JP6242695B2 - 航空機の消火設備および航空機 - Google Patents
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Description
噴射される消火剤としては、例えばハロン化合物であり、室内のハロン濃度を高めていくと、ハロンの負触媒作用によって燃焼の連鎖反応が阻害されるため、消火に至る。
ノズル装置は、設置部材に設置されるパンと、設置部材の裏側で胴体構造に設けられた配管に接続される消火ノズルとを備える。
消火ノズルは、パンの挿通孔に通され、ボルト等でパンに固定される。あるいは、消火ノズルとパンが一体に機械加工される。
しかしながら、上記のようにボルト等で固定、あるいは一体形成されることで、消火ノズルおよびパンが相対変位を許容せずリジッドに結合されていると、例えば、室内に持ち込まれた物品の爆発により生じた風圧が設置部材に作用した際に、設置部材およびパンを介し、ノズルに対して過大な荷重が加えられる。
そのため、爆風などによる衝撃荷重が設置部材に作用した際に、ノズル設置部がノズルに対して相対変位するので、ノズルに対して過大な荷重が入力されない。
したがって、ノズルの破損を免れるので、爆発が生じた後でも、消火設備の消火機能を担保することができる。
本発明における「塞ぐ」は、必ずしも、気密に塞ぐことを意味しない。したがって、微小な孔や開口が形成された蓋部材も、本発明における蓋部材として用いることができる。
また、本発明における「吐出する」は、「噴射する」ことを包含する。
このように、ノズル設置部およびノズルの一方およびその一方に固定された蓋部材と、ノズル設置部およびノズルの他方とを相対変位させれば、蓋部材自体に大きい変形量を持たせなくても、ノズル設置部およびノズルの相対変位量を確保できる。
したがって、変形量が大きい大型で複雑な形態の蓋部材を用いることなく、ノズルとノズル設置部の間を塞ぐだけの小型で単純な形態の蓋部材を用いることができる。そのため、ノズル装置の重量およびコストを抑えることができる。
蓋部材の可撓性により、ノズルおよびノズル設置部に蓋部材を押し付けることができるので、ノズルおよびノズル設置部の間の隙間を気密に塞ぐことができる。そうすると、区画内の消火剤濃度を迅速に高め、スムーズに消火することができる。
そうすると、可撓性を有する蓋部材のリップ部により、ノズルの外周を締め付けることができるので、隙間を気密に塞ぐことができる。
また、フランジ部により、蓋部材をノズル設置部に容易に固定することができる。
そうすると、火炎の熱によりゴム系材料が融解したとしても繊維基材が残存するので、隙間からの消火剤の漏洩を防ぐことができる。また、隙間を通じた火炎の突き抜け防止にも寄与できる。
そうすると、蓋部材の主材に含まれたゴム系材料などが火炎の熱により融解したとしても、バックアップ部材により蓋部材の可撓性を担保できる。
バックアップ部材としては、例えば、スプリング、メッシュなどを用いることができる。
そうすると、ゴム系材料が融解した後も残存するバックアップ部材により、隙間からの消火剤の漏洩を防ぐことができるとともに、隙間を通じた火炎の突き抜け防止にも寄与できる。
固定具として、ノズルの先端側を取り囲むパンを用いることができる。
ここで、上記の消火設備は、航空機に形成されるいずれの区画の消火に用いるものであってもよい。
特に、荷物に紛れて爆発物が持ち込まれる可能性が高い区画である荷物室を消火するために好ましく用いることができる。
本実施形態では、航空機の荷物室(カーゴルーム)内の火災を消火する消火設備を例示する。
本実施形態の航空機では、図1(a)に示すように、客室11よりも後方に荷物室12が配置される。荷物室12は、円筒状をした胴体の後端側の部分に該当する。
図1(a)および(b)には、胴体の図示しないスキンおよび骨組(フレームおよびストリンガ)の内側に設けられるライナ13が示される。ライナ13により、荷物室12の室内空間(区画)が形成される。
これらのライナは、所定の耐火性を有する材料から形成される。本実施形態のライナは、ガラス繊維を含有する繊維強化樹脂(GFRP;Glass Fiber Reinforced Plastics)から形成される。
これらのタンク16A,16Bは、荷物室12の後方に位置する防火壁18と、防火壁18よりも後方に設けられる与圧隔壁(図示しない)との間に設置される。
本管171および支管172は、図示しないブラケットおよびクランプにより、胴体のフレームやストリンガに固定される。
なお、本管171および支管172は、フレームやストリンガと干渉する部分が曲がっているが、単純化して図示している。
ノズル装置20は、本実施形態では6つあり、ライナ131の天井部分に所定の間隔をおいて設けられる。
ノズル21は、ライナ131に形成された円形の開口131Aを介して荷物室12内に向けて消火剤を噴射する。
なお、開口131Aの代わりに、ライナの端部に形成される切欠や、ライナとライナとの間の隙間から消火剤が噴射されてもよい。
ノズル21は、消火配管17の支管172に対して垂直に接続される。ノズル21の先端部には、周方向に間隔をおいて複数の噴射孔213が形成される。
パン22は、開口131Aの周囲でライナ131の裏側に伏せた状態で配置される。
周縁部25は、周方向の複数箇所に配置されるボルト251およびナット252により、ライナ131に締結される。これによってパン22がライナ131に固定される。
蓋部材30は、内周側に位置するリップ部31と、外周側に位置するフランジ部32とを有する。
リップ部31の中央には、ノズル21が挿入される保持孔310が形成される。
リップ部31は、フランジ部32よりも厚肉に形成されており、厚み全体に亘り、ノズル21の外周を保持する。
蓋部材30には、例えば、セラミック(ガラスも含む)などの繊維から緻密に形成された繊維基材にゴム系材料を含浸または塗布した複合材を用いることができる。あるいは、ゴム系材料から形成された板と繊維基材とが積層された複合材を用いることもできる。
上記の繊維基材により、蓋部材30に耐火性が付与され、ゴム系材料により、蓋部材30に可撓性が付与される。
繊維基材は、必要な耐火性を満足するように、糸(繊維)の太さ、織り方、厚みなどが選択される。
また、上記複合材におけるゴム系材料としては、例えば、ニトリルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム、天然ゴム、エチレン・プロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム等を好適に用いることができる。これらのゴム系材料の大部分は100℃以上の熱に耐えるので、火炎に晒されることなくスムーズに消火が行われれば、形状および可撓性を維持する。
まず、消火配管17にノズル21を固定しておく。
また、ライナ131の裏側に、パン22をボルト251およびナット252により固定しておく。
そして、荷物室12の壁および天井にライナ131を取り付ける。このとき、パン22の挿通孔23内にノズル21が通される。
このとき、蓋部材30の保持孔310内にノズル21を挿入する。保持孔310の内径はノズル21の外径よりも少し小さく設定されているので、ノズル21により蓋部材30が押し拡げられる。すると、蓋部材30が含有するゴム系材料の弾性力により、ノズル21の外周に蓋部材30が押し付けられる。そのため、ノズル21の外周と保持孔310の内周との間の摩擦力により、ノズル21が蓋部材30に保持される。
なお、ノズル21およびパン22が規定の位置から少しずれている場合でも、そのずれが蓋部材30の可撓性により吸収されるので、蓋部材30を介してノズル21およびパン22を容易に組み付けることができる。
一方、本実施形態では、ライナ131を取り付ける前にパン22に蓋部材30を装着しておき、ライナ131を取り付ける際に蓋部材30をノズル21に装着することもできる。
仮に、パン22の外側に蓋部材が配置されるとすると、ライナ131を取り付ける前に、あるいはライナ131を一旦取り外してから、パン22に蓋部材を装着する必要があるが、本実施形態によれば組立の手順が制限されない。
消火設備10は、まず、高圧タンク16Aのバルブを開き、消火配管17を通じて各ノズル装置20に消火剤を急速に供給する。次に、消火設備10は、低圧タンク16Bのバルブを開き、各ノズル装置20に消火剤を継続して供給する。
蓋部材30により隙間Sが塞がれているため、ノズル装置20のノズル21から噴射された消火剤は、隙間Sから漏洩することなく、荷物室12内に留まる。そのため、荷物室12内の消火剤の濃度が迅速に高まり、消火剤によって燃焼反応が阻害されるので、消火に至る。
本実施形態では、リップ部31の内部に繊維基材が厚く配置されるので、気密性の確保、および火炎の突き抜け防止の観点で、隙間Sを実質的に塞ぐことができる。
ここで、仮に、ノズル21とパン22とがボルトで固定されていたり、一体に形成されていたりすることでリジッドに結合されているとする。その場合、ノズル21およびパン22の相対変位が許容されないので、ライナ131に作用した圧力が、ライナ131に固定されたパン22を介し、ノズル21に対して過大な荷重として入力される。
このため、爆風による圧力により、ライナ131、パン22、および蓋部材30がライナ131の内側から外側に向けて、ノズル21に対して変位するので、ノズル21に対して過大な荷重が入力されない。
したがって、爆発に続いて生じうる火災にも有効に対処できる。
このように構成すると、蓋部材30に大きい変形量を持たせなくても、パン22およびノズル21の相対変位量を確保できる。そのため、例えば蓋部材を蛇腹状に形成する場合と比べて、蓋部材を小型化できる。したがって、ノズル装置20の重量を低減できる。
上記実施形態で説明した構成と同様の構成には同じ符号を付している。図5についても同様である。
蓋部材40は、リップ部31およびフランジ部32を備えており、所定の耐火性を有する材料から形成されたスプリング41をリップ部31に内蔵する。
蓋部材40は、リップ部31にスプリング41を内蔵することを除いて、上記実施形態の蓋部材30と同様に形成することができる。つまり、蓋部材40は、ガラスやシリカ、アルミナ等の繊維から緻密に形成された繊維基材にゴム系材料を含浸させた複合材などを用いて形成することができる。
本実施形態の蓋部材40は、スプリング41を間に挟む2枚の耐火布(繊維基材から形成)401,402から構成される。耐火布401は、フランジ部32に沿って平坦に配置される。耐火布402は、スプリング41に沿って湾曲して配置される。蓋部材40はこれらの耐火布401,402をゴム引きコーティングすることで作られる。
その場合でも、スプリング41が弾性力を維持するので、ノズル21の外周に蓋部材40が十分に押し付けられる。
このため、蓋部材40の封止機能が担保されるので、荷物室12内の消火剤の濃度を迅速に高め、早期に消火を完了することができる。
さらに、ゴム系材料が融解しても残存する繊維基材とスプリング41により、隙間Sを通じて火炎がライナ131の裏側に突き抜けることを防止することができる。
メッシュ42は、ゴム系材料よりも高い耐火性を有する金属材料やセラミック材料などから形成される。金属材料としては、鉄を含む合金材料(代表的なものとしてステンレス鋼)、ニッケルを含む合金材料、鉄およびニッケルを含む合金材料、ニッケル、鉄、およびクロムを含む合金材料などを好適に用いることができる。
本発明における蓋部材は、可撓性を有していなくてもよい。例えば、セラミックのパウダーを含むペーストを隙間Sに充填して硬化させたものを蓋部材として用いることもできる。その蓋部材の表面にフッ素系樹脂(例えば、テフロン(登録商標))などの摩擦係数が小さい材料を用いてコーティングし、ノズル設置部またはノズルと、蓋部材との間の滑りをよくすることも可能である。
本発明における蓋部材は、ノズルの外周とノズル設置部(パン等の固定具)との間に生じる隙間を塞ぐ限りにおいて、種々の形態をとることができる。
蓋部材は、パン22の外側から隙間を塞ぐように構成されていてもよい。また、蓋部材が隙間に挿入されていてもよい。
本発明における蓋部材は、パン22ではなくノズル21に固定され、パン22の挿通孔23の内周に押し付けられるように構成することもできる。その場合は、パン22と蓋部材との間の摩擦力を超える荷重により、蓋部材およびノズル21に対してパン22が相対変位される。この場合も、上記実施形態と同様の効果が得られる。
また、本発明は、蓋部材を蛇腹状に形成し、ノズル21とパン22との間の相対変位を蛇腹による変形量で吸収することも許容する。
また、本発明は、航空機の荷物室の他に、例えば、航空機のエンジンを収容するエンジン室や、補助動力装置を収容する補助動力装置室など、航空機が備える各種の区画の消火設備にも適用することができる。
さらに、本発明は、航空機に限らず、例えば、船舶、鉄道、建物などの各種区画の消火設備にも適用することができる。
11 客室
12 荷物室(区画)
13 ライナ(設置部材)
16A 高圧タンク(供給源)
16B 低圧タンク(供給源)
17 消火配管
18 防火壁
20 ノズル装置
21 ノズル
22 パン
23 挿通孔
24 パン本体
25 周縁部
30 蓋部材
31 リップ部
32 フランジ部
40 蓋部材
41 スプリング(バックアップ部材)
42 メッシュ(バックアップ部材)
131 壁・天井用ライナ
131A 開口
132 床用ライナ
133 ライナ
171 本管
172 支管
213 噴射孔
241 開口
251 ボルト
252 ナット
310 保持孔
320 孔
321 ボルト
322 ナット
323 リテーナ
S 隙間
Claims (13)
- 航空機の区画を形成する設置部材に設けられるノズル装置を備える消火設備であって、
前記ノズル装置は、
前記設置部材に設けられるノズル設置部に形成された挿通孔の内側に通され、供給源から供給される消火剤を前記区画内に向けて吐出するノズルと、
前記ノズルと前記ノズル設置部との間の隙間を塞ぐ蓋部材と、を備え、
前記ノズルは、前記ノズル設置部とリジッドに結合されておらず、かつ、
前記隙間は、前記ノズルの外周と前記挿通孔の内周との間にある、
ことを特徴とする航空機の消火設備。 - 航空機の区画を形成する設置部材に設けられるノズル装置を備える消火設備であって、
前記ノズル装置は、
前記設置部材に設けられるノズル設置部に形成された挿通孔の内側に通され、供給源から供給される消火剤を前記区画内に向けて吐出するノズルと、
前記ノズルと前記ノズル設置部との間の隙間を塞ぐ蓋部材と、を備え、
前記蓋部材は、
前記ノズル設置部および前記ノズルの一方に固定され、
前記ノズル設置部は、
前記ノズル設置部および前記ノズルの他方と前記蓋部材との間の摩擦力を超える荷重により、前記ノズルに対して変位される、
ことを特徴とする航空機の消火設備。 - 航空機の区画を形成する設置部材に設けられるノズル装置を備える消火設備であって、
前記ノズル装置は、
前記設置部材に設けられるノズル設置部に形成された挿通孔の内側に通され、供給源から供給される消火剤を前記区画内に向けて吐出するノズルと、
前記ノズルと前記ノズル設置部との間の隙間を塞ぐ蓋部材と、を備え、
前記蓋部材は、可撓性を有する、
ことを特徴とする航空機の消火設備。 - 航空機の区画を形成する設置部材に設けられるノズル装置を備える消火設備であって、
前記ノズル装置は、
前記設置部材に設けられるノズル設置部に形成された挿通孔の内側に通され、供給源から供給される消火剤を前記区画内に向けて吐出するノズルと、
前記ノズルと前記ノズル設置部との間の隙間を塞ぐ蓋部材と、を備え、
前記ノズルは、相対変位可能に前記ノズル設置部に組み付けられている、
ことを特徴とする航空機の消火設備。 - 前記蓋部材は、
前記ノズル設置部および前記ノズルの一方に固定され、
前記ノズル設置部は、
前記ノズル設置部および前記ノズルの他方と前記蓋部材との間の摩擦力を超える荷重により、前記ノズルに対して変位される、
ことを特徴とする請求項1、3、4のいずれか一項に記載の航空機の消火設備。 - 前記蓋部材は、可撓性を有する、
ことを特徴とする請求項1、2、4、5のいずれか一項に記載の航空機の消火設備。 - 前記蓋部材は、
前記ノズルが挿入される保持孔が形成されるリップ部と、
前記挿通孔の周囲に固定されるフランジ部と、を備える、
ことを特徴とする請求項3または6に記載の航空機の消火設備。 - 前記蓋部材は、
可撓性を有するゴム系材料と、前記ゴム系材料よりも耐火性が高い繊維基材とを含む複合材から形成される、
ことを特徴とする請求項3、6、7のいずれか一項に記載の航空機の消火設備。 - 前記蓋部材は、
可撓性を有するゴム系材料を含む材料から形成されるとともに、
前記ゴム系材料よりも耐火性が高い材料から形成された可撓性を有するバックアップ部材を内蔵し、
前記バックアップ部材は、
前記ノズルの外周に沿って環状またはC字状に形成される、
ことを特徴とする請求項3、6から8のいずれか一項に記載の航空機の消火設備。 - 前記蓋部材は、
可撓性を有するゴム系材料を含む材料から形成されるとともに、
前記ゴム系材料よりも耐火性が高い材料から形成された可撓性を有するバックアップ部材を内蔵し、
前記バックアップ部材は、
少なくとも前記隙間に対応する位置に配置される、
ことを特徴とする請求項3、6から9のいずれか一項に記載の航空機の消火設備。 - 前記ノズル設置部は、
前記設置部材に一体化される固定具である、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の航空機の消火設備。 - 請求項1から11のいずれか一項に記載の航空機の消火設備を備える、
ことを特徴とする航空機。 - 前記区画は、荷物を収容する荷物室である、
ことを特徴とする請求項12に記載の航空機。
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