図1〜図8を参照して、超電導回転電機1(図1参照)および治具180(図8参照)について説明する。
超電導回転電機1は、図1に示すように、コイル101(下記)を備える回転電機である。超電導回転電機1は、例えば電動機(超電導モータ)であり、例えば発電機(超電導発電機)でもよい。超電導回転電機1は、永久磁石63(下記、図2参照)を備えるものであり、PM型(PM;permanent magnet、永久磁石)である。超電導回転電機1は、かご型でもよい(かご型誘導電動機またはかご型誘導発電機でもよい)。超電導回転電機1は、例えば輸送機械に用いられ、例えば自動車、飛行機、または船舶(ポッドなど)に用いられる。超電導回転電機1は、各種発電機(風力発電機など)に用いられてもよい。超電導回転電機1は、フレーム部(10〜20)と、冷却手段30と、レゾルバ40と、ロータ周辺部(50〜65)と、ステータ70と、を備える。
(超電導回転電機1に関する方向)
この超電導回転電機1に関する方向には、回転軸軸方向Zaと、回転軸径方向Raと、回転軸周方向と、がある。回転軸軸方向Zaは、下記の回転軸50の中心軸Cの方向である。回転軸径方向Raは、回転軸軸方向Zaに直交する面上の円α(図示なし)であって中心軸Cを中心とする円αの直径方向である。回転軸径方向Raにおいて、中心軸Cに近づく側を回転軸径方向Ra内側とする。回転軸径方向Raにおいて、中心軸Cから遠ざかる側を回転軸径方向Ra外側とする。回転軸周方向は、上記の円αの円周に沿う方向である。
フレーム部(10〜20)は、モータフレーム10と、エンドブラケット20と、を備える。
モータフレーム10は、ステータ70などを支持する。モータフレーム10の材料は、例えばステンレスである。ステンレスは、鉄やアルミニウムなどに比べ、熱伝導率が低い(断熱効果が高い)。モータフレーム10は、例えば、筒状部11と、側板13と、ニップル部15と、を備える。
筒状部11は、主にステータ70を支持する部分である。筒状部11は、円筒状である。筒状部11の中心軸は、中心軸Cである。
側板13は、筒状部11から回転軸径方向Ra内側に突出する。側板13は、筒状部11の回転軸軸方向Zaにおける両端部(またはその近傍)に配置される。側板13は、回転軸軸方向Zaに間隔をあけて2つ(2枚)設けられる。側板13は、筒状部11に固定(例えば溶接により固定)される。側板13は、リング状である。側板13は、板状である。側板13は、板状でない部材(側部)に代えられてもよい。
ニップル部15は、寒剤タンク31(下記)が取り付けられる部分である。ニップル部15は、筒状部11から回転軸径方向Ra外側に突出する。ニップル部15は、筒状である。ニップル部15は、筒状部11に固定(例えば溶接により固定)される。
エンドブラケット20は、モータフレーム10(筒状部11)の回転軸軸方向Za両端部を支える。エンドブラケット20は、回転軸軸方向Zaに間隔をあけて2つ設けられる。2つのエンドブラケット20・20は、モータフレーム10を、回転軸軸方向Zaに挟む。エンドブラケット20は、モータフレーム10(筒状部11)に固定(例えば図示しないボルトにより固定)される。2つのエンドブラケット20・20どうしは、例えば図示しないボルトにより連結され、互いに固定される。
冷却手段30は、ステータ70を(下記のコイル101を)冷却する。冷却手段30によるステータ70の冷却方法は、例えば浸漬冷却であり、例えば冷凍機冷却でもよい。浸漬冷却では、ステータ70が寒剤30fに浸漬され、寒剤30fによりステータ70が冷却される。寒剤30fは、極低温の液体であり、例えば液体窒素(約77K)であり、例えば液体ヘリウムなどでもよい。冷凍機冷却では、ステータ70が冷凍機(図示なし)に熱的に接続され、冷凍機によりステータ70が冷却される(なお、例えば上記の特許文献1、2に冷凍機冷却の例が記載されている)。以下では、冷却手段30が、浸漬冷却によりステータ70を冷却する場合について説明する。冷却手段30は、寒剤タンク31と、容器34と、を備える。
寒剤タンク31(例えば液体窒素タンク)は、寒剤30fを貯留するためのタンクである。寒剤タンク31の数は、例えば2であり、例えば3以上や1でもよい。例えば、複数の寒剤タンク31は、回転軸軸方向Zaに並ぶように配置される。寒剤タンク31は、モータフレーム10(ニップル部15)に固定される。
容器34は、ステータ70を収容する。容器34の内部には、寒剤30fが満たされる。容器34の内部は、寒剤タンク31の内部と(ニップル部15を介して)連通する。回転軸軸方向Zaから見た容器34内部の断面(図示なし)は、ドーナツ状(リング状)である。容器34は、モータフレーム10と、内筒35(下記)と、で構成される。容器34の回転軸径方向Ra外側の壁部は、筒状部11により構成される。容器34の回転軸径方向Ra内側の壁部は、内筒35により構成される。容器34の回転軸軸方向Za両端の壁部は、2つの側板13・13により構成される。なお、容器34の回転軸径方向Ra外側の壁部は、筒状部11とは別の部材(図示しない外筒など)により構成されてもよい。容器34の回転軸軸方向Zaの端部は、側板13とは別の部材(図示しないリング状の板など(容器側部、容器側板))により構成されてもよい。
内筒35は、容器34の回転軸径方向Ra内側端部を構成する。内筒35は、筒状部11よりも回転軸径方向Ra内側に配置される。内筒35は、側板13よりも回転軸径方向Ra内側に配置される。内筒35(の回転軸軸方向Za両端部)は、側板13に固定される。内筒35は、円筒状である。内筒35の中心軸は、中心軸Cである。内筒35の熱伝導率が低いほど、内筒35での断熱効果が高い。内筒35の材料は、非磁性体であり、非金属であり、例えば繊維強化プラスチック(FRP;Fiber Reinforced Plastics)である。仮に、内筒35の材料を金属とした場合、ロータ60とステータ70との間の磁界が内筒35の部分で変化し、内筒35に渦電流層(渦層)ができ、超電導回転電機1が正常に動作できない。例えば、FRPの内筒35は、接着(接着剤による接着)により側板13に固定される。内筒35の材料は、例えば非磁性体のステンレスでもよい。ステンレスの内筒35は、例えば溶接により側板13に固定される。内筒35の厚さ(回転軸径方向Raの幅)は、例えば1〜2mmなどである。
レゾルバ40(ロータ角度検出装置)は、ステータ70に対するロータ60(下記)の回転角度を検出する。レゾルバ40は、検出した回転角度をコントローラ(図示なし)に出力する(与える)。レゾルバ40は、コイル101(下記)への電圧または電流の供給に関する、整流(コミュテート)制御に用いられる。レゾルバ40は、回転軸50(下記)の回転軸軸方向Zaの一端部に取り付けられる。レゾルバ40は、レゾルバロータ41と、レゾルバステータ43と、レゾルバナット45と、レゾルバカバー47と、を備える。
レゾルバロータ41は、回転軸50(下記)に固定される。
レゾルバステータ43は、レゾルバロータ41の回転軸径方向Ra外側に配置される。レゾルバステータ43は、フレーム部(10〜20)(エンドブラケット20)に、固定(例えば図示しないボルトにより固定)される。
レゾルバナット45は、回転軸50にレゾルバロータ41を固定するためのナットである。
レゾルバカバー47は、レゾルバロータ41、レゾルバステータ43、およびレゾルバナット45を、回転軸軸方向Zaにおける外側および回転軸径方向Ra外側から覆う。レゾルバカバー47は、回転軸50の回転軸軸方向Zaの一端部を、回転軸軸方向Zaにおける外側および回転軸径方向Ra外側から覆う。レゾルバカバー47は、フレーム部(10〜20)(エンドブラケット20)に、固定(例えば図示しないボルトにより固定)される。
ロータ周辺部(50〜65)は、ステータ70に対して(フレーム部(10〜20)に対して)回転可能な部分を有する。ロータ周辺部(50〜65)は、中心軸Cを中心に回転可能である。ロータ周辺部(50〜65)は、回転軸50と、ベアリング53と、ロータ60と、を備える。
回転軸50は、超電導回転電機1の外部と接続される部材(シャフト)である。超電導回転電機1が電動機の場合、回転軸50は出力軸(出力シャフト)である。超電導回転電機1が発電機の場合、回転軸50は、入力軸(入力シャフト)である。回転軸50は、フレーム部(10〜20)よりも回転軸径方向Ra内側に配置される。回転軸50は、ベアリング53を介して、フレーム部(10〜20)(エンドブラケット20)に回転自在に取り付けられる。回転軸50の回転軸軸方向Zaの一端部は、上記のようにレゾルバカバー47に収容される。回転軸50の回転軸軸方向Zaの他端部は、フレーム部(10〜20)の外部に配置される(露出する)。回転軸50は、回転軸軸方向Zaに延びる棒である。回転軸50は、例えば回転軸軸方向Zaにおける部位によって外径(回転軸径方向Raの寸法)が異なる(段付きである)。例えば、回転軸50の外径は、ロータ60の回転軸径方向Ra内側部分で最も大きくなる。回転軸50は、段付きでなくてもよい。回転軸50の材料は、例えば軟鋼(例えばSS400)であり、例えばステンレス(例えばSUS304)などである。
ベアリング53は、ロータ60を中心軸C回りに回転自在に支持する。ベアリング53は、回転軸軸方向Zaに間隔をあけて2つ設けられる。ベアリング53は、エンドブラケット20の回転軸径方向Ra内側端部に取り付けられる。
ロータ60は、回転軸50よりも回転軸径方向Ra外側に配置される。ロータ60は、回転軸50に対して固定される。図2に示すように、ロータ60は、ロータコア61と、永久磁石63と、飛散防止チューブ65と、を備える。
ロータコア61は、磁気回路(磁路)が形成される部分である。超電導回転電機1がPM型の場合、ロータコア61は、複数の永久磁石63が取り付けられる部分(共通ベース)である。超電導回転電機1がかご型の場合(図示なし)、ロータコア61は、かごを構成する棒などが取り付けられる(埋め込まれる)部分である。ロータコア61は、円筒状である。ロータコア61は、磁性体である。ロータコア61は、例えば、複数枚のリング状の薄板が回転軸軸方向Zaに積層されたものである。ロータコア61を構成する薄板は、珪素鋼板などである。ステータコア72は、積層構造でなくてもよい(一体構造でもよい)。
永久磁石63(マグネット)は、ロータコア61よりも回転軸径方向Ra外側に配置される。永久磁石63は、ロータコア61の外周面(回転軸径方向Ra外側の面)から回転軸径方向Ra外側に突出する。永久磁石63は、ロータコア61に固定(例えば接着、貼り付けにより固定)される。永久磁石63は、回転軸周方向(ロータコア61の周方向)に間隔をあけて複数設けられる。永久磁石63の数は、一般に偶数である。永久磁石63の数は、図2に示す例では10であり、8以下や12以上でもよい。永久磁石63の極低温での特性は、常温での特性と同じ(またはほぼ同じ)である。永久磁石63は、常温に比べ極低温でも性能が低下しない(またはほぼ低下しない)。
飛散防止チューブ65は、永久磁石63が飛散することを防止する。さらに詳しくは、高速でロータ60が回転しているときに、永久磁石63がロータコア61からはがれ、永久磁石63が飛散するおそれがあるところ、飛散防止チューブ65は、この飛散を防ぐ。飛散防止チューブ65は、永久磁石63よりも回転軸径方向Ra外側に配置される。飛散防止チューブ65は、永久磁石63の外周(回転軸径方向Ra外側の面)に接触(密着)する。飛散防止チューブ65は、複数の永久磁石63のすべてを回転軸径方向Ra外側から囲う(覆う)。飛散防止チューブ65と内筒35との間には、隙間が形成される。飛散防止チューブ65は、円筒状である。飛散防止チューブ65の材料は、例えば非磁性体のステンレスなどである。飛散防止チューブ65は、熱収縮チューブでもよい。熱収縮チューブである飛散防止チューブ65の材料は、例えば樹脂であり、例えばポリエチレンテレフタラート(PET;polyethylene terephthalate)などである。飛散防止チューブ65の厚さ(回転軸径方向Raの幅)は、例えば1mm未満などである。
ステータ70は、ロータ60を回転させる部分(固定子)である。ステータ70は、ロータ60よりも回転軸径方向Ra外側に配置される。ステータ70は、ロータ60と回転軸径方向Raに対向するように配置される。図1に示すように、ステータ70は、フレーム部(10〜20)(モータフレーム10、筒状部11)に固定される。ステータ70は、モータフレーム10(筒状部11)よりも回転軸径方向Ra内側に配置される。ステータ70は、容器34の内部に配置される。ステータ70は、内筒35よりも回転軸径方向Ra外側に配置される。ステータ70は、2つの側板13の間(回転軸軸方向Zaにおける間)に配置される。図2に示すように、ステータ70は、ステータコア72と、コイル101と、を備える。なお、図2では、複数の同じ構成要素(例えば複数のコイル101)の一部にのみ符号を付した。
ステータコア72は、磁気回路が形成される部分である。この磁気回路は、ロータコア61とステータコア72とにわたって形成される。図1に示すように、ステータコア72は、モータフレーム10(筒状部11)に固定される。ステータコア72のモータフレーム10への固定は、例えば圧入による固定であり、例えば接着(接着剤による接着)による固定でもよく、例えば溶接(ビーム溶接など)による固定でもよい。図2に示すステータコア72は、磁性体である。ステータコア72は、略円筒状である。ステータコア72は、例えば、複数枚のリング状の薄板(例えば厚さ0.3mmなど)が回転軸軸方向Zaに積層されたものである。ステータコア72を構成する薄板は、珪素鋼板などである。ステータコア72は、積層構造でなくてもよい(一体構造でもよい)。ステータコア72は、ヨーク73と、ティース75と、を備える。ヨーク73は、円筒状である。
ティース75は、コイル101が取り付けられる部分である。ティース75は、ヨーク73から回転軸径方向Ra内側に突出する。ティース75は、回転軸周方向(ヨーク73の周方向)に間隔をあけて複数設けられる。ティース75の数は、図2に示す例では12であり、9以下や15以上でもよい。ティース75の回転軸径方向Ra内側端部は、内筒35に隣接する。ティース75の回転軸径方向Ra内側端部は、内筒35の外周面(回転軸径方向Ra外側の面)と接触する。ティース75は、内筒35と接触しなくてもよい(隙間があってもよい)。回転軸周方向(ヨーク73の周方向)に隣り合うティース75どうしの間には、スロット(コイル101の一部が配置される部分)が形成される。
このティース75は、ティース75に対してコイル101を回転軸径方向Raに着脱できるように構成される。例えば、ティース75は、ヨーク73から回転軸径方向Ra内側に直線的に突出する。ティース75の幅(回転軸周方向におけるティース75の幅)は、回転軸径方向Raの位置にかかわらず一定である。ティース75の回転軸径方向Ra内側部分の幅は、ティース75の回転軸径方向Ra外側部分の幅よりも狭くてもよい(図示なし)。ティース75の回転軸径方向Ra内側端部には、フレア(回転軸周方向に拡がる部分)は設けられない。
このティース75は、図3に示すように、回転軸軸方向Zaに直線状に延びる(ティース75は、ストレートティースである)。ティース75には、コギングを抑制するためのスキューがかけられてもよい。ティース75は、回転軸軸方向Zaに対して斜めに配置されてもよい。ティース75は、曲線状(例えば円弧状)に配置されてもよい(図示なし)。ティース75が曲線状に配置される場合よりも、ティース75が直線状に配置される場合の方が、ティース75にコイル101を容易に取り付けできる。
コイル101(超電導回転電機1のコイル、超電導コイル)は、電流が供給されることで磁力を発生させる。図3に示すように、コイル101は、ステータコア72(ティース75)に取り付けられる。コイル101の数は、ティース75の数と同じ(図2に示す例では12)である。図3では1つのコイル101のみを図示した。図3ではティース75の一部の符号を省略した。コイル101には、渡り線(図示なし)が結線される。コイル101には、U、V、Wの3相の運転電圧(運転電流)が供給され、各相は、中性点でスター結線される。以下では、1つのコイル101について説明する。図4に示すように、コイル101は、巻枠110と、線材140と、電極(151・152)と、金具(161・163)と、含浸材170(図7参照)と、を備える。
巻枠110は、線材140が巻かれる部分である。巻枠110は、ティース75(図3参照)に対して着脱可能(取り付け(はめ込み)および取外し可能)である。巻枠110の材料は、絶縁体である。巻枠110は、線材140とティース75(図3参照)との間で電気的絶縁を行う。巻枠110の材料は、非磁性体であり、非金属である。巻枠110の材料が金属であれば、巻枠110の部分で渦電流層ができ、超電導回転電機1が正常に動作できない(内筒35の材料が金属である場合と同様)。巻枠110の材料は、例えばFRPであり、例えばガラス繊維強化プラスチック(GFRP;Glass Fiber Reinforced Plastics)である。巻枠110は、分割部110dと、切欠き部110e(図6参照)と、を備える。巻枠110は、巻枠本体部120と、ブロック部130と、を備える。
分割部110dは、電極(151・152)および下記の端部(141・142)(図5参照)を、巻枠110の内部に配置可能とするための部分である。分割部110dは、巻枠110が分割される部分である。分割部110dは、例えば、図4において二点鎖線で示す部分に設けられる。分割部110dは、例えば、下記の第一電極151および下記の第一端部141(図5参照)に隣接する位置に配置される。分割部110dは、図4に示す部分以外の部分に設けられてもよい。分割部110dで分割された巻枠110どうしは、例えば図示しないネジなどにより固定される。
切欠き部110eは、図6に示すように、下記の第一端部141および下記の第一電極151が配置される部分である。切欠き部110eは、第一電極151に隣接するように配置される。切欠き部110eは、下記のフランジ部127および芯部121にまたがって形成される。例えば、切欠き部110eは、巻枠軸方向Zb1側(下記)のフランジ部127の巻枠短手方向Y1側(下記)の端部から、巻枠短手方向Y2側(下記)に凹むように形成される。なお、切欠き部110eは設けられなくてもよい。
巻枠本体部120は、図4に示すように、線材140が巻かれる枠(リール)である。巻枠本体部120は、巻枠本体部120に巻かれた線材140がレーストラック状(略レーストラック状でもよい)になるように構成される。巻枠本体部120の形状は、長手方向を有する形状である。巻枠本体部120は、2本の巻枠本体直線部120aと、2つの巻枠本体曲線部120bと、を備える。2本の巻枠本体直線部120aは、互いに平行に配置され、それぞれ直線状である(略直線状でもよい)。2つの巻枠本体曲線部120bそれぞれは、2本の巻枠本体直線部120aの長手方向の端部どうしをつなぐ。巻枠本体曲線部120bは、巻枠軸方向Zbから見たときに、巻枠本体曲線部120bに沿って配置された線材140が曲線状になるように構成される。上記「曲線状」は、例えば半円の円弧状であり、半楕円の弧状などでもよい。図7に示すように、線材140の長手方向(レーストラック状に沿った方向)から見たとき、巻枠本体部120の断面は、U字状の凹部(線材140などが配置される凹部)を有する形状である。図4に示すように、巻枠本体部120は、芯部121と、フランジ部127と、を備える。巻枠本体部120には、巻枠本体部中心軸120cがある。
巻枠本体部中心軸120cは、巻枠本体部120の下記の底部123(図7参照)の中心軸である。巻枠本体部中心軸120cは、巻枠本体部120に巻かれた線材140の中心軸である。巻枠本体部中心軸120cは、巻枠本体直線部120aが対向する方向に直交し、かつ、巻枠本体曲線部120bが対向する方向に直交する。
(巻枠本体部120に関する方向)
この巻枠本体部120に関する方向(コイル101に関する方向)には、巻枠長手方向Xと、巻枠短手方向Yと、巻枠軸方向Zbと、巻枠径方向Rbと、がある。
巻枠長手方向Xは、巻枠本体部120の長手方向である。巻枠長手方向Xは、巻枠本体直線部120aの長手方向である。巻枠長手方向Xにおいて、ティース取付孔125(下記)からブロック部130に向かう側(向き)を、巻枠長手方向X1側とする。巻枠長手方向Xにおける巻枠長手方向X1側とは逆側(逆向き)を、巻枠長手方向X2側とする。
巻枠短手方向Yは、巻枠長手方向Xに直交し、かつ、巻枠本体部中心軸120cに直交する方向である。巻枠短手方向Yは、2本の巻枠本体直線部120aが対向する方向である。巻枠短手方向Yにおいて、第二電極152(下記)から第一電極151(下記)に向かう側(向き)を、巻枠短手方向Y1側とする。巻枠短手方向Yにおいて、巻枠短手方向Y1側とは逆側(逆向き)を、巻枠短手方向Y2側とする。
巻枠軸方向Zbは、巻枠本体部中心軸120cの方向である。図3に示すように、巻枠軸方向Zbが、回転軸径方向Raと一致するように、コイル101が配置される。図4に示す巻枠軸方向Zbにおいて、ブロック部130から巻枠本体部120に向かう側(向き)を巻枠軸方向Zb1側とする。巻枠軸方向Zbにおいて、巻枠軸方向Zb1側とは逆側(逆向き)を巻枠軸方向Zb2側とする。例えば、図3に示すように、巻枠軸方向Zb2側が、回転軸径方向Ra外側と一致するように、コイル101が配置される。
図4に示す巻枠径方向Rbは、巻枠軸方向Zbに直交する面上の円β(図示なし)であって巻枠本体部中心軸120cを中心とする円βの直径方向である。巻枠径方向Rbにおいて、巻枠本体部中心軸120cに近づく側を巻枠径方向Rb内側とする。巻枠径方向Rbにおいて、巻枠本体部中心軸120cから遠ざかる側を巻枠径方向Rb外側とする。
芯部121は、巻枠本体部120の芯の部分である。芯部121は、線材140よりも巻枠径方向Rb内側に配置される。芯部121は、図7に示すように、底部123と、ティース取付孔125と、を備える。
底部123は、芯部121の外周部(巻枠径方向Rb外側の部分)である。
ティース取付孔125(図4参照)は、図3に示すティース75と係合する孔である。図4に示すように、ティース取付孔125は、芯部121の巻枠径方向Rb内側部分に配置(形成)される。ティース取付孔125の形状は、ティース75(図3参照)の形状と同様である。例えば、回転軸径方向Ra(図3参照)から見たときにティース75が直線状の長方形の場合、図6に示すように巻枠軸方向Zbから見たときに、ティース取付孔125も直線状の長方形である。図4に示すように、ティース取付孔125は、巻枠長手方向Xに延びる。ティース取付孔125は、巻枠軸方向Zbに巻枠本体部120を貫通する。ティース取付孔125は、2つの巻枠本体直線部120aの間(巻枠短手方向Yにおける間)に配置される。ティース取付孔125は、2つの巻枠本体曲線部120bの間(巻枠長手方向Xにおける間)に配置される。
フランジ部127は、線材140の巻枠軸方向Zbへの移動を規制する。図7に示すように、フランジ部127は、底部123の巻枠軸方向Zbにおける両端から、巻枠径方向Rb外側に突出する。フランジ部127は、巻枠軸方向Zbに直交する板状である。図4に示すように、フランジ部127には、ブロック部130と一体的に構成される部分127aがある(なくてもよい)。
ブロック部130は、電極(151・152)が固定される部分である。図3に示すように、ブロック部130は、ステータコア72よりも(ティース75よりも)、回転軸軸方向Zaにおける外側に配置される。図4に示すように、ブロック部130は、巻枠本体部120から巻枠軸方向Zb2側に突出する。ブロック部130は、フランジ部127(部分127aを除く)よりも巻枠軸方向Zb2側に配置される。ブロック部130は、巻枠本体部120に固定される。ブロック部130は、巻枠本体部120と一体的に構成される。ブロック部130は、巻枠本体部120と別体でもよい。ブロック部130の形状は、例えば直方体(略直方体でもよい)を組み合わせた形状などである。ブロック部130は、ブロック基体部131と、ブロック突出部133と、孔部135と、凹部137と、を備える。
ブロック基体部131は、巻枠本体部120に直接固定される。ブロック基体部131は、巻枠本体部120の巻枠長手方向X1側部分に固定される。図6に示すように、巻枠軸方向Zbから見たとき、ブロック基体部131は、2つの巻枠本体曲線部120bのうち巻枠長手方向X1側の巻枠本体曲線部120bと重なる。巻枠軸方向Zbから見たとき、ブロック基体部131は、巻枠本体直線部120aの巻枠長手方向X1側部分と重なる。巻枠軸方向Zbから見たとき、ブロック基体部131は、ティース取付孔125と重ならないように配置される。図4に示すように、ブロック基体部131は、例えば直方体である。
ブロック突出部133は、ブロック基体部131から突出する。ブロック突出部133は、ブロック基体部131から、巻枠本体直線部120aが延びる方向に(巻枠長手方向Xに、巻枠長手方向X1側に)突出する。ブロック突出部133は、ブロック基体部131の巻枠短手方向Y2側部分(第二端部142が配置される側の部分)から突出する。
孔部135は、下記の第一電極151が内部に通される孔である。孔部135は、ブロック基体部131を巻枠軸方向Zbに貫通する。
凹部137は、下記の第二電極152が内部(内側)に配置される部分(凹んだ部分)である。凹部137は、ブロック突出部133およびブロック基体部131の、巻枠短手方向Y2側の面に配置(形成)される。凹部137は、ブロック突出部133のみに配置されてもよい。
線材140は、電流が流される部材(電線)である。線材140は、超電導体を有する、超電導線材である。線材140は、巻枠110(巻枠本体部120)に巻かれる。線材140は、巻枠110に複数回巻かれる(巻枠径方向Rbに重ねられる)。線材140は、巻枠110に巻かれることにより、レーストラック状(レーストラックコイル形状)になる。線材140は、線材直線部140aと、線材曲線部140bと、を備える。線材直線部140aは、巻枠本体直線部120aに沿って配置される。線材曲線部140bは、巻枠本体曲線部120bに沿って配置される。線材140は、平板帯状である。線材140は、フープ材である。線材140は、巻枠軸方向Zbに複数本並べられない。なお、線材140は、巻枠軸方向Zbに複数本並べられてもよく、例えばダブルパンケーキ状(レーストラック状に含まれる)でもよい。巻枠径方向Rbに重ねられた線材140のうち、最も巻枠径方向Rb内側の部分を最内側線材140iとし、最も巻枠径方向Rb外側の部分を最外側線材140oとする。図7に示すように、最内側線材140iは、含浸材170を介して底部123に接する。最外側線材140oは、フランジ部127よりも巻枠径方向Rb内側に配置される(図5に示す下記の第二端部142は除く)。線材140は、巻枠本体部120に固定される(下記)。
この線材140は、超電導体を有し、例えば高温超電導体を有する。線材140は、例えば希土類系超電導体(ReBCO系超電導体)を有する。例えば希土類系超電導体を有する線材140は、多層構造(図示なし)を有する。例えば、多層構造を有する線材140は、線材140の厚さ方向内側から外側の順に、基板の層と、中間層と、超電導体の層と、安定化層と、を備える。上記の基板の材料は、例えばニッケル基合金であり、例えばニッケル基にモリブデンやクロムなどを加えたものなどである。上記の中間層は、例えば超電導特性を向上させるために設けられ、例えば複数層(例えば2層)設けられる。上記の超電導体は、例えば希土類系超電導体である。希土類系超電導体には、例えばイットリウム系超電導体(YBCO系超電導体)がある。超電導体の層の厚さは、例えば0.1mmなどである。上記の安定化層は、常電導体により構成される。この安定化層は、例えば銀メッキや、銅箔などを有する。線材140では、異なる層の境界で、異なる層どうしが剥離しやすい。この剥離は、例えば中間層などで生じやすい。線材140は、例えばビスマス系超電導体(BSCCO系超電導体)を有してもよい。希土類系超電導体を有する線材140は、ビスマス系超電導体を有する線材140よりも大きな臨界電流(Ic)を持つ。図5に示すように、線材140は、端部(141・142)を備える。
端部(141・142)は、線材140の長手方向の両端部である。端部(141・142)は、巻枠110(図4参照)に固定される。端部(141・142)は、巻枠110に直接固定される、または、電極(151・152)を介して巻枠110に固定される(下記)。端部(141・142)には、第一端部141と、第二端部142と、がある。
第一端部141は、線材140の両側の端部(141・142)のうち、巻枠110への巻きはじめ側の端である。第一端部141は、最内側線材140iの端である。
第二端部142は、線材140の両側の端部(141・142)のうち、巻枠110への巻き終わり側の端である。第二端部142は、最外側線材140oの端である。
電極(151・152)は、渡り線(上記、図示なし)が接続される部分(端子)である。電極(151・152)は、線材140と渡り線とを電気的に接続する。電極(151・152)は、端部(141・142)にハンダ付けされる。その結果、電極(151・152)は、端部(141・142)に固定される。電極(151・152)は、巻枠110に(ブロック部130に)固定される。電極(151・152)の材料は、導体であり、金属(銅など)である。電極(151・152)には、第一電極151と、第二電極152と、がある。
第一電極151は、第一端部141にハンダ付けされる。第一電極151は、例えば板状である。第一電極151は、例えば巻枠短手方向Yに直交する平板状である。第一電極151は、例えば、巻枠短手方向Yから見て略長方形などである。第一電極151の長手方向は、巻枠軸方向Zbである。第一電極151は、第一線材固定部151aと、第一巻枠固定部151bと、第一突出部151cと、を備える。
第一線材固定部151aには、第一端部141が固定される。第一線材固定部151aは、第一端部141およびその周辺の線材140(最内側線材140i)を曲げる必要なく、第一電極151と第一端部141との固定が可能となるような位置に配置される。具体的には、第一線材固定部151aは、線材直線部140aに固定される(第一端部141は線材直線部140aの一部である)。第一線材固定部151aは、巻枠長手方向X1側の線材曲線部140bよりも、巻枠長手方向X2側に配置される。第一線材固定部151aは、第一端部141よりも巻枠径方向Rb内側(例えば巻枠短手方向Y2側)に配置される。板状の第一線材固定部151aは、板状の第一端部141と平行に配置される。第一線材固定部151aは、図4に示すように、巻枠110(巻枠本体部120)の内部に配置される(埋め込まれる)。なお、図5に示す第一線材固定部151aは、線材曲線部140bに固定されてもよい(第一端部141は線材曲線部140bの一部でもよい)(図示なし)。また、上記のように、線材140が巻枠軸方向Zbに複数本並べられる場合(線材140がダブルパンケーキ状などの場合)がある。この場合は、第一線材固定部151aは、巻枠長手方向X1側の線材曲線部140bよりも巻枠長手方向X1側の、線材直線部140aの延長線上などに配置されてもよい(下記の第二線材固定部152aの配置を参照)。
第一巻枠固定部151bは、図4に示す巻枠110に接触し、巻枠110に固定される部分である。第一巻枠固定部151b(図5参照)は、ブロック部130(ブロック基体部131)に接触し、ブロック部130(ブロック基体部131)に固定される。第一巻枠固定部151b(図5参照)は、孔部135に差し込まれる。第一巻枠固定部151bの(第一電極151の)巻枠短手方向Yの移動は、孔部135により規制される。第一巻枠固定部151bの(第一電極151の)巻枠長手方向Xの移動は、孔部135により規制される。図5に示すように、第一巻枠固定部151bは、第一線材固定部151aよりも巻枠軸方向Zb2側に配置される。第一巻枠固定部151bは、第一線材固定部151aよりも巻枠軸方向Zb1側に配置されてもよい(図4に示すブロック部130は、巻枠本体部120よりも巻枠軸方向Zb1側に配置されてもよい)(図示なし)。図5に示す第一巻枠固定部151bには、第一端部141が固定されてもよい(第一巻枠固定部151bと第一線材固定部151aとが兼ねられてもよい)。
第一突出部151cは、図4に示すように、巻枠110の外部に突出する部分である。第一突出部151cは、ブロック部130(ブロック基体部131)から巻枠軸方向Zbに(巻枠軸方向Zb2側に)突出する。図5に示すように、第一突出部151cは、第一線材固定部151aおよび第一巻枠固定部151bよりも巻枠軸方向Zb2側に配置される。第一突出部151cは、巻枠短手方向Yに貫通する孔を備える(孔はなくてもよい)。
第二電極152は、第二端部142にハンダ付けされる。第二電極152の形状は、第一電極151の形状と同様である(第一電極151の形状と異なってもよい)。第二電極152は、第二線材固定部152aと、第二巻枠固定部152bと、第二突出部152cと、を備える。
第二線材固定部152aには、第二端部142が固定される。第二線材固定部152aは、第二端部142およびその周辺の線材140(最外側線材140o)を曲げる必要なく、第二電極152と第二端部142との固定が可能となるような位置に配置される。具体的には、第二線材固定部152aは、線材直線部140aの延長線上(巻枠長手方向X1側へ延長した線上)に配置される(第二端部142は、線材直線部140aの延長線上に配置される)。板状の第二線材固定部152aは、板状の第二端部142と平行に配置される。第二線材固定部152aは、巻枠長手方向X1側の線材曲線部140bよりも、巻枠長手方向X1側に配置される。例えば、第二線材固定部152aは、第二端部142よりも巻枠短手方向Y2側に配置される(巻枠短手方向Y1側に配置されてもよい)。なお、第二線材固定部152aは、線材曲線部140bに固定されてもよい(第二端部142は線材曲線部140bの一部でもよい)。
第二巻枠固定部152bは、図4に示す巻枠110に接触し、巻枠110に固定される部分である。第二巻枠固定部152b(図5参照)は、ブロック部130に接触し、ブロック部130に固定される。第二巻枠固定部152b(図5参照)は、凹部137にはめ込まれる。第二巻枠固定部152b(図5参照)の(第二電極152の)巻枠長手方向Xの移動は、凹部137により規制される。第二巻枠固定部152b(図5参照)の(第二電極152の)巻枠短手方向Yの移動は、凹部137および下記の巻枠固定金具161により規制される。図5に示すように、第二巻枠固定部152bは、第二線材固定部152aよりも巻枠軸方向Zb2側に配置される。第二巻枠固定部152bは、第二線材固定部152aよりも巻枠軸方向Zb1側に配置されてもよい。第二巻枠固定部152bには、第二端部142が固定されてもよい(第二巻枠固定部152bと第二線材固定部152aとが兼ねられてもよい)。
第二突出部152cは、図4に示すように、巻枠110から巻枠110の外部に突出する部分である。第二突出部152cは、ブロック部130(ブロック基体部131およびブロック突出部133)から巻枠軸方向Zbに(巻枠軸方向Zb2側に)突出する。図5に示すように、第二突出部152cは、第二線材固定部152aおよび第二巻枠固定部152bよりも巻枠軸方向Zb2側に配置される。第二突出部152cは、巻枠短手方向Yに貫通する孔を備える(孔はなくてもよい)。
金具(161・163)は、電極(151・152)と、線材140と、巻枠110(図4参照)と、を固定するための部材(固定部材)である。金具(161・163)の材料は金属である。金具(161・163)は、金属以外の固定部材に代えられてもよい。図4に示すように、金具(161・163)には、巻枠固定金具161と、線材固定金具163と、がある。
巻枠固定金具161は、第二電極152を巻枠110に固定する。巻枠固定金具161は、巻枠110(ブロック部130、例えばブロック突出部133)と第二電極152とを挟む。巻枠固定金具161は、第二電極152を巻枠110に(巻枠短手方向Y1側に)押圧する。巻枠固定金具161は、巻枠固定金具本体161aと、巻枠固定ネジ161bと、を備える。
巻枠固定金具本体161aは、巻枠軸方向Zbから見てU字状に形成される。巻枠固定金具本体161aは、第二電極152とブロック突出部133とを、巻枠長手方向X1側、巻枠短手方向Y1側、および巻枠短手方向Y2側から囲う。巻枠固定金具本体161aの巻枠短手方向Y2側部分は、第二電極152の巻枠短手方向Y2側への移動を規制する。巻枠固定金具本体161aの巻枠短手方向Y2側部分は、第二巻枠固定部152b(図5参照)と巻枠短手方向Yに対向し、例えば第二巻枠固定部152bに接する(接さなくてもよい)。巻枠固定金具本体161aの巻枠短手方向Y1側部分には、ネジ孔が形成される。このネジ孔は、巻枠短手方向Yに、巻枠固定金具本体161aを貫通する。
巻枠固定ネジ161bは、巻枠110(ブロック突出部133)に対して巻枠固定金具本体161aを移動させる。巻枠固定ネジ161bは、締められるまたは緩められることにより、巻枠固定金具本体161aに対して巻枠短手方向Yに移動可能である。巻枠固定ネジ161bは、巻枠固定金具本体161aの巻枠短手方向Y1側部分(ネジ孔)に、ねじ込まれて取り付けられる。巻枠固定ネジ161bの先端部(巻枠短手方向Y2側端部)は、ブロック突出部133(の巻枠短手方向Y1側の面)に接する。巻枠固定ネジ161bが締められると、巻枠110(ブロック突出部133)に対して巻枠固定金具本体161aが巻枠短手方向Y1側に移動する。その結果、巻枠固定金具本体161a(の巻枠短手方向Y2側部分)と、巻枠110(ブロック部130、凹部137)とが、第二電極152を巻枠短手方向Yに挟む。
線材固定金具163は、図5に示すように、第二電極152と第二端部142とを固定する。線材固定金具163は、第二電極152にハンダ付けされた第二端部142を補強する。第二電極152と第二端部142とを電気的に接続するのみであれば、ハンダ付けで十分である。しかし、線材固定金具163がない場合は、第二端部142の剥離や割れにつながる何らかの力が、第二端部142にかかる場合がある。例えば、第二端部142の表面部分と他の部分との間に、せん断力、または、第二端部142の剥離や割れにつながる何らかの力がかかる場合がある。そこで、線材固定金具163は、第二電極152と第二端部142とを固定することにより、第二端部142の剥離や割れを抑制する(剥離や割れの防止に寄与する)。特に、線材140が希土類系超電導体を有する場合など、線材140が多層構造を有する場合には、第二端部142が剥離しやすいので、線材固定金具163による剥離の抑制が有効である。線材固定金具163は、第二電極152と第二端部142とを挟む。線材固定金具163は、線材140の厚さ方向(巻枠短手方向Y)に、第二電極152と第二端部142とを挟む。線材固定金具163は、線材固定金具本体163aと、線材固定ネジ163bと、を備える。
線材固定金具本体163aは、巻枠軸方向Zbから見てU字状に形成される。線材固定金具本体163aは、第二電極152と第二端部142とを、巻枠長手方向X1側、巻枠短手方向Y1側、および巻枠短手方向Y2側から囲う。線材固定金具本体163aの巻枠短手方向Y2側部分は、第二端部142に接する。線材固定金具本体163aの巻枠短手方向Y1側部分には、ネジ孔が形成される。このネジ孔は、巻枠短手方向Yに、線材固定金具本体163aを貫通する。
線材固定ネジ163bは、第二電極152および第二端部142に対して線材固定金具本体163aを移動させる。線材固定ネジ163bは、締められるまたは緩められることにより、線材固定金具本体163aに対して巻枠短手方向Yに移動可能である。線材固定ネジ163bは、線材固定金具本体163aの巻枠短手方向Y1側部分(ネジ孔)に、ねじ込まれて取り付けられる。図6に示すように、線材固定ネジ163bの先端部(巻枠短手方向Y2側端部)は、第二電極152(の巻枠短手方向Y1側の面)に接する。線材固定ネジ163bが締められると、線材固定ネジ163bは、線材固定金具本体163aに対して巻枠短手方向Y2側に移動する。その結果、線材固定ネジ163bは、第二電極152を巻枠短手方向Y2側に押す。その結果、線材固定金具本体163a(の巻枠短手方向Y2側部分)と線材固定ネジ163bとが、第二電極152および第二端部142を、巻枠短手方向Yに挟む。
含浸材170(図7参照)は、線材140と巻枠110とを一体的に接着させる。図7に示すように、含浸材170は、線材140(最内側線材140i)と底部123とを接着させる。含浸材170は、巻枠径方向Rbに並ぶ線材140どうしを一体的に接着させる。例えば、含浸材170は、プリプレグテープである。プリプレグテープは、テープと、テープに予め含浸された樹脂と、を備える。この樹脂は、熱硬化性樹脂であり、例えばエポキシ樹脂である。この樹脂は、所定温度に加熱されると、テープからしみ出し、硬化する。上記の所定温度は、例えば100℃以上であり、例えば120℃〜150℃などである。
治具180は、図8に示すように、巻枠110に線材140などを巻線するための道具である。治具180は、固定テーブル181と、回転テーブル183と、回転テーブル作動部185と、線材用スプール187と、テープ用スプール189と、を備える。
固定テーブル181は、回転テーブル183と、回転テーブル作動部185と、線材用スプール187と、テープ用スプール189と、が取り付けられる台である。
回転テーブル183は、固定テーブル181に対して巻枠110を回転させるための台である。回転テーブル183は、固定テーブル181に対して回転自在である。回転テーブル183は、固定テーブル181の、例えば上面に載せられる(線材用スプール187およびテープ用スプール189についても同様)。回転テーブル183は、突起183aを備える。突起183aは、巻枠110のティース取付孔125に差し込まれる。突起183aの形状は、ティース75(図3参照)と同じである(略同じでもよい)。
回転テーブル作動部185は、固定テーブル181に対して回転テーブル183を回転させる部分である。回転テーブル作動部185は、例えば、ハンドル185aが手動で回転されることにより、回転テーブル183が回転するように構成される。例えば、ハンドル185aの回転軸(例えば水平方向)と回転テーブル183の回転軸(例えば鉛直方向)との変更は、ベベルギア(図示なし)などにより行われる。回転テーブル作動部185は、例えばモータ(図示なし)により回転テーブル183を回転させるものでもよい。
線材用スプール187は、巻枠110に巻かれる前の線材140が巻かれたものである。線材用スプール187は、固定テーブル181に対して回転自在である。線材用スプール187の回転軸の方向は、回転テーブル183の回転軸と同じ方向(平行)であり、例えば鉛直方向である(テープ用スプール189の回転軸の方向も同様)。線材用スプール187は、線材140の張力により、固定テーブル181に対して回転する。線材用スプール187の固定テーブル181に対する回転には、わずかにブレーキがかけられる。このブレーキの強さは、回転テーブル183の回転が止まったときに、線材用スプール187の回転も止まるように設定される。なお、線材用スプール187の回転トルクが制御されてもよい。線材用スプール187には、ブレーキがかけられなくてもよい。
テープ用スプール189は、巻枠110に巻かれる前の含浸材170(プリプレグテープ)が巻かれたものである。テープ用スプール189は、線材用スプール187と同様に構成される(詳細な説明は省略する)。
(製造方法)
図4に示すコイル101は、次のように作られる。以下では、コイル101の製造工程の順序に沿って、コイル101の製造方法を説明する。なお、下記の順序は変更されてもよい。
(巻線前の工程)
[工程a−1]図8に示す線材140が、線材用スプール187から引き出される。図5に示すように、線材140の先端部(第一端部141)と第一電極151とが、ハンダ付けされる。[工程a−2]図5に示す第一端部141と、第一電極151とが、巻枠110に固定される。この固定の詳細は、例えば次の通りである。巻枠110が、図4および図6に示す分割部110dで分割される。次に、第一端部141と、第一電極151とが、切欠き部110eおよび分割部110dに通される。次に、図4に示すように、第一電極151が、巻枠110の孔部135にはめ込まれる。そして、分割部110dが閉じられて固定される。[工程a−3]図8に示すように、プリプレグテープである含浸材170が、テープ用スプール189から引き出される。図7に示すように、この含浸材170が、線材140と平行に、線材140の巻枠径方向Rb内側の面に接するように、配置される。[工程a−4]図8に示すように、巻枠110が、回転テーブル183に載せられる。
(巻線などの工程)
[工程b−1]回転テーブル作動部185により、回転テーブル183が、固定テーブル181に対して回転させられる。その結果、線材140とプリプレグテープである含浸材170とが、巻枠110に共巻きされる(共に巻線される)。[工程b−2]線材140と含浸材170とが巻枠110に所定量巻線されたとき、回転テーブル183の回転が停止される。[工程b−3]線材用スプール187と巻枠110との間の線材140が切断される。この切断された部分、または、その近傍が、図5に示す第二端部142となる。[工程b−4]図8に示す巻枠110が、回転テーブル183から取り外される(取り外されなくてもよい)。
(第二電極152などに関する工程)
[工程c−1]図5に示すように、第二端部142と第二電極152とがハンダ付けされる。このハンダ付け作業を行うとき、製作途中のコイル101は、図3に示すステータコア72に取り付けられている必要はない。このハンダ付け作業は、ステータコア72の近傍の狭いスペースで行われる必要がない。そのため、このハンダ付け作業を容易に行える。[工程c−2]例えば、図5に示す第二端部142よりも巻枠長手方向X1側に延びた余分な線材140が切断される。[工程c−3]線材固定金具163により、第二電極152と第二端部142とが、互いに巻枠短手方向Yに押圧される。[工程c−4]図4に示すように、巻枠固定金具161により、第二電極152が巻枠110(ブロック部130)に固定される。
(熱処理)
図8に示すプリプレグテープである含浸材170を、図7に示す巻枠110および線材140に含浸(浸透)させるための、熱処理が行われる。熱処理などは次のように行われる。[工程d−1]図4に示すコイル101が加熱される(例えば120℃〜150℃など)。この加熱により、樹脂(例えばエポキシ樹脂)がテープからしみ出し、硬化する。[工程d−2]その結果、図7に示す線材140と巻枠110とが固定(固着)され、線材140どうしが固定される。なお、この熱処理の後に、上記[工程c−1]〜[工程c−4]の全部または一部が行われてもよい。
(ティース75へのコイル101の取り付け)
[工程e−1]図3に示すように、コイル101のティース取付孔125が、ティース75に取り付けられる(はめ込まれる)。この[工程e−1]などにより、ティース75に線材140(図4参照)が直接巻かれる場合よりも、容易にステータ70(図2参照)が組み立てられる。さらに詳しくは、線材140がティース75に直接巻線される場合、この巻線の作業は、回転軸周方向に隣接するティース75どうしの狭いスペースで行われる必要がある。一方、上記[工程b−1]では、図8に示すように巻枠110に線材140が巻線される。この作業は、巻枠110の周囲(巻枠径方向Rb(図4参照)外側部分)が開かれた状態で行われる。そのため、巻枠110への線材140の巻線の作業が容易に行われ得る。その結果、線材140にかかる負荷が抑制される。ここで、線材140に負荷がかかると、線材140の剥離が生じやすい。また、線材140に負荷がかかると、臨界電流(Ic)が低下する。しかし、本実施形態では線材140にかかる負荷を抑制できるので、線材140の剥離を抑制でき、臨界電流(Ic)の低下を抑制できる。
(効果1)
図1に示す超電導回転電機1のコイル101による効果を説明する。コイル101は、超電導回転電機1のステータ70に用いられる。図4に示すように、コイル101は、巻枠110と、線材140と、電極(151・152)と、を備える。
[構成1−1]巻枠110は、図3に示すステータ70のティース75に対して着脱可能である。
[構成1−2]図4に示すように、線材140は、巻枠110にレーストラック状に巻かれ、超電導体を有する。
[構成1−3]図5に示すように、電極(151・152)は、線材140の端部(141・142)にハンダ付けされる。
[構成1−4]線材140の端部(141・142)および電極(151・152)は、図4に示すように巻枠110に固定される。
コイル101は、上記[構成1−1]および[構成1−2]を備える。よって、巻枠110がティース75(図3参照)に取り付けられていない状態で、線材140を巻枠110に巻線できる。よって、ティース75(図3参照)に線材140を直接巻線する必要がある場合に比べ、巻線の作業スペースを広く確保しやすい。よって、線材140が巻枠110に適切に巻線されやすい。その結果、線材140に負荷がかかりにくい。その結果、線材140の剥離や割れを抑制できる。
コイル101は、上記[構成1−1]および[構成1−4]を備える。よって、巻枠110がティース75(図3参照)に取り付けられていない状態で、図5に示す電極(151・152)と端部(141・142)とのハンダ付けを行える。よって、ティース75(図3参照)に線材140が巻かれた状態で、このハンダ付けを行う必要がある場合に比べ、ハンダ付けの作業スペースを広く確保しやすい。よって、このハンダ付けが適切に行われやすい。その結果、電極(151・152)と端部(141・142)との接触部分に負荷がかかりにくい。その結果、端部(141・142)およびその周辺部での、線材140の剥離や割れを抑制できる。
図4に示すコイル101は、上記[構成1−4]を備える。よって、巻枠110に対して、図5に示す端部(141・142)および電極(151・152)が動くことが規制される。よって、端部(141・142)および電極(151・152)にかかる負荷を抑制できる。その結果、端部(141・142)およびその周辺部での、線材140の剥離や割れを抑制できる。
(効果2)
コイル101は、図7に示す含浸材170を備える。含浸材170は、線材140と巻枠110とを一体的に接着させるものである。巻枠110は、線材140と対向する底部123を備える。
[構成2]含浸材170は、底部123と線材140とを接着する。
上記[構成2]により、底部123に対して線材140を確実に固定できる。よって、底部123から線材140が離れる(浮く)ことを抑制できる。その結果、例えば図4に示す巻枠本体直線部120aで線材140が曲がるなど、線材140が必要以上に曲がることを抑制できる。その結果、線材140の剥離や割れを抑制できる。
(効果3)
[構成3]含浸材170は、図8に示す巻枠110に線材140が巻線されるときに線材140と共巻きされるプリプレグテープである。
上記[構成3]により、図7に示すように、巻枠110と線材140との間、および、線材140どうしの間に、容易に含浸材170を配置できる。
(含浸材170の変形例)
図8に示す含浸材170は、巻枠110に線材140が巻線されるとき(上記[工程b−1]参照)に、線材140に塗られる樹脂(例えばエポキシ樹脂)でもよい。この場合、線材用スプール187から繰り出された線材140に、樹脂が直接塗り込まれる。この塗り込みは、例えば刷毛などにより行われる。この場合、含浸材170は、自己発熱により、硬化してもよい。この場合、テープ用スプール189を省略できる。
(効果4)
[構成4]含浸材170は、図8に示す巻枠110に線材140が巻線されるときに線材140に塗られる樹脂である。
上記[構成4]により、図7に示すように、巻枠110と線材140との間および線材140どうしの間に、簡易な構成(例えば刷毛など)で含浸材170を配置できる。
(その他の変形例)
上記実施形態は様々に変形できる。例えば、図4に示す線材140が巻枠軸方向Zbに複数本並べられる場合(線材140がダブルパンケーキ状などの場合)がある。この場合に、図5に示す第一電極151および第一端部141が、巻枠長手方向X1側の線材曲線部140bよりも巻枠長手方向X1側に配置される場合がある(図示なし)。この場合、図4に示す巻枠固定金具161と同様の金具により、第一電極151が、巻枠110(ブロック部130)に固定されてもよい。また、線材固定金具163と同様の金具により、第一電極151および第一端部141が、互いに押圧されてもよい。