の平均はおよそ110mg/L程度であり、油分の除去率は80%以上であった。これは、細菌槽のpHを4.5に調整した実施例1の系の場合とほぼ同程度の処理性能であった。これに対し、細菌槽内の廃水のpHを6.5に調整した比較例2の系においては、図4に示した通り、n−Hex量は、65日目でやや増加しており、平均値は300mg/L程度、n−Hex除去率60%程度であった。これは、図2に示した、細菌槽のpHを7.5に調整して行った先に説明した比較例1の系によって処理した場合のn−Hex除去率50%程度と比較すると、若干の処理性向上が認められた。
以上の結果より、細菌槽のpHを7.5とした比較例1の系の場合と、細菌槽のpHを6.5とした比較例2の系の場合との比較から、超高濃度の油含有廃水を効率的に処理するにあたり、pHを低く調整することによって細菌槽の油分処理性能が向上することがわかった。また、細菌槽のpHを5.5程度にまで下げた実施例2の系の場合は、超油分廃水の処理性能の向上効果が著しくなることが分かった。なお、細菌槽のpHを4.5程度にまで下げた実施例1の系でも実施例2の系の場合と同様の効果が得られた。
<細菌槽の容積負荷の調整と、細菌槽のpH調整による効果の比較>
(比較例3)
実施例1で使用したと同様の、細菌槽のみで構成した生物処理装置を用意し、この装置を用いて模擬廃水を連続的に通水して検討試験を行った。細菌槽の容積は、BOD容積負荷を10kg/m3/dayで処理した比較例1および実施例1の系とは異なり、BOD容積負荷が3kg/m3/dayとなるように設計した。具体的には、模擬廃水を、BOD容積負荷を上記のように1/3.3に低減させた細菌槽に流入し、細菌によって処理された廃水と増殖した細菌とが混合した細菌槽処理水を得た。試験に用いた廃水は、実施例1および比較例1の各系で使用した場合と同様の模擬廃水である。また、上記の細菌槽のみで構成した生物処理装置は、比較例1および実施例1で使用したと同様に、細菌槽に、pH計と、細菌槽内の廃水のpHを随時調整する目的で、pH計と連動するポンプを2台設置し、それぞれのポンプで、硫酸と水酸化ナトリウム溶液が適宜に添加されるように構成した。
本比較例では、先に述べた実施例1の系の処理条件では4.5に調整した細菌槽のpHを、比較例1の系の場合と同様に7.5に調整して、比較例1および実施例1の系と同様にして連続通水試験を行った。そして、これらの系の場合と同様に、試験を連続して65日間処理を行い、処理の4日目、14日目、32日目、65日目に採水を行い、採水した細菌槽処理水の水質をそれぞれ分析し、図5に、各タイミングでサンプリングした細菌槽処理水のn−Hex量についての結果をグラフ化して示した。グラフ中に、いずれも本比較例の系よりも高負荷運転(BOD容積負荷を10kg/m3/day)で処理した、実施例1の系で処理した場合のデータと、pHを、7.5に調整した比較例1の系のデータを併せて示した。
図5に示したとおり、比較例3の系における細菌槽処理水のn−Hex量は、その平均値がおよそ160mg/Lであり、n−Hex除去率としては80%近かった。これは、細菌槽のpHを4.5に調整し、細菌槽における油分処理性能を著しく向上させた実施例1よりも若干劣るものの、同程度の油分処理性能と言えるものであった。
しかし、この場合は、細菌槽への流入BOD容積負荷を低減するために、細菌槽の容積を大きく設計しており、その容積は実施例1のおよそ3倍の大きさであった。このことは、超高濃度油含有廃水を処理するにあたり、比較例3の系のように、2相活性汚泥法を適用して第1処理槽である細菌槽の容積を拡張し、細菌槽への流入BOD容積負荷を低減することによっても、細菌槽の油分処理性能を向上させることが可能であることを示している。しかし、この手法は、従来の、活性汚泥槽の前段にオイルトラップや加圧浮上装置を設けて行う場合に比較すると、2次処理の問題も含めて簡便になるという効果が得られるものの、上記したように、設備の改造および大型化が必要になり、本発明の方法に比べた場合、より効率的な方法とはなっていない。
本発明の高濃度油含有廃水の生物処理方法を用いれば、従来、このような廃水を生物処理する場合には、活性汚泥槽の前段にオイルトラップや加圧浮上装置を設けることを必要としており、発生する油スラッジの処理等の課題があった、例えば、製パン工場廃水をはじめとする高濃度油含有廃水について、直接生物処理を安定してすることができるようになるので、廃水処理コストを削減することができ、実用上、極めて有用であり、その利用が期待される。さらに、本発明の廃水処理方法は、油含有廃水の油分量にかかわらず、処理条件を何ら変更することなく、例えば、BOD濃度に対してn−ヘキサン抽出物濃度(油分)が、油分/BOD=1/3〜1/1(廃水のBODがn−Hex抽出物濃度の1倍〜2倍)の超高濃度の油含有廃水に対しても効率的で安定した処理が可能であり、この点からもその利用が期待される。

Claims (4)

  1. BOD濃度に対してn−ヘキサン抽出物濃度(油分)が、油分/BOD=1/3〜1/1(廃水のBODがn−Hex抽出物濃度の1倍〜倍)である油含有廃水を処理する際に、
    該油含有廃水を第1処理槽に導入し、非凝集性細菌を主体とする生物群により生物処理を行った後、この非凝集性細菌を含む処理水をさらに、活性汚泥槽、或いは、固定床もしくは流動担体を有する接触酸化槽である第2処理槽で生物処理を行うように構成し、
    さらに、上記第1処理槽における生物処理を、pHを4.0以上5.9以下の範囲に維持して行うことを特徴とする高濃度油含有廃水の生物処理方法。
  2. 前記pHが、4.5以上5.9以下である請求項1に記載の高濃度油含有廃水の生物処理方法。
  3. 前記第1処理槽で処理した前記非凝集性細菌を含む処理水のpHを調整することなく、前記第2処理槽での生物処理を行う請求項1又は2に記載の高濃度油含有廃水の生物処理方法。
  4. 前記第2処理槽が前記接触酸化槽であり、前記接触酸化槽による生物処理後、前記接触酸化槽からオーバーフローする接触酸化槽処理水を、固液分離することなく、最終処理水とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高濃度油含有廃水の生物処理方法。
JP2013273149A 2013-12-27 2013-12-27 高濃度油含有廃水の生物処理方法 Active JP6245697B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013273149A JP6245697B2 (ja) 2013-12-27 2013-12-27 高濃度油含有廃水の生物処理方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013273149A JP6245697B2 (ja) 2013-12-27 2013-12-27 高濃度油含有廃水の生物処理方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015127034A JP2015127034A (ja) 2015-07-09
JP6245697B2 true JP6245697B2 (ja) 2017-12-13

Family

ID=53837297

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013273149A Active JP6245697B2 (ja) 2013-12-27 2013-12-27 高濃度油含有廃水の生物処理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6245697B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105110559B (zh) * 2015-08-26 2018-03-30 辽宁华孚环境工程股份有限公司 一种三元复合驱采油废水处理方法
JP6490774B1 (ja) * 2017-10-16 2019-03-27 日鉄住金環境株式会社 有機性廃水の処理方法及び固定化微生物製剤の製造方法

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4734504B2 (ja) * 2001-03-13 2011-07-27 弘見 池知 微生物による廃水の処理方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015127034A (ja) 2015-07-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Yang et al. Granulation of sulfur-oxidizing bacteria for autotrophic denitrification
Selvamurugan et al. An integrated treatment system for coffee processing wastewater using anaerobic and aerobic process
Najafpour et al. High-rate anaerobic digestion of palm oil mill effluent in an upflow anaerobic sludge-fixed film bioreactor
AU2005209522B2 (en) Process for biological treatment of organic waste water and apparatus therefor
Alexandre et al. Performance of anaerobic bioreactor treating fish-processing plant wastewater pre-hydrolyzed with a solid enzyme pool
Yang et al. Submerged membrane bioreactor in treatment of simulated restaurant wastewater
Rincón-Llorente et al. Table olive wastewater: Problem, treatments and future strategy. A review
JP2005211879A (ja) 有機性排水の生物処理方法
JP2009202115A (ja) 有機性排水の生物処理方法および装置
JP2006247566A (ja) 有機性廃水の生物処理方法
Palomo-Briones et al. Near-neutral pH increased n-caprylate production in a microbiome with product inhibition of methanogenesis
Ritambhara et al. Treatment and Recycling of wastewater from dairy industry
JP5767854B2 (ja) 有機性廃水の処理方法
JP6245697B2 (ja) 高濃度油含有廃水の生物処理方法
CN114057284A (zh) 一种基于群体感应作用提高厌氧氨氧化颗粒系统抗盐冲击的装置及方法
JP2005279551A (ja) 有機性排水の生物処理方法
WO2016103949A1 (ja) 油脂含有排水の処理方法及び処理装置
JP5948651B2 (ja) 余剰汚泥の発生抑制方法、及び有機排水処理方法
CN103508629A (zh) 一种食品工业废水处理系统
JP4687338B2 (ja) 有機性廃水の生物処理方法および生物処理装置
JP3425777B2 (ja) 食用油脂に対して分解能を示す微生物及びその使用法
JP4433550B2 (ja) 植物エキス抽出排水の嫌気性処理方法
Shabbir et al. Revitalization of wastewater from the edible oil industry
Bhange et al. Effect of lipase from different source on high fat content wastewater of dairy industry
JP6157860B2 (ja) 高濃度油含有廃水の生物処理方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20161021

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170621

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170808

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170925

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20171107

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20171110

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6245697

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250