以下、添付図面を参照して、本実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
(第一実施形態)
図1を参照して、第一実施形態に係る圧電アクチュエータの構成を説明する。第一実施形態は、HDD用のサスペンション10が圧電アクチュエータを含んでいる例である。図1は、第一実施形態に係るサスペンションを示す概略平面図である。
図1に示されたデュアル・アクチュエータ方式のサスペンション10は、ロードビーム11と、マイクロアクチュエータ部12と、ベースプレート13と、ヒンジ部材14と、を備えている。
ロードビーム11は、ばね性を有する金属板からなる。ロードビーム11の厚さは、たとえば、100μm程度である。ロードビーム11の先端部には、フレキシャ15が取付けられている。フレキシャ15は、ロードビーム11よりもさらに薄い金属製の薄板ばねからなる。フレキシャ15の前端部に、磁気ヘッドを構成するスライダ16が配置されている。
ベースプレート13の基部20に、円形のボス孔21が形成されている。ベースプレート13の基部20と前端部22との間には、後述する圧電素子40Aを収容可能な大きさの一対の開口部23が形成されている。一対の開口部23の間に、ベースプレート13の前後方向(サスペンション10の軸線方向)に延びる帯状の連結部24が設けられている。連結部24は、ベースプレート13の左右方向(サスペンション10の前後方向と交差する方向)への所定範囲の撓みが許容されるように構成されている。
ベースプレート13の基部20は、図示しないボイスコイルモータによって駆動されるアクチュエータアームの先端部に固定されている。これにより、ベースプレート13は、ボイスコイルモータによって旋回駆動される。ベースプレート13は、ステンレス鋼などの金属板からなる。ベースプレート13の厚さは、たとえば、200μm程度である。本実施形態の場合、ベースプレート13とヒンジ部材14とによって、アクチュエータベース25が構成されている。
ヒンジ部材14は、基部30と、ブリッジ部31と、中間部32と、一対のヒンジ部33と、先端部34と、を有している。基部30は、ベースプレート13の基部20に重ねて固定されている。ブリッジ部31は、帯状を呈し、ベースプレート13の連結部24と対応した位置に形成されている。中間部32は、ベースプレート13の前端部22と対応した位置に形成されている。各ヒンジ部33は、板厚方向に弾性変形可能な可撓性を有している。先端部34は、ロードビーム11に固定されている。ヒンジ部材14は、ばね性を有する金属板からなる。ヒンジ部材14の厚さは、たとえば、50μm程度である。
マイクロアクチュエータ部12には、圧電アクチュエータとして、一対の圧電素子40Aが配置されている。各圧電素子40Aは、いわゆる積層型圧電素子である。
ここで、圧電素子40Aの構成について、図2及び図3を参照しつつ説明する。図2は、図1に示されたII−II線に沿った断面構成を説明するための図である。図3(a)は、図1に示された圧電素子の斜視図であり、図3(b)は、図1に示された圧電素子の平面である。
図2及び図3に示されるように、圧電素子40Aは、積層体50と、樹脂60と、を備えている。
積層体50は、直方体形状を呈している。なお、本実施形態において、直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。積層体50は、第一方向D1で互いに対向する第一及び第二主面50a,50bと、第一及び第二主面50a,50bの対向する第一方向D1に垂直な第二方向D2で互いに対向する第一及び第二端面50c,50dと、第一及び第二方向D1,D2に直交する第三方向D3で互いに対向する第一及び第二側面50e,50fと、を有している。
積層体50の外形寸法は、たとえば、第一方向D1に沿う長さが0.05mm、第二方向D2に沿う長さが1.5mm、及び、第三方向D3に沿う長さが0.50mmである。すなわち、積層体50の第二方向D2に沿う長さは、積層体50の第三方向D3に沿う長さよりも長い。
積層体50は、圧電体41と、第一方向D1で圧電体41を挟むように配置されている第一及び第二外部電極52,53と、を有している。
圧電体41は、直方体形状を呈している。圧電体41は、第一方向D1で互いに対向する第一及び第二主面41a,41bと、第二方向D2で互いに対向する第一及び第二端面41c,41dと、第三方向D3で互いに対向する第一及び第二側面41e,41fと、を有している。圧電体41は、第一主面41aが正極に、第二主面41bが負極になるように分極処理されている。
圧電体41の第一端面41cは、主として積層体50の第一端面50cを構成している。圧電体41の第二端面41dは、主として積層体50の第二端面50dを構成している。圧電体41の第一側面41eは、主として積層体50の第一側面50eを構成している。圧電体41の第二側面41fは、主として積層体50の第二側面50fを構成している。
圧電体41は、圧電セラミックからなる。圧電セラミックとしては、PZT[Pb(Zr,Ti)O3]、PT[PbTiO3]、PLZT[(Pb,La)(Zr,Ti)O3]、又はチタン酸バリウム[BaTiO3]などが挙げられる。圧電体41は、たとえば、PZTなどの圧電セラミック材料で構成されている。
第一外部電極52は、第一主面41a上に設けられている。第一外部電極52は、第一主面41aの全体を覆っている。第一外部電極52の厚さは、たとえば、100〜500nm程度に設定されている。第一外部電極52は、積層体50の第一主面50aを構成している。
第二外部電極53は、第二主面41b上に設けられている。第二外部電極53は、第二主面41bの全体を覆っている。第二外部電極53の厚さは、第一外部電極52の厚さと同じに設定されている。すなわち、第二外部電極53の厚さは、たとえば、100〜500nm程度に設定されている。第二外部電極53は、積層体50の第二主面50bを構成している。
本実施形態では、第一及び第二外部電極52,53は、Au層とされている。第一及び第二外部電極52,53は、スパッタリング法により形成されている。第一及び第二外部電極52,53は、スパッタリング法以外の方法(たとえば、焼き付け法、電解めっき法、又は蒸着法など)により形成されていてもよい。
第一及び第二外部電極52,53は、Au層以外の単層の同じ金属層(Cr層、Ni−Cu合金層、又はNi層など)であってもよい。また、第一及び第二外部電極52,53は、Cr/Ni−Cu/Au積層構造(圧電体41側から順にCr層、Ni−Cu合金層、Au層が積層された構造)として形成されてもよい。すなわち、第一及び第二外部電極52,53は、同じ積層構造を有していてもよい。
樹脂60は、積層体50を全体的に覆っている。樹脂60は、第一及び第二主面50a,50bと、第一及び第二端面50c,50dと、第一及び第二側面50e,50fと、を含む積層体50の外表面上に全体的に設けられ、当該外表面を全体的に覆っている。言い換えると、圧電素子40Aは、六面が樹脂コーティングされている。
本実施形態では、樹脂60は、第一及び第二主面41a,41b上に第一及び第二外部電極52,53を介して間接的に設けられるとともに、第一及び第二端面41c,41d上と、第一及び第二側面41e,41f上とに直接的に設けられている。また、樹脂60は、第一及び第二外部電極52,53を介して第一及び第二主面41a,41bを覆っているとともに、直接接して第一及び第二端面41c,41dと、第一及び第二側面41e,41fとを覆っている。
樹脂60は、樹脂部分61,62を有している。樹脂部分61は、第一及び第二主面50a,50b上に設けられている。樹脂部分61は、たとえば、エポキシ樹脂とすることができる。樹脂部分61の厚さは、たとえば、1μmである。樹脂部分62は、第一及び第二端面50c,50d上と、第一及び第二側面50e,50f上とに設けられている。樹脂部分62は、たとえば、パラキシレン系ポリマー(たとえば、パリレン(登録商標))とすることができる。パリレン(登録商標)は、耐電圧性が高いので、圧電素子40Aの耐電圧性を向上させることができる。樹脂部分62の厚さは、たとえば、0.1μmである。
樹脂60には、第一及び第二外部電極52,53の引き出し窓として、第一及び第二開口65,66が設けられている。第一開口65により、積層体50の第一主面50a側では、第一外部電極52が露出している。第二開口66により、積層体50の第二主面50b側では、第二外部電極53が露出している。なお、図3(a)では、説明理解の容易性を考慮し、第一及び第二開口65,66にハッチングを付している。
第一開口65は、積層体50の第一主面50a側の樹脂部分61に設けられている。第一開口65は、積層体50の第二方向D2での中央よりも第一端面41c側に設けられている。第二開口66は、積層体50の第二主面50b側の樹脂部分61に設けられている。第二開口66は、積層体50の第二方向D2での中央よりも第二端面41d側に設けられている。第一及び第二開口65,66は、第二方向D2で互いに離間している。第一及び第二開口65,66の第二方向D2での離間距離は、たとえば、1mmである。第一及び第二開口65,66の形状は、第一方向D1から見て(すなわち、平面視で)、互いに相違している。
第一開口65は、平面視で長方形状を呈し、一対の長辺が第三方向D3に沿って配置されている。第一開口65の各長辺の長さは、第一主面50aの各短辺の長さと同等である。すなわち、第一開口65の各長辺の長さは、たとえば、0.50mmである。第一開口65は、第一端面50cから第二方向D2に離間している。第一開口65と第一端面50cとの第二方向D2での離間距離は、たとえば、0.06mmである。第一開口65の一対の短辺は、平面視で第一主面50aの一対の長辺に接続している。第一開口65の各短辺の長さは、たとえば、0.15mmである。
第二開口66は、平面視で略半円形状を呈し、直線部分(すなわち、弦)が第三方向D3に沿って第二端面50d側に配置されるとともに、曲線部分(すなわち、円弧)が第一端面50c側に配置されている。第二開口66は、たとえば、直径0.34mmの略半円形状である。すなわち、直線部分の長さは、たとえば、0.34mmである。第二開口66は、第二端面50dから第二方向D2に離間している。第二開口66と第二端面50dとの第二方向D2の離間距離は、たとえば、0.06mmである。第二開口66は、第一及び第二側面50e,50fから第三方向D3に離間している。第二開口66と第一及び第二側面50e,50fとの第三方向D3の離間距離は、たとえば、それぞれ0.05mmである。
続いて、圧電素子40Aの固定構造について、図2、図4〜図6を参照しつつ説明する。図4は、図1に示された一方の圧電素子の固定構造を説明するための平面図である。図5、は、図1に示された一方の圧電素子の固定構造を説明するための斜視図である。図6は、図1に示された他方の圧電素子の固定構造を説明するための平面図である。なお、図4及び図5の圧電素子は、図2の圧電素子に対応している。
図2、図4〜図6に示されるように、一方の圧電素子40Aは、第二方向D2が、ベースプレート13の前後方向(サスペンション10の軸線方向)に沿うようにして、対応する開口部23に収容されている。すなわち、各圧電素子40Aは、対応する開口部23に固定されて配置されている。
図2、図4及び図5に示されるように、一方の圧電素子40Aは、第一主面50aが基部30及び中間部32と対向するように、基部30及び中間部32に支持されている。すなわち、第一主面50aが支持面として機能し、第二主面50bが非支持面として機能している。詳細には、一方の圧電素子40Aでは、第二端面50d側が、中間部32に支持されるように、中間部32に樹脂54及び導電性樹脂(導電性ペースト)55によって固定されているとともに、第一端面50c側が、基部30に支持されるように、基部30に導電性樹脂55によって固定されている。
より詳細には、第二端面50d側では、第一主面50a上の樹脂部分61と、第二端面50d上の樹脂部分62と、第一及び第二側面50e,50f上の樹脂部分62とが、樹脂54によって中間部32に固定されている。また、第二開口66により露出している第二外部電極53上と、第二開口66の第二端面50d側に設けられた樹脂部分61上には、導電性樹脂55が設けられている。第二外部電極53は、導電性樹脂55によって図示しない電気配線に接続されている。導電性樹脂55は、導電性材料(たとえば、金属粒子など)を含有する樹脂である。
ここで、第二端面50d側の導電性樹脂55では、第一端面50c側の端部が、第二開口66の円弧に沿うようにして、設けられている。すなわち、導電性樹脂55の設けられる範囲は、第二開口66の形状によって規定されている。これは、樹脂部分61に対する導電性樹脂55の濡れ性が、第二外部電極53に対する導電性樹脂55の濡れ性よりも低いことにより、導電性樹脂55が第二開口66をはみ出して濡れ広がることが抑制されるためである。
第一端面50c側では、第一主面50a上の樹脂部分61と、第一端面50c上の樹脂部分62と、第一及び第二側面50e,50f上の樹脂部分62と、第一開口65により樹脂部分61から露出している第一外部電極52とが、導電性樹脂55によって基部30に固定されている。第一外部電極52は、導電性樹脂55によって図示しない電気配線に接続されている。
図6に示されるように、他方の圧電素子40Aは、第二主面50bが基部30及び中間部32と対向するように、基部30及び中間部32に支持されている。すなわち、第二主面50bが支持面として機能し、第一主面50aが非支持面として機能している。詳細には、他方の圧電素子40Aでは、第一端面50c側が、中間部32に支持されるように、中間部32に樹脂54及び導電性樹脂55によって固定されているとともに、第二端面50d側が、基部30に支持されるように、基部30に導電性樹脂55によって固定されている。
ここで、第一端面50c側の導電性樹脂55では、第二端面50d側の端部が、第一開口65の第一端面50c側の長辺に沿うようにして、設けられている。すなわち、導電性樹脂55の設けられる範囲は、第一開口65の形状によって規定されている。これは、樹脂部分61に対する導電性樹脂55の濡れ性が、第二外部電極53に対する導電性樹脂55の濡れ性よりも低いことにより、導電性樹脂55が第一開口65をはみ出して濡れ広がることが抑制されるためである。
第二端面50d側では、第二主面50b上の樹脂部分61と、第二端面50d上の樹脂部分62と、第一及び第二側面50e,50f上の樹脂部分62と、第二開口66(図3参照)により樹脂部分61から露出している第二外部電極53とが、導電性樹脂55によって基部30に固定されている。第二外部電極53は、導電性樹脂55によって図示しない電気配線に接続されている。
このように、他方の圧電素子40Aは、一方の圧電素子40Aに対して、第一及び第二端面50c,50dの配置が逆となるように、かつ、第一及び第二主面50a,50bの配置が逆になるように支持部材(中間部32及び基部30)に固定されている。
次に、上述した圧電素子40Aの製造方法について、図7及び図8を参照しつつ説明する。
図7(a)に示されるように、まず、圧電素子基板70をカット用フィルム80上に貼りつける。圧電素子基板70は、分極処理された圧電体基板71と、圧電体基板71の各主面上に設けられた電極膜72,73と、電極膜72,73上に設けられている樹脂74と、を備えている。樹脂74は、たとえば、印刷機を用いた印刷によって電極膜72,73上に設けられる。樹脂74は、複数の第一及び第二開口65,66を有している。圧電素子基板70は、電極膜72の設けられた主面側がカット用フィルム80と対向するように、カット用フィルム80上に貼り付けられている。カット用フィルム80は、たとえば、UVテープである。
続いて、図7(b)に示されるように、圧電素子基板70を切断して個片化する。圧電素子基板70の切断処理は、たとえば、ダイシングブレードを用いて行われる。これにより、圧電体41と、圧電体41上に設けられた第一及び第二外部電極52,53と、有する積層体50と、第一及び第二外部電極52,53上に設けられた樹脂部分61と、を備える複数の圧電素子が得られる。複数の圧電素子は切断溝Sによって分離されている。
続いて、図8(a)に示されるように、切断処理により得られた圧電素子に対して、カット用フィルム80に貼り付けたままで樹脂75の蒸着を行う。樹脂75は、たとえば、パリレン(登録商標)とすることができる。蒸着によれば、樹脂75を薄く設けることができる。樹脂75は、切断溝S内にも設けられる。これにより、樹脂75は、圧電体41の第一主面50a以外の外表面上に設けられる。
続いて、図8(b)に示されるように、樹脂75が設けられた圧電素子に対して、カット用フィルム80に貼り付けたままでプラズマエッチングを行う。プラズマエッチングは、たとえば、酸素プラズマエッチングとすることができる。切断溝S内では、第二主面50b上よりも、遮蔽効果によりエッチングレートが小さくなる。このため、第二主面50b上の樹脂75が選択的に取り除かれる。これにより、切断溝S内には、樹脂部分62に対応する樹脂75が残留する。以上により、圧電素子40Aが得られる。
(第二実施形態)
図9を参照して、第二実施形態に係る圧電素子の構成を説明する。図9に示されるように、第二実施形態に係る圧電素子40Bは、第一及び第二開口65,66が平面視で互いに同じ形状を呈している点で、第一実施形態に係る圧電素子40Aと相違し、その他の点で一致している。ここでは、第一及び第二開口65,66が平面視で略長方形状を呈している。なお、図9では、図3(a)と同様に、説明理解の容易性を考慮し、第一及び第二開口65,66にハッチングを付している。
以上説明したように、第一及び第二実施形態では、圧電素子40A,40Bは、圧電体41と第一及び第二外部電極52,53とを有する積層体50が、樹脂60により全体的に覆われて外部衝撃から保護されている。このため、圧電素子40A,40Bの製造時、サスペンション10への実装時、及びサスペンション10の駆動時などにおいて、圧電素子40A,40Bでは、樹脂60を備えていない圧電素子に比べて、損傷を抑制することができる。特に、圧電体41は、脆性材料からなるため、外部衝撃により割れ及び欠けが生じ易く、また、パーティクルが生じ易い。本実施形態では、圧電体41は、外部に露出していないので、割れ、欠け、及びパーティクルの発生が抑制される。
また、樹脂60には、第一及び第二外部電極52,53が露出している第一及び第二開口65,66が設けられている。このため、第一及び第二開口65,66を介して第一及び第二外部電極52,53を引き出すことができる。第一開口65は、第一主面50a上に設けられ、第二開口66は、第二主面50b上に設けられている。また、第一開口65は、積層体50の第二方向D2での中央よりも第一端面50c側に設けられ、第二開口66は、積層体50の第二方向D2での中央よりも第二端面50d側に設けられている。
第一及び第二外部電極52,53に電気的に接続する部分同士のなす距離(電極間距離)が短いと、短絡が生じる可能性がある。特に、同一主面上に第一及び第二外部電極52,53に電気的に接続する部分が存在すると、気中放電による短絡が生じる可能性がある。これに対して、圧電素子40A,40Bでは、第一及び第二開口65,66は、積層体50の異なる主面側に設けられている上、第二方向D2で互いに離間しているので、第一及び第二外部電極52,53の短絡が生じ難い。また、圧電素子40A,40Bでは、同一主面上に第一及び第二外部電極52,53に電気的に接続する部分が存在しないので、その点でも短絡が生じ難く、信頼性が向上する。
また、樹脂部分62として、耐電圧性が高いパリレン(登録商標)を用いることにより、圧電素子40A,40Bの耐電圧性を向上することができる。これにより、圧電素子40A,40Bでは、信頼性がさらに向上する。
圧電素子40A,40Bを圧電アクチュエータとして用いる際、第一及び第二開口65,66はいずれも導電性樹脂55によって覆われる。このため、第一及び第二開口65,66を介して、圧電体41及び第一及び第二外部電極52,53といった圧電素子40A,40Bの構成材料がパーティクルとして脱離するのを抑制することができる。
圧電素子40A,40Bでは、樹脂60が第一及び第二開口65,66を有していることにより、特に、非支持面として機能している主面(以下、非支持面という)上において、導電性樹脂55の設けられる範囲を制御することができる。これにより、非支持面上に導電性樹脂55を形成する際、導電性樹脂55が、非支持面上から、第一及び第二側面50e,50f、さらには支持面として機能している主面へと垂れて形成されることを抑制することができる。仮に、導電性樹脂55が垂れて形成された場合であっても、圧電素子40A,40Bは、第一及び第二主面50a,50bと、第一及び第二側面50e,50fと、が樹脂54により覆われているため、短絡の発生が抑制される。また、第一及び第二開口65,66は、いずれも第一及び第二主面50a,50bを第三方向D3に二等分する中心線に対して線対称である。このため、非支持面上において導電性樹脂51が中心線に対して偏って設けられることを抑制することができる。
圧電素子40Aでは、第一及び第二開口65,66の形状は、互いに相違している。このため、圧電素子40Aの極性をその外観から容易に識別することができる。たとえば、製造現場において、画像認識により圧電素子40Aの極性を識別することができるので、生産性が向上する。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
たとえば、第一及び第二開口65,66の形状は、長方形状及び半円形状に限られず、第一及び第二外部電極52,53を引き出すことができれば、どのような形状であってもよい。
図10は、第一及び第二開口の形状の変形例について説明するための平面図である。なお、図10では、図3(a)及び図9と同様に、説明理解の容易性を考慮し、第一開口にハッチングを付している。また、以下では、第一開口の形状として、各形状について説明するが、各形状は第二開口の形状であってもよい。
図10(a)に示される第一開口は、平面視で円形状を呈している。第一開口は、第一主面の各長辺(すなわち、第一及び第二側面)及び各短辺(すなわち、第一及び第二端面)からそれぞれ離間している。第一開口は、第一主面の各長辺から等しい距離に設けられている。
図10(b)に示される第一開口は、平面視で楕円形状を呈している。第一開口は、第一主面の各長辺及び各短辺からそれぞれ離間している。第一開口は、第一主面の各長辺から等しい距離に設けられている。第一開口の楕円の長軸方向は、第一主面の長辺方向に一致している。
図10(c)に示される第一開口は、平面視で長方形状を呈している。第一開口は、第一主面の各長辺及び各短辺からそれぞれ離間している。第一開口の長方形の長辺方向は、第一主面の短辺方向に一致している。第一開口と第一主面の第一端面側の短辺との離間距離は、第一開口と第一主面の各長辺との離間距離と同等である。
図10(d)に示される第一開口は、平面視で長方形状を呈している。第一開口は、第一主面の各長辺及び各短辺からそれぞれ離間している。第一開口の長方形の長辺方向は、第一主面の長辺方向に一致している。第一開口は、第一主面の各長辺から等しい距離に設けられている。第一開口と第一主面の第一端面側の短辺との離間距離は、第一開口と第一主面の各長辺との離間距離よりも短い。
図10(e)に示される第一開口は、平面視で半円形状を呈している。第一開口は、第一主面の各長辺及び各短辺からそれぞれ離間している。第一開口の直線部分は、第二端面側に配置されるとともに、第一開口の曲線部分は、第一端面側に配置されている。第一開口と第一主面の第一端面側の短辺との離間距離は、第一開口と第一主面の各長辺との離間距離と略同等である。第一開口の直線部分は、第一主面の各短辺と平行をなしている。
図10(f)に示される第一開口は、平面視で台形状を呈する部分と、長方形状を呈する部分とが一体化されて構成されている。台形の下底の長さは、第一主面の各短辺の長さと等しく、台形の上底の長さは、下底の長さよりも短い。長方形の長辺方向は、第一主面の短辺方向に一致している。長方形の各長辺の長さは、第一主面の各短辺の長さと等しい。台形の下底は、長方形の一方の長辺に接続している。台形の上底は、第一主面の第一端面側の短辺の中央部に接続している。長方形の各短辺は、第一主面の各長辺に接続している。
図10(g)に示される第一開口は、平面視で半円形状を呈している。第一開口は、第一主面の各短辺及び第一端面側の長辺のそれぞれと接続している。第一開口の半円の直径は、第一主面の各短辺の長さに等しい。第一開口の直線部分は、第二端面側に配置され、第一開口の曲線部分は第一端面側に配置されている。第一開口の直線部分は、第一主面の各短辺と平行をなしている。
図10(h)に示される第一開口は、平面視で長方形状を呈している。第一開口の長方形の長辺方向は、第一主面の長辺方向に一致している。第一開口の各長辺は、第一主面の各長辺から離間している。第一開口の各長辺と第一主面の各長辺との離間距離は、互いに等しい。第一開口の短辺の一方は、第一主面の第一端面側の短辺の中央部に接続している。
図10(i)に示される第一開口は、平面視で2つの長方形状を呈する部分が一体化されて構成されている。2つの長方形の長辺方向は、いずれも第一主面の短辺方向に一致している。一方の長方形の各長辺の長さは、第一主面の各短辺の長さよりも短い。他方の長方形の各長辺の長さは、第一主面の各短辺の長さと等しい。一方の長方形は、一方の長辺が第一主面の第一端面側の短辺の中央部に接続するとともに、他方の長辺が他方の長方形の一方の長辺の中央部に接続している。一方の長方形の各短辺は、第一主面の各長辺から離間している。一方の長方形の各短辺と、第一主面の各長辺との離間距離は、互いに等しい。他方の長方形の各短辺は、第一主面の各長辺に接続している。
図10(j)に示される第一開口は、平面視で2つの長方形状を呈する部分が一体化されて構成されている。一方の長方形の長辺方向は、第一主面の短辺方向に一致している。一方の長方形の各長辺の長さは、第一主面の各短辺の長さと等しい。他方の長方形の長辺方向は、第一主面の長辺方向に一致している。他方の長方形の各短辺の長さは、第一主面の各短辺の長さよりも短い。一方の長方形は、一方の長辺が第一主面の第一端面側の短辺に接続している。他方の長方形は、一方の長辺が一方の長方形の他方の長辺の中央部に接続している。一方の長方形の各短辺は、第一主面の各長辺に接続している。他方の長方形の各長辺は、第一主面の各長辺から離間している。他方の長方形の各長辺と、第一主面の各長辺との離間距離は、互いに等しい。
図10(k)に示される第一開口は、平面視で台形状を呈する部分と、長方形状を呈する部分とが一体化されて構成されている。台形の下底の長さは、第一主面の各短辺の長さと等しく、台形の上底の長さは、下底の長さよりも短い。長方形の長辺方向は、第一主面の短辺方向に一致している。長方形の各長辺の長さは、第一主面の各短辺の長さと等しい。長方形の一方の長辺は、第一主面の第一端面側の短辺に接続し、他方の長辺は、台形の上底に接続している。
図10(l)に示される第一開口は、平面視で半円形状を呈している。半円の直径は、第一主面の各短辺の長さと等しい。第一開口の直線部分は、第一主面の第一端面側の短辺に接続している。
図10(m)に示される第一開口は、平面視で長方形状を呈している。長方形の各長辺の長さは、第一主面の各短辺の長さと等しい。長方形の長辺方向は、第一主面の短辺方向に一致している。長方形は、一方の長辺が第一主面の第一端面側の短辺に接続している。長方形の各短辺は、第一主面の各長辺に接続している。
図10(a)〜図10(e)に示される第一開口は、第一主面の各長辺及び各短辺から離間している。すなわち、外部衝撃により欠け易い積層体の稜線部(すなわち、第一及び第二端面と第一及び第二主面とを接続している各稜線部、第一及び第二端面と第一及び第二側面とを接続している各稜線部、並びに、第一及び第二側面と第一及び第二主面とを接続している各稜線部)が、樹脂により覆われている。したがって、これらの形状の場合、稜線部のチッピングを抑制することができる。
図10(f)〜図10(i)に示される第一開口は、積層体の角部(すなわち、第一及び第二主面と、第一及び第二端面と、第一及び第二側面との頂点部分。さらに、言い換えると、積層体の各稜線部の交点部分。)にまで達していない。すなわち、外部衝撃により特に欠け易い角部が、樹脂により覆われている。したがって、これらの形状の場合、角部のチッピングを抑制することができる。
また、図10(f)〜図10(i)に示される形状では、図10(a)〜図10(e)に示される形状と比べて、第一開口の面積を大きくし易い。このため、図2に示される第一及び第二外部電極52,53と導電性樹脂55との導通が取り易い。また、図2に示される樹脂60として、第一及び第二外部電極52,53との密着性が比較的低い樹脂が使用される場合は、稜線部から樹脂60が剥離する懼れがある。この場合は、図10(f)〜図10(i)に示される形状とすることにより、稜線部から樹脂60が剥離するのを抑制することができる。
図2に示される樹脂54及び導電性樹脂55には、圧電素子を支持部材に強固に固定するような接着性に対する要求がある。また、樹脂60には、圧電体の変形を妨げ難いような柔軟性に対する要求がある。したがって、樹脂60は、樹脂54及び導電性樹脂55に比べて、変形し易く軟らかい材料が選ばれる場合がある。この場合は、圧電体と支持部材との間に存在する樹脂60の変形分だけ、支持部材に圧電素子の変位が伝わり難い。この場合であっても、第一開口の面積を大きくするとともに、圧電体と支持部材との間に存在する樹脂60の面積を小さくすることにより、圧電素子の変位の低下を抑制することができる。
図10(j)〜図10(m)に示される第一開口は、積層体の角部を含む稜線部にまで達している。したがって、これらの形状の場合も、図10(f)〜図10(i)に示される形状よりもさらに面積を大きくし易い。なお、ここでは、図10(f)〜図10(i)に示される形状と同じ面積の例が示されている。また、図2に示される樹脂60として、第一及び第二外部電極52,53との密着性が比較的低い樹脂が使用される場合は、角部から樹脂60が剥離する懼れがある。この場合は、図10(j)〜図10(m)に示される形状とすることにより、角部から樹脂60が剥離するのを抑制することができる。
また、樹脂60の厚さは、全体的に均一の厚さであってもよいし、部分的に異なっていてもよい。たとえば、外部衝撃により欠け易い積層体50の稜線部を保護するため、樹脂60は、これらの稜線部近傍において、稜線部以外の部分よりも厚く設けられてもよい。
樹脂部分61,62の厚さが互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。また、樹脂部分62の厚さが、樹脂部分61の厚さよりも薄くてもよい。上述のように、樹脂60が設けられていることにより、圧電素子40A,40Bの損傷を抑制するという本実施形態の効果が得られる。また、樹脂60の厚さが厚い程、その効果が高くなる。しかしながら、樹脂60の厚さが厚い程、圧電体41の変形(振動)が阻害され易くなる。この結果、圧電素子40A,40Bの変位が減少する。
これに対して、樹脂部分62の厚さを薄くした場合は、第一及び第二端面41c,41d側と、第一及び第二側面41e,41f側とにおいて圧電体41の変形(振動)が阻害され難い。すなわち、圧電体41は、圧電体41の体積を維持したまま変位しようとするため、第一及び第二端面41c,41d側では伸びるように変形しようとする代わりに、第一及び第二主面41a,41b側並びに第一及び第二側面41e,41f側では縮むように変形しようとする。樹脂部分62の厚さを薄くした場合は、樹脂部分62の厚さを樹脂部分61の厚さと同様に厚くした場合と比べて、第一及び第二端面41c,41d側の伸びるような変形と、第一及び第二側面41e,41f側の縮むような変形が、阻害され難くなる。この結果、圧電素子40A,40Bの変位の減少度合いを低く抑えることができる。
また、第一及び第二外部電極52,53に加えて、圧電体41内に内部電極を備えていてもよい。また、第一及び第二外部電極52,53は、第一及び第二主面41a,41b上に加えて、第一及び第二端面41c,41d上に設けられ、内部電極と、第一及び第二端面41c,41d上に設けられた第一及び第二外部電極52,53とが接続されていてもよい。
また、樹脂60は、第一及び第二開口65,66以外にも、圧電体41又は第一及び第二外部電極52,53を露出させる開口を有していてもよい。
また、第一及び第二開口65,66は、第一方向D1から見て重複部分を有さない方が好ましく、第二方向D2で互いに少しでも離間していればよい。また、積層体50の第二方向D2に沿う長さは、積層体50の第三方向D3に沿う長さよりも短くてもよい。
樹脂60の形成方法は、印刷及び蒸着による形成方法に限られない。また、樹脂部分61の材料と樹脂部分62の材料とが同じであってもよい。たとえば、樹脂部分61の材料と樹脂部分62の材料を同じとして、樹脂60全体を蒸着により形成してもよい。この場合、第一及び第二開口65,66はマスクを用いて形成することができる。
圧電素子40A,40Bでは、ヒンジ部材14の中間部32及び基部30と、ベースプレート13の前端部22及び基部20とが支持部材として機能しているが、これに加えて、たとえば、ベースプレート13の連結部24が支持部材として機能してもよい。また、たとえば、ヒンジ部材14の中間部32及び基部30のみが支持部材として機能してもよい。
本発明は、HDD用のサスペンション10のマイクロアクチュエータ部12以外の圧電アクチュエータに用いることができる。