JP6245521B2 - 水溶性金属加工油剤 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄鋼や非鉄金属などの切削、研削に使用される水溶性の金属加工油剤に関する。
金属などの切削、研削に使用される金属加工油剤において、火災防止や廃棄時の環境負荷の低減などの観点から、ポリエーテル化合物を使用したシンセティックタイプと呼ばれる水溶性金属加工油剤が多用されている。
しかし、近年、金属加工工程におけるメンテナンスを含めての生産性向上の観点から、水溶性金属加工油剤に対する要求性能はさらに厳しくなっている。
第一に、鉱物油との分離性であり、特に低温における高い分離性が求められるようになった。寒冷地では冬季や早朝に冷え込んだり保管温度が低下したりするため、混入油の分離がさらに困難になる。金属加工が盛んな地域には寒冷地が多いが、そこでも生産性確保のため高い分離性が要求されるのである。
第二の要求性能が、低泡性である。切削等の金属加工に用いられる工作機械は、油剤の供給効率のアップのため高圧化が進んでおり、機械の構造的にも、油剤液寿命の延長のための遠心分離システムやドラムフィルタの導入等、従来に増して泡立ちやすい条件となっている。スタートアップ時にとくに泡立ちが激しくオーバーフローしてしまうと致命的な問題となってしまう。
従来、水溶性金属加工油剤には、ポリエーテル化合物が多用されている(例えば、特許文献1)。水への高い親和性とともに、被加工金属体の表面に存在する鉱物油との親和性を併せ持つためである。
特許文献2においては、オキシエチレン基(EO)/炭素数3又は4のオキシアルキレン基のランダム又はブロック共重合体を用いた切削用の水溶性金属加工油剤が開示されており、分離性の改善が図られている。しかしながらこの技術では、低泡性の阻害をもたらす問題を生じてしまい解決することができない。
また、特許文献3においては、EO/オキシプロピレン基(PO)のブロック共重合体を用いて、粘性を低下させ界面活性能を向上させた水溶性金属加工油剤が開示されている。しかしながら、この開示技術では、低泡性の問題は解決するが、低温における分離不良の問題を解決することができない。
切削性を決定づける親油性と透明な水溶液を与える親水性との双方を満たすことは、水溶性金属加工油剤としての基本性能である。ポリエーテル化合物の分子設計において、このような親水/疎水性の制約の中で、さらに高度化された新たな要求性能である起泡性の低減と、低温分離性の向上との双方を両立させることは困難であった。両者は界面現象としては全く別物であり、単に親水/疎水性のトレードオフでは解決しえないためである。
特開平7−3165781号公報 特開平11−323376号公報 特開2002−212584号公報
本発明が解決しようとする課題は、冷寒地、及び冬季においても、泡立ちが低く、混入した潤滑油との分離性が良好である水溶性切削油剤を提供することにある。
本発明者らは、疎水基−親水基−疎水基のセグメント構造を有するポリエーテル化合物において、一端の疎水基を特定鎖長のアルキル基、他端の疎水基を特定鎖長のポリプロピレングリコール基とすることによって、上記の課題を解決しうることの知見を得、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 下記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物を、0.1〜50質量%含有してなる水溶性金属加工油剤。

R−O−(EO)a−(PO)b−H (1)

(式中、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。EO、POはブロック付加であり、aはオキシエチレン基の平均付加モル数で10〜30の数、bはオキシプロピレン基の平均付加モル数で8〜30の数である。EO/POは質量比で0.6〜1.1である。)
[2] 一般式(1)におけるRが炭素数4〜6の炭化水素基である、前記[1]に記載の水溶性金属加工油剤。
本発明の水溶性金属加工油剤は、低温においても鉱物油との分離性がよいため、冬季や寒冷地における使用に好適である。また、泡立ち性が少ないため、泡立ちやすい条件下における切削等の金属加工に特に有利に使用することができる。
以下に、本発明の詳細について説明する。
本発明の水溶性金属加工油剤は、上記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物を含有する。
一般式(1)においてRは、炭素数1〜6の1価の炭化水素基であり、好ましくは炭素数4〜6価の炭化水素基である。Rが2価以上である場合、ポリエーテル化合物の分子量分布が広くなり、低温分離性が悪化する。Rが炭素数6を上回る場合、親油性が高くなり、潤滑油との分離性が悪化する。 一般式(1)において、EOはオキシエチレン基単位を表し、POはオキシプロピレン基単位を表す。(EO)a、(PO)bの各単位はブロック的に結合している。EOとPOがランダム的に結合していると泡立ちが大きくなるため、使用できない。
一般式(1)において、aはオキシエチレン基の平均付加モル数で10〜30の整数、好ましくは10〜20の整数であり、さらに好ましくは13〜15の整数である。bはオキシプロピレンの平均付加モル数で8〜30の整数、好ましくは10〜20の整数、さらに好ましくは11〜16の整数である。aが10未満、又はbが30を超えると水に溶けなくなり、水溶性金属加工油剤としての使用が適わなくなる。また、aが30を上回ると分子量が増加することによって、乳化性が増し、潤滑油との低温における分離性が低下する。また、bが8未満のときは潤滑性が低下する。
EO/POは質量比で0.6〜1.1であり、好ましくは0.7〜1.1である。EO/POが小さ過ぎる場合、水に不溶となるおそれがあり、大きすぎる場合、親水性が増し、泡が立つおそれがある。
一般式(1)のポリエーテル化合物は、疎水基−親水基−疎水基のセグメント構造を有するポリエーテル化合物において、上記のとおり、一端の疎水基が特定鎖長のアルキル基、他端の疎水基が特定鎖長のポリプロピレングリコール基であるため、起泡性の低減と低温分離性の向上の双方の課題を実現するこが可能である。
一般式(1)のポリエーテル化合物の含有量は、水溶性金属加工油剤全量に対し、0.1〜50質量%であることが好ましく、含有量が50質量%を超えると、鉱物油との低温分離性が悪くなり、また、粘性が増して泡が消えにくくなる。
また、本発明の金属加工油剤には必要に応じて、各種公知の添加剤を適宜配合することができる。添加剤を添加する場合には、50質量%以下である。例えば、添加剤としては、防腐剤、油性剤、防錆剤、極圧剤などが例示される。
防腐剤の具体例としては、o‐フェニルフェノール、ベンゾイソチアゾリン、トリアジン化合物などが挙げられる。
油性剤としては、例えば、カプリル酸等のカルボン酸、エステル、及びオレフィンなどが挙げられる。
防錆剤としては、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、水酸化カリウム、カルボン酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、炭酸金属塩などが挙げられる。
また、極圧剤としては、硫化エステル、硫化油脂、ポリサルファイドなどの硫黄系化合物、亜鉛ジチオフォスフェート、リン系化合物などが挙げられる。具体的には、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル、亜リン酸エステル及びフォスフォロチオネート等が挙げられる。これらのリン化合物としては、リン酸、亜リン酸又はチオリン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体等が挙げられる。
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
表1に示した各成分を任意の順序で混合して本発明の水溶性金属加工油剤を調製し、各油剤につき水溶性試験、低温分離性試験、及び低泡性試験を行った。結果は表1に示したとおりである。
本発明において用いた各試験方法は、以下のとおりである。
(1)水溶性試験:表1に示した各成分を任意の順序で混合し、調製した試料溶液を10℃に調温し、10分間静置後、分離の有無を目視にて判定した。
乳化、及び分離していた場合を×、溶解していた場合を○とした。
(2)低温分離性試験:50mLのふたつき容器に、金属加工油剤19.5gと鉱物油(MORESCO社製モレスコホワイトP−150)0.5gを入れて、5℃に調温後、10秒間手で激しく振とうし、油層が分離するまでの時間を測定した。
油層が分離するまでに要した時間が50秒以下のものを良好なものとした。
(3)低泡性試験:500mLミキサーに試料溶液200mLを入れて、10℃に調温し、1分間攪拌した後、停止後に泡が消えるまでの時間を測定した。
泡が消えるまでに要した時間が8分以下のものを良好なものとした。
Figure 0006245521
表2に示した各成分を混合して水溶性金属加工油剤を調製し、実施例と同様の方法で、水溶性試験、低温分離性試験、及び低泡性試験を行った。結果は表1に示した。
Figure 0006245521
表1に示す試験結果から明らかなように、本発明におけるポリエーテル化合物を所定量含有する実施例1〜5の金属加工油剤は、低温における鉱物油(潤滑油)との分離性、及び低泡性がいずれも満足できる範囲にある。
これに対して、ポリエーテル化合物の含有量が規定範囲より多い比較例1の金属加工油剤は、界面活性能を有するポリエーテル化合物を多量に含有するため、低温における潤滑油との分離に時間を要し、金属加工油剤の粘性が増すことにより、低泡性が不十分となる。ポリエーテル化合物として、EOとPOがランダム重合しているポリエーテル化合物を用いた比較例2の金属加工油剤は、低泡性が不十分である。a及びbの値が本発明の範囲より大きいポリエーテル化合物を用いた比較例3の金属加工油剤は、分子量が増大することにより、低温における潤滑油との分離性、低泡性が不十分となる。Rの炭素数が大きく、a、bの値が小さいポリエーテル化合物を用いた比較例4の金属加工油剤は、低泡性は満足できるが、本発明の範囲よりRの炭素数が大きいため、潤滑油とのなじみが良くなり、低温における潤滑油との分離に時間を要する。Rの炭素数が大きいポリエーテル化合物を用いた比較例5の金属加工油剤は、低泡性は満足できるが、本発明の範囲よりRの炭素数が大きいため、潤滑油とのなじみが良くなり、低温における潤滑油との分離に時間を要する。aの値が大きいポリエーテル化合物を用いた比較例6の金属加工油剤は、低泡性は満足できるが、本発明の範囲よりaが大きいため、低温における潤滑油との分離に時間を要する。EO/POの質量比が大きいポリエーテル化合物を用いた比較例7の金属加工油剤は、低温における潤滑油との分離性は満足できるが、本発明の範囲よりEO/POの質量比が大きいため、低泡性が不十分となる。bの値が大きいポリエーテル化合物を用いた比較例8の金属加工油剤は、低温における潤滑油との分離、及び低泡性が改善されるが、基本性能である水溶性を満たさない。

Claims (2)

  1. 下記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物を、0.1〜50質量%含有してなる水溶性金属加工油剤。

    R−O−(EO)a−(PO)b−H (1)

    (式中、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。EO、POはブロック付加であり、aはオキシエチレン基の平均付加モル数で10〜30の数、bはオキシプロピレン基の平均付加モル数で8〜30の数である。EO/POは質量比で0.6〜1.1である。)
  2. 一般式(1)におけるRが炭素数4〜6の炭化水素基である、請求項1に記載の水溶性金属加工油剤。
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