JP6245432B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents
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Description
したがって、このような要求を満足するべく前記被膜の開発が種々行なわれている。
「(1) 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットのいずれかで構成された工具基体の表面に硬質被覆層を形成してなる表面被覆切削工具において、
前記硬質被覆層が、総平均層厚が2.5〜20μmであり、
(a)1.0〜10.0μmの平均層厚を有し、かつ、Ti1−XAlXN層、Ti1−XAlXC層、Ti1−XAlXCN層(但し、Xは、TiとAlの合量に占めるAlの含有割合を示し、原子比で、0.65≦X≦0.95)のうち1層または2層以上からなる立方晶結晶構造を有するTiAl化合物で構成された下部層、
(b)0.5〜5.0μmの平均層厚を有し、かつ、Cr1−YAlYN層、Cr1−YAlYC層、Cr1−YAlYCN層(但し、Yは、CrとAlの合量に占めるAlの含有割合を示し、原子比で、0.60≦Y≦0.90)のうち1層または2層以上からなる立方晶結晶構造を有するCrAl化合物で構成された中間層、
(c)1.0〜5.0μmの平均層厚を有し、Alとの合量に占める割合(但し、原子比)で、0.003〜0.05のZrを含有するα型の結晶構造を有するAl2O3で構成された上部層、
からなることを特徴とする表面被覆切削工具。
(」
を特徴とする。
(a)硬質被覆層の総平均層厚:
硬質被覆層の総平均層厚が、2.5μm未満では、下部層、中間層、上部層からなる硬質被覆層の備えるすぐれた耐摩耗性を十分に発揮することができず、一方、20μmを超えると、反対に、チッピング、欠損を発生しやすくなるので、硬質被覆層の総平均層厚は、2.5〜20μmと定めた。
(b)下部層の平均層厚および組成:
下部層を構成するTiAl化合物層の構成成分であるTi成分には高温強度を向上させ、その結果、耐摩耗性を向上させる作用があるが、平均層厚が1.0μm未満になると、十分な耐摩耗性が得られない。一方、平均層厚が10.0μmを超えると、粒子の粗大化による膜強度の低下により、耐チッピング性が低下する。そのため、下部層の平均層厚を、1.0〜10.0μmと定めた。
また、TiAl化合物層には、高温下における工具基体との密着性を向上させる作用があるが、Alの含有割合がTiとの合量に対して原子比で0.65未満となると十分な密着性が得られない。一方、0.95を超えると六方晶結晶構造が混在するようになるため耐摩耗性が低下する。そのため、TiとAlの合量に占めるAlの含有割合であるX(原子比)の値を、0.65≦X≦0.95と定めた。
(c)中間層の平均層厚および組成:
中間層を構成するCrAl化合物層には、上部層であるAl2O3とも下部層であるTiAl化合物層とも高い密着性を示すことから、上部層と下部層の間に介在させることにより、高温時においても上部層と下部層との密着強度が飛躍的に向上し、高負荷・高熱下において高い耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する。しかしながら、平均層厚が0.5μm未満になると、十分な密着性が得られない。一方、平均層厚が5.0μmを超えると、上部層のAl2O3が粒成長しやすくなり、上部層の耐チッピング性が低下する。そのため、中間層の平均層厚を、0.5〜5.0μmと定めた。
また、CrAl化合物層には、下部層との中間層との密着性を向上させる作用があるが、Alの含有割合がCrとの合量に対して原子比で0.60未満となると十分な膜硬さが得られない。一方、0.90を超えると六方晶結晶構造が混在するようになるため、密着性が低下する。そのため、CrとAlの合量に占めるAlの含有割合であるY(原子比)の値を、0.60≦Y≦0.90と定めた。
(d)上部層の平均層厚:
上部層を構成するAl2O3層は、高温硬さと耐熱性を備えることで高速切削時の耐摩耗性を向上させるが、その平均層厚が1.0μm未満では、十分な耐摩耗性を確保することができず、一方、その平均層厚が5.0μmを超えると、Al2O3結晶粒が粗大化し易くなり、その結果、高速断続切削加工時の耐チッピング性、耐欠損性が低下するようになることから、上部層の平均層厚を、1.0〜5.0μmと定めた。
(e)上部層のZr含有割合:
本発明の上部層は、Al2O3層だけでも十分に効果を発揮するが、さらに、上部層中にZr成分を微量含有することにより、α型の結晶構造を有するAl2O3層の結晶粒界面強度が向上し、高温強度の向上に寄与するため好ましい。
しかしながら、Zrの含有割合が、Alとの合量に占める割合、すなわち、Zr/(Al+Zr)の値(但し、いずれも原子比)が、0.003未満であると前述したようなZr成分に期待される作用を期待することはできず、一方、Zr成分の含有割合が0.05を超えた場合には、層中にZr酸化物粒子が析出することによって粒界面強度が低下するので好ましくない。
したがって、本発明の上部層であるAl2O3層に微量のZrを含有させる際には、その含有割合を0.003〜0.05と定めた。
さらに、下部層と工具基体との間に、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物および炭窒酸化物のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層を形成することにより、硬質被覆層と工具基体との密着性をより向上させることが可能である。
(b)まず、装置内を排気して1〜10kPaに保持しながら、ヒーターで装置内を700〜900℃に加熱した後、反応ガスとして、TiCl4:0.2〜4.0%、AlCl3:0.4〜4.0%、CH4:0〜15%、Ar:0〜25%、NH3:0〜10%、N2:0〜25%、H2:残り、を導入して、表3に示すような形成条件で、工具基体表面に表6,7に示すような目標層厚および目標組成の下部層としてのTiAl化合物を形成する。
(c)次に装置内雰囲気を1〜10kPaに保持しながら、ヒーターで装置内を700〜900℃に加熱した後、反応ガスとして、CrCl3:0.5〜2.4%、AlCl3:3.6〜5.5%、CH4:0〜6.0%、Ar:0〜15%、NH3:0〜6.0%、N2:0〜20%、H2:残り、を導入して、表4に示すような形成条件で、下部層の上に表6,7に示すような目標層厚および目標組成の中間層としてのCrAl化合物を形成する。
(d)さらに、装置内雰囲気を6〜13kPaに保持しながら、ヒーターで装置内を950〜1100℃に加熱した後、反応ガスとして、AlCl3:1.2〜4.5%、CO2:3.0〜6.0%、HCl:1.0〜2.8%、H2S:0.15〜0.3%、H2:残り、を導入して、表5に示すような形成条件A〜Jで、中間層の上に同じく表6,7に示すような目標層厚の上部層としてのAl2O3を形成する。
さらに、いくつかの実施例として、前述の反応ガスが、ZrCl4:0.02〜0.13%を含有しているものを用いて、表5に形成条件K〜Nに示すような条件で、中間層の上に同じく表6,7に示すような目標層厚の上部層としてのZr含有Al2O3を形成した。
(a)〜(d)の工程により、表6,7に示した下部層、中間層、上部層を有する被覆インサート1〜20をそれぞれ製造した。ここで、被覆インサート1〜16は、上部層としてZrを含有しないAl 2 O 3 を形成した参考被覆インサートであり、インサート17〜20は、上部層としてZr含有Al2O3を形成した本発明被覆インサートである。
さらに参考被覆インサート1〜16、本発明被覆インサート17〜20の下部層および中間層について、X線回折装置を用いてその結晶構造を特定し、それらの結果を同じく表6,7に示した。
また、前記硬質被覆層を構成する下部層、中間層、上部層の平均層厚を走査型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に等しい平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
(a)前記工具基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示される化学蒸着装置を用いて、
(b)まず、装置内を排気して1〜10kPaに保持しながら、ヒーターで装置内を700〜900℃に加熱した後、反応ガスとして、TiCl4:0.2〜5.0%、AlCl3:0.4〜3.0%、CH4:0〜10%、Ar:0〜20%、NH3:0〜10%、N2:0〜20%、H2:残り、を導入して、表3に示すような形成条件で、工具基体表面に表8,9に示すような目標層厚および目標組成の下部層としてのTiAl化合物を形成する。
(c)次に装置内雰囲気を1〜12kPaに保持しながら、ヒーターで装置内を650〜1000℃に加熱した後、反応ガスとして、CrCl3:0.5〜3.9%、AlCl3:1.0〜5.5%、CH4:0〜6.0%、Ar:0〜15%、NH3:0〜6%、N2:0〜20%、H2:残り、を導入して、表4に示すような形成条件で、下部層の上に表8,9に示すような目標層厚および目標組成の中間層としてのCrAl化合物を形成する。
(d)さらに、装置内雰囲気を6〜13kPaに保持しながら、ヒーターで装置内を900〜1150℃に加熱した後、反応ガスとして、AlCl3:1.5〜6%、CO2:2〜8%、HCl:1.0〜5.0%、H2S:0.15〜0.4%、H2:残り、を導入して、表5に示すような形成条件で、中間層の上に同じく表8,9に示すような目標層厚の上部層としてのAl2O3を形成する。
(a)〜(d)の工程により、表8,9に示した上部層、中間層、上部層を有する比較被覆インサート1〜16をそれぞれ製造した。
さらに比較被覆インサート1〜16の下部層および中間層について、X線回折装置を用いて、その結晶構造を特定した。それらの結果を同じく表8,9に示した。
また、前記硬質被覆層を構成する下部層、中間層、上部層の平均層厚を、走査型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に等しい平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SUS304(HB200)の板材、
切削速度:300m/min.、
切り込み:ae 50mm、ap 1.5mm、
一刃送り量:0.2mm/刃、
の条件(切削条件A)でのステンレス鋼の乾式高速ミーリング切削加工試験(通常の切削速度は180 m/min.)、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのTi−6Al−4V合金(HB250)の板材、
切削速度:100m/min.、
切り込み:ae 50mm、ap 1.5mm、
一刃送り量:0.2mm/刃、
の条件(切削条件B)でのTi合金の湿式高速ミーリング切削加工試験(通常の切削速度は40 m/min.)、
を行い、切れ刃逃げ面の摩耗量が0.3mmに達するまでの加工パス数をカウントした(加工する面を1回切削することを1パスとしている)。加工の途中で切れ刃の欠損が生じた場合には、その時点で終了している加工パス数をカウントした。この測定結果を表10に示した。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットのいずれかで構成された工具基体の表面に硬質被覆層を形成してなる表面被覆切削工具において、
前記硬質被覆層が、総平均層厚が2.5〜20μmであり、
(a)1.0〜10.0μmの平均層厚を有し、かつ、Ti1−XAlXN層、Ti1−XAlXC層、Ti1−XAlXCN層(但し、Xは、TiとAlの合量に占めるAlの含有割合を示し、原子比で、0.65≦X≦0.95)のうち1層または2層以上からなる立方晶結晶構造を有するTiAl化合物で構成された下部層、
(b)0.5〜5.0μmの平均層厚を有し、かつ、Cr1−YAlYN層、Cr1−YAlYC層、Cr1−YAlYCN層(但し、Yは、CrとAlの合量に占めるAlの含有割合を示し、原子比で、0.60≦Y≦0.90)のうち1層または2層以上からなる立方晶結晶構造を有するCrAl化合物で構成された中間層、
(c)1.0〜5.0μmの平均層厚を有し、Alとの合量に占める割合(但し、原子比)で、0.003〜0.05のZrを含有するα型の結晶構造を有するAl2O3で構成された上部層、
からなることを特徴とする表面被覆切削工具。
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