JP6244779B2 - 膵臓癌の病期を検出する方法及び検出用キット - Google Patents

膵臓癌の病期を検出する方法及び検出用キット Download PDF

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本発明は、膵臓癌の病期の検出方法及び検出用キットに関する。より詳しくは、膵臓特異的リボヌクレアーゼ1のN型糖鎖修飾可能部位における糖鎖の結合の有無を測定することによる膵臓癌の病期、特にステージIおよびIIの検出方法及びその検出用キットに関する。
診断初期段階での癌の検出方法としては、非侵襲的な生体由来の試料、例えば血液や尿などの比較的採取が容易な体液を被検体とすることが好ましい。現在の膵臓癌の診断の際に使用される血清マーカーとしてCA19−9、DUPAN−2などがある。しかしながら、これらのマーカーは臓器特異性が低いことや、遺伝的理由から当該マーカーに反応しない場合があるなど、決定的な確定診断にはならないという欠点がある。
リボヌクレアーゼファミリーの1つである膵臓特異的リボヌクレアーゼ1(以下、リボヌクレアーゼ1を「RNase 1」と称する)は膵臓特異的に発現し、細胞外の体液中に分泌される糖タンパク質である。このタンパク質は、156アミノ酸からなるペプチドとして翻訳され、分泌シグナルの除去、糖鎖修飾を受けた後、128アミノ酸のペプチド配列(配列番号1)を持つ成熟糖タンパク質として細胞外に分泌される。N型糖鎖修飾可能部位、即ちN型糖鎖修飾を受ける可能性があるアミノ酸残基は、配列番号1における34番目、76番目、88番目アスパラギン残基である。
膵臓特異的RNase 1は古くから研究され、癌における発現や活性の変化などが報告されているが、実際に臨床応用されている例はない。1980年にDoranらは、血清中のリボヌクレアーゼ活性が、膵臓癌患者で増加すると報告しているが(非特許文献1)、活性のみの記載であり、リボヌクレアーゼの分子種に関しては特定されていない。膵臓特異的RNase 1の糖鎖修飾に関しては、1994年に健常人から得たリボヌクレアーゼに関して報告され、3カ所ある糖鎖修飾可能部位のそれぞれの糖鎖付加の程度について報告が有るが、膵臓癌との関連性に付いては報告されていない(非特許文献2)。2000年に、Fernandez−Salasらは膵臓癌由来培養細胞から分泌された膵臓特異的RNase 1の分子量が、正常の膵臓から得られたものと比べて大きくなることを報告し、その理由の1つとして糖鎖修飾量の増加を指摘した(非特許文献3)。さらに同研究グループは、2003年と2007年に、膵臓特異的RNase 1の糖鎖修飾に関する報告を発表し、その中で膵癌患者の血清から得られた膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖構造が変化していることを指摘し、特にコアフコシル化された2本分岐複合型糖鎖が増加することを明らかにし、膵臓特異的RNase 1の分子量増加は付加している糖鎖構造自体の分子量増加に起因しているとした(非特許文献4、5)。しかしながら、膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位における糖鎖結合の有無と癌とを関連付ける報告はこれまでになく、さらにいえば、これまでに膵臓癌の病期を決定する方法としては画像診断や手術時の組織診断による方法しかなく、侵襲性の低い腫瘍マーカーによる病期の識別はできなかった。
J. Clin. Pathol. 33, 1212−13 (1980) Biol. Chem. Hoppe Seyler 375, 357−63 (1994) Eur J Biochem. 267, 1484−1494 (2000) Glycobiology 13, 227−244 (2003) Glycobiology 17, 388−400 (2007)
本発明は、膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位に着目し、膵臓癌の病期を検出する方法を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、膵臓癌患者では膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位において糖鎖が結合している場合が健常人と比べて増加していることを見いだし、特に、ステージIおよびIIの患者で顕著であることを見いだし、本発明を完成するに至った。 即ち本発明は、以下のとおりである。
(1)膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位であって、N型糖鎖が結合している部位又は結合していない部位の量を測定することを特徴とする、膵臓癌の病期を検出する方法。
(2)(1)に記載の方法において、病期がステージI及びIIである方法。
(3)膵臓癌の他の病期に比べてN型糖鎖が結合している部位の量が増加する、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)下記A,Bにおいて、AとBとの比を求めることを特徴とする、膵臓癌の病期を検出する方法。
A=膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位であって、N型糖鎖が結合している部位又は結合していない部位の量
B=膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位の量
(5)(4)に記載の方法において、病期がステージI及びIIである方法。
(6)(4)又は(5)に記載の方法において、A=N型糖鎖が結合していない部位の量、であり、膵臓癌の他の病期と比べて、A/Bの値が小さくなる方法。
(7)(4)又は(5)に記載の方法において、A=N型糖鎖が結合している部位の量、であり、膵臓癌の他の病期と比べて、A/Bの値が大きくなる方法。
(8)(4)〜(7)いずれかに記載の方法において、膵臓特異的RNase 1の量を求め、その値を換算してBの値とする方法。
(9)N型糖鎖修飾可能部位が、配列番号1に示された配列の34番目、76番目及び88番目から選ばれる1つ以上のアスパラギン残基である、(1)〜(8)いずれか1項に記載の方法。
(10)N型糖鎖修飾可能部位が、配列番号1に示された配列の88番目のアスパラギン残基である、(9)に記載の方法。
(11)N型糖鎖修飾可能部位が、配列番号1に示された配列の76番目のアスパラギン残基である、(9)に記載の方法。
(12)N型糖鎖修飾可能部位が、配列番号1に示された配列の34番目のアスパラギン残基である、(9)に記載の方法。
(13)(a)膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位を抗原認識部位の一部とするモノクローナル抗体またはその断片、及び試料、を接触させ、(a)のモノクローナル抗体またはその断片と複合体を形成した膵臓特異的RNase 1を測定する、(1)〜(12)のいずれか1項に記載の方法。
(14)(13)に記載の方法において、さらに(b)膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位を抗原認識部位の一部とするモノクローナル抗体またはその断片と同時に膵臓特異的リボヌクレアーゼ1に結合できるモノクローナル抗体またはその断片、を試料と接触させ、(a)及び(b)の2つのモノクローナル抗体または抗体断片と複合体を形成した膵臓特異的RNase 1を測定する方法。
(15)(14)に記載の方法において、試料を、(a)又は(b)の一方と接触させる第一の接触工程と、第一の接触工程で得られたものに(a)又は(b)の他方を接触させる第二の接触工程を含む方法。
(16)膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位を抗原認識部位の一部とするモノクローナル抗体またはその断片を含有することを特徴とする、膵臓癌の病期検出用キット。
(17)(16)に記載のキットにおいて、病期がステージI及びIIであるキット。
(18)膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位であって、N型糖鎖が結合している部位又は結合していない部位の量を質量分析法によって求める、(1)〜(12)いずれか1項に記載の方法。
(19)(18)に記載の方法において、膵臓特異的RNase 1のペプチド断片および/または糖ペプチド断片の質量を質量分析法によって測定する方法。
以下に本発明を更に詳細に説明する。本発明は、膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位であって、N型糖鎖が結合している部位又は結合していない部位の量を測定することにより、膵臓癌の病期を検出するものである。このとき、膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位であって、N型糖鎖が結合している「部位」の量、またはN型糖鎖が結合していない「部位」の量を測定するものであって、N型糖鎖修飾可能部位に対して結合している「糖鎖」の量を測定するものではない。
測定対象となる膵臓特異的RNase 1はヒト生体試料由来であることが好ましい。これらを測定対象とすることにより、ヒトの膵臓癌の病期を検出することができる。このとき、病期ステージがIおよびIIの膵臓癌患者では、他のステージや健常人と比べてN型糖鎖修飾可能部位にN型糖鎖が結合している場合が多く、N型糖鎖修飾可能部位の中でN型糖鎖が結合している部位が増加するため、これを指標として膵臓癌の病期、特にステージI及びIIを検出することができる。
また本発明は、下記A,Bにおいて、AとBとの比を求めることを特徴とする、膵臓癌の病期の検出方法である。
A=膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位であって、N型糖鎖が結合している部位又は結合していない部位の量
B=膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位の量
この方法により、特に病期ステージI及びIIを検出することができる。
また、A=N型糖鎖が結合していない部位の量、であり、他のステージや健常人と比べて、A/Bの値が小さくなる方法であることが好ましい。またA=N型糖鎖が結合している部位の量、であり、他のステージや健常人と比べて、A/Bの値が大きくなる方法であることも好ましい。
B=膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位の量、の場合、その求め方には特に限定はなく、例えば膵臓特異的RNase 1の量を求め、その値を換算してBの値とすることができる。具体的には、膵臓特異的RNase 1は前述のように3つのN型糖鎖修飾可能部位(配列番号1の34,76,88番目のアスパラギン残基)を有するので、測定対象としてそのいずれか1つ、もしく2つの部位、またはすべての部位の量としたときには、それに応じてB=膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位の量も、膵臓特異的RNase 1の量のそれぞれ1倍、2倍または3倍と換算することができる。なお、膵臓特異的RNase 1の量は、例えば免疫学的測定法や質量分析を使用した方法により求めることができる。
なお、膵臓特異的RNase 1は、前述のように3つのN型糖鎖修飾可能部位(配列番号1の34,76,88番目のアスパラギン残基)を有する。そのいずれか1つもしくは2つの部位またはすべての部位において、N型糖鎖が結合している部位の量または結合していない部位の量を測定することにより、又はその量と膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位の量との比を求めることにより、膵臓癌の病期、特にステージI及びIIを検出することができる。特にN型糖鎖修飾可能部位として、配列番号1の88番目のアスパラギン残基に対して上述の量を測定すると、膵臓癌の病期ステージがIおよびIIの患者と、病期ステージIII及びIVの患者又は健常人とでは、その値に顕著な差がみられるため、膵臓癌の病期、特にステージI及びIIの検出方法として好ましいものである。同様に、配列番号1の76番目又は34番目のアスパラギン残基に対して上述の量を測定することも好ましい。
本発明では、膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位を抗原認識部位の一部とするモノクローナル抗体またはその断片を用いることができる。このようなモノクローナル抗体は、例えば膵臓特異的RNase 1またはそのN型糖鎖修飾可能部位を含む近傍のペプチド配列を免疫原とし、常法に従い作製することができる。また抗体の抗原特異性は、その抗原決定基への抗体の結合を標準アッセイ、たとえばELISAまたはFACS分析を用いて決定することができる。またモノクローナル抗体の断片としては、様々な酵素で全抗体を消化して得られるFabまたはF(ab’)フラグメント等があげられる。このようなモノクローナル抗体又はその断片の中で、本発明においては、特に膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位に、糖鎖が結合していない場合に結合し、N型糖鎖が結合している場合に結合が阻害されるものを用いることが好ましい。
さらに、このようなモノクローナル抗体またはその断片の中でも、本発明においては、抗原認識部位が、配列番号1に示された配列の88番目のアスパラギン残基を含む領域であるものを用いることが好ましい。とりわけ、膵臓特異的RNase 1の糖鎖修飾可能部位のうち最もカルボキシル末端側に位置する部位の近傍のアミノ酸配列を認識部位の一部に含むモノクローナル抗体またその断片であることが好ましい。このようなモノクローナル抗体として、後述の参考例1で作製した抗ヒト膵臓特異的RNase 1モノクローナル抗体RrhRN0723をあげることができる。このモノクローナル抗体RrhRN0723は、膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位のうち、配列番号1の88番目のアスパラギン残基にN型糖鎖が結合している場合には、膵臓特異的RNase 1への結合が阻害されるものである。
また本発明では、膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位を抗原認識部位の一部とするモノクローナル抗体またはその断片と同時に膵臓特異的RNase 1に結合できることを特徴とする、モノクローナル抗体またはその断片を用いることができる。このようなモノクローナル抗体は、例えば膵臓特異的RNase 1を免疫原とし、常法に従い作製し、上述の膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位を認識するモノクローナル抗体またはその断片と同時に膵臓特異的RNaseに結合することができるものをスクリーニングすればよい。またモノクローナル抗体の断片は、例えば様々な酵素で全抗体を消化して得られるFabまたはF(ab’)フラグメントなどがあげられる。このようなモノクローナル抗体として、本発明で作製した抗ヒト膵臓特異的RNase 1モノクローナル抗体MrhRN0614をあげることができる。このモノクローナル抗体MrhRN0614は、前述のモノクローナル抗体RrhRN0723と同時に膵臓特異的RNase 1に結合することができる。
本発明においては、このようなモノクローナル抗体またはその断片は、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ビオチン、フルオレセインイソチオシアネート等で標識されたものを用いてもよい。
本発明は、(a)膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位を抗原認識部位の一部とするモノクローナル抗体またはその断片、及び試料、を接触させ、(a)のモノクローナル抗体またはその断片と複合体を形成した膵臓特異的RNase 1を測定する、膵臓癌の病期を検出する方法である。このような方法としては、例えば競合法や抗体アレイ法をあげることができる。
また本発明は、上述の(a)のモノクローナル抗体又はその断片に加えて、さらに(b)として(a)と同時に膵臓特異的RNase 1に結合できるモノクローナル抗体またはその断片を試料と接触させ、(a)及び(b)の2つのモノクローナル抗体または抗体断片と複合体を形成した膵臓特異的RNase 1の糖鎖修飾可能部位であってN型糖鎖が結合している部位又は結合していない部位の量を測定する膵臓癌の病期を検出する方法である。このとき、(a)および(b)のモノクローナル抗体又はその断片は、試料に対して同時に接触させてもよいが、順次接触させる方が好ましい。順次接触させる場合、試料と(a)または(b)の一方と接触させる第一の接触工程と、次いで第一の接触工程で得られたものに(a)又は(b)の他方を接触させる第二の接触工程とを含む。このとき、第一の接触工程では試料と(b)とを接触させ、次いで第二の接触工程で(a)と接触させることが好ましい。(a)、(b)としては、前述のモノクローナル抗体又はその断片を用いることができ、特に(a)としてはモノクローナル抗体RrhRN0723またはその断片、(b)としてはモノクローナル抗体MrhRN0614またはその断片を用いることが更に好ましい。このような方法としては、たとえばELISA法やEIA法のほか、液体クロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法、イムノクロマト法等により、形成された免疫複合体を分離し測定してもよい。
このように膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位を抗原認識部位の一部とするモノクローナル抗体またはその断片は、膵臓癌の病期を検出するキットとして使用することができる。
本発明において、膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位であって、N型糖鎖が結合している部位又は結合していない部位の量を求める方法としては、特に限定はなく、上述のようなイムノアッセイを用いた方法でもよく、また質量分析法によって求めてもよい。質量分析法によって求める場合、例えば膵臓特異的RNase 1を酵素等で分解し、得られたペプチド断片及び/又は糖ペプチド断片の質量を質量分析器等で測定することにより、膵臓特異的RNase 1のN型糖鎖修飾可能部位であって、N型糖鎖が結合している部位又は結合していない部位の量を求めることができる。質量分析器を使用する方法において、膵臓特異的RNase 1からペプチド断片を得る方法としては、例えばJ. Proteome Res.3,556−566 (2004)に報告されているように、糖鎖分解酵素による一連の糖鎖除去処理とエンド型ペプチダーゼによるタンパク質のペプチド骨格の断片化が挙げられる。糖鎖分解酵素による一連の糖鎖除去処理の一例を挙げると、エキソ型糖鎖分解酵素であるシアリダーゼ、ガラクトシダーゼ、ヘキソサミニダーゼ、マンノシダーゼ、フコシダーゼの中から選ばれる1つ以上の酵素と、N型糖鎖の基幹構造部分のキトビオース構造に作用するエンド型グリコシダーゼ、例えばエンドグリコシダーゼHなどを使用して、N−アセチルグルコサミンの単糖構造をN型糖鎖修飾可能部位のアスパラギン残基上に残す方法がある。この方法では、N−アセチルグルコサミンの単糖構造がタンパク質のペプチド骨格上に残るため、任意のエンド型ペプチダーゼ処理によって得られた断片のうち、アミノ酸配列から計算上求められる推定分子量からN−アセチルグルコサミンの分子量だけ質量が増加した糖ペプチド断片を検出することで、特定のN型糖鎖修飾可能部位における糖鎖の付加状態が判別可能となる。以上に挙げた方法によって膵臓特異的RNase 1を分析することで、質量分析法によって糖鎖付加状態の有無を確認することができる。
本発明により、膵臓癌の病期、特に病期ステージIおよびIIを検出することができる。
参考例2で、抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体の糖鎖修飾欠損変異導入抗原に対する結合性を測定した結果を示す図である。 参考例2で、抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体のアミノ酸置換変異導入抗原に対する結合性を測定した結果を示す図である。 参考例2で、各フラクションにおけるアルファーメチルマンノシドの濃度と、抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体の結合性を測定した結果を示す図である。 実施例1で、抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体RrhRN1111の糖鎖修飾欠損変異導入抗原に対する結合性を測定した結果を示す図である。 実施例2で、ステージ別の膵臓癌患者血清の総膵臓特異的RNase 1量(図5A)とAsn88にN型糖鎖が付加していない膵臓特異的RNase 1量(図5B)とを示す図である。 実施例2で、ステージ別の膵臓癌患者血清とG/tとの関係を示す図である。 実施例2で、膵臓癌患者血清を、病期ステージIおよびIIの群と、III及びIVの群の2つに分けた場合の、両者間のROC解析をした結果を示す図である。
[参考例1] 抗体の作製
免疫原の調製
ヒト膵臓特異的RNase 1全長を含むポリペプチドを取得するために、昆虫細胞で発現可能なプラスミドベクターに成熟型ヒト膵臓特異的RNase 1(配列番号1)をコードする遺伝子配列を挿入した発現プラスミドを作製した。詳しく説明すると、昆虫細胞組換えタンパク質発現用プラスミドであるpIZ/V5His vector(ライフテクノロジー社)のマルチクローニングサイトに、5’上流側からヒトイムノグロブリンカッパー鎖をコードする遺伝子配列、Hisタグをコードする遺伝子配列、FLAGタグをコードする遺伝子配列、ヒト膵臓特異的RNase 1をコードする遺伝子配列からシグナルペプチドであるアミノ酸1番から28番までに相当する84核酸残基の遺伝子を除いた領域(配列番号1)を挿入した。作製された発現プラスミドpIZ−KFH−hRNase1は、昆虫細胞株Sf9にCellfectin II(ライフテクノロジー社)を用いて遺伝子導入を実施したことにより、N末端側にヒトイムノグロブリンカッパー鎖が付加した組換え体ヒト膵臓特異的RNase 1が培地中に分泌されることを確認した。培地中に分泌されたタンパク質は、培養上清から抗ヒトイムノグロブリンカッパー軽鎖抗体を用いたアフィニティー精製により濃縮精製して免疫原とした。
免疫動物への免疫
上述の免疫原を用いてマウスおよびラットに免疫を実施した。詳しくは、マウスへの免疫の場合、100μgの免疫原をフロイント完全アジュバンドと共に、6週齢Balb/c雌マウス腹腔に投与し初回免疫とした。その後、7日後、14日後、21日後、28日後、35日後に免疫原100μgをフロイント不完全アジュバンドと共に腹腔投与し、追加免疫とした。さらに、42日後に免疫原100μgを生理食塩水と共に腹腔投与し、最終免疫とした。ラットへの免疫の場合は、100μgの免疫原をフロイント完全アジュバンドと共に、6週齢WHY雌ラット両後肢フットパッドへ投与し初回免疫とした。その後、28日後に免疫原100μgを生理食塩水と共に後肢フットパッドへ投与し、最終免疫とした。
抗体産生ハイブリドーマの作製
最終免疫の3日後に、マウスから脾臓を摘出し、脾臓細胞を回収した。ラットからは、腸骨リンパ節と鼠蹊リンパ節を摘出し、リンパ節細胞を得た。マウス脾臓細胞およびラットリンパ節細胞は、それぞれマウスミエローマ細胞株と電気細胞融合法により融合させた後、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを添加したGIT培地(和光純薬工業株式会社)で細胞培養用96ウェルプレートに播種することにより、融合細胞を選択した。
マウス抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体産生融合細胞株の選定
マウス抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体産生融合細胞株は、融合細胞が培地中に分泌する抗体の、組換え体ヒト膵臓特異的RNase 1に対する反応性を指標にしたELISA法によるスクリーニングにより選択した。スクリーニングに用いたELISAは以下の通りである。96穴マイクロタイタープレート(グライナー社製)の各ウェルに25ngのヤギ抗ヒトイムノグロブリンカッパー鎖抗体(シグマアルドリッチ社製)を含むリン酸緩衝液(50mM リン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.4)を50μl加えて4℃16時間固定した。これらのウェルを300μlの洗浄液(20 mM Tris−HCl,150mM NaCl,pH7.4)で3回洗浄した後、3%BSAを含むブロッキング溶液(3%BSA,20mM Tris−HCl,150mM NaCl,pH7.4)を200μl加えて室温で2時間放置してブロッキングを行った(抗ヒトイムノグロブリンカッパー鎖抗体固相化プレート)。各ウェルを300μlの洗浄液で3回洗浄した後、0.5μg/mlとなるように希釈液(1%BSA、20mM Tris−HCl,150mM NaCl、0.05%Tween−20、pH7.4)で希釈した組換え体ヒト膵臓特異的RNase 1を加え、室温で1時間放置した。各ウェルを300μlの界面活性剤を含む洗浄液(20mM Tris−HCl,150mM NaCl、0.05% Tween−20、pH7.4)で3回洗浄した後、50μlの融合細胞培養上清を加えて室温で1時間放置した。次に、各ウェルを300μlの界面活性剤を含む洗浄液で3回洗浄した後、0.01μgのホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識された抗マウスIgG抗体(Rockland社製)を含む希釈液を50μl加えて、室温で1時間放置した。最後に、各ウェルを300μlの界面活性剤を含む洗浄液で3回洗浄した後、50μlのテトラメチルベンジジン(TMB)溶液(KPL社製)を添加して15分間発色させた後に、1Mのリン酸溶液を添加することで反応を停止し、450nmにおける吸光度を測定した。スクリーニングの結果から、膵臓特異的RNase 1に強い親和性を示す抗体を産生する融合細胞を得た。得られた融合細胞は、限界希釈法によりモノクローン化され、モノクローナル抗体MrhRN0614を得た。
ラット抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体産生融合細胞株の選定
ラット抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体産生融合細胞株は、融合細胞が培地中に分泌する抗体の、ヒト膵臓癌細胞(Capan1)由来の膵臓特異的RNase 1に対する反応性を指標にしたELISA法によるスクリーニングにより選択した。スクリーニングに用いたELISAは以下の通りである。96穴マイクロタイタープレート(グライナー社製)の各ウェルに25ngのマウス抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体(MrhRN0614)を含むリン酸緩衝液(50mM リン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.4)を50μl加えて4℃、16時間固定した。これらのウェルを300μlの洗浄液(20mM Tris−HCl,150mM NaCl,pH7.4)で3回洗浄した後、3%BSAを含むブロッキング溶液(3%BSA,20mM Tris−HCl,150mM NaCl,pH7.4)を200μl加えて室温で2時間放置してブロッキングを行った(抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体固相化プレート)。各ウェルを300μlの洗浄液(20mM Tris−HCl,150mM NaCl,pH7.4)で3回洗浄した後、希釈液(1%BSA、20mM Tris−HCl,150mM NaCl、0.05% Tween−20、pH7.4)で2倍に希釈したヒト膵臓癌細胞(Capan1)の培養上清を加え、室温で1時間放置した。各ウェルを300μlの界面活性剤を含む洗浄液(20mM Tris−HCl,150mM NaCl、0.05% Tween−20、pH7.4)で3回洗浄した後、50μlの融合細胞培養上清を加えて室温で1時間放置した。次に、各ウェルを300μlの界面活性剤を含む洗浄液で3回洗浄した後、0.01μgのHRP標識された抗ラットIgG抗体(American Qualex Antibodies社製)を含む希釈液を50μl加えて、室温で1時間放置した。最後に、各ウェルを300μlの界面活性剤を含む洗浄液で3回洗浄した後、50μlのTMB溶液を添加して15分間発色させた後に、1Mのリン酸溶液を添加することで反応を停止し、450nmにおける吸光度を測定した。スクリーニングの結果から、膵臓特異的RNase 1に強い親和性を示す抗体を産生する融合細胞を得た。得られた融合細胞は、限界希釈法によりモノクローン化され、モノクローナル抗体RrhRN0723を得た。
[参考例2] 抗体の特異性測定
哺乳動物発現系による組換え体ヒト膵臓特異的RNase 1の調製
哺乳動物細胞でヒト膵臓特異的RNase 1全長を含むポリペプチドを取得するために、pcDNA3.1−mycHisベクター(ライフテクノロジー社)にヒト膵臓特異的RNase 1をコードする遺伝子配列(配列番号1)を挿入した発現ベクターを作製した。より詳しくは、免疫原の調製のために作製した昆虫細胞発現用プラスミド(pIZ−KFH−hRNase1)の組換え体タンパク質をコードする遺伝子配列部分を分子生物学的手法によりpcDNA3.1−mycHisベクター(ライフテクノロジー社)に挿入してpcDNA−KFH−hRNase1を作製した。作製した哺乳動物細胞用発現プラスミドは、チャイニーズハムスター卵巣由来培養細胞株(以下、CHO−K1株)にLipofectamine 2000(ライフテクノロジー社)を用いて遺伝子導入を実施したことにより、N末端側にヒトイムノグロブリンカッパー鎖が付加した組換え体ヒト膵臓特異的RNase 1が培地中に分泌されることを確認した。培地中に分泌されたタンパク質は、培養上清から抗ヒトイムノグロブリンカッパー軽鎖抗体を用いたアフィニティー精製により濃縮精製して組換え体ヒト膵臓特異的RNase 1を取得した。精製された組換え体ヒト膵臓特異的RNase 1は、抗体の特異性を明らかにする実験に供された。
糖鎖修飾欠損変異抗原の調製
前項で作製した発現ベクター(pcDNA−KFH−hRNase1)を鋳型として、PCR変異導入法によってアミノ酸置換変異を繰り返し導入することで、糖鎖修飾欠損変異導入抗原を発現するプラスミドを作製した。PCR変異導入法には、PrimeSTAR Mutagenesis Basal Kit(タカラバイオ株式会社)を使用し、添付の説明書に従って実施した。詳しくは、N型糖鎖修飾可能部位のコンセンサス配列(Asn−Xaa−Ser/Thr、Xaaはプロリン以外のアミノ酸残基を指す)の3番目のアミノ酸残基をセリン残基もしくはスレオニン残基以外のアミノ酸に置換することで、糖鎖修飾欠損変異組換え体ヒト膵臓特異的RNase 1を発現するプラスミドを作製した(表1)。作製した糖鎖修飾欠損変異導入発現プラスミドは、CHO−K1株にLipofectamine 2000(ライフテクノロジー社)を用いて遺伝子導入を実施したことにより、N末端側にヒトイムノグロブリンカッパー鎖が付加した糖鎖修飾欠損変異組換え体ヒト膵臓特異的RNase 1が培地中に分泌されることを確認した。培地中に分泌された糖鎖修飾欠損変異組換え体ヒト膵臓特異的RNase 1は、抗体の特異性を明らかにする実験に供された。
Figure 0006244779
糖鎖修飾欠損変異抗原に対する抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体の反応性の測定
糖鎖修飾欠損変異組換え体ヒト膵臓特異的RNase 1に対する抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体の反応性は、以下に記載するサンドイッチELISA法により測定した。96穴マイクロタイタープレート(グライナー社製)の各ウェルに25ngのヤギ抗ヒトイムノグロブリンカッパー鎖抗体(シグマアルドリッチ社製)を含むリン酸緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.4)を50μl加えて4℃16時間固定した。これらのウェルを300μlの洗浄液(20mM Tris−HCl,150mM NaCl,pH7.4)で3回洗浄した後、3%BSAを含むTBS溶液を200μl加えて室温で2時間放置してブロッキングを行った(抗ヒトイムノグロブリンカッパー鎖抗体固相化プレート)。各ウェルを300μlの洗浄液で3回洗浄した後、前述の糖鎖修飾欠損変異導入発現プラスミドが遺伝子導入されたCHO−K1細胞の培養上清を加え、室温で1時間放置した。各ウェルを300μlの界面活性剤を含む洗浄液(20mM Tris−HCl,150mM NaCl、0.05% Tween−20、pH7.4)で3回洗浄した後、25ngのHRP標識マウス抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体(MrhRN0614)または、25ngのHRP標識ラット抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体(RrhRN0723)を含む希釈液を50μl加え、室温で1時間放置した。最後に、各ウェルを300μlの界面活性剤を含む洗浄液で3回洗浄した後、50μlのTMB溶液を添加して10分間発色させた後に、1Mのリン酸溶液を添加することで反応を停止し、450nmにおける吸光度を測定した。
図1に測定した結果を示す。横軸は、各抗体が変異未導入組換え抗原WTに対する結合量を1.0とした時の相対値を示す。縦軸は、各糖鎖修飾欠損変異導入抗原を示す。塗りつぶしの横棒はRrhRN0723抗体の結合量、白抜きの横棒はMrhRN0614抗体の結合量を示す。90番目のセリン残基をアラニン残基に置換することにより、88番目アスパラギン残基が糖鎖修飾されなくなった変異体(m110,m010,m100,m000)に対してのRrhRN0723抗体の反応性が、MrhRN0614抗体の反応性に対して低下していることから、ラット抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体(RrhRN0723)が、88番目のアスパラギン残基の糖鎖修飾可能部位周辺を認識していることが明らかとなった。また、マウス抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体(MrhRN0614)は、どの糖鎖修飾欠損変異抗原に対しても変異未導入組換え抗原WTと同等に反応性を維持していることから、糖鎖修飾可能部位に依存せずに膵臓特異的RNase 1を認識する抗体であることが明らかとなった。
アミノ酸置換変異抗原の調製
前述の発現ベクター(pcDNA−KFH−hRNase1)を鋳型として、PCR変異導入法によってアミノ酸置換変異を導入することで、アミノ酸置換変異導入抗原を発現するプラスミドを作製した。PCR変異導入法には、PrimeSTAR Mutagenesis Basal Kit(タカラバイオ株式会社)を使用し、添付の説明書に従って実施した。詳しくは、配列番号1において85番目のアミノ酸から92番目のアミノ酸残基をそれぞれ別のアミノ酸残基に置換することで、アミノ酸置換変異組換え体ヒト膵臓特異的RNase 1を発現するプラスミドを作製した(表2)。作製したアミノ酸置換変異導入発現プラスミドは、CHO−K1株にLipofectamine 2000(ライフテクノロジー社)を用いて遺伝子導入を実施したことにより、N末端側にヒトイムノグロブリンカッパー鎖が付加したアミノ酸置換変異導入組換え体ヒト膵臓特異的RNase 1が培地中に分泌されることを確認した。培地中に分泌されたアミノ酸置換変異導入組換え体ヒト膵臓特異的RNase 1は、抗体の特異性を明らかにする実験に供された。
Figure 0006244779
アミノ酸置換変異導入抗原に対する抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体の反応性の測定
アミノ酸置換変異導入抗原に対する抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体の反応性は、以下に記載するサンドイッチELISA法により測定した。96穴マイクロタイタープレート(グライナー社製)の各ウェルに25ngのヤギ抗ヒトイムノグロブリンカッパー鎖抗体(シグマアルドリッチ社製)を含むリン酸緩衝液(50mM リン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.4)を50μl加えて4℃16時間固定した。これらのウェルを300μlの洗浄液(20 mM Tris−HCl,150mM NaCl,pH7.4)で3回洗浄した後、3%BSAを含むTBS溶液を200μl加えて室温で2時間放置してブロッキングを行った(抗ヒトイムノグロブリンカッパー鎖抗体固相化プレート)。各ウェルを300μlの洗浄液で3回洗浄した後、アミノ酸置換変異導入抗原を発現するプラスミドが遺伝子導入されたCHO−K1細胞の培養上清を加え、室温で1時間放置した。各ウェルを300μlの界面活性剤を含む洗浄液(20mM Tris−HCl,150mM NaCl、0.05% Tween−20、pH7.4)で3回洗浄した後、25ngのHRP標識マウス抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体(MrhRN0614)または、25ngのHRP標識ラット抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体(RrhRN0723)を含む希釈液を50μl加え、室温で1時間放置した。最後に、各ウェルを300μlの界面活性剤を含む洗浄液で3回洗浄した後、50μlのTMB溶液を添加して10分間発色させた後に、1Mのリン酸溶液を添加することで反応を停止し、450nmにおける吸光度を測定した。
図2にその結果を示す。横軸は、各抗体が変異未導入組換え抗原WTに対する結合量を1.0とした時の相対値を示す。縦軸は、各アミノ酸置換変異導入抗原を示す。塗りつぶしの横棒はRrhRN0723抗体の結合量、白抜きの横棒はMrhRN0614抗体の結合量を示す。変異体R85K,L86I,N88D,G89S,S90Aに対するRrhRN0723の反応性が、MrhRN0614に対する反応性に比べ極端に低下していることから、抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体RrhRN0723が、糖鎖修飾可能部位である88番目アスパラギン残基の周辺のアミノ酸残基、特に85番目のアルギニン残基から、90番目のセリン残基までを認識していることが確認された。
次に、88番目アスパラギン残基が糖鎖修飾を受けた糖鎖修飾欠損変異導入抗原m001に対する抗体の反応性を検討した。即ち、糖タンパク質のN型糖鎖を認識して結合するコンカナバリンAレクチンを固定化したレクチンカラムを使用して、88番目アスパラギン残基が糖鎖修飾を受けた糖鎖修飾欠損変異導入抗原m001を分画した。具体的には、レクチンカラム結合緩衝液(20mM Tris−HCl、150mM NaCl、1mM CaCl、0.5mM MgCl、pH7.4)で平衡化したコンカナバリンAレクチン結合カラム(HiTrap−ConA、GEヘルスケア社製)に、糖鎖修飾欠損変異導入ヒト膵臓特異的RNase 1(m001)を発現させたCHO−K1培養細胞上清を流して、糖鎖修飾欠損変異導入ヒト膵臓特異的RNase 1(m001)を結合させた。コンカナバリンAレクチン結合カラムは、レクチンカラム結合緩衝液で充分に洗浄した後、アルファーメチルマンノシド(シグマアルドリッチ社製)を含むレクチンカラム結合緩衝液を使用して、結合した糖鎖修飾欠損変異導入ヒト膵臓特異的RNase 1(m001)を溶出した。サンプル注入からすべての溶出画分をフラクションコレクターで回収して、分画した各画分に含まれる組換え体抗原の量をサンドイッチELISA法により測定した。検出には、糖鎖修飾の影響を受けない抗体MrhRN0614と、Asn88糖鎖修飾可能部位近傍を認識する抗体RrhRN0723を使用した。
結果を図3に示す。横軸は、カラム分離での各画分を示し、第一縦軸はELISA分析の測定値を示し、第二縦軸はアルファーメチルマンノシドの濃度を示している。破線はMrhRN0614抗体の結合量の変化を示し、実線はRrhRN0723抗体の結合量を示す。点線は、溶出糖であるアルファーメチルマンノシドの各フラクションでの濃度を示す。図4に示した通り、MrhRN0614では、コンカナバリンA結合画分(アルファーメチルマンノシド溶出画分)に抗原が溶出されてきていることが明らかとなったが、同じ画分に対してRrhRN0723は反応性を示さないことが明らかとなった。一方、コンカナバリンAに結合しない画分(素通り画分)は、両抗体とも反応性を示すことが明らかとなった。コンカナバリンA結合画分に含まれる抗原をウエスタンブロット法により解析すると、この画分には糖鎖修飾された抗原のみが含まれることが示された。以上の結果から、新たに取得した抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体(RrhRN0723)は、88番目アスパラギン残基が糖鎖修飾を受けた膵臓特異的RNase 1には反応せず、当該残基が糖鎖修飾を受けていない場合にのみ結合する抗体であることが示された。すなわち、抗ヒト膵臓特異的RNase 1抗体(RrhRN0723)を使用した免疫学的測定系においては、膵臓特異的RNase 1の88番目アスパラギン残基に糖鎖が結合していない場合の量を測定していることが明らかとなった。
[実施例1] 免疫学的測定試薬の調製
ヒト膵臓特異的RNase 1を特異的に認識し、かつ3つの糖鎖修飾可能部位における糖鎖の有無に拘らず結合可能な2つの抗体を使用した免疫測定試薬と、Asn88に糖鎖が結合していないRNase 1を特異的に測定する免疫測定試薬を作製して、それぞれの試薬で血清試料中のRNase 1を測定した。具体的には、ヒト膵臓特異的RNase 1を特異的に認識し、かつ3つの糖鎖修飾可能部位における糖鎖の有無に拘らず結合可能な2つの抗体としては、前述のMrhRN0614とRrhRN1111を用いた。RrhRN1111は、RrhRN0723を取得した際に、3つの糖鎖修飾可能部位における糖鎖の有無に拘らず結合可能な抗体として単離されたものである。RrhRN1111の抗原認識特異性は、参考例2で抗体の特異性の測定に使用した、糖鎖修飾欠損変異抗原を用いたELISA法と同じ方法で検討した。結果を図4に示す。横軸は、各抗体が変異未導入組換え抗原WTに対する結合量を1.0とした時の相対値を示す。縦軸は、各糖鎖修飾欠損変異導入抗原を示す。塗りつぶしの横棒はRrhRN0723抗体の結合量、白抜きの横棒はRrhRN1111抗体の結合量を示す。図4に示した通り、RrhRN0723は、糖鎖修飾可能部位全てに変異を入れ糖鎖修飾を全く受けない変異体m000に対して反応性がないのに対して、RrhRN1111のm000に対する反応性は、変異未導入組換え抗原WTと比べて約90%の反応性を保持している。よって、RrhRN1111は3つの糖鎖修飾可能部位における糖鎖の有無に拘らず結合可能な抗体であると確認された。
以下に、これらの抗体を用いて構築した免疫測定系の測定試薬の調製法、評価方法を示す。水不溶性担体(内部にフェライトを練り込んだ粒子径約1.5mmのEVA製)にMrhRN0614を90ng/担体となるよう物理的に吸着させ、吸着後BSAを用いてブロッキング処理を行った。水不溶性担体については、1個当たり約100ngの蛋白質を物理的に吸着可能である。磁力透過性の容器(容量1.2ml)に12個の担体を入れた後、0.5μg/mLのアルカリ性フォスファターゼ標識を施した抗体RrhRN0723または0.5μg/mLのアルカリ性フォスファターゼ標識を施した抗体RrhRN1111を含む緩衝液(1% BSA、2.5%デキストラン、150mM NaCl、0.05%Tween−20,20mMトリス緩衝液、pH7.4)を加え、凍結乾燥した。この試薬を市販の全自動免疫測定装置(東ソー(株)製、商品名AIA−600II)を用いて全自動での測定を行った。その測定原理は以下の通りである。即ち、測定サンプルを150μL加え、水不溶性担体を37℃で10分間磁石を用いて運動させ、混合液を攪拌した状態で免疫反応させた。反応後、B/F分離操作を行って遊離の標識抗体を分離除去し、アルカリ性フォスファターゼの基質である4−メチルウンベリフェリルリン酸を加え、該基質添加後20秒から295秒までの酵素反応分解物(4メチルウンベリフェロン)の単位時間あたりの生成速度(nM/秒)を測定した。前述の標識化抗体RrhRN0723を含む凍結乾燥試薬を用いてサンプルの測定を行い、膵臓特異的RNase 1の88番目の糖鎖修飾可能部位において糖鎖が結合していない部位の量(以下、F値という)を求めた。また前述の標識化抗体RrhRN1111を含む凍結乾燥試薬を用いてサンプルの測定を行い、膵臓特異的RNase1の量(以下、トータル値という)を求めた。この測定試薬を使用して、精製したヒト膵臓特異的RNase 1を測定すると、精製したヒト膵臓特異的RNase 1の濃度に依存して測定値が増加していることがわかった。このデータは、以後の試料中膵臓特異的RNase 1の測定において、検量線を描くデータとして使用した。
[実施例2] 膵臓癌患者由来血清検体の測定
上述の免疫学的測定試薬を使用して、健常人から得られた血清29検体と、膵臓癌患者から得られた血清41検体の、膵臓特異的RNase 1を測定した。なお膵臓癌患者から得られた血清は、医学的診断の結果病期が決定されているものであり、その内訳を表3に示した。この病期は、国際体がん連合(UICC)膵癌病期分類によるものである。
Figure 0006244779
図5は、健常人血清、膵臓癌患者血清中の膵臓特異的RNase 1量をプロットしたグラフである。膵臓癌患者血清を国際体がん連合(UICC)膵癌病期分類に従ってステージ別にプロットし、前述の標識化抗体RrhRN1111を含む凍結乾燥試薬を用いて測定した総膵臓特異的RNase 1量(トータル値)を図5Aに、前述の標識化抗体RrhRN0723を含む凍結乾燥試薬を用いて測定したAsn88にN型糖鎖が付加してない膵臓特異的RNase 1量(F値)を図5Bに示した。
またF/tを以下の式(1)によって求め、
/t=F値/トータル値 (1)
さらに以下の式(2)の値を求めることにより、膵臓特異的RNase 1のトータル値と、88番目の糖鎖修飾可能部位において糖鎖が結合している部位の量との比(G/t)を求めた。
/t=1−(F/t) (2)
図6に、健常人血清、病期分類の膵臓癌患者血清中における、式(2)によって算出されたG/tをプロットしたグラフを示す。図6から明らかなように、病期がステージIとIIの試料では、他の病期ステージに比べて(G/t)が高くなっていることがわかる。病期がステージI及びIIの群と、IIIおよびIVの群の2つに分けて有意差検定を実施すると、p値が5.7×10−5となり十分に有意差があることがわかる。
この2群を使用して、ROC解析により感度及び特異度を統計的に算出した(図7)ところ、最適化されたカットオフ値を0.103とすると、感度86.4%、特異度78.9%となり、測定の精度を示すAUC値は0.849となり十分な測定精度があることがわかる。ステージIIIおよびIVでカットオフ値0.103を超える試料は、それぞれ11検体中3検体(27%)、8検体中1検体(13%)であった。このように試料中の88番目の糖鎖修飾可能部位において糖鎖が結合している部位の量の比が高い値を示す場合には、ステージI及びIIの早期膵臓癌である可能性が高いことを示している。
以上の結果から、膵臓特異的RNase 1のトータル値と、糖鎖修飾可能部位において糖鎖が結合している部位の量の比を測定することにより、膵臓癌の病期を検出することが可能であり、特に病期ステージI及びIIの早期癌を検出することが可能である。

Claims (16)

  1. 膵臓特異的リボヌクレアーゼ1のN型糖鎖修飾可能部位であって、N型糖鎖が結合している部位又は結合していない部位の量を測定することを特徴とする、膵臓癌の病期ステージI及びIIを検出する方法。
  2. 膵臓癌の他の病期に比べてN型糖鎖が結合している部位の量が増加する、請求項1に記載の方法。
  3. 下記A,Bにおいて、AとBとの比を求めることを特徴とする、膵臓癌の病期ステージI及びIIを検出する方法。
    A=膵臓特異的リボヌクレアーゼ1のN型糖鎖修飾可能部位であって、N型糖鎖が結合している部位又は結合していない部位の量
    B=膵臓特異的リボヌクレアーゼ1のN型糖鎖修飾可能部位の量
  4. 請求項に記載の方法において、A=N型糖鎖が結合していない部位の量、であり、膵臓癌の他の病期と比べて、A/Bの値が小さくなる方法。
  5. 請求項に記載の方法において、A=N型糖鎖が結合している部位の量、であり、膵臓癌の他の病期と比べて、A/Bの値が大きくなる方法。
  6. 請求項いずれかに記載の方法において、膵臓特異的リボヌクレアーゼ1の量を求め、その値を換算してBの値とする方法。
  7. N型糖鎖修飾可能部位が、配列番号1に示された配列の34番目、76番目及び88番目から選ばれる1つ以上のアスパラギン残基である、請求項1〜いずれか1項に記載の方法。
  8. N型糖鎖修飾可能部位が、配列番号1に示された配列の88番目のアスパラギン残基である、請求項に記載の方法。
  9. N型糖鎖修飾可能部位が、配列番号1に示された配列の76番目のアスパラギン残基である、請求項に記載の方法。
  10. N型糖鎖修飾可能部位が、配列番号1に示された配列の34番目のアスパラギン残基である、請求項に記載の方法。
  11. (a)膵臓特異的リボヌクレアーゼ1のN型糖鎖修飾可能部位を抗原認識部位の一部とするモノクローナル抗体またはその断片、及び試料、を接触させ、(a)のモノクローナル抗体またはその断片と複合体を形成した膵臓特異的リボヌクレアーゼ1を測定する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 請求項11に記載の方法において、さらに(b)膵臓特異的リボヌクレアーゼ1のN型糖鎖修飾可能部位を抗原認識部位の一部とするモノクローナル抗体またはその断片と同時に膵臓特異的リボヌクレアーゼ1に結合できるモノクローナル抗体またはその断片、を試料と接触させ、(a)及び(b)の2つのモノクローナル抗体または抗体断片と複合体を形成した膵臓特異的リボヌクレアーゼ1を測定する方法。
  13. 請求項12に記載の方法において、試料を、(a)又は(b)の一方と接触させる第一の接触工程と、第一の接触工程で得られたものに(a)又は(b)の他方を接触させる第二の接触工程を含む方法。
  14. 膵臓特異的リボヌクレアーゼ1のN型糖鎖修飾可能部位を抗原認識部位の一部とするモノクローナル抗体またはその断片を含有することを特徴とする、膵臓癌の病期ステージI及びII検出用キット。
  15. 膵臓特異的リボヌクレアーゼ1のN型糖鎖修飾可能部位であって、N型糖鎖が結合している部位又は結合していない部位の量を質量分析法によって求める、請求項1〜10いずれか1項に記載の方法。
  16. 請求項15に記載の方法において、膵臓特異的リボヌクレアーゼ1のペプチド断片および/または糖ペプチド断片の質量を質量分析法によって測定する方法。
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