JP6244925B2 - 鋼管杭の継手構造 - Google Patents
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近年、鋼管杭として厚肉材の利用が進むとともに、現場での急速施工の要求に対応するために、溶接に代えて、機械的な結合を利用した機械式継手が導入されている。
このような機械式継手として、一方の鋼管杭単部外周面に雄ねじ部を形成し、他方の杭本体の端部内周面に雌ねじ部を形成し、これらを現場で螺合させて連結するねじ継手構造が多用されている。
しかし、ねじ継手構造による連結を行うためには、ねじ込みを行うために鋼管杭を回転させる必要がある。特に、大径の鋼管杭をねじ継手で連結しようとすると、鋼管杭を保持する架構や回転用の駆動装置が大規模なものとなり、現場施工の簡易化という要請に逆行してしまうという問題がある。
例えば、特許文献1の継手構造では、第1の鋼管杭の端部を小径に形成し、第2の鋼管杭の端部に挿入できるようにするとともに、第2の端部の内面に突没可能なキー部材を設置しておき、このキー部材を内向きに進出させて第1の端部の外周の溝内に嵌め込むことにより、第1および第2の鋼管杭の連結を実現している。
しかし、特許文献1の継手構造では、第1および第2の鋼管杭の内部に複雑な機構を形成する必要があり、製造コストの上昇が問題になるとともに、連結された継手構造を再び分離する際の操作が複雑になるという問題がある。
なお、特許文献2において、連結部材は、断面C字状の開いた側を内側にした円弧状に形成され、例えば3つを順次配列することで端板の全周をカバーするように形成されている。さらに、一対の端板の外周面にはそれぞれ雌ねじ群が配列され、各群には連結部材のウェブ部分を貫通するボルトが締め込まれる。これらのボルトにより、連結部材は一対の端板の各々に対して固定されている。
ここで、端板および連結部材のフランジ部分は、既成杭の長手方向に沿った断面で見た場合、片持ち梁に相当する。そして、前述した引っ張り荷重を受けた際に、特に根本部分に大きな曲げモーメントが生じる。
従って、特許文献2の継手構造を採用する場合、端板および連結部材を、前述した曲げモーメントにも十分に耐えられるように設計しておく必要がある。
しかし、このような要求を満足するためには、端板および連結部材の厚肉化や高強度化が必要となり、製造コストの上昇をまねくという問題がある。
特許文献2の継手構造では、連結部材を一対の端板にそれぞれボルトで固定しており、一方の既成杭の回転を連結部材ないし他方の既成杭へと伝達することは可能である。しかし、トルク伝達はボルトに依存しており、ボルトの強度を考慮すると、十分なトルク伝達が行えないという問題がある。例えば、トルク伝達能力を高めるためにボルトの本数を増すことが考えられるが、ボルトを受ける端板の母材の強度についての考慮も必要となり、施工性およびスペースの関係からも限界があった。
この際、鋼管杭の被挟持部は、それぞれ長手方向の鋼管側補強部により補強されており、引っ張り荷重を受けた際の曲げモーメントにも十分耐えることができる。
また、連結部材においては、挟持部で被挟持部の挟持を行うとともに、連結側係合部が鋼管側補強部と周方向に係合することで、連結部材自体を鋼管杭の母材に係合させて回転トルクを伝達することができる。
従って、本発明の継手構造では、簡単な構造でコストが抑制できるとともに、引っ張り荷重および回転トルクの伝達能力を向上させることができる。
このような本発明では、簡単な構造でありながら、連結部材自体を鋼管杭の母材に確実に係合させることができる。
この際、連結部材の挟持部は、それぞれ長手方向の連結側補強部により補強されており、鋼管杭の被挟持部は、補強された挟持部により強固な挟持を受けるため、引っ張り荷重を受けた際の曲げモーメントにも十分耐えることができる。
また、連結部材においては、挟持部で被挟持部の挟持を行うとともに、鋼管側係合部が連結側補強部と周方向に係合することで、連結部材自体を鋼管杭の母材に係合させて回転トルクを伝達することができる。
従って、本発明の継手構造では、簡単な構造でコストが抑制できるとともに、引っ張り荷重および回転トルクの伝達能力を向上させることができる。
このような本発明では、簡単な構造でありながら、連結部材自体を鋼管杭の母材に確実に係合させることができる。
〔第1実施形態〕
図1において、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20は、それぞれ断面形状が円形で所定厚みの鉄鋼を母材とする鋼管杭である。
これらの第1鋼管杭10および第2鋼管杭20は、一対の鋼管杭として、各々の長手方向の中心軸線を同一軸線に合わせたうえ、各々の端部どうしを本発明に基づく継手構造1により連結されている。
溝12は、第1鋼管杭10の全周を複数に分割したものを、周方向に複数配列したものである。例えば、全周を3つ(溝12の中心角は約120度)、あるいは4つ(中心角約90度)等とすることができる。
ピラー13は、周方向両側を溝12で切り取られて第1鋼管杭10の長手方向に連続する突条として形成されている。そして、ピラー13は、第1鋼管杭10の端縁側がフランジ11に接続されている。
内フランジ31の厚みは、溝12の幅(第1鋼管杭10の長手方向の寸法)とほぼ同じか僅かに小さく形成されている。内フランジ31の円弧状の長さ(中心角)は、溝12の長さとほぼ同じか僅かに小さく形成されている。
内フランジ32の厚みは、溝22の幅(第2鋼管杭20の長手方向の寸法)とほぼ同じか僅かに小さく形成されている。内フランジ32の円弧状の長さは、溝22の長さとほぼ同じか僅かに小さく形成されている。
内フランジ31,32の相互の距離(対向する内面の間隔)は、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20を連結するべくフランジ11,21を互いに重ね合わせた状態の長手方向寸法に等しく形成されている。
先ず、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の端部を向かい合わせて長手方向に近接させることで、各々のフランジ11,21が当接され、同芯で重ね合わせられた状態とされる。この際、各々のピラー13,23が一直線上に並ぶように第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の何れかを回転させて角度位置を調節しておく。
全ての連結部材30が装着できたら、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の端部は、略全周にわたってフランジ11,21が連結部材30で挟持される。
これらにより、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20を連結する継手構造1が完成する。
第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の間に長手方向の圧縮荷重がかかった場合、フランジ11,21を含む第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の端部どうしが圧接することで荷重を負担する。
第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の間に長手方向の引っ張り荷重がかかった場合、全周にわたってフランジ11,21を挟持する連結部材30が荷重を負担する。
第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の間に曲げ荷重がかかった場合、周方向の一部では圧縮荷重となり、反対側では引っ張り荷重となり、引っ張り荷重側ではフランジ11,21を挟持する連結部材30が荷重を負担する。
従って、本実施形態の継手構造1では、長手方向のピラー13,23によりフランジ11,21が補強されており、フランジ11,21の変形を抑制できるため、引っ張り荷重を受けた際の曲げモーメントにも十分耐えることができる。
この状態で、第1鋼管杭10に対して第2鋼管杭20が回転し、継手構造1に回転トルクが加わった場合、内フランジ31,32の両端部が連結側係合部となり、溝12,22の両端つまりピラー13,23と周方向に係合し、回転トルクを伝達することができる。
従って、連結部材30自体を第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の母材にそれぞれ係合させて回転トルクを伝達することができる。
以上により、本実施形態の継手構造1では、簡単な構造でコストが抑制できるとともに、引っ張り荷重および回転トルクの伝達能力を向上させることができる。
前述した第1実施形態では、内フランジ31,32の両端部を連結側係合部とし、内フランジ31,32を溝12,22内に嵌め込んだ際に、内フランジ31,32の両端部をピラー13,23に周方向に係合させるようにした。
これに対し、図2に示すように、内フランジ31,32の中間部に切欠き33,34を形成して連結側係合部としてもよい。
連結部材30Aにおいて、内フランジ31,32の中間部には、それぞれ切欠き33,34が形成されている。切欠き33,34は、ピラー13,23と同じかやや大きな幅を有し、ピラー13,23を内側に収容可能である。
これにより、内フランジ31,32がフランジ11,21を挟持するとともに、ピラー13,23と切欠き33,34とが周方向に係合することになり、連結部材30Aを介して引っ張り荷重および回転トルクを伝達することができる。従って、本実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
前述した第1および第2実施形態では、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20を連結する際に、各々のピラー13,23の周方向位置を同じ位置に合わせた。
これに対し、各々のピラー13,23の周方向位置をずらして交互となるようにしてもよい。
ただし、第1鋼管杭10のピラー13は、第2鋼管杭20のフランジ21の周方向の中点に合わせて配置され、従って、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20のフランジ11,21、溝12,22、ピラー13,23は、それぞれ半周期ずつずれた状態で配置されている。
連結部材30Bにおいて、内フランジ31,32のうち一方である内フランジ31の中間部には、前述した第2実施形態と同様な切欠き33が形成されている。他方の内フランジ32は、前述した第1実施形態と同様である。
これにより、内フランジ31,32がフランジ11,21を挟持するとともに、ピラー13と切欠き33とが周方向に係合し、かつ内フランジ32の両端部が溝22の両側のピラー23に係合することになり、連結部材30Bを介して引っ張り荷重および回転トルクを伝達することができる。従って、本実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
前述した第1ないし第3実施形態では、円弧状に湾曲されているが外形が長方形である本体39の上下辺縁に内フランジ31,32を形成し、内フランジ31,32の周方向位置を同じとした。これに対し、前述した第3実施形態のようなピラー13,23をずらした配置に合わせて、内フランジ31,32の周方向位置をずらすようにしてもよい。
ただし、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20は、前述した第3実施形態のようにピラー13,23(すなわち溝12,22)の周方向位置を半周期ずらした配置とされている。
連結部材30Cは、扁平な略Z字状の本体39を有し、その上端縁および下端縁に内フランジ31,32が形成されている。内フランジ31,32は、それ自体は前述した第1実施形態と同様であるが、各々の周方向位置が溝12,22に合わせて半周期ずらした状態で本体39により保持されている。
前述した第4実施形態の構成に対し、前述した第2実施形態のように切欠き33,34による連結側係合部を用いてもよい。
図5において、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20、これらに形成されたフランジ11,21、溝12,22、ピラー13,23は、前述した第1実施形態と同様である。そして、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20は、前述した第3実施形態のようにピラー13,23(すなわち溝12,22)の周方向位置を半周期ずらした配置とされている。
連結部材30Dは、扁平な略Z字状の本体39を有し、その上端縁および下端縁に内フランジ31,32が形成されている。内フランジ31,32は、各々の周方向位置が溝12,22に合わせて半周期ずらした状態で本体39により保持されている。
内フランジ31,32の中間部には、それぞれ切欠き33,34が形成されている。切欠き33,34は、ピラー13,23と同じかやや大きな幅を有し、ピラー13,23を内側に収容可能である。
前述した第1ないし第5実施形態では、内フランジ31,32の周方向の長さを互いに同じとしていたが、互いに異なる長さとしてもよい。
図6において、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20、これらに形成されたフランジ11,21、溝12,22、ピラー13,23は、前述した第1実施形態と同様である。そして、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20は、前述した第3実施形態のようにピラー13,23(すなわち溝12,22)の周方向位置を半周期ずらした配置とされている。
上端縁の内フランジ31は、前述した第2実施形態あるいは第5実施形態と同様に、中間部に切欠き33が形成されている。
下端縁の内フランジ32は、周方向長さが内フランジ31の2倍とされ、両端近傍の2箇所に切欠き34が形成されている。この際、2つの切欠き34の間隔は、第2鋼管杭20におけるピラー23の間隔、つまり溝22の周方向長さと同じとされている。
切欠き33,34は、ピラー13,23と同じかやや大きな幅を有し、ピラー13,23を内側に収容可能である。
これらを嵌め込んだ状態では、内フランジ31,32がフランジ11,21を挟持するとともに、切欠き33,34がそれぞれピラー13,23に係合することになり、連結部材30Eを介して引っ張り荷重および回転トルクを伝達することができる。従って、本実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
前述した第6実施形態の連結部材30Eは、上下を逆さにして使用することもできる。
図7において、第1鋼管杭10の溝12には連結部材30Eの内フランジ32が嵌め込まれ、2つの切欠き34にはそれぞれピラー13が嵌め込まれている。また、第2鋼管杭20の溝22には連結部材30Eの内フランジ31が嵌め込まれ、切欠き33にはピラー23が嵌め込まれている。
このように、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20は端部形状が同じであれば、連結部材30Eを上下逆さにしても何ら問題なく利用することができ、前述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、第6実施形態においては、正配置の連結部材30E(図6参照)と逆配置の連結部材30E(図7参照)を交互に設置することで、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の端部を隙間無く覆うことができる。
前述した第1ないし第6実施形態においては、継手構造1の構成として、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の外周面の溝12,22を形成し、これにより端縁に沿ったフランジ11,12を形成するとともに、その両端にピラー13,23を形成していた(図8参照)。
ここで、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の母材に切り込まれる溝12,22は、断面矩形の溝(図8参照)に限らず、フランジ11,21が形成される側とは反対側がスロープ12A,22A(図9参照)になっていてもよい。
図10に示すように、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の端面には環状の鋼板11B,21Bが溶接され、その外周辺縁によりフランジ11,21が形成されている。
また、フランジ11,21の第1鋼管杭10および第2鋼管杭20側には、それぞれ鋼材による補強板13A,23Aが溶接され、これらによりピラー13,23が構成されている。ただし、図10の変形は本発明に含まれない。
なお、フランジ11,21は第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の母材から連続した材料で形成し、ピラー13,23を別体としたり、逆にピラー13,23は第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の母材から連続した材料で形成し、フランジ11,21を別体としたりしてもよい。
さらに、図9のように、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の母材をスロープ状に細くしたうえ、図10のような別体式のフランジ11,21あるいはピラー13,23を固定してもよい。
図11において、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20は、それぞれ断面形状が円形で所定厚みの鉄鋼を母材とする鋼管杭である。
これらの第1鋼管杭10および第2鋼管杭20は、一対の鋼管杭として、各々の長手方向の中心軸線を同一軸線に合わせたうえ、各々の端部どうしを本発明に基づく継手構造2により連結されている。
溝12および溝12Fは、互いに連続することで独立した島状のフランジ11を第1鋼管杭10の端縁に沿って形成しており、このような溝12,12Fおよびフランジ11の組は、第1鋼管杭10の周方向に複数配列されている。このような構成によるフランジ11は、例えば、第1鋼管杭10の周方向に3つあるいは4つ等とすることができる。
ここで、第1鋼管杭10のフランジ11および第2鋼管杭20のフランジ21は、それぞれ第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の外周面から溝12,22,12F,22Fで隔てられて島状に独立しているが、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の端部どうしを向かい合わせて接続した状態では、フランジ11およびフランジ21が並び合わさって、1つの島状を形成するようになっている。
本体39の内側面には、凹部36が形成され、その外側つまり本体39の外周縁との間の領域は、凹部36に対して相対的に突出した突条35とされている。
突条35うち、周方向に連続する部分により、内フランジ31F,32Fが形成され、長手方向に連続する部分により連結側補強部35Fが形成されている。
内フランジ32Fの厚みは、溝22の幅(第2鋼管杭20の長手方向の寸法)とほぼ同じか僅かに小さく形成されている。内フランジ32Fの円弧状の長さは、溝22の長さとほぼ同じか僅かに小さく形成されている。
本体39の両側に配置された連結側補強部35Fの間隔は、溝12の両側に配置された溝12Fの間隔と同じとされている。
以上の構成により、連結部材30Fの突条35つまり内フランジ31F,32Fおよび連結側補強部35Fは、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の端部どうしを向かい合わせて接続した際の溝12,22,12F,22Fに嵌め込むことができ、連結部材30Fの凹部36には同状態で一体化されるフランジ11,21の島状を嵌め込むことができる。
先ず、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の端部を向かい合わせて長手方向に近接させることで、各々のフランジ11,21が当接され、同芯で重ね合わせられた状態とされる。この際、各々のフランジ11,21が同じ径方向位置で両端が揃うように第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の何れかを回転させて角度位置を調節しておく。
全ての連結部材30Fが装着できたら、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の端部は、略全周にわたってフランジ11,21が連結部材30Fで挟持される。
これらにより、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20を連結する継手構造2が完成する。
第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の間に長手方向の圧縮荷重がかかった場合、フランジ11,21を含む第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の端部どうしが圧接することで荷重を負担する。
第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の間に長手方向の引っ張り荷重がかかった場合、全周にわたってフランジ11,21を挟持する連結部材30Fが荷重を負担する。
第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の間に曲げ荷重がかかった場合、周方向の一部では圧縮荷重となり、反対側では引っ張り荷重となり、引っ張り荷重側ではフランジ11,21を挟持する連結部材30Fが荷重を負担する。
従って、本実施形態の継手構造2では、連結部材30Fに形成された長手方向の連結側補強部35Fにより内フランジ31F,32Fが補強され、これらにより挟持されることでフランジ11,21が補強されて変形を抑制できるため、引っ張り荷重を受けた際の曲げモーメントにも十分耐えることができる。
この状態で、第1鋼管杭10に対して第2鋼管杭20が回転し、継手構造2に回転トルクが加わった場合、内フランジ31F,32Fの両端部および連結側補強部35Fが、それぞれ溝12,22の両端および溝12F,22Fと周方向に係合し、回転トルクを伝達することができる。これらの溝12,22の両端および溝12F,22Fにより、鋼管側係合部が構成されている。
従って、連結部材30F自体を第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の母材にそれぞれ係合させて回転トルクを伝達することができる。
以上により、本実施形態の継手構造2では、簡単な構造でコストが抑制できるとともに、引っ張り荷重および回転トルクの伝達能力を向上させることができる。
前述した第7実施形態では、連結部材30Fに、内フランジ31F,32Fおよびその両端部に連続する連結側補強部35Fを形成し、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の溝12F,22Fに嵌め込むようにした。
これに対し、図12に示すように、連続する連結側補強部35Gを本体39の中央に配置し、内フランジ31G,32Gの中間部に連続させるようにしてもよい。
これらの溝12,22,12G,22Gで囲まれた領域に、フランジ11,21が形成されている。
これらの内フランジ31G,32Gおよび連結側補強部35Gにより横向きのH字状の突条35が形成され、この突条35は前述した第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の溝12,22,12G,22G内に嵌め込むことができる。
これにより、内フランジ31G,32Gがフランジ11,21を挟持し、これらを挟持する内フランジ31G,32Gは連結側補強部35Gで補強されて挟持が強固なものとされるとともに、内フランジ31G,32Gおよび連結側補強部35Gと溝12,22,12G,22Gとが周方向に係合可能であり、連結部材30Gを介して引っ張り荷重および回転トルクを伝達することができる。従って、本実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
前述した第1実施形態では、フランジ11,21および溝12,22の幅(第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の長手方向寸法)を一定としたが、これを変化させて締め付け機能をもたせてもよい。
図13において、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の外周面には溝12,22が形成され、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の端面に沿ってフランジ11,21が形成されている。
連結部材30は、上端縁および下端縁に内フランジ31,32を有し、各々は溝12,22内に嵌め込み可能な寸法および形状とされている。
ここで、内フランジ31,32の間隔は、フランジ11,21の高さの低い部分11L,21Lの厚みの合計よりは広く、フランジ11,21の高さの高い部分11U,21Uの厚みの合計よりは狭く形成されている。
この際、内フランジ31,32は、まず高さの低い部分11L,21Lに挿入することで、挿入操作を容易に行うことができる。続いて、連結部材30をハンマー等で叩くなどにより、高さの低い部分11L,21Lから高さの高い部分11U,21Uへと移動させることで、フランジ11,21の高さの高い部分11U,21Uを強固に挟持することができる。
前述した第1ないし第9実施形態では、それぞれ被挟持部として周方向に連続したフランジ11,21を用い、これらのフランジ11,21を形成するために周方向の溝12,22を用いた。
これに対し、図14に示すように、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の外周面に丸孔12H、22Hを配列し、これらの丸孔12H,22Hに連結部材30Hを嵌め込んで継手構造3を形成してもよい。ただし、図14の第10実施形態は本発明に含まれない。
ここで、丸孔12H,22Hと第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の端面との間の部位により、それぞれ被挟持部11H,21Hが形成されている。
また、複数の丸孔12H,22Hの間にある部位は、被挟持部11H,21Hから第1鋼管杭10および第2鋼管杭20の長手方向に延びており、この部位により鋼管側補強部13H,23Hが形成されている。
突起31H,32Hは、直径が丸孔12H,22Hと同じかやや小さく、周方向の間隔は丸孔12H,22Hの周方向の間隔と略同じとされ、長手方向の間隔は、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20を互いに端面で接続した状態での丸孔12H,22Hの距離と略同じとされている。
この際、被挟持部11H,21Hは鋼管側補強部13H,23Hで補強されており、引っ張り荷重を受けた際の曲げモーメントにも十分耐えることができる。
また、丸孔12H,22Hと突起31H,32Hとが周方向に係合することで、回転トルクも伝達可能である。
従って、本実施形態の継手構造3によれば、簡単な構造でコストが抑制できるとともに、引っ張り荷重および回転トルクの伝達能力を向上させることができる。
前述した第10実施形態では、連結部材30Hとして、板状の本体39の内面に丸孔12H,22Hに嵌め込み可能な複数の突起31H,32Hを形成した。
これに対し、図15に示すように、両端が丸孔12H,22Hに嵌め込み可能な突起31i,32iとされた棒状の鋼材を連結部材30iとして用いてもよい。ただし、図15の第11実施形態は本発明に含まれない。
このような本実施形態によっても、前述した第10実施形態と同様な効果を得ることができる。但し、板状の本体39がない分、連結部材30iが長手方向軸線に対して傾きやすく、回転トルクの伝達性能は低下する可能性がある。
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれるものである。
例えば、第1鋼管杭10および第2鋼管杭20に形成される被挟持部としてのフランジ11,21および鋼管側補強部としてのピラー13,23等の具体的な形状、寸法、配置数は適宜設定すればよい。
また、連結部材30等に形成される挟持部としての内フランジ31,32等の寸法、形状は、対応すべき被挟持部および鋼管側補強部に応じて適宜設定すればよく、連結側係合部としての切欠き33,34等についても同様である。
10,20…鋼管杭である第1鋼管杭および第2鋼管杭
11,21…被挟持部であるフランジ
11H,21H…被挟持部
11U,21U…高さの高い部分
11L,21L…高さの低い部分
12,22…溝
12F,22F,12G,22G…鋼管側係合部を兼ねる溝
12H,22H…丸孔
13,23…鋼管側補強部であるピラー
13H,23H…鋼管側補強部
18,28…雌ねじ孔
30,30A〜30i…連結部材
31,32…挟持部であり連結側係合部を兼ねる内フランジ
31F,32F,31G,32G…挟持部である内フランジ
31H,32H,31i,32i…挟持部であり連結側係合部を兼ねる突起
33,34…連結側係合部である切欠き
35…突条
35F,35G…連結側補強部
36…凹部
37…ボルト
38…貫通孔
39…本体
Claims (4)
- 一対の鋼管杭の端部を連結部材で連結して前記鋼管杭をその長手方向に連続させる鋼管杭の継手構造であって、
前記鋼管杭の端縁に沿って前記鋼管杭の周方向に延びる円弧状に形成され、かつ前記鋼管杭の外周面に形成された溝に対して外向きに突起する被挟持部と、
前記連結部材に形成されて一対の前記被挟持部を一体に挟持する一対の挟持部と、
前記外周面に前記溝に対して突起状に形成されて前記長手方向に延び、かつ前記被挟持部と交差方向に接続された鋼管側補強部と、
前記連結部材に形成されて前記鋼管側補強部に対して前記周方向に係合する連結側係合部と、を有することを特徴とする鋼管杭の継手構造。 - 請求項1に記載した鋼管杭の継手構造において、
前記連結側係合部は、前記鋼管側補強部に当接可能な前記挟持部の端部と、前記挟持部の中間に形成されて前記鋼管側補強部を収容可能な凹部と、の何れかであることを特徴とする鋼管杭の継手構造。 - 一対の鋼管杭の端部を連結部材で連結して前記鋼管杭をその長手方向に連続させる鋼管杭の継手構造であって、
前記鋼管杭の端縁に沿って独立した島状に形成され、かつ前記鋼管杭の外周面に形成された溝に対して外向きに突起する被挟持部と、
前記連結部材に形成されて一対の前記被挟持部を一体に挟持する一対の挟持部と、
前記連結部材の内面に形成された凹部に対して突起状に形成されて前記長手方向に延び、かつ一対の前記挟持部とそれぞれ交差方向に接続された連結側補強部と、
前記鋼管杭に形成されて前記連結側補強部と前記鋼管杭の周方向に係合する鋼管側係合部と、を有することを特徴とする鋼管杭の継手構造。 - 請求項3に記載した鋼管杭の継手構造において、
前記鋼管側係合部は、前記連結側補強部に当接可能な前記被挟持部の端部と、前記被挟持部の中間に形成されて前記連結側補強部を収容可能な凹部と、の何れかであることを特徴とする鋼管杭の継手構造。
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