1.活性光線硬化型インクジェットインクの脱気方法
本発明の一実施形態に係る活性光線硬化型インクジェットインクの脱気方法は、ゲル化剤、光重合性化合物および色材を含有する活性光線硬化型インクジェットインク(以下、単に「インク」とも言う。)に超音波を照射する工程を含み、超音波が照射されるときのインクの温度は、インクのゲル化温度よりも低い温度である。
本発明は、超音波の照射によって、ゲル化剤、光重合性化合物および色材を含有する活性光線硬化型インクジェットインクを加熱せずに脱気することができ、かつインクの流動性も高めることができるという、本発明者らの新たな知見に基づくものである。
1−1.超音波照射によるインクの脱気
本発明の一実施形態に係る方法において、インクに超音波を照射する方法は、特に限定されない。たとえば、インクを保存するためのメインタンクまたは脱気処理用のサブタンク(以下、これらのメインタンクまたはサブタンクを、単に「脱気が行われるインクタンク」とも言う。)に超音波を発生する超音波振動子を設けて、脱気が行われるインクタンク内にインクを入れた状態で超音波振動子を駆動することで、インクに超音波を照射することができる。脱気が行われるインクタンクの内部に超音波振動子を設けて、インクに超音波を直接照射してもよいし、脱気が行われるインクタンクの外部に超音波振動子を設けて、タンクの壁または他の液体を通して間接的に超音波を照射してもよい。脱気が行われるインクタンクの内部に超音波振動子を設ける場合、超音波振動子の全体または一部がインクに浸漬した状態で超音波を発生すると、超音波の損失が少なくなり、より少ないエネルギーでインクの脱気を行うことができる。
インクに超音波を照射すると、インクが振動するため、インク中に溶存している気体が集合して気泡として析出する、いわゆるキャビテーションが生じる。キャビテーションにより析出した気泡はインク表面に浮上してインク外に出ていくため、インク中に溶存する気体の量が少なくなる。
また、本発明者らは、超音波を照射したインクが、加熱しなくても良好な流動性を有することを新たに見いだした。これは、超音波の照射によってインクが振動することにより、ゲル化剤の凝集が解消されてゲル化剤が分散することによると思われる。特に、結晶性のゲル化剤を用いた場合、インクの温度が低い状態では、ゲル化剤が結晶化してインク中に大きな体積を有する固まりを生ずるため、インクの流動性が低下することがある。これに対し、本発明では、超音波の照射によりゲル化剤の結晶構造が崩れて、ゲル化剤がインク中に分散するため、加熱しなくてもインクの流動性を向上させることができるものと思われる。
インクの流動性を確保するため、超音波を照射した後のインクの粘度は、30℃において50mPa・s以上300mPa・s以下であることが好ましい。
超音波の発振周波数および照射エネルギーは、インクの組成または粘度等に応じて適当に設定することができる。超音波が減衰せずインク全体に行きわたるように、超音波の発振周波数および照射エネルギーを設定すると、インク全体を十分に脱気することができる。また、超音波を照射した後のインクの粘度が30℃において50mPa・s以上300mPa・s以下となるように、超音波の発振周波数および照射エネルギーを設定することもできる。また、たとえば、後述する脱気後のインクの溶存酸素濃度が2ppm以下となるように、超音波の発振周波数および照射エネルギーを設定することもできる。
インクに照射される超音波の発振周波数は5kHz以上50kHz以下とすることができ、10kHz以上30kHz以下とすることが好ましい。発振周波数を5kHz以上とすることで脱気を十分に行うことができ、発振周波数を50kHz以下とすることで、振動による色材の凝集が生じにくくなる。また、超音波の発振周波数を10kHz以上30kHz以下とすることで、色材の凝集がより生じにくくなるため、画像の光沢を均一にすることができ、かつ画像に白スジを発生しにくくすることができる。
また、インクに照射される超音波の照射エネルギーは1×104J以上1×105J以下とすることができ、2×104J以上8×104J以下とすることが好ましい。照射エネルギーを1×104J以上とすることで脱気を十分に行うことができ、照射エネルギーを1×105J以下とすることで、振動による色材の凝集を防ぐことができる。
インクに超音波を照射するとき、脱気が行われるインクタンク内の圧力は常圧でもよいが、減圧させてもよい。脱気が行われるインクタンク内の圧力を減少させることで、気泡がインク外に出て行きやすくなる。インクに超音波を照射するときの脱気が行われるインクタンク内の圧力は、たとえば0気圧以上1気圧以下(0kPa以上101.3kPa以下)とすることができる。
1−2.超音波照射時の活性光線硬化型インクジェットインクの温度
本発明の一実施形態に係る方法においては、超音波を照射するときの活性光線硬化型インクジェットインクの温度は、インクの凝固点以上であって、インクのゲル化温度よりも低い温度である。
超音波を照射するときのインクの温度をゲル化温度よりも低くすることで、加熱により液体(ゾル)化したインクからの光硬化性化合物の揮発や、加熱による光硬化性化合物の変質を抑えることができる。インクの温度は、ゲル化温度よりも10℃以上低くすることが好ましく、20℃以上低くすることがさらに好ましい。
本発明の一実施形態に係る方法は、インクのゲル化温度以下の温度で超音波を照射するため、常温近くでまたは冷却されて保存されているインクに対して、インクを加熱する工程を含めずに、インクの脱気をすることができる。脱気が行われるインクタンクへの脱気前のインクの導入を容易にするため、脱気前のインクを加熱して流動性を付与してもよいが、このときも、加熱の際にインクに与えるエネルギーを調整して、インクの温度がゲル化温度よりも高くならないようにすることが好ましい。また、超音波を照射することによってインクが振動し、振動のエネルギーによってインクの温度が上昇することもあるため、超音波の発振周波数や照射エネルギーを調整して、インクの温度がゲル化温度よりも高くならないようにすることも好ましい。
インクのゲル化温度は、30℃以上100℃未満であることが好ましく、50℃以上65℃以下であることがより好ましい。インクのゲル化温度を100℃未満とすることで、射出時にゲル化が生じやすいため、吐出用記録ヘッドからの過剰なインクの射出を防ぐことができる。一方、インクのゲル化温度を30℃以上とすることで、記録媒体に着弾後、速やかにインクがゲル化する。なお、ゲル化温度とは、ゾル状態にあるインクを冷却する過程において、ゲル化して流動性が低下するときの温度である。
インクのゲル化温度は、レオメータにより、インクの動的粘弾性の温度変化を測定することにより求めることができる。具体的には、インクを100℃に加熱し、せん断速度11.7(/s)、降温速度0.1℃/sの条件で20℃まで冷却したときの、粘度の温度変化曲線を得る。ゲル化温度は、粘度の温度変化曲線において、粘度が200mPa・sとなる温度として求めることができる。
レオメータは、Anton Paar社製 ストレス制御型レオメータ PhysicaMCRシリーズを用いることができる。コーンプレートの直径は75mm、コーン角は1.0°とすることができる。
インクの粘度は、例えば、装置MCR−300(Physica社製)を使用して(コーンプレートは75Φを使用)、オシレーションモードで測定することができる。このとき、30℃おいて、歪5%、角周波数10rad/sにおける複素粘度を測定する。2秒おきに30点の複素粘度を測定し、最後の点から数えて5点の複素粘度を平均した値を、インクの粘度とする。
2.インクジェット記録方法
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法は、少なくとも(1)本発明の方法で脱気された活性光線硬化型インクジェットインクを脱気されたインクが貯留されるインクタンクから吐出用記録ヘッドへ送液する工程、(2)脱気および送液されたインクを吐出用記録ヘッドから吐出して記録媒体上に着弾させる工程、および(3)着弾した活性光線硬化型インクジェットインクに活性光線を照射する工程を含む。また、本発明の他の実施形態に係るインクジェット記録方法は、上記(1)の送液する工程の前に、(0−2)上記本発明の一実施形態に係る方法で活性光線硬化型インクジェットインクを脱気する工程を含めることで、インクの脱気および画像の形成を連続して行ってもよい。また、本発明のさらに他の実施形態に係るインクジェット記録方法は、上記(0−2)の脱気する工程の前に、(0−1)活性光線硬化型インクジェットインクをせん断する工程を含んでもよい。
<(1)工程について>
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法は、(1)本発明の方法で脱気された活性光線硬化型インクジェットインクを脱気されたインクが貯留されるインクタンクから吐出用記録ヘッドへ送液する工程を含む。
脱気されたインクが貯留されるインクタンクには、本発明の方法によって脱気されたインクを貯留して、その後、インクを吐出用記録ヘッドに送液することができる。脱気されたインクが貯留されるインクタンクには、本発明の方法によって脱気されたインクを導入して貯留してもよいし、脱気前のインクを導入してインクタンク内で本発明の方法によって脱気して貯留してもよい。後者の場合、インクジェット記録方法は、後述する(0−2)工程を含む。貯留とは、一定期間、インクをインクタンク内に溜め置くことを意味するが、脱気と画像形成を連続して行う場合等には、インクタンクへのインクの導入とインクタンクから吐出用記録ヘッドへのインクの送液とが同時に行われてもよい。
脱気されたインクが貯留されるインクタンクから吐出用記録ヘッドへインクを送液するとき、インクを加熱してインクの流動性を高めてもよい。しかし、上記本発明の一実施形態に係る方法で脱気されたインクは、良好な流動性を有するため、加熱せずにインクを送液することができる。ただし、後述の(2)工程では、加熱された状態のインクが吐出用記録ヘッドから吐出されるため、送液中に、吐出用記録ヘッド、吐出用記録ヘッドの直前の流路内、または吐出用記録ヘッドの直前に設けた加熱用のインクタンク等でインクを加熱してもよい。これらのうち、加熱は吐出用記録ヘッドまたは吐出用記録ヘッドの直前に設けた加熱用のインクタンクで行われることが好ましい。吐出直前までインクを加熱しないようにすることで、インクが加熱された状態となっている時間を短縮し、加熱による光硬化性化合物の変性を少なくすることができるため、良好な画質の画像を形成することができる。
<(2)工程について>
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法は、(2)脱気および送液された活性光線硬化型インクジェットインクを吐出用記録ヘッドから吐出して記録媒体上に着弾させる工程を含む。このとき、記録媒体を搬送し、かつ吐出用記録ヘッドを記録媒体の搬送方向とは異なる方向に走査しながら、インクを記録媒体上に着弾させることで、記録媒体上に画像を形成することができる。
(2)工程では、前述のように脱気されたインクのインク液滴を吐出用記録ヘッドから吐出する。本発明の方法では、気泡が除去されたインクを用いるため、(2)工程において吐出安定性を高めることができる。
インクは、インク液滴の射出性を高める観点から、吐出されるときに、60〜100℃、好ましくは60〜80℃に加熱されることが好ましい。吐出直前のインクの温度が低すぎると、インクの粘度が高すぎたり、吐出用記録ヘッド内もしくはノズル表面でインクがゲル化したりして、インク液滴の射出性が低下しやすくなる。一方、吐出直前のインクの温度が高すぎると、インク成分が劣化しやすくなる。
インクの吐出温度への加熱は、インクの脱気をした後に行う。上記したように、吐出用記録ヘッド、吐出用記録ヘッドの直前の流路内、または吐出用記録ヘッドの直前に設けた加熱用のインクタンク等でインクを加熱することができる。
吐出用記録ヘッドの各ノズルから吐出される1滴あたりの液滴量は、画像の解像度にもよるが、0.5〜10plであることが好ましく、高精細の画像を形成するためには、0.5〜4plであることがより好ましく、0.5〜2.5plであることがさらに好ましい。
本発明のインクはゲル化剤を含有するため、高温下でインクを吐出すると、インク液滴(ドット)が記録媒体に着弾した後、自然冷却されてゲル化する。このとき、着弾したインク液滴は良好なピニング性を示すため液滴が広がりすぎず、かつ良好なレベリング性を示すため硬化後のインクに光沢のばらつきが生じにくい。また、上記液滴量でも着弾後のインクが合一しにくく、高精細な画像が安定して形成される。また、本発明のインクは、ゲル化によってインク粘度が急速に上昇するため、着弾した後のインク液滴中に酸素が入り込みにくくなり、光重合性化合物の硬化が酸素によって阻害され難くなる。
記録媒体に着弾したインク液滴は、冷却されてもよい。記録媒体に着弾したインク液滴を冷却すると、本発明のインクはより素早くゲル化するため、インク液滴の広がりがより抑制され、かつ酸素による硬化阻害もよりされにくくなる。
記録媒体は特に限定されず、紙であってもよく、樹脂フィルムであってもよい。紙の例には、印刷用コート紙、印刷用アート紙等が含まれる。また、樹脂フィルムの例には、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリプロピレンフィルム、塩化ビニルフィルム等が含まれる。
インク液滴が着弾するときの記録媒体の温度は、当該インクのゲル化温度よりも10〜20℃低い温度に設定されていることが好ましい。記録媒体の温度が低すぎると、インク液滴のゲル化およびピニングが過剰に迅速に行われるため、インク液滴のレベリングが十分に生じず、画像の光沢性が低下することがある。一方で、記録媒体の温度が高すぎると、インク液滴がゲル化しにくくなり、インク液滴の隣り合うドット同士が混じりあうことがある。記録媒体の温度を適切に調整することで、インク液滴の隣り合うドット同士が混じり合わない程度の適度なレベリングと適切なピニングとが実現される。
記録媒体の搬送速度は、100〜1500mm/sであることが好ましい。搬送速度が速いほど画像形成速度が速まるが、搬送速度が速すぎると、画像品質が低下したり、インクの光硬化(後述)が不十分になったりする。
<(3)工程について>
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法は、(3)着弾した活性光線硬化型インクジェットインクに活性光線を照射する工程を含む。
(3)工程では、記録媒体に着弾したインク液滴に活性光線を照射することで、インク液滴に含まれる光重合性化合物が架橋または重合し、インク液滴が硬化する。
記録媒体に付着したインク液滴に照射する活性光線は、メタルハライドランプまたはLED光源等からの紫外線であることが好ましい。これらのうち、LEDを光源とすることで、光源の輻射熱によってインク液滴が溶け、インク液滴の硬化膜表面に硬化不良が生じることが抑制される。LED光源の具体例には、Heraeus社製 395nm、水冷LED等が含まれる。
LED光源は、360〜410nmの紫外線を画像表面におけるピーク照度が0.5〜10W/cm2となるように設置され、1〜5W/cm2となるように設置することがより好ましい。画像に照射される光量は、500mJ/cm2未満となるようにすることが好ましく、より好ましくは350mJ/cm2未満である。輻射熱がインク液滴に照射されることを抑制するためである。
インク液滴への活性光線の照射は、隣り合うインク液滴同士が合一するのを抑制するために、インク液滴が記録媒体上に付着した後10秒以内、好ましくは0.001秒〜5秒以内、より好ましくは0.01秒〜2秒以内に行うことが好ましい。活性光線の照射は、ヘッドキャリッジに収容された全ての吐出用記録ヘッドからインク液滴を吐出した後に行われることが好ましい。
また、インク液滴の硬化は、記録媒体と前記活性光線の光源とが50m/min以上の速度で相対的に移動する状態で行ってもよい。本発明の方法では、前述のように、インクから気泡が十分に除去されており、インク中の溶存酸素量が低い。したがって、インク硬化時の酸素阻害が少なく、上記のように早いスピードで硬化することも可能である。そのため、画像形成を従来の方法よりも高速で行うことが可能となる。
<(0−2)工程について>
本発明の他の実施形態に係るインクジェット記録方法は、上記(1)の送液する工程の前に、(0−2)上記本発明の方法で活性光線硬化型インクジェットインクを脱気する工程を含んでもよい。
(0−2)工程をインクジェット記録方法に含めて、インクの脱気および画像形成を連続して行うことで、別々の装置を用意する必要がなく、装置の構成を簡略化することができる。また、このような構成とすることで、画像形成の直前に必要な量のインクのみの脱気を行うことができる。また、画像を形成する直前に脱気を行うことで、インクの保存中に溶解した空気も除去した上で画像形成を行うことができるため、インクを吐出用記録ヘッドからインクを吐出するときのキャビテーションの発生をより少なくすることが可能となる。
<(0−1)工程について>
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法は、上記(0−2)の脱気する工程の前に、(0−1)活性光線硬化型インクジェットインクをせん断する工程をさらに含んでもよい。
インクをせん断することで、ゲル化剤の凝集を解消してゲル化剤を分散させることができるため、インクの粘度が低下して流動性が高まり、インクの送液が容易になる。特に、インクが結晶性ゲル化剤を含むとき、せん断を行うことによって、強固なカードハウス構造を形成する前に結晶をより単一な形態にでき、インクの流動性をより高めることができる。このとき、インクを30℃以上50℃以下に加熱しながらインクをせん断することもできる。インクを30℃以上に加熱しながらせん断を行うと、結晶が均一になりやすく、またより短時間で結晶を均一にすることができる。一方でインクの加熱を50℃以下とすることで、加熱による光硬化性化合物の変性や揮発を抑えることができる。
(0−2)工程でインクをせん断する方法は特に限定されず、たとえば、せん断用のインクタンク中に設けた回転可能な撹拌羽を回転させ、インクを撹拌することによって、インクをせん断することができる。このときの撹拌速度は、100rpm〜600rpmであることが好ましく、150rpm〜400rpmであることがより好ましい。撹拌速度を100rpm以上とすることで、効率的にインクをせん断することができ、撹拌速度を600rpm以下とすることで、大きなトルクの発生、液はねまたは泡の巻き込み等の発生を抑制することができる。
送液を容易にする観点から、せん断後のインクの粘度は、30℃において50mPa・s以上300mPa・s以下であることが好ましい。
せん断用のインクタンクと脱気が行われるインクタンクを同一のものとして、せん断と超音波照射を同時に行ってもよい。たとえば、脱気が行われるインクタンクに上記撹拌羽を設けることができる。
3.活性光線硬化型インクジェットインク
活性光線硬化型インクジェットインクは、ゲル化剤、光重合性化合物および色材を含む。活性光線硬化型インクジェットインクは、必要に応じて、光重合開始剤またはその他の成分をさらに含んでもよい。
<ゲル化剤について>
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクは、ゲル化剤を含む。ゲル化剤は、通常、疎水性基を有することから、疎水性が高い顔料表面と相互作用しやすい。それにより、ゲル化剤を含むインクの液体成分が顔料表面に濡れやすくなり、顔料表面の気泡核が除去されやすくなる。そのようなゲル化剤を含むインクに超音波を照射することで、高度に気泡を除去することができ、高い吐出安定性が得られやすい。
また、ゲル化剤を含むインクでは、ゲル化剤の周囲に微少な気泡が局在することがある。このような気泡は、インク周囲の環境を減圧しただけでは除去することが難しいが、インクに超音波を照射することで、このようなゲル化剤の周囲の微少な気泡を除去することも可能となる。
ゲル化剤は、ゲル化温度以下の温度ではインク中で結晶化する結晶性ゲル化剤でもよいし、ゲル化温度以下の温度でもインク中で結晶化しない非結晶性ゲル化剤でもよい。
結晶性ゲル化剤の例には、
脂肪族ケトン化合物;
脂肪族エステル化合物;
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス;
キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、ホホバ固体ロウ、およびホホバエステル等の植物系ワックス;
ミツロウ、ラノリンおよび鯨ロウ等の動物系ワックス;
モンタンワックス、および水素化ワックス等の鉱物系ワックス;
硬化ヒマシ油および硬化ヒマシ油誘導体の水素化ワックス;
モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体またはポリエチレンワックス誘導体等の変性ワックス;
ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、およびエルカ酸等の高級脂肪酸;
ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;
12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシステアリン酸;
12-ヒドロキシステアリン酸誘導体;ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、12-ヒドロキシステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド(例えば日本化成社製 ニッカアマイドシリーズ、伊藤製油社製 ITOWAXシリーズ、花王社製 FATTYAMIDシリーズ等);
N-ステアリルステアリン酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド等のN-置換脂肪酸アミド;
N,N'-エチレンビスステアリルアミド、N,N'-エチレンビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、およびN,N'-キシリレンビスステアリルアミド等の特殊脂肪酸アミド;
ドデシルアミン、テトラデシルアミンまたはオクタデシルアミン等の高級アミン;
ステアリルステアリン酸、オレイルパルミチン酸、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル化合物(例えば日本エマルジョン社製 EMALLEXシリーズ、理研ビタミン社製 リケマールシリーズ、理研ビタミン社製 ポエムシリーズ等);
ショ糖ステアリン酸、ショ糖パルミチン酸等のショ糖脂肪酸のエステル(例えばリョートーシュガーエステルシリーズ 三菱化学フーズ社製);
ポリエチレンワックス、α−オレフィン無水マレイン酸共重合体ワックス等の合成ワックス(Baker−Petrolite社製 UNILINシリーズ等);
ダイマー酸;
ダイマージオール(CRODA社製 PRIPORシリーズ等);
ステアリン酸イヌリン等の脂肪酸イヌリン;
パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン等の脂肪酸デキストリン(千葉製粉社製 レオパールシリーズ等);
ベヘン酸エイコサン二酸グリセリル;
ベヘン酸エイコサンポリグリセリル(日清オイリオ社製 ノムコートシリーズ等);
N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジブチルアミド、N-(2-エチルヘキサノイル)-L-グルタミン酸ジブチルアミド等のアミド化合物(味の素ファインテクノより入手可能);
1,3:2,4-ビス-O-ベンジリデン-D-グルシトール(ゲルオールD 新日本理化より入手可能)等のジベンジリデンソルビトール類;
特開2005−126507号公報、特開2005−255821号公報および特開2010−111790号公報に記載の低分子オイルゲル化剤;
等が含まれる。
非結晶性ゲル化剤の例には、特開2005−126507号公報、特開2006−193745号公報に記載に化合物等の、繊維状会合体を形成しうる化合物が含まれる。繊維状会合体の形成は透過電子顕微鏡による形態観察で容易に確認できる。そのなかでも、分子内に極性基を挟んで少なくとも2つの長鎖アルキル基またはフェニル等の疎水部があり、分子間で2つ以上の疎水結合が出来る化合物が好ましい。または長鎖アルキル基またはフェニル等の疎水部を挟んで少なくとも2つ以上の水酸基、アミド基、カルボン酸基、エーテル基、アミノ基等の水素結合が出来る構造を有する化合物が好ましい。
非結晶非結晶性ゲル化剤の具体例には、以下の化合物が含まれる。
ゲル化剤として、結晶性のゲル化剤を用いると、着弾後のインク液滴のピニング性を高めやすくし、インク液滴の広がりによる画像の不鮮明化を抑制することができる。
また、ゲル化剤として、結晶性のゲル化剤を用いると、非結晶性のゲル化剤よりも、ゲル化剤の結晶の周囲に微少な気泡が生じやすく、ゲル化剤の結晶が後述のカードハウス構造をとると、さらにゲル化剤の結晶の周囲に微少な気泡が生じやすい。本発明の方法によれば、この微少な気泡を超音波照射で除去することができたため、インクの流動性をより向上させることができる。
結晶性のゲル化剤を用いるとき、ゲル化剤がインク中で結晶化するときに、ゲル化剤の結晶化物である板状結晶が三次元的に囲む空間を形成し、前記空間に光重合性化合物を内包することが好ましい。このように、板状結晶が三次元的に囲む空間に光重合性化合物が内包された構造を「カードハウス構造」ということがある。カードハウス構造が形成されると、液体の光重合性化合物がカードハウス構造の中に保持されることにより、インク液滴のピニング性が良好となるため、液滴同士の合一を抑制することができる。カードハウス構造を形成するには、インク中で溶解している光重合性化合物とゲル化剤とが相溶していることが好ましい。これに対して、インク中で溶解している光重合性化合物とゲル化剤とが相分離していると、カードハウス構造を形成しにくい場合がある。
インク液滴をインクジェット記録装置から安定に吐出するためにも、ゾル状のインク(高温時)において、光重合性化合物とゲル化剤との相溶性が良好であることが望まれる。さらに、高速印刷時においても安定に液滴同士の合一を抑制するには、インク液滴が記録媒体に着弾後、速やかにゲル化剤が結晶化し、強固なカードハウス構造を形成することが望まれる。
インクは、1種のゲル化剤のみを含有してもよいが、2種以上のゲル化剤を併用して含有してもよい。2種以上のゲル化剤を含有することで、特に結晶性のゲル化剤の場合、ゲルが崩壊した後も結晶がモノマー中に均一に混在することが可能であり、ゲル化剤と液体成分との分離を効果的に防止することができる。
ゲル化剤は、炭素原子数が12以上のアルキル基を有する化合物であることが好ましい。なお、アルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、および環状アルキル基のいずれかであればよいが、直鎖アルキル基、分岐アルキル基であることが好ましく、前述の「カードハウス構造」を形成しやすい観点から、直鎖アルキル基であることがより好ましい。
本発明に用いられるゲル化剤が、炭素原子数12以上のアルキル基等の疎水性基を有すると、疎水性が高い顔料表面とゲル化剤とが相互作用しやすい。それにより、ゲル化剤を含むインクの液体成分が顔料表面に濡れやすくなり、顔料表面の気泡核を除去しやすい。そのようなゲル化剤を含むインクに超音波を照射すると、高度に気泡を除去することができ、高い吐出安定性が得られやすい。また、記録媒体上に着弾後のインク液滴は高粘度であり、過度に濡れ広がらないため、インク液滴表面への酸素の溶け込みも少なくすることができ、インク硬化時の酸素阻害が少ないため、硬化性を一層高めうる。
炭素数が12以上の直鎖アルキル基を有するゲル化剤の例には、炭素数が12以上の直鎖アルキル基を有する、脂肪族ケトン化合物、脂肪族エステル化合物、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸アミド等が含まれる。
これらのなかでも、脂肪酸アミド等、アルキル鎖の末端に−OH、−COOH等の極性基を有するゲル化剤は、ゾル状のインク中での安定性が十分ではなく、析出したり、層分離したりする可能性があることから、脂肪族ケトン化合物もしくは脂肪族エステル化合物が好ましい。つまり、ゲル化剤は、下記一般式(G1)または(G2)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(G1):R1−CO−R2
一般式(G2):R3−COO−R4
一般式(G1)において、R1およびR2で表される炭化水素基は、それぞれ独立に、炭素原子数が12以上25以下の直鎖部分を含む脂肪族炭化水素基であることが好ましい。R1およびR2で表される脂肪族炭化水素基に含まれる直鎖部分の炭素原子数が12未満であると、十分な結晶性を有しないおそれがある。さらに、前述のカードハウス構造において、光重合性化合物を内包するための十分な空間を形成できないおそれがある。一方、脂肪族炭化水素基に含まれる直鎖部分の炭素原子数が25を超えると、融点が高くなりすぎる。そのため、インクの射出温度を高くしなければ、インク中に溶解しなくなるおそれがある。
上記一般式(G1)で表される脂肪族ケトン化合物の例には、ジリグノセリルケトン(C24−C24)、ジベヘニルケトン(C22−C22、融点88℃)、ジステアリルケトン(C18−C18、融点84℃)、ジエイコシルケトン(C20−C20)、ジパルミチルケトン(C16−C16、融点80℃)、ジミリスチルケトン(C14−C14)、ジラウリルケトン(C12−C12、融点68℃)、ラウリルミリスチルケトン(C12−C14)、ラウリルパルミチルケトン(C12−C16)、ミリスチルパルミチルケトン(C14−C16)、ミリスチルステアリルケトン(C14−C18)、ミリスチルベヘニルケトン(C14−C22)、パルミチルステアリルケトン(C16−C18)、バルミチルベヘニルケトン(C16−C22)、ステアリルベヘニルケトン(C18−C22)等が含まれる。
一般式(G1)で表される化合物の市販品の例には、18−Pentatriacontanon(Alfa Aeser社製)、Hentriacontan−16−on(Alfa Aeser社製)、カオーワックスT1(花王株式会社製)等が含まれる。
インクに含まれる脂肪族ケトン化合物は、一種類のみであってもよく、二種類以上の混合物であってもよい。
一般式(G2)おいて、R3およびR4で表される炭化水素基は、特に制限されないが、炭素原子数12以上26以下の直鎖部分を含む脂肪族炭化水素基であることが好ましい。R3およびR4で表される脂肪族炭化水素基に含まれる直鎖部分の炭素原子数が12以上26以下であると、一般式(G1)で表される化合物と同様に、良好な結晶性を有しつつ、前述のカードハウス構造を形成でき、融点も高くなりすぎない。
式(G2)で表される脂肪族エステル化合物の例には、ベヘニン酸ベヘニル(C21−C22、融点70℃)、イコサン酸イコシル(C19−C20)、ステアリン酸ステアリル(C17−C18、融点60℃)、ステアリン酸パルミチル(C17−C16)、ステアリン酸ラウリル(C17−C12)、パルミチン酸セチル(C15−C16、融点54℃)、パルミチン酸ステアリル(C15−C18)、ミリスチン酸ミリスチル(C13−C14、融点43℃)、ミリスチン酸セチル(C13−C16、融点50℃)、ミリスチン酸オクチルドデシル(C13−C20)、オレイン酸ステアリル(C17−C18)、エルカ酸ステアリル(C21−C18)、リノール酸ステアリル(C17−C18)、オレイン酸ベヘニル(C18−C22)、セロチン酸ミリシル(C25−C16)、モンタン酸ステアリル(C27−C18)、モンタン酸ベヘニル(C27−C22)、リノール酸アラキジル(C17−C20)、トリアコンタン酸パルミチル(C29−C16)等が含まれる。
式(G2)で表される脂肪族エステル化合物の市販品の例には、ユニスターM−2222SL(日油株式会社製)、エキセパールSS(花王株式会社製、融点60℃)、EMALEX CC−18(日本エマルジョン株式会社製)、アムレプスPC(高級アルコール工業株式会社製)、エキセパール MY−M(花王株式会社製)、スパームアセチ(日油株式会社製)、EMALEX CC−10(日本エマルジョン株式会社製)等が含まれる。これらの市販品は、二種類以上の混合物であることが多いため、必要に応じて分離・精製してもよい。
インクに含まれる脂肪族エステル化合物は、一種類のみであってもよく、二種類以上の混合物であってもよい。
インクにおけるゲル化剤の含有量は、インク全体の質量に対して1.0質量%以上5.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以上3.5質量%以下であることがより好ましい。ゲル化剤の含有量が1.0質量%以上であると、インクの液体成分が顔料表面に十分に濡れるため、気泡を効率よく除去できるほか、インク液滴を十分にゲル化(またはゾルゲル相転移)させることができる。一方、ゲル化剤の含有量が5質量%以下であると、インクパックに充填する時等に、ゲル化剤と液体成分との分離が生じることをより効果的に防止することができる。
<光重合性化合物について>
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクは、光重合性化合物を含む。光重合性化合物は、活性光線の照射により架橋または重合する化合物である。活性光線は、例えば電子線、紫外線、α線、γ線、およびエックス線等であり、好ましくは紫外線である。光重合性化合物には、ラジカル重合性化合物またはカチオン重合性化合物のいずれを用いてもよく、両者を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマーあるいはこれらの混合物)である。ラジカル重合性化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例には、不飽和カルボン酸とその塩、不飽和カルボン酸エステル化合物、不飽和カルボン酸ウレタン化合物、不飽和カルボン酸アミド化合物およびその無水物、アクリロニトリル、スチレン、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等が挙げられる。不飽和カルボン酸の例には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等が含まれる。
なかでも、ラジカル重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。(メタ)アクリレート化合物は、後述するモノマーだけでなく、オリゴマー、モノマーとオリゴマーの混合物、変性物、重合性官能基を有するオリゴマー等であってよい。ここで、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方またはいずれかをいい、「(メタ)アクリル」は「アクリル」、「メタクリル」の双方またはいずれかをいう。
(メタ)アクリレート化合物の例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の単官能モノマー;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の二官能モノマー;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等の三官能以上の多官能モノマー等が含まれる。
(メタ)アクリレート化合物は、変性物であってもよく、その例には、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物;カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性(メタ)アクリレート化合物;およびカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のカプロラクタム変性(メタ)アクリレート化合物等が含まれる。なかでも、感光性が高く、後述するワックスを含有するときに、後述のカードハウス構造を形成しやすい等の観点から、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物が好ましい。また、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物は、高温下で他のインク成分に対して溶解しやすく、硬化収縮も少ないことから、印刷物のカールも起こりにくい。
エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物の例には、Sartomer社製の4EO変性ヘキサンジオールジアクリレート CD561(分子量358)、3EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート SR454(分子量429)、6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート SR499(分子量560)、4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート SR494(分子量528);新中村化学社製のポリエチレングリコールジアクリレート NKエステルA−400(分子量508)、ポリエチレングリコールジアクリレート NKエステルA−600(分子量742)、ポリエチレングリコールジメタクリレート NKエステル9G(分子量536)、ポリエチレングリコールジメタクリレート NKエステル14G(分子量770);大阪有機化学社製のテトラエチレングリコールジアクリレート V#335HP(分子量302);Cognis社製の3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート Photomer 4072(分子量471、ClogP4.90);新中村化学社製の1,10−デカンジオールジメタクリレート NKエステルDOD−N(分子量310、ClogP5.75)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート NKエステルA−DCP(分子量304、ClogP4.69)およびトリシクロデカンジメタノールジメタクリレート NKエステルDCP(分子量332、ClogP5.12);Miwon社製のトリメチロールプロパンPO変性トリアクリレートMiramer M360(分子量471、ClogP4.90)等が含まれる。
(メタ)アクリレート化合物は、重合性オリゴマーであってもよく、そのような重合性オリゴマーの例には、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、および直鎖(メタ)アクリルオリゴマー等が含まれる。
カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、およびオキセタン化合物等を用いることができる。カチオン重合性化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ化合物は、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、または脂肪族エポキシド等であり、硬化性を高めるためには、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが好ましい。
芳香族エポキシドの例には、多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体と、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるジまたはポリグリシジルエーテル等が含まれる。反応させる多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体の例には、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体等が含まれる。アルキレンオキサイド付加体におけるアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が含まれる。
脂環式エポキシドの例には、シクロアルカン含有化合物を、過酸化水素や過酸等の酸化剤でエポキシ化して得られるシクロアルカンオキサイド含有化合物等が含まれる。シクロアルカンオキサイド含有化合物におけるシクロアルカンの例には、シクロヘキセンまたはシクロペンテン等が含まれる。
脂肪族エポキシドの例には、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体と、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるジまたはポリグリシジルエーテル等が含まれる。脂肪族多価アルコールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコール等が含まれる。アルキレンオキサイド付加体におけるアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が含まれる。
ビニルエーテル化合物の例には、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物;
エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジまたはトリビニルエーテル化合物等が含まれる。これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性や密着性等を考慮すると、ジまたはトリビニルエーテル化合物が好ましい。
オキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物であり、その例には、特開2001−220526号公報、特開2001−310937号公報、特開2005−255821号公報に記載のオキセタン化合物等が含まれる。なかでも、特開2005−255821号公報の段落番号0089に記載の一般式(1)で表される化合物、同号公報の段落番号0092に記載の一般式(2)で表される化合物、段落番号0107の一般式(7)で表される化合物、段落番号0109の一般式(8)で表される化合物、段落番号0116の一般式(9)で表される化合物等が挙げられる。特開2005−255821号公報に記載された一般式(1)、(2)、(7)〜(9)を以下に示す。
インクにおける光重合性化合物の含有量は、インク全質量に対して1〜97質量%であることが好ましく、30〜95質量%であることがより好ましい。
<色材について>
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクは、色材を含む。色材は、染料または顔料のいずれでもよいが、疎水性が高い色材を用いると、ゲル化剤を含むインクの液体成分が顔料表面に濡れやすくなり、顔料表面の気泡核が除去されやすくなる。そのようなゲル化剤を含むインクに超音波を照射することで、高度に気泡を除去することができ、高い吐出安定性が得られやすい。疎水性が高い色材の例には、顔料が含まれる。顔料は、特に限定されないが、例えばカラーインデックスに記載される下記番号の有機顔料または無機顔料でありうる。
赤またはマゼンタ顔料の例には、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36等が含まれる。青またはシアン顔料の例には、Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17−1、22、27、28、29、36、60等が含まれる。緑顔料の例には、Pigment Green 7、26、36、50が含まれる。黄顔料の例には、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193等が含まれる。黒顔料の例には、Pigment Black 7、28、26等が含まれる。
顔料の平均堆積粒子径は0.08〜0.5μmであることが好ましく、顔料の最大粒径は0.3〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜3μmである。顔料の粒径を調整することによって、吐出用記録ヘッドのノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。
顔料の含有量は、インク全量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.4〜10質量%であることがより好ましい。顔料の含有量が少なすぎると、得られる画像の発色が低くなりやすい。一方、顔料の含有量が多すぎると、インクの粘度が高くなり、射出性が低下しやすい。
顔料の分散は、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、およびペイントシェーカー等により行うことができる。顔料の分散は、顔料粒子の平均粒子径が、上記範囲となるように行われることが好ましい。顔料の分散は、顔料、顔料分散剤、および分散媒体の選定、分散条件、ならびにろ過条件等によって調整される。
<顔料分散剤について>
色材として顔料を用いるとき、活性光線硬化型インクジェットインクは、顔料の分散性を高めるために、顔料分散剤をさらに含んでもよい。顔料分散剤の例には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびステアリルアミンアセテート等が含まれる。顔料分散剤の市販品の例には、Avecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズ(例えばアジスパーPB824等)が含まれる。
インクにおける分散剤の含有量は、顔料に対して1〜50質量%であることが好ましい。
<光重合開始剤について>
光重合性化合物がラジカル重合性化合物である場合、活性光線硬化型インクジェットインクは、光重合開始剤としてラジカル重合開始剤を含んでもよい。光重合性化合物がカチオン重合性化合物である場合、活性光線硬化型インクジェットインクは、光重合開始剤として光酸発生剤を含んでもよい。
ラジカル重合開始剤には、分子内結合開裂型と分子内水素引き抜き型とがある。分子内結合開裂型の光重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類;2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系;ベンジルおよびメチルフェニルグリオキシエステル等が含まれる。
分子内水素引き抜き型の光重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4'-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3',4,4'-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系;ミヒラーケトン、4,4'-ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系;10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が含まれる。
光重合開始剤が、アシルホスフィンオキシドやアシルホスフォナートであると、感度が良好となる。具体的には、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド等が好ましい。
インクにおける光重合開始剤の含有量は、インク硬化時に照射する光や光重合性化合物の種類等にもよるが、0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜8質量%である。
光酸発生剤の例には、公知のスルホニウム塩、アンモニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が含まれる。具体的には、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩、ヨードニウム(4−メチルフェニル)(4−(2−メチルプロピル)フェニル)ヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−メチル−2−ブテニルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が含まれる。市販の光酸発生剤として、バイエル:UVI−6990、ダイセル・サイテック:Uvacure1591、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ:CGI−552、Ir250、旭電化工業:SP−150、152、170、172、CP−77、サンアプロ:CPI−100P、CPI−101A、CPI−200K、CPI−210S等が含まれる。
活性光線硬化型インクジェットインクは、必要に応じて光重合開始剤助剤や重合禁止剤等をさらに含んでいてもよい。光重合開始剤助剤は、第3級アミン化合物であってよく、芳香族第3級アミン化合物が好ましい。芳香族第3級アミン化合物の例には、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステル、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、トリエチルアミンおよびN,N-ジメチルヘキシルアミン等が含まれる。なかでも、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステルが好ましい。これらの化合物は、一種のみが含まれてもよく、二種類以上が含まれてもよい。
重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等が含まれる。
<その他の成分について>
活性光線硬化型インクジェットインクは、必要に応じて他の成分をさらに含んでもよい。他の成分は、各種添加剤や他の樹脂等であってよい。添加剤の例には、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗菌剤、インクの保存安定性を高めるための塩基性化合物等も含まれる。塩基性化合物の例には、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミン等の塩基性有機化合物等が含まれる。他の樹脂の例には、硬化膜の物性を調整するための樹脂等が含まれ、例えばポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂およびゴム系樹脂等が含まれる。
<活性光線硬化型インクジェットインクの物性について>
活性光線硬化型インクジェットインクは、インク液滴の吐出性を高めるために、高温下におけるインクの粘度は一定以下であることが好ましい。具体的には、80℃におけるインクの粘度は3〜20mPa・sであることが好ましい。一方、隣り合うドットの合一を抑制するために、着弾後の常温下におけるインクの粘度は一定以上であることが好ましい。具体的には、25℃におけるインクの粘度は1000mPa・s以上であることが好ましい。
ワックスを含むインクは、温度により可逆的にゾルゲル相転移しうる。ゾルゲル相転移する活性光線硬化型インクは、高温(例えば80℃程度)では液体(ゾル)であるため、吐出用記録ヘッドからゾル状態で吐出することができる。高温下でインクを吐出すると、インク液滴(ドット)が記録媒体に着弾した後、自然冷却されてゲル化する。これにより、隣り合うドット同士の合一を抑制し、画質を高めることができる。
4.脱気された活性光線硬化型インクジェットインク
本発明の一実施態様に係るインクは、上記したインクの脱気方法により脱気された活性光線硬化型インクジェットインクである。
上記した脱気方法により脱気されたインクは、インクジェット方法での画像形成に用いても、吐出用記録ヘッド内でキャビテーションが発生しにくい。そのため、気泡が流路を塞いだり、気泡が吐出圧力を吸収したりすることによる、インクが吐出不能になったノズルの発生(ノズルの欠落)、またはインクが吐出されなかったため地の色が残ってしまった部分の画像内への発生(白スジの発生)が起こりにくい。
また、上記した脱気方法により脱気されたインクでは、インク中の酸素濃度も減少しているため、インク硬化時の酸素阻害が少なく、硬化性がより高くなる。
上記したインクの脱気方法により脱気されたインク中に溶存している酸素の濃度は、好ましくは2ppm以下であり、より好ましくは0ppm以上2ppm以下、特に好ましくは0ppm以上1ppm以下である。インク中の溶存酸素濃度を2ppm以下とすることで、吐出用記録ヘッド内でキャビテーションを発生しにくくし、かつインク硬化時の酸素阻害も少なくすることができる。
インク中の溶存酸素濃度は、オストワルド法(実験化学講座1基本操作[I]、241頁、1975年、丸善)や、マススペクトル法で測定することができるほか、ガルバニ電池型やポーラログラフ型等の簡便な酸素濃度計や比色分析法で測定することができる。
市販の溶存酸素濃度計としては東亜電波工業(株)製DO−30A型を挙げることができる。本明細書に記載の溶存酸素濃度は、東亜電波工業(株)製DO−30A型を用いて測定した値である。
また、上記した脱気方法により脱気されたインクは、流動性が良好であるため、加熱しなくてもその後の工程への送液が可能である。そのため、流路や吐出用記録ヘッドの詰まりが生じにくく、ノズル欠や白スジが発生しにくい。また、送液中の加熱によりインクが含有する光重合性化合物等が変性しにくいため、良好な画質の画像を形成することができる。
5.脱気装置
本発明に係る脱気方法に用いることのできる脱気装置は、特に限定されないが、たとえば、脱気が行われるインクタンクおよび超音波振動子を有する構成とすることができる。脱気が行われるインクタンク1個に対し、1つの超音波振動子を設けてもよいし、適当な間隔をあけるかまたは当接させた2つ以上の超音波振動子を設けてもよい。超音波振動子は、超音波発振器から有線または無線で受信した高周波電力を機械振動に変換し、超音波を発生することができる。
超音波振動子は、脱気が行われるインクタンクの内部に設けられてもよいし、脱気が行われるインクタンクの外部に設けられてもよい。発生する超音波が、脱気が行われるインクタンク内に入れたインク全体に減衰せずに伝わるように、超音波振動子を設けることが好ましい。たとえば、脱気が行われるインクタンク内のすべてのインクから超音波振動子から30mm以内に位置するように、超音波振動子を設置する場所を決めるとよい。
本発明に係る脱気方法には、市販の脱気装置を用いてもよい。本発明の方法に用いることのできる市販の脱気装置の例には、超音波ホモジナイザー 循環式R US−600T((株)日本精機製作所製)およびSONIFIER4020−400(BRANSON製)等が含まれる。
6.インクジェット記録装置
本発明のインクジェット記録方法は、活性光線硬化型インクジェット方式のインクジェット記録装置を用いて行うことができる。
本発明のインクジェット記録装置は、活性光線硬化型インクジェットインクを吐出する吐出用記録ヘッドと、脱気されたインクが貯留されるインクタンクと、吐出用記録ヘッドから吐出されたインク液滴に活性光線を照射する照射部とを含む。本発明のインクジェット記録装置は、上記脱気装置を、インクタンクから供給されるインクを脱気する脱気モジュールとして備えていてもよい。
活性光線硬化型インクジェット方式のインクジェット記録装置には、ライン記録方式(シングルパス記録方式)のものと、シリアル記録方式のものとがある。求められる画像の解像度や記録速度に応じて選択されればよいが、高速記録の観点では、ライン記録方式(シングルパス記録方式)が好ましい。
図1Aおよび図1Bは、ライン記録方式のインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す図である。このうち、図1Aは側面図であり、図1Bは平面図である。図1Aに示されるように、インクジェット記録装置10は、複数の吐出用記録ヘッド11を収容するヘッドキャリッジ13と、脱気されたインクを貯留するインクタンク17aと、インクタンク17aおよびヘッドキャリッジ13の間を連通するインク流路15と、記録媒体20の全幅を覆い、かつヘッドキャリッジ13の(記録媒体の搬送方向)下流側に配置された活性光線照射部21と、記録媒体20をはさんでヘッドキャリッジ13とは反対側に配置された温度制御部23とを有しうる。
図2Aおよび図2Bは、ライン記録方式のインクジェット記録装置の要部の構成の別の一例を示す図である。このうち、図2Aは側面図であり、図2Bは上面図である。図2Aに示されるように、インクジェット記録装置10は、複数の吐出用記録ヘッド11を収容するヘッドキャリッジ13と、インクタンク17bと、脱気されたインクを貯留するインクタンク17cと、インクタンク17bとインクタンク17cとの間を連通し、インクタンク17bから供給されるインクを脱気する脱気モジュール19と、インクタンク17b、脱気モジュール19、インクタンク17cおよびヘッドキャリッジ13の間を連通するインク流路15と、記録媒体20の全幅を覆い、かつヘッドキャリッジ13の(記録媒体の搬送方向)下流側に配置された活性光線照射部21と、記録媒体20をはさんでヘッドキャリッジ13とは反対側に配置された温度制御部23とを有しうる。インクジェット記録装置は、脱気モジュール19とヘッドキャリッジ13との間を連通し、脱気モジュール19で脱気されたインクを保存する不図示のインクタンクをさらに有していてもよい。
図3Aおよび図3Bは、ライン記録方式のインクジェット記録装置の要部の構成のさらに別の一例を示す図である。図3Aのインクジェット記録装置は、図2Aのインクジェット記録装置と同様の構成を有するが、インクタンク17bの代わりに、せん断機構を備えたせん断モジュールとしても機能するインクタンク17dを有する。
<ヘッドキャリッジ>
ヘッドキャリッジ13は、記録媒体20の全幅を覆うように固定配置されており、複数の吐出用記録ヘッド11を収容する。各ヘッドキャリッジ13は、互いに異なる色の吐出用記録ヘッド11を収容している。
記録ヘッド11にはインクが供給されるようになっている。たとえば、インクジェット記録装置10に着脱自在に装着された不図示のインクカートリッジ等から、直接または不図示のインク供給手段によりインクが供給されるようになっていてもよい。
記録媒体20の搬送方向に配置される吐出用記録ヘッド11の数は、吐出用記録ヘッド11のノズル密度および印刷画像の解像度によって設定される。例えば、液滴量2pl、ノズル密度360dpiの記録ヘッド11を用いて1440dpiの解像度の画像を形成する場合には、記録媒体20の搬送方向に対して4つの吐出用記録ヘッド11をずらして配置すればよい。また、液滴量6pl、ノズル密度360dpiの吐出用記録ヘッド11を用いて720×720dpiの解像度の画像を形成する場合には、2つの吐出用記録ヘッド11をずらして配置すればよい。dpiとは、2.54cm当たりのインク液滴(ドット)の数を表す。
<インクタンクおよびインク流路>
インクタンク17aおよびインクタンク17cには、本発明の方法で脱気されたインクを貯留することができる。インクタンク17bおよびインクタンク17dには、脱気前のインクまたは本発明の方法または別の方法で脱気されたインクを貯留することができる。インクタンク17bおよびインクタンク17dに貯留されたインクは、その後、脱気モジュール19で、本発明の方法により脱気される。なお、各インクタンクには脱気前または脱気後のインクを貯留してもよいし、貯留せずに、インクタンクへのインクの導入とインクタンクからのインクの送液とが同時に行われてもよい。
インク流路15は、インクタンク17a中のインクをヘッドキャリッジ13に、インクタンク17bおよびインクタンク17d中のインクをインクタンク17cに、ならびにインクタンク17c中のインクをヘッドキャリッジ13に、それぞれ供給する経路である。インク液滴を安定して吐出するため、インクタンク17a〜17d、インク流路15、ヘッドキャリッジ13および吐出用記録ヘッド11のインクを所定の温度に加熱できるようになっていてもよい。
図1Aおよび図1Bに例示するインクジェット装置では、別途設けられた脱気装置によって本発明の方法により脱気されたインクが、インクタンク17aに導入される。インクタンク17aに導入されたインクは、画像形成を行う際に、インク流路15を通じてヘッドキャリッジ13に送液される。
図2Aおよび図2Bに例示するインクジェット装置では、インクタンク17b中のインクは、インク流路15を通じて脱気モジュール19に送液され、脱気モジュール19において本発明の方法により脱気される。脱気されたインクは、インク流路15を通じてインクタンク17cに送液され、その後、インクタンク17cからヘッドキャリッジ13に送液される。
図3Aおよび図3Bに例示するインクジェット装置では、インクタンク17d中のインクは、インク流路15を通じて脱気モジュール19に送液され、脱気モジュール19において本発明の方法により脱気される。脱気されたインクは、インク流路15を通じてインクタンク17cに送液され、その後、インクタンク17cからヘッドキャリッジ13に送液される。
インクタンク17dはせん断モジュールとしても機能する。たとえば、インクタンク内に、回転軸および回転軸の一端に設けられた回転羽を設けて、回転羽を回転させることによって、インクをせん断することができる。なお、図3Aおよび図3Bに例示するインクジェット装置は、せん断したインクを貯留する不図示のインクタンクをさらに有してもよい。
<活性光線照射部>
活性光線照射部21は、記録媒体20の全幅を覆い、かつ記録媒体の搬送方向についてヘッドキャリッジ13の下流側に配置されている。活性光線照射部21は、吐出用記録ヘッド11により吐出されて、記録媒体に着弾した液滴に光を照射し、液滴を硬化させる。
<温度制御部>
温度制御部23は、記録媒体20をはさんでヘッドキャリッジ13とは反対側に配置されており、記録媒体20を所定の温度に維持する。温度制御部23は、例えば各種ヒータ等でありうる。
<画像形成方法>
以下、ライン記録方式のインクジェット記録装置10を用いた画像形成方法を説明する。記録媒体20を、インクジェット記録装置10のヘッドキャリッジ13と温度制御部23との間に搬送する。一方で、記録媒体20の温度を、温度制御部23により所定の温度に調整する。
一方、本発明の方法により脱気されたインクが、インク流路15を介してインクタンク17aまたは17cからヘッドキャリッジ13内の吐出用記録ヘッド11に供給される。
次いで、ヘッドキャリッジ13の吐出用記録ヘッド11から高温のインク液滴を吐出して、記録媒体20上に付着(着弾)させる。そして、活性光線照射部21により、記録媒体20上に付着したインク液滴に活性光線を照射して硬化させる。
硬化後の総インク液滴膜厚は、2〜25μmであることが好ましい。「総インク液滴膜厚」とは、記録媒体に描画されたインク液滴膜厚の最大値である。
<その他の画像形成装置>
図4は、シリアル記録方式のインクジェット記録装置60の要部の構成の一例を示す図である。図4に示されるように、インクジェット記録装置60は、記録媒体の全幅を覆うように固定配置されたヘッドキャリッジ13の代わりに、記録媒体の全幅よりも狭い幅に設けられ、複数の吐出用記録ヘッド61を収容するヘッドキャリッジ63と、ヘッドキャリッジ63を記録媒体20の幅方向に可動させるためのガイド部65とを有する以外は図1Aおよび図1B、図2Aおよび図2Bならびに図3Aおよび図3Bに示される装置とほぼ同様に構成されうる。図1Aおよび図1B、図2Aおよび図2Bならびに図3Aおよび図3Bに示される装置と同一または類似の機能を有する部材には、同一の符号を付した。
シリアル記録方式のインクジェット記録装置60では、ヘッドキャリッジ63がガイド部65に沿って記録媒体20の幅方向に移動しながら、ヘッドキャリッジ63に収容された吐出用記録ヘッド61からインク液滴を吐出する。ヘッドキャリッジ63が記録媒体20の幅方向に移動しきった後(パス毎に)、記録媒体20を搬送方向に送り、活性光線照射部21で活性光線を照射する。これらの操作以外は、前述のライン記録方式のインクジェット記録装置10とほぼ同様にして画像を記録する。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
実施例1
<顔料分散液1の調製>
以下の各添加剤を順次混合、分散して、マゼンタ顔料を21質量%含有するマゼンタ顔料分散液1を調製した。
以下の各化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間かけて加熱、攪拌して溶解した。
顔料分散剤:アジスパーPB824(味の素ファインテクノ社製) 9部
重合性化合物:APG−200(トリプロピレングリコールジアクリレート、新中村化学社製) 70部
重合禁止剤:Irgastab UV10(チバジャパン社製) 0.02部
次いで、上記溶液を室温まで冷却した後、この溶液に下記マゼンタ顔料を21部加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて8時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去して、顔料分散液1を作製した。
マゼンタ顔料:Pigment Red 122(大日精化製、クロモファインレッド6112JC)
<インクの調製>
(インク1の調製)
下記の各添加剤を順次混合し、80℃に加熱して攪拌した後、得られた溶液を、加熱下で#3000の金属メッシュフィルターでろ過し、冷却して、インク1を調製した。
重合性化合物:A−400(ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、新中村工業社製) 31.8部
重合性化合物:Photomer4172(5EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、Cognis社製) 10.0部
重合性化合物:SR454(3EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、SARTOMER社製) 25.0部
重合禁止剤:Irgastab UV10(チバスペシャリティケミカル社製) 0.1部
重合開始剤:TPO(フォスフィンオキサイド、DAROCURE TPO、チバスペシャリティケミカル社製) 3.0部
重合開始剤:Irgacure369(α-アミノアルキルフェノン、チバスペシャリティケミカル社製) 3.0部
開始剤助剤:ITX(イソプロピルチオキサントン、Speedcure ITX、Lambson社製) 2.0部
開始剤助剤:EDB(アミン助剤、Speedcure EDB、Lambson社製) 3.0部
界面活性剤:KF-352(ポリエーテル変性シリコンオイル、信越化学工業社製) 0.05部
顔料分散液1 19.0部
ゲル化剤:ステアリン酸ステアリル 3.0部
(インク2〜4の調製)
上記インク1の調製において、ゲル化剤の種類と添加量を、表2に記載の様に変更した以外は同様にして、インク2〜4を調製した。なお、ゲル化剤の添加量が3.0部から増減する場合には、重合性化合物であるSR344の添加量を、総量が100部となるように適宜調整した。
(インク5の調製)
インク5として、特開2010−115791の段落[0105]〜[0107]に記載のマゼンタインクを調製した。
表1に一部略称で記載した各化合物の詳細は、以下の通りである。
[重合性化合物]
A−400:A‐400、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、新中村化学社製
P4172:Photomer4172、5EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、Cognis社製
SR454:サートマー SR454、3EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、SARTOMER社製
[重合禁止剤]
UV10:Irgastab UV10、チバジャパン社製
[重合開始剤]
TPO:フォスフィンオキサイド、DAROCURE TPO、チバジャパン社製
I369:Irgacure369、α−アミノアルキルフェノン、チバジャパン社製
[開始剤助剤]
ITX:イソプロピルチオキサントン、Speedcure ITX、Lambson社製
EDB:アミン助剤、Speedcure EDB、Lambson社製
[界面活性剤]
KF−352:ポリエーテル変性シリコンオイル、信越化学工業社製
[ゲル化剤]
ステアリン酸ステアリル(エキセパールSS、花王社製)
パルミチン酸セチル(アムレプスPC、高級アルコール工業社製)
ステアロン(ペンタトリアコンタン−18−オン、カオーワックスT1、花王社製)
(ゲル化温度の測定)
それぞれのインクのゲル化温度は、レオメータにより、インクの動的粘弾性の温度変化を測定することにより求めた。具体的には、それぞれのインクを100℃に加熱し、せん断速度11.7(/s)、降温速度0.1℃/sの条件で20℃まで冷却したときの、粘度の温度変化曲線を得て、粘度の温度変化曲線において、粘度が200mPa・sとなる温度をゲル化温度とした。
レオメータは、Anton Paar社製 ストレス制御型レオメータ PhysicaMCRシリーズを用いた。コーンプレートの直径は75mm、コーン角は1.0°とした。
<画像形成方法>
(実施例1)
図3に示されるライン記録方式のインクジェット記録装置を用いて、単色画像を形成した。インクジェット記録装置のインク供給系は、インクタンク17d、インク流路15、脱気モジュール19、吐出用記録ヘッド直前のサブインクタンク17c、フィルター付きインク流路15、および吐出用記録ヘッド11(ピエゾヘッド)がこの順に連通して構成されていた。得られたインクを、インクジェット記録装置のインク供給系に供給した。インクタンク17dから吐出用記録ヘッド11までのインク供給系全体を90℃まで加熱する場合を加熱パターンI、インクタンク17cから吐出用記録ヘッド11までを90℃まで加熱する場合を加熱パターンIIとした。加熱パターンIIの場合、脱気モジュールでのインクの温度は常温であり、インクのゲル化温度よりも低かった。
<せん断>
それぞれのインク200ccを、アズワン社製 簡易型撹拌機K−1RN で、回転速度300rpmで10分間撹拌した。
<脱気処理>
[超音波脱気1]
(株)日本精機製作所製 超音波ホモジナイザー 循環式R US−600T(発振周波数20kHz出力600W)にて照射エネルギー7.2×104J、(600Wで2分/1Lインク) 流量500ml/minで1パス処理した。
[超音波脱気2]
BRANSON製 SONIFIER4020−400(発振周波数40kHz、出力400W)にて照射エネルギー4.8×104J、(400Wで2分/1Lインク)流量500ml/minで1パス処理した。
なお、照射する超音波の発振周波数は、実施条件に応じて変更した。
[中空糸脱気]
インクを中空糸膜モジュール( DIC SEPAREL EF−G4) にて10kPa以下にて流量脱気処理を行った。空糸脱気モジュールへのインクの供給速度は50cc/minとした。
[減圧脱気]
特開2011−194844号公報の段落0041〜0045に記載の減圧インクタンクを用意し、インクを導入して脱気を行った。インクタンク内の圧力は5kPa(大気圧に対して−95kPa)とし、減圧インクタンクへのインクの供給速度は200cc/minとした。
用いた吐出用記録ヘッドは、1776個のノズルを有するコニカミノルタ社製インクジェットヘッドであり、解像度が600dpiであった。1滴の液滴量が3.5pl、液滴速度7m/secとなるように印加電圧を調整し、吐出用記録ヘッド2個を吐出用記録ヘッドの走査方向と平行にならなりように配置して1200dpi×1200dpiの解像度の画像を記録した。dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。画像の形成は、23℃、55%RHの環境下で行った。
<評価>
(インクの吐出安定性)
前述の吐出用記録ヘッドを用いて、液滴量3.5pl、液滴速度7m/sec、射出周波数40kHz、印字率100%となる条件で連続吐出(駆動)させた。そして、駆動開始から1分後、5分後、10分後に射出していないノズル数をカウントした。
◎:欠ノズルの数が2個未満である。
○:欠ノズルの数が2個以上10個未満である。
△:欠ノズルの数が10個以上50個未満である。
×:欠ノズルの数が50個以上である。
(画質)
それぞれの実施条件において、上記の条件で印刷した画像について、光沢のばらつきおよび粒状性の硬化膜が発生したかを目視で確認した。
◎:光沢が均一であり、粒状性が低かった。
○:光沢がやや不均一であったが、粒状性は低かった。
△:光沢が不均一であったが、粒状性は低かった。
×:光沢が不均一であり、粒状性も高かった。
(欠発生)
印刷用コート紙(OKトップコート 米坪量104.7g/m2 王子製紙社製)上に、インクセットA〜Fを用いて、シアンインクを6g/m2の付き量で、イエローインクを6g/m2付き量で、合計12g/m2の付き量でグリーンのベタ画像を形成した。
画像形成後、インクジェット記録装置の下流部に配置したLEDランプ(Heraeus社製、8W/cm2、395nm、water cooled unit)により、印刷用コート紙に紫外線を照射した。そして、印刷用コート紙に着弾したインクを硬化させた。LEDランプから印刷用コート紙の表面までを10mm離して、紫外線の照射を行った。
それぞれの実施条件において、連続して80時間、160時間および480時間の画像形成を行い、得られた画像に白スジが生じているかを目視で確認した。
◎:連続使用480時間でも白スジの発生はなかった。
○:連続使用160時間以上480時間以内に白スジが発生した。
△:連続使用80時間以上160時間以内に白スジが発生した。
×:連続使用80時間以内に白スジが発生した。
(流動性)
それぞれの実施条件において脱気したインクを、モーター(KNF社製 液体ポンプ NF25)で脱気モジュール19からサブインクタンク17cまで送液した。
◎:送液可能であり、流量も非常に安定していた。
○:送液可能であり、流量も安定していた。
△:送液可能であったが、流量は不安定だった。
×:送液不可能であった。
それぞれの実施条件および結果を表2に示す。
ゲル化剤を含有するインクのゲル化温度以下の温度で超音波を照射すると、吐出安定性、画質およびインク流動性が良好であり、画像に白スジも発生しなかった。
一方、ゲル化剤を含有するインクをゲル化温度以上に加熱しながら超音波を照射すると、光重合性化合物が吐出前に重合したため、画像の光沢が不均一となった(実験番号6−8、10)。
中空糸モジュールで加熱せずに脱気を行うと、中空糸にゲル化剤がつまってインクをその後の工程に送液することができず、画像を形成することができなかった(実験番号21−25)
加熱せずに減圧環境下で脱気を行うと、ゲル化剤の周囲の気泡を十分に取り除けなかったため、吐出が不安定になり、画像の光沢も不均一であり、画像に白スジが発生した(実験番号26−30)。
超音波の発振周波数を10kHz以上30kHz以下とすることで、色材の凝集をより防ぐことができたため、画像の光沢がより均一になり、白スジが発生しにくかった(実験番号1−3、5、11−13、15、16−18、20)。また、脱気前にインクのせん断を行うことで、インクの流動性がより向上した(実験番号1−3、5、11−13、15)。
ゲル化剤を含有しないインクを用いると、インクのピニング性が悪いため、画像の光沢が悪くなった(実験番号4、9、14、19、24、29)。一方で、ゲル化剤を含有するインクを用いると、画像の光沢がよいほか、ゲル化剤の周囲に気泡が生じ、この気泡を超音波照射で除去することができたため、インクの流動性がよりよくなった(実験番号1−3、11−13、16−18)。
なお、ゲル化剤を含むインクに、ゲル化温度以下の状態で超音波を照射すると、超音波を照射した後のインクの粘度は50mPa・s以上300mPa・s以下であった(実験番号1、2、3、5、11、12、13、15、16、17、18、20)。